『ドリトル先生とサーカスの象』




                第二幕  その子の名前

 先生は紅茶を飲んだ後も象についての論文を書いていきます、その中で皆は先生にあることを尋ねました。
「その三歳の子だけれど」
「サーカスで死んだ」
「どんな名前だったのかな」
「僕達まだ名前聞いてないよね」
「ケニーっていうんだ」
 先生は論文の資料を手にしながら皆にやや俯いて悲しいお顔になって答えました。
「その子はね」
「ケニーだね」
「男の子の名前だね」
「如何にもアメリカの名前だね」
「そう、アメリカのサーカス団にいたからね」
 だからだというのです。
「アメリカの男の人の名前だったんだ」
「大人になってもだね」
「その名前でいられたんだね」
「生きていたら」
「そう、けれどね」 
 それでもというのです。
「生まれた時からサーカスの象になるって決まっていたんだ」
「生まれた時から」
「もう既になんだ」
「そのことは決まっていたの」
「そうだったんだ」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「三歳までお母さんと一緒にいてね」
「幸せだったんだね」
「その時までは」
「お母さんにずっと甘えていて」
「愛されていて」
「けれどサーカスの象は幼い頃から調教されるから」
 だからだというのです。
「もうね」
「その頃からだね」
「お母さんと引き離されて」
「調教がはじまったんだ」
「三歳から」
「お話した通りね」
 まさにというのです。
「何週間何ヶ月、もう半年ね」
「四本の足を縛られて」
「ずっと立たされて」
「辛い思いをさせられたね」
「毎日」
「夜遅くになるまでずっと立たされてね」
 足を縛られて動けなくされてというのです。
「そんな状況辛いに決まってるね」
「ずっと立たされるなんてね」
「夜遅くまで」
「誰だって疲れるよ」
「象だってね」
「それを三歳の子が受けてだよ」
 そうしてというのです。
「半年もやらされて」
「心が壊れて」
「反抗する気も考える力も奪われて」
「それからだね」
「芸を仕込まれたんだね」
「そうだよ、その芸の仕込み方も酷いもので」
 そうであってというのです。
「耳の後ろをいつも叩かれれる」
「象の一番敏感な部分を」
「鉤爪の付いた棒の先で」
「そうされていたんだね」
「そうだよ、サーカスの芸を仕込むなんてね」
 そうしたことはというのです。
「どれだけ大変かね」
「言うまでもないよ」
「僕達もサーカスにいたし」
「色々見てきたのよ」
「だから知ってるよ」
「嫌になる位にね」
「そうだね、上手く出来たらご褒美よりも」
 それよりもとです、先生は皆に言いました。
「今言ったみたいに叩いて」
「暴力だよね」
「苦痛と恐怖で教え込むんだよね」
「芸をね」
「本当に無理矢理に」
「虐待そのものでね、ケニーは芸を仕込まれて」
 そうしてというのです。
「難しい芸が出来る様になったけれど」
「それまでどんな酷い思いしたか」
「痛くて苦しかったか」
「怖かったか」
「半年も立たされたうえに」
「そうして怯えながら必死に芸を覚えて」
 そのうえでというのです。
「ショーに出たけれど」
「それでもだよね」
「ショーに出る以外は小屋か檻の中で」
「ずっと閉じ込められていたね」
「ケニーだけで」
「そうだったんだ、狭い中に閉じ込められていて」
 ショーで出る以外はです。
「象はアフリカやインドにいてね」
「暑い場所にいるんだよね」
「象って基本ね」
「だから日本だと飼育に気を使ってるね」
「厩舎の中は暖かい様にしているね」
「けれどそのサーカス団はそんなことしていなくて」
 暖かさなんて考えていなくてというのです。
「それでね」
「寒くて冷たい檻か小屋の中」
「冬はそんなところにいたんだね」
「アメリカって冬寒いところ多いのに」
「ケニーはそんな中にいたんだ」
「三歳の赤ちゃん象がね」
 そんな子がというのです。
「寒い中一頭だけでいて」
「それは大変だよ」
「ケニーも体調崩すよ」
「そうなってしまうわ」
「そう、冬の寒さで体調を崩して」 
 実際にというのです。
「弱ってご飯を食べられなくなったけれど」
「それでもなんだ」
「まだショーに出させられたんだ」
「弱っていたのに」
