『黄金バット』




            第三十三話  ナゾ―博士吉野の桜を前に

 奈良の吉野の桜は満開です、今年も奇麗な桜がそれこそ千本も咲き誇っています。その桜を見て沢山の人達が喜んでいます。
「やっぱり春は桜だよ」
「全くだね」
「桜がないとね」
「春って気がしないよ」
 こんなことを言いながらです、皆でその満開の千本桜を見ています。中にはこんなことを言う人達もいます。
「この桜達は源義経さんの頃からのものだからね」
「歴史があるね」
「義経さんはここで桜を見ていたんだね」
「そしてそのうえで狐に鼓を渡したりして」
「そこから関に向かったんだよね」
 こうしたお話をしながら桜を見てお弁当やお酒を楽しんでいます、そうして春のお花見を楽しんでいるとです。
 そこにです、何とでした。
 お空にユーフォーが出て来ました、そしてその上にはです。
 右手の指は三本、左手は二本で赤と青、黄色と緑の四つの目があります。誰がその人を見て驚きの声をあげました。
「ナゾー博士!」
「ナゾ―博士だ!」
「ナゾ―博士が来たぞ!」
「何をしに来た!」
「ロ〜〜ンブロンゾ〜〜」
 ナゾー博士は驚く人達に対していつもの声を出してです、そのうえで。
 両手の指からそれぞれ怪光線を出してきました、そうしてまずは地面を焼きました。
「何だこの光線は!」
「こんなもの浴びたら桜はひとたまりもないぞ!」
「我々もだ!」
「まさか我々を皆殺しにするのか!」
「そのつもりか!」
 皆ナゾ―博士が焼き尽くして真っ黒になっているかつて草原だった場所を見て恐怖に襲われました。
「そうするつもりか」
「ナゾ―博士ならやるぞ」
「この博士はそうした博士だ」
「危険だぞ」
「私は桜には興味がない」
 ナゾ―博士は人々にこう言いました。
「ただ新たに身に着けたこの力を試したいだけだ」
「ここに人が集まっているからか」
「だからか」
「その力を試すのか」
「我々を焼いて」
「そうするのか」
「そうだ、君達には私の新たな力のテスト材料になってもらう」 
 こう人々に告げるのでした。
「ならいいな」
「くっ、大変だ」
「逃げよう」
「女性や子供は真っ先に逃がせ」
「お年寄りは守れ」
「犠牲は最低限に抑えるんだ」
「そうするんだ」
 こうしたことを言ってです、皆ナゾ―博士がまた怪光線を放つそうして自分達を焼き殺す前に避難しようとしました。
 ですがナゾ―博士は怪光線を今にも放とうとしています、誰もがもう駄目だと思ったその時にでした。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
 高らかな笑い声と共にでした、吉野の千本桜の上にです。
 黄金バットが現れました、黄金バットは両手を腰の横にやってその場所にいました。そうしてでした。
 すぐにマントをたなびかせてそのうえで人々を攻撃しようとするナゾー博士に向かいました。そのうえで。
 怪光線を放つナゾ―博士との戦闘に入りました、五本の指から放たれる怪光線を黄金バットはマントをたなびかせそれで身体を守りながらです。
 ステッキをフェシングの様に突き出して攻撃します、その攻撃のあまりもの速さと威力にでした。
 ナゾー博士は次第に劣勢になっていきたまりかねて撤退しました、人々はナゾー博士が去ったところで言いました。
「去ったな」
「ああ、ナゾ―博士はな」
「黄金バットが退けてくれた」
「危ないところだったけれど」
「それをやってくれた」
「黄金バットが助けてくれた」
「そうしてくれたんだ」
 こう言うのでした。
「よかった」
「もう少しでナゾ―博士に沢山の人達が殺されるところだったが」
「黄金バットが助けてくれた」
「有り難う黄金バット」
「助けてくれて有り難う」
 皆で黄金バットに感謝の言葉を言います、ですが黄金バットはその人達にはお顔を向けましたが何も言わずです。
 颯爽と空に飛んでいき何処かへと姿を消しました、皆はその黄金バットに感謝の言葉を贈りました。自分達も桜も護ってくれた英雄に対して。


黄金バット  第三十三話   完


                 2020・3・4








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る