『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』




                                第百二十七話  華雄、よい水着を着るのこと

 劉備はだ。孫策に困った顔で言った。
「あの、ちょっとね」
「んっ、どうしたの?」
「水着のことだけれど」
 彼女も他の面々と同じくだ。泳ぎに行くのだ。それで今孫策に言うのである。
「ちょっと。なくて」
「水着がないの?」
「そうなの。胸が」
 その自分の胸を見ての言葉だった。
「大きくて入らなくて」
「確かに凄いわね」
 孫策もだ。その劉備の胸を見て言った。
「また大きくなったんじゃないの?」
「この前までは入ったのに」
「この前まではなのね」
「今はもう」
 劉備は今も自分の胸を見ている。それは確かにかなりのものだ。
 それを二人で見てだ。話していくのだった。
「水着、どうしよう」
「そうね。ワンピースはかなりサイズを選ぶみたいだし」
「そうなの。ワンピースを探したけれど」
「それならよ。ビキニね」
 それしかないと。孫策は言った。
「それしかないわね」
「ビキニなのね」
「それにしたらどうかしら」
「ううん、それはちょっと」
 ビキニと言われてだ。劉備はさらに困った顔になった。その彼女の表情を見てだ。孫策は察したのだった。
 そのうえでだ。劉備にこう話したのである。
「あれね。お腹ね」
「えっ、わかるの!?」
「だって。劉備いつもお腹を見るから」
 それでわかるとだ。孫策はくすりと笑って述べる。
「それでね。わかるのよ」
「うう、孫策さんって鋭いのね」
「確かに。勘には自信があるわ」
「それでだったの」
「まあ劉備のお腹はね」
 孫策はその劉備の服に覆われた腹を見ながら話す。その下には奇麗な脚がある。
「気にする程じゃないから」
「そうなの?けれど」
「大丈夫よ」
 孫策はまたくすりと笑ってみせて答えた。
「全然出てないから。それよりもね」
「お腹よりもって?」
「肩、凝らないの?」
 こう劉備に問うたのである。
「胸が大きいと方が凝るって。冥琳が言ってるけれど」
「ええと。それは別に」
「ないのね、それは」
「胸が大きいと肩が凝るの?」
「冥琳が言ってるわ。だからいつも注意してるって」
 具体的には肩の運動なりをしているというのだ。
「さもないとすぐに凝るからって」
「そんなことがあるのね」
「けれど劉備はそんなことないの」
「特に」
 少しきょとんとした顔で話す劉備だった。
「そうなんだ。胸って大きいと」
「肩が凝るみたいね。私はそこまで大きくないから」
 孫策は自分の胸を見る。確かに大きくいい形だ。だが劉備程ではない。
 それでだ。こう言ったのである。
「劉備は確かにね。大きいわね」
「ううん、本当に入る水着ないかしら」
 彼女にしてみれば切実な話だった。そうした話の後でだ。
 劉備は関羽と張飛を連れて水着を買いに店に入った。そのうえでだ。
 ビキニのコーナーに行き水着を選ぶ。張飛がその劉備に言う。
「お義姉ちゃんの水着は中々ないのだ?」
「そうだな。私もそうだが」
 見れば関羽も水着を選んでいる。二人でそうしているのだ。
 そのうえでだ。関羽は難しい顔で劉備に尋ねた。
「それで見つかりましたか?」
「ううん、それがちょっと」
 困った顔で応える劉備だった。
「いいのがないけれど」
「これはどうでしょうか」
 ここでだ。関羽はある水着を出してきた。それは桃色のビキニだった。
 それを劉備に出してだ。そのうえで言うのである。
「義姉上にも似合いますが」
「桃色?」
「はい、どうでしょうか」
「ううんと。それじゃあ試着してみるね」
 劉備も関羽の言葉に頷きだ。そのうえでだ。
 桃色の、そのビキニを受け取って試着室に入る。そうして出て来るとだ。
 下の方が左右で紐になっている。その紐ビキニ。わりかし面積の少ないそれを着てみせて妹達に対して見せてみるのだった。
 それを見てだ。関羽はにこりと笑って義姉に答えた。
「よく似合っています」
「そう?似合ってるの?」
「はい、いいかと」
 こう義姉に答えるのである。
「ではそれに決められますか」
「そうね。それじゃあ」
「ねえ、これどう?」
 劉備が関羽の言葉に頷きかけるとだ。ここでだ。
