『黄金バット』




             第十二話  黒バット、仙台での死闘

 仙台は今とても大変なことになっています、それはどうしてかといいますと。
 市長さんは難しいお顔で役所の人達に言っていました。
「黒バットはね」
「はい、警察が出ても撃退されますし」
「あのステッキで何でも破壊しますから」
「車もステッキで切られて真っ二つです」
「先から出る怪光線で壊されます」
 そうなってしまうとです、役所の人達も項垂れて答えます。
「ですから」
「警察が出ても止められません」
「黒バットが街のビルや橋を破壊しても」
「それを止められないです」
「死者は出ていませんが」
「このままでは何時出るかわかりません」
 今は幸いにしてです、黒バットの破壊行為で犠牲になって死んだ人はいないというのです。ですがそれでもなのです。
「とにかく黒バットをどうにかしないと」
「より大変なことになります」
「そうだね、どうしたものかな」
 腕を組んで困ったお顔になった市長さんでした。
「果たして」
「黒バットを倒せる存在に来てもらうしかないです」
「残念ながら警察では駄目でした」
「そうなりますと」
「自衛隊だね」
 市長さんはこの人達の名前を出しました。
「そうなるね」
「既に出させてくれとお願いがありましたね」
「そうでしたね」
「黒バットは自分達が倒すと」
「そう言ってきましたね」
「うん、じゃあお願いしようかな」
 市長さんは考えるお顔になって言いました。座っている机の上には新聞紙がありますがそこに黒バットのことが書かれています。
「これ以上黒バットを放ってはおけないし」
「毎日夜に十二時に出るとですね」
「出て来て暴れ回りますから」
「このまま好き勝手させたらです」
「厄介ですから」
「一刻も早く」
「今日も出て来るね」
 市長さんは確信を以て言いました。
「間違いなく」
「昨日も出ましたし」
「ここ最近毎日ですから」
「なら今日も出ますね」
「そして街で暴れ回りますね」
「今なら今日の十二時には間に合うね」
 市長さんは決断を下すお顔になりました、そして。 
 役所の人達にです、強い声で言いました。
「自衛隊の人達にお願いしよう」
「黒バットへの対策を」
「それをお願いしますか」
「今日に」
「そうしよう、仙台の何処に出るかわからないけれど」 
 夜の十二時に出ることは間違いないですが。
「出ることは間違いないから」
「では自衛隊の基地にお願いしましょう」
「是非共」
「そして今日は終わらせましょう」
「黒バットの悪事を」
「絶対にね」
 市長さんはすぐに自衛隊の総監部にお電話を入れました、そのうえで総監部の司令さんにお願いをしましたが。
 司令さんはすぐにです、市長さんに言いました。
「待っていました」
「私の要請をですか」
「はい」
 まさにというのです。
「私達の仕事は市民の人達を護ることです」
「だからこそですか」
「はい、このお電話を待っていました」
「そうでしたか」
「ではすぐにです」
「出撃してくれますか」
「そして黒バットを倒します」
 是非にという返答でした。
「必ず」
「それでは」
「はい、すぐに行きます」
 こうしてでした、自衛隊の人達はすぐに仙台市に入りました。市長さんは街に入ったその人達を見て思うのでした。
「この人達なら」
「はい、絶対にですね」
「黒バットをやっつけてくれますね」
「あの怪人も」
「悪い怪人を退治するには勇気が必要だよ」
 まさにというのです。
「そしてあの人達には勇気があるから」
「だからこそですね」
「黒バットを倒せますね」
「そして街に平和を取り戻せる」
「それが出来ますね」
「出来るよ」 
 絶対にというのです、そしてでした。
 自衛隊の人達はそれぞれの配置に着いて十二時を待ちました、その自衛隊の部隊の隊長さんは市長さんに言いました。
「各員配置につきました」
「それではですね」
「十二時になれば」
 まさにその時にというのです。
「黒バットを撃退若しくは殺害します」
「殺害ですか」
「あの怪人は放ってはおけません」
 だからというのです。
「総理からもそうご命令が出ています」
「総理からですか」
「黒バットとナゾー博士、メンインブラックにフーマンチュー博士は」
 この四人の悪い怪人達はというのです。
「最早放置出来ない、殺害するしかないとです」
「判断されてですか」
「決断を下されました」
 だからこそというのです。
「ですから」
「そうですか、殺害もですか」
「止むを得ません」
 黒バットも他の怪人達もです。
「ですから我々もかなりの火器を持って来ました」
「では」
「はい、黒バットが現れましたら」
 十二時になってです。
「倒します」
「そうですね、黒バットも他の怪人達もです」
 市長さんも彼等のことを思って言うのでした。
「放置出来ないです」
「ですから」
「殺害もですね」
「念頭に置いています」
「ではお願いします」
 市長さんは隊長さんに答えました。
「仙台の平和の為にも」
「お任せ下さい」
 敬礼で市長さんに応えるのでした、そして。 
 自衛隊の人達は十二時を待ちました、その間です。
 食事も摂ったりしていました、緊張はかなりのものでした。
「問題は何処に出て来るか」
「それですね」
「十二時になって」
「仙台の何処に出て来るか」
「それが問題ですね」
「そうだ、しかしだ」
 隊長さんは部下の人達にも強い声で言いました。
「出て来たらな」
「総員その場に急行してですね」
「そのうえで黒バットに向かう」
「場合によっては殺害する」
「そうしますね」
「そうだ」
 まさにです、そうするというのです。
「いいな」
「わかっています」
「トラックにジープもありますし」
「ヘリもあります」
「そうしたものを使ってすぐに移動ですね」
「現場に集結ですね」
「そうしてだ」
 そのうえでというのです。
「一気に倒すぞ」
「移動の用意は出来ていますし」
「出て来れば、ですね」
