『ドリトル先生と奇麗な薔薇達』
第一幕 八条学園の植物園
日笠さんが研究室に来ると聞いてです、動物の皆は大喜びでドリトル先生に対してそれぞれ言いました。
「いいことだね」
「日笠さんご自身から来られるなんて」
「やっぱり先生縁があるよ」
「いいことだよ」
「うん、日笠さんが来てくれるなら」
先生は皆に微笑んでお話しました。
「是非おもてなししないとね」
「そうしようね」
「ティーセット用意しよう」
「勿論紅茶も用意してね」
「それで楽しんでもらおう」
「そうしようね、しかし」
先生は皆の言葉に頷きつつ言いました。
「何で来るのかな」
「何かなっていうと」
「いや、先生とお話してね」
「そこから何かしたいんだよ」
「先生と一緒にね」
「僕となんだ。何かな」
先生は皆の言葉を受けて首を傾げさせました。
「一体」
「何処か一緒に行こうっていうんじゃない?」
「そうじゃない?」
「先生と何処かに行きたいのかもね」
「そうなんだ、まあ兎に角来てくれたら」
先生は日笠さんがどう言うか考えつつさらに言いました。
「その時にお聞きしよう」
「そうしようね」
「絶対にいいことだしね」
「是非そうしよう」
「先生はね」
「僕はなんだね、何か皆の言うことがわからないけれど」
先生だけがわからないことです。
「今はね」
「うん、準備だよ」
「おもてなしのね」
「それをしよう」
「今はね」
皆にこのことは素直に応えてでした。
そのうえで準備をします、三段のティーセットにそれぞれお菓子を置いてミルクティーを出してでした。
そうして日笠さんを待ちます、その日笠さんが来るとです。
先生は日笠さんを笑顔でお迎えしてそのうえで一緒に飲んで食べはじめます、そうするととなのでした。
日笠さんはロイヤルミルクティーを飲みつつ先生に言いました。
「実は植物園で今度薔薇園でティーパーティーがありまして」
「ティーパーティーですか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「よかったら先生も」
「一緒にですね」
「如何でしょうか」
「素敵ですね、お茶やお菓子もいいですが」
笑顔で、です。先生は日笠さんに応えました。
「薔薇もです」
「お好きですね」
「お花は全部好きですが」
「薔薇は特にですか」
「イギリスの国花なので」
「先生の祖国のですね」
「はい、ですから」
それでというのです。
「それならです」
「参加されますか」
「そうさせて頂きます」
「お昼のラフなパーティーなので」
日笠さんはそのパーティーがどういったものかもお話しました。
「着るものは普通でもいいです」
「ラフなもので」
「学生さん達も参加出来て」
「私服でいいのですね」
「ジーンズでもポロシャツでも」
「そうですか、僕はです」
先生はご自身のファッションのお話もしました。
「いつもスーツなので」
「その時もですね」
「これで、です」
スーツでというのです。
「参加させて頂きます」
「そうなのですね、私もです」
日笠さんもご自身のお話をしました。
「今着ている様な」
「スーツ姿ですね」
「流石に生きものの世話をしている時の作業服ではです」
「参加出来ないですね」
「ラフな服装でよくとも」
そうであってもというのです。
「やはり作業服はお仕事の時の服で」
「パーティーの時はですね」
「スーツや制服や」
「外出の時の私服ですね」
「ですからジーンズでもいいですが」
それでもというのです。
「作業服ではです」
「参加出来ないですね」
「ですから今着ている様な」
紅茶を飲みつつお話しました。
「膝までのタイトスカートとスーツで」
「参加されますね」
「そうさせてもらいます」
「そうですか、ではその時に」
「宜しくお願いします。ですが」
日笠さんはティーセットにある苺と生クリームのケーキをお皿に取ってフォークで食べている先生に言いました。
「出来ればパーティーなので」
「だからですか」
「はい、ドレスも持っていますし」
それでというのです。
「そちらを着られれば」
「着たかったのですか」
「先生もご一緒してくれるので」
