『ドリトル先生と奇麗な薔薇達』
第九幕 宝石と薔薇
先生はエンベルグさんがブラウシュタインさんに贈る結婚記念のプレゼントについて他ならぬエンベルグさんとお話しました。
「僕は薔薇をです」
「薔薇ですか」
「はい、このお花をモチーフにしまして」
そうしてというのです。
「造ったものをです」
「贈るのですね」
「そうしてはどうかとです」
「先生はお考えですね」
「はい、どうでしょうか」
「いいですね」
エンベルグさんは笑顔で応えました。
「それは」
「そう思われますか」
「僕も」
「実は薔薇の騎士を観て」
「それで、ですね」
「いいと思いましたが」
それでもというのです。
「銀の薔薇自体はです」
「それはですね」
「あの作品では花嫁と花婿は結ばれないですから」
エンベルグさんにもこのお話をしました。
「不倫もあって」
「結婚記念にはですね」
「銀の薔薇はです」
作品に出て来るそれはというのです。
「よくないので」
「他のものをですか」
「考えていまして」
そうであってというのです。
「銀以外の」
「それがいいですか」
「はい、そして」
さらに言うのでした。
「エンベルグさんはどういったものがいいでしょうか」
「プレゼントに」
「どうでしょうか」
「そうですね」
エンベルグさんは腕を組んで考えはじめました、先生の研究室の中で先生と向かい合って座って紅茶を飲みながら思考に入りました。
「赤と白を思いつきました」
「色ですか」
「今ふと」
「赤と白、それは」
先生はその色を聞いてこう返しました。
「薔薇戦争ですね」
「先生の母国の」
「はい、あの戦争ですね」
「赤薔薇と白薔薇ですね」
「ランカスター家とヨーク家の」
「王位を争った戦争でしたね」
「あの戦争を思い出したが」
それと共にというのです。
「赤は女性、白は男性で」
「夫婦ですね」
「そうなりますね」
「そうですね」
考えて言ったエンベルグさんも頷きました。
「いいですね」
「そう言われますか」
「ふと頭の中にです」
「赤と白の二色が浮かんで」
「それで、です」
そうなってというのです。
「言ってみたのですが」
「閃きですね」
「そうでした、考えていますと」
「閃くこともありますね」
「そうです、ただ私は思いつきはです」
それはといいますと。
「好きではありません」
「思いつきで何か言って行うと」
「そうするとですね」
「よくないですね」
「思いついてもです」
先生に言うのでした。
「それを言ったり行うと」
「悪いことになりますね」
「よくです」
先生にさらに言いました。
「それで自分に悪い結果をもたらしたり」
「周りにも迷惑をかけますね」
「思いつきはよくないですね」
「全く以て」
「ですが」
それでもというのです。
「閃きは、ですね」
「素晴らしいものです、閃きは何かをしていたり考えていて」
「そこで神様がもたらしてくれますね」
「思いつきは何もしていなくて」
「思いついてですね」
「何も考えず動き人にやらせるもので」
先生も言います。
「閃きとは違います」
「いいか悪いか検証しないので」
「それはです」
どうにもというのです。
「最悪のです」
「結果をもたらしますね」
「時として」
「そうですね」
「ですが閃きは下地がありまして」
「神様が与えてくれるものなので」
「いいのです、似ている様で」
「実は違いますね」
「今エンベルグさんにもたらされたのは閃きです」
思いつきでなくというのです。
「ではその閃きからです」
「思いつかれますか」
「そうします」
まさにというのです。
「必ず」
「そうしてくれますか」
「赤と白で薔薇をモチーフに造られたものを」
「そうしたものをですか」
「考えさせてもらいます」
「お金はありますし」
エンベルグさんはこちらのお話をしました。
「それにです」
「造ってくれる人もです」
「宝石や金物の」
「宝石!?」
そう聞いてです、思わずです。
今度は自分が閃いたと思いました、ですが今は言わず。
