『ドリトル先生と山椒魚』
第二幕 日笠さんと一緒に
先生が動物の皆と一緒に動物園の中に入るとです。
そこにはもう日笠んさんがいました、日笠さんは先生を見るとその瞬間にぱっと明るいお顔になって挨拶をしてきました。
「先生、おはようございます」
「おはようございます」
先生は帽子を取って笑顔で挨拶を返しました。
「今日は宜しくお願いします」
「案内させて頂きます」
「いや、有り難いですね」
先生はにこにことして言いました。
「案内をしてくれるとは」
「先生は動物園によく来られてますね」
「はい」
そうだとです、先生は答えました。
「水族館や植物園も」
「学園のあらゆる施設に頻繁に足を運ばれていますね」
「そうしています」
先生はまた答えました。
「時間があれば」
「そうですね」
「それでこの動物園もなのですが」
「それで案内には及ばないとも思ったのですが」
それでもというのです。
「ですが」
「それでもですか」
「先生が来られると聞いて」
そうしてというのです。
「周りもどうかと言ってくれて」
「それで、ですか」
「はい、この度はです」
「案内を申し出てくれたのですね」
「左様です、宜しいでしょうか」
「日笠さんのお仕事に支障がなければ」
それならというのです。
「僕としては」
「では宜しくお願いします」
「両生類のコーナーに行かせてもらいます」
こうお話してでした。
先生は日笠さんの案内を受けて動物園の両生類のコーナーに向かいました、そうしてです。
そのコーナーに着くとでした。そこには世界中の色々な両生類の生きものがいて両生類の進化の歴史も書かれて標本やイラストが展示されています。
そこで皆も見ますが。
色々な蛙を見てです、皆は言いました。
「僕達が見た蛙もいるけれど」
「そうじゃない蛙もいるね」
「色々な蛙がいるわね」
「蛙と一口に言っても」
「実に様々だね」
「そうだよ、蛙も一種類じゃないんだ」
先生もこう言います。
「実に色々な種類の蛙が世界中にだよ」
「いるね」
「そうだよね」
「まさに世界中にいて」
「暮らしているのね」
「そうだよ、それで大きさもタイプも色々で」
それでというのです。
「調べていると面白いよ」
「蛙もだね」
「そうだね」
「色々な種類がいて」
「本当にね」
「ちなみに彼等は毒があるよ」
ここで、でした。
先生は赤や黒、ピンク等とても奇麗な和菓子を思わせるまでの小さな蛙達を見て皆にお話しました。
「知ってるね」
「ヤドクガエルだよね」
「その身体には毒があるんだよね」
「小さいけれどね」
「そうだよね」
「うん、ただ大人しいし噛んでもね」
例えそうしてもというのです。
「そこから毒は入らないからね」
「心配無用だね」
「襲われる心配はないね」
「そうした種類じゃないね」
「先生に教えてもらったよ」
「食べたら大変なだけで」
ヤドクガエル達はというのです。
「襲われることはないよ」
「そうだね」
「それでヤドクガエルって名前は矢の毒に使うから」
「だからだよね」
「ヤドクガエルって言うんだね」
「そうだよ、ヤドクガエルはね」
本当にというのです。
「そこからの名前だよ」
「現地の人達が蛙の毒を矢に使う」
「その身体から取って」
「それでだね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「ヤドクガエルなんだ」
「そうだね」
「その名前の由来だね」
「それで中南米にいるんだよね」
「アマゾンに」
「そうだよ、アマゾンは実に色々な生きものがいて」
そうしてというのです。
「それでだよ」
「両生類もそうだね」
「蛙にしても」
「色々な種類がいて」
「それで暮らしているね」
「アマゾンの自然は独特だからね」
広い世界の中でもです。
「広くて大河が流れていてね」
「物凄い密林でね」
「鬱蒼と生い茂っていて」
「しかもとても暑くて」
「雨が多くて」
「湿気も凄いわ」
「そうした場所だから」
それ故にというのです。
「生態系は独特でね」
「色々な生きものがいて」
「それでよね」
「蛙もそうで」
「毒を持つ蛙もいて」
「こうした蛙もいるよ」
