『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』




                           最終話  物語、大団円を迎えるのこと

 劉備達は歌い続ける。その歌を受けてだ。
 于吉と左慈はだ。白装束の者達がすっかり減った本陣においてだ。
 苦々しい顔でいた。その中でだ。
 左慈はだ。こう于吉に告げた。
「おい、このままではだ」
「そうですね。この世界においても私達は」
「小娘達にしてやられるのか」
「そうなりかねません」
「くっ、まさかこの世界ではこう来るか」
 歌を受けながらだ。左慈は忌々しげに呟いた。
「どうすればいい、ここは」
「歌に対するのは歌ですが」
 これはこれまでの戦いでわかっていることだった。実際に彼等も社達に歌で仕掛けたからだ。赤壁でのことだ。
 だがそれでもだ。今はだった。
 その社達もいない。それにだった。
 他の同志達も皆倒れていた。残っているのは彼等だけだった。
 その左慈がだ。また于吉に言う。
「同志達も減っているぞ」
「ええ、白装束の同志達もまた」
「残りはどれ位だ?」
「十万位でしょうか」
「敵は百万だ」
 劉備達の数、それはだった。
「これでは最早な」
「勝負になりませんね」
「司馬尉仲達も死んだ」
 左慈は彼女のことも言った。
「最早この世界を破壊と混沌に陥れられる者は俺達だけだ」
「そしてその私達もです」
「歌、この歌の力はな」 
 劉備達の力を受けながらだ。言うのだった。
「どうにもならないか」
「さて、ここはどうするかですが」
「この世界を諦めるか?」
 遂にだ。左慈は撤退を口にした。
「どうする、一体」
「そうですね。それも考えの一つですが」
「しかしだ。俺にも意地がある」
「私にもですよ」
「そう簡単に諦めてたまるものか」
 これが左慈の考えだった。歌を前から受けてもだった。
 彼は毅然としてだ。こう言ったのだった。
「この歌、最後の最後までだ」
「対抗してみせましょう」
 こうしてだった。二人はだ。
 劉備達の歌を正面から受け続けていた。彼等は最後の意地を出していた。
 その彼等にだ。劉備達はだ。
 さらに歌い続ける。劉備と張角は互いに背中合わせになって歌っていた。その中でだ。
 劉備がだ。戦場にいる全ての者に言ったのだった。
「皆、いい?」
「この戦いはもうすぐ終わるわ!」
 デュオという形になっている張角も続く。
「だからね。皆でね!」
「歌おう!この歌を!」
 こう言ってだ。彼女達が出した歌は。
「フラワーオブブレーブリー!」
「そしてトウエンの誓い!」
「最後にはね!」
「恋華大乱!」
「皆でね!」
「歌うわよ!」
 こうだ。百万の大軍に告げたのだった。そうしてだ。
 彼女達が歌いだ。それに続いて張梁と張宝もだ。四人で歌いはじめた。
 それは忽ちだ。孔明や関羽達にも伝わりだ。戦士達は今一つの歌を歌っていた。
 テリーもだ。歌いながら拳を振るう。そのうえで最後の局面を迎えていた。
 百万の戦士達がだ。一つの歌を歌っていた。これにはだ。
 遂に白装束の者達もだ。耐えきれずだ。
 次々と動きを止め消えていく。彼等の弱点である歌を受けてだ。
 残っていた僅かな者達が消えていきだ。最後に残ったのは。
 于吉と左慈の二人だけだった。その二人にだ。
 関羽がだ。己の持つその大刀で指し示して告げたのだった。
「これで終わりだ!観念しろ!」
「ふん、まだだ!」
「私達にも意地があります」
 こう言ってだ。二人はまだ戦場に踏み止まっていた。しかしだ。
 百万の戦士達に完全に囲まれてだ。そしてだ。
 彼等の歌を受け続けてだ。その顔を苦悶で歪ませてだ。
