『ドリトル先生と桜島』
第四幕 鹿児島のお料理
夜はホテルの大浴場に入ってからでした。
晩ご飯となりますがお酒は焼酎を出してもらって。
「いいね、鶏肉や豚肉のお料理に」
「それに薩摩揚げもあって」
「きびなごも揚げてね」
「伊勢海老のお刺身に頭を使ったお味噌汁」
「薩摩芋を使ったお料理もあるし」
「デザートはかるかんだね」
「うん、いきなりだね」
先生は卓の上を覆い尽くすかの如く置かれたご馳走達を見つつ笑顔で言います。
「ご馳走だね」
「そうだね」
「それじゃあ今からね」
「皆で食べよう」
「そうしようね」
「是非ね、焼酎もあるしね」
先生はお酒も見て言います。
「楽しく食べよう」
「そうだね、しかし伊勢海老があるなんて」
「鹿児島でも食べられるんだね」
「それもお造りで」
「このこと前にお話したけれど」
「鹿児島でも食べられるんだよ」
伊勢海老はとです、先生もお話します。
「こうしてね、では食べよう」
「いただきます」
皆も応えてでした。
そのうえで食べはじめます、豚肉は豚バラをじっくりと煮られている柔らかいものでお醤油と生姜で味付けされていて生卵も一緒です。
鶏肉はたたきにされています、きびなごはよく揚げられていてカリッとしていて薩摩揚げは程よい具合に切られていてです。
どれもとても美味しいです、そして伊勢海老のお造りも。
「いいね」
「凄く美味しいわ」
「三重県で食べたのも美味しかったけれど」
「ここのも美味しいよ」
「凄くね」
「そうだね、薩摩芋もね」
揚げられたものや煮られたものがあります。
「いいね」
「うん、鹿児島県と言えばね」
「まさにこの薩摩芋だけれど」
「この薩摩芋もね」
「凄く美味しいね」
「そうだね、じゃあこれも食べて」
先生は薩摩芋のお料理も食べてです。
焼酎を飲んで、です。皆にあらためてお話しました。
「お酒もこうしてね」
「飲むね」
「鹿児島の焼酎だね」
「そちらも飲んで」
「そうして楽しむんだね」
「そうだよ、かるかんも食べるけれど」
それだけでなくというのです。
「お酒もね」
「飲もうね」
「そちらも楽しもう」
「お酒もかなりあるし」
「なくなったらね」
「また注文しようね」
「そうしていこうね」
浴衣姿になっている先生はお酒も心から楽しみました、そうして飲んで食べ終わってからお部屋の窓からです。
鹿児島の夜景を見てです、こんなことを言いました。
「月に照らされた桜島はね」
「凄いね」
「いい光景だよ」
「本当にね」
「この世のものとは思えないよ」
「うん、確かに桜島は毎日みたいに噴火していてね」
そうしてというのです。
「それで火山灰をいつも出してね」
「鹿児島をそれで覆ってね」
「土地を痩せさせて」
「困ったことにしてきたけれど」
「けれど桜島がないとね」
そうでないと、というのです。
「鹿児島はどうなんだろうね」
「鹿児島県じゃない?」
「それこそ」
「桜島がないと」
「やっぱりこの県の象徴なんだよ」
桜島はというのです。
「何といっても」
「そうだよね」
「それこそ薩摩藩が出来る以前から」
「大昔からよね」
「桜島はこの場所の象徴で」
「ないことは考えられないんだね」
「そうだと思うよ、どれだけ噴火しても」
そうして火山灰を降らしてもというのです。
「鹿児島県の象徴だよ」
「そうだよね」
「鹿児島県は温泉も多いけれど」
「その温泉をもたらしてくれているのも桜島だし」
「桜島なくして鹿児島県はない」
「そう言っていいね」
「今そのことをあらためて思ったよ」
月明かりに照らされる桜島を見てというのです。
「本当にね」
「全くだね」
「それが桜島だね」
「それでその桜島の火山灰からだね」
「地質調査をしてるね」
「先生も」
「そうしているよ、そしてこの桜島をね」