「そうだよ、弱っていたのにショーに出させられて」
 そうなってというのです。
「下痢で腸から血を出したのに」
「えっ、それまずいよ」
「命の危険があるよ」
「下痢でもそこまでいったら」
「腸から血を出すなんて」
「すぐに治療しないと」
「けれどまだショーに出させられて」
 ケニーはというのです。
「遂に動けなくなって小屋に戻されたけれど」
「治療受けなかったんだ」
「どう見ても危ないのに」
「それでもなんだ」
「その夜警備の人が観て回ったら」
 そうしたらというのです。
「ケニーは冷たくなって動かなくなっていたんだ」
「死んだんだね」
「まだ三歳だったのに」
「赤ちゃんだったのに」
「そうだよ、徹底的に虐待されて酷使されて」
 そうした仕打ちを受けてというのです。
「最後は一頭で寂しくね」
「死んだんだね」
「酷い話だね」
「これ以上はないまでに」
「聞いていて辛いよ」
「悲しいわ」
「しかもそのサーカス団では二十年で三十頭も亡くなっているから」 
 象達がというのです。
「挙句ショーの時に堀に飛び込んで自殺する子まで出て」
「問題になって」
「象のショーが中止になったんだ」
「そうなったのね」
「そして中止になったら」
 象のショーがというのです。
「そのサーカス団はすぐに倒産したんだ」
「どれだけ象に依存していたか」
「そして象を虐待していたか」
「言うまでもないね」
「本当にね」
「サーカスのショーはね」
 それはというのです。
「今もだよ」
「生きものの芸があって」
「虐待と表裏一体だね」
「まさにね」
「そのことを覚えておかないとね」
 そうでないと、というのです。
「駄目だね」
「そうだね」
「今も変わらないね」
「あの時もだったけれど」
「それでもね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「覚えておこうね」
「そうしたことがある」
「今もケニーみたいな子がいる」
「そして苦しんでいるって」
「そしてこうしたことに何も思わない人もいることもね」
 先生はさらに悲しいお顔になって述べました。
「覚えておこうね」
「そのことも悲しいね」
「こんなことを聞いても何とも思わない人がいる」
「世の中にそんな人がいるって」
「確かにサーカス団の人達にも生活があるけれど」
 それでもというのです。
「やっていいことと悪いことはあるね」
「全くだよ」
「虐待なんてするものじゃないわ」
「何があってもね」
「許されないよ」
「僕はそう思うけれど」
 先生はとです、やはり悲しいお顔で言いました。
「そうじゃない人もいるんだ」
「世の中色々な人がいるけれど」
 それでもと言う老馬でした。
「酷い人もいるからね」
「あの団長さんみたいな人もいるね」 
 ジップはサーカス団の団長さんを思い出しました。
「もっと酷い人だってね」
「有り得ない位酷い人いるからね」
「世の中にはね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「善性が全くない」
「自分さえよければ何をしてもいいって人がね」
「そんな人が好きな人もいて」
 ジップも悲しいお顔で言いました。
「こうしたことに興味も持たないね」
「聞いても何とも思わない」
 ダブダブは怒って言いました。
「そんな人がいるのよ」
「世の中先生みたいな人もいれば」
 そしてと言うチーチーでした。
「そんな酷い人もいるね」
「そんな人が多くなったら」
 ポリネシアは心から思いました。
「世の中はとんでもないことになるわ」
「そんな世の中にならないで欲しいね」
「全くよ」
 チープサイドの家族も心から思いました。
「そんな世の中になったら」
「世の中どれだけ酷いものになるか」
「ケニーみたいな子がどんどん増えて」
 そしてと言うホワイティでした。
「恐ろしいことになるね」
「日本でも何処でもそんな人はいるから」
 トートーもわかっていることです。
「増えないで欲しいね」
「先生みたいな人が増えて欲しいよ」
 ガブガブは先生を見て言います。
「絶対にその方がいいよ」
「僕は自分を立派とは思っていないけれど」 
 それでもと言う先生でした。
「けれどね」
「それでもだよね」
「先生はそんな人達と違うからね」
「優しくてね」