 そうしてなのだった。その姿をぼやけさせてきた。
 その二人を見てだ。怪物達が言った。
「この世界での戦いがこれでね」
「完全に終わるわ」
「この世界での戦乱はもう数百年は起こらないわ」
「多分。この世界でも次の統一王朝は隋になるでしょうけれど」
 晋ではなくだ。隋になるというのだ。
「その王朝になるまではもうね」
「大きな戦乱は起こらないわよ」
「そうか。世界によってはそれまで戦乱が起こってもだな」
「ええ、この世界ではね」
「それはないわ」
「そうか。それは何よりだ」
 二人の話を聞いて満足した笑みで浮かべる華陀だった。そしてなのだった。
 華陀も怪物達も歌う。しかしその歌は。
 劉備達の歌とは違っていた。何とだ。
「絶叫!漢道」
「歌うわよ!」
 恐怖の歌が出されようとしていた。戦場で大爆発が起ころうとしていた。だがその前にだった。
 于吉も左慈もだった。百万の歌に耐え切れずだ。
 遂にこの世界での身体を滅ぼしてしまった。彼等もしゅっと消え去ったのだった。
 後に残ったのは何もなかった。それを見てだった。
 劉備は満足した顔になりだ。歌を中断して言ったのだった。
「これで。本当に」
「はい、終わりました」
「戦いが遂にです」
 孔明と鳳統もだ。満足した顔で主に応える。
「長く激しい戦いでした」
「ですがこれでもう」
「そうね。私達は勝ったのね」
 このうえなく満足している顔で言う劉備だった。
「戦いが終わってそして」
「はい、平和を勝ち取りました」
「この世界とあちらの世界の」
 彼女達によって世界は確かに救われたのだった。それもそれは一つではなかった。
 そのことをだ。アンディも感じ取りだ。
 そのうえでだ。こうテリーに言ったのだった。
「これで。もう」
「ああ、俺達の道を歩めるな」
「そうだね。長く辛い戦いだったけれど」
「楽しくもあったか?」
「いい仲間達に出会えて一緒にいたからね」
 それでだと話すアンディだった。
「だからね」
「これでな」
 こう話してだった。彼等も勝利を噛み締めていた。しかしここで。
 急にだ。百万の大軍を何かが襲った。それは。
 爆発だった。草原にいる百万の大軍をだ。
 次々に爆発が襲いだ。彼等は吹き飛ばされた。
 そしてその上空にだ。何時の間にか怪物達がいてだった。
 宙を舞いつつ歌いだ。こんなことを言っていた。
「あたし達の歌が締めよ!」
「これで最後よ!」
 こう言ってなのだった。彼女達の歌を歌う。その歌によってだ。
 勝利を収めた百万の軍勢を次から次に起こる大爆発で吹き飛ばしたのだった。その爆発の中でだ。
 あちこちが黒焦げになり焼けてもしまった曹操がだ。何とか立ち上がりながらだ。
 そのうえでだ。こう漏らしたのだった。
「さ、最後の最後で何なのよ」
「まさか彼等、いえ彼女達が歌うとは」
「想像していませんでした」
 夏侯惇も夏侯淵もだ。何とか立ち上がりながらだ。
 上空を舞いつつ歌う彼等を見てだ。そして言ったのだった。
「折角勝利を収めたというのに」
「何故ここでこうなるのか」
「訳がわかりません」
「まさか最後であの者達が出て来るとは」
「そうね。本当にね」
 曹操は何とか我を保ちながら言った。
「勝って兜の緒を締めろね」
「はい、全くです」
「その言葉の意味がよくわかりました」
 最後の最後でだ。この言葉を肌身で感じた戦士達だった。何はともあれだ。
 戦士達は勝った。そうしてだ。
 意気揚々と都に街宣してだ。そのうえでだった。
 勝利を祝う宴に入った。その中でだ。
 陳琳がだ。拡声の宝貝を手にだ。こう告げていた。
「さあ、今日は特別ですよ!」
「まずは張三姉妹!」
 共にいる韓浩も言う。
「それに袁術殿、張勲殿、郭嘉殿の偶像支配!」