エンベルグさんにそれではと言葉を返しました、そしてエンベルグさんが退室して職場の動物園に戻ってからです。
今も一緒にいる動物の皆にです、こう言いました。
「閃いたよ」
「今度は先生がなんだ」
「先生が閃いたんだ」
「そうなったんだ」
「そう、そしてね」
それにというのです。
「その閃きはね」
「何かな」
「エンベルグさんは色だったけれど」
「赤と白ね」
「その二色だったけれど」
「僕は宝石だよ」
それが先生の閃きだというのです。
「それなんだよ」
「宝石なんだ」
「そういえばエンベルグさん言ってたね」
「宝石職人のお知り合いもいるって」
「金物職人のね」
「日本もそうだけれど」
先生が今暮らしている国もというのです。
「ドイツも職人の国だね」
「よく言われているね」
「徒弟制度があってね」
「マイスターとか言われる人達がいてね」
「あの国を形成する一つになっているね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「宝石や金物の職人さんもね」
「おられるんだね」
「エンベルグさんのお知り合いに」
「そうなんだね」
「あの人のお家はおドイツで大きな会社を経営しているんだ」
エンベルグさんのお家はというのです。
「代々ね、今は八条グループの系列の企業の一つで」
「それでだね」
「八条学園の施設で働いているんだ」
「動物園で」
「そうだよ、それでお金には困っていなくて」
そうであってというのです。
「職人さんにも知り合いの人達がね」
「おられるんだね」
「ドイツに」
「そうなのね」
「そうなんだ、日本にもね」
この国にもというのです。
「お知り合いが沢山いるけれどね」
「成程ね」
「顔の広いお家なんだね」
「そうなのね」
「そう、八条グループの系列になったのは戦後だけれどね」
二次大戦後というのです。
「古い企業だよ」
「そうなんだね」
「成程ね」
「そうした企業だね」
「ドイツにも日本にもつてがある」
「職人さん達にも」
「そう、だからね」
それでというのです。
「何を造るか決まったら」
「その時はだね」
「お金はエンベルグさんが出して」
「ドイツの職人さん達が造ってくれて」
「いいものが出来るのね」
「そうなるよ」
こう言うのでした。
「必ずね」
「うん、じゃあこれからね」
ダブダブが先生に言いました。
「じっくりとね」
「先生は考えよう」
「赤と白、宝石からね」
チープサイドの家族もお話します。
「考えよう」
「是非ね」
「さて、どういったものを考えてくれるか」
ジップも言います。
「楽しみだね」
「先生はじっくりと考える人だからね」
「その知識と教養からね」
オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「だからね」
「いいものが出るね」
「それじゃあね」
トートーはにこりとして先生に言いました。
「じっくりと考えてね」
「僕達はいつも通りね」
まさにと言うチーチーでした。
「その先生をフォローしていくよ」
「じゃあそろそろティータイムだから」
ガブガブは研究室の壁の時計で時間を確認しました。
「お茶を出すわね」
「もうお茶は紅茶を出しているから」
ホワイティはミルクティーを見ています。
「それでいいね」
「今回はイギリス風だね」
チーチーはそちらと言いました。
「スイーツは」
「オーソドックスにそうしよう」
老馬はスイーツ達が入っている研究室の中の冷蔵庫を見て言います。
「今日はね」
「そうしましょう」
ポリネシアも言いました。
「今日のティーセットはね」
「いつも有り難う」
先生は早速ティーセットを出してくれている皆に笑顔でお礼を言いました。
「嬉しいよ」
「いやいや、先生あっての僕達だから」
「家族だからね」
「先生と一緒でどれだけ幸せか」
「その幸せに応える為に」
「フォローさせてもらってね」
「先生に笑顔になってもらうわ」
こう言うのでした。
「是非ね」
「だからだよ」
「遠慮は無用だから」
「けれどお礼を言ってもらって」
「やっぱり嬉しいわ」
