『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』




                          第二十六話  袁紹、劉備を迎えるのこと

 劉備一行はその袁紹の本拠地である?に着いた。そこは相変わらずの繁栄ぶりだった。
「政治はいいんだけれどな」
「そうだな」
 馬超と趙雲もそれは認めた。
「あれで人間性がまともならなあ」
「何も言うことはないのだがな」
「けれどそれは仕方ないわね」
 黄忠も言う。
「あの人がまともなら何かおかしな気がするわ」
「何か袁紹さんって凄く変な人なんだね」
 馬岱もそれはわかった。
「涼州の内政もかなり上手くいってるらしいけれど」
「ですから袁紹さんですから」
 孔明も袁紹自身に問題があるというのだった。
「政治と戦争はともかく人間性は凄くアンバランスなんです」
「だから妾の子なんかどうでもいいのだ」
「そう思うのだがな」
 張飛と関羽も述べる。
「それでもあの人は違うのだ?」
「複雑な話だな」
「まあ人は色々あるわ」
 神楽もそれを言う。
「とにかくね。今は袁紹さんのところに行きましょう」
「うん、早く剣を返してもらわないといけないから」
 劉備も両手を胸の前で拳にして話す。
「早くね」
「そうだな、私も用がある」
 公孫賛も話す。
「行くとしよう」
 そしてここにだ。何人かやって来た。まずはだ。
「おっ、あんた達確か」
「そうだったな、前に大会に出てたのな」
「そっちの二人は」
 ビリーにアクセル、ローレンスだった。
「何だ?何かあったのか?」
「俺達もやっとこっちに戻ってきたんだがな」
「それで今度は何の用件だ」
「袁紹さんに御会いしたいんですけれど」
 劉備が三人に申し出た。
「それでこちらに来たんですけれど」
「ああ、袁紹殿な」
「丁度今こっちにいるしな」
「それなら案内をするか」
 三人はそれぞれ顔を見合わせて話した。
「じゃあ今からな」
「こっちだ。来てくれよ」
「それで会うといい」
「有り難うございます。それじゃあ」
 劉備は笑顔で三人に応えた。そうしてだった。
 袁紹のその宮殿に入った。そこで袁紹と会うことになった。その時袁紹は政務にあたっていた。両脇には顔良と文醜達がいる。
「麗羽様、何かお仕事が凄くたまってますけれど」
「西に行ってる時も仕事してたのに何でですかね」
 こう袁紹に言う二人だった。
「ちょっとこれはかなり」
「どんどん来てますよ」
「わたくしも不思議に思ってますわ」
 袁紹にしろ実際そう思っているのだった。
「これはかなり」
「確かに四つの州と異民族の分ですから量は多くなりますけれど」
「これ多過ぎません?」
「そう、異民族ですわね」
 袁紹はそこを指摘した。
「異民族のことが特に多いですわね」
「併合した後は仕事が多くなりますか」
「それでなんですかね」
「それでも多過ぎますわ。特に」
「特に?」
「何かありますか?」
「賊がその異民族の場所にやたら多いですわ」
 こう話すのだった。
「平定してから。それでも」
「そういえば烏丸に匈奴のところが一番多いですね」
「仕事の七割はありますね」
「北にまた兵を送ることにしますわ」
 袁紹はここで一つのことを決定した。
「この仕事が一段落したら。また将帥も兵卒も集めますわ」
「はい、それじゃあ私達も」
「水華達もですね」
 二人もそれに応える。そうしてだった。
 袁紹は事務処理を続けていた。そこに田豊と沮授が来たのだった。
「どうしましたの?」
「麗羽様、劉備殿が来られてます」
「その配下の人達もです」
 こう主に話すのだった。
「それと。またあちらの世界から来た人もです」
「それともう一人いるみたいですけれど」
「劉備さんが?」
 袁紹はそれを聞いてまずは手を止めた。
「あの人がなのですね」
「はい、どうされますか?」
「御会いされたいそうですけれど」
「わかりましたわ」
 袁紹は二人の言葉にすぐに答えた。
「それでは。すぐに御会いしますわ」
「ではお仕事は」
「どうされますか、そちらは」
「今終わりましたわ」
 見ればペースをあげていた。それで終わらせたのである。
 そしてそのうえでだ。顔良と文醜を入れた四人にだ。あらためて話すのだった。
「ではすぐに劉備さんと」
「はい、それじゃあ」
「私達も」
「そうですわ。四人共来なさい」
 やはり四人全員に対してであった。
「そのうえで劉備さんとお話しますわ」
「そういえば劉備さんのところには」
「あの張飛とか馬超がいたよな」
 顔良と文醜はこのことを思い出した。
「確か」
「そうよね。あと他には」
「あの諸葛孔明もいるわね」
「はわわ軍師だったわ」