 劉備のいる試着室の横からだ。張角が出て来た。彼女は橙色のビキニ、デザインは劉備と同じだった。そのビキニ姿で出て来てだ。
 そのうえでだ。何時の間にかいる妹達に話すのだった。
「このビキニ似合ってる?」
「あれっ、姉さんが二人!?」
「増えたのね」
 張梁と張宝がその姉を見て言う。
「そんな筈がないから」
「劉備さんなのね」
「あっ、何時の間に」
「張角ちゃんいたの」
 本人達もだ。御互いに見合って話す。
「ううんと。何か水着の色だけで」
「他はそっくりだけれど」
「声以外は全部同じなのだ」
 張飛も二人を見て困った顔になる。
「時々テリー達が色違いになるけれどそのままなのだ」
「何か違うわよね」
「そうね。私達ってスタイルまでそっくりなのよね」
「ううんと。じゃあ張角ちゃんもお腹が?」
「実はそうなのよ」
 自然とだ。話題はそこに至った。
 それでだ。今度は御互いの腹を見て話すのだった。
「それでワンピースにしたかったけれど」
「胸が大き過ぎてね」
「そうそう、胸が大きいとワンピースって入りにくいわよね」
「そこが困るのよね」
 そんな二人の話を聞いてだ。張梁がだ。
 こっそりとだ。張飛に尋ねたのである。
「ねえ、こういう話わかる?」
「おっぱいの話なのだ?」
「そう。あたしこうした話は全然駄目だから」
「それは鈴々もなのだ」
 張飛はここでも困った顔になっている。
「おっぱいが大きい人間の気持ちはわからないのだ」
「っていうか羨ましい?」
「全くなのだ」
 これが二人の主張だった。そしてだ。
 そこに張宝も加わりだ。ぽつりとこう言ったのである。
「格差社会」
「そうよね。同じ姉妹でもね」
「不公平なのだ」
 二人も張宝の言葉に頷く。そしてだ。
 こうだ。彼女達は言うのだった。
「姉さんの胸って急に大きくなったのよ」
「桃香義姉ちゃんのおっぱいは最初に会った頃からなのだ」
「胸ってそもそもどうやって大きくなるのかしら」
「郭嘉も袁術も知りたがっているのだ」
「郭嘉殿は何故こうした話に絶対に入るのだ?」
 関羽は横で話を聞いていて首を捻った。
「それが不思議だが」
「中の関係ね」
 張宝がその関羽に話す。
「外はともかくとして」
「ううむ、それでなのか」
「そう。これは誰にでも言えるから」
 こう話すのだった。そうした話をしてだ。
 あらためて劉備と張角をだ。関羽は見て話すのだった。
「義姉上と張角殿にですが」
「うん、どうしたの?」
「何かあるの?」
「もう一つ水着があります」
 こう言ってだ。今度は赤と青のそれぞれのビキニを出してきたのだ。どちらもストライブになっている。そのもう一つの色は白である。
「この水着もどうでしょうか」
「有り難う。それじゃあ試着してみるね」
「そのストライブもね」
 二人は晴れやかな顔で関羽の言葉に頷きだ。そのうえでだ。
 また試着室に篭もる。そのすぐ後にだ。
 張梁がだ。こう関羽に言ってきた。
「関羽も水着選んでるのよね」
「そうだ。しかし中々サイズが合わなくてな」
「出た、ここでも格差社会ね」
 張梁はうわ、といった顔になって言った。
「全く。誰もが彼もが」
「けれど。水着を選ぶのなら」
「どの水着がいいだろうか」
「ワンピースが入らないのなら」
 それならばだと言う張宝だった。彼女も関羽を見ているのだ。
「ビキニしかないけれど」
「なら何がいいのだ」
「これ。どうかしら」
 張宝はすぐにだ。緑のビキニを出してきた。
 そしてだ。こう関羽に言ったのである。
「着てみる?このビキニ」
「むっ、露出はそれ程多くはないな」
「関羽さんの性格考えて大人しめにしたの」
 そうした水着を選んだというのだ。
「それでどうかしら」
「済まない。では着てみる」
「それじゃあ」
 関羽も試着室に入る。そして出て来るとだ。
 脚も腹も露わになりだ。見事な胸と腰を緑の水着に包んで見せている。その彼女を見てだ。張宝はぽつりとこんなことを言った。
「露出の少なめなのを選んだけれど」
「胸はちきれそうだけれど」
「お尻も凄いのだ」
 張梁と張角が言った。見れば関羽の胸は水着から出そうになっていて見事な尻のラインが露わになっている。
 それを見てだ。彼女達は言うのだった。
「関羽さんってスタイルがよ過ぎるのね」
「っていうかこれはもう暴力でしょ」
「男が見たら鼻血ものなのだ」
「そ、そこまで凄いのか!?」
 三人に同時に言われてだ。関羽もその顔を真っ赤にさせる。
