『ドリトル先生と山椒魚』




                第四幕  研究所に行って

 先生はこの日王子の車に乗せてもらってです。
 生野町黒川地域にある朝来群山県立自然公園に来ました、そこにはでした。
「へえ、こんな施設があるんだ」
「そうなんだ」
 先生は王子に笑顔でお話しました。
「兵庫県にはね」
「オオサンショウウオの研究所があるんだね」
「ハンザキ研究所と言うんだ」 
 先生は王子に説明しました。
「ここはね」
「学校みたいな場所だね」
「実際にこの建物は昔学校だったよ」 10
 実際にというのです。
「それであんこうミュージアムセンターでもあるんだ」
「鮟鱇なんだ」
「うん、自然がね」 
 この公園のというのです。
「全体でミュージアムと考えられていて」
「それでなんだ」
「その名前でちなみにあんこうと言っても」
 この呼び名のこともお話します。
「この辺りの方言でね」
「お魚の鮟鱇じゃないんだ」
「オオサンショウウオをね」
 今研究しているこの生きものをというのです。
「そう呼んでいるんだ」
「あんこうって」
「だからあんこうと言っても」
 それでもというのです。
「お魚とは間違えないでね」
「わかったよ」
「それでハンザキというのは7」
 今度は研究所の名前になっているそちらのお話をしました。
「何なのかな」
「それもオオサンショウウオの名前なんだ」
「あんこうと同じなんだ」
「オオサンショウウオは生命力は強くてね」
 そうした生きものでというのです。
「それで身体が半分になっても生きていたことがあったとかで」
「だからハンザキなんだ」
「半分に裂かれても生きている」
「そういうことだね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうした名前にもなっているんだ」
「成程ね」
「じゃあ中に入ろう」
 こうお話してでした。
 先生は王子と一緒に研究所に入りました、勿論今回も動物の皆も一緒です、そして中に入るとです。
 オオサンショウウオもいてその写真も沢山あります、データなんかもありまして。
「色々なものがあるね」
「オオサンショウウオもいて」
「写真も飾られていて」
「かなりのものだね」
「そうだね、それでね」
 先生は皆にもお話します。
「特に夜にね」
「夜?」
「夜になんだ」
「そう、オオサンショウウオは基本夜行性だから」 
 そうした生きものだからだというのです。
「夜に観察してね」
「そうしてなんだ」
「調査してるんだ」
「それで研究しているんだ」
「そうなのね」
「オオサンショウウオは」
「そうしているんだよ」 
 皆に笑顔でお話します。
「ここではね」
「成程ね」
「色々しているのね」
「この研究所では」
「オオサンショウウオをそこまでして研究しているんだ」
「そうだよ、あとね」
 先生は施設の中のオオサンショウウオを見つつさらにお話します。
「周辺のそれぞれの個体の確認もしているよ」
「そうそう、オオサンショウウオって天然記念物だから」
「数が凄く少ないから」
「それでだね」
「それぞれのチェックもしているのね」
「昔はそれぞれの個体の模様や身体の特徴で確認していたけれど」
 それがというのです。
「今ではマイクロチップを使っているよ」
「それだね」
「マイクロチップを埋めて」
「それでそれぞれの個体の状況を確認している」
「そうしているのね」
「こうした時も文明は役立つね」
 先生は笑顔で言いました。
「本当に」
「マイクロチップって有り難いね」
「家族の犬や猫が行方不明になってもわかるし」
「何処にいるか」
「そうした意味でも役に立つね」
「凄いよね」
「そしてね」
 先生はオオサンショウウオの写真達を見ています、かなりの数のそれが並べられていて見事なものです。
「調査、研究してデータをね」