「痛みもわかるから」
「テロがあって大勢の人達が死んで傷付いて」
 先生は今度はこんなことをお話しました。
「そのテロを起こした人達が権力に反対するからいいとか言う人はどうかな」
「絶対に間違っているよ」
「テロで殺された人の命はどうなるの?」
「傷付いた人達は身体にも心にも傷を負ったよ」
「遺族の人達の悲しみは?」
「無関係なのに巻き込まれたのに」
「そんなこと言う人に思いやりや優しさはあるかな」
 先生は皆に尋ねました。
「法律を守ろうという意識や命を大事に思う気持ちや人の気持ちを考える配慮は」
「ないね」
「何処にもないね」
「そんなものは全く見られないわ」
「とんでもない考えだよ」
「有り得ないまでに酷いよ」
 皆で先生に怒って答えます。
「権力に反対してもテロは駄目だよ」
「関係ない人を殺したら」
「それは絶対に許されないよ」
「何があってもね」
「それで人の命や痛みや悲しみをわからない、わかろうともしないなら」
 それならというのです。
「もう人としてね」
「最低だね」
「人間ですらないよ」
「最低過ぎて」
「もうどうしようもないわ」
「そうした考えの人はね」
 それこそというのです。
「ケニーが死んでもね」
「何とも思わないね」
「自分は人の命の大切さや傷付いた心のことや遺族の人達の苦しみや悲しみなんてわからないわかろうともしないぞって言ってるのと同じだし」
「そんな人達はね」
「ケニーについてもだね」
「ケニーを政府に反対するテロリストが殺したら」
 そうであるならというのです。
「平気でそう言うよ」
「権力に反対するならいい」
「ケニーを虐待して殺してもいい」
「三歳の赤ちゃん象を殺しても」
「そうしてもだね」
「若しそんな人が目の前にいたら」
 先生は今度は怒って言いました。
「僕はその人と二度とお話をしないよ」
「そうだね」
「先生は紳士だから暴力は振るわないけれど」
「暴言も言わないけれど」
「それでもだね」
「軽蔑するね」
「心からね、そんな人は人間ですらないよ」
 こうまで言いました。
「最早ね」
「人間の底を抜いた」
「もうどうしようもない存在だね」
「それこそ」
「そこまで酷いね」
「そうだね、こんな人にはなりたくないし」
 さらに言う先生でした。
「会いたくもお話したくもないよ」
「最低過ぎるからね」
「何が権力に反対するならだよ」
「そういう問題じゃないよ」
「命のことはね」
「これが愛国でも政府を支持していてもだよ」
 立場が違えどというのです。
「同じだよ」
「同じく最低だね」
「命の大切さがわからないなら」
「わかろうともしないなら」
「心の痛みや悲しみを理解しないなら」
「そんな人とはお付き合いしたくないし」
 そうであってというのです。
「そうした人はもうそこからね」
「よくならないね」
「人の痛みを理解しないね」
「ケニーのことだって」
「そうだね」
「まず駄目な人は何をやっても駄目じゃないよ」 
 先生はこのことは否定しました。
「最初は誰も何も出来ないよ」
「けれど努力したらね」
「出来る様になるからね」
「駄目な人は何をやっても駄目じゃないね」
「努力すればよくなるね」
「けれどよくなろうって気持ちがないと」
 そうでないと、というのです。
「努力しないからね」
「よくならないね」
「そう思わないと」
「まずはね」
「そうだよ、努力してこそね」 
 そうであってこそというのです。
「人はよくなるから」
「だからだね」
「そんな人は努力しないね」
「そこまで酷いとね」
「人間として」
「不思議とあまりにも性格が酷い人はね」
 今お話している様な人はというのです。
「努力しないからね」
「よくなろうとしないね」
「もうひたすら低い場所にいて」
「そこから出ないね」
「不平不満や悪口ばかり言って」
「そのうえでね」
「そうだからね、そんな人はよくならないよ」
 そうだというのです。
「まずね」
「酷過ぎるままでね」
「そこからよくならなくて」
「成長しない」
「優しさや思いやりなんて身に着けないね」
「そうだよ、そしてそんな人はどんどん腐っていって」
 人間以下でないままというのです。
「腐り果ててね」
「滅ぶね」
「そうなるね」
「そんな人は」
「最後は」