「いやいや、僕のことはお構いなく」
先生は笑顔で答えました。
「ですから」
「それで、ですか」
「日笠さんが着られたいものをです」
「着ればいいですか」
「はい」
そうだというのです。
「そうされて下さい」
「そうですか、あの」
日笠さんは先生のお言葉を受けて少し残念そうに応えました。
「先生は私にどういった服を着て欲しいでしょうか」
「何でも着て下さい」
先生はとても温厚な笑顔で答えました。
「日笠さんがお好きなものを」
「そうですか」
「はい、僕に気兼ねなく」
温厚な笑顔はそのままでした。そこには気遣いと優しさがありましたがそこに日笠さんが望むものはありませんでした。
「着て下さい」
「そうですか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「僕に気遣いは無用です」
「そうなのですね」
「そうです、僕は人にどうとか言う趣味はないので」
こうも言う先生でした。
「お気遣いなく」
「そうですか」
「日笠さんはお奇麗ですから」
今度はこんなことを言いました。
「どんな服も似合いますよ」
「それは何よりですね」
日笠さんはエクレアを食べながら応えました、ケーキは上段エクレアは中段にあって下段にはクッキーがあります。
「じゃあパーティーの時は」
「その時はですね」
「スーツで参加します」
「一緒に楽しみましょう」
先生はこの時も温厚な笑顔でした、そうして日笠さんそれに皆と一緒にお茶とお菓子を楽しみました。
その日笠さんが帰ってからでした、皆は先生に呆れて言いました。
「全く先生ときたら」
「何やってるのかしら」
「本当にね」
「先生は相変わらずだから」
「困るよ」
「こうしたことについては」
「何か僕やったかい?」
先生は今研究している分野についての本を開きながら皆に尋ねました。
「一体」
「何かしたかっていうとね」
「こうした時こそってことをしなかったよ」
「全く気付かないで」
「そのうえで」
「そうなんだ、何かな」
やっぱりわかっていない先生です。
「一体」
「それがわかればね」
「先生はもっと幸せになれるのに」
「こうしたことはわからないから」
「自分には無縁だって思い込んで」
「僕に無縁なものと言えば」
そう言われて先生が思いつくものはといいますと。
「ギャンブル、煙草、スポーツ、恋愛だけれど」
「借金もね」
「それに偏見もね」
「けれどそこにあるものでね」
「先生何か縁はない?」
「あるかな、僕はギャンブルとかには全く縁がないばかりで」
それでというのです。
「特に恋愛はね」
「恋愛ね」
「本当にないのかな」
「先生もてないっていうけれど」
「運動音痴で外見が冴えないから」
「太ってるしね、ほら女の人特に日本の女の人は」
先生は思い込みを言いました。
「太っている人は好きじゃないからね」
「いや、日本人っていうけれど」
ジップが言いました。
「皆が皆じゃないからね」
「太ってる人って嫌われる?」
ダブダブは首を傾げさせました。
「日本でも太ってる人多いよ」
「それで太っていても結婚してるし」
「普通にね」
オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「それこそ」
「そうしてるしね」
「それにだよ」
ホワイティも言います。
「大事なのは性格じゃない」
「太ってるとかで嫌とか言う人は」
老馬は断言しました。
「内面を見ていないってことだからね」
「そんな人に好かれても意味ないよ」
チーチーも先生に言いました。
「正直行ってね」
「先生みたいな性格いい人いないよ」
「紳士で公平で優しくて」
チープサイドの家族の先生に言います。
「温厚で謙虚でね」
「思いやりもあって」
「しかもちゃんとお仕事して真面目よ」
ガブガブは先生のこのこともお話します。
「それでどうしていい人に好かれないのか」
「世の中どうしようもない人でも結婚出来てるじゃない」
トートーはこの現実を指摘しました。
「最後は離婚するのが殆どだけれど」
「先生暴力もパワハラもモラハラもしないから」
