『ドリトル先生と幸せになる犬』
第十一幕 先生が渡す引導
何と先生のところにふわりの前の飼い主の人達がお会いしたいと申し出てきたのです、王子は先生の大学の研究室でそのお話を聞いた瞬間に顔を顰めさせました。
「それ絶対にね」
「ふわりのことだね」
「そうだよね、何処かで先生のお話を聞いて」
先生と一緒に紅茶を飲みつつ言いました。
「それで先生に今の飼い主の人達を説得してもらって」
「そうしてだね」
「ふわりを自分達のものにしたいんだよ」
「僕は生きものとお話が出来るからね」
「犬ともね」
「それにあらゆる生きものの友達だから」
このこともあってというのです。
「説得出来ると思って」
「先生に会いたいんだね」
「そうだね」
「ふわりを捨てたのにネットで人気が出てお金になるからまた飼うなんて」
トミーも紅茶を飲みつつ言いました。
「あつかましいというか図々しいというか」
「浅ましいね」
「そうですね」
「どんどん残念な気持ちになってきているよ」
先生はミルクティーを飲んでいますが今はその美味しさもお口に入っていません、とても苦い気持ちになっているからです。
「人間のそうした面を見てね」
「そうですよね」
「何処までも恥知らずで浅ましくて」
「ふわりのことを何も考えていないですね」
「つくづくね」
こうも言う先生でした。
「あの人達にとってふわりはおもちゃなんだよ」
「いらなくなったおもちゃは捨てて」
「それで死んでもいい」
オソツオサレツは怒っています。
「そんな風だったのにね」
「自分達の赤ちゃんが出来たら」
「娘だのお姉ちゃんになるとかふわりに言っていてそれよ」
ガブガブもかなり怒っています。
「どんな人間性よ、二人共」
「それまで可愛がっていたのに飼育放棄でね」
「ケージの中に入れて無視してお散歩も行かない」
チープサイドの家族もカンカンです。
「遊ぶこともしない」
「ご飯を忘れることもあったし」
「それでもういらない」
チーチーも当然怒っています。
「最低じゃない」
「それで動画で人気が出て広告のお金が入るから飼うって」
ホワイティも言うことでした。
「最低と言ってもまだ足りないよ」
「これが餓鬼ね」
ポリネシアは断言しました。
「まさに」
「人間でなく餓鬼になった人の所業」
老馬はこのことを知りました。
「まさにそれだね」
「いや、見たくなかったけれど見てよかったかもね」
トートーはこう思いました。
「餓鬼がどんなのかわかったから」
「最低と呼ぶにも値しない最低」
ジップはこう表現しました。
「まさにああした人達だね」
「あれが餓鬼なんだね」
ダブダブもいつもの明るい調子はないです。
「よくわかったよ」
「全くだよ、会う必要はないね」
王子ははっきりと言いました。
「そんな人達とは」
「僕もそう思います」
トミーも王子と同じ意見でした。
「あんな人達とは」
「いや、会うよ」
けれど先生はこう答えました。
「あの人達ともね」
「会うんだ」
「そうされるんですか」
「僕もあの人達に言いたいことがあるからね」
だからだというのです。
「会うよ」
「そうするんだ」
「先生としては」
「そして全てを終わらせるよ」
そうするというのです。
「是非ね」
「そうするつもりだから」
「お会いしますか」
「そうするよ、こんな嫌なお話はもう終わらせたいし」
こうした考えもあってというのです。
「だからね」
「それじゃあね」
「会いますね」
「そうするよ」
先生は決めました、そしてです。
何時何処で会うかというお話も進めました、そうしてです。
ふわりの前の飼い主の人達が都合がつく時に大学の先生の研究室でお話することになりました、その日の時間になるとです。
王子は駐車場から研究室に来て先生にお話しました。
「赤ちゃんを連れた若い夫婦が来てるよ」
「その人達がふわりの前の飼い主の人達だよ」
「二人共顔立ちは整ってるけれどね」
それでもというのです。
「物凄く卑しい人相をしているよ」
「生き方が出ているね」
「もうゾンビみたいだよ」
そこまで酷いというのです。
「何かね」
