『ドリトル先生のダイヤモンド婚式』
第五幕 服と時計
王子は先生の研究室の中で先生から田中さんご夫婦のダイアモンド婚式のプレゼントのお話を聞いてです、そうしてなのでした。
そのお話を聞いてです、王子はレモンティーを飲みながら言いました。
「時計なんだ」
「そう、ギリシア文字で木製でね」
「置くものだね」
「そうした時計をね」
「プレゼントするつもりなんだ」
「古風な感じのね」
そうしたというのです。
「趣のある」
「そうなんだね」
「それで考えているのは」
先生は王子にさらにお話しました。
「オルゴールタイプでね」
「日本製だね」
「時計もね」
「他のものと同じくだね」
「日本製がね」
「一番いいんだね」
「長持ちしてね」
壊れにくくてというのです。
「しかもね」
「精巧だね」
「色々な機能も付いていたりね」
「だからだね」
「そう、時計にしてもね」
こちらもというのです。
「何といってもね」
「日本製ね」
「それがね」
まさにというのです。
「一番だよ」
「それでなんだ」
「そう、だからね」
「日本製から選ぶんだね」
「ブランドはね」
こちらで考えると、というのです。
「スイスになるけれどね」
「スイスの時計は有名だからね」
「性能も高いからね」
「そう、けれどその性能もね」
これもというのです。
「実はね」
「日本製の方がだね」
「よくてね、それにだよ」
「日本製の壊れにくさと」
「長持ちすることとね」
それにというのです。
「面白い機能がね」
「沢山あるから」
「そのこともあるから」
「日本製なんだね」
「僕はそう思うよ」
「そういうことだね」
「それでだけれど」
先生は王子にさらに言いました、そうしながらです。
お茶を飲みました、見ればそのお茶は王子が飲んでいるものと同じレモンティーでそれを飲みながら言うのでした。
「時計屋さんで探すつもりなんだ」
「そうした時計をだね」
「うん、ただ機能はね」
今お話したこれはといいますと。
「あまり考えていないんだ」
「そうなの」
「日本製だと何でも色々機能が備わっているね」
「もう新機能とかね」
王子は笑ってお話しました。
「車でも何でもね」
「備えるね」
「それでその備わった機能をね」
「他のメーカーもだよね」
「備えるから」
だからだというのです。
「凄いことになっていくね」
「そうだよね」
「日本人の嗜好もね」
「あるね」
「だからね」
それでというのです。
「日本製は機能が沢山付いているけれど」
「そちらはだね」
「お二人の好みを聞いて」
「そうしてからだね」
「考えたいよ」
「それじゃあだね」
王子は笑顔でお話しました。
「お静さんとだね」
「聞いてね」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「選ぶんだ」
「そう考えているよ」
「それがいいね」
王子はここまで聞いて言いました。
「やっぱりね」
「そうだよね」
「うん、喜んでもらうものを贈る」
「それがだよね」
「プレゼントだからね」
それ故にというのです。
「ちゃんとしたものを贈らないとね」
「それも喜んでもらえるものを」
「それをね」
まさにというのです。
「だからね」
「考えているんだ」
「じっくりとね、しかしね」
「しかし?」
「実は僕時計はね」
これはというのです。
「これまで長持ちしたらね」
「よかったんだ」
「そう考えていたけれど」
それでもというのです。
「今回はね」
「また違うからだね」
「かなり考えているよ」
そうだというのです。
「真剣にね」
「そういうことだね」
「うん、かなり考えているよ」
真剣にというのです。
「本当にね」
「じゃあ僕も協力していいかな」
王子は先生に微笑んで尋ねました。
「いい時計を見付けるね」
「そうしてくれるんだ」
「先生が何かするならね」
それならというのです。
「是非にだよ」
「力を貸してくれるんだ」
「いつもそうしているしね」
「今回もだね」
「そうさせてもらいたいからね」
だからだというのです。
「どうかな」
「何か悪いね」
「何言ってるんだよ、先生と僕の仲じゃない」
王子は微笑みから見事な笑顔になって先生に応えました。
「だからだよ」
「それでなんだ」
「そう、だからね」
「協力してくれるんだ」
「先生にはいつも助けてもらって」
それにというのです。
「よくしてもらっているから」
「だからだね」
「そう、是非ね」