「そうなるものだよ」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「その通りだね」
「先生はずっと努力しているけれど」
「そんな人達は努力しないで」
「よくならないね」
「そうだよ、本当にそんな人達みたいにはなりたくないよ」
 心から思い言う先生でした、そして論文を書いていってです。
 一段落したところで学園に来る八条サーカスのことを調べます、ネットを検索するとそのサイトが出てです。
 何時何処でどれだけ巡業するかそしてどんなショーを披露するかスタッフや生きもの達のことも書かれていますが。
 詳しく見てです、先生は言いました。
「評判通り生きものも皆ね」
「大事にされているんだね」
「八条サーカスだと」
「そうなんだね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「安心出来るね」
「ショーを観ても」
「それでもだね」
「安心出来るね」
「虐待されていないならね」
 生きもの達がというのです。
「何よりだよ」
「全くだね」
「そうであったらね」
「僕達もほっとするよ」
「本当にね」
「象もいるけれど」
 それでもというのです。
「ちゃんとね」
「大事にされていて」
「困っていないね」
「ケニーみたいに」
「サーカス団も色々で」
 そうであってというのです。
「八条サーカスはいい団体だよ」
「よかったね」
「そうした団体でね」
「所謂ホワイトね」
「そうした団体だね」
「よく労働条件が言われるけれど」
 このお話もするのでした。
「これは人だけじゃないよ」
「生きものもだよね」
「そうだよね」
「僕達も同じだよ」
「労働条件は考えて欲しいわ」
「何といってもね」
「ケニーの労働条件は最悪だったよ」
 彼の場合はというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「そう言うしかないね」
「まさに虐待だよ」
「とんでもないブラックだったわ」
「そうしたところは多分ね」 
 こうも言う先生でした。
「人の待遇もね」
「よくないね」
「象をそこまで酷使するなら」
「酷い虐待をするなら」
「人だってね」
「大体ケニーは赤ちゃんだったんだよ」 
 三歳で死んだ彼はというのです。
「赤ちゃんにそこまで酷いことが出来るなら」
「それならだよね」
「人に対してもだよね」
「酷い扱いだよね」
「絶対に」
「容易に予想出来るよ、そして人を粗末に扱うなら」 
 それならというのです。
「生きものに対してもね」
「同じだね」
「粗末に扱うね」
「絶対に」
「それこそケニーみたいにね」
「その筈だよ、ケニーは本当にまずは毎日夜遅くまで立たされて」
 足を四方からそれぞれ縛られたうえで、です。
「へとへとになって心もね」
「壊されて」
「人間に逆らえない様にして」
「そうされてね」
「いつも耳の後ろを叩かれてね」 
 難しい芸を仕込まれる時にです。
「痛くて苦しくて辛くて」
「そんな思いを味わって」
「怖くて仕方ない中で芸を仕込まれて」
「それでだね」
「芸を覚えさせられて」
「ショーにどんどん出されてね」 
 そうしてというのです。
「ショーの時以外は冷たくて狭い檻や小屋の中にいて」
「運動も出来なくて」
「寒い思いもして」
「しかもお母さんは傍にいなくて」
「象も人も三歳位なら」
 それならというのです。
「何度も言うけれど」
「赤ちゃんでね」
「ずっとお母さんの傍にいたいよね」
「甘えたいよね」
「優しく包まれたいよね」
「そんな頃にずっと一頭だけでいて」
 そしてというのです。
「ショーに出させられてね、延々とね」
「ものみたいにだね」
「どんどん出されて」
「まともに休ませてもらわなくて」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「寒い中身体を壊して」
「食欲がなくなって」
「けれどそれでもショーに出させられて」
「動けなくなっても檻に戻されただけで」
「まともな診察もしてもらわなくて」
「寂しく死んだんだ」
 先生はとても悲しいお顔で言いました。
「赤ちゃんだっていうのに」
「そう思うとね」
「ちょっとね」
「有り得ない位酷いね」
「本当に」
「全くだよ」 
 先生は心から思い言いました。