 田豊と沮授は彼女の名前を出した。
「幽州にいるけれど人材はかなりのものね」
「その一行が来るなんて。何かしら」
「まずは御会いしてからですわ」
 袁紹はまた四人に話した。
「それでいいですわね」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 こうして四人で向かう。そのうえで謁見の間で劉備一行と話す。袁紹は四人をそれぞれ両脇に置いてだ。そのうえで劉備に対して声をかけた。
「暫くぶりですわね」
「袁紹さんもお元気そうですね」
「ええ、わたくしは元気ですわ」
 微笑んで劉備に返す袁紹だった。
「ところで」
「はい」
「今日の御用件は何でしての?」
 こう劉備に問うのだった。
「それを御聞きしたいのですけれど」
「はい、実はですね」
 劉備も袁紹の言葉に応えて話しはじめた。袁紹は階段の上の座に座っている。そこに顔良達が共にいて劉備は後ろに一行を従えて立っていた。
「袁紹さん最近立派な剣を手に入れられましたそうですけれど」
「剣?」
「あれかしら」
 それを聞いて田豊と沮授がふと言った。
「あの黒い柄と鞘の」
「あちらこちらに黄金の装飾もある」
「はい、それです」
 二人の言葉を聞いてだ。劉備は声を明るくさせた。
「その剣ですけれど」
「ああ、あれですのね」
 袁紹もここで気付いた顔を見せた。
「あの剣でしたら」
「あるんですか?」
「うっ・・・・・・」
 だがここでだ。袁紹は一瞬停止してしまった。
「それですけれど」
「あるんですよね」
「え、ええと」
 何故か今度は顔に汗を流す。
「何と言うのかしら。あれはですね」
「あるのなら返して欲しいんですけれど」
「袁紹様、あれは」
「昨日のことですよね」
 顔良と文醜もここでひそひそと主に囁く。
「袁術様に」
「そうでしたよね」
「ま、まああれですわ」
 袁紹は苦し紛れの顔で劉備に返した。
「返して欲しいのですわね、あの剣を」
「はい」
 劉備の返答は明快であった。
「御願いします」
「そしてなのだが」
 今度は公孫賛が言ってきた。
「いいか?」
「あら、貴女は」
 袁紹は彼女を見ると少し怪訝な顔になった。そのうえで言う言葉は。
「どなたですの?見ない顔ですけれど」
「おい、待て」
 公孫賛もすぐにムキになって言い返す。
「烏丸征伐の時に一緒だっただろうが」
「曹操殿の部下でしょうか」
「そうなのでしょうか」
 田豊も沮授も知らない。
「一体誰なのか」
「しかし何処かで見たような」
「だとすれば何処で」
「思い出せませんが」
「何故だ!」
 いい加減切れた公孫賛だった。
「田豊と沮授は袁紹配下での知の二枚看板ではないのか?」
「その通りでしてよ」
 主の袁紹が答える。
「わたくしの擁する多くの人材の中でもこの二人は智恵の二枚看板でしてよ」
「そうでしたね。確か」
 孔明もここで話す。
「その智謀は張良、陳平にも匹敵するという」
「いえ、流石に」
「それは」
 二人自身はその言葉は謙遜して否定した・
「私達はとてもそこまでは」
「あの伝説の二人程には」
「それ以上でしてよ」
 だが袁紹が二人を持ち上げて言い切った。
「この二人と貴女。どちらが上かわかりませんわよ」
「そうですね。私もそう思います」
 孔明も真剣な顔で袁紹の今の言葉に返す。
「御二人は間違いなくこの国においてかなりの方々です」
「そう、それでなのですけれど」
 袁紹はここでさらに話すのだった。
「劉備さんのその剣でしたわね」
「はい、それと白々ちゃんは幽州にお米か麦を欲しいとのことです」
「白蓮だ」
 またしてもいつもの展開だった。
「全く。真名は覚えてくれ」
「お米に麦ですのね」
 袁紹達の表情がここで少し変わった。
「そうですのね。それを」
「剣はともかくとしまして」
「お米や麦ですか」
 田豊と沮授もここで少し難しい顔になって話す。
「そういえば幽州は旱魃が原因で凶作だとか」
「それも結構深刻な」
「やはり知っていたか」
 公孫賛も二人の名軍師の言葉に難しい顔になった。
「そのことは」
「聞いてはいますわ。それでなのですわね」
 ここでも劉備に話す袁紹だった。
「我が袁紹陣営に援助して欲しいと」
「貴殿の治める四州はかなり豊かだと聞いている」
 関羽もここで話す。
「よければ援助して欲しいのだが」
「麗羽様、どうします?」
「ここは」
 文醜に顔良も主に問う。
「受けますか?それとも」
「断りますか?」
「幽州の民が困っておりますのね」
 まずはこう言う袁紹だった。
「そうですわね」
「そうだ、今のところ餓えている者はいない」
 公孫賛が説明する。
「だが。このままではだ」
「わかりましたわ。それではでしてよ」
 袁紹も彼女の言葉を受けてから述べた。
