『ドリトル先生とタキタロウ』
第七幕 壁も歩いて
皆で歴史の本の整頓を続けています、階は徐々にですが次第に奇麗になってきています。それは天井も同じで。
ボームさんは天井を魔法の道具の力で歩きながら皆に言いました。
「うん、これでね」
「随分奇麗になったね」
シャングリラを拭いているモジャボロが応えました。
「天井も」
「そうだね、こうして魔法の道具も使えばね」
「お掃除も楽だね」
「そして楽しくなるね」
「全くだよ、魔法を使えば」
モジャボロはボームさんににこりとして答えました。
「あらゆることがもっともっと楽しくなるよ」
「そうだね」
「オズの国は何でも楽しく出来る国だけれどね」
「魔法を使うとね」
「尚更だよ」
それこそというのです。
「楽しくなるよ」
「全くだね」
「言うならば魔法は調味料だね」
魔法使いはこう言いました、天井にワックスをかけながら。
「お料理を味付けしてね」
「より美味しくするものだね」
「私は今そう思ったけれどどうかな」
「そうだね」
ボームさんもそれはと頷きます。
「言われてみるとね」
「まさにそうだね」
「うん」
ボームさんは笑顔で答えました。
「そう思うよ」
「全くだね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「いや、オズの国は魔法だけじゃないね」
この国にあるものはというのです。
「ありとあらゆる不思議があるね」
「この国にはあらゆる不思議があるよ」
ムシノスケ教授は拭き掃除をしつつ言いました、拭き掃除をした後でワックスをかけてもっと奇麗にしているのです。
「お伽の国だけあってね」
「それでだね」
「魔法があってね」
そうしてというのです。
「他の不思議もだよ」
「あるね」
「科学もそうだし」
それにというのです。
「他の不思議もね」
「あるね」
「そう、だからね」
「調味料もだね」
「魔法だけじゃないよ」
「他のものもあるね」
「一杯ね」
「オズの国は調味料の宝庫なんだね」
モジャボロの弟さんはシャングリラを拭きつつ言いました。
「つまりは」
「そうだね」
ボームさんは弟さんにも応えました。
「言うならば」
「その通りだね」
「うん、僕が最初に知った時から不思議で一杯だったけれど」
「今はね」
「あの頃より遥かにだよ」
「不思議に満ちているね」
「こんな不思議な国はないよ」
こうまで言うのでした。
「本当にね」
「あらゆる不思議に満ちていて」
「只でさえ楽しいことがもっと楽しくなる」
「そんなことばかりだよ」
「全くだね」
「見て見て」
つぎはぎ娘が陽気に言ってきました、見ればです。
壁を歩いています、天井から壁に入り床にまでです。
モップをかけていきます、そうして言うのでした。
「こんなことも出来るわ」
「凄いね、一周したね」
「ええ、魔法の道具を使えばね」
一緒にモップをかけているジャックにお話します。
「こうしたこともよ」
「出来るんだね」
「そうよ、まさにこれこそがね」
つぎはぎ娘は朗らかに踊りながらお掃除をして言うのでした。
「オズの国よ」
「不思議に満ちているね」
「外の世界で起きない様なことがね」
「何でも起きるね」
「そうなのよ」
「これはーーです」
チクタクは本を奇麗にしつつ言いました。
「忍者ーーですーーね」
「十勇士の人達よね」
「はいーー忍術ーーでは」
チクタクはさらに言いました。
「壁歩きーーもーー出来ますーーね」
「あの人達はね」
「ですーーから」
「あたし今忍者みたいなのね」
「そうーー思いーーます」
「それはいいわね、あたし忍者好きなのよ」
つぎはぎ娘はチクタクの言葉にお掃除をしつつ言いました。
「煙でどろんどろんって消えたり手裏剣シュシュシュッてね」
「恰好いいわね」
「ええ、物凄くね」
ビリーナにも応えます。
「あんたもそう思うでしょ」
「思うわ、飛ぶみたいにジャンプしてね」
「むささびの術や大凧で実際に飛ぶしね」
「それで水蜘蛛でお水の上歩いてね」
「水遁の術でお水の中に隠れて」
「泳ぎも達者でね」
「忍術を使えばね」
エリカも言います。
「もう何でも出来る」
「ええ、魔法みたいにね」
ビリーナはエリカにも応えました。
「体術も凄いし」
「もう超人よね」
「忍者の人達はね」
「忍者屋敷なんて素敵よね」
