『ドリトル先生と桜島』
第三幕 船旅から
トミーそれに王子に見送られてです、先生は動物の皆と一緒に鹿児島への旅に発ちました。その時にトミーも王子も言いました。
「お気をつけて」
「事故や怪我のない様にね」
「うん、気をつけていくよ」
先生もそれはと応えました。
「お家に帰るまでね」
「お家に帰るまでが旅ですからね」
「だからね」
それでというのです。
「僕も気をつけてね」
「そうしてですね」
「行って来るよ」
こうトミーにお話します。
「これからね」
「そうして下さいね」
「そしてね」
先生はさらに言いました。
「お土産はね」
「忘れないですか」
「トミーに王子に執事さんに」
「日笠さんにもだよ」
王子はこの人のお名前を出しました。
「医学部のお知り合いの人達にも忘れないと思うけれど、先生は」
「日笠さんにもだね」
「うん、絶対にだよ」
まさに何があってもというのです。
「お土産はね」
「忘れないことだね」
「そうだよ、いいね」
まさにというのです。
「何があってもね」
「そうさせてもらうよ」
先生も約束しました。
「日笠さんにもね」
「それじゃあね、それで今から神戸港に出て」
「そこでフェリーに乗ってね」
そうしてというのです。
「鹿児島までね」
「行くんだね」
「そのフェリーはシンガポールまで行くけれど」
「途中鹿児島にも行くんだね」
「だからね」
それでというのです。
「そのフェリーで鹿児島まで行って」
「そうしてだね」
「鹿児島の地質調査を行うよ」
「そうするね、じゃあね」
「今から行って来るよ」
笑顔で言ってでした。
先生はトミー達と一時の別れの挨拶をしてでした。
動物の皆と神戸港に向かいました、そして港でフェリーに乗ってです。
そうして出港を船の中に予約していたお部屋の中で迎えましたが。
ホテルの豪華な客室の様なその中で先生は船が動きはじめたのを見てそのうえで一緒にいる動物の皆にお話しました。
「では瀬戸内海からね」
「伊予灘を通って」
「そこから豊後水道に入って」
「鹿児島湾からよね」
「鹿児島港に入港するんだね」
「そうなるよ、これが鉄道ならね」
そこからのルートはといいますと。
「神戸から岡山、広島、山口を経て」
「九州に入るね」
「関門海峡の海底トンネルを通って」
「福岡に到着して」
「そこからだね」
「鹿児島だね」
「昔は一直線に行けなかったらしいけれど」
それでもというのです。
「今は福岡から鹿児島までね」
「一直線に行けるね」
「そうなったね」
「昔と違って」
「そうなったよ、八条鉄道でもそうだしね」
八条グループが経営している日本全土に路線を持つこの鉄道会社もというのです。
「だからね」
「行こうと思えばだね」
「鹿児島まで一直線だね」
「それで行けるね」
「そうだよ、行けるよ」
まさにというのです。
「鹿児島までね」
「福岡までもそうだしね」
「神戸からね」
「それで福岡からだね」
「鹿児島まで行けるね」
「そうだよ、けれど今回はね」
鉄道ではそうして鹿児島まで行けてもというのです。
「船でね」
「行くね」
「こうして」
「船に揺られながら」
「そのうえで」
「行こうね」
笑顔で言ってです。
先生は皆と船旅に入りました、皆は甲板に出て海を観るとです。
瀬戸内海は本当に小島が多くて漁船や漁網も沢山ありました、大きなフェリーはその中を進んでいきますが。
皆はその船を観てそれで言いました。
「凄いね」
「小島が凄く多いし」
「船も網も一杯で」
「ここを通るとなると」
「本当に大変ね」
「船員の人達は気が抜けないよ」
小島にも船や網にもぶつからない様にする為にです。
「瀬戸内海では特にね」
「潮流も凄いんだよね」
「先生が言うには」
「多くて強くて」
「しかも季節によって流れが変わって」