今回もというのです。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね」
「うん、一緒にね」
「いい時計を探してくれるんだね」
「そうした時計でしかもね」
「しかも?」
「うん、見事なものをね」
品質のことも言うのでした。
「探そうね」
「それじゃあね」
「そういえばね」
ここでトートーが言ってきました。
「お静さんは服をプレゼントするんだったね」
「京都とか言ってたね」
ダブダブも言います。
「呉服で」
「まさか呉服プレゼントするのかな」
老馬はまさかというお顔で言いました。
「どうなのかな」
「高いから違うじゃないかな」
「京都の着物って滅茶苦茶高いわよ」
チープサイドの家族は値段のことをお話します。
「だから流石にね」
「無理かな」
「呉服の鷹さって凄いしね」
「そうそう、目の玉が飛び出る位で」
オシツオサレツは二つの頭で言い合う様にお話します。
「もうね」
「そうそう買えないよ」
「幾ら何でもね」
プレゼントにするにしてもとです、ガブガブは思いました。
「呉服は無理よね」
「ご夫婦だから二着だしね」
ジップはガブガブに応えました。
「その分高くなるからね」
「幾ら何でも高過ぎるわ」
ポリネシアは心から思いました。
「京都の呉服はね」
「一つ持っていたら財産だね」
チーチーはそれ程だと言い切りました。
「まさにね」
「あんな高い服なんてそうないね」
王子も言いました。
「実際に」
「世界でもね」
「確かに高い服はあるわ」
「絹で織られていてね」
「王室の方となるとそうした服着られるよ」
「ドレスなんてものもね」
「昔の欧州の王族の人なんてそうだね」
王子はこちらの人のお話をしました。
「豪奢なドレス何十と持っていたね」
「上等な絹を使って」
「デザインも見事で」
「マリー=アントワネットもそうで」
「貴族の人だってね」
「それがステータスでもあったしね」
王室そして貴族の人でもです。
「そうだったけれどね」
「凄かったね」
「あの人達のドレスも」
「滅茶苦茶高価で」
「財産になる様なものだったけれど」
「そのドレスにも負けていないよ」
京都の呉服はというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「欧州の王室や貴族の人達のドレスにも負けてないよ」
「高価なものになると」
「もう財産みたいで」
「色合いも凄いからね」
「芸術品だよ」
そこまでのものだとです、先生歯言いました。
「まさにね」
「そうだよね」
「あんなものそうそうないよ」
「本当にね」
「日本の芸術の一つだよ」
「全くだよ、しかし贈りものには」
これにはというのです。
「あまりにもね」
「高価だよね」
「というか高価過ぎて」
「もう手が出せない」
「そんなものだね」
「かなりのお金持ちか」
京都の着物を買える人達はというのです。
「立場のある人だよ」
「そうだよね」
「反物一つでも普通の人の月給分らしいし」
「それで着物にしたら」
「とんでもないお値段になるわ」
「下手にタキシードを買うよりも」
それよりもというのです。
「遥かにだから」
「比べものにならないね」
「日本政府の人が他の国の人への贈りものに使える?」
「実際贈ってないかな」
「外国の政府の人とお会いする時の贈りものって礼儀だしね」
「それなりにものを贈るものだから」
「そう考えるとね」
先生は言いました。
「京都の着物はいいね」
「そうだよね」
「最高の贈りものの一つかも」
「日本ってそういうものもあるからね」
「つくづく凄い国だよ」
先生は心から思いました。
「あんな服まであるなんて」
「うん、あまりにも高いけれど」
「それでもだよね」
「凄いことは凄いね」
「本当にね」
「そうだね、しかしお静さんがお二人に何を贈るか」
このことはというのです。
「服でもね」
「気になるね」
「一体何か」
「そのことがね」
「じゃあお話してみようね」
「お静さんとね」
「そうしようか」
こう言ってです。
先生はお静さんと連絡をしようと思いました、ですがここで研究室の扉をノックする音が聞こえてきて。
開けるとです、そこにお静さんがいました。
「お話したいのかしら」
「聞こえていたんだ」
「私は猫又よ」
お静さんは先生に笑って答えました。
「だからね」
「ああ、耳がいいんだね」
「普通の猫も耳はいいけれど」
人間より遥かにです。
「もうね」
「猫又になるとだね」