ガラスの猫はこちらのお話もしました。
「もう面白いからくりだらけで」
「隠れたり逃げたりね」
「びっくり箱みたいね」
「あんな場所にも住みたいわね」
つぎはぎ娘は壁を歩きつつ言いました、本当に忍者のそれみたいです。
「飽きないわよ」
「畳返しとか出来てね」
「そうしたことも出来てね」
「幸村さんはお侍さんだけれど」
それでもとです、ハンクは本を運びつつ言いました。
「あの人忍術も凄いんだよね」
「あの人は武芸十八般を極めているからね」
一緒に本を運んでいる木挽きの馬が応えました。
「だからだよ」
「それでだね」
「そう、だからね」
それ故にというのです。
「忍術だってね」
「極めていて」
「凄いんだよ」
「幸村さんはいつも学問や修行をされてるんだよね」
トトは本棚を拭きつつ言いました。
「そうだよね」
「そうそう、そうしてね」
「武芸も極められたんだよね」
「十八般全てね」
「忍術だけじゃなくて」
「十勇士の人達の主君であると共にね」
「だから忍術も使えて」
臆病ライオンも言ってきました。
「壁歩きも出来るんだね」
「手裏剣も投げてむささびの術も使えるね」
腹ペコタイガーは忍術ということから思うのでした。
「水遁だけでなく五遁の術も全部」
「あの人はそうだね」
「他の武芸と一緒にね」
二匹で本を運びつつ言います、本を運ぶことも順調です。
「極めておられるんだよね」
「忍術も」
「忍者は最初オズの国にいなかったんだよね」
こう言ったのはかかしでした、奇麗にした本棚にやはり奇麗にした本をどんどん入れて収めていっています。
「そうだよね」
「そうそう、僕も最初は知らなかったよ」
樵はかかしと一緒に本棚に本を入れていきつつ言いました。
「そんな人達がいたなんてね」
「そうだよね」
「けれど来てみると」
「お侍さんもそうだけれどね」
「凄い人達だよ」
「不思議な術を一杯使える」
「仙人さんも凄いけれど」
ファイター大尉も本棚に本を入れていっています。
「中国の」
「しかし日本の忍者もね」
「かなりのものだね」
「魔法と見間違うばかりに」
「凄いものがあるよ」
「全くだよ」
大尉は言いました、ですが。
ジュリアはここで、です。こう言いました。
「外の世界での忍術は違うらしいわね」
「ええ、どうやらね」
トロットはジュリアと一緒に壁を拭いています、つぎはぎ娘の様に壁を歩いてそのうえでモップをかけています。
「水蜘蛛とかむささびとかね」
「そうした術はなくて」
「体術を使って隠れるもので」
「あんな魔法みたいなことは出来ないみたいね」
「そうなんです」
忍者のお国である日本人の恵梨香が答えました、オズの国の名誉市民の五人は今はせっせと本を奇麗にしています。
「外の世界では忍術は隠れるものなんです」
「僕達も超人みたいに思ってたんですが」
カルロスも言ってきました。
「実際はそうでした」
「確かに忍者の装束は着ていますけれど」
ナターシャはそれでもと言います。
「何メートルも飛び上がるとかもないです」
「手裏剣も何発も一度に投げられないんです」
ジョージは忍者の代名詞であるこの武器のお話をしました。
「鉄で重いですし」
「煙玉を投げてどろんと消えるなんて」
神宝はこちらのお話をしました。
「これも無理です」
「オズの国の忍者はお伽の国の忍者ね」
ベッツイは五人のお話を聞いて思いました、この娘は本棚を拭いています。
「つまりは」
「そうだと思います」
「そこは違います」
「どうしても」
「外の世界ではです」
「忍者は忍ぶ、隠れる人達です」
「あんな派手なことは出来ないのね」
ベッツイはまた言いました。
「本当に」
「僕も最初忍者の人達を見て驚いたよ」
ボームさんにしてもです、見れば今はベッツイをお手伝いしています。
「けれどね」
「それでもよね」
「外の世界でのお話を聞いたら」
「違ったわね」
「外の世界では恰好よくてもね」
「ああした魔法みたいなことは出来ないわね」
「全くね」
これがというのです。
「手裏剣だってね」
「何発も一気に投げたりとかね」
「出来ないからね」
「水蜘蛛も」
トロットは本棚を拭きつつそちらのお話をしました。
「実際は使ってもお水に浮かばないわね」
「そうだね」
「もうそうしたところはね」
「全く違うね」
「そうよね」