「そうした場所だからね」
その為にというのです。
「ここは迷宮と言っていいんだ」
「海の迷宮ね」
ポリネシアは先生の言葉を聞いて言いました。
「つまりは」
「中々ロマンティックな響きの言葉だね」
ジップはポリネシアの言葉に思いました。
「それでいて神秘的な」
「海も奇麗だしね」
トートーはその瀬戸内海を観ています。
「小島も絵になってるよ」
「船や網もその中にあって」
「奇麗だわ」
チームサイドが観てもです。
「絵に描いてもいいわね」
「この海はね」
「遠くに本州や四国も観えるしね」
ホワイティはそちらも観ています。
「それも含めて絵になるよ」
「迷宮の天井はお空だけれど」
チーチーは上を見上げています。
「そちらもいいね」
「奇麗な迷宮だね」
老馬は心から思いました。
「この海は」
「そうだよね、けれど船で行き来するとなると」
「本当に大変だね」
オシツオサレツは二つの頭で思いました。
「ここまで複雑だと」
「とんでもないよ」
「しかもこの海船の行き来も多いわね」
ダブダブはこのことに気付きました。
「そのこともあるのね」
「こんな迷路他にないんじゃないかな」
ガブガブは思いました。
「世界の何処にも」
「そうだろうね、皆が言う通りにね」
先生は皆の言葉を聞いて述べました。
「奇麗で絵になって」
「それでいて複雑で」
「通るのが難しい」
「そうした迷宮だね」
「瀬戸内海はね、そしてこの海をね」
観れば海上自衛隊の護衛艦も海の上にあります、グレーのカラーリングが青い海と空の間に映えています。
「海上自衛隊の船がいつも行き来していて」
「かつては帝国海軍だね」
「あの軍隊の船が行き来していたんだね」
「そうなんだね」
「大和だってね」
この戦艦もというのです。
「呉が母湊だったから」
「この海を行き来していて」
「その姿を見せていたんだ」
「物凄く大きくて恰好いい」
「雄姿と言っていいけれど」
「そう、それを見せてね」
そうしてというのです。
「この海にあったんだ」
「そうだったんだね」
「かつては」
「何かそう聞いたらね」
「大和の姿を想像してしまうわ」
「あの雄姿をね」
「僕もだよ」
先生は笑顔で言ってでした。
そのうえで皆で海を観てでした、お昼は食堂で食べましたが。
シーフードサラダに貝と玉葱のスープ、シーフードパスタに牡蠣フライに神戸牛のヒレステーキ、柚子のシャーベットにパンそして白ワインといったメニューでした。
そのお昼を食べてです、先生は笑顔で言いました。
「いや、どれもね」
「瀬戸内のメニューだね」
「柚子もそうで」
「神戸牛も含めて」
「全部そうだね」
「うん、これはいいよ」
皆に白ワインも楽しみつつお話しました。
「瀬戸内はいいね」
「食べものもね」
「景色は奇麗で」
「素敵な海だね」
「通ることは難しくても」
「それでもね、それでね」
先生はさらに言いました。
「何でもディナーはビュッフェだけれど」
「そちらも楽しみだね」
「今だって普通に美味しいし」
「瀬戸内の幸を使ってもので」
「シェフの人の腕もいいし」
「期待出来るよ」
先生はスパゲティを食べつつ言いました、濃厚なトマトと生クリームのソースの中に大蒜と唐辛子、それに魚介類があります。
「そちらも」
「そうだよね」
「じゃあどんどん食べていこう」
「今日もね」
「食べ終わったら景色を楽しんで」
「それでディナーもね」
「あとね」
先生は皆にお話しました。
「学問もね」
「そうそう、本持って来たし」
「ノートパソコンだって」
「学問も楽しむね」
「先生としては」
「そうするよ」
是非にというのです。
「この度はね」
「そうだよね」
「先生としてはそうするね」
「そしてそのうえでだね」
「鹿児島までの船旅を楽しむね」
「そうするよ、いや、最初から素敵だよ」