ポリネシアは先生のこのこともお話しました。
「そのこともプラスだよ」
「いや、実際僕は女の人のお友達は多いけれど」
それでもというのです。
「けれどね」
「交際したことはない」
「一度も」
「告白したこともない」
「告白されたこともないんだね」
「そうだよ、いや告白はね」
先生は自分からと言いました。
「最悪地獄に行くこともあるね」
「うちの学園でもそうしたお話あるしね」
「高等部の方に」
「お友達に告白しろって言われて告白したら振られて」
「告白しろって言ったお友達がその後で縁切って」
「女の子達に言われたからってね」
「そんなお話もあるね、告白した彼はずっと支えてくれる本当の親友がいてくれて」
先生はそのお話もしました。
「後で彼女さんがね」
「本当に出来たね」
「そうなったね」
「よかったよね」
「幸せになれて」
「うん、ただね」
それでもと言う先生でした。
「こうしたことがある通りね」
「告白は怖いものである」
「最悪地獄に堕ちる」
「そうしたものでもあるんだね」
「そうなるからね」
だからだというのです。
「僕としてはね」
「とてもだね」
「告白は出来ないね」
「地獄に堕ちるかも知れないものだから」
「このお話で振られて裏切られて」
そうなってというのです。
「周りから失恋のことを言われて」
「物凄く辛かったみたいだね」
「トラウマになる位に」
「そこまでね」
「そうなるものでもあるから」
それ故にというのです。
「恋愛はね」
「とてもなんだね」
「先生としては」
「告白は出来なくて」
「恋愛自体も」
「恋愛は天国にもなれば地獄にもなる」
こう言うのでした。
「無縁でよかったよ、皆もいてくれているしね」
「僕達にトミーに王子」
「皆がいるからなんだ」
「家族にお友達が」
「もういいんだ」
「お仕事もお家もあって学問を好きなだけ出来て」
それでとです、先生は笑顔で言いました。
「美味しいものも飲んで食べられて」
「幸せだね、先生は」
「もう最高に」
「だからいい」
「満足しているんだ」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「恋愛はいいよ」
「先生は無欲だね」
「無欲は美徳だけれど」
「けれどね」
「この場合の無欲はね」
「どうかってなるよ」
「そうなんだ、けれどね」
それでもというのです。
「僕はもう充分過ぎる程幸せだから」
「これ以上は求めない」
「満足しているから」
「それでだね」
「いいのね」
「うん、恋愛なんてとは言わないけれど」
それでもというのです。
「僕はね」
「別にいいんだね」
「それでこれからもだね」
「恋愛は求めない」
「縁がなくていい」
「そうなんだね」
「困ったことは一度もないしね」
今学んでいる分野の本を読みつつ言うのでした。
「いいよ」
「そうなんだね」
「いや、そう言われてもね」
「先生はね」
「本当にそこが駄目なのに」
「わかってないから」
「何がわかっていないのかな、けれど本当に僕は恋愛と無縁だし」
縁のないもので特にというのです。
「このままこうでもね」
「構わないんだね」
「先生としては」
「至って」
「そうだよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「やれやれだよ」
「いつも思うことにしても」
「自分はもてるって自惚れてもどうかだけれど」
「最初から諦めるのもね」
「どうかよ」
「全く以て」
皆はそんな先生に呆れるばかりです、ですが本当に気付かない先生でした。そして呆れるのは動物の皆だけでなく。
王子もです、夕食に今住んでいる別荘に先生と皆それにトミーを招いてカレーライスを一緒に食べながら言いました。
「皆が言う通りだよ」
「僕は恋愛について問題があるのかな」
「物凄くね」
こう言うのでした。
「もっと周り見ないと」
「いや、見てもだよ」
先生はカレーを食べつつ言います、今日のカレーはビーフカレーです。
「本当にね」
「無縁なんだね」
「全くね」
「先生いつも言ってるよね」
王子は先生に言いました。
