『黄金バット』




            第五十五話 フー=マンチェー博士 琵琶湖の赤潮

 琵琶湖に赤潮が多くなっています、それでなのでした。
 滋賀県の人達も琵琶湖からのお水を頼りにしている人達も困っています、それは飲んだりお風呂に使ったりするお水の質が悪くなるからです。
「幾ら水道水を奇麗にする技術が上がっても」
「やっぱり元のお水が奇麗じゃないと」
「琵琶湖のお水が悪いと困るわ」
「どうしたものか」
 関西の多くの人が困りました、それでです。
 琵琶湖の赤潮を取っていって湖のお水を奇麗にしようとします、ですが中々奇麗にならないので皆さらに困りました。
「これはどういうことなんだ?」
「赤潮をこれだけ取っているのに奇麗にならないわ」
「おかしいぞ、これは」
「原因は何なんだ?」
「どうなっているの?」
 皆どうなのかと思いました、それで原因を探そうとするとでした。
 琵琶湖の水面の真ん中にでした、フー=マンチュー博士が突如として出て来てです、高らかに言ったのでした。
「この赤潮を出したのは私だ、私の妖術で赤潮を出したのだ」
「これは魔人の力だったのか」
「フー=マンチェー博士が出していたのか」
「道理で減らない筈だ」
「博士の妖術ならな」
「私を退くことが出来れば赤潮はなくなる」 
 博士は世に宣言しました。
「そうして琵琶湖の水を元の奇麗な水にしたければ私を倒すのだ」
「くっ、そうならだ」
「フー=マンチェー博士を倒すしかない」
「それならやってやる」
「琵琶湖の奇麗な水を取り戻すのよ」
「そうするんだ」
 人々は口々に言いました、そうしてです。
 それぞれ武器を手にして船や飛行機やヘリコプターに乗って博士に向かいます、博士のところに泳いで行く人も大勢います。
 博士を大勢の人が取り囲みました、そうして攻撃を仕掛けますが。 
 博士は宙に浮かんで不思議な人々の攻撃をひらりひらりとかわして呪文を詠唱し不思議な妖術を放ちます、鬼火が出て人々の攻撃から博士を守ってです。
 毒蛾や不気味に光る球が飛び回って人々を打ってきます、船や飛行機やヘリコプターにもそうしてきます。
 その鬼火も毒蛾も球もどんどん増えてきます、それで人々は攻めるにも守るにもままならなくなりました。
「くっ、これは辛い」
「どうしたものなの」
「鬼火で守って毒蛾や不気味な球で攻撃してくるなんて」
「何で恐ろしい妖術なの」
「流石魔人だ」
 皆博士の妖術に困惑します、ですが。
 人々の目は死んでいませんでした、それでこの逆境の中でも勇気を奮い立たせるのでした。
「こんなところで負けるか」
「負けたらそれで終わりよ」
「琵琶湖の水を奇麗にするんだ」
「私達のお水を守るのは私達よ」
 口々に言ってそうしてでした。
 幸い死んだ人も大怪我を負った人もいないのでそれで、でした。 
 傷付いた人達を介抱しながらまだ博士に向かいます、そして皆で力を合わせて総攻撃に入ろうとした時にでした。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「!その笑い声は!」
「まさか!」
 琵琶湖の湖上にです、博士と対峙する様にして黄金バットが立っていました、両手を腰に置いて真っ赤な裏地の漆黒のマントをたなびかえています。
 黄金バットは出て来るとすぐにでした、その両手を自分の顔の前に交差させて置いて。
 その両手を思いきり腰の横に引きました、すると黄金バットから太陽よりも眩しい金色の光が放たれてでした。
 その光が消えた時それまで赤潮だらけで汚れていた琵琶湖が。
「奇麗になったぞ」
「元の琵琶湖に戻ったわ」
「黄金バットが戻してくれたんだ」
「その力でそうしてくれたんだ」 
 人々はそのことがわかりました、そしてです。 
 皆そのことを理解した時黄金バットはステッキを出してその先を博士に向けました、それはまるで次はお前を倒すと言っているかの様でした。
 自分に向けられたステッキを見てです、魔人は悔しそうに言いました。
「くっ、こうなっては私の負けだ」
「・・・・・・・・・」
「また会おう黄金バット、次はこうはいかない」
 忌々し気に言ってでした。
 黄金バットは姿を消しました、そうしてです。
 後に残ったのは戦った勇気ある人達と奇麗になった琵琶湖の水でした、人々はその奇麗な水を見て言いました。
「黄金バットがやってくれた」
「今回もやってくれた」
「我々を助けてくれたんだ」
「私達の勇気に応えてくれたのね」
 皆わかりました、そしてこぞって黄金バットを讃えました。
「黄金バット有り難う」
「今回も有り難う」
「このことは忘れないぞ」
「何があっても」
 黄金バットは応えません、ただ戦いが終わって颯爽と何処かへと飛び去っただけでした。ですが人々はそんな黄金バットを讃えました。自分達を助けてくれたヒーローだと。


黄金バット  第五十五話   完


                   2024・1・31








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