先生はさらに言いました。
「西郷さんも大久保さんもね」
「見ていたんだね」
「それもずっと」
「そうなんだね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「かつてはね」
「そうして育っていって」
「大志を抱いて」
「そしてだね」
「討幕を果たして」
「維新も成し遂げたね」
「そうしたんだ」
このこともお話しました。
「あの人達はね」
「そう思うとね」
「桜島は歴史の証人でもあるね」
「鹿児島にいる人達を見守ってきた」
「そうしたものでもあるんだね」
「そうだよ、西郷さんは流刑にも逢ってね」
幕末の時にです。
「大久保さんはその都度西郷さんを助けようと動いたけれど」
「そうしたこともだね」
「桜島は見てきたんだね」
「ずっと」
「何も言わないでね、そしてね」
ここで、でした。先生は。
悲しいお顔になってです、こうも言いました。
「西郷さんが征韓論で政府を去って」
「そうしてだね」
「そしてだね」
「この鹿児島に戻って」
「士族の人達の叛乱に巻き込まれて」
「それで止むを得ず総大将になって」
「西南戦争を起こしたけれど」
皆も悲しいお顔で言います。
「それでだよね」
「西南戦争を戦って」
「敗れてね」
「お亡くなりになったけれど」
「その時もだよ」
桜島はというのです。
「見守っていたよ」
「そうだよね」
「そうしたよね」
「本当にね」
「西郷さんの最期も」
「そうしたね」
「そうだよ、西郷さんが生まれて」
そうしてというのです。
「育って身を立ててことを為してね」
「戻ってきて」
「それで戦争に入って」
「最期を遂げる」
「その時までだね」
「ずっと見守っていたね」
「そうだよ、そして大久保さんも」
西郷さんと共に戦いことを為してきたこの人もというのです。
「見守ってきたよ」
「あの人は東京で亡くなったね」
「暗殺されて」
「それでだね」
「けれどきっとね」
先生はさらに言いました。
「あの人の魂はね」
「鹿児島に戻ってるんだね」
「そうだね」
「東京でお亡くなりになったけれど」
「その魂はね」
「そうなっているよ、西郷さんも魂はね」
この人もというのです。
「鹿児島にあるし」
「今はだね」
「また一緒にいるんだね」
「征韓論を袂を分かったけれど」
「そうなってるのね」
「絶対にね、実はお二人の絆はずっとあったんだ」
西郷さんと大久保さんのそれはというのです。
「西南戦争ではね」
「あの人達は戦うことになったね」
「直接向かい合っていないけれど」
「西郷さんは叛乱軍の総大将で」
「大久保さんは政府を動かしていて」
「けれど大久保さんは最初西郷さんは叛乱に加わらないと確信していたんだ」
そうだったというのです。
「そんなことは絶対にしないってね」
「そうだったんだ」
「けれどだよね」
「あの人は担がれて」
「それでだったね」
「その時大久保さんはとても悲しかったそうで」
それでというのです。
「西郷さんが死んだと聞いて号泣したそうだよ」
「敵味方になってもだったんだ」
「ずっと西郷さんのことを想っていたんだ」
「幼馴染みでずっと一緒にいて」
「西郷さんを支えてきて」
「西郷さんもその大久保さんを心から信じてね」
西郷さんはそうだったというのです。
「そのお言葉を聞いて頼りにしていたから」
「お二人の絆は強くて」
「例え敵味方になっても」
「それでもそれは変わらなかったんだ」
「暗殺される時も馬車の中で西郷さんのお手紙を読んでいたんだ」
東京でそうなった時もというのです。
「その前に西郷さんと一緒に崖に落ちた夢を見たそうだし」
「そこまで絆が深いなら」
「それならだよね」
「大久保さんもだね」
「魂は鹿児島に戻って」
「お二人は一緒だね」