「こんなことは二度とあってはいけないし」
「八条サーカスはちゃんとしているから」
「だからいいんだね」
「先生も安心出来るね」
「そうなんだね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「サーカス団が来たら団員の人達ともお話するけれど」
「まずはだね」
「安心したね」
「皆健康そうで」
「それでだね」
「うん、まずは安心しているよ」
 実際にとです、先生は皆に微笑んで答えました。そうしてそのうえで論文を書いて皆ともお話をしていきます。
 お家でもそれは同じですがトミーは先生に晩ご飯の時に言いました。今日のおかずは八宝菜と茸がたっぷり入った中華風のスープです。
「人も生きものも幸せにお仕事が出来たらです」
「サーカス団もいいね」
「はい」
 先生に答えました。
「本当に」
「そうだよね」
「いや、本当にです」
 トミーはお箸を手にして言います。
「ケニーみたいなことはです」
「二度とあってはいけないね」
「僕もそう思います」
「そう、そう思うことがね」
 先生はまさにと答えました。
「大事だよ」
「そうですよね」
「人としてね」
「若しケニーのお話を聞いて何も思わないなら」
 トートーは思いました、皆も一緒にいてちゃぶ台を囲んでいる先生とトミーの周りでご飯を食べています。
「人としてどうかな」
「おかしいよね」
 ジップも言います。
「その時点で」
「可哀想、二度とあってはならないとか」
「そう思うわね」
 チープサイドの家族もお話します。
「普通はね」
「そう思わずにいられないよ」
「若し何も思わないで」
「そうしたものとか平気で言うなら」 
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「その人はね」
「物凄く冷たい人だね」
「命を何とも思わない」
 ホワイティは怒った顔で指摘しました。
「まさにそんな人だね」
「いや、そんな人と一緒にいても」
 ダブダブも怒って言います。
「いい筈がないわ」
「絶対に自分のことしか考えていなくて」
 それでと言うポリネシアでした。
「いざとなればどんな人でも切り捨てるわ」
「思いやりも優しさもない」
 チーチーも言います。
「絶対にそんな人だね」
「冷酷非情って言葉があるけれど」
 ガブガブも怒ったお顔になっています。
「そんな人こそだね」
「赤ちゃんが虐待されて寂しく死んでも何も思わないなら」
 老馬は言いました。
「その人の心に温もりや優しさや思いやりを求めたら駄目だね」
「そうだよね」
 トミーは皆の言葉に頷きました。
「そんな人はね」
「その人がどんな立場でもね」 
 先生も眉を曇らせて言いました。
「いいことにはならないね」
「あまりにも冷たくてね」
「思いやりもなくて」
「何をするにもね」
「とんでもなく冷酷だね」
「そんな人だから」
 だからだというのです。
「間違っても立場のある人にはね」
「なったらいけないね」
「立場のある人に温もりがないと」
「恐ろしいことになるよ」
「確かに立場があるとね」
 それならというのです。
「厳しい判断も必要な時があるよ」
「何かを、誰かを犠牲にしないといけないとか」
「そうしたね」
「辛い判断も必要だよね」
「そうした時があるね」
「どうしても」
「そう、けれどね」 
 それでもというのです。
「優しさも必要なんだ」
「立場がある人にも」
「厳しい判断を下すしかない様な人でも」
「優しさは必要だね」
「命の重さ、尊さを理解していないと」
「本当に権力に反対するならテロもいいって言って」 
 またこうした人のお話をしました。
「テロ組織が殺人や誘拐、それも小さな子供や無関係な人達を殺してもいいって言うなら」
「もう、ですね」
 トミ―がそうした人についてとても嫌そうに応えました。
「人としてどうにもならないレベルまで堕ちていますね」
「そうだよ、つまりね」 
 先生はトミーに答えました。
「殺された人の命の尊さを考えない思いもしないってね」
「言ってるのと同じですね」
「被害者の遺族の人達の悲しみや苦しみもね」
「わからないしわかろうともしない」
「こんな人はね」
「どうにもならないですね」
「こんな人がそれなりの立場になったら」
 その時はといいますと。