「そこに魏延殿も加わって四人です!」
 今日の偶像支配は四人だというのだ。そしてだ。 
 彼女達だけでなくだった。他には。
「大喬小喬の姉妹!」
「そして孔明さんと鳳統さんのはわわあわわ軍師コンビ!」
「孫権殿と周泰殿!」
「バンドオブファイターズ!」
「皆さん揃い踏み!」
「その歌をどうぞ!」
 こうしてだ。その面々が歌いだった。
 歌う。そしてだった。
 馳走もあった。そこにはだ。
 馬超と許緒、それにだ。
 張飛にドンファン、チン、ケンスウやジャックといった面々がいてだ。
 とにかく食べまくっていた。そうしてだ。
 許緒は笑顔で料理を作る面々にも言ったのだった。
「一緒に食べようね」
「ああ、これができたらな」
「一緒にね」
 崇雷とだ。典韋だった。他には舞がおせち料理を出してビリーも卵料理を作っている。
 リチャードとボブもだ。シェラスコを焼いている。その肉を食べながらだ。
 孫尚香はだ。呂蒙に尋ねていた。
「絵描けたの?」
「はい、実は」
 見れば呂蒙は絵を描いていた。孫権を描いているがそれがだった。
 かなり見事だ。その絵を描きつつ応えたのである。
「好きで」
「上手じゃない」
「はい、有り難うございます」
「さあ、酒じゃ酒じゃ」
 黄蓋は酒を諸葛勤や太史慈にそれを勧めている。
「どんどん飲むぞ」
「私達も歌うか」
「そうだな姉者」
 夏侯姉妹は歌おうとしていた。そしてそこに曹仁と曹洪も続く。
 徐晃もだ。今は飲んでいた。猛獲にトラ、ミケ、シャムはだ。
「おっぱいなのだ」
「おっぱいが一杯にゃ」
「こんな宴になるとは思わなかったにゃ」
「最高だにゃ」
 こうだ。黄忠に厳顔、陸遜の間を飛び回りだ。
 そのうえでだ。はしゃぎ回っていた。そしてだ。
 その中でだ。ジェイフンはだ。公孫賛にだ。こっそり言っていた。
「じゃあ次はですね」
「そうだ。やはり私は包丁しかないな」
「それで目立つんですね」
「世の中目だってこそだ」
「全くだな」
 華雄も公孫賛に頷いていた。
「長生きをしてな」
「これからはより目立ちたいものだ」
 こう話していた。そしてだ。
 その中でだ。于禁はだ。
 三姉妹や袁術達を見ていた。そこにだ。
 馬岱が来てだ。笑顔で言った。
「じゃあ一緒にですね」
「うん、楽しむの」
「いやあ、忙しいわ」
 李典は舞台を巡っていた。そのからくりの調整だ。
 楽進も手伝いだ。そして言っていた。
「だが楽しいな」
「まあそれはな」
 アクセルやマイケルもアシスタントにしてだった。頑張って働いている二人だった。
 そしてその中でだ。キムとジョンはだ。
 いつもの面々にだ。説教をしていた。
「いいか、この宴の後はだ」
「後始末の奉仕にです」
「そして向こうの世界に戻れば修業だ」
「楽しんでやりましょう」
「ちぇっ、俺達の幸せってな」
「縁のないものでやんすね」
 チャンとチョイは項垂れながら涙を流していた。
「どの世界に行っても旦那達と一緒かよ」
「地獄は永遠でやんすよ」
「俺も何でこうなったんだよ」
 山崎もいる。勿論彼もさめざめと泣いている。
「世の中不公平だよな」
「ああ、本当にな」
「不幸は集中するものでやんすよ」
「ではこれからもだ」
「宜しくお願いします」
 二人だけが上機嫌だった。修業地獄も続くのだった。
 ギースはだ。ワインを手にクラウザーに述べていた。
「ではこれからもな」
「我等はだな」
「敵同士だ」
 このことは確かに告げた。しかしだ。
 それと共にだ。ギースはクラウザーに微笑みもしてだ。そのうえでだった。
 こうだ。彼に言ったのだった。
「だがそれでもだ」
「憎しみではなくか」
「わかったのだ。御前は私でだ」
「貴殿もまた私だな」