「そうなっているよ、その西郷さんと大久保さんの魂をね」
今はというのです。
「桜島は見守っているよ」
「そうしているんだね」
「お二人が生きていた時みたいに」
「そうしてるんだね」
「そうだよ、そしてね」
さらにお話する先生でした。
「他の人達もだよ」
「鹿児島のだね」
「幕末維新で活躍した」
「その人達もだね」
「靖国にいると共にね」
魂はというのです。
「鹿児島にもだよ」
「そしてその人達を今も見守っている」
「そう思うとね」
「桜島なくしてだね」
「鹿児島県は考えられないね」
「全くだよ、桜島なくして鹿児島はないよ」
先生は暖かい笑顔で言いました、そうしてです。
この日はぐっすりと寝て朝早く起きてご飯を食べてまた地質調査をしました、少し歩くとそれだけで、です。
暖かくなります、それで先生は笑顔で言いました。
「いや、本当に暖かいね」
「ううん、沖縄程じゃなくてもね」
老馬はその時のことを思い出してお話しました。
「暖かいね」
「まさに南国だね」
チーチーも言います。
「そのことは快適だね」
「お陰で調査も進む感じだわ」
ポリネシアの声はにこにことしたものでした。
「本当にね」
「そうだよね」
ジップはポリネシアの言葉に笑顔で頷きました。
「暖かいとそれだけ動きやすいからね」
「このことって私達も同じなのよね」
ダブダブも言います。
「寒過ぎず暑過ぎないとね」
「それだけ動きやすいんだよね」
ホワイティも言います。
「これがね」
「変温動物と恒温動物ってあるけれど」
トートーは学問的にお話しました。
「変温動物の僕達だってね」
「やっぱり適温の方がいいんだよね」
「動くにはね」
チープサイドの家族もお話します。
「その方がいいのよね」
「そうだよね」
「寒くても暑くても動きたくないよ」
ガブガブの言葉は正直なものでした。
「僕としてはね」
「そうそう、暑過ぎるとね」
「動きたくないよ」
オシツオサレツも二つの頭で言います。
「寒過ぎてもね」
「ずっと暖かい場所でじっとしていたくなるよ」
「そうした風だからね、僕達も」
老馬も皆を代表して言います。
「だからこの気温はいいね」
「全くだよ」
先生もその通りだと答えます。
「快適に調査を行えるよ」
「そうだね」
「それじゃあね」
「このままだね」
「やっていこう」
「そうしよう」
こうお話してでした。
皆で鹿児島の地質調査をしていってです。
鹿児島県以外の場所も行きます、そして調査をしますが桜島から離れるにつれてどうなっているかといいますと。
「火山灰が減っていってるね」
「やっぱりそうなるね」
「桜島から離れるにつれて」
「そうなってんだね」
「うん、桜島に近いと」
それならというのです。
「やっぱりね」
「火山灰も多いね」
「降る量も多いから」
「それでだね」
「近い程多いんだね」
「そして遠いとね」
どうしてもというのです。
「どうしてもだよ」
「火山灰の量は少なくなるね」
「遠くなるにつれて」
「そうなっていくね」
「徐々に」
「円状にね」
そうした形でというのです。
「そうなっているよ」
「そうなんだね」
「そのこともわかるんだね」
「桜島の噴火の範囲がどれだけか」
「そうしたこともだね」
「わかるんだね」
「そうだよ、只地質調査をするだけでなく」
そうでなくというのです。
「こうしたこともわかるよ」
「成程ね」
「そうしたこともわかるなら」
「それならだね」
「こうしたこともわかって」
「そしてだね」
「色々面白いよ、学問はね」
まさにと言う先生でした。
「一つの調査からね」
「多くの素晴らしいことがわかる」
「そうしたものだね」
「学問自体そうだよね」
「一つのことから沢山のことがわかる」
「そうしたものだね」