「本当にね」
「お礼、感謝の気持ちは忘れないよ」
先生はです。
「何かをしてもらうとね」
「嬉しいよね」
「それだけで」
「そうなるよね」
「嬉しいと思う気持ちは大事で」
そうであってというのです。
「人に良くしてもらうことに対してね」
「嬉しいと思う」
「その気持ちを忘れないことだね」
「絶対に」
「自分一人じゃ出来ることは限られていて」
そうであってというのです。
「そこでよくしてもらって助かる」
「世の中いつもそうよね」
「誰でもね」
「僕達もそうで」
「先生だって」
「そのことも忘れないで」
そうしてというのです」
「それでね」
「いつも感謝して」
「そしてお礼を言う」
「そうすることだね」
「絶対に」
「僕はそう思うよ、そしてね」
そのうえでというのです。
「今から皆でね」
「先生だけじゃなくて」
「僕達もね」
「ティータイム楽しもうね」
「そうしよう。今日もいいね」
今度は三段のティーセットを見て言いました。
「上段はスコーンでね」
「中段はケーキでね」
「下段は苺とオレンジよ」
「素晴らしいよ、紅茶だってね」
ミルクティーを手にして言います。
「とてもね」
「美味しいしね」
「いいこと尽くしだよね」
「本当に」
「だからね」
それでというのです。
「今日も皆で楽しもう」
「そうしよう」
「紅茶にスイーツを」
「そうしよう」
こうお話して皆でティータイムを楽しみます、その中で先生は皆にこんなことを笑顔で言ったのでした。
「プレゼントの方はあと少しでね」
「考えがまとまりそうなんだ」
「そうなのね」
「あと少しで」
「そんな感じだよ」
こう言うのでした。
「どうもね」
「それじゃあね」
「考えていきましょう」
「そのあと少しを」
「そうしていきましょう」
「是非ね、そして」
そのうえでというのです。
「エンベルグさんにお話するよ」
「そうするんだね」
「いよいよって感じね」
「今回のお話もね」
「いい結末を迎えられそうだね」
「うん、結婚や恋愛はね」
先生は笑顔で言いました。
「出来る限り幸せにならないとね」
「ハッピーエンドだよね」
「何といっても」
「そうであるべきだね」
「シェークスピアで言うとね」
この人の作品ならというのです。
「ロミオとジュリエットでなく」
「あの作品は悲劇だからね」
「素晴らしい作品だけれど」
「結末はね」
「どうにもだよね」
「悲劇だからね」
それ故にというのです。
「他の作品にすべきでね」
「あの人の作品でもね」
「あの人沢山の作品残しているし」
「ロミオとジュリエットだけじゃないから」
「他の作品にすべきね」
「例えばお気に召すままとか」
まずはこの作品を出しました。
「真夏の夜の夢とかね」
「どちらもそうだね」
「ハッピーエンドだよね」
「喜劇でね」
「幸せに収まるね」
「悲劇も着劇も書いている人で」
シェークスピアはというのです。
「恋愛、結婚もね」
「ハッピーエンド」
「それが一番だよね」
「何と言っても」
「そうだよ、ただ一緒になって終わりか」
その時点でというのです。
「それはね」
「違うよね」
「まだ先があるよね」
「恋愛も結婚も」
「それからもね」
「そうだよ、まだね」
それからもというのです。
「続くから」
「それからもだね」
「幸せになる様にしないとね」
「努力しないとね」
「駄目だよね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「人生はその人が生きている限り続くし」
「恋愛もそうだし」
「それならね」
「そう、一緒になっても」
それでもというのです。
「幸せを続ける為にはね」
「努力をして」
「それでだね」
「幸せになっていく」
「そうすることね」
「一緒になるまでが大変だとしても」
そうであってもというのです。
「まだね」
「それからもだね」
「一緒になっても」
「それからも大変だったりする」
「そうしたものね」
「恋愛や結婚もそうだけれど」
それだけでなくというのです。