「何百キロ四方の音が聞こえるから」
「凄いんだね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「色々な力も備わるのよ」
「超能力だね」
「妖力と言うべきかしら」
「妖怪だからなんだ」
「そう、それでね」
「その力でだね」
「色々聞いて見ることが出来て」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「移動もだね」
「縮地法が使えるから」
「テレポーテーションだね」
「今で言うとね、それでなの」
「僕の言葉を聞いてなんだ」
「すぐに来たのよ」
そうしたというのです。
「この通りね」
「そうなんだね」
「普通のお話は聞こえない様にしているけれど」
それでもというのです。
「知り合いや私のお話はね」
「聞こえる様にしているんだ」
「それでね」
「来てくれたんだ」
「そうなの、それで呉服はね」
お静さんはそちらのお話もしました。
「流石にね」
「贈ることはだね」
「無理よ、高過ぎるわ」
「幾ら何でもだね」
「お二人共和服好きだけれど」
それでもというのです。
「京都の西陣織の呉服なんて」
「とてもだね」
「高過ぎるから」
その為にというのです。
「手が出せないわ」
「そうだね」
「あれだけのものは」
それこそというのです。
「神戸の妖怪だと牛女さんね」
「あの人だね」
「流石に姫路のお姫様は沢山お持ちよ」
「天守閣にいるあの人は」
「そう、あの方はね」
「兵庫の妖怪の棟梁だから」
「また違うわ」
格それに資産がというのです。
「だからね」
「あの人はだね」
「違うわ、けれど他の妖怪達はね」
「京都の呉服となると」
「そうそうはよ」
あまりにも高過ぎてというのです。
「買えないわ」
「そうよね」
「それでね」
お静さんはさらにお話しました。
「普通の、暖かいね」
「服をなんだ」
「考えているの、お二人はセーターがお好きだから」
「今は冬だしね」
「だからね」
それでというのです。
「今編んでいるの」
「早速だね」
「そうしているのよ」
「成程ね」
「あとお二人の時計だけれど」
お静さんの方からそちらのお話をしてきました。
「機能はね」
「それはなんだ」
「特になのよ」
「求めていないんだ」
「ええ、何しろお年寄りでね」
それでというのです。
「お二人共戦争中に生まれているから」
「ああ、それじゃあね」
「そう、最近の色々な機能はね」
「苦手だね」
「だからね」
それでというのです。
「そうしたものはよ」
「別にいいんだ」
「そう、だからね」
「それでだね」
「時間がわかって」
時計としてというのです。
「決めた時間に音楽なりた出たらね」
「そこは目覚ましと同じだね」
「それ位でいいの」
機能はというのです。
「お二人はね」
「そのこともわかったよ」
「ええ、それで木製でギリシア数字で」
「それで長持ちするものをね」
「プレゼントするのね」
「そうさせてもらうよ、目覚ましの音はね」
先生はそちらのお話もしました。
「オルゴールがいいかな」
「奇麗な感じね」
「お二人はオルゴールの音好きかな」
「好きよ」
実際にとです、お静さんは先生に答えました。
「特に奥さんがね」
「それは何よりだね、それじゃあね」
「そうした時計を探すのね」
「そうするよ」
「わかったわ、じゃあ私も探すのを手伝うわ」
「前にお話してくれた通りにだね」
「そうさせてもらうわ」
是非にと言うのでした。
「先生と私の仲だしね」
「それじゃあね」
「当然僕もだよ、神戸だけじゃなくて」
王子も言ってきました。
「大阪や京都の方もね」
「探してくれるんだ」
「そうしてね」
そのうえでというのです。
「見付けてくるよ」
「宜しくお願いするよ」
「何だったら」
お静さんはこうも言いました。
「造ってもらう?」
「そうした時計をなんだ」
「そう、職人さんにね」
「時計職人の人にだね」
「そうしてもらってもいいわよ」
「そうしてもいいんだね」
「先生もお金あるでしょ」
それだけのものはというのです。
「時計を造ってもらう位は」
「あると思うよ」
「それじゃあね」
「造ってもらうこともだね」
「選択肢に入れて」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「探せばいいね」
「時計ならね」
これならというのです。
「注文しても大丈夫だから」
「そうだね」
