『黄金バット』
第七話 ナゾー博士、名古屋での死闘
名古屋の人達はこの日も平和でした。名古屋ドームも満員御礼です。
「お客さんがいるのはいいことだけれど」
「もうちょっとな」
「ドラゴンズ頑張って欲しいな」
「全くだよ」
ファンの人達は困った顔で皆でお話しています。今日はヤクルトとの試合ですが。
「二年連続最下位だったヤクルトがな」
「バテンティンがいなくても」
「山田が凄いな」
「打って走って守って」
「よくあんなのいるな」
「打点もいいしな」
「それに対して」
ファンの人達が嘆息して言うことはといいますと。
「ドラゴンズはな」
「落合さんの時はよかったよ」
「ベテランは歳で若手もな」
「何でクビにしたのが巨人で活躍するんだ?」
「何であいつクビにしたんだ」
「年棒下げても巨人に逃げられるし」
「裏目に出てばかりだよ」
こう言って困った顔でお話するのでした。
「ベテランが衰えて若手は育ってない」
「今のドラゴンズは悪循環だよ」
「どうしたものか」
「こりゃ今年最下位じゃないか?」
「今年どころか来年もだろ」
「谷繁さんの問題でもないな」
「落合さんが悪いのか?」
グラウンドでは中日の選手が凡退しています、ヤクルト優勢のまま試合が進んでいて一塁側は重い空気です。
「今日も負けか」
「数年前まで何度も優勝していたってのに」
「落合さんが監督でなくなったらな」
「この通りだよ」
「これじゃあ山田さんの時の方がまだよかったよ」
「打線は打たなかったけれどな」
十五年は昔のこともお話するのでした。
「いいことないな」
「また優勝したいな」
「全くだよ」
「日本一になりたいな」
「三度目の日本一な」
「そうなりたいな」
「また胴上げ観たいぜ」
こうしたことをです、ドラゴンズの選手の人達を観ながら言うのでした。
ですがその中で、突然バックスクリーンにです、
下半身は円盤に乗っているせいではなく完全になくてです、右手の指は三本左手の指は二本しかなくて。
全身はシルエットみたいになっていて頭の形は梟そっくりで目は何と四つあります。
右の方は上は赤、下は青です。左の方は上は緑、下は黄色になっています。皆はバックスクリーンに出たその人を観て驚きの声をあげました。
「ナゾー博士!?」
「どうして急に出て来たんだ!?」
「また何かするつもりか!?」
「悪いことをするつもりか!」
「ロ〜ンブロンゾ〜〜」
まずはこう言ったナゾー博士でした。
「親愛なる名古屋の諸君元気か」
「元気じゃないだろ!」
「どうして出て来た!」
「何を考えている!」
「諸君に伝えることがある」
ナゾー博士は皆に言うのでした。
「この球場の何処かに爆弾を仕掛けた」
「何っ、爆弾!?」
「そんなもの仕掛けたのか!」
「何てことするんだ!」
「爆弾はあと一時間で爆発してだ」
そしてというのです。
「この球場を完全に破壊する」
「またそんなことをしたのか」
「酷いことをする奴だ」
「じゃあ早く逃げないと」
「一時間か」
「試合どころじゃないぞ」
「折角の試合だってのに」
「さあ諸君逃げるのだ」
ナゾー博士はバックスクリーンの画面からです、何と。
そこから浮き出て来てでした、実際に姿を見せて言います。
「さもなければこの球場が君達の墓場になる」
「に、逃げろ!」
「いや、爆弾を探せ!」
「それで爆弾の配線を切るんだ!」
「何とかするんだ!」
「試合があるっていうのに!」
「試合はどうなるんだ!」
球場の中は大混乱になっていました、ですが。
ナゾー博士はその皆を見つつ悠然として言うのでした。
「逃げるもよし、爆弾を探して配線を切るもよしだ」
「俺達がどうするかを見ているってのか」
「そうしているのか」
「わざと爆弾を仕掛けて」
「それを見るつもりだっていうのか」
「如何にもだよ」
その通りという返事でした。
「さあ、どうする」
「俺は逃げるぞ!」
「爆弾を探せ!」
「子供は早く逃がすんだ!」
「選手達に何かあったらどうする!」
皆それぞれ動いて何とかしようとしました、勿論試合どころではなくなっています。
皆何とかしようと必死です、逃げる人も逃がす人も爆弾を探す人もです。
爆弾処理班の人も来ました、ですが。
「何処にあるんだ!」
「爆弾は何処だ!」
「早く探せ!」
「急げ!」
混乱している状況が続きます、誰もが血相を変えています。ですが。
ここで、でした。球場の中にあの笑い声が聞こえてきました。
「ハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「!?あの声は」
「あの笑い声は」
「まさか」
「まさかと思うけれど」