「それも取っていて」
「じゃあそれも見て」
「そうだよ、過去のデータと比較して」
 そうしたことも行ってというのです。
「その行動や寿命も確認しているんだ」
「そういえばオオサンショウウオってまだわかっていないこと多かったね」
「言われてみれば」
「そうらしいね」
「先生もそんなこと言ってたわ」
「だからわかっていないことを調べる為にも」
 まさにその為にもというのです。
「そうしたこともしているんだ」
「成程ね」
「色々やってるのね」
「この研究所では」
「オオサンショウウオについて」
「そしてここはだよ」
 あるコーナーに入りますと。
 そこには沢山のグッズがあります、どれもオオサンショウウオのものですが。
 皆それを見てこれはというお顔になりました。
「へえ、こんなのあるんだ」
「これは面白いわ」
「オオサンショウウオのグッズがあるんだ」
「色々な生きもののグッズがあるけれど」
「オオサンショウウオのものもあるんだ」
「ここではね」
 まさにというのです。
「そうでね」
「それでなんだ」
「オオサンショウウオのグッズが買える」
「色々あるけれど」
「そうしたことも出来るんだ」
「そうなんだ、じゃあ買おうね」
 そのグッズ達をです。
 先生は皆そして王子とどれがいいかをお話してでした。
 グッズも買いました、そうしてです。
 小さなホールにも行ってそこでも展示パネルを見てでした。
 それから先生はオオサンショウウオ自身がいる場所に行きますが。
 そこは水辺になっている屋外施設で。
「うわ、凄いね」
「オオサンショウウオをこんな間近で見られるなんて」
「凄く稀少な生きものなのに」
「触れる位よ」
「こんな近くで見ていいのかな」
「ここはこうしたことも出来るんだ」
 先生は驚く皆ににこりとしてお話しました。
「このことも凄いね」
「全くだよ」
「僕も驚いてるよ」
「私だってそうよ」
「オオサンショウウオがここまで近くで観られるなんて」
「凄いよ」
「ここでは人口産卵も出来るし」
 それもというのです。
「種の保護もね」
「しているんだね」
「ううん、凄いね」
「こんな場所もあるなんて」
「物凄い場所だよ」
「ちょっとオオサンショウウオ君ともお話してみるね」
 先生はここでそれに入りました。
 そうして実際に挨拶をして話しかけてみますと。
 一メートル位の大きさの焦げ茶色のオオサンショウウオが言ってきました。
「ドリトル先生だね、はじめまして」
「僕のことを知ってるんだね」
「だって先生だから」
 それでというのです。
「先生はあらゆる生きもののお友達だからね」
「それでなんだね」
「先生のことはよく知っているよ」
 こう先生に言うのでした。
「僕もね」
「そうなんだね」
「そう、だからね」 
 オオサンショウウオはさらに言いました。
「先生とお会い出来て嬉しいよ」
「そう言ってくれたら僕の方が嬉しいよ」
 先生は笑顔で応えました。
「本当に」
「そうなんだ」
「僕もね、それでここはどんな感じかな」
「生活がだね」
「問題はないかな」
「うん、のんびり出来ているよ」
 オオサンショウウオは先生に答えました。
「本当にね」
「それは何よりだよ」
「皆僕達一匹一匹を大事にしてくれているから」
「君達はとても貴重な生きものだからね」
「そうらしいね」
「だからね」
 オオサンショオウウオ自身にお話します。
「とてもね」
「大事にしてくれているんだ」
「一匹一匹ね、これからもね」
「僕達を大事にしてくれるんだ」
「そして研究もね」
 こちらもというのだ。
「させてもらうよ」
「僕達なんか研究しても面白いのかな」
「どんな生きものでも学問の対象でね」
 先生は笑顔で答えました。
「それでね」
「研究してなんだ」
「実に多くのことがわかって」
 そうしてというのです。
「面白いよ」
「そうなんだ」
「だから研究もね」