「人生そして歴史もね」
「終わりじゃないよね」
「一旦ハッピーエンドになっても」
「それからもあって」
「よくなる様に努力していかないとね」
「そうだよ、若し努力しなかったら」
さもないと、というのです。
「折角幸せになっても」
「それは続かないね」
「不幸なことになるね」
「そうなってしまうわね」
「だからね」
先生はさらに言いました。
「一緒になれて、結婚しても」
「それで終わりじゃないから」
「だからだよね」
「それからも努力する」
「そうしないと駄目だね」
「絶対に」
「そうだよ、恋愛はね」
これはというのです。
「結末はね」
「結ばれて終わりじゃない」
「それからもある」
「幸せになる為に」
「努力していくものだね」
「そこが物語と違うよ、幸せになりたいなら」
そう願うならというのです。
「恋愛や結婚に限らずね」
「努力しないと駄目だね」
「そうしてこそ幸せになれるね」
「そうだよね」
「そうだよ、だから僕も僕なりにね」
先生にしてもというのです。
「努力しているつもりだよ」
「うん、先生努力しているね」
「いつも謙虚で穏やかで紳士である様にして」
「学問に励んで」
「信仰を守ってね」
「節度も保ってるしね」
「そうしないとね」
さもないと、というのです。
「本当にね」
「幸せになれないよね」
「先生も努力しないと」
「そうだよね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「そのつもりだよ」
「そして僕達もだよね」
「努力しているね」
「そうだね」
「そうしているね」
「そうだと思うよ、だからね」
皆も努力しているからだというのです。
「皆も幸せなんだよ。いつも僕を助けてくれて」
「家事とかね」
「何かと先生のフォローをして」
「そうしてだね」
「努力しているんだね」
「私達にしても」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「皆も幸せなんだよ、だから一緒にね」
「幸せで」
「これからもだね」
「幸せでいられる様にするんだね」
「そうしていこうね」
是非にというのです。
「皆でね」
「そうしようね」
「それじゃあね」
「これからもね」
「皆で努力していこうね」
笑顔でお話します、そしてです。
皆で幸せのお話もしました、そうして日曜日の朝先生はこれはという顔になって朝ご飯の後で皆にお家の居間で言いました。
「白薔薇と赤薔薇かな」
「ああ、エンベルグさんのプレゼントの」
「それはだね」
「その二つにするんだね」
「エンベルグさんが白薔薇でね」
そうであってというのです。
「ブラウシュタインさんが赤薔薇でね」
「ご夫婦でだね」
「白薔薇と赤薔薇だね」
「そうするんだね」
「うん、父の日は白薔薇を贈るし」
お父さんにです。
「赤薔薇は女性の象徴だしね」
「そういえばベルサイユの薔薇でもね」
ここで言ったのはホワイティでした。
「マリー=アントワネットさんは赤薔薇だったね」
「女性、王妃様だからね」
それでと言うチーチーでした。
「あの人は赤薔薇だったね」
「それでオスカルさんは白薔薇だったね」
ジップはこの人のお話をしました。
「男装の麗人の」
「男の人ってことになっていて」
ダブダブはオスカルさんのその設定について言及しました。
「白薔薇だね」
「そう考えたら白薔薇は男の人だね」
老馬はしみじみとした口調で言いました。
「赤薔薇は女の人で」
「いや、そう考えたら」
「先生の閃きかなりいいよ」
オシツオサレツも二つの頭で言います。
「本当にね」
「それでいいと思うよ」
「ここで閃くのが先生だけれど」
「いつも知識や教養からなのよね」
チープサイドの家族はこう言いました。
「先生の学問からね」
「閃きが出るね」
「今回もそうだし」
それでとです、トートーは言いました。
「学問って大事だね」
「閃くにも何もなしじゃないね」
ガブガブはしみじみとした口調で言いました。
「何かがあってだね」
「今回もそうだし」