「その人達で間違いないね、じゃあね」
「その人達とだね」
「今から会うよ」
「僕も一緒にいていいかな」
「僕もそうしていいですか?」
王子に研究室にいるトミーも言ってきました。
「ここにいてです」
「見守っていいかな」
「うん、僕と彼等でお話するけれど」
それでもとです、先生も答えました。
「それでもね」
「うん、それじゃあね」
「こちらでことの成り行きを見守らせてもらいます」
「僕達もいるよ」
動物の皆も言ってきました。
「先生といつも一緒だからね」
「あの恥知らずな人達と対する時も」
「その時もね」
「一緒にいるよ」
「こうしてね」
「うん、そうしてね」
是非にと言う先生でした。
「いつも通りに」
「そうさせてもらうね」
「じゃあ今からね」
「あの人達を迎えて」
「そしてね」
「終わらせるよ」
こう言ってでした。
先生は研究室に入った二人を迎えました、先生は紳士的に挨拶をして扉をノックした彼等を穏やかに研究室の中に迎え入れました。
そしてです、先生は二人のお話を聞きますが。
二人は今も奥さんの方が赤ちゃんを抱いています、ですがその赤ちゃんをよそに先生に言うのでした。
「あの、前にうちにいた犬のことで」
「先生にお力を貸して欲しいんです」
まずはふわりのことをお話しました。
「前は仕方なく手放しましたが」
「凄く可愛がっていたんです」
「ふわりは私達の娘です」
「この娘のお姉ちゃんなんです」
「家族なら一緒に暮らすべきですね」
「ですからふわりを家に連れ戻させて下さい」
「お話は聞きました」
先生は二人に穏やかな声で答えました。
「全て」
「そうですか、でしたら」
「ご協力お願いします」
「全て。貴方達の一方的なお話だけでなく」
いいことばかりお話したそれだけでなくというのです。
「国崎さんのご一家からもふわり自身からも」
「先生は生きものとお話が出来ますね」
「だからですね」
「それでふわりもそう言ってるなら」
「私達のところに戻りたいって言ってますね」
「いえ、貴方達がふわりにしたことを」
先生は穏やかですが強い声で述べました。
「全て聞きました」
「私達のですか」
「ふわりを可愛がっていたことを」
「途中までは」
向かい側に座る二人に告げました、先生の側には王子とトミー、そして動物の皆がいますが先生を見て二人は全く見ていません。
「そうでしたね」
「どういうことですか?」
「途中までとは」
「自分達の子供が出来ますと」
このことを言うのでした。
「お散歩も行かなくなりご飯を忘れる様になった」
「子供が産まれる直前で」
「仕方ないじゃないですか」
「そういう問題ではないです」
「そういう問題じゃない?」
「子供が産まれる直前でもですか」
「生きものですから」
だからだというのです。
「命あるものです、お散歩もご飯もです」
「忘れるなっていうんですか」
「そんな時でも」
「はい」
まさにという返事でした。
「奥さんがそうでもご主人が朝早くやお仕事から帰って出来ましたね、しかもふわりは我慢していましたよ」
「我慢って何ですか」
「そんなこと当然ですよ」
二人は先生の言葉に怒って言いました。
「子供が産まれるのに」
「それ位の我慢は」
「いえ、それは違います」
先生はまた答えました。
「犬にとって散歩は必要なものでご飯は当然です」
「一食位抜いてもいいじゃないですか」
「死にませんよ」
「お散歩だってそうですよ」
「死なないですから」
「・・・・・・・・・」
二人の言葉にでした。
トミーも王子の動物の皆も憮然となりました、二人の方は見なくてもそうなりました。ですが二人は彼等のことにも気付こうともせず言い続けました。
「死なない様にしていました」
「問題ないじゃないですか」
「そうですか、そして子供が出来れば」
先生はそれからのこともお話しました。
「ずっとケージに入れたまま出しませんでしたね」
「家の中でしたよ」
「ご飯はやっぱりあげていましたよ」
「赤ちゃんばかり見ていましたね」
「子育てだから当然です」
「子供は手がかかります」
二人はこのことにもきつい顔で反論しました。