「そしてテリー=ボガードもだ」
 ひいてはだ。彼もだというのだ。
「狼なのだからな」
「狼と狼はか」
「互いに争いそうしてだ」
「己を高め合うものか」
「それはカインもだ」
 ひいてはだ。彼もだというのだ。
「そのことは今まではわからなかった」
「いや、わかっていた筈だ」
 クラウザーはそのギースに言ったのだった。
「貴様は既にな」
「そうだというのか」
「だからこそ貴様はあの時テリー=ボガードの手を振り払った」
 かつてのタワーでの戦いの時だ。ギースはテリーに再び破れ吹き飛ばされた。その時だ。
 テリーは無意識のうちにギースを救おうと手を差し出した。だがギースはその手を振り払い自ら落ちる道を選んだ。クラウザーはその時のことを言っているのだ。
「私も同じことになればだ」
「あの男の手を振り払っていたか」
「そうしていた」
 クラウザーはだ。己もそうしたというのだった。
「何故なら私も狼だからだ」
「それ故にか」
「貴様もテリー=ボガードも狼に他ならない」
「狼故に我等は」
「そうだ、戦うがだ」
 だがそれでもだった。
「そこには憎しみはないのだ」
「かつて私はジェフ=ボガードも貴様も憎んでいた」
 ギースはかつてのことを話した。過去の己をだ。
「そしてテリー=ボガードも私を憎んでいた」
「では今はどうだ」
「狼に憎しみはない」
 ギースは言い切った。はっきりと。
「そこにあるのは誇りだけだ」
「それならばだな」
「戦う。これからもな」
「私もだ。そうする」
 こう言ってなのだった。彼等はだ。本来の世界に戻っても狼であることを誓い合うのだった。
 袁紹は配下の者達にだ。こう告げていた。
「さあどんどん飲んで食べなさい」
「麻雀していいですか?」
 文醜は右手を挙げてその袁紹に問う。
「もう徹マンしたくて仕方ないんですけれど」
「ええ、いいですわよ」
 袁紹は文醜の願いを笑顔で受け入れた。
「好きなだけなさい」
「わかりました。それじゃあ」
 こうして雀卓を出す文醜だった。そこにだ。
 顔良に張?、高覧が来て卓を囲む。彼女達も何だかんだで付き合っている。?義も傍で見ている。
 田豊と沮授は蔡文姫にこんなことを言っていた。
「これで匈奴も平定されて」
「北の憂いはなくなったわね」
「そうね。私も北の不安がなくなったことは」
 その北に捉われたことのある彼女の言葉だ。
「何よりよ」
「そうね。まだまだやることは多いけれど」
「平和は取り戻せたわ」
 こう笑顔で話すのだった。そこにはだ。
 審配も辛姉妹もいる。袁紹陣営も平和を楽しんでいた。
 袁術の下にいる者達は袁術達の応援をしていた。そしてだ。
 董卓もだ。笑顔でだ。
 妹の董白にだ。こんなことを話していた。
「色々あったけれどね」
「そうね。ようやくね」
「平和になったのね」
 にこりと笑ってだ。平和を実感していたのである。
「この世界は守られて」
「そうね。それにね」
「それに?」
「別の世界の面々とも友達になれて」
 董白はそのことを話すのだった。
「よかったわね、本当に」
「そうよね」
 こう話す二人だった。そしてだ。
 陳宮は賈駆と将棋をしているが負けている。そのことに困った顔をしている。それに対して賈駆は誇らしげに笑っている。華雄がそれを見て暖かい笑顔でいる。呂布もそこに動物達と共にいる。
「ねね、大丈夫」
「うう、恋殿の軍師としてこれは」
「何度も何度も勝負して勉強すればいいから」
 呂布が言うのはこのことだった。
「安心していい。今は負けてもいい」
「何度やっても勝ってみせるわよ」
 賈駆は楽しげに笑って述べた。
「生憎だけれどね。けれどね」
「けれどなのです?」
「恋には負けるから。頭もいいなんて反則よ」