オズの国の忍者と外の世界の忍者はというのです。
「何でも昔の漫画やアニメではね」
「日本のね」
「そうした風だったそうだけれど」
「実際は違ったみたいだね」
「外の世界ではね」
こうお話するのでした。
「壁を歩いたり布を出してね」
「その場所と同じ色のね」
「その場所と隠れて同化して人の目をあざむくとか」
「そんなことは出来ないわね」
トロットも言います。
「木の葉隠れの術とか」
「火遁の術とかもね」
「土の中に入って隠れるとか」
「土遁の術も」
こうしたことをお話するのでした、そしてです。
休憩時間になってボームさんはお茶を飲みつつその忍者のお話をさらにしました。
「忍術もオズの国の魔法のヒントになっているのかな」
「ええ、なっているわ」
オズマはにこりとしてです、レモンティーを飲みつつ答えました。
「もう忍術を見ていると」
「魔法のヒントをだね」
「どんどん得られるわ」
「そうなんだね」
「これは仙術もよ」
「中国のそちらもだね」
「そうなの。陰陽道や妖術も」
そういったものもというのです。
「ヒントになっているわ」
「東洋のものもだね」
「ケルトや北欧の魔法も学んでるし」
「そこに東洋のものも入れて」
「錬金術それに科学も入れて」
そうもしてというのです。
「尚更ね」
「凄いものにしているね」
「そうなの、だからね」
それでというのです。
「忍術もね」
「ヒントになっているんだ」
「凄くね」
「忍者の服もいいわね」
ドロシーもレモンティーを飲みながら言います、皆今は美味しいレモンティーを飲んでそうしてほっとしています。
「忍装束も」
「動きやすくて格好いいから」
「だからね」
それでというのです。
「素敵よね」
「あの服もね」
「ただね」
ここでドロシーはこうも言いました。
「女の人、くノ一の人達も」
「忍装束だけれどね」
「何か時々ね」
「ミニスカートみたいな服とかね」
「言う人いるわね」
オズの国でもです。
「女の人もあの服なのに」
「そのことですね」
「やっぱり漫画のせいですね」
「あと小説やゲームです」
「そうした作品ですとくノ一ってそうした服なんです」
「丈の短い着物で」
神宝達五人が答えました。
「ミニスカートみたいな」
「袖もないか短い」
「そんな服なんです」
「だからですね」
「オズの国でもくノ一はそうした服って思ってるんですね」
「そうよね、けれどああした服だとね」
ドロシーは言いました。
「オズの国なら兎も角外の世界では寒いし危ないわね」
「お肌多いと隠れたり動く時危ないです」
「忍者って山の中にも入ります」
「その時お肌が多く出てると危ないです」
「木の葉や石がかすったり当たったりしますし」
「虫もいますから」
「そうよね、だからオズの国でもくノ一の人は忍装束だけれど」
そうなっているというのです。
「そのイメージ強いみたいで」
「くノ一の人っていうとですね」
「そうした服かって」
「そう言う人おられるんですね」
「実際は違うのに」
「それでも」
「そうなの。そうした服も恰好いいと思うけれど」
けれど、と言うドロシーでした。
「オズの国でも違うわよ」
「オズの国の服は露出が少ないからね」
ボームさんは冷静に述べました。
「だからだよ」
「それで、ですね」
「くノ一の人もそうですね」
「忍装束で」
「それを着ていて」
「動き回っていますね」
「そうなんだ、ただ忍術はオズの国のものだから」
だからだというのです。
「どろんと消えたり壁やお水の上を歩いたりはね」
「出来るんですね」
「そうした忍術は使えるんですね」
「外の世界では無理なことも」
「それも出来て」
「凄いんですね」
「そうだよ、僕達も修行すれば」
そうすればというのです。
「忍術を使えるよ」
「それで忍装束は色々な色があるの」
オズマはこちらのお話もしました。
「外の世界では黒かそれに近いダークグリーンらしいけれど」
「オズの国だと派手よね」
ドロシーも言います。
「それぞれの国の色にね」
「緑、青、赤、紫、黄色のね」
「他の色もあるわね」
「その人が好きな色をね」
それをというのです。
「使えるわ」
「そうよね」
「白い忍装束も」
これもというのです。
「あるわね」
「ええ、奇麗よね」
「雪みたいでね」
「本当にね」
「オズの国の忍者の歴史の本もあるよ」