「だから仕方ないです」
「どれだけ大変か」
「先生は独身だそうですね」
「ならおわかりにならないですね」
「僕は確かに独身です」
先生もその通りと答えました。
「ですから子育ては経験がなくわかりません」
「ならですよ」
「このことは」
「ですが家族は分け隔てしないものです」
子育てではなくそちらから言うのでした。
「そして無視しません」
「無視?」
「子育てしていたのに無視ですか」
「ふわりを一日中ケージの中に入れてお散歩に行かず遊びもせず見向きもしない」
「だから子育てですよ」
「そっちに忙しかったんですよ」
「それは理由になりません、生きものを飼っているなら」
それならというのです。
「面倒を見ることは義務です」
「義務?」
「義務だっていうんですか」
「子育ては親の義務であり」
そしてというのです。
「ペットをちゃんと飼うことも飼い主の義務です」
「子育てが忙しいのに」
「それでもですか」
「それを両立させてこそです」
まさにというのです。
「飼い主、親、家族です」
「じゃあ赤ちゃんがどうなってもいいんですか」
「目を離せないのに」
「どれも出来ないと」
また答えた先生でした。
「駄目です」
「それでふわりをずっとケージに入れていてですか」
「それは駄目だっていうんですか」
「問題外です」
「問題外?」
「そうだっていうんですか」
「はい、それは飼育放棄です」
まさにそれだというのです。
「貴方達はふわりにそれをしたのです」
「何処がですか」
「ちゃんと家の中に入れていましたよ」
「ご飯もあげていました」
「忘れることがあっても餓え死にしていませんよ」
二人はさらに言いました。
「それの何処が飼育放棄ですか」
「お水もあげていたのに」
「ですがお散歩も行かず遊びもせず見向きもせず」
そしてというのです。
「ふわりが鳴いて居場所を知らせても振り向きませんでしたね」
「育児してましたから」
「当然です」
「犬のことになんか構っていられません」
「人間と犬は違いますから」
「・・・・・・・・・」
先生達以外の皆はさらに憮然となりました、見れば皆本当に嫌な言葉を聞いた、そうお顔に出ていました。
ですが二人は皆のそのことにも気付かず言うのでした。
「生きてたらいいですよね」
「それで」
「トイプードルはブラッシングが必要ですが」
先生はこのこともお話しました。
「ふわりをケージに入れてから一度もしていませんね」
「そうしなくても生きていけます」
「いいじゃないですか」
「お風呂に入れたり美容院にも連れて行きませんでしたね、ケージに入れてから」
「だから言ってますよね」
「死なないって」
二人の言うことは変わりませんでした。
「だったらいいじゃないですか」
「何処が問題ですか」
「ふわりが五月蠅いと言って怒鳴って??りましたね」
「朝から晩まで鳴くんですよ」
「性格が変わって」
「五月蠅いったらありはしないですよ」
「もう私達も赤ちゃんも参ってしまいますよ」
「トイプードルは確かに無駄吠えもあります」
それをする種類の犬だというのです。
「元狩猟犬ですから」
「それが五月蠅かったんですよ」
「もう邪魔で邪魔で」
「あんな性格になったんです」
「本当に嫌でした」
「無駄吠えも教育で治ります、そして調教師の人に預ければ」
それでというのです。
「治ります、そしてふわりは無駄吠えではなかったです」
「じゃあ何ですか」
「何だったんですか」
「自分はここだよ、返事をして、聞こえないのと訴えていたのです」
二人にというのです。
「親だと思って、そしてふわりは考えていました」
「考え?」
「何ですか考えって」
「ふわりは赤ちゃんが産まれるのでいいお姉ちゃんになろうと思っていたのです」
そう考えていたというのです。
「ずっと」
「ふわりがですか」
「そうだったんですか?」
「赤ちゃんが泣いたら貴方達に知らせて」
そうしてというのです。
「赤ちゃんのおむつを持って来てあげて赤ちゃんにおもちゃを貸してあげてと」
「犬がそんなこと考える筈ないです」
「所詮犬ですよ」
これが先生のふわりの考えを聞いた二人の返答でした。