「人は外見で判断したら駄目って」
「内面を見ないとね」
「だったらね」
それならというのです。
「他の人もそう考えるよ」
「恋愛でもなんだ」
「顔だけって言葉あるよね」
「お顔はいいけれどだね」
「中身は全く駄目だって」
その様にというのです。
「言われる人いるね」
「世の中にはね」
「こうした人はね」
それこそというのです。
「本当にね」
「駄目だね」
「うん、けれどこの言葉があるのは」
それはといいますと。
「僕にはね」
「関係ない?」
「そう言うの?」
「先生は」
「そうだよ、恋愛自体に縁がないからね」
だからだというのです、先生は皆にお話しました。
「もてないんだよ」
「お顔がよくなくて運動神経がない」
「しかも太っている」
「だからなんだ」
「女の人にもてないのね」
「もてたいと思ったことはあるよ」
先生にしてもです。
「学生時代少しね」
「少しなんだ」
「凄くじゃないのね」
「凄くもてたいって人多いと思うけれど」
「先生は違ったんだ」
「そうした欲が薄い様で」
先生はというのです。
「それでなんだ」
「もてることは放棄した」
「そうだっていうんだ」
「先生としては」
「それでもういいのね」
「もてることは諦めてるんだね」
「諦めるっていうかもてなくてもね」
そうであってもというのです。
「僕は幸せだからね」
「それでなんだ」
「もういいんだ」
「先生としては」
「恋愛をしなくても」
「そして結婚もね」
こちらもというのです。
「別にいいかな」
「いや、そう言ってあっさり諦めるのは」
王子は呆れたお顔でまた言いました。
「本当にね」
「駄目かな」
「無欲は先生の美徳の一つだよ」
このことは認めるのでした。
「確かにね。けれどね」
「それでもなんだ」
「うん、先生はもっと欲を張ってもね」
そうしてもというのです。
「一向にね」
「構わないんだ」
「そうだよ」
こう言うのでした。
「本当にね」
「だから恋愛もなんだ」
「もてるって思って」
先生ご自身がというのです。
「そして欲を出して」
「恋愛、結婚もなんだ」
「求めるべきだよ」
カレーライス、日本のそれを食べつつ先生に言うのでした。
「そうしたらきっとね」
「僕も恋愛が出来るんだ」
「先生よりずっとだよ」
それこそというのです。
「酷い人が結婚してたりするんだよ」
「よくありますよね」
トミーも先生にカレーを食べつつ言います。
「DVを振るう人が」
「旦那さんや父親でね」
「暴力は最低ですよね」
「勿論だよ」
先生はトミーに一も二もなく答えました。
「暴力なんてね」
「絶対に振るったら駄目ですね」
「振るっていい理由なんてね」
「ないですね」
「そうだよ、暴力はどんな力か」
暴力についてです、先生はトミーに具体的にお話しました。
「それはだよ」
「感情に基づいて人を傷付ける力ですね」
「理性のないね、独裁国家でもあるね」
「弾圧や粛清ですね」
「人を強制的に従わせる為にだよ」
そのことを目的としてというのです。
「振るうね」
「そうした力ですね」
「だからね」
先生はさらにお話しました、勿論先生もカレーを食べています。
「決してだよ」
「認めてはいけないですね」
「家庭の中で感情的にね」
「ご家族を殴ったり蹴ったりとか」
「支配する為にね」
「そうしてもですね」
「同じだよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「あってはならないことですね」
「暴力を振るうなら」
先生は強い声で断言しました。
「それはもう犯罪だよ」
「そうなりますね」
「そうだよ、そこに正当な理由はないよ」
「そうですね、ですが」
「暴力を振るう様な人でもだね」
「結婚出来るんですよ」
世の中はというのです。
「そうした人と比べたら先生は」
「恋愛、結婚をする資格はあるんだ」
「そういうものに資格いるの?」
ここで言ったのはチーチーでした。
「そもそも」
「いらないよね」
「そうよね」
チープサイドの家族も言います。
「聞いたことないわ」
「法律でもね」
「昔は身分があったけれど」
