『黄金バット』
第三話 宿敵黒バット
蘇り世の悪を成敗し人々を守る黄金バット、彼は悪い奴とも戦っています。その黄金バットについてです。
街の駄菓子屋のお婆ちゃんはお菓子を買いに来た子供達にお話しました。
「あの人はずっと昔にいたんだよ」
「お婆ちゃんも知ってるんだ」
「黄金バットのことを」
「婆ちゃんがあんた達の頃にいたんだよ
「僕達の?」
「っていうと?」
「婆ちゃんがまだ子供だった頃」
まさにそうした時にというのです。
「黄金バットさんがいてね」
「それでなんだ」
「その頃から悪い奴をやっつけてたんだ」
「そうだよ、あの頃から強かったんだよ」
お婆ちゃんは子供達に笑顔でお話するのでした。
「それでナゾー博士とも戦っていたんだ」
「あの人もいたんだ」
「ずっと昔から」
「そうだよ、あの時から目が四つでね」
そしてというのです。
「指もああだったんだよ」
「それで下半身もなくて」
「円盤に乗ってたんだね」
「ずっと謎の人だったんだ」
「昔から」
「それでもう一人悪い奴がいたんだよ」
お婆ちゃんは子供達に飴玉、子供達がお金を出して買ったそれを渡しながらこうしたこともお話したのでした。
「その時はね」
「もう一人いたんだ、悪い奴が」
「そうだったんだ」
「そうさ、黒バットっていってね」
それがもう一人の悪い奴だというのです。
「服や身体は同じでも髑髏が黒かったんだよ」
「あの黄金バットの黄金の髑髏が」
「黒かったんだ」
「それが黒バットだったんだ」
「もう一人の悪い奴だったんだね」
「そうさ、黄金バットと同じ様な能力を持っていて」
そしてというのです。
「いつも黄金バットと戦ってたんだ」
「それで悪いことをしていたんだ」
「黒バットは」
「黄金バットは正義の髑髏でね」
そしてというのです。
「黒バットは悪い髑髏だったんだよ」
「ふうん、そうだったんだ」
「それが黒バットだったんだ」
「そうした奴もいたんだ」
「悪い奴に」
「そうだよ、とにかく悪い奴でね」
そしてというのです。
「黄金バットの邪魔をしようとしたりしていたんだ」
「その黒バットも出て来るのかな」
子供の一人が首を傾げさせて言いました。
「黄金バットやナゾー博士みたいに」
「どうだろうね」
お婆ちゃんはその質問にはすぐに答えませんでした。
「出て来るかも知れないし」
「出て来ないかも知れないんだ」
「その時のことはわからないよ」
「そうなんだ」
「そうさ、けれどね」
ここで、です。お婆ちゃんはこうしたことも言ったのでした。
「黄金バットもナゾー博士も出て来たんだよ」
「じゃあ黒バットが出て来ても」
「全く不思議じゃないよ」
そうだというのです。
「世の中いい人もいれば悪い奴もいるからね」
「だからだね」
「そう、だから黒バットが出て来たら」
その時はといいますと。
「皆黄金バットに助けを求めるんだよ」
「黄金バットになんだ」
「助けてって言うんだ」
「そうすればなんだ」
「黄金バットが出て来るんだ」
「そうだよ、そして絶対に助けてくれるからね」
だからだというのです。
「呼ぶんだよ」
「うん、わかったよ」
「じゃあ黒バットに襲われたら」
「その時はね」
「僕達黄金バット呼ぶよ」
「そうするよ」
子供達はこう皆に言ったのでした、お婆ちゃんはその子供達におまけとして飴玉をもう一個あげたのでした。
そのお話の夜です、子供達は塾の帰りにです。
今度は自分達の間で黄金バットと黒バットのお話をしたのでした。
「黄金バット来てくれるのかな」
「若し黒バットが出て来たら」
「それで僕達に襲い掛かって来たら」
「その時は」
「そうしてくれたらいいけれど」
子供達にとっては切実な問題です。
「けれどね」
「若し来てくれなかったら」
「怖いよね」
「僕達黒バットに殺される?」
「食べられちゃうのかな」
「何でもね」
子供の一人が言うことはといいますと。
「黒バットって物凄く悪い奴みたいだよ」
「そんなに?」
「そんなに悪い奴なの?黒バットって」
「夜に子供達を見付けたらね」
そうしたらというのです。