「そうなんだ、しかし毎年毎日みたいに降っているから」
その火山灰がというのです。
「それでね」
「ああ、火山灰がどんどん堆積して」
「その濃度はだね」
「高まってるのね」
「いつもお掃除して掃いていても」
それでもというのです。
「やっぱりね」
「堆積されていって」
「高まっていってるんだね」
「火山灰の濃度が」
「そうなんだね」
「そうだよ、そしてそれはね」
その濃度はというのです。
「今お話したけれど」
「桜島に近いと濃くて」
「遠いと薄い」
「そうなっていくね」
「徐々にでも」
「うん、爆発が起こると」
こうもお話する先生でした。
「遠いと被害は少ないね」
「それと同じだね」
「火山の噴火も」
「そちらも」
「うん、ただね」
こうも言った先生でした。
「考えてみれば桜自の噴火はましだよ」
「まし?」
「ましっていうと?」
「その被害はね」
こちらがましだというのです。
「本当にね」
「ましなんだ」
「そうだったんだ」
「毎日みたいに噴火しているけれど」
「それでも」
「そうだよ、浅間山という火山があるけれど」
日本にはというのです。
「あの山が噴火したら凄かったんだ」
「ええと、浅間山ってね」
「江戸時代に噴火したんだったね」
「確か」
「そうだったわね」
「そう、その火山灰が日本の殆どを覆ってね」
そうなってというのです。
「天明の大飢饉が起こったんだね」
「あの大飢饉だね」
「その飢饉が起こって」
「それでだね」
「日本は大変なことになったね」
「あの時は」
「そうもなったし富士山だったね」
日本を代表するこの山もというのです。
「火山だね」
「そうだったね」
「あの山もね」
「長い間噴火していないけれど」
「それでもだね」
「噴火したらね」
その時はというのです。
「日本全体がだよ」
「大変なことになるんだ」
「その時は」
「まさに」
「そうなるからね」
だからだというのです。
「まだ桜島はね」
「ましなんだ」
「鹿児島県を火山灰で覆っていても」
「毎日みたいに噴火していても」
「ほら、見てみて」
先生はここで上を見上げてです。
そうしてお空を指差しました、そのうえで言うのでした。
「青空だね」
「まさに南国のね」
「そのお空だよ」
「今の鹿児島のお空は」
「幾ら噴火しても火山灰でお空を覆わないね」
桜島はというのです。
「そうだね」
「うん、確かにね」
「それはないね」
「そうしたことはないわ」
「けれど浅間山の噴火は日本全体を覆ってね」
そうしてというのです。
「それでね」
「飢饉までもたらしたんだ」
「歴史に残る大飢饉を」
「そこまで凄かったんだ」
「そうだったんだ、火山はね」
その噴火はというのです。
「ボンベイでもそうだね」
「ああ、ローマの頃のね」
「あの街一つを飲み込んだっていう」
「あの噴火だよね」
「物凄かったよね」
「ああしたこともあって浅間山もね」
この山の噴火のお話をさらにします。
「犠牲者が出て逃げる時お母さんをおぶっていた娘さんもね」
「一緒になんだ」
「犠牲になったんだ」
「そうだったんだ」
「そうなんだ、溶岩か土砂崩れに飲み込まれてね」
そうしてというのです。
「後の調査でその時の骨が見付かってるんだ」
「凄いね」
「聞いただけで寒気がするよ」
「そんなことがあったなんて」
「これだけね」
まさにというのです。
「火山の噴火は恐ろしいものなんだよ」
「地震も起こすしね」
「土石流や溶岩だけでなく」
「噴火して飛んで来る石も怖いし」
「火山の噴火って怖いね」
「イギリスじゃちょっとわからないけれど」
「日本は火山が多いからね」
そうしたお国でというのです。
「こちらの災害も多いよ」
「地震も台風も多くて」
「津波も来て」
「雷も落ちるし」
「冬は空気が乾燥して火事にもなりやすくて」