ジップはこちらをお話に出しました。
「今はイギリスでも身分があっても」
「恋愛や結婚自体は出来るわ」
ポリネシアが言いました。
「もうね」
「ましてや日本なんてね」
「恋愛の自由は保証されてるからね」
オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「思想、信条の自由もあって」
「信仰も自由もあってね」
「それで恋愛したら駄目ってないでしょ」
ガブガブはきっぱりと言い切りました。
「誰にしても」
「誰かに恋愛をする資格が言える人って」
ダブダブは首を傾げさせて言いました。
「もう何なんだろうね」
「恋愛することが高望みとか愚かとか言うなら」
トートーは少し怒って言いました。
「言う人はどうなんだろうね」
「そんなこと言える位偉い人って」
ホワイティは考えて言いました。
「一体何様なのかな」
「何様どころか」
老馬も首を傾げさせて言いました。
「何を根拠に言うのかな」
「根拠はないよ」
先生が答えました。
「少なくとも日本で恋愛をするなって言うなら」
「そうだよね」
「法律はないんだし」
「結婚してたり相手の人がいるなら倫理的にだけれど」
「そのどちらでもないなら」
「もうね」
「誰が誰を好きになってもいいね」
「そうだよ、若しだよ」
それこそというのだ。
「ある人に外見が悪いから恋愛するなとか」
「そう言うとだね」
「もうだよね」
「そう言う自分の外見はどうか」
「そうなるね」
「もっと言えばそんなこと言う人の人間性を疑うよ」
先生は言いました。
「人にそんなこと言う人のね」
「そうだよね」
「もうだよね」
「そんなこと言う資格ないよね」
「誰にも」
「人を外見でどうか言うのは」
そうしたことはといいますと。
「間違っているよ」
「その通りだよ」
王子も言ってきました。
「まさにね」
「うん、人は内面だからね」
「性格だよね」
「大事なのはね」
「それで外見を言うなら」
「言う人の性格こそだよ」
それこそというのです。
「問題だよ」
「全くだね」
王子もその通りだと答えました。
「僕も同じ考えだよ」
「誰でも恋愛をしていいんだ」
先生は断言しました。
「本当にね」
「そうだね、だから先生も」
「僕もなんだ」
「もっとだよ」
それこそというのです。
「欲を出してね」
「恋愛をしていくといいんだ」
「どうかな」
「それでもてなくてもいいのかな」
「もてなくても恋愛は出来るんじゃないですか?」
こう言ったのはトミーでした。
「すること自体はいいですよね」
「誰にも妨げる権利はないよ」
「今の日本では」
「そうだよ」
「それじゃあ先生も」
「もてなくてもなんだ」
「恋愛出来ますよ」
「恋愛は自由意志だね」
「その通りです」
まさにというのです。
「ですから」
「僕もなんだ」
「はい」
先生にカレーを食べてです、牛乳を飲んでから言いました。見れば皆カレー以外にサラダを食べていて飲みものは牛乳です。デザートにオレンジが用意されています。
「自由意志です」
「自由意志でしないことは」
「そう言われます?」
「駄目かな」
「そう言ったら何も前に進まないですよ」
トミーは先生に少し厳しい口調で答えました。
「全く」
「恋愛について」
「先生は今以上に幸せになれないです」
「今の時点で満足していても」
「ですからその満足をです」
「今以上になんだ」
「したいと思われれば」
先生ご自身がというのです。
「きっとです」
「なれるんだ」
「はい」
まさにというのです。
「先生なら」
「そうなのかな」
「きっとと言いましたがもっと言えば」
「どうなのかな」
「絶対にです」
こう言うのでした。
「幸せになれます」
「そうなんだ」
「はい」
まさにというのです。
「もう傍に先生を好きな人が」
「ははは、僕も絶対と言うよ」
先生はトミーの言葉を即座に否定しました。
「僕を好きな女の人はね」
「おられないですか」
「だから全くね」
それこそというのです。
「僕は恋愛対象じゃないんだよ」
「女性から見て」
「そうなんだよ」
「外見じゃないですよね」
「人はね」
