『黄金バット』
第四十四話 メンインブラック流星の悪夢
函館の五稜郭のど真ん中にいきなりでした。
隕石が落ちました、幸い隕石は人も建物も傷付けずその場に大きな穴を開けただけでした。ですが。
その五稜郭の正門の前にメンインブラックが現れました、漆黒の肌を持つ魔人は不敵に笑って言いました。
「今の隕石を出したのは私だ」
「何っ、今度は隕石か」
「隕石で攻撃してくるつもりか」
「そうだ、この隕石で五稜郭だけでなく函館の街全てを粉々にしてやろう」
魔人は不敵に笑ったまま言いました、そうしてまた隕石を降らせて自分の周りに幾つか大きな穴を開けてみせました、今回も人にも建物にも被害は出ませんでした。
ですが隕石を自由自在に操りしかもそれで函館の奇麗な街を粉々にするという彼を放っておける筈がありません、それでです。
すぐに自衛隊や警察それに函館を大切に思う人達が集まってメンインブラックをやっつけようと正門の前に立ったままの魔人を囲みました、ですが。
どんな攻撃をしても魔人には通じません、メンインブラックは自分の周りに衝撃波をバリアーの様に出してそれを守りにしてです。
投げられた石も銃弾も全部防いでしまいます、魔人はそのうえで高らかに笑って言います。
「私にそんなものが通用すると思っているのか、核ミサイルでも私の衝撃波を破ることは出来はしない」
「くそっ、一切の攻撃が通じないのか」
「流石魔人とんでもない奴だ」
「このままじゃまた隕石を落とされるぞ」
「そして函館の街を破壊されるぞ」
皆防御も完璧なメンインブラックに歯噛みするしかありませんでした、その為いよいよ街に隕石が落とされるのかと危惧しました。何しろ魔人は思いのままに隕石を落とすことが出来るのはこれまでの二度の隕石を見ればわかるからです。
その為これは危ないと思いましたが。
人々は意を決した顔で頷き合って言い合いました。
「それでもやるしかない」
「そうだ、絶対に破れないものなんてないんだ」
「どんな矛も防ぐ盾だってないんだ」
「それならメンインブラックの衝撃波も破れるぞ」
「核ミサイルなんか使わなくても出来るんだ」
「何とかやるぞ」
「知恵を使うんだ」
皆こう言い合って必死に考えました、一体どうすれば魔人の完璧とも思える守りを破って彼を追い払って函館の街を守れるのか。
そう必死に考えたその時にでした。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「この声は!」
「まさか!」
「来てくれたのか!」
見れば五稜郭の正門の上に出した。
黄金バットがいました、黄金バットはいつもの様にマントをたなびかせ両手を腰にやって高笑いしています、その身体は今も黄金色に輝いています。
黄金バットはお空、メンインブラックの真上を指差しました、すると魔人は苦々し気に呻きました。
「くっ、気付いたか」
「気付いた!?」
「まさか衝撃波はメンインブラックの真上にはないのか」
「一見完璧に守っている様で」
「真上は違うのか」
「わかったぞ、空から攻撃すればいいんだ」
皆ここでわかりました。
「真上から攻撃するんだ」
「そうすればいいんだ」
「黄金バット教えてくれて有り難う」
「魔人め覚悟しろ」
皆口々に言ってでした。
すぐに空にあった自衛隊や警察が動きました、自衛隊や警察の偉い人達はそれぞれのヘリコプターに凄腕のスナイパーの人達を乗せて。
メンインブラックを狙撃しました、魔人はそれでも銃弾を必死にかわしますが。
やがて余裕がなくなって歯噛みして言いました。
「私の負けだ、今回は去ろう」
「やった、帰ったぞ」
「姿を消したぞ」
「魔人は敗北を認めて退散した」
「函館の街は助かったんだ」
皆魔人が煙の様に姿を消したのを見て危機が去ったことを確信しました、そしてそうなったことをもたらしてくれた黄金バットを見て思いました。
「今回も黄金バットに助けてもらったな」
「全くだ」
「本当に黄金バットのお陰だ」
「黄金バット有り難う」
「我々に魔人の守りの隙を教えてくれて有り難う」
皆口々に言います、そうしてです。
お空を飛んで何処かへと去っていく黄金バットを手を振って送りました、もう函館の街に隕石は降ってきませんでした。奇麗な青空が広がっているだけでした。
黄金バット第四十四話 完
2022・1・30