「大雪や大雨もあって」
「日本は兎角ね」
皆に眉を曇らせてお話しました。
「災害には悩まされている国だよ」
「それが日本の困ったところね」
「あらゆる自然災害が多いってことが」
「四季があって景色も素晴らしくて」
「おまけに農業に向いている豊かな土壌が多くて海や山の幸にも恵まれていて」
「それでもいいことばかりじゃないのは世の中でね」
それでというのです。
「災害もだよ」
「多いのね」
「もうあらゆる災害が起こって」
「それで日本の人達は悩んできたんだね」
「それもずっと」
「災害が行らない年はないからね」
日本ではというのです。
「それこそ」
「絶対に何処かで何かの災害が起こるね」
「日本ってね」
「今僕達が言ったそれがね」
「何処かで起こるわね」
「台風は毎年来てね」
ほぼ確実にというのです。
「大雨が来て地震が起こって」
「冬は大雪でね」
「雷も落ちるし」
「それで火事もあって」
「火山の噴火だってね」
「そこが困ったところで」
それでというのです。
「火山の噴火もね」
「あるんだね」
「それで桜島はいつも噴火しているけれど」
「災害としてはましなんだ」
「まだ」
「そうだよ、浅間山や富士山もそうだし」
それにというのです。
「普賢岳だってあったしね」
「他にもあったんだね」
「しかも」
「噴火も多い国ってよくわかるよ」
「何かとね」
「そうだよ、そのことも頭に入れて」
そうしてというのです。
「調査をやっていこうね」
「そうしようね」
「日本は火山が多くて噴火も多い」
「そして自然災害自体が多い」
「そうしたお国柄ってこともね」
「そういうことでね」
先生はこうしたお話もしながら皆を連れて地質調査を行っていきます、その中で西郷さんの銅像の前にも来ましたが。
皆はその銅像を見てお話しました。
「東京にある銅像と違うね」
「ちょっとね」
「同じ西郷さんの銅像なのに」
「どうもね」
「うん、実は西郷さんの銅像はご本人にあまり似てないらしいよ」
先生は首を傾げさせた皆にお話しました。
「実はね」
「ああ、そうなんだ」
「ハワイのカメハメハ大王像もそうだったらしいけれど」
「あの銅像は兵士の人で一番男前の人をモデルにしたそうだけれど」
「西郷さんは弟さんがモデルになったんだ」
この人の場合はというのです。
「肖像画でもね」
「西郷従道さん?」
「明治の政治家さんだった」
「それで元老のお一人にもなった」
「あの人がなんだ」
「弟さん、近い親戚の人ってことでね」
それでというのです。
「似てるだろうということでモデルになったけれど」
「実は似ていなかったんだ」
「西郷さんとは」
「そうだったんだ」
「どうもね、奥さんが銅像を見てね」
西郷さんのというのです。
「あまり似てないって言われたそうだし」
「奥さんがそう言うならね」
「実際にあまり似てなかったんだね」
「西郷さんの銅像は」
「この銅像にしても」
「実は西郷さんは写真を撮られることが嫌いだったんだ」
ここで先生はこのこともお話しました。
「昔の人でね」
「ああ、昔の人ってね」
「写真撮られると魂取られるって」
「そうしたお話があってね」
「それでよね」
「明治天皇もそうであられたし」
この方もというのです。
「ひいてはね」
「西郷さんもそうで」
「写真撮られたくなくて」
「それでだったんだ」
「写真から銅像造れなかったんだ」
「だからあまり似ていなかったんだ」
「銅像も肖像画も西郷さん死後のものでね」
それから造られたものでというのです。
「弟さんをモデルにしていてだったんだ」
「成程ね」
「だからあまり似てないんだ」
「上野の西郷さんの像も」
「それでこちらの像も」
「また同じ人の銅像でもそうした事情があってかね」
それでというのです。