先生はこうも言いました。
「この旅行は」
「そうだよね」
「船旅にしてよかったかも」
「気持ちよく鹿児島まで行けるし」
「最初からこうだとね」
「幸先いいよね」
「全くだよ」
笑顔でお話してでした。
皆で楽しく昼食を楽しんで甲板で海を観ながら読書に論文の執筆にです。勿論日課のティータイムも楽しんで。
ディナーのビュッフェも楽しみますが。
「こちらもいいね」
「そうだよね」
「色々なメニューがあって」
「お野菜もお肉もお魚も」
「和食も養殖も中華も」
「全部あってね」
「これはいいよ」
実にというのです、見ればサラダにマリネに卵焼きに蒸し餃子にハンバーグにチキングリルにと色々です。
先生達は食べています、先生はそのご馳走に囲まれつつ言うのでした。
「実に贅沢だよ」
「全くだね」
「色々なお料理があって」
「そのどれもを食べられるから」
「最高だよ」
「いいビュッフェよ」
「お昼もよかったけれどね」
先生はローストビーフを食べて言いました。
「夜もいいね」
「先生お酒進んでるよ」
「今晩はウイスキーだけれど」
「ウイスキーも美味しいんだね」
「御料理にも合っていて」
「かなりね、いい感じだよ」
ウイスキーも飲みながら言うのでした。
「本当にね、だからね」
「どんどんだね」
「飲んでいくね」
「ウイスキーも」
「美味しいものも食べながら」
「そうするよ」
今度はあさりの酒蒸しを食べています。
「今夜はね、そして食べ終わったら」
「どうするの?」
「今度は」
「食べ終わったら」
「夜空を観よう」
こちらをというのです。
「そうしよう」
「ああ、夜空だね」
「海の上から」
「そうするんだね」
「次は」
「夜の海を観て」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「夜空だね」
「海の上から夜空を観る」
「普段は出来ないし」
「ここでするんだね」
「そうだよ、そうしてね」
そのうえでというのです。
「そちらも楽しもうね」
「わかったよ」
「じゃあそうしよう」
「今のディナーの後は」
「夜空を観よう」
「そうしようね」
こう言って実際にです。
先生は皆と一緒にディナーの後はです。
夜空を楽しみました、観れば北斗七星がありますが。
先生はその星達を見上げて皆に尋ねました。
「もう一つの星が見えるかな」
「うん、見えるよ」
「柄杓のところから数えて六番目だね」
「そこの星の傍にだよね」
「もう一つ星があるね」
「あの星が見えたらね」
それならというのです。
「昔は軍隊に入られたんだ」
「視力検査に使ったんだね」
「あの星が見える位目がいいか」
「そうかって」
「そうだよ、北斗七星はギリシア神話では大熊座で」
この星座になっていてというのです。
「北極星を軸とした七つの星はね」
「子熊座なんだよね」
「母親と息子さんで」
「今は一緒にね」
「夜空にいるね」
「そうだよ、夜空を観ていると」
そこにある星達をです。
「僕は宇宙のことにね」
「星座のこともだね」
「そちらも考えるね」
「先生は」
「星のことも学問で」
そしてというのです。
「星座のこともね」
「学問だね」
「そのどちらも」
「まさにだね」
「そう、僕にとっては楽しいね」
そのどちらもというのです。
「いい学問だよ」
「宇宙のこともで」
「そして星座のことも」
「そのどちらもが」
「楽しい学問だよ、そういえばあの双子星が見えたら」
先生はその星を見上げてこうも言いました。
「死ぬ運命にあるとかね」
「ああ、漫画で言ってたね」
「日本の漫画で」
「それで世紀末覇者の人と戦うんだよね」
「その時は」
「あの漫画も素晴らしいよ」
先生は漫画のお話もしました。
「バイオレンスな作品世界やシーンが話題だけれど」