 保護と共にというのです。
「させてもらっているよ」
「そういうことだね」
「そう、そしてね」 
 そのうえでというのです。
「君達が快適に暮らしていることはね」
「そのことはなんだ」
「研究所の人達にお話させてもらうよ」
「そうしてくれるんだ」
「僕は君達とお話が出来て」
 それぞれの生きものの言葉がわかるからです。
「それで君達の気持ちもわかるから」
「それでなんだ」
「そう、だからね」 
 それ故にというのです。
「君達の気持ちとかをね」
「研究所の人達にお話してくれるんだ」
「そうさせてもらうからね」
「じゃあ宜しくね」
「そのこともね」
 オオサンショウウオとお話してこのことを研究所の人達にもお話した後で先生はこの辺りの水棲生物達も一緒に展示されているので皆と一緒に観ました。
 ここで王子はこんなことを言いました。
「日本は四方が海に囲まれていてね」
「そうしてだね」
「海の自然も凄いけれどね」
「伊勢なんかでもそうだったね」
「沖縄でもだよね」
「素晴らしい自然に満ちているよ」
 先生もこう言います。
「本当に」
「そうだね」
「けれどだね」
「海だけじゃなくて」
「川や湖もだね」
「素晴らしいよ」 
 本当にというのです。
「ここでも思うよ」
「兵庫県の川の自然ってこうだったんだ」
 老馬は目を丸くして言いました。
「豊かだね」
「僕達神戸にいるから」
「どうしても前の海ばかり意識するけれど」
 チープサイドの家族もお話します。
「川の自然もいいのね」
「かなり豊かだね」
「しかも天然記念物までいるし」 
 こう言ったのはポリネシアです。
「凄いものね」
「琵琶湖や山形県もかなりだったけれど」
 ジップはこれまで巡ったところを思い出しています。
「兵庫県も凄いね」
「僕達の住んでいる県の川ってこうした生きものがいるんだ」
 ダブダブも彼等を見て思うのでした。
「いや、凄いね」
「兵庫県と言っても広いしね」
「そうそう、日本海側にまであるし」
 オシツオサレツは二つの頭で言います。
「山も多くて」
「神戸以外にも沢山の市町村があるしね」
「そんなところだから」
 トートーも言います。
「色々な自然もあるね」
「それで川の自然はこうだね」 
 ホワイティの口調もしみじみとしたものです。
「素晴らしいものだね」
「本当に素晴らしいわね」 
 ガブガブが見てもです。
「これは川だけじゃなくて山もよね」
「きっとそうだね」
 チーチーはガブガブに答えました。
「自然はつながっているからね」
「勿論だよ、兵庫県は山の自然も見事だよ」
 先生は皆にその通りだと答えました。
「六甲もだよ」
「自然豊かなんだ」
「神戸の後ろのあちらも」
「そうなのね」
「川もね」
 六甲のそちらもというのです。
「奇麗で自然豊かで」
「山もだね」
「かなりの自然で」
「草木もよくて」
「生きものも豊富なんだ」
「牛女さんのお屋敷の周りもだね」
 そちらのお話もするのでした。
「そうだったね」
「あっ、そういえば」
「牛女さんのお屋敷の周りかなりよ」
「かなり豊かな自然だよ」
「見ていて楽しいよ」
「今も時々お邪魔するけれどね」
「何ならね」 
 先生は皆に牛女さんのことを思い出しつつお話をします。
「今度牛女さんからお話を聞こうか」
「牛女さんご自身から」
「六甲の自然について」
「そうしてみるんだね」
「妖怪は自然に詳しいからね」
 そうした存在だというのです。
「だからね」
「ああ、そういえばね」
「妖怪って山とか川にいることが多いね」
「街や村にもいるけれど」
「自然の中にいることが多いわね」
「自然の具現化ともね」
 妖怪達はというのです。
「言われているしね」
「イギリスで言うと妖精だから」
「実は同じ様な存在で」
「それで親しい妖怪さんも多い」
「そうだね」
「だからね」 
 それでというのです。
「牛女さんからもだよ」
