『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』
第一話 関羽二人の少女と会うのこと
時は二世紀も終わり。この頃中国は戦乱の中に陥ろうとしていた。
長きに渡って繁栄を極めた漢王朝も衰え国中に賊が蔓延り群雄達が台頭しようとしてきていた。その中で今闇の勢力もまた胎動しようとしていた。
「はい、左様です」
「俺達がそうさ」
闇の中である者達が話をしていた。
「あんた達の探していた人間よ」
「まあ一応は人間だけれどね」
「左様ですか」
慇懃な声が四人の声に応えていた。
「貴方達がですね」
「その通りです。こちらの世界に参りました」
「まあ俺達はここで復活させればいいだけだしな」
「それはそれで面白そうだし」
「ここにも強い奴は一杯いるんだよね」
四人はそれぞれその慇懃な声に応えていた。
「その通りです」
「それは安心してくれ」
慇懃な声だけではなかった。もう一人いた。
「女性が殆どですが」
「強い奴には事欠かない世界だ」
「そうですか。それは何よりです」
「まずは力と力のぶつかり合いからだからな」
「それが私達の神を復活させるさらなる力になるから」
「好都合だからね」
こう話す四人だった。そして彼等はさらに言うのであった。
「それにです。私達だけではありません」
「といいますと」
「そちらの世界からも来るのか」
「はい」
四人を代表して一人が答えてきた。
「その通りです。大勢の方がこちらに来られます」
「どうやら。私達の思惑は気付かれているようですね」
「そうだな」
二人はそれぞれ言った。
「既に彼等には」
「隠したつもりだがな」
「いえいえ、それはそれでいいことです」
また四人の方から声がしてきた。
「あの方々の目の前で私達のことを成就させるだけですから」
「自信がおありなのですね」
「見たところ」
「無論です」
こう二人に答える彼だった。
「まずは私の風と」
「俺の大地」
「そして私の雷」
「僕の炎があるよ」
四人は実に楽しそうに話してきた。
「あちらもまず四神がいて」
「四仏もいるわね」
「そして三種の神器もね」
「ふむ。あちらの世界も面白いのですね」
「そうだな」
二人は四人の言葉を聞いて述べるのだった。
「そうしたものが存在しているとは」
「どうやら。面白い戦いになりそうだな」
「はい、楽しませてもらいます」
「是非な」
四人のうちの二人が応えてきた。
「これから思う存分」
「そうさせてもらうからな」
「じゃあこれで決まりね」
「面白おかしくやろう」
後の二人も言ってきた。
「この私の雷も退屈で仕方がなかったし」
「僕も暴れたくてうずうずしていたし」
「はい、それでは」
「楽しくやるとするか」
闇の中で何かが胎動していた。そして今中原に謎の影達が降り立った。それに気付いた者は今は誰もいはしなかった。
幽州。ここは漢の北の端にある。太守は公孫賛というが彼女のことを知る者はまるでいない。その?県において今一人の長い黒髪の少女が三人の賊と対峙していた。
「何だ、おい」
「やろうってのか!?俺達と」
「戦うのではない」
その長い黒髪の少女は毅然として言い返した。きりっとした端整な顔立ちをしており目が鋭くしかも強い光を放っている。黒いミニスカードにブラウンのハイソックス、それと白と緑の丈の長い上着を着ている。その手には巨大な青龍偃月刀がある。かなりの重さであると思われるがそれを軽々と持っている。
「倒すのだ」
「何っ!?」
「倒すっていうのかよ」
「そうだ」
またしても毅然とした言葉で返してみせた。
「御前達賊を倒す」
「この小娘」
「よく言ってくれるな」
「名前は何ていうんだ?」
一人が彼女に問うた。
「冥土の土産に聞いてやるぜ。何ていうんだ?」
「関羽」
少女はその問いに応えて名乗った。
「関羽雲長だ。これが私の名前だ」
「何っ、関羽!?」
「関羽っていうとまさか」
ここで賊達はある名前を思い出したのだった。
「あの山賊退治で有名な」
「黒髪の絶世の美女か」
「ふっ、私の名前も知られるようになったものだな」
関羽は彼等の言葉にまずは笑った。
「何時の間にか」
「噂程じゃないよな」
「なあ」
「なっ・・・・・・」
こう言われてずっこけた顔になった。
「聞いていたのと違うしな」
「そうだよな」
「違う?」
関羽は山賊達の今の言葉に今度は眉を顰めさせた。
「何がだというのだ?」
「いやよ、背は高いし」
「胸もでかいし」
そのかなり巨大な胸もしっかりと見られていた。
「おまけにその馬鹿でかい得物だしな」
「刀じゃないのか?」
「刀も使うが私の武器はあくまでこれだ」
その青龍偃月刀を持ちながらの言葉である。