「私の水着は」
「腰の辺りに布を巻かないと刺激が強過ぎるわ」
「そう、同じ色の布持って来るからね」
「お姉ちゃん達にもそうするのだ」
「ううむ。水着というものも困ったものだ」
 実際に困った顔になり言う関羽だった。
「私のスタイルはそこまでいいのか」
「だから暴力だっていうのよ」
「正直羨ましいのだ」
 そうした話をしてだ。そのうえで劉備達の水着姿をまた見てだった。
 彼女達も水着を選んだのである。しかしだ。
 そうしたことに興味のない者達もいた。八神はだ。
 虎を相手に闘っている。それが彼の訓練だ。
 その爪で虎に攻撃を浴びせながらだ。彼は言うのだった。
「次に来る連中はだ」
「どうするっていうんだ?」
「殺す」
 こうだ。彼のその訓練を見ている草薙に話すのである。
「オロチだろうがアッシュだろうが俺の敵ならだ」
「そうか。そしてその後だな」
「貴様もだ」
 草薙を横目で見つつの言葉だった。
「最後に貴様だ」
「そうだな。俺も楽しみにしてるからな」
「俺に殺されることをか」
「いや、違う」
 草薙は壁に背をもたれかけさせている。そのうえで腕を組んでいる。そうしてそのうえでだ。八神と話をしているのである。
 その草薙がだ。八神に言ったのである。
「御前と闘うことをな」
「俺を殺すか」
「そうされたいのか?」
「俺にとって闘いはそうしたものだ」
 殺すか殺されるか、そうしたものだというのだ。
「だからだ。そうするのだ」
「そうか。じゃあ俺はな」
「どうだっていうんだ?」
「その御前とずっと闘ってやるさ」
 不敵な笑みを浮かべてだ。草薙は言ったのである。
「そうしてやるさ」
「そうか。ずっとか」
「ああ。若し向こうの世界に戻れてもな」
「安心しろ。俺はどの世界でも変わらない」
「そうだな。御前はそうした奴じゃないな」
「貴様は。この世界でも闘うことになれば殺す」
 この考えは変わらなかった。普遍であった。
「それは言っておこう」
「そうか」
「オロチの奴等も同じだ」
 八神はオロチ達についても話すのだった。今も虎とは闘っている。その虎に対して五分と五分の闘いを繰り広げているのだ。
「奴等とはここで完全にだ」
「決着をつけるか」
「そうする。まずは奴等だ」
「俺も奴等とは決着をつけるぜ」
 草薙の目が強く光った。
「絶対にな」
「言っておく。俺の炎は確かに青い」
「それでもなんだな」
「だが俺の炎はオロチの炎ではない」
 八神は今は炎を出さない。しかしそれでも言うのである。
「俺の炎だ」
「そうだな。じゃあその炎でな」
「奴等も貴様も倒す。そうする」
「でだ。その虎はもう解放してやれ」
 不意にだ。草薙はこう八神に言った。
「もうそろそろへとへとになってるぜ」
「ふむ。確かにな」
 草薙に言われてだ。八神もそのことに気付いた。
「ではいい。俺はこれでな」
 虎2背を向けた。その虎にだ。
「止めるとしよう」
「休憩か」
「肉でも食う」
 虎に背を向けたままでの言葉だった。虎は彼の背を見ても動かない。疲れと八神の出す剣呑なプレッシャーに気圧されてである。
「そうする」
「ここでも肉なんだな」
「何かあったな」
「豚にするかい?牛にするかい?」
「牛だ」
 その肉だというのだ。
「それを食う」
「そうか。じゃあ俺もだな」
 草薙は壁から背を離した。そしてだ。
 身体を大きく伸ばしてだ。こう言ったのである。
「ちょっと食うか」
「魚か」
「ああ、焼き魚な」
 彼の好物のだ。それだというのだ。
「それにするさ」
「相変わらずだな。魚ばかりだな」
「そういう御前は肉だな」
「好きだからだ」
 異論は許さないという口調だった。
「それにしている」
「俺もだ。で、泳ぐのはどうするんだ?」
「泳ぐことも嫌いではない」
 八神はこう草薙に返した。
「これでいいか」
「ああ。じゃあその時にな」
「まずは食うことだな」
「お互いにな」
 二人は今は闘わない。しかしそれでもだった。 
 何時か闘うことを考えながらだ。今は別れるのだった。
 その昼にだ。草薙が厨房に入るとだ。孔明にこう言われた。そこには彼女と鳳統がいて丁度そこで料理を作っていたのである。
「あっ、丁度できましたよ」
「お昼が」
「そうなのか」
 二人に言われてだ。草薙はまずは明るい顔になった。
 そのうえでだ。こう彼女達に問うたのである。
「で、今日の昼は何なんだ?」