ボームさんはこちらのお話もしました。
「まだオズの国に入ってあまり経っていないけれど」
「オズの国にあるものだから」
「本にはなっているのね」
「そうなんだ」
オズマとドロシーに微笑んで答えました。
「お侍さんや力士の人達もでね」
「忍者の人達の歴史もなのね」
「本としてあるのね」
「そうなんだ、だからね」
それでというのです。
「よかったら読んでね」
「そうさせてもらうわ」
「是非ね」
二人はボームさんに微笑んで答えました。
「どんな歴史か楽しみだし」
「ここの整頓が終わったらね」
「そうするといいよ、しかし若しもオズの国に日系人の人もいなかったら」
ボームさんはこうも思いました。
「忍者の人達もいなかったね」
「そうよね、お侍さんもね」
ドロシーは確かにと思いました。
「いなかったわね」
「力士さんも陰陽師の人達もね」
「落語家さんや歌舞伎役者の人達も」
「皆いなかったよ」
「そうだったわね」
「日本の独特で面白いそしてね」
ボームさんはしみじみとして言いました。
「なかったら」
「残念よね」
「これは中国の文化もだよ」
神宝も見て言いました。
「仙人さんに武将の人達もね」
「面白い人達よね」
「中華街だってね」
この場所もというのです。
「なかったよ」
「そして中華料理も食べられなかったわね」
「オズの国の中華街はいいよね」
「私も大好きよ」
「エメラルドの都にもあるしね」
「賑やかで楽しい場所よね」
「とてもね」
こうボームさんも言うのでした。
「中華料理も中国の品々もね」
「いいわね」
「京劇も」
こちらもというのです。
「いいね」
「とてもね」
「実は僕は日本や中国の服も好きでね」
こうも言うボームさんでした。
「よく着ているんだ」
「私も持っているわ」
ドロシーも言ってきました。
「日本の振袖も中国の旗袍もね」
「どれもだね」
「ええ、持っていてね」
そうしてというのです。
「着ることもあるわ」
「公の場でだね」
「そうなの。ただ日本や中国の正式な礼装の」
女性のというのだ。
「十二単とかはね」
「持っているよね」
「けれど滅多に着られないわ」
「ドロシー王女でもだね」
「そうなのよ」
「十二単はね」
オズマも言ってきました。
「それに中国の宮廷の服は」
「ドレスとはまた違うね」
「ええ、オズの国の国家元首の礼装でね」
それでというのです。
「特別なドレスを持っているけれど」
「あの五色のドレスだね」
「緑と青、赤、紫、黄色のね」
まさにオズの国の五色です。
「その色のね」
「ドレスね」
「そのドレスを着て」
そうしてというのです。
「特に重要な式典の時には出るわ」
「そうしているね」
「それで十二単や龍袍は」
「持っているね」
「けれど滅多に着ないわ」
そうだというのです。
「和風や中国式の式典の時だけね」
「そうだね」
「それでオズの国の式典はね」
「基本西洋式だからね」
「それでね」
そうしたものだからだというのです。
「そうしたものは滅多に着ないわ、けれど持っていて」
「それでだね」
「着ることはあるわ」
滅多になくてもというのです。
「そうよ」
「そうだね」
「そうそう、オズマやドロシーの十二単や龍袍姿もいいよね」
かかしが笑顔で言ってきました、飲み食いする必要のない人達はカップを持たず雰囲気を飲んでいます。
「とても奇麗だよ」
「そうだね」
樵もその通りと頷きます。
「まさに王女という風で」
「本当にいいね」
「四人揃って着ると」
「ベッツイとトロットも合わせてね」
「尚更いいね」
「僕もそう思うよ」
「色々な服があることもいいことだよ」
ボームさんはこのことを笑顔で言いました。
「そして着られることはね」
「あの、オズの国の服は」
神宝が言ってきました。
「それぞれの国の色で」
「それでだね」
「三角の帽子だね」
「あの沢山の鈴が付いたね」
そうしたとです、ボームさんはかかしと樵に答えました。
「そうだったね」
「それがオズの国の服でね」
「皆着ているね」
「けれど」
それでもというのです。
「それが今ではね」
「沢山の服があるね」
「そして着られるね」
「今では」
「その服だけじゃなくて」
「そうなっていて」
今のオズの国はというのです。
「嬉しいことだね」
「そのこともね」
「そうだね」
「それでだけれど」