「お話を聞いてもいいね」
「そうしてもね」
「それじゃあね」
「今度牛女さんのお屋敷に行ったら」
「そうしようね」
「是非ね、それとね」
 先生はさらにお話しました。
「兵庫県の自然もだよ」
「学んでいくといいね」
「これからは」
「今以上に」
「そうしていくのね」
「今度生物学の論文書いたら」
 その時はというのです。
「兵庫県の生態系についてのものにしようかな」
「いいね」
「じゃあそうしよう」
「こうした場所で学びもして」
「そうしてね」
「そうしていこうね」
 こうもお話してでした。
 皆で実際にこの辺りの生きものを見て学んでいきます、そしてその後で。
 皆で自然公園の中でお弁当を食べます、今回はお留守番のトミーが作ってくれたお弁当と王子さんの執事さんがそうしてくれたものです。
 どちらも豪華な重箱に何段もあって動物の皆も楽しく食べられますが。
「お握りいいよね」
「日本のお弁当だと」
「お握りがあるとね」
「それだけで嬉しいわ」
「全くだね」
「僕もそう思うよ」
 先生はそのお握りを食べつつ笑顔で答えました、おかずはほうれん草のおひたしに野菜の佃煮にキンピラ牛蒡にです。
 卵焼きにお魚の唐揚げ、ミートボールに海老フライです、デザートに沢山の果物もあってかなり豪華です。
 その中のメインの海苔に覆われた俵型のお握りを食べて言うのでした。
「お握りはこうした時に食べてもだよ」
「美味しいね」
「本当に」
「幾らでも食べられるよ」
「中の具もいいしね」
「今回トミーは色々入れてくれたね」
 お握りの中の愚をです。
「梅にね」
「それに昆布に」
「あとおかか」
「鮭もあるし」
「鱈子だってね」
「どれもいいね」
「僕この前名古屋で天むす食べたけれど」
 王子も言ってきました。
「こちらもね」
「美味しいね」
「凄くね」
 そうだというのです。
「本当にね」
「あちらも確かにね」
 先生も言います。
「美味しいものだね」
「そうだね」
「名古屋らしいよね」
「名古屋って言うと海老だね」
「名古屋コーチンにきし麺に」 
 それにとです、先生はさらに言います。
「味噌カツに味噌煮込みうどんに」
「ういろうだね」
「そうしたものの中にね」
「海老もあるね」
「それが名古屋でね」
「天むすもだね」
「あるんだ」
 こちらもというのです。
「僕も好きだよ」
「そうだね」
「いや、日本に来て」
 そして日本に住んでです。
「お握りの美味しさもだよ」
「先生は知ったね」
「こんな美味しいものがあるなんて」
 こうまで言うのでした。
「思わなかったよ」
「日本に」
「嬉しい驚きだよ」
「日本にこんな美味しいものがあるなんて」
「すき焼きに驚いたけれど」
「他にも一杯美味しいものがあって」
「お握りもその一つだからね」
 皆もお握りを食べつつ言います。
「お握りは日本のソウルフードで」
「そのうちの一つで」
「手軽に食べられるし」
「しかも抜群に美味しいから」
「こんないいものはないよ」
 実にとです、先生は言ってです。
 そしてまた一個食べます、そうして今度はこんなことを言いました。
「中の具は梅干しだったよ」
「種は出そうね」
 王子が笑顔で応えました、勿論王子もお握りを食べています。
「梅干しなら」
「そうだね、しかしこの梅の味もね」
 梅干しのそれもというのです。
「物凄くいいね」
「お握りに合うね」
「うん、ご飯自体にね」
「梅干しは合うね」
「日の丸弁当ってあるね」 
 ここで先生はこのお弁当の名前を出しました。
「白いご飯を入れて」
「その真ん中に梅干しを置く」
「そのお弁当がある位だしね」
「あれはそのまま日本の国旗だね」
 王子はおかずの海老フライも食べて言いました。
「日章旗だよ」
「そう、白いご飯に赤い梅干しでね」
「日本の国旗になるね」
「だからその名前になったんだ」
「面白いね」