「焼き魚です」
「それと八宝菜です」
「どんぴしゃだな」
 焼き魚と聞いて笑みを浮かべる草薙だった。
 そしてだ。二人に言うのだった。
「じゃあ八宝菜と一緒にな」
「はい、食べましょう」
「今いる皆さんも御呼びして」
「誰がいた?今ここに」
 今彼等は劉備の屋敷にいる。だが他の面々はというとだった。
 見当たらない。それで草薙は今こう言ったのである。
「俺達と八神以外には」
「あれっ、八神さんおられたんですか」
「御屋敷に」
「さっきまでな。ただ今いるかどうかはな」
 それはわからないというのだ。しかしだ。
 草薙は二人にだ。こう言ったのである。
「じゃあ呼ぶかい?今」
「はい、お願いします」
「食べるのなら多い方が楽しいですし」
「わかった。ただあいつはな」
「お魚よりもお肉ですよね」
「そちらでしたね」
「ああ、あいつはそっちだからな」
 そのことは話しておくのだった。八神のその嗜好はだ。
「だから呼ぶにしたらな」
「じゃあ今からお肉も焼く?」
「そうする?」
 料理担当の二人はこう話をはじめた。
「丁度牛肉もあるし」
「それならね」
 二人が顔を寄せ合って話をしているとだ。ここでだ。
 その八神が厨房に来た。そのうえで言うのだった。
「ふん、別れたばかりだったがな」
「また会ったな」
「あの連中と同じだな」
 見ればだ。厨房にもう一組来た。覇王丸と幻十郎だ。  
 その二人もだ。お互いに見合っていた。
「全く。昼にこうして一緒とはな」
「因果なものだな」
「それで何だ?昼から飲むのか?」
「貴様もそうするのか」
 こんな話をしながら卓につく二人だった。その二人を見てだ。
 孔明は鳳統にだ。こう話した。
「覇王丸さんと幻十郎さんは飲んでおられるからおつまみでいいわよね」
「干し魚をお出ししてね」
「そうね。それでいこう」
「あの人達は」
「ああ、ちょっといいか?」
 二人が話をしているとだ。ここでだ。
 その覇王丸が彼女達に顔を向けてだ。こう言うのだった。
「つまみ何かないか?」
「食えるものなら何でもいい」
 幻十郎も言う。
「それで何かあるか?」
「飯は既に食ってきた」
「二人でかよ」
 草薙がここでその二人に言った。
「もう食ったのかよ」
「ああ、まさかこいつと一緒の席になるとは思わなかったがな」
「不本意だがな」
 それでもだ。二人で昼食を採ったというのだ。
「ラーメン食ってきたぜ」
「それでここでは飲む」
「わかりました。それじゃあ」
「干し魚お出しします」
 軍師二人はこう覇王丸と幻十郎に返す。二人はそのまま飲む。
 その二人を見ながらだ。八神は孔明と鳳統に対してこう言った。
「俺はだ」
「はい、お肉ですね」
「牛肉今から焼きますね」
「わかった」
 二人の言葉に応えて頷く八神だった。そうしてだ。
 そのうえで彼も食卓に着く。草薙の前の席にだ。
 八神がそうするのを見てだ。孔明と鳳統は顔を強張らせて話をした。
「はわわ、御二人が一緒におられると」
「何かもうそれだけで」
「何が起こるかって思えて」
「怖くて」
「いや、大丈夫だろう」
「そのことはだ」
 その二人にだ。覇王丸と幻十郎が話す。
「そうじゃなければ一緒にいないさ」
「この場にな」
「そうなんですか?」
「じゃあ八神さんは今は闘うおつもりはないからここに来られたんですか」
「俺も常に闘っている訳ではない」
 こうだ。八神も二人に言う。
「そのことを言っておく」
「だったらいいのですが」
「本当にですよね」
「俺が嘘を言ったことがあるか」
 このことをだ。八神は二人に問うた。
「それはどうか」
「それはないですね」
「八神さんは確かに怖い方ですが」
 鳳統は何気に失言もしてしまった。
「それでも。嘘は吐かれませんね」
「そうしたことはしませんね」
「嘘を言って何になる」
 八神の生き方の中ではだ。嘘には何の意味もなかった。
「俺は俺だ。それ以外の何でもないのだからな」
「だからなんですか」
「八神さんは嘘は吐かれないのですね」
「自分を偽る趣味はない」
 また言う八神だった。
「俺の中にはそうしたものはない」
「確かに。八神さんはそうした方ですね」
「それならですね」
「今はこいつとは闘わない」
 草薙も見て言うのである。
「肉を食う。それだけだ」
「わかりました。じゃあお野菜もありますから」
「それも食べて下さいね」
