『黄金バット』
第五十六話 巨大なアナコンダをどうする
世の中は恐ろしい魔人達がいて時折世を乱さんと動きます、それに災害もあれば不意に猛獣が暴れたりもします。
今がその時でした、アマゾンで何と全長二十五メートルもある巨大なアナコンダが発見されて日本の動物園で飼育され保護されることになってアマゾンからはるばる日本まで運ばれてきました、ですが動物園に入れられる直前にです。
何とアナコンダが入れていたトラックが横転してしまいそこからアナコンダが出てしまいました、そのアナコンダを見て誰もが驚きました。
「な、何て大きさなんだ」
「こんな大きな蛇がこの世にいるなんて」
「昔いたというティタノボアより大きくないか」
「こんな蛇に襲われたらひとたまりもないぞ」
「人間なんてそれこそ一呑みだ」
「乗用車だって押し潰されるぞ」
「家も尻尾の一撃で壊されるんじゃないか」
蛇を見て言うのでした。
「まるでバケモノだ」
「あんなバケモノどうすればいいんだ」
「何でもアマゾンで軍隊が部隊で出動して麻酔入りの銃弾を撃ち込みまくったらしいが」
「こちらも自衛隊が必要なんじゃないのか」
「自衛隊を呼ぶんだ」
「あれはもう怪獣だ」
「怪獣と言ってもいいぞ」
蛇は今はこれといって動いていません、至って大人しくトラックから出たところで動きません。トラックの運転手さん達が自分を見て這う這うの体で逃げ出したのも見ているだけでした。
ですがそれでも皆蛇があまりにも大きくしかも何時動き出すかわからないので戦々恐々としています、本当に人間なぞ一呑みで乗用車もお家もひとたまりもない様な大きさだからです。
それで自衛隊に即座に出動要請がかけられ千人以上の自衛官の人達が象用の麻酔入りの弾丸が入った銃を装備して急行しました、現場は大蛇が入る予定だった上野動物園のすぐ前です。
「大蛇はまだ動いていないな」
「とぐろを巻いているだけだ」
「アナコンダは基本大人しいからな」
「それに水の中の方が動きやすい生きものだ」
「だから道ではあまり動かないが」
「動きだしたら大変だぞ」
その時はというのです。
「早く何とかするんだ」
「動きだしたら何をするかわからないぞ」
「人間を襲うぞ」
「車や建物にも被害が出る」
「だから早く撃つんだ」
「麻酔入りの銃を撃つんだ」
「そして眠らせるんだ」
こう言って構えを取ります、ですが。自衛官の人達は思いました。
「稀少な巨大アナコンダだ」
「研究対象にもなる」
「それ以上にアナコンダは悪いことをしていない」
「ただそこにいるだけだ」
「そのアナコンダを痛めていいのか」
「撃てば怪我をするし最悪死んでしまう」
「何もしていない命を奪っていいのか」
自衛官の人達は戦う人達です、それだけに命の重みがわかっています。まして何をしていない命を奪っていいのかとです。
構えを取って撃とうとする中で思いました、ですが撃って命を奪うことになるかも知れなくても眠らせでもしない限りどうしようもありません。それで自衛官の人達は止むを得ず撃つことにしました、ですが。
ここで、でした、上野動物園の入り口にあるとても高い木の上からです。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「この笑い声は!」
「まさか!」
高らかな笑い声を聞いた誰もがです。
笑い声が聞こえて来た木の上を見ました、するとそこにです。
黄金バットがいました、黄金バットは両手を腰の横にやって仁王立ちして裏地が赤い黒マントをたなびかせていました、そうしてです。
おもむろに右手に先が尖り黄金色に輝く宝石が付いたステッキを出してでした。右手にステッキを持ってです。
宝石が付いた方を大蛇に向けて突き出しました、すると宝石から虹色に輝く不思議な光線が出てでした。
大蛇を撃ちました、すると大蛇は目を閉じてです。
眠ってしまいました、自衛官の人達はその光景を見て言いました。
「黄金バットが催眠光線を出したのか」
「その催眠光線で大蛇を眠らせたんだな」
「それなら今のうちだ」
「すぐに大蛇をトラックのコンテナに戻すんだ」
「重機を使ってそうしよう」
「そして上野動物園に入れるんだ」
「あそこはもう大蛇を迎えられる環境は整っているぞ」
こう言うのでした。
「巨大なプールがある頑丈なコンクリートに覆われたコーナーだ」
「この巨大な大蛇も安全に収容出来る」
「そこに入れられる様にするんだ」
「その為にも今は大蛇を確保するぞ」
こうお話をしてでした。
自衛官の人達は眠ってしまった大蛇に起きないかどうか要人しながら近寄りそうして網をかけてです。
重機を使ってトラックに戻しました、そうしてトラックを応急修理したうえで横転を戻してそれからでした。
動物園に運び入れ専用のコーナーに収容してです、全ては終わりました。そこまで終わってから誰もが思いました。
「今回も黄金バットに助けられた」
「若し黄金バットがいなかったらどうなっていたか」
「大蛇を眠らせるにしても命を奪いかねなかった」
「大きいだけでまだ何も悪いことをしていない大蛇を」
「そうなりかねないところを助けてくれて」
「黄金バット有り難う」
「本当に有り難う」
黄金バットに心からお礼を言いました、その時にはもう黄金バットは木の上から何処かへと飛び去っていました、ですが。
皆今回も助けてくれた黄金バットに心からお礼を言うのでした、そして大蛇を大事に飼育するのでした。巨大なアナコンダはただ大きいだけでとても大人しかったです。動物園で何もなかったかの様に過ごす蛇を多くの人が見て研究してその大きさと大人しさに驚くのでした。
黄金バット 第五十六話 完
2024・3・31