「この青龍偃月刀だ」
「しかも鷹連れてないしな」
「噂と全然違うぞ」
「鷹?話が全然わからないのだが」
関羽にしてはさらにわからない話だった。
「御前達は一体何を言っているんだ?」
「だからよ。黒髪の山賊退治のな」
「違うのか?」
「だから何を言っている」
やはり関羽にはわからない話だった。
「それは私ではないのだな」
「噂が尾ひれがついたのか?」
「そうかもな」
「ここにいたのですね」
そしてだ。また一人出て来た。
黒く長い髪に澄んだ瞳をした美しい少女だ。小柄で細い身体をしている。白地に赤を配した着物に近い上着とズボンである。その右手には短い刀があり鷹を連れている。その少女も出て来たのである。
「貴方達にも大自然のお仕置きを」
「あっ、そうだよこいつだよ」
「こいつなんだよ」
ここで言う山賊達だった。
「こいつがその山賊退治のよ」
「黒髪の女なんだよ」
「私以外にもそうした武芸者がいたのか」
「ナコルルといいます」
少女は自分から関羽に名乗ってきた。
「貴女は」
「私か」
「はい、貴女は何というのでしょうか」
関羽の横に来て問うのだった。
「宜しければお名前よ」
「関羽だ」
こう名乗るのだった。
「字は雲長」
「何っ、関羽!?」
「雲長っていったら」
ここでまた言う山賊達だった。その言葉はかなり驚いたものである。
「この国でも指折りの武芸者の」
「あの女かよ」
「そうかも知れん」
ここではあえてこう言う関羽だった。
「そしてだ。私はその山賊退治のだ」
「関羽さん」
ナコルルが構えながら言ってきた。
「気をつけて下さい」
「わかっている」
彼女が何を言いたいのか関羽にもわかっていた。
「この三人だけではないな」
「百人はいます」
周りを軽快する鋭い声であった。
「周りに」
「そうだな。わかっているのだな」
「気配でわかります」
まさにそれによってというのだ。
「例え何も言わずともです」
「そうだな。それではだ」
「はい」
「ナコルルといったな」
ここで彼女の名前を再度確かめた。
「聞かない名前だが共に戦おう」
「御願いします」
「さあ来い!」
その得物を両手に構えながら山賊達に告げる。
「命が惜しくなければかかって来い!」
「ママハハ!」
ナコルルも今度は鷹に対して言う。
「戦いましょう」
「なろお、女だからって容赦しねえぞ!」
「やっちまえ!」
ここで周りから山賊達が一斉に出て来た。そのうえで二人に襲い掛かる。しかしであった。
「ふんっ!」
関羽がその青龍偃月刀を振り回しすぐに何人も吹き飛ばす。
「貴様等なぞ相手ではない!」
「アンヌムツベ!」
ナコルルは姿勢を低くして突進し刀を振るいそのうえで山賊達を吹き飛ばす。関羽はそれを見て言う。
「強いな」
「アイヌの精霊の力です」
こう関羽に返すのだった。
「ですから」
「そうか、精霊の力か」
「はい、そうです」
こう話してであった。鷹の力も使い倒していく。忽ちのうちに山賊達は蹴散らされ残っているのはあの三人だけになっていた。
しかしその三人もだ。瞬く間に蹴散らされ慌てて遁走してしまった。
「お、覚えてやがれ!」
「今度会った時は容赦しねえからな!」
こう言って逃げ去るのだった。森の中は再び静かになった。
二人だけになると共に歩きはじめた。関羽はここでようやく落ち着いてその少女ナコルルと話すのだった。
「日本!?」
「はい、その蝦夷の地から来ました」
ナコルルは関羽と共に歩きながらこう答えるのだった。
「そこからです」
「日本。蝦夷」
「そこから海を越えてあらゆる国を巡っていました」
こうも言うのであった。
「よからぬ気配が世に満ちているのを感じまして」
「そしてこの漢の国にも来たのか」
「ですが不思議なのです」
ここでナコルルは首を傾げさせて言うのだった。
「それが」
「不思議!?」
「はい、この時代は私がいた時代とは違います」
「!?どういうことなんだ?」
「わかりません。ですが私のいた時代はです」
ナコルルはそのことを話す。
「この時代より遥かに先の時代です」
「言っていることがよくわからないが」
だからといってナコルルが嘘をついているとは思えなかった。少なくとも彼女がそうしたことをするような人間でないことはわかった。しかしであった。
「しかし」
「どういったことでしょうか」
「それすらもわからない」
こう言うのだった。
「しかしここで会ったのは何かの縁だ」
「宜しくな、ナコルルとやら」
微笑んで彼女に告げた。
「これからな」
「はい、御願いします」
「では行くか」
「そうしましょう」
こうして二人は街に入った。そうするとだった。
門にいる衛兵達に声をかけられたのだった。