「大変なことになるよ」
「権力に反対する人達が人を殺しても問題なしってするなら」
「もうだよ」
 それこそというのです。
「そこには法律なんてなくなってね」
「弱い人達を守るべき法律が」
「そしてね」 
 そのうえでというのです。
「悪い人達がね」
「やりたい放題しますね」
「そんな世界になるよ」
「恐ろしい世界ですね」
「人の命なんてね」
 それこそです。
「何の価値もない」
「権力に反対するっていう人達がやりたい放題の」
「最悪の場所になるよ」
「そうですね」
「そしてこんなことを言う人達はね」
 権力に反対するなら人を殺してもいいという様な人達はというのです。
「いざ自分が殺されるとなると」
「命乞いをしますね」
「絶対にね」
「そうなりますね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「泣いて叫んで家族でも犠牲にしてね」
「他の人はどうでもいいからですね」
「そんなことを言ってね」
「自分だけ助かろうとしますね」
「絶対にね」
 そうだというのです。
「そうしない筈がないよ」
「そうですよね」
「だからね」
 それでというのです。
「そんな人にはならないことだし」
「絶対にですね」
「そんな人とは間違ってもだよ」
「お付き合いしないことですね」
「それなりの立場にもね」
「就いてもらわない」
「そうだよ」
 絶対にというのです。
「若し政治家になろうとね」
「選挙に出るなら」
「もうね」
「投票したら駄目ですね」
「そうした人を支持する人達がいたら」 
 それならというのです。
「その人達も見たらいいよ」
「ケニーのお話を聞いても何も思わない様な人なら」
「うん、そんな冷たい人を支持する人達はどんな人達か」
「同じ様な人達ですね」
「レベル的にね、物凄く冷酷か」
 若しくはというのです。
「自分のことしか考えないかモラルがない」
「そんな人達ですね」
「悪いことだってね」
「平気でしますね」
「そんな人達だから」
 それ故にというのです。
「支持する人達もね」
「信じたら駄目ですね」
「何があってもね」
「そういえば」
 トミーは眉を曇らせて言いました。
「選挙ではです」
「そんな人も当選するね」
「宣伝次第で」
「そう、嘘の宣伝をね」
「拡散すれば」
「嘘は小さく一度言ったら人は信じないよ」 
 先生はまた眉を曇らせて言いました。
「とてもね」
「そうですよね」
「けれど大声で何度も吹聴するなら」
「それならですね」
「信じる人もいるから」
「騙してですね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「投票させるから」
「そして当選しますね」
「民主主義は実は嘘に弱いんだ」
「大声で何度も吹聴する嘘には」
「だから嘘吐きが当選してね」
 そうしてというのです。
「悪いことをしようと思ったら」
「政治家の立場を悪用して」
「当選することもあるんだ」
「とんでもないことですね」
「だからその人の言っていることをね」
「よく聞くことですね」
「嘘は嘘だよ」
 それに過ぎないというのです。
「それに過ぎないからね」
「だからですね」
「その人の言うことをよく聞いたら」
 そうすればというのです。
「きっとね」
「嘘かどうかわかりますね」
「そうだしね」
「幾ら大声で何度言っても」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「嘘吐きだってわかったら」
「当選させないことですね」
「その人がケニーのことで何とも思わない様なら」
「嘘吐きのうえに」
「政治家になったらどうかな」
「恐ろしいことになりますね」
「その国や地域のことは考えないで」
 そうであってというのです。
「自分の為だけにね」
「何でもして」
「そして他の誰がどうなってもですね」
「冷たくですね」
「無関心だよ」
 そうであるというのです。
「だから本当にね」
「恐ろしいことになりますね」
「そしてこんな人が一度失職して」
 そしてというのだ。
「また立候補してもね」
「投票したら駄目ですね」
「若しまた当選させるなら」
 その人をというのです。
「その国や地域の運命はね」
「決まりますね」
「自分で地獄に堕ちる様なものだよ」