 二人もここでようやくだ。明るい笑顔になりだ。
 そのうえで八神に応える。そうして肉を焼いてだ。
 彼に出す。それを食べて彼は言うのだった。
「ふむ。美味いな」
「はい、有り難うございます」
「そう言って頂いて何よりです」
「ではだ。飯もあるな」
 八神は今度は主食の話もした。
「それもあるな」
「はい、ではそれもです」
「出しますので」
「食い。そしてだ」
 そのうえでだとだ。八神は話していく。
「今は音楽でもしよう」
「ああ、あんた音楽好きだよな」
 覇王丸は八神の音楽の趣味について話す、
「それじゃあ食った後はそれか」
「聴きたいなら聴くといい」
 無理強いはしないのも八神の主義だった。
「ではだ。食ったらだ」
「じゃあ俺は寝るか」
 草薙は気楽にそれに入るというのだった。
「そして起きたら作詞でもするか」
「これが意外よね」
「そうよね」 
 孔明と鳳統はここで言う。
「草薙さんが詩人っていうのは」
「最初は思いも寄らなかったけれど」
「漢詩も書かれるし」
「感性が豊かな人なのね」
「俺も風流は嫌いではない」
 幻十郎も話に加わってきた。
「花を見ることもな」
「それで花札もですか」
「あれも御好きなんですね」
「下らぬ世の中だ」
 幻十郎もだ。自分の哲学を述べる。哲学を言っているつもりはないがだ。
「だから酒を飲み煙草を吸いだ」
「あれ煙草ですか?」
「怪しいお薬じゃないですよね」
 二人は何となく気付いていた。彼がいつも吸っているそのものについて。
「御禁制のお薬、吸われてたんですよね」
「ですからあれは」
「安心しろ。他の者に勧めるつもりもない」
 余計に話が怪しくなる。尚このことも意識してはいない。
「だがそれに博打に遊郭もだ」
「そうしたこと全てがですか」
「幻十郎さんにとっては風流なんですか」
「風流。風狂と言うか」
 飲みながらだ。幻十郎は話していく。
「そうしたものだな」
「ううん、私達にはよくわからないですけれど」
「そうしたことは」
「わからなくて困るものでもない」
 そうしたものでもないというのだ。
「ではだ」
「ううんと、風流ではなく風狂なんですか」
「幻十郎さんのそれは」
「そうだろうな。ではこれからもこの下らぬ世で」
 何をするかというと。
「風狂に生きるとしよう」
「じゃあ俺は剣と酒に生きるか」
 覇王丸は酒に酔った赤い顔で話す。
「そしてだな」
「はい、お静さんのことはです」
「絶対に果たして下さい」
 孔明と鳳統はこのことには必死の顔で覇王丸に言う。
「幾ら何でも剣の為に愛は捨てないで下さい」
「それはあまりにも悲しいです」
「そうだな。あの猫耳の娘にもかなり言われてるしな」
 覇王丸はここで少し困った笑顔も見せる。
「元の世界に帰ったらお静ともな」
「頑張って下さいね」
「そのことは」
 こうだ。孔明と鳳統は覇王丸に強く言うのだった。食堂においてもだ。戦士達はそれぞれの生き方を語り合い時を過ごしていた。
 そしてだ。華雄はというと。
 彼女もまた水着を選んでいた。張遼も一緒だ。場所は服屋だ。
 その中でだ。華雄は眉を顰めさせて張遼に言っていた。
「困ったな。どうもな」
「ええ水着がないんか?」
「どうも最近目立てていない」
 自覚はあった。はっきりとだ。
「だからだ。いい水着を選びたいのだが」
「そうやな。うちもな」 
 華雄に言われてだ。張遼もだ。
 困った顔になりだ。こう言うのだった。
「ええ水着がないんや。これがな」
「これはどうかという水着があってもだ」
「これや、っていう水着はないんやなこれが」
「どうしたものか」
 困った顔のままでだ。華雄は言っていく。
「実は体型には自信がある」
「ああ、あんた身体の線ごっつうええで」
「だからそれなりのものを選びたいがだ」
「うちも胸には自信あるで」
 張遼はさらしに巻いているその胸を華雄に誇示して言う。
「これな。そやからどんな水着でもな」
「着こなせると思っているな」
「そやから余計に困るんや」
 両手の人差し指を合わせてだ。そして言うのだった。
「何を着たらええかな」
「全くだ。何がいいのだ」
 二人は今真剣に困っていた。
「何を着れば。どの水着がいい」
「悩むなあ。ほんま」
「あれっ、あんた達何してるの?」
 二人が困った顔でいるとだ。そこにだ。
 董白が来てだ。それで二人に声をかけてきた。
「水着選んでるの?」
「あっ、これは陽殿」