「その申し出受けさせてもらいますわ」
「そうか、有り難い」
 公孫賛は袁紹の今の言葉を聞いて満面の笑顔になった。
「これで幽州の民も救われる」
「ただし」
 しかしであった。ここで言う袁紹だった。
「それには条件がありましてよ」
「条件!?」
「条件っていうと」
「一体」
 それを聞いて公孫賛だけでなく劉備達もいぶかしんだ。
「何だというのだ?悪いが幽州には金もないぞ」
「お金ではありませんわ。ええと、どなたか存じませんが」
 袁紹はまだ公孫賛が誰なのかわかっていなかった。
「その、どなたでして?」
「やっぱりわかりません」
「誰なのでしょうか」
 田豊と沮授も相変わらず首を捻っている。
「会ったことがあるのは間違いないですが」
「それでも一体。誰なのか」
「ああ、もういい」
 公孫賛も完全にだ。諦めた顔になって述べた。
「いいから。とにかく条件とは何だ?」
「決まっていますわ」
 袁紹は悠然とした笑みを浮かべてみせて返してきた。
「それは」
「まさか」
「あれか?」
 張飛と馬超は今の袁紹の言葉にぎくりとした顔になった。
「あの大会なのだ?」
「あれをするのかよ」
「わたくし達と勝負をしてもらいますわ」
 袁紹はこう言葉を続けてきた。
「知力、武力、服装のセンス、その他様々なことで」
「やっぱりそれなのだ」
「本当にこの人好きだよな」
 張飛と馬超の顔がいよいよ本格的に曇ってきた。
「何かあるとすぐするのだ」
「最後は鰻だしな」
「ああ、あれか」
 趙雲は既に二人からその話を聞いていた。
「鰻を胸で掴むのだったな」
「幾ら何でもそんな気持ち悪いことはできないのだ」
「身体中鰻に這い回られてぬるぬるになっちまうぜ」
「それはまた淫靡だな」
 それを聞いてこうも述べた趙雲だった。
「面白そうではないか」
「そもそも胸で掴めない娘はどうするのかしら」
 黄忠はこのことを問題にした。
「そうした場合は一体」
「その場合はですね」
「脚の間とか脇の下とかを使うんだよ」
 顔良と文醜がこう彼女達に話した。
「そうするんです」
「それで鰻を捕まえるんだよ」
「どっちにしろ全身鰻に這い回られてぬるぬるになるんですね」
 孔明はこう言って苦笑いになった。
「何か物凄く嫌らしい競技ですね」
「今回蛸や烏賊も一緒ですわよ」
 袁紹はさらに面白そうに話してきた。
「海鼠も。如何でして?」
「何処までぬるぬるが好きなんだ?」
 関羽も思わず突っ込みを入れてしまった。
「全身そうした生き物に絡まれて這われてなのか」
「鈴々もそれは嫌だったのだ」
「あたしもだったんだよ」
 二人がここでまた話す。
「鰻なんてとてもなのだ」
「そこまではできないだろ?」
「確かに。ちょっとないよね」
 馬岱もかなり引いている。
「っていうか袁家ってそういうのが好きなのかな」
「こいつだけだ」
 公孫賛がうんざりとした顔で述べた。
「袁術はこんなことはしないぞ」
「その名前は出さないでもらいたいですわね」
 袁紹は袁術という名前には眉を顰めさせてきた。
「宜しいですわね」
「むっ、そうだったな」
 公孫賛もそれで納得したのだった。
「済まない、貴殿にとってはな」
「その通りでしてよ。まあ最近もっと気に入らない人もいますけれど」
「気に入らない人?」
 劉備はそれを聞いて首を少し右に傾けさせた。
「それって誰なのかしら」
「言いたくもありませんわ、全く」
 袁紹は声も不機嫌なものにさせていた。
「名門の嫡流であるだけでなく。大将軍のお傍にまで」
「ああ、あの方だな」
「そうですね」
 趙雲と孔明はこの言葉でわかった。
「辣腕を振るい続けているな」
「はい、都で」
「だから聞きたくもありませんわ」
 袁紹はここでも不快感を露わにさせたのだった。
「とにかく。剣はとにかくお米や麦ですわね」
「そうだ、それだ」
 また応える公孫賛だった。
「よかったらだが」
「ですから。大会に参加されますの?」
 袁紹が尋ねるのはこのことだった。
「さて、どうされますの?」
「受けるしかないな」
 公孫賛は難しい顔になったがそれでも述べたのだった。
「民のことを思えば」
「宜しいですわ。では」
 袁紹は公孫賛の今の言葉を聞いて満足した笑みを浮かべた。そうしてそのうえで自身の左右に控える田豊と沮授に対して告げた。
「ちょっと」
「はい」
「何でしょうか、麗羽様」
「幽州にですけれど」
 劉備達に聞こえないように小声で話すのだった。
「すぐに手配なさい。宜しいですわね」
「はい、わかりました」
「それでは」
 二人は主の言葉を受けて満足した笑みで頷いたのだった。
「そういうことで」
「すぐに手配します」
「御願いしますわ。さて」
 ここまで話してあらためて劉備達に向かい直った。