「待て」
「むっ!?」
「何ですか?」
「貴殿は確か」
関羽を見ての言葉だった。
「山賊退治の武芸者か?」
「ここでも言われたな」
「そうですね」
ナコルルと顔を見合わせて話す。
「この通り名はどうやらついて回るみたいだな」
「そうですね」
「それに」
衛兵はさらに言ってきた。
「二人だったのか。どちらも絶世の美女と聞いたが」
「そして」
「何でしょうか」
「ふむ、まあ噂通りだな」
二人を見ての言葉だった。
「美女なのは間違いないな」
「それはどうも」
「有り難うございます」
「しかし二人とはな」
衛兵はこのことに首を傾げさせるのだった。
「噂には尾鰭がつくものかそれとも事実とはまた違うのだな」
「それでは悪いが」
「通して頂けるでしょうか」
「ああ、いいぞ」
衛兵は気さくに返してきた。
「それじゃあな」
「わかった」
「それでは」
こうして二人は街に入った。するとその大通りで。
「どくのだどくのだ!」
ピンクがかった赤いショートヘアに八重歯が目立つ少女が豚に乗って駆けていた。その手には蛇矛がある。黒いスパッツに赤い上着を着ている。まだ幼い感じだが非常にはっきりとした可愛らしい顔をしている。
そしてだ。その周りには子供達がいつ。彼等は手に手に卵や野菜や肉を持っている。そのうえで威勢よく騒いでいた。
「鈴々山賊団のお通りなのだ!」
「どけどけ!」
「なっ、何だ!?」
「関羽さん、危ないです!」
ナコルルが慌てて関羽に言う。そうしてそのうえで二人は慌ててどいた。その横をその子供達が駆け去る。関羽はしゃがみ込んでしまっていた。
「な、何なんだ一体」
「子供達ですけれど」
「そうだな。それはわかるが」
「あの、それで」
ここでまた言ってきたナコルルだった。
「関羽さん」
「何だ?」
「見えてますけれど」
こう言うのである。見れば関羽のスカートがはだけてだ。白いショーツが丸見えになってしまっていた。
関羽もそれに気付いてだ。慌ててスカートをなおす。その顔は真っ赤になっていた。
「す、済まない」
「はい。じゃあまずは立って」
「そうだな。それでだが」
「それで?」
「貴殿金は持っているか?」
こうナコルルに問うのだった。
「路銀はだ。持っているか」
「あっ、はい」
ナコルルは彼女のその言葉に頷くのだった。
「あります」
「そうか。ならいい」
「路銀は笛を吹いて」
そうするというのである。
「それで貰っています」
「貴殿笛が吹けるのか」
「はい、これです」
言いながらその横笛を出してきた。そのうえで言うのであった。
「これを吹いてそれで」
「そうしているのか」
「関羽さんはどうして路銀を手に入れておられますか?」
「それはだな」
ここでバツの悪い顔になる関羽だった。
「店で働かせてもらったりしてだ」
「そうしてですか」
「そうだ。そうしていつも手に入れている」
そうしているというのである。
「それでだ」
「そうですか」
「しかし。笛か」
関羽は顔を上げて言った。
「いい感じだな。私も何かするか」
「何かありますか?」
「歌なら歌えるがな」
こう言うのだった。
「暫くはそうして路銀を手に入れるか」
「はい、そうしましょう」
こんな話をしながらそのうえで店に入った。こうして二人で食べてだ。路銀を稼いでそのうえで店の女主人に話を聞くのであった。
「ああ、あの娘達ね」
「そうだ。あれは何なのだ?」
「愚連隊ですか?」
「まあそういうところだね」
こう答える女主人だった。二人は今はラーメンに炒飯、それと水餃子を食べている。そういったものを食べながら話をするのだった。
「けれどね」
「けれど?」
「何かあるんですか?」
「前はああいう娘じゃなかったんだよ」
女主人が残念そうに首を捻って述べた。見れば恰幅がよく人のよさそうな感じである。その彼女が気さくな雰囲気で話をするのであった。
「昔はね」
「というと」
「どんな娘だったんですか?」
「やんちゃだったけれど素直な娘だったんだよ」
そうだったというのだ。
「けれどね。親が流行り病で死んでね」
「そうして孤児になったのか」
「それからは」
「ああいう風になったんだよ。鈴々山賊団なんて名乗ってそのうえでああして街で悪さをするようになってね。この前なんてねえ」
女主人の話は続く。
「県長さんのお屋敷の壁に派手に落書きをしてね。それで県長さん怒っちゃってね」
「県長さんが?」
「それで怒られたんですね」
「かなりね。それで怒ってね」
そう話すのだった。
「もう兵を集めて。そうしてね」
「それでどうなった?」
「兵を集めるなんて只事ではないですけれど」
「いや、捕まえて牢屋に放り込んでやるってカンカンなんだよ」
そうだというのだ。