「考える筈ないです」
「嘘ですよね」
「それにあんな小さいのに」
「色々出来ません」
「僕は嘘は言っていません」
これが先生の返答でした。
「ふわりは実際にそう考えて出来ましたし今しています。動画をご覧になりましたね」
「ええ、そうしていますね」
「それで人気ですから」
「僕達も家に戻したいんです」
「あんな娘の親になったら私達も人気が出ます」
「そしてお金になります」
「こんないいことはないです」
二人はまた本音を出しました。
「だからです」
「ふわりを戻したいんです」
「そうですか、動画をご覧になられたら」
先生は彼等の本音は今はスルーして述べました。
「おわかりですね、トイプードルは賢くふわりはその中でもです」
「賢いですね」
「だからああしたことを自分から出来ますね」
「それで人気が出て」
「お金になりますね」
「そうです、そして性格もです」
ふわりのそれもというのです。
「素晴らしい娘です、ですが」
「ですが?」
「ですがといいますと」
「貴方達はふわりの性格が変わったと言われました」
このことを指摘するのでした。
「そして吠えると、ですがふわりの性格は変わっていません」
「あの時酷かったんですよ」
「ずっと吠えて」
「性格が変わったのではなく貴方達が飼育放棄したので」
あえて飼育放棄と告げました。
「呼んでいたのです、そして性格が変わって保健所に捨てましたね」
「五月蠅かったですから」
「それが何か」
全く悪いと思っていない返事でした。
「悪いですか?」
「その辺りに捨てていないですよ」
「法的に問題ないじゃないですか」
「犬を捨てるのは」
「・・・・・・・・・」
先生以外の皆ここでまた憮然となりました、ですがやっぱり二人は気付きません。それで言い続け増した。
「何か問題ありますか?」
「いらなくなったんですよ」
「五月蠅くて仕方なくて」
「私と赤ちゃんが寝られなくて落ち着かなくて」
「あんな性格になったら」
「もういらないです」
「家族にそんなことを言う人はいません」
先生ははっきり言いました。
「性格が変わったから家族を捨てる人はいません」
「いないっていうんですか」
「じゃあ私達が間違っているっていうんですか」
「家族の絆は強いです」
だからだというのです。
「そしてふわりはずっとです」
「その絆をですか」
「持っていたっていうんですか」
「犬風情が」
「そんな筈ないじゃないですか」
二人はあくまでこう言います。
「所詮犬ですよ」
「犬がそんなもの感じません」
「所詮買ったものですし」
「私達のものですよ」
「それをどうしようが勝手ですよね」
「犯罪もしていませんし」
「確かに貴方達は犯罪を犯していません」
それは事実だとです、先生は答えました。
「それは事実です」
「じゃあ問題ないですね」
「犯罪でないなら」
「それじゃあいいじゃないですか」
「何でそう言うんですか」
「ですが貴方達は絶対に許されないことをしました」
先生は穏やかですが確かな声で言いました。
「ふわりを裏切りふわりとの絆を断ち切りふわりを捨てたのです」
「だから捨てた捨てたって言いますけれど」
「もう一度家族にするって言ってるじゃないですか」
「今度は性格だって我慢しますよ」
「人気もお金もあるんですから」
「性格が変わったらどうしてか、どうしたらなおるのか」
先生は今は二人の言葉をスルーしました、今の彼等の言葉は聞くに全く値しない下らない醜いものだったと判断したからです。
「そもそも本当に変わったのか考えます」
「そうだっていうんですか」
「普通は」
「はい、家族なら。友人でも同じです」
関係のある人達ならというのです。
「それは」
「性格が変わったらですか」
「そうするっていうんですか」
「あっさり捨てるなぞです」
そんなことはというのです。
「家族、友人のすることではないです」
「では私達はふわりの家族ではない」
「そうだっていうんですか」
「はい、親などととんでもない」
こうも言う先生でした。
「只の元飼い主の人達です」
「元?違います」