ポリネシアは笑顔で応えました。
「学問はすべきだね」
「そうだね、白薔薇が男性で赤薔薇が女性というのも」
その考えもとです、先生は応えました。
「父の日に女性の象徴という知識があって」
「ベルサイユの薔薇でもだよね」
「あの漫画は冗談抜きに名作だし」
「面白いだけじゃなくて物凄く学べるし」
「そこからもだよね」
「うん、本当に僕はね」
先生自身も言うのでした。
「学問はね」
「欠かせないよね」
「閃きの元にもなる」
「そうしたものだから」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「これからも学んでいくよ、それにね」
「それに?」
「それにっていうと」
「白薔薇と赤薔薇が一緒にあるのは」
このことはといいますと。
「夫婦仲良くでもあるからね」
「そうした意味もあるんだね」
「白薔薇と赤薔薇が一緒にあるのは」
「ご主人と奥さんだけじゃなくて」
「二つ一緒にあったら」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「また薔薇戦争のお話になるけれどね」
「白薔薇と赤薔薇の」
「あの戦争だね」
「イングランドの王位を争った」
「ヨーク家とランカスター家の」
「この戦争はチューダー家が残って」
そうなってというのです。
「チューダー朝を立ち上げたね」
「そうそう、結局ね」
「ヨーク家でもランカスター家でもなく」
「ランカスター家の系列のチューダー家が継いで」
「ヘンリー七世となったね」
「シェークスピアのリチャード三世の結末でもね」
その時もというのです。
「最後ヘンリー七世が即位してね」
「そうそう、終わったね」
「リチャード三世が戦死して」
「暴君が倒れて」
「そうなったという結末になっているわ」
「そのヘンリー七世だけれど」
この人のお話をするのでした。
「赤薔薇と白薔薇を一緒にしていたね」
「そうだったね」
「ヨーク家の系列の人と結婚して」
「二つの家が一緒になった」
「その象徴としてね」
「婚姻政策だね」
それだというのです。
「それによってね」
「そうなったね」
「白薔薇と赤薔薇が一つになったね」
「チューダー朝の時に」
「そうだね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「このこともあってね」
「白薔薇と赤薔薇だね」
「夫婦仲良く」
「その意味もあるね」
「そうなるよ、この知識もあったから」
それでというのです。
「閃いたのかな」
「そうなるね」
「そう考えると面白いね」
「とてもね」
「こうしたことも」
「そうだね、あの戦争は大変な戦争で」
薔薇戦争はというのです。
「もう誰が誰と誰の子供でね」
「誰と結婚して誰の親か」
「どの陣営で何をしたか」
「物凄くわかりにくいよね」
「それぞれのお家が絡み合っていて」
「内戦だったということ自体大変だったけれど」
それだけでなくというのです。
「そのね」
「お家とお家のね」
「つながりがね」
「もう滅茶苦茶複雑で」
「わかりにくいんだよねね」
「その前の百年戦争もね」
フランスとのこの戦争もというのです。
「元々はこのお家とお家のつながりからだったしね」
「フランスのカペー朝が断絶して」
「ヴァロワ家が王位を継ぐ時にね」
「イングランド王エドワード三世がフランス王家の血を引いていたから」
「フランスの王位を主張したわね」
「そうなったから」
だからだというのです。
「起こったね、毛織物やワイン製造が盛んなフランドル地方を手に入れる為に」
「王位を口実にしてね」
「それでだったね」
「実際フランス王狙ってたし」
「お家のことで起こった戦争だったね」
「あの頃から複雑で」
イングランドの王室の血縁関係はというのです。
「それが薔薇戦争の頃になると」
「もう複雑過ぎて」
「何が何だかわからない」
「学んでもわかりにくいわね」