「キャラクターいいよね」
「色々と考えさせられるよね」
「命あるものとして」
「どうしても」
「あの漫画は名作だよ」
紛れもなくというのです。
「シリーズにもなっているしね」
「それだけの作品だね」
「ただ暴力があるだけじゃない」
「その他にも素晴らしいものがある」
「いい漫画だね」
「僕は暴力は反対だけれど」
先生にとって絶対のことです。
「あの作品のクオリティはね」
「素直に認めるね」
「絵も素晴らしいし」
「尚更だね」
「そうだよ、あの漫画でもね」
今もその星を見つつお話します。
「あの星が出ていたから、あと聖闘士の漫画でも」
「そうそう、出てたよ」
「北斗七星に双子星も」
「どの星もね」
「元々星座をモチーフにした漫画で」
「星座の勉強にもなるね」
「星座をああして扱うこともね」
このこともというのです。
「日本人ならではだね」
「そうだよね」
「ギリシア神話だってね」
「あの発想は凄いね」
「何といっても」
「僕も読んで唸ったよ」
先生にしてもです。
「あそこまで出来るものだって」
「全くだね」
「日本人の創作力に脱帽だよ」
「ああした発想出来るなんて」
「そうはないよ」
「漫画や小説、ゲームでね」
そうした創作の世界で、です。
「そうした創作が出来ることもね」
「日本の凄いところだね」
「その一つよね」
「何といっても」
「そう思うよ、星一つ取っても」
そうしてもというのです。
「名作があるからね」
「拳法にギリシア神話」
「そのどちらでもだね」
「題材になるから」
「素晴らしいね」
「そう思うよ」
先生は皆と一緒に夜空を見上げつつこんなお話もしました、そして翌日鹿児島に着いて船から降りるとです。
皆は鹿児島の空気に触れて言いました。
「あったかいね」
「うん、南国って感じだね」
「桜島も見えるし」
「違う国に来たみたいだよ」
「これが鹿児島だよ」
先生も鹿児島の空気を感じつつ応えます。
「沖縄を除いたら日本の最南端でね」
「それでだね」
「暖かいね」
「見れば南国の植物もあるし」
「他の地域とは少し違うね」
「他の九州の地域と比べてもね」
そうしてもというのです。
「かなりね」
「独特で」
「空気も景色もだね」
「こうしたものなんだね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「独特なんだよ」
「桜島があって」
「そして暖かくて」
「そうした場所なんだね、鹿児島は」
「そうだよ、じゃあこの自然を楽しみながらね」
そうしつつというのです。
「学んでいこうね」
「そうしよう」
「これからね」
「是非ね」
皆も笑顔で応えてです。
そのうえで先生と一緒に宿泊先のホテルに入ります、ホテルのお部屋は和風でしたが皆はそのお部屋の中を見回して言いました。
「先生和風好きだよね」
「すっかりそうなったね」
「ホテルで泊まる時和風が多くなったね」
「そうなったことを見たらね」
「うん、こちらの方がね」
和風がとです、先生も皆で笑顔で応えます。
「落ち着く様になったよ」
「そうなったね」
「先生もね」
「日本に来てから」
「日本に馴染んで」
「そうなったよ、だから今回もね」
鹿児島での地質調査においてもというのです。
「こうしてだよ」
「和風のお部屋に入って」
「そうしてくつろぎながら」
「そのうえでだね」
「うん、学問をしていくよ」
地質調査をはじめとしたあらゆることをというのです、こうお話してです。
先生はこの日から鹿児島県の地質調査をはじめましたが。
鹿児島市のそれをしてです、先生は皆にお話しました。
「昨年のデータよりもね」
「どうなってるの?」
「去年よりも」
「火山灰の濃度が増えているね」
そうなっているというのです。
「やっぱり」
「ああ、それはね」