「攫って何処か遠くの洞窟に閉じ込めたりするらしいよ」
黒バットが、というのです。
「攫った子供達を連れて行くみたいだよ」
「そんなの嫌だよね」
「絶対にね」
「僕もだよ」
「何があっても嫌だよ」
こうそれぞれ言うのでした。
「黒バットって怖いね」
何処かから出て来た噂話ですが子供達は真剣に怖がっています、そうしたお話をしていると自然に、でした。
皆は周りを警戒しました。特に。
ビルの上を見ました、黒バットもそこから出て来ると言われているからです。
「いないよね」
「うん、いないよ」
「黒バットいないよ」
「ビルの上にはね」
「周りにもいないよ」
「マンホールから出て来ないよね」
ビルの上以外の場所も見るのでした。
「出るんじゃない?」
「えっ、黒バットってビルの屋上にいるんじゃ」
「そこから出て来るんじゃないの?」
「黄金バットと同じで」
「そうじゃないの?」
「いや、何処からでも急に出て来るみたいだよ」
今度はこうしたことがお話されるのでした。
「どうやらね」
「えっ、そうなんだ」
「じゃあ本当にマンホールから出て来たりするんだ」
「ビルとビルの隙間とか」
「不意に後ろからとか」
「あるみたいだよ」
これも何処かから出た噂話ですが子供達は真剣です。
「もう何処からでも出て来てね」
「子供を攫って」
「連れて行くんだ」
「怖いね、黒バットって」
「本当にね」
心から怯える皆でした、そうしてあらゆる場所を見ているとです。
不意にです、上からです。
「フフフフフフフフフフフフフ!!」
「!?この笑い声って」
「黄金バットと違うよ」
子供達はその上からの笑い声にすぐに気付きました。
「黄金バットはハハハハハハハハハだよ」
「フフフフフフなんて笑わないよ」
「じゃあ誰!?」
「誰なの!?」
子供達は怖がって上を見上げるとです、そこには。
身体は黄金で裏地が赤の黒マントを羽織っています。ですが。
そのお顔は髑髏ですがそれでもでした。
「黒い」
「じゃあ黒バット!?」
「黒バットが本当に出て来たよ!」
『悪い奴が出て来たんだ!」
黒バットはビルの屋上に両手を腰の左右にそれぞれ置いて、黄金バットと同じ姿勢になって高笑いをしていました。首のところには見事なカラーがあります。
その黒バットを見てです、子供の一人が言いました。
「皆、逃げよう!」
「逃げようって何処に!?」
「何処に逃げるの!?」
「そんなのわからないよ、けれどね」
それでもというのです。
「とにかく逃げよう!」
「そうだね、逃げないと」
「連れて行かれるよ!」
「洞窟に入られるよ!」
「殺されるよ!」
皆怯えて言います、そしてなのでした。
子供達はとにかく逃げました、黒バットのいる逆の方に。ですが。
「フフフフフフフフフフフフフフフフフ!」
黒バットはビルの上と上をマントをたなびかせて跳びながら子供達を追ってきました、子供達は必死に逃げましたが。
遂にその目の前にです、黒バットが降り立ってきました。黒バットは何も言わず子供達の前に仁王立ちしています。
その黒バットを見てです、子供達っはその場に崩れ落ちてしまいました。そしてガタガタと震えて動けなくなりました。
「ど、どうしよう」
「もう足が動かないよ」
「身体が竦んで」
「怖くて」
「逃げられないよ」
もう皆泣きそうになっています。
逃げようにもです、どうしてもでした。
怖くて足が竦んで動けなくなってしまっていました。その子供達にです。
黒バットは足を前に出してきました、もう皆駄目だと思いました。
ですがそこで子供達のうちの一人が皆に言いました。
「そうだ、こうした時こそね」
「こうした時こそ?」
「何かあるの?」
「黄金バットを呼ぼう!」
こう皆に言うのでした。
「だって黒バットは黄金バットの敵でね」
「僕達を守ってくれるから」
「だからなんだね」
「黄金バットは正義のヒーローだから」
「絶対に助けてくれるから」
「だから呼ぼう」
これがこの子の提案でした。
「じゃあね」
「よし、それじゃあ」
「皆で呼ぼう」
「黄金バットを呼ぼう!」
「今すぐに!」