平たい蛙としては大きいダークブラウンの種類も見ました。
「コモリガエルもね」
「その蛙も凄いよね」
「背中に卵を産み付けてね」
「背中が交尾の時に柔らかくなって」
「それでそこに卵を産んでね」
「子供達をそこで育てて」
「大人になって出て行くんだよね」
「こんな不思議な生態をした蛙もいるんだよ」
アマゾンにはというのです。
「凄いよね」
「全くだよ」
「外見も平たくてお口が大きくて」
「かなり独特だけれどね」
「こんな蛙もアマゾンにはいるんだよね」
「そうだね」
「そうだよ、しかもアマゾンにはまだよくわかっていないから」
調査しきれていあい場所がまだまだあるのです。
「未発見の生きものも多いと言われているね」
「そうだよね」
「まだ不思議な生きものいるかもね」
「蛙にしてもね」
「そうなんだ、では他の両生類達も見て行こう」
こう言ってさらにでした。
先生は他の生きもの達も見ていきます、すると本当に色々な両生類達がいます。
蛙だけでなくイモリや山椒魚もいます。アホロートルもいますが。
「日本で人気があった時期あったね」
「そうみたいだね」
「昭和の頃にね」
「エリマキトカゲもそうで」
「日本にはいない生きものだからね」
それでとです、先生はその薄い色彩で細長い水槽の中でのどかそうに暗している可愛い顔立ちの生きものを見つつお話しました。
「しかも外見が珍しいと」
「それならだね」
「人気が出るね」
「日本人って珍しいものが好きで」
「流行に敏感だし」
「江戸時代は象が来ると聞いてね」
そうなってというのです。
「皆こぞって見たんだよ」
「そんなこともあったんだ」
「日本人のそうした気質って昔からなんだ」
「江戸時代からなんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ、そしてね」
それにというのです。
「このアホロートルもだよ」
「そうなんだね」
「有名になったんだね」
「それで人気になったのね」
「ウーパールーパーとも呼ばれて」
「そうだよ、そして今はね」
先生は皆にさらにお話します。
「こうして動物園にもね」
「いてだね」
「こうして僕達も見られるんだね」
「そうなんだね」
「そういうことだよ」
こうお話するのでした、そして。
両生類の歴史も読んでいきますが。
「長いね」
「哺乳類や鳥類よりずっとね」
「僕達よりも歴史が長いんだね」
「両生類の歴史は」
「先生が前に教えてくれた通りだよ」
「そうだよ、まずは無脊椎動物が出て」
先生は生きもの全体の歴史からお話しました。
「カンブリア紀みたいな時代があったよ」
「あの凄い時代だね」
「色々な変わった形の生きものが出たのよね」
「アノマロカリスとか」
「色々な生きものが出たね」
「進化の試行錯誤ともね」
その様にもというのです。
「言われているよ」
「あまりにも色々な生きものが出て」
「それでよね」
「そんな風にも言われるね」
「カンブリア紀は」
「そうだよ、そうした紀を経て」
そうしてというのです。
「魚類が出てね」
「そうしてだよね」
「脊椎動物が出て」
「お水の中で暮らしていて」
「進化していったね」
「魚類の進化も面白いからね」
この生きもの達のそれもというのです。
「見ていったら」
「そうだよね」
「お口がなかったお魚もいたし」
「鎧みたいな外骨格のお魚がいたり」
「とんでもなく大きな怖い顔のお魚が出たりして」
「そうしてやがて水中から出る生きものが出たんだ」
そうなったというのです。
「最初はお魚でもね」
「そうだったね」
「本当に徐々で」
「最初は岸辺に少し上がる位で」
「そこからはじまって」
「鰭が足になって
そうなってというのです。
「そして尾の形も変わって」
「鱗が皮膚になって」
「それでだね」
「両生類になったね」
「そうなったわね」
「そうだよ、そしてその両生類がね」
彼等がというのです。
「今も地球にいるんだよ」
「そうだね」
「そうなっているね」
「進化の歴史には両生類もある」
「そうよね」
「その通りだよ、その両生類から爬虫類が出て」
「鳥類が出て哺乳類もだよ」