「どう見ても桜島のせいだね」
「毎日みたいに噴火して」
「火山灰出してるからね」
「あまりにも火山灰を出してね」
そうしてというのです。
「年を経るにつれてね」
「火山灰が増えてるね」
「そうなるからね」
「だからだね」
「去年に比べてだね」
「火山灰の濃度が高くなっているよ」
こう皆にお話しました。
「これは仕方ないね」
「桜島が噴火するから」
「それでだね」
「もうこのことは仕方ないのね」
「鹿児島県については」
「そうだよ、だから農業もね」
こちらもというのです。
「影響を受けてきたんだ」
「そうなんだね」
「火山灰が堆積されて」
「それでだよね」
「土地が痩せてるんだね」
「だから薩摩と大隅でね」
昔の日本の国割でというのです、かつての日本では都道府県ではなくこちらによって区分されていたのです。
「四十万石もなかったんだよ」
「関西と全く違うね」
「関西ってそれぞれの国でもっとあったよね」
「兵庫県だってね」
「播磨とかでね」
「関西は豊かだったね」
この地域はというのです。
「昔の国割でも」
「そうだね」
「兵庫県は播磨や丹波、丹後でね」
「播磨なんてかなりだったみたいだね」
「そうだよね」
「奈良県、大和なんてね」
こちらはといいますと。
「百万石あったっていうしね」
「凄いね」
「鹿児島県の二倍半以上あるね」
「奈良県だけで」
「かなりだね」
「だから日本は長い間関西を中心にしていたんだ」
そうだったというのです。
「神話によると神武開闢からね」
「ああ、古事記とか日本書紀の」
「その時からだね」
「日本は関西が中心だったね」
「それから長い間ね」
「鎌倉時代は鎌倉に幕府があって」
そうしてというのです。
「京都に朝廷があってね」
「関東も開発されていって」
「段々豊かになっていったね」
「けれどまだまだ関西が中心だったね」
「そうだったね、室町時代になると」
鎌倉時代の次のです。
「室町幕府は京都に拠点を置いたからね」
「それで朝廷とも距離が近かったんだよね」
「将軍様もかなりお公家さんと親しくて」
「お公家さんみたいな恰好になって」
「一緒に遊んだりしていたね」
「関東は鎌倉公方をもうけて」
そうしてというのです。
「統治していたけれどね」
「やっぱり関西の比重大きい?」
「室町時代も」
「そうなる?」
「織田信長さんも豊臣秀吉さんも中心はそっちだったからね」
この人達もというのです。
「江戸幕府でも関東と関西は総合的に見て同じ位だったし」
「本当にずっとだったんだね」
「関西は日本の中心だったんだね」
「それで豊かで」
「石高も凄かったんだね」
「そうだよ、その関西の今で言う府県と比べたら」
それこそというのです。
「鹿児島県はね」
「大変だったんだね」
「土地が痩せていて」
「火山灰のせいで」
「お米もあまり採れなかったし」
日本の主食のこちらがというのです。
「他の作物もね」
「火山灰が多くて」
「しかも始終降り続けてるし」
「それじゃあね」
「農業は大変だったね」
「だから薩摩藩で四十万石なくて」
三十八万石程だったというのです。
「そこでやり繰りしていたんだ」
「それで八十万石近くとされて」
「その格式で政治をしないといけなくて」
「尚且つお侍さんが多くて」
「他の藩に比べてかなり」
「大変だったよ、その中で薩摩芋が入って」
この作物がというのです。
「かなり助かったよ」
「成程ね」
「薩摩芋は鹿児島の人達にとって救世主だったんだね」
「痩せた土地でも沢山採れるから」
「いいよね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「江戸時代の中頃にもたらされたけれどね」
「確か青木昆陽さんだったね」
「江戸時代の蘭学者の」
