『黄金バット』
第二十三話 ナゾー博士太閤の宝を守れ
ナゾー博士は突然大阪市街のテレビ画面という画面に出て来てそうして大阪の人達に宣言しました。
「ロ〜〜ンブロンゾ〜〜、大阪の諸君元気だろうか」
「うわっ、ナゾー博士やないか」
「今度はこっちに出て来たんかいな」
「また迷惑な奴が出て来たわ」
「今度は何するつもりや」
大阪の人達はナゾー博士の姿を見てすぐに嫌なお顔になりました。
「はよ帰れ」
「家何処にあるか知らんけどな」
「大阪に来るな」
「地球の外に行ってまえ」
「それで二度と帰って来るな」
大阪の人達は皆こう思いました、ですがそれではいそうですかとなるナゾー博士ではなくて。その四色の四つの目がある不思議な顔で言うのでした。
「私は大阪城にある豊臣秀吉の黄金の茶室を奪う」
「えっ、あの茶室をかいな」
「太閤さんのあの茶室をかいな」
「何ちゅうもん盗もうとするねん」
「あの茶室は太閤さんが作らせた特別なもんやぞ」
「それを盗むっちゅうんか」
「盗まれたくなければ私を止めてみることだ」
まさにとです、ナゾー博士はこう言ってでした。犯行予告時間を大阪花の万博がはじまった大阪市にとっては印象的な日の夜の十二時に指定してきました。
大阪の人達は大阪城に集まってそうして黄金の茶室を守ろうとします、大阪城にお巡りさんも有志の人達も詰めてです。
茶室のある天守閣にも人が一杯いてその人達がまさに壁になり石垣になり堀になり茶室を守っていました。
そうしつつです、大阪の人達は言うのでした。
「茶室は渡さへんで」
「太閤さんの宝はわし等の宝や」
「それだけは渡すかいな」
「絶対に許さへんで」
「そんなことさせるか」
皆こう言います、ですがその大阪の人達の前にです。
何と天守閣の最上階の屋根の上にです、小柄でお猿さんを思わせるお顔で沢山の葉っぱが拡がったみたいな兜と黄金色の陣羽織を羽織った人が出ました。その人こそは。
「太閤さんや!」
「太閤さんが出て来たで!」
「ご自身が茶室を守る為にこの世に蘇ってきたんや!」
「そうする為に出て来たんや!」
「大阪の者達よ、おみゃあさん達の心は受け取ったぎゃ!」
豊臣秀吉さんこと太閤さんは大阪の人達に応えました。
「わしの宝守ってくれるとは有り難い、しかしわしも天下人だぎゃ!」
「だからですか」
「ご自身で、ですか」
「そうだぎゃ、おみゃあさん達に迷惑はかけないだぎゃ!」
こう言ってです、太閤さんはナゾー博士を待ち受けるのでした。そして遂に十二時になった時にでした。
ナゾー博士がUFOに乗って天守閣の近くの夜空に出てきました、そうして高らかに言うのでした。
「太閤殿ご自身が相手か」
「そうだぎゃ、わし自らおみゃあさんをやっつけて茶室を守るだぎゃ」
「その言葉受け取った、ではだ」
「これから戦うぎゃ」
「受けて立とう」
ナゾー博士はUFOから怪光線やミサイルを放ってそうして攻撃します、太閤さんは神通力を使っているのか自由に空を舞い刀を手にして博士と戦います。
戦いは一進一退でした、ですがその中で。
嵐が起きました、その嵐で太閤さんも博士も戸惑いました。
「嵐だぎゃ」
「くっ、こんな時に」
「ここまで強い雨と風と雷では戦えないだぎゃ」
「勝敗を決して盗みたいというのに」
二人共この事態には困ってしまいました、太閤さんは博士を破って茶室を守りたいですし博士も太閤さんを守ってその力を見せつけてから茶室を奪いたいのです。
ですから二人共困ってしまいました、二人の死闘を見守る大阪の人達もどうしてここで嵐なのかと困りました。
「何でこんな時に嵐やねん」
「天気予報は晴れって言うてたのに」
「それが何でや」
「何で嵐やねん」
「ちょっとでええから止んでくれ」
「戦いが行われる間は」
せめて死闘の邪魔をしないで欲しい、こう思いました。
ですが天候をどうこうすることなぞ普通の人には出来る筈もありません、それで皆困っていましたが。
ここで、です。突如としてでした。
先程まで太閤さんがいた大阪城の天守閣に黄金に輝く姿の超人がいました、その超人こそは。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「その笑い声は!」
「間違いないで!」
「黄金バットや!」
「黄金バットが出て来たで!」
見れば黄金の髑髏に同じく黄金に輝くボディ、裏地が赤い黒マントの姿の超人が両手を腰の左右に当てて立っています。その黄金バットがです。
右手に出したステッキを高々と掲げるとです、そこにでした。
大阪を覆っていた嵐が全て落ちました、雨も風も雷も。そうして嵐の力を引き受けると共にそれを止めたのでした。
これで太閤さんと博士の死闘を邪魔する存在はなくなりました、それで両者は闘いを再開してその結果は。
太閤さんの刀の一撃が博士を一閃しました、博士は何とかその一撃をかわしましたが乗っているUFOがかなり傷付けられました。太閤さんの刃は魔人の乗っているものすらダメージを与えてしまうまでのものでした。
それで博士も退かざるを得なくなりましたが黄金バットに今回ばかりはこう言いました。
「勝負をしやすくさせてくれたこと、礼を言う」
「・・・・・・・・・」
黄金バットは博士に顔を向けるだけで何も言いません、ですが博士はその黄金バットに無言で頷いてでした。
そうして何処かに去りました、そして太閤さんもです。
黄金バットのところに来てです、満面の笑顔で言いました。
「おみゃあさんのお陰で無事闘ってわしの力で守れたぎゃ」
「・・・・・・・・・」
黄金バットは太閤さんにも答えません、ですがその目はしかと太閤さんを見て心を伝えている様でした。
その黄金バットにです、太閤さんはさらに言いました。
「わしはこれであの世に戻るだがや、おみゃあさんはこっちの世界で頑張るぎゃ」
「・・・・・・・・・」
黄金バットは太閤さんに無言で礼儀正しく頭を下げました、すると太閤さんは大阪の人達にも笑顔をまた会うだぎゃと別れの言葉を告げて。
そのお姿を消しました、そして黄金バットもです。
何処かへと飛び去っていきました、かくして茶室は守られ残った大阪の人達はといいますと。お互いに思ってお話するのでした。
「わし等の思いを受け取って太閤さんが出て来てくれて」
「自分で茶室を守る為に博士と闘って」
「黄金バットはその太閤さんを助けて嵐を止めた」
「そやから博士も闘いやすくしてくれた黄金バットに礼を言うたんやな」
「敵同士でも」
「それでもやな」
このことをお話する大阪の人達でした、そして。
太閤さんも博士も黄金バットも去った後で言いました。
「太閤さん最高やったで」
「黄金バットもよお助けてくれた」
「博士も敵ながら立派やった」
「今回は皆を褒め称えるわ」
「そうさせてもらうわ」
こう言うのでした、そしてです。
皆で彼等の闘いと心を称賛しました、それが終わった時に黄金バットが止めていた嵐がまた起こりました。ですがその嵐は激しいものではなく闘いの後の喧騒を清めて元の平和な大阪にする様な。そんな嵐で朝になると終わり後には平和な大阪になっていました。
黄金バット第二十三話 完
2018・7・1