 それこそというのです。
「だからね」
「また当選させるなら」
「その国や地域の人達はとんでもなく愚かで」
 そうであってというのです。
「絶対にね」
「碌なことにならないですね」
「地獄に堕ちて」
 そうしてというのです。
「泣くことになるよ」
「そうなりますね」
「自分の選択でね」 
 それでというのです。
「そうなるんだよ」
「そうですよね」
 トミーも確かにと頷きました。
「それもまた民主政治ですね」
「そうだよ」
 先生は真剣なお顔で頷きました。
「いい人を見ないでね」
「とんでもない人を選ぶと」
「自分達が泣くことになるんだ」
「そうした人達がとんでもないことをして」
「つまり民主主義は有権者がある程度賢くないと」
 さもないと、というのです。
「衆愚政治に陥ってね」
「自分達が泣きますね」
「地獄に堕ちてね」
 そうしてというのです。
「そうした一面もあるんだ」
「よく覚えておかないといけないですね」
「絶対にね」
「本当にそうですね」
「そこを間違えると」
 そうすると、というのです。
「泣くのは自分だからね」
「シビアだね」
「民主政治もね」
「間違えた選択をすると自分が泣く」
「そうなるものなのね」
「その人の政策も見ない位だと」
 それならとです、先生は皆にお話しました。
「絶対にだよ」
「駄目だよね」
「もう問題外よね」
「その人の政策まで見ないと」
「もうね」
「愚かな人は報いを受ける」
 そうなるというのです。
「まさにそれがね」
「民主政治だね」
「愚かさの報いを受けるのは自分」
「他ならないね」
「そうなんだ、その人を見て」
 そしてというのです。
「また政策もね」
「よくだよね」
「見ることだよね」
「さもないと自分達が泣くから」
「よく見ないと駄目ね」
「それが見ない人もいるのが」
 それがというのです。
「困るんだよ」
「そうだよね」
「本当にね」
「それ位見ないと駄目なのに」
「ただその人の言ってることに夢中になって」
「中身を見ないとね」
「愚かなことこの上ないよ」 
 まさにと言う先生でした。
「まして投票しないのはね」
「もっと駄目だね」
「いい人に投票する」
「そうしないと駄目だね」
「そうだよ」
 先生は確かな声で言いました。
「まずは投票する、そしてね」
「まともな人に投票する」
「その人を見て」
「そのうえでね」
「そうしないとね」
 皆も頷きます、そしてです。
 晩ご飯を食べていきます、八宝菜を食べていますが先生は八宝菜の中に烏賊や貝それに海老が入っていて言いました。
「海の幸が多いこともね」
「嬉しいですか」
「お野菜も沢山入っていてね」 
 トミーに言うのでした。
「そのこともね」
「嬉しいですか」
「うん、味付けもいいしね」
「レシピを見まして」
「それでだね」
「作りました」
 そうだというのです。
「ネットから」
「そうなんだね」
「いや、今はです」
 トミーはにこりと笑って答えました。
「ネットでかなりのお料理がです」
「レシピがあるんだね」
「ですからそれを見て」
 そうしてというのです。
「作れるので」
「便利になったんだね」
「八宝菜も。あとフィッシュアンドチップスも」
「イギリスの名物料理だね」
「美味しく作れます」
「評判悪いからね、あの料理は」
 先生はトミーに笑って応えました。
「美味しくないって」
「そうですよね」
「けれどだね」
「下ごしらえしてちゃんとした紙を下に置けば」
 そうしたことを行えばというのです。
「ちゃんとです」
「美味しくなるんだね」
「日本の調理の仕方で作りますと」
 そうすればというのです。
「これがです」
「美味しいんだね」
「はい」
 そうだというのです。
「ですから」
「それでだね」
「今度作っていいですか?」
「お願いするよ」 
 先生はにこりと笑って答えました。
「それじゃあおつまみにね」
「されますね」
「だからね」
 それでというのです。
「楽しみにさせてもらうよ」
「わかりました」 
 笑顔で応えるトミーでした、そしてです。
 今は八宝菜それにスープをご飯を一緒に楽しみました、先生は皆と一緒に楽しい時間を過ごしたのでした。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る