「本当に」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「あの戦争を学ぶことはね」
「難しいよね」
「理解しにくいよね」
「ちょっとやそっとではわからないわね」
「あの戦争のことは」
「そうなんだよね、あそこまで血縁関係が入り混じっていると」
そうした状況ではというのです。
「わかりにくいよ」
「全くだね」
「長い内戦だしね」
「婚姻政策が多用されて」
「凄いことになっていたわ」
「婚姻政策は人類の歴史ではよくあることで」
そうであってというのです。
「日本でもあるね」
「王侯貴族ではね」
「よくあることだね」
「本当にね」
「そう、ハプスブルク家なんてね」
欧州随一の名門として知られるこのお家はというのです。
「それによって栄えたね」
「そうそう、結婚してね」
「相手のお家の勢力を取り込んでいって」
「物凄く大きな勢力になったわ」
「神聖ローマ皇帝にもなったし」
「イギリスも同じで」
婚姻政策を多用したことはというのです。
「それでね」
「それぞれのお家が結婚し合って」
「勢力を維持したり拡大していって」
「そうしたことが繰り返されて」
「あんな複雑な状況になったわね」
「そうだよ、そしてその状況もね」
あまりにも複雑な血縁関係とそれに基づく勢力関係や人間関係もというのです。
「変わったんだよ」
「薔薇戦争が終わって」
「そしてチューダー朝が興って」
「それでだね」
「そうだよ、まあ今でも複雑だけれどね」
先生は笑ってこうも言いました。
「イギリスの王侯貴族の婚姻関係って」
「そうだよね」
「ぱっと見で理解出来ないね」
「他の国の王家との婚姻もあるし」
「どうにもね」
「ビクトリア女王のお孫さんの中に」
その人達の中にというのです。
「ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世がいたしね」
「そうなんだよね」
「だからあの人エドワード七世の甥御さんなんだよね」
「ビクトリア女王の後のイギリス王の」
「あの人とね」
「そしてロシア皇帝ニコライ二世もだよ」
この人もというのです。
「ビクトリア女王のお孫さんだったんだよ」
「お二人仲が悪かったけれど」
「従兄弟同士だったのよね」
「実は」
「それでビクトリア女王も言っておられたよ」
この人もというのです。
「二人の仲が悪いってね」
「ウィリーとニッキーってね」
「イギリス風の仇名でね」
「そう言っておられたね」
「それを見たらね」
そうすると、というのです。
「薔薇戦争の後ね」
「血縁関係って複雑だね」
「イギリス王家のそれは」
「そして欧州全体でね」
「そうなっているね」
「どの国でもそうだけれど」
それでもといのです。
「特にね」
「欧州はそうでね」
「イギリスもだってことだね」
「けれど薔薇戦争の頃は」
「かなり極端だね」
「それで、ですよ」
トミーが少し苦笑いで先生に言ってきました、朝ご飯の後片付けを終えてそのうえで一休みに居間に来たのです。
「日本の友達がぼやいていました」
「薔薇戦争の頃の血縁関係についてだね」
「イングランドの王室の」
「本当に凄いからね」
先生はトミーにも言いました。
「入り混じっていて」
「もう滅茶苦茶ですよね」
「系譜を頭に入れるだけでもね」
「大変ですよね」
「どの陣営で何をしたかまで」
「それも陣営を変えたりする人もいて」
こうしたこともあってというのです。
「おいそれとはです」
「わかりにくいね」
「その友達が言うには」
トミーは笑ってこうも言いました。
「巨人の監督やコーチにたいに」
「あの万年最下位のプロ野球チームだね」
「悪いことばかりしている」
「あのチームみたいになんだ」
「巨人って伝統ばかり言いますよね」
「うん、あのチームはね」
先生も確かにと頷きます。
「それでしがらみばかり多いよ」
「変なならわしばかりですね」
「封建時代みたいなね」
「それでコーチ生え抜きの人が主流で」
そうであってというのです。
「監督は特にそうですね」
「生え抜きのスター選手でないとね」