「全部で八人ですわね」
「九人ではないのか?」
 関羽がいぶかしみながら袁紹の今の言葉に返した。
「我等は今は」
「あっ、そうですわね」
 言われて気付いた袁紹だった。
「そちらの影の薄い方がいましたわね」
「だから本当に覚えろ!」
 また怒る公孫賛だった。
「私はその幽州の主なのだぞ!」
「まあとにかく九人ですわね」
 公孫賛には実に素っ気無い袁紹だった。
「それに対してこちらは五人ですけれど」
「とりあえず誰か呼びましょう」
「そうしましょう」
 田豊と沮授がこう話す。
「向こうにもあちらの世界から来ている者がいますし」
「こちらも」
「そうですわね。誰かいまして?」
 また二人に問う袁紹だった。
「いればどなたか」
「はい、向こうは全員女の子ですし」
「できればこちらも全員そうしたいですけれど」
「いまして?」
 袁紹は今度は少し不安そうな顔になった。74
「果たして。あと四人ですけれど」
「tりあえずまた人材が来ましたし」
「その中から選びましょう」
 二人の提案はこうしたものだった。
「既にいる人材の中からも選んで」
「それでどうでしょうか」
「そうですわね」
 ここで頷いた袁紹だった。
「ではそれで」
「はい、わかりました」
「ではすぐに集めますので」
「こういうことですわ」
 話が一段落してまた劉備達に顔を戻す袁紹だった。
「では。すぐに大会をはじめますわよ」
「後の四人本当に集まるのだ?」
「袁紹殿は何としてもって感じだけれどな」
 張飛と馬超はこのことはいささか不安に思った。
「ううん、この人危ういところが多いから心配なのだ」
「そうだよな、本当に」
「そうだよね。噂通り変な人だね」
 馬岱も袁紹をこう評する。
「一体どうなるのかな」
「けれど面白そうね」
 神楽だけがいささか余裕を見せていた。
「こうした大会もいいわね」
「それでは明日でしてよ」
 袁紹は期日も告げてきた。
「明日。宮殿の前で行いますわ」
「わかりました」
 劉備がその言葉に明るい笑顔で返した。
「それじゃあ宜しく御願いします」
「とにかくだ。民の為だ」
 公孫賛は両手を拳にして力を込めていた。
「何としても勝つぞ」
「それじゃあです。お互いに」
「頑張ろうぜ」
 顔良と文醜は親しげな様子で一行に告げた。
「何か皆さんとはこうした状況で御会いすることが多いですけれど」
「まあそれも縁だよな」
「こういう縁もあるのね」 
 ここで黄忠も述べた。
「おかしな縁だけれど」
「確かに。おかしいにも程がありますね」
 孔明はここでも苦笑いだった。
「袁紹さん、噂以上の人です」
「とにかく明日だな」
 関羽も意を決した顔になっている。
「とりあえず今日は休息を取ろう」
「お部屋と食事は用意してありますわよ」
 また言ってきた袁紹だった。
「皆さん、では今はゆっくりと」
「袁紹殿のところは飯は美味いからな」
「そこはいいのだ」
 馬超と張飛はこのことはよしとしていた。
「じゃあ。たっぷりと食うか」
「それで明日に備えるのだ」
「メンマもあるな」
 趙雲はこのことを確認した。
「それならいいのだがな」
「はい、勿論ありますので」
「それも楽しんでくれよ」
 その趙雲に気さくに返す顔良と文醜だった。こんな話をしてからだ。劉備達はその袁紹に用意された部屋に入りそれから御馳走を食べるのだった。
 まずは趙雲がだ。ラーメンの中のメンマを食べて言った。
「ふむ、これはだ」
「美味いか?」
「美味い」 
 関羽への返答は一言だった。
「見事だ、美味い」
「そうか。この炒飯もいいぞ」
 関羽が最初に食べているのはそれだった。
「袁家だけはある。いい料理人がいるな」
「袁紹さんは美食家としても有名な方ですし」
 孔明は海老蒸し餃子を食べている。
「ですから。私達への御馳走もですね」
「そうね。この家鴨もいいわ」
 黄忠は家鴨のピータンと焼いたものを口にしている。
「素材も調理も見事ね」
「幾らでも食べられるのだ」
「全くだな」
 張飛と馬超は貪っている。
「麻婆豆腐も美味いのだ」
「このチンジャオロースだってな」
「そうね。量も凄いわね」
 当然神楽も食べている。
「これは満足できるわ」
「まずはたっぷり食べて明日頑張ろう」
 馬岱は明るい顔で皆に言った。
「明日が正念場だしね」
「よし、民の為だ」
 公孫賛はここでも話に力瘤を入れていた。
「ここは何としてもだ」
「そういえば白々ちゃんってさ」
「白蓮だ」
 またしてもいつものやり取りである。劉備と公孫賛だ。
「いつも誰かの為に何かするよね」
「それはな。己のことだけを考える者は嫌いだ」
 公孫賛は何気に己の哲学も語っていた。
「人は何の為に生まれ生きてそして死ぬかだ」