「上野のものとこの銅像はね」
「また違うんだ」
「そうした感じなんだ」
「これが」
「そうだったんだ、ただね」
先生は皆に笑ってこうもお話しました。
「西郷さんのお写真もあるにはあるよ」
「あっ、そうなんだ」
「ちゃんとあるんだ」
「そうなんだ」
「幕末の志士の人達が集まったものがあってね」
それでというのだ。
「その中にまず間違いなく西郷さんだって人が映っていて」
「それでなんだ」
「西郷さんのお写真もあるんだ」
「そうなんだね」
「大久保さんも一緒に映っていてね」
西郷さんの無二の盟友だったこの人もというのです。
「見たら大柄でお顔はエラが張ってゴツゴツした感じだよ」
「何かそう聞くとね」
「銅像や肖像画の西郷さんと違うね」
「そうだね」
「どうもね」
「僕も写真観て少し驚いたよ」
先生もというのです。
「銅像や肖像画と違うからね」
「そうだったんだ」
「実際の西郷さんはそうした感じだったんだ」
「大柄なのは聞いてたけれど」
「エラが張った感じのお顔だったんだ」
「そうだったよ、ちなみに大久保さんの写真はちゃんとあって」
それでというのです。
「皆が知っている様なね」
「ああしたお顔だね」
「髪の毛整えて立派なお髭生やした」
「それで目の感じもしっかりした」
「そうした人だったんだ」
「そうだよ、銅像や肖像画と実際のお顔が違うことはね」
こうしたことはというのです。
「ままにしてあるよ」
「成程ね」
「それで西郷さんもなんだ」
「そうした風だったんだ」
「夏目漱石さんなんかね」
明治の文豪だったこの人はといいますと。
「実は天然痘に罹ったことがあったんだ」
「ああ、昔はあったからね」
「日本でもね」
「日本は疫病の少ない国だけれど」
「ペストもなくて」
「けれど天然痘はあってね」
それでというのです。
「奈良時代なんか大流行したしね」
「それから日本を護る為にだね」
「奈良の大仏が造られたんだね」
「そうだったね」
「そうだよ、沢山の人が亡くなったから」
奈良時代の天然痘の流行で、というのです。
「大仏さんが造られたんだよ」
「あの世界一大きな仏像だね」
「観れば観る程大きいよね」
「あの仏像はね」
「凄い大きさだね」
「それで漱石さんも罹ってしまって」
そうなってしまってというのだ。
「助かったけれどお顔にね」
「ああ、あばただね」
「それが出来たんだ」
「そうなったんだ」
「そうなんだ、だから写真ではね」
こちらではというのです。
「修正されているんだ」
「そうだったんだ」
「ソ連の独裁者スターリンもそうだったらしいけれど」
「漱石さんもだったんだね」
「天然痘であばたが出来て」
「写真じゃ習性していたんだ」
「今は天然痘がなくなってね」
そうしてというのです。
「あばたもね」
「そうそう、今じゃね」
「まあ見ないね」
「ニキビの跡はあってもね」
「そうしたこともあったんだよ」
こう皆にお話します。
「漱石さんはね」
「成程ね」
「今はじめて知ったよ」
「漱石さんに関係のある場所にも行ったけれどね」
「松山にね」
「坊ちゃんの舞台だった」
「調べていると色々わかるよ」
学問をしていると、とです。先生はお話しました。
「本当にね」
「そうだよね」
「一つのことを調べるとね」
「そこから幾つものことがわかるね」
「そうなるね」
「だから学問はしていくよ」
これからもというのです。
「そうしていくよ」
「それが先生だね、けれどね」
ここで老馬はこうしたことを言いました。
「写真でも修正入って実際のお顔と違うってね」
「今はもっと凄いけれどね、修正は」
ホワイティも言います。
「実際のお顔とかなり違うって」
「別に自分のお顔をよく見せたいのはいいにしてもね」
ポリネシアはそれはいいとしました。