「どうしたものかね」
「ううむ、それならだ」
「いいでしょうか」
関羽とナコルルは女主人に同時に言ってきた。
「私達に任せてくれないか」
「御願いします」
こう言ったところでお互いに気付いてだ。顔を見合わせて笑い合うのだった。
「どうやら同じだな」
「はい、一緒ですね」
そのうえでこう言い合った。
「それではおかみ」
「それでいいでしょうか」
「まあねえ。あの娘も悪い娘じゃないしね」
その娘をよくわかっていという言葉だった。
「穏健に済むならそれでいいよ」
「はい、それでは」
「そうさせてもらいます」
「よし、頼んだよ」
こう話してだった。二人で街を出る。その時にその少女の話も聞いた。
「名前は張飛っていってね」
「張飛か」
「それで字や」
「翼徳っていうんだよ」
字も聞いた。
「これでいいかい?」
「ああ、充分だ」
「それで」
こうして二人は彼女の名前も聞いてだ。そのうえで街を出た。そうしてそのうえで家に出てだ。二人はその張飛がいる山に向かった。
その張飛は今は自分の家でもあるアジトにいた。そこは洞窟を細工したものでありそれなりに快適になっていた。その広間で子供達と共にいた。
「ねえ親分」
「これっていいですよね」
「ゆで卵も」
「それに御芋も」
「あれっ、それでも」
ここでふと男の子の一人が言ってきた。
「何で御芋あるんですかね」
「ジャガイモと薩摩芋なんて」
「何であるんでしょうね」
他の子供達もふと気付いたのだった。
「この時代あったのかな」
「さあ」
「なかったんじゃ」
「細かいことはどうでもいいのだ」
しかし張飛はかなり強引にそれはいいとした。
「とにかく美味しいのだ」
「はい、そうですよね」
「この卵も鶏肉も」
「美味しいですよね」
「そうだ、美味しければそれでいいのだ」
それでいいとする張飛だった。
「それでとにかく皆で食べるのだ」
「はい、じゃあ」
「そうしましょう」
「それで親分」
女の子の一人が言ってきた。
「もうちょっとしたら夜ですから」
「私達それで帰ります」
「また明日」
「あっ、わかったのだ」
帰ると聞いて少しだけ寂しい顔を見せた張飛だった。
「それではまた明日なのだ」
「はい、親分」
「また明日」
食べて少しお喋りをしてから帰る彼等だった。張飛は彼等を見送りお互いに手を振って別れた。張飛は一人になると寂しい顔になり部屋に戻って寝た。
その次の日。関羽とナコルルは張飛にいる山に入った。しかしそれは既に。
「来たな」
「そうね」
「あいつ等、親分をやっつけに来たんだ」
子供達は二人を物陰から見ながらあれこれと話す。
「もう罠は仕掛けたよね」
「うん、落とし穴は作ったから」
「じゃあおいらは木の上に行くから」
「御願いね」
こんなことを話してそのうえでそれぞれ散る。そうしてだった。
関羽とナコルルがある大きな木の方に来る。ここでナコルルが言った。
「関羽さん」
「わかっている」
強い顔で応える関羽だった。
「いるな」
「はい、います」
そしてだった。ここで木の上から石が飛んで来た。二人はそれをそれぞれの得物で防ぐ。
「誰だ!」
「私達のことをわかってですね」
「親分のところになんか行かせるか!」
木の枝のところから子供の声が聞こえてきた。
「さっさと帰れ!」
「子供か」
関羽は子供の姿を認めて言った。
「そうか。あの山賊団の」
「そうだ。親分のところになんか行かせるか!」
男の子が懐に石を出して言ってきていた。
「帰れ!帰らないと酷いぞ!」
「そうか。ならだ」
「関羽さん、ここは任せて下さい」
関羽が得物をその得物を握ったところでナコルルが言ってきた。
「ママハハがいます」
「ママハハ!?あの鷹か」
「はい。ママハハ!」
早速彼に命じるのだった。
「あの子供を」
言うとすぐにであった。ママハハは子供に襲い掛かる。そのうえですぐに子供を吹き飛ばしたのであった。
「うわあっ!」
子供はそのまま石を落として地面に落ちようとする。だが寸前で何とか止まった。
「ふう、助かった」
「果たしてそうかな?」
しかしその後ろから関羽の声がしてきた。
「それは」
「えっ・・・・・・うわあっ!」
「お仕置きの時間だ」
そこには真っ黒な顔になって目を半月にさせている関羽がいた。子供はお尻を叩かれて懲らしめられた。二人はさらに先に進む。
今度は他の子供達がいた。その子供達が見るからに怪しい緑の草で何かを覆っている場所の前に立っていた。そのうえで言ってきていた。
「やーーーーい、おばさん!」
「貧乳!」
「悔しかったらここまでこーーーい!」
「やーーーいやーーーい」
「あのな」
その関羽が子供の囃しに顔を顰めさせながら返す。