ボームさんはさらに言いました。
「オズの国の服の歴史の本もあるよ」
「へえ、服のですか」
神宝はそう聞いて驚きの声をあげました。
「それの歴史ですか」
「色々な本がありますけれど」
ナターシャも言います。
「服の歴史の本もあるんですね」
「それでここにもあるんですね」
恵梨香も言いました。
「そうなんですね」
「何にでも歴史があるんですね」
カルロスの口調はしみじみとしたものでした。
「世の中は」
「そういえば外の世界でも何とかの歴史ってあるけれど」
それでもというのです。
「オズの国でもなんですね」
「そう、何でもだよ」
まさにとです、ボームさんは五人にもお話しました。
「歴史があるんだよ」
「そうなんですね」
「服にもですね」
「歴史があるんですね」
「それで、ですね」
「オズの国にもですね」
「何にでも歴史があってね」
そうしてというのです。
「オズの国でも本として書き残されているんだ」
「そうなんですね」
「ここにあって」
「今整頓されているんですね」
「そうなっているんですね」
「それで僕達が整頓にあたっているんですね」
「そうだよ、ただね」
こうも言うボームさんでした。
「オズの国はここでも外の世界と違うんだ」
「そうなんですか」
「服のことでも」
「オズの国は違うんですか」
「外の世界とは」
「それでどう違うんですか?」
「皆が知っているあの服がだよ」
今かかしと樵とお話したオズの国伝統の服がというのです。
「それぞれの国の色で上着とズボン、ブーツに鈴が一杯付いた三角帽のね」
「あの服ですか」
「ドロシーさんも最初に来られた時に見た」
「オジョさんもいつも着られてますね」
「ヘンリーさんとエマさんもですよね」
「あの人達も」
「あの服は比較的早い時代に出来上がってね」
そうなってというのです。
「着られているんだ」
「そうなんですか」
「長い間あの服だったんですか」
「オズの国では」
「私達もオズの国の服っていうとあの服ですが」
「あの服の歴史は長いんですね」
「それがね」
ボームさんはレモンティーのおかわりをしつつ言います、ジュリアが淹れようとしましたが笑顔で僕がと応えてそうして自分で淹れてまた飲みます。
「オズの国はアメリカが反映されるね」
「あっ、それでなんですね」
「アメリカは世界中から人が集まるから」
「世界中の人の服もですね」
「着られる様になったんですね」
「そうなんですね」
「そうなんだ、僕は僕が外にいた頃の服が基本だけれど」
十九世紀後半の頃のアメリカの服です、首にはネクタイではなく紐があります。
「色々な服を持っているしね」
「さっき言われましたね」
「日本や中国の服もって」
「それでなんですね」
「そうした服も着られてるんですね」
「時々でも」
「そうだよ、靴だってね」
こちらもというのです。
「革靴にブーツにね」
「日本や中国の靴もですか」
「お持ちですか」
「服だけでなく」
「靴もなんですね」
「今は沢山持たれてるんですね」
「そうしているんだ」
こう五人にお話するのでした。
「僕もね」
「中国のあの高い靴がいいのよね」
トロットはにこりとして言いました。
「旗袍の時の」
「龍袍の時もね」
ベッツイも笑顔で言います。
「特別な靴で」
「いいわよね」
「独特の趣があってね」
「十二単の時は室内で日本だと室内では靴を脱ぐから」
ドロシーはそこからお話します。
「履かないけれどね」
「けれど日本の草履や下駄もいいわよね」
「独特の風情があってね」
「そうよね」
「靴の歴史もあるよ、靴も重要だからね」
ボームさんはこちらもとお話します。
「ちゃんと歴史になっているよ」
「靴ですか」
「靴の本もあるんですね」
「それで、ですね」
「この階にもあって」
「私達も整頓しているんですね」
「そうなんだ」
ボームさんはまた五人にお話しました。
「それで靴の本も面白いよ」
「靴も色々ありますね」
「今のオズの国では」
「伝統のそれぞれの国の色のブーツだけでなく」
「他にもですね」
「一杯ありますね」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「僕は沢山の靴も持っているんだ」
「じゃあ草履もですか」
「下駄もですか」
「中国の靴もですね」
「色々な靴も持っておられて」