 呂布には眉を顰めさせてこう言う賈駆だった。
 趙雲はメンマを食べつつだ。黄忠に話している。黄忠は娘の手を引いている。
「これでメンマもより美味くなる」
「平和になったからなのね」
「そうだ。実にいい」
 微笑みだ。そして言った言葉だった。
「待ちに待った平安だ」
「ならここはね」
「楽しむべきだな」
「ではこれもやろうぞ」
 ここで厳顔も出て来てだった。そのうえでだ。
 二人に酒を差し出す。二人もそれを飲みだ。平和の訪れを楽しんだ。
 荀ケもそこに入り飲みだす。しかしだった。
 三人の胸を見てだ。眉を顰めさせて呟くのだった。
「胸なんてね。いらないのよ」
「そこはあんたに同意するわ」
 それは荀ェも同意だった。
「全く。胸なんてあってもよ」
「そう、何もならないのよ」
「肩が凝るだけ」
「あと背もね」
 二人はその話もした。
「あんた中身も小さいんだっけ」
「そうよ。一五〇ないわよ」
「ううん、それかえって人気出るけれど」
「そりゃ劉備殿も呂蒙さんも袁術殿も中は小さいわよ」
 この面々もだった。実は。
「それでもよ。やっぱり背はね」
「欲しいのね」
「そういうことよ。どうにもならないけれど」
 こうしたことを話す者もいた。そこに荀攸が来て苦笑いにもなる。
 程cは呂布のところに来て猫と遊んでいる。そうしながらぽつりと呟いた。
「凛ちゃんを袁術殿に完全に取られました」
「失恋ではないな」
「元々中の人達の関係が凄過ぎまして」
 ここでもそれが影響していた。そのことを甘寧に話すのだった。
「仕方ありません」
「ううむ、中身か」
「そうです。中身は絶対です」
 程cは無表情で言う。
「もっとも私も中身は色々ありますが」
「そういえば貴殿は犬も好きだったそうだな」
「はい、猫ちゃんも好きですがワンちゃんも好きです」
「中身の関係だな」
「ですからこうしてワンちゃんとも仲良くしてます」
 こう言いながら犬ともたわむれる程cだった。
 孫策と周瑜も舞台に上がった。そしてだ。
 歌をはじめる。それを見てだった。
 陸遜がだ。笑顔でこう言ったのだった。
「これからは歌ですね。雪蓮様は戦の他にも楽しみができました」
「ここで戦がないとどうなっていたのですか?」
「はい、飲んだくれるだけなのです」
 そうなっていたとだ。諸葛勤に話すのだった。
「それはよくありませんから」
「そうですね。ではこれからは」
「歌です」
 にこりと笑って言う陸遜だった。
「これで冥琳さんもほっとされます」
「いいことだな。平和になって終わりではない」
 太史慈も笑顔で言う。
「これで雪蓮様もこれからもだ」
「はい、お酒だけではなくなりました」
 このことを話す陸遜だった。満面の笑顔で。
 徐庶は孔明と鳳統の後ろで演奏をしていた。しかしだ。
 その二人がだ。彼女を誘ってきた。
「黄里ちゃんもね」
「一緒に歌おう」
「えっ、私もって」
「三人でね。それでね」
「楽しくやろう」
 こう言って徐庶の手を取ってだった。
 三人になり歌う面々だった。その他にもだ。
 夜血がだ。灰人に話していた。
「じゃあ元の世界に戻ったらな」
「陀流摩の爺さんとか」
「ああ、あの爺さんも手伝ってくれるらしい」
「それであの街を去るか」
「あいつと二人で生きるさ」
 こう灰人に話すのだった。
「これからはな」
「そうか。それならな」
「それなら?」
「俺と一緒に来るか?」
 灰人はふとだ。顔をあげつつ夜血に言った。
「俺もあの爺さんに言われてな。あの街を去ることにしたからな」
「あの国に行くのか」
「ああ、どうする?」
 こう言ったのである。
「一緒に行くか?三人でな」
「そうだな。悪くないな」
 そしてだ。夜血も灰人のその誘いに頷きだ。そしてだった。