「ちなみにこの日の丸弁当はね」
 梅干しが中に入ったそのお握りを食べつつお話します。
「乃木大将がはじめたんだ」
「ああ、あの人がなんだ」
「日本の軍人さんだったね」
「あの人も凄い人だよ」
 王子は心からこう言いました。
「堅固な要塞を陥落させたし」
「難攻不落と言われた旅順要塞をね」
「たった五ヶ月でね」
「確かに児玉さんの助けは借りたけれど」
 一時期指揮権をこの人が預かってです。
「それでも堅固で有名な要塞を陥落させて」
「その後の奉天の戦いでは大活躍したね」
「あの戦いの勝利は乃木大将あってだよ」
「そう、しかもね」
 先生はさらに言いました。
「軍人として物凄く高潔で」
「水師営の会見だね」
「降伏した敵の将軍を礼を以て迎えたね」
「帯剣まで許して」
「ロシア皇帝に寛大な処置も求めて」
「しかも軍に悪いことを許さない」
「日本軍自体がそうだったけれどね」
 乃木大将だけでないというのです、先生は今は日本の歴史について目を輝かせてお話するのでした。
「軍律がとても厳しくて」
「悪いことはさせなくて」
「乃木大将自身もだよ」
「そんなことはしなかったね」
「武器を持たない相手に銃剣を向けるとか」
 そうしたことはというのです。
「何があってもだよ」
「しなかったね」
「そんな立派な人だったんだ」
「何か日本じゃ最近まで評判がよくなかったそうだね」
「旅順が堅固でね」
 この要塞がというのです。
「当時の日本人、最近までもね」
「中々陥落しなくて」
「それでね」
 そうした状況でというのです。
「色々言われて」
「批判されていたんだね」
「多くの損害を出したのは事実だしね」 
 このことはというのです。
「それでだよ」
「最近まで評判が悪かったんだね」
「そうだったんだ」
 実際にというのです。
「無能とか散々言われてたんだよ」
「無能じゃないよね」
「他の国の人から見たらね」
「当時の日本軍で東郷さんと並ぶ偉大な人だよ」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「僕もそう思うよ」
「それがだね」
「日本ではそうだったんだ、あの戦争自体もね」
「日露戦争もだね」
「否定されていたしね」
「僕にとっては、いや僕に国でもだよ」
 王子は強い声で言いました。
「あの戦争があって」
「誰でもやろうと思って必死にやればね」
「出来るとわかったね」
「そうした戦争だから」
「凄くね」 
 実際にというのです。
「意義のあるね」
「素晴らしい戦いだったね」
「そう思ってるけれど」
「日本じゃ最近までそう思われていたんだ」
「否定されていたんだね」
「それは何故かというとね」
 先生はおかずのキンピラ牛蒡を食べながらお話しました。
「戦後の日本の知識人の人達はマルクス主義が強かったね」
「ああ、それからなんだ」
「そう、それでスターリンがあの戦争を侵略戦争と言って」
「それからなんだ」
「否定される様になったんだ」
「乃木大将もだね」
「日清戦争もだったしね」
 この戦争もというのです。
「それでなんだ」
「否定されていたんだ」
「日本軍が規律正しい軍隊だったことも言わないで」 
 それでというのです。
「逆に略奪暴行をしたともね」
「それ嘘だよね」
「そんな嘘も平気で吐いて」
 そうしてというのです。
「しかも戦争の後でね」
「その後でなんだ」
「あの戦争で日本は物凄く沢山の戦費を使ったね」
「うん、当時の日本の国家予算の数年分をね」
「それで戦争の後必死に戦費に使う為に借りたお金返したよ」
「第二次世界大戦が終わっても」
「そうなって」
 先生はさらにお話します。
「ロシアからは戦争に勝って領土と独立を得たけれど」
「そうした意味で凄かったね」
「戦争が勝った時に貰う賠償金はなくて」
「お金は貰えなくてね」
「国民の人達が怒ったけれど」