こうした生きもの達もというのです。
「出たんだよ」
「そうだね」
「そうしたことが書かれているね」
「歴史のコーナーにちゃんと」
「イラストや化石、標本と一緒に」
「この動物園はそうしたことも展示しているから」
だからだというのです。
「素晴らしいんだ」
「ただ生きものがいて」
「学べて飼育しているだけじゃなくて」
「それだけじゃなくて」
「こうした歴史とかも展示してくれているから」
「尚更しっかりと学べるよ」
そうだというのです。
「有り難いことにね」
「そうだね」
「その辺りもしっかりしてるね」
「そう思うといい動物園よね」
「この動物園は」
「そう思うよ」
動物の皆も言います。
「本当にね」
「実は僕がこの学園に入ったら」
医学部の教授さんとしてです。
「すぐに動物園の展示とかに意見を求められたよ」
「それ水族館や植物園でもよね」
ガブガブが言ってきました。
「先生は意見を求められてるわね」
「博物館や図書館、美術館でもだね」
チーチーは学園のそうした場所もと言います。
「意見を求められてるね」
「学園に来て何かとだね」
「あちこちから意見を求められてるわね」
チープサイドの家族も言います。
「どう展示したらいいか」
「どうした説明ならいいかって」
「先生は生物学も凄いからね」
だからだとです、ダブダブは言いました。
「当然のことだよ」
「先生はあらゆる学問に造詣が深くてね」
「物凄い沢山の博士号を持ってるからね」
オシツオサレツは二つの頭で言います。
「何かと聞かれるよ」
「本当にね」
「その中でも生物学になると」
マサニトデス、トートーは断言しました。
「聞かないでいられないよ」
「生成は生物学は医学と並んで特に造詣が深くて」
ジップは言いました。
「物凄いからね」
「しかも先生はあらゆる生きもののお友達だよ」
ホワイティは先生に言いました。
「そのことは有名だしね」
「それじゃあ動物園の人達も聞くよ」
絶対にとです、老馬は言いました。
「これでいいかどうすべきかってね」
「皆喜んでると思うわ」
ポリネシアも先生に言います。
「先生がこの大学に来てね」
「本当に有り難いです」
日笠さんもその通りだと言います。
「先生が来てくれて」
「この八条大学にですか」
「皆そう思っています」
学園のというのです。
「あらゆる学問に通じていてまさに博物学者で」
「博物学ですか」
「あのこの世のあらゆることを学ぶ」
「今は学問が細分化されていてあらゆることを学ぶとなるとですね」
「非常に難しいですが」
それでもというのです。
「先生はあらゆる学問に造詣が深いので」
「博物学者ですか」
「その方が来て頂いたので」
そうなったからだというのです。
「まことにです」
「有り難いとですか」
「思っています」
「恐縮ですね」
先生は照れ臭そうに笑って応えました。
「その様に言われると」
「ですが」
「それでもですか」
「この学園の人達はどなたもです」
日笠さんは先生に言います。
「先生が来られてです」
「この学園にですね」
「非常にです」
「喜んでくれていますか」
「特に医学と生物学のことは」
「動物園は生物学ですからね」
そちらの分野になるというのです。
「だからですか」
「尚更です」
「そうなのですね」
「王子がよく招いてくれたと」
彼がというのです。
「皆感謝しています」
「思えばあの時に王子に誘われて」
日本に来て大学教授として働いてはどうかとです。
「受けてよかったです」
「先生もそう言われますか」
「はい」
実際にというのです。
「神の導きですね」
「そうなのですね」
「心から思っています」
「私もそう思います」
日笠さんは笑顔でお話する先生にご自身も笑顔になって言いました。
「先生がこの大学ひいては日本に来られたことは」
「神の導きですか」
「はい、私はキリスト教徒ではないですが」
「確か仏教徒ですね」
「家は」
まさにというのです。
「そちらです」
「そうでしたね」
「ですが」
それでもというのです。
「先生が今ここにおられることは」
「神の導きですね」
「キリスト教の」
「そうなのですか」