 彼等は新しい世界で生きることにした。そしてそこにだ。
 銃士浪も来た。彼等は新天地に旅立つのだった。
 無限示もだ。こんなことを凛に言っていた。
「我は生きる」
「死なないのね」
「死は何にもならない」
 だからだというのだ。
「それよりもだ」
「そうね。生きるといいわ」
「顔の醜さは問題ではないのだ」
 彼もようやくわかったことだった。
「心だ。心が大事なのだ」
「そうよ。じゃあね」
「では。何だ」
「あの場所を出て。覇王丸さんのところに行ったらどうかな」
「寺にか」
「そう。そうして生きていったらどうかな」
「悪くないわ」
 無限示は凛の言葉を受け入れた。そしてだった。
 彼は悟った顔でだ。言ったのだった。
「我を拒む者だけではないのだからな」
「だからね。受け入れてくれる人達のところでね」
「生きよう」
 こうしてだった。無限示は花風院に入ることを決意したのだった。
 ズィーガーと王虎は共にいた。そしてだ。
 二人でだ。こう話していた。
「私は陛下に後継者に任じられた」
「わしも清を倒す者を手に入れた」
 そこにはガルフォードや王、それに慶宣達がいた。
「この者達と共に新たな王朝を築く」
「ではその時にだ」
「共に世界をだ」
「平穏にしようぞ」
「世界は変わる」
 それをだ。シャルロットも見て言う。
「これで大きくな」
「この世界に来てよかったな」
 ヘリュンも言う。
「多くのものを見てだ」
「多くのものを得られたからな」
「よかった。本当にな」
 微笑んで話すヘリュンだった。
 獅子王はだ。こんなことをだ。ゴードンに話していた。
「私はこれからはだ」
「もう獅子王としてでなく」
「私として生きる」
「そうするんだね。それじゃあ」
「また会おう」
 微笑み。そして言う獅子王だった。
「今度会う時は獅子王じゃなくて」
「私本来の名前と姿でな」
「もとの世界でね」
 彼もまたしがらみを断ち切った。そうしたのである。
 関羽は酒を飲み微笑んでいた。そこにだ。
 劉備が来た。彼女は曹操と共にいる。まずは曹操が関羽に言った。
「もうね。私はね」
「曹操殿はとは?」
「貴女のことは諦めるわ」
 少し残念な顔で言ったのだった。
「貴女は劉備の妹だからね」
「だからですか」
「ええ。貴女達の絆には入られないから」
 それでだというのだ。
「もうね二人で幸せにね」
「過ごされよというのですか」
「そうしなさい。私は私で春蘭や秋蘭達がいるから」
 こう言ったのだった。しかしだ。
 またしても残念そうにだ。言った言葉は。
「凛も美羽に取られたし。困ったわね」
「ううむ、御主も大変じゃのう」
 何進が肉を食べながら来て言って来た。
「折角手に入れたおなごをのう」
「これも運命よ。ところで将軍は」
「わらわか?」
「もう肉屋に戻られるのでしょうか」
 かつて大将軍だったので敬意を払う曹操だった。
「やはりそうされるのですか」
「うむ、わらわはやはりそれが一番性に合ってるからのう」
 それでだと言う何進だった。
「だからじゃ。官は退きじゃ」
「そのうえで」
「肉屋に専念するとするわ」 
 こう話してなのだった。何進も己の道を歩むことにした。
 そして今度は劉備がだ。笑顔で関羽に話した。
「先程帝に言われたのよ」
「帝にですか」
「ええ。落ち着いたらね」
「その時にですか」
「私を皇帝に推挙して下さるそうよ」
「何と、義姉上が皇帝にですか」
 その話を聞いてだ。関羽もだ。
 思わず驚きの声をあげた。そのうえで義姉に問うた。
「それはまた素晴らしいことです」
「そうよね。夢みたいよね」
「はい、そうなられるとは」
「帝は禅譲、じゃないわね」
 同じ劉氏だからだ。そうはならなかった。