「実際と違うのはちょっと困るかもね」
「そう考えたら銅像や肖像画と変わらないかな」
チーチーはこう考えました。
「写真も」
「そうしたものと実際は違うのはね」
「頭に入れておくべきかしらね」
チープサイドの家族もお話します。
「そうしたものと自分で見た目は違う」
「そうしたことがあるってことも」
「銅像や肖像画や写真が正しいと思ったら」
ジップも言いました。
「違うものだね」
「トリック写真とかあるわね」
ダブダブはそうした写真のことに気付きました。
「推理ものでも定番だしね」
「何でも鵜呑みしたらいけないってことだね」
トートーはこう言いました。
「自分の目で見てちゃんと確かめる」
「西郷さんの銅像や肖像画、漱石さんの写真もそうで」
ガブガブはトートーに続きました。
「他のこともだね」
「トリック写真なんか本当に多いからね」
「そうそう、心霊写真でも政治的なものでもね」
オシツオサレツは写真のお話をしました。
「一杯あるから」
「ちゃんと検証しないと駄目だね」
「そうだよ、例えば芹沢鴨さんの写真もあるけれど」
新選組の初代局長だったこの人のというのです。
「実際は調べたらね」
「別の人だったんだね」
「そうだったのね」
「これが」
「そうだよ、そして近藤勇さんの写真を調べたら」
新選組の次の局長のこの人はといいますと。
「そうらしいよ、あと一緒に沖田総司さんらしき人も映ってるけれど」
「その人もなんだ」
「沖田総司さんなんだ」
「その人だってわかったんだ」
「結構可能性が高いってね」
沖田総司さん本人だと、というのです。
「言われているよ」
「調べたら」
「そうなのね」
「その人も沖田さんなのね」
「美形だったとか実は違ったとか言われてるけれど」
沖田総司さんはというのです。
「その人が沖田さんだとしたら実際にね」
「美形なんだ」
「そう言っていいんだ」
「沖田さんも」
「そうだよ、そしてね」
先生はさらにお話しました。
「トリック写真ならイギリスにも多いね」
「そうだよね」
「歴史的にもね」
「ネッシーの写真でもあったし」
「妖精でもね」
「本当に何でもね」
銅像でも肖像画でも写真でもというのです。
「鵜呑みにはね」
「したら駄目だね」
「ネッシーの首だけ出てる写真だってね」
「見たら波の大きさと比べてバランス悪いし」
「恐竜が首を出してるとしたら」
「そうだしね」
皆はネッシーの代表的な写真を思い出しました。
「そう思うとね」
「本当にちゃんと検証しないとね」
「それも学問だよね」
「そのうちの一環だね」
「だからね」
まさにそうであるからというのです。
「ちゃんとね」
「調べて」
「それで事実を確かめる」
「それが学問で」
「ちゃんとしていかないとね」
「そうだよ、ちなみに西郷さんが大柄だったことは事実で」
このことはというのです。
「写真でもわかったし一七八あったそうだよ」
「先生よりは小さいけれど」
「当時の日本人としては大きいね」
「そうだよね」
「当時の日本人って平均身長一五五位だったっていうから」
「大人の男の人で」
「勝海舟さんは一四九位だったそうだよ」
幕末幕府で頑張ったこの人はというのです。
「今の人達から見るとね」
「中学生位かな」
「大人の女の人でもかなり小柄だよ」
「それ位だとね」
「徳川慶喜さんはもっと小さかったそうだしね」
最後の将軍だったこの人はというのです。
「その中で西郷さんの一七八センチはね」
「大きいよね」
「滅茶苦茶目立つね」
「他の人より頭一つ大きいから」
「それだけね」
「大久保さんも一七七だったというから」
この人のお話もしました。
「お二人はそこからも目立ったね」
「今だと二メートル位?」
「そんな感じかしら」
「江戸時代の人達からしたら」