「何の為なの?」
「大義の為だ」
 こう劉備にも話す。
「その為に生き、そして死ぬのだ」
「そうよね、やっぱりね」
「桃香、御前もそう思うな」
「うん」
 今度は明るい返答だった。
「やっぱり私もそう思うよ」
「そうだな。御前も昔からそうだった」
 酒もある。二人で飲みながら明るく話す。
「自分の為よりもまず誰かの為だったな」
「劉家の者はかくあれ」 
 笑いながらこんなことも言うのであった。
「お父さんやお母さんによく言われてたしね」
「先生にもだったな」
「先生元気かな」
 劉備はこんなことも口にした。
「どうなのかな、最近元気なのかしら」
「都で将軍を務めておられるがな」
「あっ、そうなんだ」
 劉備は公孫賛のその言葉を聞いて明るい笑顔になった。笑顔のままで酒を飲む。それはかなり甘い酒であった。それを飲んでいた。
「立派になられたのね」
「私も一つの州を任されているしな」
「おめでとう」
「次は御前だ」
 ここで公孫賛の顔が真面目なものになった。
「御前も今みたいな一つの荘で終わるつもりはあるまい」
「私が?」
「そうだ。御前ならすぐに一つの州の主になれるぞ」
 劉備を見込んでの言葉だった。
「間違いなくな」
「そうかな。私は別に」
「そうした志はないのか?」
「それよりも今よりもずっと。皆が笑顔で暮らせる国になればいいなって」
「思うことはそれか」
「その方が大事じゃないかしら」
 こう公孫賛に話すのだった。
「やっぱりね。そっちの方がね」
「そうだな。だが御前自身はそれに対して己を立てようとは思わないのだな」
「全然。そんなことは」
 思わないというのだった。
「思ったことないし」
「やれやれ。相変わらず欲のない奴だな」
 今度は溜息と共の言葉だった。
「だがそうだからこそいいのかもな」
「いいのかな」
「いいのだ。御前はそれでいい」
 劉備の顔をだ。微笑んで見ていた。
「だからこそいいのだ」
「そうなんだ」
「まあ今は飲んで食べよう」
 公孫賛はこれで話を一旦切った。そのうえで話した。
「明日の為にな」
「うん、それじゃあ」
「それにしても」
 ここでまた孔明が言った。
「鈴益々ちゃんって」
「どうしたのだ?」
「食べるだけじゃないのね」
 唖然とした顔と言葉であった。
「それだけじゃなかったのね」
「だからどうかしたのだ?」
「飲むのも凄いのね」
 見ればだ。張飛は飲む量も凄かった。まさに鯨飲であった。
「どんどん飲めるのね」
「お酒は大好きなのだ」
 天真爛漫そのものの言葉だった。
「だから幾らでもいけるのだ」
「だからなのね」
「そうなのだ、さあどんどん持って来るのだ」
 実際にこんなことも言う張飛だった。
「二日酔いもしたことがないのだ」
「ああ、あたしもだよ」
「私もだ」
「私もよ」
 ここで馬超に趙雲、それに黄忠も参戦してきた。
「じゃあな」
「酒も楽しむとしよう」
「そうね。それじゃあ」
 こんな話をして今は休むのだった。彼女達はこれで終わりだった。
 そして翌朝。袁紹はあらためて四人に対して問うていた。
「それで見つかりましたの?」
「あと三人ですよね」
「こっちから大会に参加するメンバーは」
「そう、三人ですわ」6
 また言う袁紹だった。
「三人ですけれど」
「あの、麗羽様」
「もう一人いたような」
 しかしここで田豊と沮授が言ってきた。
「あの影の薄い」
「包丁を持って誰かを刺すような感じの」
「ああ、あれですわね」
 袁紹も言われて何となく思い出した。
「ええと、何でしたっけ。あの弟殿を好きそうな」
「何とかいいませんでした?」
「ほら、何とか」
 顔良と文醜はわからなかった。
「あの人ですけれど」
「西園寺何とかとかいいませんでしたっけ」
「確かそういう名前でしたわね」
 袁紹も他の四人も彼女の名前を覚えていない。
「それであの何とか世界とかいうのを入れて四人分ですわよ」
「まずはキャロルさんと凛花さんですね」
「その二人でどうでしょうか」
 田豊と沮授がこの二人のン名前を出してきた。
「それとあとは、あの」
「この前に来た」
「ああ、あの一行の中からですわね」
 袁紹もここでわかった。
「ではあの一行をここへ」
「わかりました」
「それでは」
 こうして何人も連れて来られた。見ればだ。
 金髪で鎧を着た西洋人だ。
「クロードさんでしたよね」
「ああ」
 顔良の問いに頷いて返す。
「そうだ」
「それと後は」
「キム=ヘリョン」
「キリアン」
 どちらも黒髪の青年だ。だが棒を持った男の顔はアジア系であり何処かキム=カッファンを思わせる面持ちであり流れる雰囲気だ。そしてもう一人は細い剣を持ち口には薔薇がある。ズボンの腰には長い帯がある。
 そしてだ。他にもいた。