「あの人が広めたのよね」
「あの人は凄い功績があるんだ」
先生は強い言葉で言いました。
「その薩摩芋を広めたね」
「それが凄いよね」
「だって沢山の人が薩摩芋を食べたからね」
「それで餓えから救われて」
「美味しい思いもしたしね」
「だからだよ」
それ故にというのです。
「蘭学者としても当時有名だったにしても」
「凄い功績だよね」
「つくづくね」
「沢山の人を餓えから救うなんて」
「素晴らしいことだよ」
「それを認めたのが当時の将軍様だよ」
先生はその人のお話もしました。
「徳川吉宗さんなんだ」
「八代将軍だね」
「暴れん坊将軍よね」
「時代劇の主役でもある」
「あの人よね」
「あの人はやっぱり名君だよ」
先生は確かな声でお話しました。
「本当にね」
「先生はそう言うよね」
「何か日本では色々言う人がいるらしいけれど」
「先生はそう言うね」
「うん、お米の値段を一定にさせたけれど」
このことからお話しました。
「定免法といってね」
「それで市場の価格を安定させたね」
「当時の日本はお米の価格が市場の基準で」
「お米の値段次第で市場の価格が変化して」
「経済も安定しなかったね」
「だからそれを安定させる為に」
このことを目的としてというのです。
「お米の価格を決めてしかもそれを低くしたんだ」
「そこも理由があるんだよね」
「吉宗さんの政策には」
「そうだよね」
「そうだよ、お米は年貢つまり税金だから」
それでというのです。
「税金を安く定めてね」
「納める人達を楽にしたね」
「お百姓さん達に」
「そうもしたね」
「それまでは収穫高に応じて年貢も変わったけれど」
それがというのです。
「それを低く定めてそれからの新田開発で得た分はね」
「それはだね」
「お百姓さんの分だね」
「そうしたね」
「年貢以上は取らないで」
「しかも他の農作物の収入はお百姓さんの分だったから」
お米以外の作物のです。
「そちらもどんどん奨励したしね」
「お百姓さん凄い豊かになるね」
「お米だけを納めればよくて」
「その納める分も低く定めて」
「そうなったから」
「市場の価格を安定させてお百姓さんも楽にさせて」
そうしてというのです。
「幕府も税収がはっきりするから」
「どれだけ入るか」
「それまでは一定しなかったけれど」
「それが安定してだね」
「政策も執りやすくなったんだ」
このこともあったというのです。
「政治もお金がないと駄目だからね」
「やっていけないよね」
「予算がないと」
「それも確かにしたし」
「そのこともよかったね」
「このこともあって皆に薩摩芋を食べることを認めたから」
ここでまた薩摩芋のお話をします。
「尚更いいね、白砂糖を作ることも認めたしね」
「へえ、そうなんだ」
「白砂糖もなんだ」
「そちらを作ることも認めたんだ」
「そうだったんだ」
「ここから日本に白砂糖が広まったんだ」
そうなったというのです。
「和三盆とかね」
「ああ、あれだね」
「日本伝統のお砂糖」
「あれも吉宗さんからなんだ」
「お砂糖についても」
「質素倹約が過ぎて締め付けとか言われて」
そうしてというのです。
「この定免法が変に解釈されてね」
「悪く思われてたんだ」
「そうだったんだ」
「かつては」
「色々言われてたんだ」
「うん、お百姓さんから搾り取ったってね」
その様にというのです。
「言われただよ」
「ああ、年貢を高く定めて」
「そうして搾り取った」
「そうした風にだね」
「そうだよ、けれどそれが間違いだということはね」
このことはというのです。
「明らかだよ、むしろ定免法は大盤振る舞いだよ」
「幕府にとっては」
「年貢を低く定めて」
「それ以上はお百姓さんの分として」
「副産物の分はお百姓さんのものだったから」
「そこまで考えたらだね」
「吉宗さんは悪意なくね」