 それでもというのです。
「何故か日本の学者さんではこうしたことを言う人がいるよ」
「どういったことかな」
「当時の日本の政治家は戦争をすれば儲かるって錯覚したってね」
「そんな筈ないじゃない」
 王子はお野菜の佃煮を食べつつ即座に言葉を返しました。
「今お話してる通りだよ」
「借金で大変なことになったね」
「勝ったけれどね」
「それで以後日本は好戦的になったってね」
「それ学者さんが言うんだ」
 王子の口調は呆れたものになりました。
「まともに歴史勉強してるのかな」
「僕もおかしいと思うよ」
「そうだよね」
「けれどマルクス主義があったから」
「スターリンが日露戦争を侵略戦争と言ったからだね」
「そのマルクス主義のソ連の独裁者のね」
 悪名高いこの人がというのです。
「そうだったんだ」
「成程ね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「そんな学説もだよ」
「通用したんだ」
「けれどこんなこと素人でもわかるね」
「うん、誰だってね」
 王子もその通りだと答えます。
「僕だってわかる位だし」
「僕は歴史学者でもあるからね」
「それはおかしいとだね」
「言えるよ、こんな意見が通用して」
「そんなこと言う人が学者さんとしてやっていける」
「それが戦後の日本だったんだ」
「碌でもないね」
 王子は今度は呆れ果てた声で言いました。
「日本は素晴らしい国だけれどいつも思うよ」
「知識人の質は酷いね」
「普通の人達は物凄く聡明なのに」
「日本では一番頭がいい筈の知識人がだよ」
 その人達がというのです。
「この様にね」
「どうしようもないんだね」
「そうなんだ」
「テレビでも酷いよね」
 ジップも言ってきました。皆お握りを中心にお弁当を楽しんでいます。
「ジャーナリストの人達の言ってること」
「出鱈目で平気で嘘言う人もいるよ」
 ホワイティも言います。
「事実と違うことをね」
「学者さんだってそうだよね」
 トートーは今軸で言われている人のお話をしました。
「酷いよね、言ってること」
「普通にこの人学者さんかなって人いるわよ」
 ガブガブも今は批判的です。
「言ってることがあんまり過ぎて」
「何もわかっていない、わかろうともしていない」
「そんな人が本当に多いわ」
 チープサイドの家族もお話します。
「日本の知識人の人達は」
「そんな人ばかりで」
「しかも悪い話多くない?」
 ダブダブは囁く様にして言いました。
「汚職とかセクハラとか」
「言ってることだけじゃなくて人間の質も悪いなんてね」
 チーチーもどうかというお顔です。
「どうしようもないよ」
「まともな学問をしないと駄目ね」 
 ポリネシアは強い声で言いました。
「変な主張に凝り固まらないで」
「何か色々考えさせられるね」
「日本の知識人の人達を見てると」
 オシツオサレツは二つの頭をどっちもしんみりとさせています。
「本当に」
「あまりにも酷くて」
「酷いものを見っても勉強になるしにしても」
 老馬もかなり否定的です。
「いい気分はしないね」
「欧州では長い間キリスト教が歪んだ形であって」
 先生はかつて自分が暮らしていて生まれ故郷でもあるイギリスもあるこの地域のことを思い言うのでした。
「学問も歪んでいたね」
「そうだったね」
「西欧の方は」
「ローマ=カトリック教会が絶対で」
「教会の教えと違うことを言うと」
「異端とされもしたね」
 先生は皆に応えて言いました。
「そして火炙りにもなったね」
「そうそう」
「ガリレイさん大変なことになったし」
「コペルニクスさんだって批判されたし」
「他にも色々な人が批判されたわ」
「中には実際に異端とされた人もいたし」
「そんな風だったからね」
 かつての欧州はというのです。
「日本の知識人の人達を見ていると」
「かつての欧州を思い出すんだね」