「私も思います、そして」
日笠さんはこうも言いました。
「今こうしてご一緒出来て嬉しいです」
「僕もです、案内有り難うございます」
「いえ、そんな」
「いつも有り難うございます」
先生は笑顔でこうも言いました。
「よくしてくれて」
「これがお仕事なので」
「だからですか」
「そうさせて頂いています」
「そうなのですか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「これからもです」
「こうしてですね」
「ご一緒させて頂きたいですが」
「お願いします」
先生はここでも笑顔になって応えました。
「これからも」
「そう言って頂けますか」
「日笠さんは大切なお友達なので」
「お友達ですか」
「はい」
日笠さんににこりと笑って答えました。
「そう思います」
「そうなのですか」
「ですからこれからも」
悪気なく言う先生でした。
「宜しくお願いします」
「それでは」
「それでなのですが」
先生はご自身の言葉に内心気落ちした日笠さんにさらに言います。
「実はどうしても見たい生きものがいます」
「今回ですか」
「はい、両生類で」
こう言うのでした。
「宜しいでしょうか」
「どの生きものでしょうか」
「オオサンショウウオです」
この生きものだというのです。
「宜しいでしょうか」
「どうぞ、丁度このコーナーにもいますし」
「それならですね」
「案内させてもらうつもりでした」
日笠さんにしてもです。
「日本そして世界最大の両生類ですからね」
「そうですね」
「あの生きものは外せないですね」
「実は論文でもです」
今書いているそちらもというのです。
「書いていまして」
「そうなのですか」
「オオサンショウオのことは、そしてオオサンショウウオだけでも」
「論文をですか」
「書こうと思っています」
「そうなのですね」
「貴重な生きものなので」
だからだというのだ。
「あの生きものだけの論文もです」
「書かれたいですか」
「そう考えています」
「それはいいことですね」
日笠さんは先生のお話を聞いて明るいお顔で頷きました。
「オオサンショウウオは確かに貴重な生きものです」
「日本では天然記念物に指定されていますね」
「数は少なく」
「生息地域も限られていて」
「その生態もです」
こちらもというのです。
「非常にです」
「貴重ですね」
「そうした生きものです」
「僕もそう考えていまして」
「オオサンショウウオ専門の論文もですね」
「書こうと考えていますので」
「両生類の論文だけでなく」
さらにというのです。
「そちらの論文もです」
「書かれたいですか」
「そうしたいですが日笠さんもそう言われるなら」
先生は日笠さんに笑顔で応えました。
「書かせてもらいます」
「それではですね」
「はい、それでは両生類の論文の後で」
「オオサンショウウオの論文もですね」
「書きます」
このことを決意しました、そうしてです。
先生は日笠さんにオオサンショウウオのコーナーに案内してもらいました、勿論動物の皆も一緒です。
両生類のコーナーでも一番大きな場所でした、岩場と小川が再現された場所に。
濃いオリーブ色の一メートルはある丸い頭の山椒魚がいました、目はとても小さくてお口はかなり大きいです。
その山椒魚を見てです、皆は言いました。
「この生きものも何度も見てるけれどね」
「僕達先生と一緒にこの動物園によく来てるし」
「それでこの生きものも何度も見てるけれど」
「大きいよね」
「本当にそうだね」
「両生類とは思えないよ」
「桁外れに大きいよ」
「これがオオサンショウウオだよ」
先生は笑顔でお話しました。
「日本そして世界最大の両生類だよ」
「そうだね」
「動物園でも飼育されている例は稀だけれど」
「この動物園では飼育されていて」
「研究もされているね」
「そうなんだ、この生きものもね」
先生はこうもお話しました。
「大切にそうされているよ」
「それでなのですが」
日笠さんはここで先生にお話しました。
「このオオサンショウオは雄ですが」
「そうでしたね」
「鱒二といいまして」
名前のこともお話します。