そうした風でというのです。
「政策を進めていたよ」
「そうなんだね」
「その実は」
「吉宗さんも」
「そう、これは例のマルクス史観の考えだよ」
先生はここでどうかというお顔になりました。
「二十世紀の間日本では強かったからね」
「ああ、あれね」
「経済学や教育でもそうで」
「法曹界でもだよね」
「特にマスコミで強くて」
「日本の学問の世界に変な影響を与えていたね」
「マルクスとか言うとすぐに搾取とか抑圧とか階級とか闘争とか言ってね」
そうなってというのです。
「そこから歴史も経済も観るからね」
「教育だってだよね」
「それこそ何でも」
「そうするからだね」
「おかしくなるのね」
「それで吉宗さんも色々言われていたんだ」
この人もというのです。
「実際はどうでも」
「マルクス史観、共産主義だよね」
「そっちの考えだよね」
「日本って共産主義じゃないけれど」
「その考えが強かったんだね」
「知識人の世界はね」
まさにというのです。
「学問もそうなんだ」
「何か昔のキリスト教みたいだね」
「欧州のね」
「そう考えたらね」
「吉宗さんも可哀想だね」
「事実を捻じ曲げられたからね」
まさにその為にというのです。
「よくなかったよ」
「流石に暴れん坊将軍みたいなことはなかったよね」
ホワイティは時代劇のことをお話しました。
「悪者を成敗するとか」
「けれど実際に政治に心を砕いていて」
ジップも言います。
「民衆の人達のことも考えていたんだね」
「さもないともっと酷いことしているよ」
ガブガブもはっきりと言いました。
「欧州の領主なんか酷かったからね」
「というか奈良県って普通に朝から茶粥食べてたでしょ」
ダブダブは先生からのお話を思い出しました。
「お米のね」
「しかも薩摩芋まで広めるなんて」
「青木昆陽さんのお考えをよしとしてね」
チープサイドの家族は薩摩芋のお話をしました。
「凄い功績だよ」
「このことでもね」
「というか民衆をいじめる悪い人が餓えから救おうとする?」
トートーは疑問符と共に言いました。
「薩摩芋を広めてまでして」
「しかもお砂糖まで広めたのよ」
ポリネシアはこちらのお話をしました。
「凄い功績よ」
「お米も薩摩芋もお砂糖も甘いね」
チーチーはそれ等の味のことを思いました。
「皆に甘いものを食べさせるなんてね」
「餓えから救って甘いものを食べさせるとか」
「凄い善行だよ」
オシツオサレツから見てもです。
「何処が悪い人かな」
「民衆を虐げる様な」
「先生が正しいよ」
老馬は断言しました。
「もうね」
「そうだね、僕は常々マルクス史観とかマルクス経済学はおかしいと思ってるよ」
先生も言います。
「極端な思想で物事を見て判断しているから」
「それって宗教と同じだね」
「共産主義って宗教を否定しているけれど」
「もうそれってね」
「宗教と同じよね」
「それもカルト的なね、しかも日本のこうした人達はね」
マルクス、共産主義から物事を見ている人達はというのです。
「吉宗さんだけじゃなくて江戸幕府に明治政府、皇室もね」
「全部否定してるんだよね」
「階級とか言って」
「それで革命も目論んで」
「それでだよね」
「そうなのに北朝鮮はいいと言うから」
この国はというのです。
「おかしいんだよ」
「北朝鮮ね」
「あの国世襲じゃない」
「しかも階級まであるし」
「おまけに軍隊にばかりお金とか使って」
「国民の人達餓えてるのに」
「その国はいいっていうから」
だからだというのです。
「矛盾しているなんてものじゃないよ」
「全くだね」
「そういうのをおかしいって言うのよ」
「誰がどう見てもね」
「それじゃあ」
「問題があるのはどちらか」
果たしてというのです。
「こうした人達って自衛隊も嫌いだけれどね」
「普通の人はわかるよ」