「位を譲って頂くのよ」
「そして義姉上がこれからは」
「この国を平和に治めていくわ」
「では及ばずながら私も」
 関羽はすぐにだ。右手の平に左手の拳を合わせて言ってきた。
「義姉上の為に」
「鈴々もなのだ」
 何時の間にか張飛も来た。そのうえでだ。
 劉備に対して誓う。そうして三人でだ。
 杯を合わせ誓い合うのだった。これからも民と国の為に働くことを。
 その宴を遠くから見ながらだ。華陀はだ。
 微笑を浮かべてだ。こう貂蝉と卑弥呼に話した。彼女達も華陀と共にいるのだ。
「これでこの世界はだな」
「ええ、救われたわ」
「そしてあちらの世界もね」
「テリーやリョウ達の世界もだな」
 華陀は彼等の世界が救われたこともだ。実感して微笑んでいた。
「二つの世界が救われたな」
「その通りよ」
「一件落着よ」
「しかしだな」
 だがそれでもだとだ。華陀はここで顔を引き締めさせた。
「それでも他の世界はか」
「于吉や左慈は滅んではいないわ」
「彼等の魂は不滅よ」
 あの二人の話をするのだった。
「肉体は滅んでもその魂はね」
「例え何があっても滅ばないから」
「そうだな。そうした意味で戦いはな」
「終わらないわ」
「あたし達の戦いはね」
「わかった」
 二人の話を聞きだ。華陀は今度は。
 確かな顔で頷きだ。そして言うのだった。
「なら俺も行こう」
「ダーリンと一緒なら例えどの世界に行ってもね」
「戦い抜けるわよ」
 怪物達は身体をくねくねとさせてきた。
「あたし達も生涯の伴侶を得たのね」
「こんなことになるなんて。この世界に来てよかったわ」
「ああ、全くだ」
 その通りだとだ。華陀も二人に微笑んで応える。
「俺は二人と会う運命だったんだな」
「そしてね。あらゆる世界を護って戦う」
「並行世界の管理者になる運命だったのよ」
「ならだ」
 二人の話を聞いてだ。微笑みのまま言う華陀だった。
「俺達は登るんだな」
「そうよ、永遠に登るのよ」
「果てがあるかどうかわからないけれど」
 だがそれでもだとだ。二人も応える。
「あたし達三人で登りましょう」
「諦めることなくね」
 その彼等が言っていく。
「この果てしない坂を」
「今登りはじめましょう」
 何時の間にかだ。三人の前には石畳の坂道が出て来ていた。それは蛇の様にうねり上に続いている。果たして何処まであるのか。先は見えなくなっている。
 だが彼等はその坂道に今足を踏み出した。そしてだった。
「俺達は今登りはじめたんだな」
「そう、今ね」
「ようやくはじまったのよ」
 こう話してだった。
「あたし達の果てしない坂が」
「漢坂がね」
「最後まで登ってやる!」
 華陀は駆けはじめた。その坂道を。
「俺達はまだ登りはじめただけだがな。この果てしない漢坂を」
「ええ、それでも最後の最後にはね」
「頂点に辿り着いてやる!その果てに!」
 こう言ってだ。彼等は漢坂を登るのだった。長い戦いが終わり彼等は今彼等の道を見つけ駆けだしたのである。


最終話   完


恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS   完


                         2012・1・20



無事に終戦。
美姫 「最後の最後でまたやってくれたけれどね」
まさか最後でやるとは思わなかったけれどな。
美姫 「何はともあれ、この世界は平和を手に入れたのね」
だな。完結おめでとうございます。
美姫 「投稿してくださり、ありがとうございました」
ありがとうございます。



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