「本当にこれが呉服だと」
「京都のね」
「特に女の人のものがね」
「とんでもない価格になるね」
「高過ぎてよ」
それでというのです。
「手が出せないわ」
「そうだね」
「あんな高い服も世の中にはある」
「欧州の貴婦人のドレスみたいに」
「ドレスよりは安いわよね」
「いや、負けていないよ」
先生はお静さんに紅茶を飲む手を止めて答えました。
「これがね」
「そうなの」
「むしろ今はね」
「ドレスよりもなのね」
「それぞれの質の違いがあっても」
着物それにドレスのというのです。
「呉服もね」
「負けていないのね」
「そしてそれなりの価値があるよ」
「そういうことね」
「うん、日本はつくづく恐ろしい服を持っているよ」
先生はこうまで言いました。
「本当に」
「そうなのね」
「サラなんかその値段見て仰天していたよ」
先生の妹であるこの人はというのです。
「こんなに高いのって」
「外国の人から見ると余計に」
「絹自体も高くて」
生地からしてそうでというのです。
「それでね」
「彩色して服にしたら」
「もうそれでね」
「とんでもない値段になるわね」
「そう、だからね」
その為にというのです。
「サラも驚いていたんだ」
「そういうことね」
「僕が着物を買うとしたら」
「先生着物似合いそうね」
お静さんは先生の今のお言葉に先生ご自身を見て言いました、その穏やかな顔立ちと恰幅のいい長身を見てのことです。
「どうも」
「そうだね」
王子もそれはと頷きました。
「紋付羽織り袴とかね」
「似合うわよね」
「うん、体型的にもね」
「雰囲気もそうで」
「かなりね」
この人はというのです。
「似合いそうね」
「本当にね」
まさにというのです。
「そう思うよ」
「それは嬉しいね、実は僕一人で着物着られるんだ」
先生も微笑んで応えました。
「袴もね」
「へえ、そうなったんだ」
「うん、日本に来てね」
そうしてというのです。
「それで暫くしてからね」
「着物着られる様になったんだ」
「そうなんだ」
「それは凄いね」
王子は先生のそのことを聞いて素直に感心しました。
「作務衣だけじゃないんだ」
「浴衣も着られるね」
「そういえばそうだね」
「それで袴もね」
こちらもというのです。
「それが出来るんだ」
「先生本当に日本人だね」
「そうなっているかな」
「凄くね、ここまで日本人なんてね」
素直に感心したまま言うのでした。
「見事だよ」
「お布団で寝てお箸も完璧に使って」
「しかも最近毛筆も上手になってきたわね」
チープサイドの家族も先生のお話をします。
「そう思うとね」
「先生ってどんどん日本人になってるね」
「国籍だけじゃなくて」
トートーはそちらのお話からしました。
「もう生活自体がそうだね」
「お布団でも快適に寝られて」
ポリネシアはそちらのお話をしました。
「座布団にも座って」
「胡座かいたり正座もして」
ガブガブは座り方のことを言いました。
「普通にくつろいでいるし」
「正座で足痺れなくなったね」
「これってかなりのことだよ」
オシツオサレツは二つの頭でお話しました。
「日本で産まれた人でもそうなるのに」
「長い間正座だと足が痺れるのに」
「しかも納豆とか梅干し平気だよ」
ダブダブは彼らしく食べもののお話をしました。
「ぬか漬けも卵かけご飯もね」
「しかも日本文化にかなり詳しいからね」
ホワイティも言います。
「茶道も出来て和歌も詠めるから」
「日本人だね」
ジップは断言しました。
「先生は」
「完全にそうなっているよ」
チーチーが見てもそうです。
「着物も着られるしね」
「いや、先生と日本がここまで相性がいいなんて」
老馬も思うことでした。
「想像もしなかったよ」
「そうなんだね、何か日本があまりにも素敵だから」
そうした国だからというのです。
「何から何まで学んで面白くてね」
「来日してからだね」
「どんどん日本を学んでいって」
「そして好きになって」
「日本に入っていって」
「今に至るのね」
「そうなっているね、こんな不思議で面白くて素敵な国があるなんて」
先生は笑顔で言いました。
「僕は子供の頃はじめて日本のことを知ったけれど」
「何で知ったのかしら」
お静さんが尋ねました。
「一体」
「本でだよ、それからテレビとかでも観てね」
そうしてというのです。
「知っていったよ、けれど王子にすき焼きをご馳走してもらってね」
「日本のお話を聞いてお仕事もよね」
「誘われてね」
「来日して住む様になって」