「私はまだおばさんではないぞ」
「私そんなに胸小さいですか?」
「まあ気にするな」
ナコルルのフォローは入れた。
「とにかくだ」
「はい」
「行くとしよう」
「それでは」
関羽は緑の覆いの上を跳んだ。ナコルルはママハハに捉まって上を飛ぶ。しかしここで関羽は着地したところでまた子供達に言われるのだった。
「引っ掛かったね」
「そうだね」
「見事にね」
「何っ!?」
それを聞いていぶかしむ関羽だった。
「引っ掛かった!?私がか」
「そうだよ。あの小さいお姉ちゃんみたいに飛んでればよかったのに」
「残念だったね」
「一体何を言っているのだ?」
こう思った時だった。関羽の足元が落ちた。そうして。
「な、何っ!?」
「関羽さん!」
そのまま落ちる関羽だった。スカートの中の白いものを丸見えにさせて落ちる。穴の中ではさらに丸見えで全開になっていた。
「この関羽一生の不覚・・・・・・」
「引っ掛かった引っ掛かった!」
「ざまあ見ろ!」
子供達がここでさらに囃す。
「土かけてやれ!」
「おしっこだ!」
「こら待て!」
流石におしっこをかけられると聞いて尋常ではいられなかった。すぐに飛び出て反撃に出る。
子供達を捕まえてグリコに富士山にしっぺを浴びせて倒す。そのうえでさらに先に進むのであった。
「さて、行くか」
「大変でしたね」
「まあな」
土を払いながら横にいるナコルルに応える。
「それにしても」
「はい、いよいよですね」
「その張飛だ」
その彼女だというのである。
「いるな」
「奥にですね」
「そうだ。行くぞ」
こう話してそのうえで山の一番奥にいる。夕方になろうとしたところでそこに辿り着く。すると岩山になったそこの頂上に張飛がいるのであった。
「いたか」
「待っていたのだ」
張飛は関羽を見下ろしながら言ってきた。その手には蛇矛がある。
「御前が鈴々をやっつけに来たのだな」
「御前が鈴々山賊団の首領鈴々だな」
「真名で呼ぶななのだ!」
張飛はすぐにこう言ってきた。
「真名は親しい者同士でしか呼び合ってはならない名前なのだ」
「それは知っているが」
「なら呼ぶななのだ」
こう関羽に言うのだ。
「絶対に言うななのだ」
「それはわかった。では御前の名前は」
「張飛なのだ」
こう名乗ってきた。
「字は翼徳なのだ」
「そうか、張飛か」
「そうなのだ。御前は誰なのだ?」
「関羽」
まずは彼女が名乗った。
「関羽、字は雲長だ」
「関羽なのか」
「そうだ。覚えておくのだ」
「私はナコルルです」
続いてナコルルも名乗ってきた。
「宜しく御願いしますね」
「それでどちらが来るのだ?」
張飛は二人にさらに問うてきた。
「鈴々は別に二人でもいいのだ」
「関羽さん、どうしますか?」
「私が行く」
そうするというのである。
「それでいいな」
「わかりました、それでは」
「では行くぞ」
関羽は一歩前に出て言う。そのうえで張飛を見上げて告げた。
「張飛よ、いいな」
「わかったのだ。それではなのだ」
張飛はすぐに岩山を降りてきた。素早い動きで、まるでカモシカの如く岩山の上を駆け降りて来る。ナコルルはその動きを見て関羽に言ってきた。
「関羽さん」
「そうだな」
彼女が何を言いたいのかはもう察していた。
「できるな」
「はい、かなり」
「そういえば聞いたことがある」
ここで関羽はまた言った。
「この幽州に一人の腕の立つ幼い武芸者がいる」
「武芸者ですか」
「そうだ。蛇矛を持ち」
その得物についても話す。
「そしてその蛇矛で八百人の賊を一人で倒したそうだ」
「八百人をですか」
「そうだ。そしてその首領も倒した」
「全員ですね」
「その武芸者が山賊団の首領になっていたとはな」
「ではこの張飛さんは」
「そうだ。かなりの強さだ」
それを言うのであった。
「かなりのな」
「でしゃやっぱりここは」
「しかしだ」
それでもだというのだ。
「ここは私がやらせてもらう」
「いいのですか?それで」
「この関羽、戦いで敗れたことはない」
その巨大な刀を手にしての言葉だ。
「それを言っておく」
「では。私はここで」
「立会人になって欲しい」
「わかりました」
「さあ、来るのだ!」
張飛が関羽を蛇矛で指差しながら言ってきた。
「この張飛翼徳にやっつけられるのだ!」
「ではだ。行くぞ」
こうして二人は闘いに入った。彼等はそれぞれの武器で激しく打ち合う。
関羽が得物を振るうとだ。張飛はそれを蛇矛の刃で受けてみせた。
「何っ、今のを受けたのか」
「くっ、何て重さなのだ」
その一合の後でお互いに言い合う。
「どうやら噂通りだな」
「ここまで強い一撃ははじめてなのだ」
「それならだ」
ここでまた言う関羽だった。
「これはどうだ!」
