『黄金バット』




              第六十二話  百人の黒バット

 今下関の街は大変なことになっていました。何とあの黒バットが何十人も街の中に出てきたのです。最初は市庁舎の一番上に出てきてそこから次から次にでした。
「フフフフフフフフフフフフ!!」
「うわっ、ここにも出て来たぞ!」
「ここにも黒バットが出たぞ!」
「こっちには来たら危ないぞ!」
「すぐに逃げるんだ!」
「さもないと超能力で攻撃されるぞ!」
 普段は平和な下関の街が大混乱に陥っています、黒バットが数えきれない程いて街のあちこちに立っているのですから。
 あっちに出てこっちに出てです、繁華街にもいれば車道にも住宅街にもいまして港にもいます。兎角です。
 あちこちにいて皆迂闊に何処かに行くことが出来なくなっています、今黒バット達は何もしてきませんが何しろ恐ろしい魔人です。近寄れば何をされるか全くわかりません。それでです。
 皆黒バット達に近寄らず警戒しています、ですが誰もがわかっていました。
「このままじゃ駄目だ」
「黒バット達の思うままだ」
「街を占領されるぞ」
「街を魔人に占領されていいのか」
「街を守るのは誰だ」
 皆思いました、そしてです。
 それぞれ街のあちこちにいる黒バット達に向かおうとしました、市長さんもお巡りさん達も消防署員の人達もです。
 皆立ち上がります、中学生や小学生の子達もです。男の子も女の子も竹刀やバット、箒まで持って立ち上がりました。
「僕だって闘うぞ!」
「私だって!」
「相手は魔人だ!」
「魔人なんかにやられるもんですか!」 
 口々に言って魔人に向かわんとしています、黒バット達は今は動いていませんが何時動くかわかったものではありません。本当に一触即発の状況になりました。 
 そんな中です、下関の一番高いビルの屋上からあの笑い声が聞こえてきました。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「その笑い声は!」
「まさか!」
 皆そのビルの屋上を見ました、するとです。
 そこに黄金バットがいました、黄金バットは裏地が真っ赤な漆黒のマントを風にたなびかせ両手を腰の横にやって仁王立ちし高らかに笑っています、皆その黄金バットを見ました。
 黄金バットは皆が注目する中でステッキを出しました、そのステッキの宝玉の部分を空高く掲げそこから空に向かって虹色に輝く光線を一直線に放つとです。
 空に忽ちのうちに雲が立ち込め雨が降りました、その雨は只の雨ではありませんでした。
「何と、虹色だ」
「虹色に輝く雨だ」
「七色に輝いているわ」
「何て奇麗な雨なの」
 皆その雨を見て驚きます、ですが驚くのはそれだけではありませんでした。
 雨を浴びた黒バット達は瞬く間に消えていきます、そして残ったのは最初に市庁舎に出て来た黒バットだけでした。
「まさかあの黒バットが本物で」
「残るは偽物だったのかしら」
「黄金バットは偽物を消す雨を降らせたのか」
「あの虹色の雨がそうだったの」
 下関の人達は思いました、そう考えている中で。
 二人の魔人、善悪に分かれた黄金の魔人と漆黒の魔人は空に舞い上がり空中でステッキを剣の様に振るって一騎打ちをはじめました。マントをたなびかせ舞い飛び激しく闘います。ですがやがて黄金バットの一撃が黒バットのステッキを真っ二つにしてしまい。
 闘えなくなった漆黒の魔人は忌々し気に間合いを取ってから黄金の魔人に背を向けて何処かへと飛び去っていきました。黄金バットは彼の姿が見えなくなってからです。
 彼も姿を消しました、その全てを見届けてです。下関の人達は自分達を救ってくれた正義の魔人達に感謝の言葉を言いました。
「黄金バット有り難う」
「私達を助けてくれて有り難う」
「この感謝の気持ち忘れないぞ」
「今回も有り難う」 
 口々にお礼を言います、そうしてでした。
 誰もが黄金バットを讃えました、正義の魔人は今回も多くの人達を助けました。下関の人達は皆何時までも魔人への感謝の気持ちを忘れませんでした。


黄金バット  第六十二話   完


                    2025・3・30








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る