「あまりにも素晴らしいものが多過ぎて、日本の人達もね」
彼等もというのです。
「真面目で自分の興味があることに邁進するね」
「日本人そうした人多いよね」
王子もそれはと頷きました。
「だからお仕事とか趣味とかね」
「凄いことになるね」
「そうだよね」
「それで親切で細かいところまで気が利いてくれる人も多いから」
「日本の人達もだね」
「好きになってね」
それでというのです。
「今に至るんだ」
「すっかり日本が好きになって」
「愛しているとさえ言っていいよ」
そこまでというのです。
「もうね」
「そこまでなんだ」
「だから日本のものをどんどん知って学んでいったら」
「今みたいになったんだね」
「そうなんだ、しかも食べものも飲みものも美味しいからね」
「いや、イギリスなんてね」
王子は先生の祖国のそちらのお話を少し苦いお顔で述べました。
「食べものはね」
「世界的に有名だからね」
「まずいということでね」
「カレーと朝食位しか食べるものがないとか」
「散々に言われているから」
「僕も実際に食べていてね」
先生にしてもというのです。
「いい思いをすることは少なかったよ」
「僕もだよ」
王子にしてもでした。
「カレーは兎も角として」
「カレーは元々インド料理でしょ」
お静さんが言ってきました。
「そうでしょ」
「そうなんだよね」
「イギリス料理かっていうと」
「違うよ、ただイギリスではかなり食べるんだ」
「カレーをなの」
「そうなんだ、ただそのカレーもね」
このお料理もというのです。
「日本では独自の進化を遂げているね」
「もう日本のカレーは日本のお料理でね」
先生が言ってきました。
「それでね」
「独自の進化を遂げているよね」
「しかも進化の途中だね」
「まだそうなんだね」
「どんどん新しいカレーが出て来ているからね」
だからだというのです。
「進化の途中だよ」
「そうなんだね」
「そのことも凄いよ」
「カレーっていえばね」
ここでお静さんが言ってきました。
「田中さんご夫婦の大好物なのよ」
「そうなんだ」
「それも昔のね」
「日本のカレーだね」
「ルーは少しとろりとしていて」
そうしてというのです。
「そして具は牛肉でね」
「ビーフカレーだね」
「人参と玉葱、ジャガイモよ」
「日本の昔ながらのカレーだね」
「それが好きでね」
それでというのです。
「今もね」
「食べているんだ」
「そうなの、あとオムライスも好きなの」
「あのお料理もなんだ」
「和食だと肉じゃがね」
こちらのおお料理もというのです。
「おうどんとかもそうね」
「そうしたものがお好きなんだ」
「ええ、ただ納豆はね」
この食べものはといいますと。
「ずっと食べられなかったみたいよ」
「ああ、それはわかるよ」
先生はお静さんから田中さんご夫婦がずっと納豆を食べられなかったと聞いて納得してそのうえでお話しました。
「僕にもね」
「そこでそう言えるのが先生ね」
「関西ではずっと納豆を食べていなかったからね」
それでというのです。
「だからね」
「どうしてもね」
「最近まで食べられなかったんだね」
「そうだったのよ、実は私もね」
お静さん自身もというのです。
「納豆はね」
「長い間だね」
「食べていなかったし」
それにというのです。
「食べられなかったの」
「そうだったんだ」
「ええ、関西にいるから」
その為にというのです。
「ずっとね」
「そうそう、関西じゃ納豆食べていなかったんだね」
「昔はね」
「それで納豆に抵抗ある人も多いね」
「そうなんだよね」
動物の皆も言います。
「他の地域じゃ食べているけれど」
「関西じゃずっとそうで」
「昔は嫌いな人も多くて」
「腐ってるって言う人もいたのよね」
「確かに糸を引いているし匂いも凄いよ」
先生は納豆のこのこともお話しました。
「けれどね」
「発酵させていて」
「実は腐ってないんだよね」
「納豆って」
「そうなのよね」
「そして大豆だからね」
このお豆だからというのです。
「健康にもいいよ」
「それも魅力だよね」
「食べてみるとこれが美味しいし」
「ご飯に凄く合うし」
「朝ご飯にも丁度いいわ」
「僕は来日してすぐにね」
それこそというのです。
「食べたけれどね」
「すぐにお気に入りになったね」
「そうだね」
「それでよく食べて」
「楽しんでいるね」
「そうしているよ」
先生は動物の皆に笑顔でお話しました。
「関西でも今は納豆は普通に食べているしね」
「今じゃ普通にスーパーで売ってるわよ」