「履かれてるんですね」
「そうしているよ、歴史はいいね」
にこにことしてのお言葉でした、飲んでいるレモンティーはエメラルドの都のものなので緑色です、そこに緑のレモンのお汁を煎れたので外の世界の薄いオレンジ色ではなくエメラルドグリーンになっています。
「色々な歴史があって学べて」
「それがまた楽しいのだよ」
ムシノスケ教授は笑顔で言ってきました。
「様々なものの歴史を学ぶことが」
「そのこと自体がだね」
「そう、だからね」
「教授は歴史の本もよく読んでいるね」
「そうしているよ」
実際にというのです。
「楽しんでね」
「そうだね」
「服や靴の本もね」
「そしてお料理もだね」
「そうしているよ」
こうボームさんに答えます。
「かく言う私もお洒落を自負しているしね」
「タキシードとシルクハットだね」
「この格好が大好きでね」
それでというのです。
「靴もだよ」
「革靴だね」
「黒のね、ズボンにも使っていて」
そうしてというのです。
「シャツとトランクスはシルクだよ」
「まさに全てだね」
「お洒落にしているんだ」
こうボームさんにお話するのでした。
「僕はね」
「そうだね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「運動の時のジャージにも気を使っていてね」
こちらのお洒落にもというのです。
「上下黒でシューズもだよ」
「黒にしているんだ」
「そうなのだよ、タキシードもいいけれど」
「ジャージもだね」
「いいものだよ」
「そしてシューズも」
「おちらもね」
こう言うのでした。
「私はこれからもお洒落にも気を使っていくよ」
「教授はお洒落でもあるのよね、私は運動の時はね」
ドロシーは笑顔で言いました。
「上は白の体操服で下は青の膝までのね」
「半ズボンだね」
「その服が好きよね」
「うん、ドロシーは運動の時はいつもそうだね」
トトもそれはと頷きます。
「その体操服と半ズボンだね」
「それにシューズね」
「シューズは白だね」
「そうよ」
「私の半ズボンは緑だけれど」
オズマも言ってきました。
「運動の時はね」
「本当にその服装がいいわね」
「動きやすくて快適よ」
「とてもね」
「だからね」
「私達もね」
「半ズボンよ」
「あら、お洒落な人はスパッツと聞いたわよ」
つぎはぎ娘がこう言ってきました。
「下は」
「そうなの」
「ええ、半ズボンでなくてね」
こうドロシーに言います。
「そちらだってね」
「ううん、私はね」
どうかとです、ドロシーはつぎはぎ娘に答えました。
「半ズボンの方がゆったりしているから」
「あんたはそっちなのね」
「ええ、私とオズマはね」
「昔の体操服は膝までのブルマでしたね」
ジュリアが言ってきました。
「オズの国では最近までそうで」
「それが半ズボンになったね」
「そうですね」
「何かね」
ボームさんはジュリアにお話しました。
「外の世界ではショーツみたいなデザインのブルマになっていたそうだよ」
「そうなんですか」
「特に日本でね」
恵梨香のお国でというのです。
「そうだったみたいだよ」
「随分恥ずかしいですね」
「そのデザインとだね」
「そう思います」
「今は水着みたいな服になってます」
神宝が言ってきました。
「ビキニの」
「外の世界ではだね」
「はい、陸上競技の時は」
神宝はボームさんにお話しました。
「そうした服装で競技します」
「何かビーチバレーみたいだね」
「バレーボールは普通の半ズボンで」
膝までの長さのものでなく普通の丈のというのです。
「それで、です」
「陸上競技の時はだね」
「そうした服を着る人がいます」
「それもブルマかな」
「水着に近いですが」
それでもというのです。
「そうみたいですね」
「実際にだね」
「はい、どうも」
神宝はボームさんにお話しました。
「出来る限り動きやすくて空気抵抗もない」
「そうしただね」
「服ということで」
この考えでというのです。
「着ているみたいです」
「そうなんだね」
「運動の時の服もそれぞれだね」
モジャボロはここまで聞いて言いました。
「何というか」
「そうだね、僕達はジャージだけだけれど」
弟さんはそうでした。
「色々だね」
「そうだね、まあ僕は身体自体が服だからね」
ファイター大尉は自分のことをお話しました。