「教会が絶対だった頃と」
「歪められた教えが支配していた」
「あの頃と」
「そう思うよ、本当にね」
 先生はお茶も飲みます、日本茶です。
「おかしな教えで学問が捻じ曲げられることはね」
「あってはならないね」
「絶対に」
「そうよね」
「今回のオオサンショウウオだってね」
 この生きものについてもというのです。
「昔のキリスト教の教えだとね」
「おかしくなったりするんだ」
「そうなる場合もあるのね」
「教会の主張に従って」
「事実が捻じ曲げられりするんだ」
「そうなることもね」 
 そうなる可能性もというのです。
「実際にダーウィンの進化論を今でも否定する人いるからね」
「聖書に書かれていることじゃない」
「そう言われてだね」
「否定されているね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「昔なら尚更だよ、恐竜なんて」
「そうそう、聖書では六千年位前に世の中が出来たってあるよ」
 王子は先生もまさにと答えました。
「神様が創ったって」
「そうあるね」
「だから恐竜はだね」
「何億年前の生きものはね」
 そうした生きものはというのです。
「聖書が絶対に正しいならね」
「間違いになるね」
「そうだよ、だからね」 
 それでというのです。
「ユダヤ教では恐竜を否定する人がいるよ」
「ユダヤ教も聖書だしね」
「旧約聖書だね」
「そちらになるからだね」
「そうなんだ」
 まさにというのです。
「聖書は確かに素晴らしく神は存在していても」
「それでもだね」
「絶対とするならば」
「学問がおかしくなるね」
「しかもね、教えが歪められて」
 そうなってというのです。
「絶対であると強制されたら」
「おかしくなるね」
「学問がね」
「だからオオサンショウウオもだね」
「言われることになるかもね」
「成程ね」
「ジャガイモもそうだったね」 
 先生はこの作物のお話をしました。
「最初は」
「そうそう、聖書に載ってないよ」
「ジャガイモは」
「アメリカ大陸から来たものは全部だけれど」
「聖書が書かれた時代アメリカ大陸は発見されてなかったから」
「バイキングが発見していて」
 コロンブス以前にというのです。
「その前にカルタゴ人も発見していて交易を行ったという説もあるにしても」
「どちらの人達もキリスト教徒じゃないし」
「そうなるとね」
「聖書とは無縁だから」
「それじゃあね」
「聖書にジャガイモがないのは当然だよ」
 このことはというのです。
「それで悪魔の作物と言って」
「食べられなかったね」
「欧州に伝わっても」
「暫くの間は」
「人間は食べなかったわね」
「家畜の飼料にする位で」
 その位でというのです。
「プロイセンのフリードリヒ大王が広めるまではね」
「中々だったね」
「中々広まらなくて」
「そして食べてみたら美味しくて」
「痩せた土地でも沢山採れるしね」
「沢山の人が飢えから解放されたよ」
 ジャガイモを食べる様になってというのです。
「確かに一見不格好で土臭くてね」
「美味しく見えないね」
「まず食べてみないと」
「そうしないと」
「そんな作物だけれど」
 それでもというのです。
「もっと早く食べていたら」
「聖書に載っていなくても」
「それでもよね」
「最初から食べていたら」
「ずっと早く沢山の人が餓えから解放されたよ」
「そうなったから」
 それでとです、先生は言いました。
「歪んだ教えに囚われたら駄目だよ」
「学問もおかしくなって」
「そして問題も起こる」
「そうなるからよね」
「おかしな教えに支配されたら駄目だね」
「まずその教えが正しいかどうかだよ」
 このことを見極めることだというのです。
「本当にね」
「キリスト教だってそうだよね」
「まずはね」
「おかしいかどうか」
「今その人が言っているかどうか」
「人間は誰だって間違えるしね、中には詐欺師だっているから」