「ここにいますが今度雌のオオサンショウウオも迎えることになりまして」
「雌のですか」
「はい、そして繁殖もです」
こちらのこともというのです。
「考えています」
「そうしたこともお考えですか」
「それで宜しければ」
「オオサンショウオのことで、ですね」
「先生にご協力をお願いしたいですが」
「わかりました」
もうその場で、です。先生は笑顔で答えました。
「喜んでそうさせて頂きます」
「お忙しくないですか?」
「いえ、充分に休んで寝ていますよ」
観ればかなり血色のいいお顔です、お肌もツヤツヤしています。
「食べていて」
「そうなのですか」
「ですから」
それでというのです。
「健康のことはです」
「心配いらないですか」
「健康診断を受けましたら」
この前というのです。
「イギリスにいた時より遥かにです」
「状態がいいですか」
「はい」
このこともお話するのでした。
「左様です、それにです」
「それに?」
「学問特に生きもののことでしたら」
それならというのです。
「是非です」
「そこまで言われますか」
「はい、ではこれから」
「ご協力してくれますか」
「そうさせて頂きます」
笑顔で約束しました、それからです。
先生は動物の皆と一緒に日笠さんに案内してもらう感じで動物園を見て回りました。午前中はたっぷりそうしてです。
午後はお昼ご飯の後で論文を書きます、その時に皆は先生に尋ねました。
「両生類のコーナーはわかるけれど」
「他の生きものも見て回ったね」
「動物園全体をね」
「そうしたね」
「またどうしてなの?」
「どうしてそうしたの?」
「両生類も生態系、自然の一部だからだよ」
先生は皆に論文を書きつつ温厚な笑顔でお話しました。
「それでだよ」
「ああ、そうだね」
「言われてみればそうだね」
「両生類も同じだね」
「自然の中にあるよ」
「だから他の生きもの達と深く関わっているからね」
それ故にというのです。
「日笠さんに動物園全体を案内してもらってね」
「それでだね」
「動物園の生きもの全体を見たんだね」
「そうしたんだね」
「今回は」
「自然は本当にそれぞれの生きものそれに植物が密接に関係し合っているからね」
先生は言いました。
「一つの種類だけで存在出来ないよ」
「そうだよね」
「それは絶対だよね」
「密接に関わり合っていて」
「それで生きているから」
「全体を見て学ぶ」
「先生もそうしたのね」
皆も納得しました。
「流石先生だね」
「両生類だけを見ない」
「全体を見るなんてね」
「よくわかっているよ」
「時間もあったしね」
このこともあったというのです。
「そうしたよ」
「時間だね」
「それもあるんだね」
「時間があるとね」
「それだけで有り難いね」
「そうだよ、時間はね」
これはというのです。
「本当に大事だよ」
「全くだね」
「時間があるかないか」
「そのことは重要だよ」
「現実的な問題としてね」
「時間があれば出来ることもね」
それもというのです。
「時間がないと出来ない」
「時間が味方かどうか」
「即ちあるかないか」
「それって大事よ」
「何よりもね」
「若しもだよ」
先生は皆にさらにお話しました。
「僕に時間がなかったらオオサンショウウオのことだって」
「動物園に協力出来なかったね」
「日笠さんのお願いに応えられなかったね」
「例え先生がそうしたいと思っても」
「無理だったよ」
「そう、時間があるししかもね」
それに加えてというのです。
「僕自身健康だしね」
「先生確かに健康だね」
ホワイティが見てもです。
「顔色もいいしね」
「身体の動きもしっかりしているわ」
ポリネシアも言います。
「いつもね」
「実際健康診断の数値もいいよ」
ジップはこちらのお話をしました。
「日笠さんにもお話してるけれど」
「イギリスにいた時よりもずっと健康だね」
トートーも言いました。
「確かにね」
「食生活がよくなったね」
「ええ、お野菜もお肉もバランスよく食べてるから」
チープサイドの家族は先生の食生活のお話をしました。
「日本に来てからね」
「イギリスよりもずっとそうなったね」