「水着選んでるんかいな」
「そうよ。私はもう決まったわ」
 微笑んでだ。董白は二人に話す。
「こっちはね」
「そうですか。しかし我々はです」
「これっちゅうのがなくて」
 二人は困った顔だった。ここでも。
「果たして何を着ればいいのか」
「二人で話してるんや」
「それだったら選んでもらったら?」
 董白は困った顔の二人にこう述べた。
「詠にでもね」
「詠がこの店にいるのですか?」
「あの娘もかいな」
「私も選んでもだったのよ」
 そのだ。賈駆にだというのだ。
「だからあんた達もそうしてもらったら?」
「そうですね。自分達で見ても埒が明かないのなら」
「他人に聞くのも手やな」
「ましてや詠は我等の軍師」
「そやったら適役やな」
「じゃあ話は決まりね」
 二人の話を聞いて董白は言った。そしてだ。
 後ろを向いてだ。彼女を呼ぶのだった。
「詠、いいかしら」
「何?もう一着選ぶの?」
「違うわ。華雄達にも選んで欲しいのよ」
 ありのままだ。賈駆に話すのである。
「だからね。ちょっと来て」
「わかったわ。今行くわ」
 こうしてだった。その賈駆が来た。見れば彼女は今は。
 黒のビキニだった。その水着姿で出て来てだ。そのうえで二人のところに来て言うのだった。
「ううんと。とりあえず霞はね」
 まずは張遼からだった。
「いつもお腹出してるし」
「そっからやねんな」
「ビキニでもいいわね」
 こう言うのだった。張遼の身体を上から下まで見ながら。
「それでどうかしら」
「ビキニかいな」
「そう、それも紫のビキニよ」
 色はそれだった。
「それでどうかしら」
「ほなそれで頼むわ」
 張遼もむべもなく応える。
「じゃあ紫のビキニやな」
「霞は紫が似合うのよ」
「いつも着てる袴とかも紫やさかいな」
「そう。だからね」
 そうしたものも見てのことだというのだ。
「紫のビキニ。これでどうかしら」
「それでええで」
 笑って言ってだ。張遼はよしとした。これで彼女については決まった。
 そのうえでだ。賈駆はだ。今度は華雄を見て言うのだった。
「じゃああんたは。ええと」
「そういえば私の真名はどうなっているのだ?」
 ここで華雄はふと言った。
「前から思っていたが私も知らないぞ」
「って本人が知らないって」
「そらないやろ」
 董白と張遼がその事実に突っ込みを入れる。
「普通誰にでも真名があるけれど」
「あんたないんか?」
「ある筈だが。どうなっているのだ?」
 腕を組みだ。言う華雄だった。
「私にもわからないのだ」
「そんなことがあるのね」
「けったいな話もあるもんや」
「そういえば劉備のところにも変な娘がいるわね」
 賈駆はふとだ。ある娘について気付いた。
「ええと?白馬が好きな」
「誰だ、それは」
「そんなんおったんかいな」
 その者については華雄も張遼も知らない。
「白馬というと目立つものだが」
「そやけど名前は知らんのかいな」
「包丁持ってたかしら」
 賈駆は腕も組んで話す。
「何か本当に誰かわからないのよ」
「ううむ、そうした者もいるのか?」
「影が薄いっちゅうのはわかるけれど」
「劉備のところにも目立つ面々ばかりだけれど」
 これは賈駆達についても言えることだった。
「それでも。具体的にはね」
「わからないのか」
「誰かっちゅうのは」
「そうよ。まあわからなくてもどうってことないみたいだし」
 賈駆もこう言うのだった。彼女については。
「で、話は戻してね」
「私も水着だな」
「華雄はスタイルいいから」
 それは賈駆も認めることだった。
「それがはっきりと出る水着にすればいいわね」
「そうか。では具体的にはどうした水着だ」
「ビキニもいいけれど」
「それよりもか」
「そう。将軍の場合は」
 華雄の身体を上から下までまじまじと見ながら話していく。
「そうね。競泳水着がいいかしら」
「競泳水着!?だがそれは」
「目立たないっていうの?」
「オーソドックスではないのか?」
 あちらの世界の面々に教えられた言葉を出す。実はスタイルやそうした言葉もそうだったりする。
「あまりにも」
「それがいいのよ」
「オーソドックスでもか?」
「だから。競泳水着はスタイルが完全に出るじゃない」
「そうだな。そういえばな」
「それがいいのよ」
 そのものズバリといった口調でだ。賈駆は言った。
「華雄のスタイルが出るからね」
「だからか。競泳水着か」