 悪質な人も存在するというのです。
「教会もそんな人がいたしスターリンなんて」
「酷過ぎるからね」
「マルクス主義自体問題多いけれど」
「スターリンなんてヒトラーと同じじゃない」
「とんでもない独裁者だよ」
「そんな人の言うことをずっと真に受けるなんてね」
 それこそというのです。
「何があっても駄目だよ」
「全くだね」
「おかしなことだよ」
「だから日本の知識人はおかしくなって」
「今もだね」
「おかしな人が多いんだ」
 そうなっているというのです。
「今だってね」
「歴史もそうで」
「他のことでもだね」
「おかしいね」
「そうだよ、日の丸弁当からもね」
 このお弁当一つからもというのです。
「わかるね」
「全くだね」
「何でもないことなのに」
「それも学問だね」
「こちらが正しい学問だね」
「そうだね、しかしよく言えたものだよ」
 先生は首を傾げさせました、いぶかしむお顔で。
「戦争をすれば儲かるって錯覚したとか」
「日本の政治家の人達が」
「日露戦争に勝って」
「多くのものを得たからって」
「そう錯覚したとか」
「借金で首が回らなくなったんだよ」
 あまりにも多額の戦費を借りてです。
「そうなったことは明らかなのに」
「どう考えてもおかしいね」
「そこでそう言えるなんて」
「何でそう言えたか」
「わからないね」
「そんな見当違いなことを言って学者として通用するなら」
 それならというのです。
「こんなおかしなことはないよ」
「というかそうしたこと言う人って絶対自衛隊嫌いだね」
 王子が言ってきました。
「日本の皇室も」
「そうだよ、もう法則と言ってもね」
「いい位だよね」
「それで北朝鮮はいいんだよ」
「あんなとんでもない軍隊持っていて」
「世襲制の共産主義だけれどね」
 そんな国でもというのです。
「共産主義は世襲を否定しているけれどね」
「そのスターリンもしなかったね」
「むしろ彼は家族を冷遇したよ」
 スターリンはというのです。
「そうだったよ」
「それ位だったね」
「けれどね」
 それがというのです。
「あの国は世襲でね」
「そうした人達は日本の皇室は嫌いで」
「世襲とか言ってね」
「あの国の世襲はいいんだよ」
「おかしいなんてものじゃないね」
「しかもね」
 それに加えてというのです。
「戦前の日本はあれこれ言ってあの国の悪事はね」
「スルーだね」
「言わないんだ」
「本当におかしな人達だね」
「僕はあんな人達には間違ってもだよ」
 それこそというのです。
「なりたくないよ」
「そうだよね」
「間違っているから」
 だからこそというのです。
「絶対にね」
「戦前の日本と北朝鮮を比べると」
「どちらがいいかは明白だね」
「誰が見てもね」 
 王子も答えます、はっきりと。
「宝石と石どころじゃないよ」
「その違いはね」
「それがわからないのなら」
 それならというのです。
「もうね」
「知識人というか人間としておかしいよ」
「その域だね」
「そのことさえわからないのなら」
「知識人の看板を下ろすべきかな」
「厳しいことを言うと」
 それならというのです。
「もうね」
「そこまでのことだね」
「そう思うよ、当たり前のことがわからないで」
「あまりにも見当外れだと」
 普通の人が見てもです。
「知識人失格だね」
「そうした人達が多いのが今の日本だから」
 知識人と呼ばれる人達にというのです。
「逆におかしな大統領のおかしな行動を絶賛する」
「その場合も同じだね」
「僕は常識を以て学んでいきたいよ」
 心から言う先生でした、そうしてです。
 今はお弁当を食べてそれからお家に戻って研究所で観たものをまとめるのでした、そのうえでまた論文を書いていくのでした。








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