「だったら先生も」
「あのさ、お話が堂々巡りになってるね」
王子はこのことを感じ取って言いました。
「もうこうなったら」
「うん、一気にだね」
「決めるべきだね」
「お話を」
「そうしよう」
王子は皆に応えました。
「ここはね」
「そうだね」
「じゃあ先生の背中を押そう」
「そうしよう」
「ここはね」
「うん、じゃあ先生」
王子は皆とお話してから先生にお顔を戻して言いました。
「今度日笠さんとパーティー行って来てね」
「もうその予定だけれど」
「その予定をだよ」
まさにというのです。
「絶対にね」
「行うんだ」
「そうするんだよ」
こう言うのでした。
「先生はね」
「そうしないと駄目かな」
「駄目だよ」
一も二もないといった返事でした。
「今回はね」
「恋愛のお話らしいけれど」
先生もこのことは察しました。
ですがそれでもです、先生は王子に言うのでした。
「日笠さんと僕はお友達だよ」
「それでもいいから」
もう先生のお考えは無視して言う王子でした、兎に角強引でも先生の背中を押すと決めたからです。
「日笠さんとね」
「パーティーに出席するんだ」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「楽しんでくるんだよ」
「そのつもりだけれど」
「そのつもりでもね」
本当に強引にことを進める王子でした。
「いいね」
「そうするんだ」
「そうだよ」
まさにというのです。
「いいね」
「その予定だしどうして強く言われるかわからないけれど」
「わからなくてもだよ」
本当に何が何でもとお話を進める王子でした。
「そうするんだよ」
「僕も同じ考えです」
トミーも王子の側について言いました。
「絶対にです」
「日笠さんとパーティーにだね」
「出て下さい」
こう言うのでした。
「そうして下さい」
「予定でもなんだ」
「予定は変わりますね」
「その可能性はあるよ」
「そうですね、ですが変わりそうになっても」
「予定通りなんだ」
「若し変わりそうなら」
それならというのです。
「絶対にです」
「変わらない様になんだ」
「僕達がします」
「僕がするんじゃなくて」
「先生だけで無理なら」
そうした状況ならというのです。
「絶対にです」
「皆がなんだ」
「何とかします」
「そこまでしてくれるんだ」
「当然です、先生には今以上に幸せになって欲しいですから」
そう思うからこそというのです。
「本当にです」
「この度はだね」
「パーティーに出て下さいね」
「そうするよ」
「先生は律儀だからね」
王子もよく知っていることです、先生は約束は守る人です。相手がどんな人でもそうする人なのです。
「その律儀さをね」
「今回もだね」
「ちゃんと果たしてね」
そうしてというのです。
「植物園の薔薇園でのティーパーティーを」
「日笠さんとだね」
「楽しんできてね」
「そうするよ」
最初からそのつもりの先生が頷きました。
「本当にね」
「それではね」
こうしてお話は決まりました、そしてです。
そのお話が終わったところで、です。先生はカレーをおかわりしてからでした、こうしたことを言ったのでした。
「このカレーは甘口だけれど」
「うん、蜂蜜に林檎に牛乳をね」
王子が笑顔で応えました。
「入れてね」
「それで甘口なんだね」
「そうだよ」
こう先生にお話しました。
「今日のカレーはね」
「いいね、辛口も甘口もね」
「先生好きだね」
「中辛もね」
こちらもというのです。
「好きだよ」
「それぞれの美味しさがあるね」
「そう、そしてね」
先生はさらにお話しました。
「今のビーフカレーだけでなくて」
「チキンカレーもポークカレーもで」
「野菜カレーもシーフードカレーも好きで」
そうであってというのです。
「茸カレーもね」
「好きだね」
「カツカレーやソーセージカレーや海老フライカレーも」
「前はハンバーグカレーを食べていたね」
「カレーならね」
それこそというのです。
「何でも好きになったよ」
「日本に来てからね」
「スープカレーも食べたけれど」
それでもというのです。
「あちらもね」