「そうよ。競泳水着よ」
 まさにそれだというのだ。
「わかったわね。それじゃあ」
「よし、わかった」
 華雄も頷きだ。そのうえでだった。
 彼女は賈駆が選んだだ。その競泳水着を試着してみた。それはダークパープルに所々白や青が入ったものだった。その水着姿で試着室を出るとだ。
 まずはだ。張遼が口笛を吹いてから言った。
「ええなあ、いけるで」
「そうか。似合っているか」
「結構以上にな。ええで」
 こう華雄に言うのである。
「やっぱりあんたスタイルええわ」
「そうか。似合っているなら何よりだ」
「それで何であの、何ていうたかな」
 張遼はあの男の名前をだ。何故か言ってしまった。
「ほら、北郷とか言ったあれや」
「何処かで聞いた名前だな」
「そうね」
 その名前を聞いてだ。華雄と賈駆も言う。
「しかし。こちらの世界には来ていない筈だ」
「とはいっても何処か別の世界で会った記憶はあるけれど」
「うちもや。まあとにかく華雄はあいつとは絡んでなかったな」
「その様だな。最後までな」
 自分で言う華雄だった。
「そうしたことはなかった」
「そやな。不思議なこっちゃ」
「だが。それでもか」
「ああ、あんたのスタイルはええで」
 そのことについては太鼓判を押す張遼だった。
「それで泳ぎに行ったら注目の的や」
「だといいのだがな」
 華雄も張遼のその言葉に笑みになる。そうしてだった。
 彼女は競泳水着に決めた。そのうえで店を出ようとする。しかしだ。
 ここでだ。彼等の前にだ。華陀が出て来たのだった。その彼と会いだ。賈駆は顔を曇らせて言った。
「まさかと思うけれど。あんたがいるってことは」
「あの二人か?」
「来てるの?このお店に」
「いや、二人は着ていない」
 そうだとだ。華陀は賈駆に話す。
「俺は泳がないが少しな」
「少しって?」
「店の店長に呼ばれて薬を渡しに着ていた」
「それでお店にいるの」
「そうだ。強精薬をな」
 それを届けに来たというのだ。
「店長に渡したんだ」
「強精薬って」
「蝮に大蒜にだ」
 華陀は微笑みその薬の成分を話しはじめる。
「すっぽんに高句麗人参だ。鰻も入れている」
「何か聞いただけで夜寝られなくなりそうね」
「凄いぞ。一粒飲んだら一晩眠らなくていい位だ」
 そこまでのものだと話す華陀だった。
「どうだ?あんた達も」
「別にいいわよ」
 困った顔で応える賈駆だった。
「僕別にそういうのいらないから」
「そうか。別にいいか」
「他のお薬が必要な時にお願いするわ」
 これが賈駆の返事だった。
「とにかく今はいいわ」
「わかった。それならな」
「ええ。それにしても華陀さんって」
「俺は?」
「確か百二十歳だったわね」
 あまりにも年長でだ。賈駆も彼をさん付けだった。
「そうだったわね」
「そうだ。それがどうかしたか?」
「若く見えるわね」
「いつも健康には気をつけているからな」
「いや、その限界超えてるから」
 これは誰が見てもそうだった。
「仙人じゃないの?実は」
「仙術もしている」
 実際にそうだというのである。
「あれも中々いいな」
「やっぱりそうだったのね」
「それじゃあそれでな」
「ええ、それでよね」
「薬が必要なら言ってくれ」
 医師としての言葉だった。
「その時はな」
「わかったわ。それじゃあね」
 こうした話をしてだった。賈駆達は華陀と別れた。そうしてだ。
 董白の屋敷に戻る。するとそこにだ。
 董卓がいてだ。笑顔で彼女達を迎えるのだった。
「お帰りなさい」
「あれっ、姉さん劉備さんのところにいたんじゃ」
 彼女のところでメイドをしている。実は賈駆もそうだったりする。二人は表向き死んだことになっているので劉備のところにいるのだ。
 しかしだ。それでもだったのだ。今董卓はここにいる。それで妹である董白が尋ねたのである。
「それでどうしてここに?」
「実は劉備さんが」
「あの人が?」
「そうなの」
 こう話すのだった。
「戻っていいって言ってくれて」
「じゃあこれからは」
「そう。私も詠ちゃんも」
 賈駆もだというのだ。
「二人共ね」
「このお屋敷に戻っていいのね」
「流石にまだ死んだことにはなってるけれど」
 それはまだだというのだ。
「それでもね」
「これからはまた一緒に」
「そう。暮らせるから」
 にこりと笑ってだ。妹達に話すのである。
「一緒にね」
「劉備さんに感謝しないとね」