「ガロス」
「ブラックホーク」
「ヴァルター」
 斧と盾を持った巨体の男で顔中に髭があり兜には角が生えている。黒い大柄な身体に独特の髪型をしていて二本の斧を持つ。そして最後は甲冑を来た騎士であった。
「管又刃兵衛」
「ジェイ」
「ドラコ」
「ゴルバ」
 着物に眼鏡、それに槍を持った老人にアフロの髪の黒人、西部を思わせる服に銃を持った男に軍服の男。彼等もそれぞれ名乗った。そしてだ。
 最後にだった。二人いたのだった。
「鈴姫です」
「アンジェリカよ」
 金髪に桜色の丈の短い着物の上に緋色の上着を羽織っている少女だ。手には巨大な剣と笛がある。そしてもう一人は。
 白い半裸の、脚が露になった服装に黒く短く刈った髪、それと爪を思わせる形の白い棒を持っている。最後に二人の女が来たのだった。
 そしてだ。袁紹はその二人を見て言うのであった。
「今からですけれど」
「はい」
「何なのかしら」
「大会に出てもらいますわ」
 こう話すのであった。
「それで宜しいですわね」
「大会というと」
「あれね」
「そう、あれですわ」 
 また二人に対して言った袁紹ですわ。
「それでいいですわね」
「私は。お世話になっていますし」
「仕事だから」
 二人もそれぞれ異論はなかった。
「わかりました」
「やらせてもらうわ」
「では。他の者達ですけれど」
「どうすればいいのですかな」
 刃兵衛が問うた。
「我々は」
「暫くしたら北に向かいますから」
「その時に備えて訓練をしていてくれねえかな」
 顔良と文醜が彼等に話した。
「そういうことで」
「頼めるか?兵の訓練の方もさ」
「うむ、わかった」
 頷いたのはクロードだった。
「さすればその様に」
「それで御願いしますね」
「あたい達も大会が終わったらすぐにそっちに行くからさ」
 また彼等に言う顔良と文醜の二人だった。
 そうしてである。袁紹はここでまた言った。
「さて、準備万端ですわね」
「そうですね。それでは」
「これから大会に」
「ええ。それにしても」
 田豊と沮授の言葉に応えながら話す袁紹だった。
「我が袁家も本当に人材が多くなってきましたわね」
「一度にですし」
「来るのが」
「その通りですわね。それにですわ」
 さらに話す袁紹だった。
「内政ですけれど」
「藍玉殿と黒檀殿がおられますし」
「そちらは麗羽様が留守の間も抜かりなく」
「青珠殿と赤珠殿もその為に残っておられます」
「ですから」
「ならいいですわ」
 それを聞いて満足した顔で頷く袁紹だった。
「まずは政ですわ。わかっていますわね」
「はい、西域征伐の功績は朝廷にも届いていますし」
「その結果朝廷からは遂にです」
「幽州ですわね」
 袁紹は満足した面持ちになっていた。
「あの州が遂にわたくしのものに」
「おって朝廷から正式に命じられます」
「幽州の牧にもです」
 田豊と文醜も楽しそうに話す。
「これで麗羽様は五州の主です」
「おめでとうございます」
「五州を治めそうして」
 袁紹は満足した顔のまま話していく。
「その功績で。わたくしはさらに上を目指しますわよ」
「やがてはですね」
「三公もですよね」
 顔良と文醜も楽しそうに話す。
「これで袁家は五代三公ですよね」
「あの美羽様を差し置いて」
「ふん、美羽なぞ所詮は小娘ですわ」
 袁紹の顔はここでは微妙に歪んでしまっていた。
「わたくしの相手ではありませんわ」
「はい、袁家の主は麗羽様ですね」
「何進様も認めてくれますわね」
「妾の子であろうとも」
 自分からこのことを言う袁紹だった。
「それでも。実力で掴めるものは掴めましてよ」
「それはいいことね」
 アンジェリカは袁紹のその言葉を聞いて述べるのだった。
「掴めるだけの力があるということは」
「貴女、そういえば貴女の世界では」
「私はそういう立場にいなかった」
 こう言うだけのアンジェリカだった。
「だからそれはできなかった」
「奴隷だったそうですけれど」
「それで暗殺とかやってたんだよな」
「ええ」
 顔良と文醜にも答えるアンジェリカだった。
「そう。あの世界じゃ」
「けれどこの世界じゃアンジェリカさんは」
「少なくとも奴隷じゃないからな」
 二人はそのアンジェリカを慰めるようにして言うのだった。
「それは安心して下さいね」
「あたい達だって仲間だからな」
「ええ」
 頷いて返すアンジェリカだった。
「それじゃあ」
「私もですか」
 今度は鈴姫だった。
「私も。袁紹さんのところで」
「勿論ですわ。確かに働いてもらいますわ」
 袁紹はこのことは言いはした。しかしであった。
「それでもですわよ」
「それでもですか」
「ええ、そうですわ」
 悠然と笑いながら鈴姫に述べる。
「期待していますわよ」
「有り難うございます」