そのまさかでした、何とです。
名古屋ドームのスコアボード、その上にです。
黄金バットがいました、マントをたなびかせ両手を腰に当てて仁王立ちになって。皆その黄金バットを観て言いました。
「黄金バットだ!」
「黄金バットが来たぞ!」
「名古屋にも来たか」
「この場所にも」
「来たか黄金バット」
ナゾー博士も黄金バットの方に身体を向けて言いました。
「貴様に今回の私のゲームを防げるか」
「・・・・・・・・・」
無言で頷いてです、黄金バットは応えました。
それを観てです、皆は言いました。
「何とかしてくれるのか」
「爆弾を見つけて破壊してか」
「俺達も名古屋ドームも救ってくれるのか」
「そうしてくれるっていうのか?」
中日ファンの人もヤクルトファンの人も言うのでした。
「今から」
「そうしてくれるっていうのか」
「それならやってくれ黄金バット!」
「何とかしてくれ!」
「この球場を救ってくれ!」
「この球場は名古屋人の誇りの一つなんだ!」
それだけです、名古屋の人達にとって大切なものだというのです。
「ドラゴンズの家なんだ!」
「今は調子が悪いけれどな!」
「皆この球場が好きなんだ!」
「ドラゴンズもこの球場も愛しているんだ!」
「だからこの球場を救ってくれ!」
「ドラゴンズの家、俺達の愛するこの場所を守ってくれ!」
皆黄金バットにお願いします、すると。
黄金バットは不意にでした、右手に黄金のステッキを出してでした。
マウンドのところに向けて黄色い電流を放ちました、すると。
電流が当たったマウンドは弾け飛んででした、その中からです。
時限爆弾が出て来てです、それは電流を伝って黄金バットの手の中に入りました、そしてその時限爆弾をです。
黄金バットは左手に取って握り潰しました、すると。
爆弾はそれで完全に潰れて消えました、その一部始終を観てです。
皆は一瞬沈黙してです、その直後に口々に言いました。
「やったぞ!」
「黄金バットが何とかしてくれたぞ!」
「爆弾を破壊してくれたぞ!」
「この球場を救ってくたぞ!」
「名古屋ドームを!」
黄金バットに喝采を浴びせます、そして。
ナゾー博士はその黄金バットにです、こう言いました。
「今回もしてやられたな」
「・・・・・・・・・」
黄金バットは喋りません、今も。ナゾー博士の話を聞いているだけです。
「しかし次はこうはいかない」
ナゾー博士は黄金バットにさらに言います。
「私は悪事を成し遂げて貴様に勝つ」
こう言ってでした、ナゾー博士は観客の人達にも言うのでした。
「諸君、また会おう」
この言葉を最後にして姿を消したのでした、煙の様に。
ですが皆はです、こう言うのでした。
「何て悪い奴だ」
「名古屋ドームを爆破しようとするなんて」
「とんでもない奴だ」
「いつも悪いことをしやがって」
「昔から悪いことばかりしやがって」
「黄金バットがいたからいいようなものを」
悪者を嫌う顔で言うのでした、ですが。
黄金バットにはです、こう言うのでした。
「黄金バット有り難う!」
「今回も有り難う!」
「名古屋ドームを救ってくれて有り難う!」
「名古屋の誇りの一つをよく助けてくれた!」
こう言うのでした、そして。
黄金バットは空を飛んででした、天井をすうっと突き抜けてです。
名古屋ドームを後にしました、後に残ったのは平和だけでした。
平和が戻った球場には逃げていた人も戻ってきてでした、マウンドは黄金バットの力なのか元に戻っていてです。
アナウンスがです、ここで響きました。
「皆様お待たせしました」
「あれっ、ってことは」
「ひょっとして」
「試合はか」
「行われるのか?」
「再開するのあk?」
「試合は一時中断していましたが」
それでもというアナウンスでした。
「再開します」
「ああ、やるのか」
「爆弾仕掛けられたけれど」
「それでもか」
「試合はするんだな」
「これから」
「どうか試合をお楽しみ下さい」
アナウンスの人は更に言います。
「これからも」
「よし、じゃあ観るか」
「ドラゴンズの試合をな」
「とんでもないことが起こったけれど」
「それも何とかなったしな」
「それじゃあな」
皆も頷いて納得してでした。
「仕切りなおして」
「ドラゴンズ応援しような」
「スワローズも」
こう皆でお話してでした、皆でまた野球を楽しむのでした。黄金バットは皆の楽しみも守ったのです。
第七話 完
2015・9・12
名古屋に現れたナゾー博士。
美姫 「しかし、黄金バットも登場ね」
今回も黄金バットの活躍で無事に済んだな。
美姫 「良かったわね」
ああ。投稿ありがとうございました。
美姫 「ありがとうございました」