「西郷さん達の大きさは」
「そうだったかもね、坂本龍馬さんなんか一八〇位だったそうだから」
海援隊のこの人のお話もするのでした。
「相当目立ったね」
「あの人髪の毛も縮れていてね」
「しかも靴履いてて」
「色々仕草も目立ったそうだし」
「西郷さん達以上だったかな」
「龍馬さんは物凄く目立ったらしいよ」
実際そうだったというのです。
「傍目でもね、しかも用心をしない人だったから」
「暗殺されたんだね」
「最期は」
「残念なことに」
「坂本さんの敵だった新選組の人に注意された位だったよ」
それだけ不用心だったというのです。
「伊東甲子太郎さんにね」
「ああ、新選組の参謀で」
「後で衛士隊の隊長となった」
「あの人にだね」
「当時も衛士隊の隊長さんだったけれどね」
既にというのです。
「自分も新選組だがってね」
「そう断わってだったんだ」
「坂本さんに注意したんだ」
「気をつけろって」
「そうだったんだ、それだけ龍馬さんは不用心だったんだ」
この人はというのです。
「幕末の志士の中でも大物でね」
「いつも命を狙われていた」
「そうした状況だったのに」
「そうした風で」
「暗殺されたよ、あと今お話したけれど伊東さんはね」
この人のお話もします。
「別の組織を率いてね」
「新選組と袂を分かった」
「そう思われていても」
「実はだったんだ」
「そうだよ、そのこともわかるね」
そうしたというのです。
「面白い逸話だね」
「全くだね」
「龍馬さんも人気がある人だけれど」
「幕末の志士の人達の中でも」
「そうした人で」
「新選組にもそうしたお話があるんだね」
「うん、ちなみに西郷さんも新選組の敵だったけれど」
討幕派だったからです。
「用心深くてしかも周りにね」
「ああ、強い人達がいたんだね」
「それも一杯」
「そうだったんだね」
「薩摩藩のね、薩摩藩といえばね」
この藩はといいますと。
「示現流に直新陰流があって」
「滅茶苦茶強かったね」
「皆鍛えていて」
「そうした藩の風土で」
「それでだね」
「だからね」
それでというのです。
「あの人は無事だったよ」
「そこは西郷さんかな」
「周りに人が一杯いてね」
「何とかしてくれる」
「そうしたところは」
「西郷さんも皆の為に動くからね」
そうした人だからだというのです。
「もうね」
「どの人もだね」
「動いたんだね、西郷さんの為に」
「そうしているんだね」
「そうだよ、自分を捨ててね」
そうしてというのです。
「誰かそして日本の為に動く」
「そうした西郷さんだから」
「自然と人が集まって」
「その西郷さんの為に動いた」
「そうしたんだね」
「そうだよ、誰かの為に動く人は」
西郷さんの様な人はというのです。
「人が集まってね」
「それで支えてくれる」
「守ってくれるんだね」
「自分達の為にもしてくれるし」
「そうなるね」
「そうだよ、龍馬さんもそうだったけれどあの人は護衛の人はいいってね」
その様にというのです。
「笑って言ってた人だから」
「そんな感じだね、確かに」
「龍馬さんはね」
「あの人は」
「一人でいた方が身軽に動けるってね」
その様にというのです。
「言ってね」
「それでだよね」
「龍馬さんは周りに人が集まっても」
「身軽に動きたくて」
「護衛はいいって言って」
「ああなったよ、北辰一刀流免許皆伝で」
剣術は確かでというのです。
「しかも拳銃持ってたけれど」
「いきなり襲われたらね」
「やっぱり危ないよね」
「そうだね」
「だから暗殺されたよ、ことを為すのなら」
そうしたいならというのです。
「用心も必要なんだろうね」
「難しいね」
「世の中って」
「本当にね」
皆は先生の言葉に頷きました、そうして西郷さんの銅像を見るのでした。西郷さんの像は皆に前に立派に立っています。