「即座に集結して」
「黒バットを倒しますか」
「そうする」
 隊長は真剣なお顔でした、そしていよいよでした。
 十二時が近付きました、その十二時になるとです。 
 自衛官の人達は一斉に身構えました、その瞬間です。
「フフフフフフフフフフフフフフ!」
「この笑い声は!」
「間違いない!」
「黒バットだ!」
「黒バットが出て来たぞ!」
 自衛官の人達はその笑い声に反応しました、それはまさに黒バットの笑い声でした。その笑い声が聞こえてきたのは。
「市役所だ!」
「仙台市役所だ!」
「あそこだ!」
「あそこにいるぞ!」 
 市役所の周りにも自衛官の人達がいます、その人達が市役所の前の上空に立っている黒バットを見付けました。 
 黒バットはそこに仁王立ちしていました、市長さんもその黒バットを見ました。
「ここに来たか、黒バット」
「市長、ここは危険です」
「黒バットが攻撃してきます」
「この市役所を攻撃してくることが考えられます」
「ですから避難を」
「いや、私はここに残るよ」
 市長さんは役所の人達にこう答えました、黒バットを見据えながら。
「自衛隊の人達が黒バットを倒す、そして市長の私が街のピンチに逃げてはいけない」
「だからですか」
「ここに残られますか」
「そうされるのですか」
「市長は」
「そう、私は残る」
 絶対にというのだ。
「絶対にだ」
「だからですか」
「ここは、ですか」
「ここに留まられ」
「逃げないですか」
「そう、絶対に」 
 こう言ってです、市長さんは市役所に留まるのでした。そして市役所の前に黒バットが出て来たと知ってです。
 自衛隊の人達はトラックやジープ、ヘリで大急ぎで市役所に急行します、もう全速力です。
「急げ!」
「早く市役所に行くんだ!」
「黒バットはそこにいるぞ!」
「市役所にいる部隊の応援に向かえ!」
「そして黒バットを倒せ!」
「何としても!」
「間に合わせろ!」
 間に合ってそして黒バットを退治しようというのです、ですが。 
 黒バットはそれよりも前にマントを翻し市役所にステッキを向けました、そのうえで。
 市役所に対してあの怪光線を出そうとします、市長さんはその黒バットを見て言いました。
「来るなら来い、黒バット」
 こう言うのでした。
「私は逃げも隠れもしない、仙台市を護るぞ」
「はい、我々もです」
「その為にここにいます」
「例え黒バットが何をしようとも」
「護り抜きます」
「そう、何かを護ろうとするその心」 
 それこそがまさにというのです。
「それが街を、街の皆を護るんだ」
「そうですね、その心で」
「黒バットが何をしようともです」
「防ぎましょう」
「絶対に」
「そうしよう」 
 こう言ってです、そのうえで。
 黒バットの攻撃からも誇りを以て逃げずに向かいます、その市長さん達のいる市役所に怪光線が放たれますが。
「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「この笑い声は!」
「まさか!」
「黄金バット!」
「黄金バットか!」
 見ればです、市役所の一番高いところにでした、黄金バットがマントをたなびかせ仁王立ちしていました。その黄金バットがです。
 すぐに自分のステッキを前に出しそこから光線を出してでした、黒バットの怪光線を防ぎました。それ見てです。
 市長さんの役所の人達もです、驚いて言いました。
「まさか黄金バットが」
「黄金バットが我々を守ってくれた」
「そうなのか」
「そうしてくれたのか」
 しかし黄金バットは答えません、その代わりにです。
 空にひらりと舞い上がると黒バットに向かいます、そしてです。
 ステッキをレイピアみたいに使って黒バットと一騎打ちに入ります、黒バットもそれを受けて。
 満月を背にして仙台の夜空で闘います、両者はステッキを使い濃紫の空で舞います。
 互いに一歩も譲らず死闘を繰り広げます、それは何百回打ち合っても決着がつきません。
 ですがその一騎打ちの間にです、仙台中に展開していた自衛官の人達が市役所に駆け付けました。そしてです。
「攻撃用意だ!」
「黄金バットは狙うな!」
「黒バットだけを狙え!」
「狙撃兵攻撃用意!」
 早速攻撃用意に入ります、ですが。
 黒バットはその状況を見てかひらりと後ろに飛んででした、黄金バットから離れて。
 何処かに消え去ってしまいました、するとです。
 黄金バットも消えてしまいました、それを見てです。
 市長さんは役所の人達にこうしたことを言いました。
「危機は去ったね」
「はい、確かに」
「危ういところでしたが」
「危機は去りました」
「確かに」
「よかったよ、ただ」
 ここで市長さんはこうも言うのでした。
「それが出来た理由は」
「黄金バットですね」
「黄金バットに助けてもらいましたね」
「我々もまた」
「そうですね」
「うん、有り難う黄金バット」
 まさにというのです。
「我々を助けてくれて」
「はい、黄金バットにお礼を言いましょう」
「彼は今回も人を助けてくれました」
「だからこそです」
「お礼を言いましょう」
「是非ね」
 街全体で黄金バットにお礼を言いました、市長さんは次の日の記者会見で深い感謝の念を述べます。ですが。
 黄金バットはその人達に何も言いませんでした、姿も現れません。
 ですがそれでも皆で黄金バットに深い感謝の言葉を述べるのでした。それは心からの感謝の念からくるものでした。


黄金バット第十二話   完


                      2016・6・11



今回は黒バットが。
美姫 「本当に全国色んな所で事件が起きるわね」
だな。でも、黄金バットは現れてくれる。
美姫 「今回も見事に黒バットを追い払ってくれたしね」
良かった、良かった。
美姫 「投稿ありがとうございます」
ありがとうございました。



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