「まだなのだ!」
関羽の振り被ってからの一閃も防いだのだった。それもだ。
「今度はこっちの番なのだ!」
「くっ!」
「受けるのだ!」
張飛は蛇矛から突きを次々に繰り出す。しかしそれは関羽の得物を巧みに動かす動きで全て防がれてしまうのであった。
「鈴々の突きを!?」
「これだけの突きも見たことがない」
関羽をもってしてもだった。
「強いな、間違いなく」
「御前何者なのだ?」
自分の会心の攻撃を全て防がれて驚きを隠せなかった。
「この鈴々の突きを防ぐなんて奴はいなかったのだ」
「御前もだ。これだけの攻撃を繰り出してもまた」
関羽はその彼女にまた言う。
「息が切れていないのか」
「鈴々の体力は底なしなのだ!」
まさにそうだというのである。
「この程度で負けないのだ!」
「ならばだ。私もだ!」
関羽も攻撃をさらに繰り出してきた。そのうえでさらに激しい応酬に入る。
そしてだ。その闘いは続きだ。何時しか夜になっていた。
だがまだ闘いは続く。二人の闘いはまさに龍虎の闘いだった。
既に数百合になっている。だが決着はつかない。
しかしその中でだ。関羽はふと言うのだった。
「惜しいな」
「惜しい!?」
「そうだ、惜しいな」
こう言うのである。
「それだけの腕を持ちながらやっていることはだ」
「何だというのだ?」
「山賊の真似事か」
言うのはこのことだった。
「これだけの腕を持っていれば天下すら動かすことも夢ではないというのにだ」
「五月蝿いのだ!」
張飛は関羽の今の言葉に感情を露わにさせてきた。
「鈴々だって好きでこんなことやっているわけではないのだ!」
「何っ!?」
「鈴々には家族がいないのだ。皆死んでしまったのだ」
「その様だな」
「家族は皆流行り病で死んでしまったのだ」
この時代ではよくあることだった。
「それからはずっとここにいるのだ。一人で」
「一人か」
「そうだ、一人なのだ」
言いながらもまだ攻撃を繰り出し続けている。
「けれど寂しくはないのだ。鈴々には多くの手下がいるのだ」
「同じだな」
だがここでこう言った関羽だった。
「御前もまた。同じだな」
「同じ!?」
「そうだ、同じだ」
こう言うのである。
「御前もまた私と同じだ」
「どういうことなのだ?それは」
「私にも家族はもういない」
「それは何故なのだ!?」
「賊に殺された。私が子供の頃にだ」
それが関羽の過去だった。
「兄上も全てだ。賊との戦いで殺された」
「そうだったのだ」
「私もです」
立ち会っているナコルルもここで口を開いた。
「私も。お父さんとお母さんは」
「御前もいないのだ!?」
「はい、流行り病で死にました」
まさにそうだというのである。
「今は妹と祖父母、そして動物達と一緒です」
「御前もそうだったのだ・・・・・・」
「そうです。一緒です」
ナコルルの言葉は続く。
「私達は一緒です」
「けれど鈴々は」
「悪戯をするのは寂しいからだな?」
関羽はここでまた言ってきた。
「そうだな」
「それは・・・・・・」
「もう止めろ」
また張飛に言った。
「そんなことは。そんなことをしても何にもなりはしない」
「けれど鈴々は」
また言いはした。
「それでも」
「県長のところになら一緒に行ってやる」
「私もです」
二人の言葉は優しいものになっていた。
「ですから。もう山賊は」
「・・・・・・・・・」
張飛の手が止まってしまった。
「わかったのだ。もう鈴々は」
「山賊はもう止めるのだな」
「もうしないのだ。ただ」
「ただ?」
「負けたのだ」
項垂れての言葉だった。
「勝負には負けてないけれど負けたのだ」
「では何に負けたのだ?」
「御前自身に負けたのだ」
こう関羽に言ったのである。
「だから。もう好きにするのだ」
「おい、だから私はだ」
ここでまた言う関羽だった。
「御前を捕まえるとかそういうのじゃない」
「県長に謝らせる為なのか?」
「そうだ。明日の朝麓で待っている」
時間と場所を告げた。
「そこで会おう」
「待つのだ」
しかしここで張飛は去ろうとする関羽とナコルルに言った。
「夜の山は危ないのだ」
「むっ!?」
「ここに泊まっていくといいのだ。二人でなのだ」
「ナコルル、どうする?」
「そうですね。ここは」
ナコルルはちらりとその張飛を見た。そして言うのだ。
「張飛さんの御言葉に甘えまして」
「そうさせてもらうか」
「はい、そうさせてもらいましょう」
こう話して今は張飛のアジトで休んだ。三人で簡単な食事を囲んだうえでまずはナコルルが風呂に入りだ。次は関羽が入るのであった。
「妙なことになったな」
つい風呂の中で言ったのだった。
「全く。どういうことなのだ」
「あっ、いたのだ」
ここでその張飛の声がしてきた。
