『黄金バット』




             第二十一話  大雪に負けるな

 今日本全土がとんでもない寒波に襲われています、それで普段は雪とは全く縁がないと思われる鹿児島もです。
 雪が降っています、しかもその雪は大雪で。
 普段は雪よりも桜島の火山灰に困っている鹿児島の人達も慣れない雪かきに追われています。雪は毎日朝から晩まで降っていてです。
 その桜島も鹿児島の街も全部雪で覆って屋根高く積んでしまっています、それで皆で必死に雪かきをしていますが。
「かなり多いでごわすな」
「全くでごわす」
「鹿児島に雪が降るとは思わなかったでごわすからな」
「大変でごわすよ」
「シャベルやスコップで幾らどけてもでごわす」
「その傍から積もるでごわす」
 そうなっています、何しろ雪かきに慣れていないのでその作業自体が中々進んでいません。身体が慣れていないのですぐに疲れてしまうのです。
 それは鹿児島のお爺さんお婆さん達も同じで苦労しています。
「雪なんて何時以来でごわすか」
「覚えていないでごわすよ」
「こんなに雪が降るとは」
「困ったでごわすな」
「本当にそうでごわす」
「どうにもならないでごわす」
「スコップも足りないでごわす」
 雪かきに適したそれがというのです。
「そのせいもあるでごわすな」
「そうでごわすな」
「人はいてもスコップが足りないでごわす」
「除雪機も欲しいでごわす」
「鹿児島にそんなものないでごわす」
 除雪機は雪が多い地域にあるものです、雪とは全く無縁と言ってもいい鹿児島にある筈もないものです。
 それで、です。除雪機といったものもなくて皆慣れない手で雪かきをしているからこそ苦労しています。雪の多い地域から除雪機を持って来てもらうにもです。
 それもです、どうにもなのです。
「遠過ぎるでごわすな」
「本当にそうでごわす」 
 鹿児島のお年寄り達も困って言います、お空は雲に完全に覆われていてそこから大きなぼたん雪がとんでもない量で降り続けています。
「これではでごわす」
「どうしようもないでごわす」
「人の数だけではどうにもならないでごわす」
「雪かきに向いているシャベルやスコップも少ないでごわすしな」
 見れば東北や北陸によくある先が広くなっているものではなく土を掘ることに向いている先の尖ったものばかりです、これでは確かに雪かきには向いていません。それでは一度に多くの雪をかけないからです。
 しかも除雪機までないのです、これでは鹿児島の人達は普段から雪に慣れていない分だけ大変です。ですが。
 そこにです、何とです。
「ハハハハハハハハハハハハ!!」
 桜島、今は雪に覆われて真っ白になっている火山の頂上から高らかな笑い声が聞こえてきました。その声に鹿児島の皆が桜島の方を見ますと。
 大雪の中に黄金バットがいました、黄金バットは雪の中に仁王立ちしマントをたなびかせ両手を腰に置いて高笑いしていました。
 その黄金バットがです、右手出したステッキを一振りさせるとです。
 鹿児島の人達が持っているシャベルやスコップの形が変わりました、何と雪かきに向いている幅が広いものになりました。
 そのシャベルやスコップを見てです、鹿児島の人達は笑顔になりました。
「これはいいぞ」
「このシャベルやスコップならもっと雪かきが出来る」
「しかも体力も戻った」
「筋肉痛もなおったぞ」
 雪かきに慣れていなくて普段使っていない筋肉を使ってしまっていてそうなっている人達が多かったのですが。
 そのことも治ってです、皆これまで以上に動けていました。
 ですがここでさらにでした、黄金バットは。
 ステッキをまた振りました、すると今度は。
 鹿児島県に除雪機が来ました、鹿児島の人達が突然出て来た除雪機に驚いていますと。除雪機は自然に動いてです。
 鹿児島の人達と共に除雪作業をしていきます、鹿児島の人達はその除雪機を見てあることがわかりました。
「そうか、あの除雪機は黄金バットが自分から出したでごわすな」
「そのとんでもない力で除雪機を何処からか出してきたでごわす」
「何処かで使っていない除雪機があって」
「それをわざわざ自分で動かしているでごわす」
 そのことがわかりました、鹿児島の雪は黄金バットが形を変えたシャベルやスコップを使ってさらに元気になった鹿児島の人達の頑張りとです。
 黄金バットが動かす除雪機のお陰でかなりなくなりました、そうして市民の生活にもう影響がない位になったところで。
 雪は止みお空が晴れてきました、鹿児島の人達はここで自分達を助けてくれた黄金バットを見ました。見ればシャベルやスコップは元の形に戻っていて除雪機も元あった場所に戻されて今はもう鹿児島にありません。
 その状況を見てです、鹿児島の人達、お爺さんお婆さんも思うのでした。
「わし等も頑張っているのを見てでごわすか」
「黄金バットは助けてくれたでごわすか」
「慣れない雪でも向かう」
「そのわし等に」
 その黄金バットの心を知りました。
「まずは自ら向かう」
「どんな災害にも」
「その心こそが大事でごわすな」
「そこからでごわすな」
 黄金バットは鹿児島の人達に何も言いません、そのうえで何処かへと飛び去っていきました。
 ですが皆わかりました、黄金バットが何を言いたくてどうして鹿児島の皆を助けてくれたのか。そこにある確かなものがわかったのでした。雪が止んだ鹿児島において。
 それで鹿児島の人達は雪が溶けた後で思うのでした。
「慣れない災害にも起これば向かうでごわす」
「まずは自分達の全力を尽くすことでごわす」
「さもなければ何にもならないでごわす」
「そこからでごわす」
 大雪にも何もです、まずは自分達から向かわなくてはならないことがわかったのです。このことは鹿児島の人達にとってとても大きな教訓となり決して忘れられないものになりました。


黄金バット 第二十一話   完

        
               2018・2・18



今回は誰かが悪さをという事ではなかったようだな。
美姫 「みたいね。大雪だものね」
自然の猛威に対して、少しお手伝いを。
美姫 「本当に良い人よね」
だな。今回も投稿ありがとうございます。
美姫 「ありがとうございました」」



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