 おずおずとだが確かに言った鈴姫だった。
「ではこの大会も」
「では皆さん」
 ここでまた言う袁紹だった。
「宜しいですわね」
「はい」
「参りましょう」
 田豊と沮授も言うのだった。
「そうして大会に出るからには」
「勝ちましょう」
「当然ですわ。さて」
 袁紹の言葉は続く。また田豊と沮授に問うのだった。
「お米と麦ですけれど」
「はい、わかっています」
「御安心下さい」
 微笑んで答える二人だった。
「そちらはもう」
「準備ができ次第発ちますから」
「宜しいですわ、それで」
 満足した顔で頷く袁紹だった。
「では幽州の民はこれで大丈夫ですわね」
「はい、抜かりなく」
「そちらも既に」
「では。心置きなくですわね」
 ここで己の席から立ち上がった。
「行きますわよ」
「はい!」
「いざ出陣ですね」
 こうしてであった。袁紹も大会に向かう。むしろ彼女達の方がである。大会のことが楽しみで仕方がないといった感じですらあった。
 そしてその頃。国の中でまた一つ恐ろしいことが起ころうとしていた。
「ねえ卑弥呼」
「何、貂蝉」
 あの不気味な二人が語り合っていたのである。
「これからだけれどどうするの?」
「そうね。まずはいいおのこを見つけないとね」
 こう貂蝉に返す卑弥呼だった。
「まずはそれからよ」
「この世界は奇麗なおなごはいてもいいおのこは少ないのよね」
 ここでこんなことを言う貂蝉だった。
「普通のおのこにとっては極楽だけれど」
「確かに」
 どうやらこの二人は女には興味がないらしい。
「私達乙女にとってはね」
「地獄よ」
 こう言ってやまない。そこにだった。
「んっ?あれは」
「あら、病気かしら」
 ふと、である。道の端に倒れている者を見つけたのである。
 見ればその者は老人だった。老人は腹を抑えて苦しんでいた。
「ううう・・・・・・」
「御老人、どうしたの?」
「御身体が何処か」
「そうなのじゃ、これが」
 心配する二人にこう答える老人だった。
「持病がのう」
「あら、持病?」
「それは困ったわね」
 このことを聞いて実際に心配な顔になる二人だった。
「どうしようかしら、これは」
「お薬はないし」
「私達医術の心得もないし」
「あるのは乙女の心と武術のみよ」
 かなり怖いことを言っている。
「それでどうしたものかしら」
「本当にね」
「ううう・・・・・・」
 この間にも苦しむ老人だった。
「普段は薬があるのじゃが丁度切らしておって」
「ううん、困ったわね」
「本当にね」
 二人も今はどうしていいか悩んでいた。そこにだった。
「むっ、どうしたんだ?」
 赤い髪の精悍な顔の若者が来た。白い上着の下に黒い服と茶色のズボンという格好である。そのエメラルドグリーンの目の光が強い。
「この御老人は」
「あら、いいおのこ」
「そうよね」
 二人はその若者の姿形を見て言った。
「この人なら私のダーリンに相応しいわ」
「あら、私によ」 
 二人は言い争いもはじめた。
「私のダーリンにこそよ」
「駄目よ、私のよ」
 喧嘩になりそうになる。しかしであった。
 貂蝉がこう卑弥呼に提案したのである。
「喧嘩してもはじまらないわ」
「そうね」
「だからここはね」
「暫くダーリンと一緒にいてどちらがよりダーリンに相応しいかよ」
「確かにするのね」
「そうよ、そういうことよ」 
 こんな提案をするのであった。
「それでどうかしら」
「いいわよ」
 卑弥呼もそれでいいとした。
「それじゃあね。今からね」
「ええ、どちらがよりダーリンに相応しいか」
「勝負よ」
「一体何の勝負なんだ?」
 若者だけがわかっていなかった。
「さっきから一体何の話なんだ?」
「何でもないわ」
「別にね」
 その若者に対してはこう告げるのだった。
「それでよ」
「この御老人だけれど」
「ああ、見せてくれないか?」
 若者は老人を心配する顔で見ながら言ってきた。
「ちょっとな」
「あら、お薬持ってるの?」
「ひょっとして」
「それも持っているが他のこともできる」
 若者はこんなことも言ってきた。
「だから少し見せてくれ」
「ってことはまさか」
「貴方お医者様?」
「ああ、そうだ」
 その通りだというのである。
「俺の名前は華陀という」
「華陀?」
「それがダーリンの名前なのね」
「ああ、そうだ」
 二人を前にしても全く動じていない華陀だった。
「ゴオオオオッド米道!の者だ」
「わかったわ。ゴオオオオッド米道!ね」
「そこの人なのね」
「そうだ。その呼び方で頼むな」
 二人が自分と同じ呼び方をしたことは嬉しいようであった。
「それで御老人だが」
「どうなの?それで」
「助かるの?」
「ああ、どうやらこれは心臓だな」