「探したのだ」
「探した?」
「一緒に入るのだ」
見れば彼女は全裸だった。身体が幼い。
「では行くのだ」
こうしてすぐに飛び込んでいた。関羽がその湯を浴びてしまった。
「あっ、こら!」
「どうしたのだ?」
「飛び込む奴があるか!」
言うのはこのことだった。
「全く。何を考えているのだ」
「駄目なのだ?」
「駄目だ。マナーがあるだろう」
彼女が言うことはこのことだった。
「全く。御前と言う奴はだな」
湯舟の中で立って説教をする。しかしここで張飛はその彼女の身体をまじまじと見た。そうしてそのうえでこんなことを言ってきたのだった。
「関羽だったのだ?」
「そうだが」
「どうしたら関羽みたいに胸が大きくなるのだ?」
彼女が今言うのはこのことだった。
「そこまで大きな胸に。どうしてなれるのだ?」
「あっ、これか」
「そうだ。かなり大きいのだ」
確かに見事な巨乳である。少し動いただけでかなり揺れる。しかも張りもある。
「どうやったそこまでなれるのだ?鈴々の胸は小さいのだ」
「こ、これはだな」
「どうしたらなれるのだ?」
「大志を抱くのだ」
苦し紛れに胸を張って強弁した。
「そうすればなれるのだ」
「大志を抱く?」
「そうだ。それを胸に抱けばだ」
「鈴々も胸が大きくなれるのだ」
「そうだ。そういう説もある」
そういうことにした。これで何とか誤魔化した。
そして三人で寝ることにした。しかしここで。
「やっぱり鈴々の服じゃ小さいのだ」
「いや、別にいい」
関羽が張飛から借りた寝巻きは確かに小さかった。ナコルルはそうではなかったが。
「それはだ」
「いいのだ?」
「心遣い感謝する。では寝よう」
「はい、では私はこれで」
すぐに眠りに入るナコルルだった。
こうして二人きりになる。すると張飛は関羽に対して言ってきた。
「一緒に寝るのだ」
「だから同じ部屋にいるのだな」
「その通りだけれど違うのだ」
だがここでこう言ってきたのだった。
「一緒の布団で寝るのだ」
「同じ布団でか」
「そうなのだ。鈴々は負けたのだ」
こう彼女に言うのである。
「だから同じ布団で寝るのだ」
「おい、それは」
関羽は彼女のその言葉に困った顔で返して言った。
「誤解されるような言い方はするな」
「誤解?何がだ?」
「だからだ。勝負で負けたからといって同じ布団で寝なければいけないなどと」
「駄目なのだ?」
「駄目ではないが」
困った顔でまた言う。
「しかしだ」
「しかし?」
「言い方があるだろう。ナコルルが聞いたらどう思う」
「?悪いのだ」
「自分で考えることだ。だがいい」
関羽はここでこうも言った。
「寝るか」
「そうするのだ。それに」
「それに?」
「久し振りなのだ。こうして寝るのは」
「久し振り?」
「そうなのだ。一緒に寝るのはなのだ」
彼女が言うのはこのことだった。
「随分と久し振りなのだ」
「あの子供達はどうなのだ?」
「あいつ等は自分の家族がいるなのだ」
こう言うのだった。残念な顔になっているのが暗がりの中でも見える。
「だから鈴々はいつも一人だったのだ」
「そうか。一人か」
「けれど寂しくなんかないのだ」
一応こう強がりは言う。
「それでも今は」
「そうだな。同じ布団で寝よう」
「そうするのだ」
こうして二人で布団に入って眠りに入った。関羽は張飛のその安らかな寝顔を見て微笑んでから自分も心地よい眠りに入るのだった。
そして次の日に三人で県長のところに訪れて謝罪した。県長にしても確かに怒っていたがそれでも子供のしたことなので彼女を許した。
街の者達も彼女を快く許した。そのうえで山賊団は解散となった。そうしてだった。
「これからどうするつもりだ?」
関羽はこのことを張飛に問う。ナコルルも一緒である。
「それで一体」
「もう山賊団は解散したのだ」
彼女が最初に言うことはこのことだった。
「子分達ももういないのだ」
「そうだな。しかしまたあの山で暮らすのか?」
「それはもうしないのだ」
「ではこれからどうするつもりだ?」
「関羽はどうするのだ?」
「私か」
「そうだ。どうするのだ?」
このことを彼女に問うのであった。
「これからは」
「私は旅を続ける」
「私もです」
関羽だけでなくナコルルも答えてきた。
「これまでと同じだ」
「私にはやらないといけないことがありますし」
「やらなければいけないこと?」
「どうしてこの世界にいるのか」
ナコルルはこう張飛に述べた。
「それを確かめることも必要ですし」
「そうだったな。貴殿は他の時代から来たのだな」
「はい、そしておそらくは他の世界から」
このことも関羽に話すのだった。
「この世界に来ています」
「それが何故かだな」