「しかも毎日通学して色々な場所巡って歩いていて」
ガブガブは運動のお話をします。
「身体も動かしているし」
「イギリスにいた時って基本病院の中にいるだけだったからね」
チーチーはその頃の自分達を思い出して言います。
「運動も全くしていなかったよ」
「しかもよく寝てるし」
ダブダブは睡眠について言及しました。
「そのこともいいね」
「入浴で程よく身体も暖めてるし」
老馬はこちらのことを思いました。
「尚更いいね」
「しかも煙草やドラッグもしないし」
「身体に悪い趣味もないからね」
オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「健康な筈だよ」
「精々お酒だけだしね」
「そうだね、しかも規則正しい生活だしね」
先生も思います。
「僕は健康だよ」
「時間があって健康」
「これだけで違うわよ」
「何かをするにあたってこれ以上なものはないよ」
「全く以てね」
「そうだね、あと日笠さん凄く嬉しそうだったね」
先生はこのことは相変わらず気付かないまま言います。
「そうだったね」
「それは当たり前だよ」
「私達いつも言ってるでしょ」
「日笠さんのことはね」
「そうでしょ」
「うん、ただね」
それでもと言う先生でした。
「案内役も考えてみたら僕はあの動物園は最低でも月に一回は通っていて」
「水族館にも植物園にも?」
「普通の博物館にも鉄道博物館にも」
「美術館にもで」
「図書館はしょっちゅうで」
「だから詳しいつもりだから」
動物園もというのです。
「それで案内してもらうことは」
「実は必要じゃない」
「そうだっていうのね」
「先生としては」
「そうなんだけれどね」
こう言うのでした。
「ところがね」
「それがわからないのが駄目なんだよ」
「先生の場合は」
「全く。自分自身についてはそうだから」
「僕達いつもこう言ってるけれど」
「残念なことだよ」
「残念って言うけれどね」
先生は論文を書きつつ首を傾げさせます。
「僕にとってはだよ」
「わからないっていうんだね」
「何がどう残念か」
「私達がいつも言っていることについて」
「そうなんだね」
「いつもね、ずっと言われているけれど」
それでもというのです。
「どういうことかな」
「うん、そのうちわかってね」
「僕達そう願ってるから」
「何時かね」
「そうなってね」
「ううん、何が何なのか」
それがというのです。
「わからないよ」
「それがわかればだよ」
「僕達も嬉しいから」
「先生のことはわかっているから」
「温かい目で見続けるわ」
「そうなんだ、まあね」
先生は皆のお話を聞いてあらためて言いました。
「僕も頑張るよ」
「何についてかわからないけれど」
「それでもだね」
「先生としても」
「そうするんだね」
「そのことについて」
「何かわからなくても」
それでもというのです。
「人は努力していくとね」
「それでだよね」
「わかってきて」
「そして道が開ける」
「そういうものでもあるね」
「何かがわかっていて努力するなら」
その場合はといいますと。
「確実に近付けるけれど」
「わかっていなくても」
「それでも努力していたら」
「やがてわかる」
「そうしたものなんだね」
「そうだよ、この場合は日笠さんと仲良くしていくことだね」
先生は言いました。
「そうだね」
「うん、そうだよ」
「簡単に言えばね」
「そうしていけばいいよ」
「そのことがわかっているとね」
「それだけで今はいいよ」
「そうだね、そうしていくよ」
是非にと言うのでした。
「これからもね」
「僕達も支えていくから」
「そうしていってね」
「先生はとてもいい人だからね」
「きっと幸せになれるしね」
「今でも充分幸せだよ」
わかっていないまま言う先生でした、そしてです。
論文を書き続けます、その論文はといいますと。
「終わるメドがついてきたね」
「あっ、そうなんだ」
「そうなってきたんだ」
「両生類の論文は」
「そうなってきたんだ」
「有り難いことにね、書いていってね」
そうしていってというのです。
「無事にね」
「それは何よりだよ」
「じゃあこのまま終わらせていこうね」