「それこそ子供だって」
「どう見てもおかしいのは北朝鮮だよ」
「あの国よ」
「僕もそう思うよ、吉宗さんや皇室が駄目なら」
そう言うならというのです。
「北朝鮮の政治や生まれで階級が決まってね」
「何か革命にどうか」
「それで階級が決まって」
「職業も決まる」
「そうなんだよね」
「そして世襲で国家元首が決まるんだよ」
北朝鮮という国はというのです。
「共和国とか共産主義とか言って」
「それじゃあね」
「皇室が駄目ならね」
「もう北朝鮮なんかアウトだね」
「完全に」
「それなのに北朝鮮はいいって言うんだから」
そうしたことだからだというのです。
「おかしいよ、僕は間違っているとね」
「言ってるね、いつも」
「そうした人達こそだって」
「マルクス主義を言ってね」
「北朝鮮をいいって言う人こそ」
「若しマルクス主義とか戦争反対とか言うなら」
自衛隊も批判してというのです。
「真っ先にだよ」
「もうそれこそだね」
「北朝鮮を批判する」
「そうしないと駄目よね」
「真っ先に」
「それをしないから」
だからだというのです。
「おかしいよ、後日その自衛隊の基地もお邪魔させてもらうけれど」
「自衛隊と北朝鮮の軍隊のどちらがいいか」
「それも言うまでもないよね」
「誰でもわかる位に」
「その誰もわかることがわからなくて」
それでというのです。
「学者さんやジャーナリストだからね」
「不思議だね」
「大丈夫かな、それで」
「子供でもわかることがわからない」
「そんな人達が知識人で」
「だから日本の知識人はずっとおかしかったんだ」
こう皆にお話しました。
「僕よく言っているね」
「うん、日本に来てね」
「日本の知識人の人達を見て」
「その歴史を学んで」
「あまりにも酷くてしかもね」
ただ酷いだけでないというのです。
「卑怯でもあるよ」
「あれだよね、ソ連が何をしてもね」
「北朝鮮があんな国でも」
「無理に擁護して」
「それで逆に日本を貶めていたね」
「日本の自衛隊が徴兵制になると言うなら」
それならというのです。
「北朝鮮なんか国民皆兵だからね」
「もう無茶苦茶だよね」
「自衛隊より遥かに酷いわ」
「もう何ていうかね」
「特撮の悪役みたいな国だね」
「そうした国こそ批判すべきなのに」
その人達の言うことに従えばというのです。
「そうしないでね」
「自衛隊ばかり攻撃する」
「それおかしいね」
「実際自衛隊が徴兵制になるか」
「なる筈がないよ」
先生はまた断言しました。
「自衛隊はね」
「そうした軍隊じゃないよね」
「北朝鮮の軍隊と違って」
「そうだよね」
「専門職の人達ばかりだからね」
自衛隊はというのです。
「徴兵をしたら数は用意出来ても」
「二年や三年で辞めていくからね」
「徴兵制だとそうだしね」
「それよりもずっと一緒にいてくれた方がいいわ」
「志願制でね」
「だからね」
それでというのです。
「その現実も見ないでね」
「そのことも問題だよね」
「現実を見ないことも」
「そもそもね」
「それで自衛隊を批判して」
そうしてというのです。
「あの国の軍隊は擁護するから」
「矛盾し過ぎだね」
「もうそれこそ」
「おかしいにも程があるね」
「どうにも」
「そう思うよ、おかしいことはね」
先生はどうかというお顔でさらに言いました。
「おかしいと思ってね」
「そして言う」
「それが本来の学者さんよね」
「ジャーナリストの人達だね」
「それが出来ていない人達が日本には多かったし」
知識人の人達にというのです。
「今もね」
「いるからね」
「そのことは何とかしていかないとね」
「日本はね」
「本当にそう思うよ」
こうお話しながらです。
先生は皆と一緒に鹿児島に来たその日から地質調査に入りました、そうして鹿児島のあちこちを歩いていくのでした。