お静さんがまた言ってきました。
「コーナーまでなっているわ」
「そこはかなり変わったね」
「ええ、そう思うわ」
こう先生に答えました。
「私もね」
「それで好きな人も多いね」
「納豆巻きなんてね」
お静さんはお寿司のお話もしました。
「想像もしなかったわ」
「昔はだね」
「それでお話を聞いてね」
そうしてというのです。
「そんなのお寿司になんて思ったけれど」
「今はどうかな」
「食べられるわ」
笑顔での返事でした。
「今はね」
「そうなんだね」
「しかも結構美味しくね」
食べるだけでなくというのです。
「そうしているわ」
「そうなんだね」
「僕も食べられるよ」
王子もでした。
「納豆をね」
「王子もそうなったんだね」
「うん、今ではよく食べるよ」
「それは何よりだね」
「お箸を使ってね」
「そのこともいいね」
先生は笑顔で応えました。
「王子も日本に馴染んできたね」
「僕もかな」
「かなりね」
「僕もそう言ってもらうと嬉しいよ」
王子も笑顔で応えました。
「本当にね」
「ちなみにご夫婦お寿司が一番好きなの」
お静さんはまた田中さんご夫婦のお話をしました。
「トロとかハマチとかね」
「そうしたものがお好きなんだ」
「握り寿司も好きで」
そしてというのです。
「巻き寿司もちらし寿司もね」
「そうなんだ、じゃあ馴れ寿司は」
先生はこのお寿司をお話に出しました。
「どうかな」
「それはないわね」
「馴れ寿司は召し上がられないんだ」
「というか馴れ寿司自体がね」
「ああ、今はかなり少ないね」
「というかそこで馴れ寿司出せるなんて」
お寿司のお話をしてというのです。
「かなりのものよ」
「そうかな」
「日本でもよ」
そのお寿司の国の人でもというのです。
「今馴れ寿司をお話に出せる人はね」
「滅多にいないんだ」
「そうよ、鮒寿司とかもね」
「元々握り寿司は馴れ寿司だよね」
「馴れ寿司は作るのに時間がかかるから」
それでというのです。
「すぐに作ったのがよ」
「握り寿司なんだよね」
「そうだけれど先生このことも知ってるのね」
「そうだよ」
実際にというのです。
「学んでね」
「お寿司のこともなのね」
「そうなんだ」
「そこも流石ね、ただね」
「ただ?」
「先生がお寿司を食べる姿って」
それはといいますと。
「絵になりそうね」
「僕が日本的だからだね」
「そう、絶対にね」
それこそというのです。
「絵になるわ」
「ここでも僕は日本人だね」
「そうね、その先生ならね」
「僕なら?」
「田中さんご夫婦にもね」
日本人の老夫婦であるこの人達にもというのです、ダイアモンド婚式を迎えたお二人も。
「ちゃんとプレゼントが出来るわ」
「そうなる様にするよ」
先生も約束しました。
「是非ね」
「そうよね、それじゃあね」
「探していって」
「造ることもね」
「考えていくよ」
「そうしましょう、神戸は昔からね」
お静さんは先生に笑ってお話しました。
「明治からのことだけれど」
「この街が開けてからだね」
「流石に平安の頃じゃないわよ」
そこまで昔ではないというのです。
「私も産まれていないし」
「平安の頃には」
「だから福原のことはね」
「平家物語だね」
「聞いているだけよ」
「その頃からいる妖怪さん達からだね」
「兵庫の狐の棟梁さんとかね」
この人からもというのです。
「九尾の」
「それと姫路のお姫様だね」
「あと九尾猫さんよ」
「九尾なのは狐さんだけじゃないからね」
「そう、猫は五十年生きたら猫又になってね」
それがお静さんです。
「そして千年生きるとね」
「九尾になるね」
「そこは狐さんと同じなのよ」
「それで九尾猫さんもだね」
「あの方はあの頃から生きておられるから」
「平家物語の頃から」
「清盛さんともお会いしているのよ」
この人と、というのです。
「それでその方からもお聞きしているけれど」
「それでもなんだ」
「そう、この目では見ていないの」
「そうなんだね」
「それでも神戸のことは見て来て」
「明治からのだね」
「神戸が開かれてね」
そうしてというのです。
「沢山の外国の人達が来て」
「その人達もいてくれてね」
「ハイカラな文化が入って来ていて」
そうしてというのです。
「そうした時計もね」
「あるんだね」
「だからじっくり探せばね」
「あるんだね」
「きっとね、だから皆で探して」
「造ることもだね」
「考えていきましょう」
こう先生に言うのでした、そして先生も笑顔で頷きました。