「磨くだけだけれど」
「僕はお洒落に凝ってるよ」
ジャックはそうなのです。
「この服もいつも気を使っているんだ」
「僕はいつも身体を奇麗にしているよ」
木挽きの馬はそうでした。
「それでいいよ」
「私達は身体が服というかね」
ガラスの猫は胸を張って言いました。
「服より奇麗だよ」
「そうーーですーーね」
チクタクはガラスの猫の言葉に頷きました。
「私もーーです」
「あんたは身体が服のデザインね」
「ですーーから」
それでというのです。
「磨けばーーです」
「服も奇麗になるわね」
「そのーー通りーーです」
「僕達はお風呂に入ってね」
「あと水浴びね」
ハンクとビリーナはそれぞれの食器でレモンティーを飲んでいます、そうしながらお話するのでした。
「そうしてね」
「奇麗にしているね」
「私達も身体が服でね」
「そうしてお洒落をしているね」
「僕なんかこの鬣にいつも気を使っているよ」
臆病ライオンはその鬣を見せます。
「洗ってもらってるよ」
「僕だってこの毛並みが自慢だからね」
腹ペコタイガーはその縦縞の毛を見せました。
「奇麗にしているよ、いつもね」
「私なんか最高にお洒落でしょ」
エリカもその毛並みを誇示しています。
「白い毛はね」
「そうしたお洒落も歴史だね」
魔法使いも思うことでした。
「全く以て」
「そうよね、それで今のお話で思ったけれど」
オズマは皆のお話を聞いてから言いました。
「今度のお休みの時はファッションショーしようかしら」
「それぞれの服を着てなのね」
「それで奇麗にもしてね」
ドロシーに笑顔で応えました。
「洗ったりお風呂に入ったり磨いたりもして」
「そうしてなのね」
「それぞれがいいと思う服を着て」
そうしてというのです。
「皆で見て見せ合うことをね」
「するのね」
「どうかしら」
皆に尋ねると皆賛成でした、そしてボームさんも言いました。
「では僕もだよ」
「貴方もなのね」
「普段とは違うお洒落をね」
それをとオズマに答えました。
「そうしようか」
「いいことね、ではね」
「次の休日も楽しみにしているよ」
「今だけでなく」
「そうさせてもらうよ」
「私達四人は王女だから」
ドロシーが言いました。
「オズの国の王女の服に」
「日本や中国のものも持っているわね」
「あちらでは女帝さんや皇后さんが着る様な」
「そうした服よね」
「そうよね」
「あっ、オズの国は男性の国家元首でないので」
神宝はここでこのことに気付きました。
「皇帝の服はですね」
「皇帝と言うと男の人でしょ」
「樵さんがそうですね」
「けれどオズマは王女でね」
「言うなら女帝ですね」
「女王になるわ、王女だけれどね」
この立場でもというのです。
「国家元首として考えたら」
「オズマ姫はですね」
「女帝か女王になるから」
だからだというのです。
「そうなるのよ」
「そういうことですね」
「ええ、だからね」
オズマは笑顔でお話しました。
「そうした式典の時はね」
「龍袍ですか」
「それを着るわ」
「それで何時の時代の龍袍ですか?」
神宝はこのことを聞くことも忘れませんでした。
「中国の」
「中国は時代によって国の名前が違ったわね」
「それで皇室も」
「そうだったわね」
「ですから時代によって龍袍も違います」
「服は時代によって変わるものでもあるしね」
だから服にも歴史があるのです。
「そしてそれは龍袍もね」
「同じですよね」
「ええ、そうよ」
オズマもその通りだと答えます。
「それでそれぞれの時代の龍袍があるわ」
「そうですか」
「日本の服もそれぞれあるけれど」
礼装になるそれもというのです。
「それは中国も同じだから」
「だからですか」
「何時の時代とかはないわ」
「そうなんですね」
「それで今度の休日はね」
皆が好きな服を着て見せ合う時はというのです。
「私は宋の頃の龍袍を考えているわ」
「宋代ですか」
「ええ、そう考えているから」
「わかりました、じゃあ」
「ええ、その時を楽しみにしながらね」
「今はですね」
「お仕事を楽しみましょう」
「わかりました、休憩時間が終わったらまた」
神宝はオズマに笑顔で応えました。
「宜しくお願いします」
「皆で楽しみましょう」
オズマはレモンティーを飲みながらにこりとして応えました、お仕事の日も休日も楽しいことが続くのでした。