「美味しかったんだね」
「北海道ではじまったね」
「スープカレーも好きになったんだ」
「そうなんだ、ドライカレーもあるしね」
「そうそう、ドライカレーでね」
王子はドライカレーと聞いて笑顔で言いました。
「オムライスを作ったら」
「あちらも美味しいね」
「そう、そしてね」
王子はさらにお話しました。
「オムライスにカレールーをかけたら」
「これまた美味しいね」
「うん、思えばオムライスも日本から生まれたね」
「日本人は違うと思ってるかも知れないけれど」
「そうした人もいるかも知れないけれど」
それでもというのです。
「これがね」
「違うからね」
「そうだからね」
それでというのです。
「大体チキンライスがね」
「オムライスによく使う」
「皇子が今言ったドライカレーもだよ」
こちらのお料理もというのです。
「日本からだからね」
「洋食っている日本料理の一ジャンルからのお料理だね」
「そうだからね」
それ故にというのです。
「他の国にあるか」
「ないからね」
「むしろよく考えついたとね」
その様にというのです。
「僕は思うよ」
「僕もだよ」
王子もおかわりをして頷きました。
「ああしたね」
「独創的なお料理考えられるね」
「全くだよ、イギリスはね」
「お料理についてはね」
「色々言われているからね」
「何かとね」
「いや、鰻のゼリーに」
先生は少し苦笑いになって言いました。
「鰊のパイ、ザリガニのパイもあるね」
「ザリガニを数匹丸ごと入れたね」
「他の国の人に見せたら」
そうしたらというのです。
「常にだよ」
「何かと言われるね」
「そうしたものだからね」
それでというのです。
「僕としては」
「残念だよね」
「全くだよ」
こう言うのでした。
「いつも思うことだよ、イギリスも素晴らしいものは沢山あるけれど」
「お料理については」
「お世辞にもだからね」
「基本カレーがあったらね」
「それで済ませるところがあるしね」
そうだというのです。
「だからね」
「このこともだね」
「本当にね」
「イギリス料理は弱いね」
「イギリス生まれの僕としては」
先生は少しの苦笑いのまま言いました。
「やっぱりね」
「そのことが残念だね」
「今後に期待するよ」
こう言うのでした。
「今はそうでもね」
「これから努力すればだね」
「変わることは出来るから」
それでというのです。
「イギリス料理のこれからにね」
「期待するんだね」
「フランス料理だってね」
有名なこの国のお料理もというのです。
「最初はね」
「酷いものだったね」
「それが変わったからね」
「確かね」
王子は少し神妙なお顔になって応えました。
「イタリアから王妃さんが来てからだね」
「フィレンツェからね」
「カトリーヌ=ド=メディチさんだったね」
「あの人が来てね」
そうしてというのです。
「ルネサンスの頃のイタリアの素晴らしい料理を伝えて」
「フランス料理も変わったね」
「そうだよ、だからね」
「イギリス料理だって」
「今はあまりよく言われていないけれど」
それでもというのです。
「将来はね」
「わからないね」
「努力したら」
「美味しくなるね」
「きっとね、カレーだってね」
今自分達が食べているこの料理もというのです。
「インドからイギリス、そしてイギリスからね」
「日本に伝わっているね」
「ビーフシチューだってそうだしね」
「イギリスから日本に伝わっているから」
「だからね」
そうであるからだというのです。
「よくなる下地はある筈だよ」
「その下地をどうするかだね」
「うん、他の国のお料理も取り入れて」
そうもしてというのです。
「学んでいって」
「よくしていくんだね」
「そうだよ、そうしていけば」
先生は王子にお話しました。
「よくなるよ」
「そういえばイギリス料理を日本で作ったら」
「イギリス料理のメニューをだね」
「美味しいっていうね」
「だからね」
それでというのです。
「下地もあるし」
「努力することだね」
「美味しくなる様にね」
イギリスから日本に伝わったカレーを食べつつ言います、そのカレーはとても美味しくて先生も皆も満足しました。