皆で言い合ってでした、そして。
子供達は声を振り絞ってです、その名前を呼びました。
「黄金バット助けて!」
「ここに来て!」
こう呼んだのでした、すると。
その瞬間にでした、皆の上からです。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
あの笑い声が聞こえてきました、その声を聞いて上を見上げると。
そこにいました、ビルの屋上に仁王立ちをしてマントをたなびかせて。
黄金バットがいました、子供達は彼の姿を見て目を輝かせて言いました。
「黄金バット来てくれたんだ!」
「僕達を助けに来てくれたんだ!」
子供達は黄金バットに声援を送ります、そして。
黄金バットは颯爽とです、ビルの上から飛び降りて。
黒バットの前に子供達を守る為に着地しました。もうその右手にはフェンシングの細長いレイピアがあります。
その黄金バットにです、黒バットもレイピアを出してでした。
お互いに剣を突き合い勝負をはじめました、フェンシングのその一騎打ちがはじまりました。ですが銀と銀の火花が散る勝負は。
百合程してからでした、黄金バットの突きが。
黒バットのレイピアを弾き飛ばしました。それを受けて。
黒バットは悔しい感じを見せつつです、そのマントを翻し。
闇の中に消えていきました、子供達はその全てを見てから黄金バットに言いました。
「黄金バット有り難う!」
「助けてくれて有り難う!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
黄金バットはその子供達にお顔を向けるといつもの笑い声を出してでした、そのうえで。
彼もまたマントを翻しそして何処かへと消えました、そして。
そのうえで、です。跡に残った子供達は思うのでした。
「黄金バットってね」
「僕達のピンチには絶対に来てくれるんだね」
「例え僕達が何処にいても」
「どんな状況でも」
例え黒バットやナゾー博士に追い詰められていてもというのです。
「来てくれてなんだ」
「助けてくれるんだね」
「それが黄金バット」
「正義のヒーローなんだね」
このことをお話しました、そして。
皆お家や学校、そして駄菓子屋さんでこのことをお話しました、するとお婆ちゃんは目を細めさせて言うのでした。
「ほら、言った通りだね」
「うん、黄金バットはね」
「絶対に来てくれるんだね」
「僕達が悪い奴に追い詰められた時は」
「助けを呼べば」
「そうだよ、何処からでもすぐに駆けつけてくる」
まさにというのです。
「それが黄金バットなんだよ」
「黒バットも出て来たけれど」
「それでもだね」
「黄金バットがいる限り」
「僕達は大丈夫なんだね」
「黄金バットはあんた達の味方だよ」
まさにというのです。
「正義のヒーローだからね」
「だから僕達を助けて」
「黒バットもやっつけてくれたんだね」
「そうだよ、皆感謝するんだよ」
お婆ちゃんはその目を細めさせてです、子供達にこうもお話しました。
「黄金バットに」
「うん、僕達を守って助けてくれる正義の味方にね」
「そうするよ」
子供達はお婆ちゃんの言葉ににこりと笑って頷きました、そしてその子供達にです。
お婆ちゃんは子供達にです、あらためて尋ねました。
「さあ、今日は何を買うんだい?」
「僕干し杏」
「僕よっちゃんイカ」
「水飴にするよ」
「チロルチョコ」
「ガム頂戴」
「はいはい、わかったよ」
お婆ちゃんは子供達の言葉に笑顔で応えました、そしてです。
子供達からお金を受け取ってそのお菓子を渡しました、子供達はお菓子を買ってからそれぞれのおもちゃも楽しみながら黄金バットのお話をして心から有り難うと言いました。
第三話 完
2015・3・13
新たな敵が登場。
美姫 「その名も黒バット」
噂をすればと言うが、まさにその話を聞いた帰りに出会う事になるとはな。
美姫 「子供たちにとっては災難だったわね」
だな。黄金バットのお蔭で助かったけれどな。
美姫 「本当に良かったわね」
次回もまた何かが起きるのか。
美姫 「次回も待っていますね」