 仰向けに寝ている老人の胸や腹をさすりながらの言葉である。
「そうか、これなら」
「治せるのね」
「ダーリンなら」
「任せてくれ」
 強い言葉で応える華陀だった。そうしてだ。
「病魔退散!」
 指を高々と掲げる。次に叫ぶ言葉は。
「光になれーーーーーーーーーーっ!!」
「指が光ったわ!」
「黄金色に」
 実際にその輝きだった。そうしてである。
 華陀がその指を老人の左の胸にやる。そうすればだった。
 胸から何かが消えた。そのすぐ後にだった。
 老人がゆっくりと目を開いてきた。穏やかな顔だった。華陀jはその老人に対して問うのであった。
「気分は」
「はい、有り難うございます」
 穏やかな顔で礼を述べるのだった。
「お陰様でもう」
「そうか。それならいいんだ」
 華陀は老人の今の言葉を聞いて彼もまた微笑んだ。
「俺の針は皆の為にあるからな」
「あら、針だったのね」
「そうだったのね」
 ここで二人もわかった。
「それであの色の光だったのね」
「そういうことだったの」
「ああ、そうだ」
 その笑みを二人にも見せる華陀だった。
「俺は針も使える。薬以外にな」
「これは凄いわね」
「そうね、名医ね」
 二人から見てもそうであった。
「まさにね」
「その通りだわ」
「やっぱりこの方は」
「そうね」
 そしてまた二人でひそひそと話すのだった。
「ダーリンにね」
「相応しいわね」
「それに」
「この世界を救えるわ」
「さっきから何を話してるんだ?」
 華陀はその二人を見ながら問うた。
「二人共、ところでだが」
「ええ、ところで」
「何かしら」
 二人は華陀の言葉を受けて彼の方に顔も身体も向けた。
「二人共行く宛はあるのか?」
「行く宛?」
「それなの」
「ああ、この御時世二人だけの旅も危ないだろう」
 彼は二人の恐ろしさを知らなかった。
「だから。ここはだ」
「一緒になのね」
「そういうことなのね」
「ああ、よかったらどうだ?」
 また二人に言う華陀だった。
「三人でな。どうだ?」
「ええ、それじゃあ」
「喜んで」
 二人はその不気味な姿をそれぞれもじもじとさせながら華陀の提案に頷いた。
「ダーリンがそう言うのなら」
「三人で旅をしましょう」
「俺は今困っている人達を助けながら旅をしている」
 これが彼の旅の目的だというのである。
「二人の目的は何なんだ?」
「この世界を救うこと」
「それよ」
 こうはっきりと華陀に話すのだった。
「それが私達の目的なのよ」
「実はね」
「そうか、わかった」
 華陀は明朗に言葉を返した。
「なら目的は同じだな。三人で一緒にこの国を回るとするか」
「ええわかったわ」
「それじゃあね」
「それでだ。御老人」
 華陀はここで自分が治療した老人に声をかけた。
「調子の方は」
「何と、これは」
 明るい顔で応えて起き上がる老人だった。
「今までとは全然違う」
「そうか」
「何か若い頃に戻ったようだ」
「あら、じゃあただ元気になっただけじゃなくて」
「素からなのね」
「病は根からなおさないと駄目だ」
 華陀はこう二人に話した。
「だからだ。俺の針はその根幹から治すんだ」
「名医ね」
「そうね」
 そしてだった。二人は華陀をこう呼んだ。
「医者王ね」
「そうね」
「まさにそれよ」
「スーパードクターよ」
「それはどうかわからないが」
 華陀はそうした言葉には興味がないようだった。今度の態度は素っ気無い。
「しかしだ」
「しかし?」
「どうなの?」
「医術は仁術だ」
 これが華陀の考えであった。
「だからだ。俺はこの世のあらゆる病と戦うんだ!」
「やっぱり凄いわ」
「惚れて濡れちゃいそうだわん」
 また身体をくねらせてのそれぞれの言葉だった。
「ダーリン、最高よ」
「もう惚れてどうしようもないわ」
「それじゃあ二人共行くか」
 全く動じない華陀だった。
「この世のあらゆる病を倒しに!」
「ええ、行きましょう」
「それじゃあね」
 こうしてだった。三人の旅もはじまった。これもまた運命の戦いのはじまりだった。戦いはこの国のあらゆるところで起ころうとしていた。


第二十六話   完


                      2010・8・16



すんなりと剣が戻ってくる事はないと思っていたけれど。
美姫 「やっぱりだったわね」
にしても、ここでも公孫賛は……。
美姫 「話題を変えてあげましょう」
だな。華陀にも旅の仲間が出来て。
美姫 「こちらの旅路は暑苦しくなりそうね」
確かにな。次回はどうなるのだろうか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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