「監督になれないですね」
「今はもうチーム生え抜きで主力だった」
「それだけで選びますね」
「スター選手がいなくなったからね」
今の巨人にはというのです。
「そうなっているよ」
「そうですよね」
「ああ、巨人みたいに生え抜きばかりなら」
そうした人だけを監督にするならというのです。
「確かにわかりやすいね」
「複雑じゃないですね」
「その分監督さんになれる人が限られて」
「相応しい人が監督になれないですね」
「そのこともあってだよ」
そのせいでというのです。
「巨人はね」
「弱いんですね」
「そうだよ、けれど覚えやすいのは確かだね」
「そうですよね」
「血縁関係もね」
「ああしてすっきりしていたら」
「わかりやすいね、せめてね」
先生はこうも言いました。
「日本の戦国時代位だとね」
「わかりやすいですね」
「例えば武田信玄さんと北条氏康さんと今川義元さんの」
「同盟を結んで」
「そして三つのお家それぞれで婚姻政策を結んだね」
このことを言うのでした。
「信玄さんの娘さんが氏康さんの息子さんに嫁いで」
「氏康さんの娘さんが義元さんの息子さんに嫁いで」
「義元さんの娘さんが信玄さんの息子さんに嫁いで」
「三角になりましたね」
「これ位ならね」
それならというのでした。
「わかりやすいね」
「そうですよね」
「それがね」
どうにもというのでした。
「欧州ではね」
「かなり複雑で」
「それで薔薇戦争の頃のイングランドは」
「その中でもですね」
「あまりもわかりにくいから」
そうした状況だからだというのです。
「本当にね」
「わかりにくいですね」
「僕も理解するのに苦労したし」
「僕もです」
「わかりにくいって言ってもね」
それでもというのです。
「当然だよ」
「そうですね」
「あんなわかりにくいものはないからね」
真顔で言う先生でした。
「本当にね」
「その通りですね」
「そしてその戦争の後でね」
「先生先程お話していましたね」
「うん、白薔薇と赤薔薇がね」
「一つになりましたね」
「対立する二つの薔薇がね」
それがというのだ。
「戦争も終わって」
「そうなりましたね」
「そうだよ、そう考えるとね」
「白薔薇と赤薔薇が一緒にありますと」
「いいことだよ」
「平和の象徴でもありますね」
「夫婦愛の象徴でもあってね」
それと共にというのです。
「そう考えるといい閃きかな」
「僕もそう思います」
トミーは微笑んで答えました。
「とても」
「そう言ってくれるんだね」
「そうです」94
「朝ご飯の時は何も思わなかったんだ」
その時はというのです。
「別にね」
「薔薇と関係のあるメニューじゃなかったですしね」
「メザシと若布ののお味噌汁にね」
「梅干しと納豆で」
「白いご飯でね」
「別にですね」
「薔薇関係ないからね」
そうしたメニューだったからだというのです。
「本当にね」
「薔薇を連想しませんね」
「うん、けれどね」
それがというのです。
「食べて身体も頭も活性化して」
「考える様になって」
「そうなってだよ」
それからというのだ。
「薔薇のことを考えだして」
「閃かれましたね」
「そうなったよ」
「そうなんですね」
「頭もね」
「起きられてですね」
「朝ご飯を食べないと」
そうしないと、というのです。
「すぐにはね」
「回らないですね」
「だからね」
そうであるけれどというのです。
「何といってもね」
「朝起きたら」
「まずはね」
「ご飯を食べることですね」
「食事は欠かせなくて」
そうであってというのです。
「それでね」
「朝ご飯もですね」
「しっかり食べないとね」
「頭も働かないですね」
「身体もね」
こちらもというのです。
「そうなるからね」
「だからこそですね」
「食事はしっかり食べて」
「朝ご飯もですね」
「そうだよ、僕だけじゃなくて」
「皆ですね」
「ご飯はしっかりと食べることだよ」
こう言ってそうしてでした。
先生はエンベルグさんにその閃きをお話することにしました、閃きは朝にご飯を食べた後で出たのでした。