『黄金バット』




             第六十九話  メンインブラック本物の勇気

 今奈良市の街頭で眼鏡をかけたとてつもなく卑しい人相の痩せたお年寄りが拡声器を使って必死に叫んでいます。
「日本を守れ!」
「外国人は出て行け!」
「鹿をいじめるな!」
「何だあの爺さん」
「差別ばかり言ってるな」
「日本を守れとか言って」
 心ある人はそのお年寄りを見て思いました。
「差別煽ってるだけだろ」
「最近政治家でもいるしな」
「あんな奴の言うことなんて聞くか」
「聞いたら駄目だろ」
 こう思ってその人のお話を聞いていません、見ればそこに大柄で太った鋭く嫌そうな光を放つ目を持つスーツの三十代の男が来てです。
 お年寄りと一緒に叫んでいます、奈良を守れとか鹿を守れとかも言っていますが。
「あいつまで出て来たよ」
「市会議員になって余計に酷くなってるな」
「他の都道府県のことにも首を突っ込んで」
「差別を煽って」
「本当に愛国なんだか」
 奈良の心ある人達はこの太った男にも眉を顰めさせました、ですがその街頭にいきなりまさにいきなりでした。
 メンインブラックが現れました、漆黒の魔人はその騒ぐ二人の真正面に姿を現すと腕を組んでこんなことを言いました。
「面白い、では私から奈良を守ってみせろ。さもなければこの街を粉微塵にする」
「ひ、ひいメンインブラックだ!」
「魔人だ!」
 ですが威勢のいい『愛国者』の彼等はです。
 奈良を壊すと宣言した魔人から背を向けて真っ先に逃げ出しました、前にいる人達にどけと喚いて文字通り我先にでした。
 逃げてしまいました、これには誰もが呆れました。
「何だあいつ等」
「日本を守れっていってあれか」
「結局向かえるのは弱い相手だけか」
「昔はタチの悪いいじめっ子だったっていうし」
「迷惑系だったしな」
「差別を煽っても」
「抵抗できない相手だけだったんだな」
 皆彼等の正体がわかりました、もうその姿は何処にも見えません。ですが魔人はまさに彼等の前にいるのです。
 それで皆武器はなくとも身構えました。
「俺達はあいつ等と違うぞ」
「この街は俺達の街だ」
「魔人が何だ」
「戦ってやる」
「そして退けてやる」
 こう言って魔人を囲みます、実は彼等の誰もがとても強い超能力を使う魔人に勝てると思っていません。ですがここで魔人をどうにかしないと愛する奈良の街が破壊されてしまうのです。
 だからこそ勇気を出して向かおうとします、ですが。
 魔人がいる場所のすぐ近くのビルの屋上からでした、突如として高笑いが起こりました。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「この笑い声は!」
「まさか!」
「黄金バットか!」
 誰もが思わず声がした方を見上げました、するとです。
 黄金バットがいました、正義の魔人は裏地が赤い黒のマントを風にたなびかせ両手を腰の横にやって胸を張り脚を開いて立っています、そうして高笑いをした後で。
 颯爽と街に舞い降りました、そうして両手の掌から次々と衝撃波を出す魔人の攻撃をひらひらと蝶の様に舞ってかわし。
 魔人に接近すると先が尖って端の方がダイアモンド型の黄金の宝玉になっている金色のステッキをフェシングの様に使ってです。
 メンインブラックを攻撃します、悪の魔人は遠距離攻撃から突然接近戦を挑まれ忽ちのうちに劣勢になりました。
 そして奈良の人達もです。
「黄金バットだけじゃない!」
「俺達もいるんだ!」
「俺達も戦うぞ!」
「黄金バット一緒に戦おう!」
 素手でも魔人相手でも構いませんでした、皆勇気を出してメンインブラックに向かいます、黄金バットだけでなく周りを勇気ある人達に囲まれ向かわれんとしている魔人はこれはもう駄目だと思いまして。
 苦々しいお顔になりそうして姿を消しました、こうして奈良の脅威は去りました。
「よし、やったぞ」
「魔人は去ったぞ」
「奈良の街は助かった」
「破戒されずに済んだ」
「俺達は勝った」
「魔人に勝ったんだ」
 皆心から喜びました、そうしてです。
 黄金バットが両手を前に出して何処かに飛び去っても手を振って見送りました、誰もが黄金バットに感謝して自分達の勇気を誇りに思いました。
 ですが我先に逃げ出した差別を煽る愛国の人達はです、そのとてもみっともない姿を皆に見られインターネットでも流されまして。
 これが愛国者様という差別主義者の正体なのだと皆に知れ渡ってしまいました、そうしてそれから誰にも相手にされなくなり悪事もどんどんばれて警察に捕まってしまいました。皆これで奈良の街が奇麗になったと喜びました。


黄金バット  第六十九話   完


                  2026・5・31








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