 こうした話もあった。そしてだ。
 その劉備はだ。今はテリーにこう言われていた。
 屋敷の中でくつろいでいる彼女にだ。テリーは言ったのである。
「メイドさん達はあれでいいんだな」
「はい、ずっとここにいるままもです」
「何か召使いみたいで駄目っていうんだな」
「それに妹さんと離れ離れのままなのも」
 そうしたこともだとだ。劉備は仕事をしながら笑みを浮かべてテリーに話す。
「可哀想ですから」
「優しいな、相変わらず」
 劉備のその言葉を聞いてだ。テリーは微笑んで述べた。
「そうした優しい性格だからだな。あんたはここまで来れたんだな」
「優しいですか?私は」
「ああ、優しいさ」
 まさにそうだとだ。テリーはその微笑みで劉備にさらに話す。
「優し過ぎる位だよ」
「私は別に」
「ここの世界の娘達は皆優しいな」
 テリーも温かいになっている。
「あんまりにも優しいからかえって心配になる位だよ」
「優し過ぎるからですか」
「俺は父さんをギースに殺されて」
 過去の話をはじめる。テリーの幼い頃のだ。
「ずっとアンディとな。タン先生に育てられてきて」
「苦労されたんですね」
「タン先生もな。優しいんだよ」
 彼とアンディにとってはだ。かけがえのない存在なのだ。タンもまた。
「あの人がいてくれてどれだけよかったかな」
「確かに。タンさんも凄くいい人ですね」
「色々辛いこともあったさ」
 これまでの人生でだ。テリーは狼として生きそうしたことも味わっていた。
 それ故にだ。今劉備に話すのだった。
「それでも。アンディがいてタン先生がいて」
「他の方もいたからですか」
「俺はやっていけた」
「そうですね。あちらの世界の方も優しい方が多いですね」
「そうじゃない奴もいるけれどな」
 あからさまな悪人もだ。いるにはいるのは確かだった。
「けれど。確かに優しい奴が多いよな」
「そしてテリーさんもですね」
 他ならぬテリーにもだ。劉備は言うのだった。
「とても優しい方ですね」
「ははは、俺もか」
「皆さんから聞いています。そのことは」
「だったらいいんだけれどな」
「それと気になっていたことですが」
 ここでだ。劉備はテリーに尋ねた。
「テリーさんはギースさんとの闘いの後でギースさんを助けようとされましたよね」
「ああ、あの時だな」
 ギースタワーでの最後の決戦の時にだ。パワーゲイザーを受けて吹き飛びビルから落ちようとするギースを助けようとしたのだ。
 無意識に手が伸びた。その時の話だった。
「あれはな。当然だったな」
「当然だったのですか」
「ああ、俺にとってはな」
「狼だからですか?」
 劉備は首を少し右に傾げさせてから述べた。
「テリーさんは狼だからギースさんを」
「そうなるな。あいつは確かに父さんの仇だ」
 このことは否定できなかった。何があろうともだ。
「それに悪事を繰り返してきた。碌でもない奴だけれどな」
「それでもなんですね」
「本当に自然に手が出たんだよ」
 そうなったというのである。
「あの時はな」
「狼の優しさでしょうか」
 劉備は気付いた。テリーのその優しさは何かというと。
「テリーさんの優しさは」
「そうかもな。それでギースもな」
「ギースさんもですか」
「あいつは優しさはともかくとしてな」
「狼なんですね」
「ああ、あいつも狼なんだよ」
 そうだというのだ。ギースもまただ。
「クラウザーの奴もだけれどな。俺達は狼なんだよ」
「狼、誇りあるですね」
「そうした優しさなんだろうな。俺の優しさは」
 こう劉備に話すのだった。そうしてだった。
 劉備は今は微笑みだ。テリーに述べた。
「では泉では」
「ああ、楽しもうな」
 テリーはこのことにも笑顔で応える。劉備はテリーの優しさはどういったものかも知ったのである。


第百二十七話   完


                         2011・12・7



最終決戦の前にちょっと一息って感じだな。
美姫 「水着の回ね」
色んな水着が出てくる中、華雄にも久しぶりの出番が。
美姫 「何はともあれ、今回は戦闘シーンとは違ってのんびりとした気分ね」
しばしの骨休めを終えたら、緊迫した感じになりそうだしな。
美姫 「そうよね。次はどんなお話になるのか待ってますね」
待ってます。



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