「それを確かめないといけません。それに」
「それに?」
「禍々しい気配も感じます」
語るナコルルの顔が曇っていく。
「これは私達の世界にもあったものですが」
「同じものか」
「違う時代、違う世界にあったならそれはある筈はないものですが」
「そうだな。世界が違えば別の存在がいるのも道理だな」
関羽もナコルルのその言葉に頷いた。
「それで同じ気配を感じるというのは」
「普通はありません」
「それを確かめるのか」
「そして必要とあれば」
ナコルルの言葉が引き締まる。
「それを封印します」
「そうするのか」
「はい、その為に旅を続けます」
まさにそうするというのである。
「そうします」
「では私と一緒に来てくれるか」
関羽はここでナコルルを誘った。
「この御時世だ。貴殿も確かに腕が立つが一人より二人の方がいい」
「そうですね。それは確かに」
「だからだ。それでどうだ?」
またナコルルに声をかけた。
「私と一緒に。それでだ」
「そうですね。確かに」
ナコルルも彼女のその言葉に頷いた。
「関羽さんはこの世界の方ですしお詳しいですし」
「では共に行くか」
「はい、御願いします」
「それなら鈴々も一緒なのだ」
ここで張飛も言ってきた。
「鈴々も二人と一緒に行くのだ」
「一緒にか」
「私達と」
「そうなのだ。これでどうなのだ?」
「わかった、それならだ」
「御一緒に」
「それで関羽」
同行が認められてすぐに関羽に対して声をかけた。
「真名は何なのだ?」
「真名!?」
「そうなのだ。一緒に行くのなら親しい間柄なのだ」
「そうだな。共に行くのならな」
「そして姉妹になるのだ」
自分からいきなり言ってきた。
「だから真名で呼び合うのだ」
「おい、姉妹か」
「ナコルルもどうなのだ?」
しかもナコルルも誘ってきた。
「一緒に。どうなのだ?」
「私はもう妹がいますけれどいいですか?」
「いいのだ。遠慮することはないのだ」
彼女にも明るく言う。
「さあ、どうするのだ?」
「そうだな。これからずっと行くのならな」
「それで御願いします」
二人は微笑んで張飛の言葉に頷いた。これで決まりだった。
「ではだ。私の真名はだ」
「何というのだ?」
「愛紗だ」
微笑みはそのままだった。
「愛紗と呼んでくれ」
「わかったのだ」
「私はナコルルです。他の世界の人間なので真名はありません」
「それでは何と呼べばいいのだ?」
「ナコルルと。そのままで御願いします」
こう言うのであった。
「それで」
「わかったのだ。ではそう呼ぶのだ」
「はい、それで御願いします」
「では鈴々」
関羽も彼女の真名を呼んだ。
「行くか」
「そうするのだ」
こうして三人はまた旅立ちはじめた。そして山道を行くところでだ。不意に関羽が張飛に対して言ってきたのである。
「どうした?暗いな」
「そうなのだ?」
「そうだ、暗いぞ」
横にいる彼女に対しての言葉だ。
「迎えに来てくれなくて辛いか?」
「別にそれはないのだ」
こう言いはするが俯いている。それが証になってしまっていた。
「そんなことはないのだ」
「見ろ」
その彼女への言葉だ。
「上を見上げろ」
「上!?」
「そうだ。上だ」
こう言うのである。
「上を見上げろ。今だ」
「何かわからないけれどわかったのだ」
関羽がどうしてこう言うのかわからなかった。しかしであった。
その言葉に従い上を見上げた。すると。
「親分、行ってらっしゃい!」
「また会おうね!」
「元気でね!」
「皆・・・・・・」
皆いてそのうえで手を振っている。張飛はその皆の姿を見てだ。
目が滲んできた。だがここでまた関羽が言ってきた。
「人は別れの時の顔はずっと覚えているぞ」
「ずっと!?」
「そうだ。だから笑顔でいることだ」
そうしろというのだ。
「笑顔で今は別れるのだ。再会の時までな」
「わかったのだ」
関羽のその言葉に頷いた。
「それじゃあそうするのだ」
「では行きましょう」
ナコルルはもう笑顔になっていた。清らかな淀みなぞ全くない笑顔である。
「これから」
「そうするのだ。行くのだ」
張飛も笑顔になった。そのうえでかつての子分達に思いきり手を振り別れの挨拶とした。三人の少女達の旅と運命はここにはじまるのだった。
今時代は大きく動こうとしていた。様々な少女、美女、剣豪、猛者達がこの世界に集っていた。そしてそれは大きな運命のうねりの中に集うものであった。
第一話 完
2010・3・19
恋姫無双のお話を頂きました〜。
美姫 「しかも、ナコルルの登場」
何故、彼女がここに居るのか。
美姫 「ナコルルが語る事を聞いていると、色々と不吉そうな感じよね」
だよな。これからどうなっていくのか。
美姫 「次回も待っています」
ではでは。