「そうしていこうね」
「今の論文もね」
「論文も書き終えてだよ」
そうしてこそというのです。
「論文になるんだよ」
「そうだよね」
「書き終えてこそね」
「そうしてこそ論文になるね」
「最後までそうしてこそ」
「だから僕は書きはじめたらね」
論文をというのです。
「絶対にだよ」
「書き終える様にしているね」
「何があっても」
「そうして発表する」
「そうしているね」
「そうしているよ、論文もその点では小説や漫画と同じだよ」
まさにというのです。
「最後まで書き終えないとね」
「駄目だよね」
「一旦書きはじめたら」
「その時はね」
「是非ね、しかしね」
また言う先生でした。
「漫画や小説でそうしない人は結構いるね」
「そして論文でもね」
「残念ながらね」
「そうした人もいるね」
「世の中には」
「そうだね、僕はそうしたことはね」
先生としてもです。
「したくないよ」
「そうだよね」
「先生はそうした人だね」
「しっかりと守る」
「それがいいね」
「そうだよ、学者としては」
そのお仕事にあるならというのです。
「論文を書きはじめたら」
「最後まで書く」
「書き終える」
「そうするんだね」
「それが務めだと考えているよ」
学者のというのです。
「責任感と言うと言い過ぎだけれど」
「それでもだね」
「書き終える様にしていくね」
「これからも」
「そうしていくね」
「そうしていくよ」
まさにとです、こう言ってでした。
先生は三時になるとティータイムに入りました、今日はレモンティーとドーナツにアイスクリームそしてドライフルーツでした。
その中のドーナツを食べて先生は言いました。
「しっかり論文を書いてね」
「その後のティータイムっていいよね」
「頭のいい休憩になるよ」
「論文書くのも頭使って」
「それで疲れるからね」
「だからね」
それでというのです。
「今本当にだよ」
「美味しく食べてるね」
「そうしてるね」
「今だって」
「そうだね」
「そうだよ、ドーナツを食べて」
上段にはそれがあります。
「中段のアイスクリームも下段のドライフルーツもね」
「全部だよね」
「全部食べるね」
「そうするね」
「そうしていくよ、アメリカ風のティーセットも」
こちらもというのです。
「いいよね」
「そうだよね」
「本当にいいよね」
「こちらもね」
「美味しいよ、イギリスではイギリスのティーセットしか口にしていなかったけれど」
それでもというのです。
「日本に来てからは」
「こうしてアメリカ風のティーセットも楽しむし」
「中華風もだしね」
「日本風も楽しんでるね」
「時には」
「そうだよね、だからね」
それでというのです。
「そのことも嬉しいよ」
「日本って色々なもの食べられるからね」
「色々な国のお料理があって」
「そうした国だからね」
「このこともいいよね」
「甘いものだってそうだね」
ティーセットに欠かせないそうしたものもというのです。
「日本では」
「それでお茶自体もだよね」
「日本はお水もいいから」
「お茶も美味しいよね」
「しかも葉もいいし」
「煎れる茶器もいいしね」
「そうだね、茶器なんてね」
先生は今度はこちらのお話をしました。
「日本の茶道だとね」
「物凄いよね」
「それ自体が国宝になる位に」
「物凄いのもあるしね」
「中にはね」
「そんなものでは流石に飲めないけれど」
それでもというのです。
「そうしたものもあるのがね」
「日本だよね」
「お茶を飲むことについてもね」
「そうしたものがある」
「そうした国だね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「日本はね」
「お茶を飲むだけでも」
「それだけでもそうなっているから」
「物凄く美味しくて」
「色々なお茶も飲める」
「そんな国だね」
「だから素敵だよ、ではティータイムの後はね」
それが終わると、というのです。
「また論文を書くよ」
「そうしようね」
「五時までね」
「そうしようね」
「そうするよ」
こう言ってでした。
先生はまた論文を書いていきます、先生は今の論文を真面目に書いていくのでした。