『黄金バット』
第六十五話 フー=マンチュー博士銀座の死闘
銀座の時計塔の上にでした。
フー=マンチュー博士が出てきました、博士は出て来るなり印を結んで何やら呪文を唱えました。するとです。
お空が急に暗くなって暗雲から巨大な真っ黒い龍が出てきました、黒龍はお空の上を飛びながら剣呑な目で銀座の街を睥睨しています。
その黒龍を見上げつつです、博士は言いました。
「この黒龍で銀座の街を破壊してやろう」
「何っ、この銀座の街をか」
「そんなことをするのか」
「それは大変だ」
「すぐに黒龍を倒すんだ」
「博士を何とかするんだ」
博士の言葉を聞いた人々は仰天しました、そうしてです。
すぐに自衛隊も警察も召集されそのうえで銀座の時計塔の前に集まりました。お空には飛行機やヘリコプターが沢山飛ぶ様になりました。
「黒龍を倒せ!」
「博士を何とかするぞ!」
「皆怖気付くな!」
「銀座の街を守るんだ!」
他には心ある人達も武器を手に戦おうとしています、ですが。
博士は悠然としています、早速人々の攻撃が来ましたが銃弾も投げられてくるものも不思議な結界を出して弾き返してしまいます。
黒龍も同じです、飛行機やヘリコプターからミサイルや機関砲で攻撃しても全く通じません。これには誰もが歯噛みしました。
「全く通じないぞ」
「何て結界だ」
「これは倒せないのか」
「若しかしたら銀座の街は」
「諸君等の力では私も黒龍も倒せない」
博士は歯噛みする人達に悠然としたまま告げました。
「今の人の力ではな」
「いや、出来る筈だ」
「絶対に」
「何かある筈だ」
「この世に無敵の存在があるものか」
「きっと倒せる筈だ」
誰もが博士の言葉を聞いても怯みませんでした、そして果敢に攻撃を続けようとします。ですがこの時銀座の暗い空にあの笑い声が木霊しました。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「その笑い声は!」
「まさか!」
「黄金バット!」
誰もが思いました、そしてその通りでした。
博士がいる時計塔の傍の建物の屋上に黄金バットがいました、黄金バットは両手を腰にやって裏地が赤い漆黒のマントをたなびかせ仁王立ちしています。
黄金バットは姿を現すと早速身体を左に捻りそのうえで右手の人差し指を前に突き出しました、そうしてです。
人差し指の先から黄色い光を放ちました、その光はそのまま黒龍の喉に当たりましたが人々はその喉を見てはっとなりました。
「そうだ、逆鱗だ」
「龍には弱点があった」
「逆鱗が弱点だ」
「逆鱗を攻撃されると弱いんだ」
「皆逆鱗を攻撃するんだ」
「そうしよう」
皆口々に言ってでした。
照準を合わせて黒龍の逆鱗を攻撃します、逆鱗は巨大な龍の身体のごく一部なので攻撃を命中させることは難しいですが。
数多くの攻撃のうちの一部が命中し龍は苦しみました、博士はその龍の様子を見て苦い顔になって言いました。
「これでは戦えないか、仕方ない」
「むっ、黒龍が消えたぞ」
「黒い雲の中に消えた」
「そして博士も消えた」
「煙の様に消えたぞ」
黒龍も龍を連れて来た博士も消えてしまいました、すると銀座の空を覆っていた暗雲が消え去ってでした。
青空になりました、明るい太陽の光が照らす中人々は龍の弱点を教えてくれた黄金バットを讃えました。
「黄金バット有り難う」
「龍の弱点を教えてくれて有り難う」
「今回も助けてくれて有り難う」
「感謝するよ」
口々に讃えます、ですが正義の魔人は彼等の言葉を静かに受けまして。
空の彼方に飛び去りました、人々はその黄金バットを讃え続けました。今回も自分達を助けてくれた正義の魔人を。
黄金バット 第六十五話 完
2025・9・28