「今もふわりの家族ですよ」
「だからもう一度です」
「一緒に暮らすんですよ」
「いえ、家族は愛情があってなるものです」
家族についての考えも述べました。
「貴方達はふわりに愛情を全く、最初から持っていませんので」
「家族でないですって!?」
「可愛がっていたのに」
「それでまた可愛がるんですよ」
「それの何処が愛情がないっていうんですか」
「ですから最初から愛情があれば捨てません」
そもそもというのです。
「性格が変わったと思っても」
「だから犬じゃないですか」
「犬一匹捨てて何でこうまで言われるんですか」
「親戚も全員縁切りましたけれど」
「そんなことされる理由はありません」
「それも当然です、また申し上げますが」
こう言ってからお話する先生でした。
「貴方達はふわりを裏切り絆を切ってその愛情を捨てたのですから」
「またそう言われますが」
「私達の何が悪いんですか」
「だからふわりをまた飼うって言っています」
「それの何処が悪いんですか」
「悪いことを自覚していないこと自体が悪いのです」
そのこと自体がというのです。
「最早」
「だからですか」
「私達はふわりをですか」
「引き取れません、僕はそうした動きの手助けは一切しません。そして」
先生は穏やかですが確かな声をまた出しました。
「貴方達の様な人は犬いえ生きものを絶対に飼ってはいけません」
「どうしてですか」
「どうしてこう言われますか」
「貴方達を見てです」
そのうえでというのです。
「申し上げています」
「くっ・・・・・・」
「貴方達は親になれませんでした」
こうも言う先生でした。
「生きものを飼う資格も能力も一切なく親にもなれませんでした」
「ふわりの親にですか」
「そうだっていうんですか」
「子供もいるんですよ」
「それでもですか」
「こうして今も一緒にいるのに」
「それでもですか」
二人はお顔を思いきり顰めさせています、そのお顔を見て先生以外の皆は頷きました。これがその相なのかと。
そうしてお茶を飲んでいますが二人はお茶を飲まないまま言いました。
「何処が親じゃないんですか」
「しっかりとここに一緒にいるのに」
「そうです、親とは何か」
先生だけが言います。
「それは愛情と絆によってなるものですから」
「僕達にそれがない」
「親じゃない」
「そしてふわりをまた飼うことに」
「お力を貸して頂けないですか」
「僕は貴方達にそうするつもりは全くありません」
はっきりと言いました。
「何があろうとも」
「くっ・・・・・・」
「もうお話することはありません」
先生は声もお顔も目の光も穏やかなままです、ですが。
確かな声で今こう二人に告げました。
「ですから」
「ええ、もう帰ります」
「そうします」
二人は憤懣やるかたないというお顔で席を立ちました。
「もういいです」
「ここに来て無駄でした」
「そうですか、ではお送りしますね」
先生は最後まで紳士であってです。
怒る二人を駐車場の彼等の車まで送りました、そして温和に見送りましたが。
先生以外の皆は研究室に戻ってからカンカンでした。
「最低だったね」
「そうよね」
「いや、命何だって思ってるのか」
「聞いていたけれど実際に聞いたら」
「もう最低よ」
「最悪だったわ」
「二度と会いたくないよ」
こう言って怒るのでした。
「人気とお金があるから欲しいってね」
「はっきり言ったし」
「自分達がしたことに全く反省ないし」
「ふわりを裏切って捨てたことにも」
「あんな人達が世の中にいるってね」
「それだけでも嫌だよ」
「全くだよ」
王子も怒っています。
「最低な人達だったね」
「王子もそう思うよね」
「あれが餓鬼だね」
「本当に浅ましかったわ」
「人間として最低も最低」
「人相にも出ていたわ」
「僕もわかったよ」
トミーも怒りながら言います。
「餓鬼って何かってね」
「あれだね」
「あれが餓鬼だね」
「餓鬼って何かって思っていたら」
「ああした風なのね」
「そうだね、嫌なものを見たよ」
紅茶を飲みつつ言いました。
「本当にね」
「いや、本当にあの人達ふわりを愛していないね」
トートーはこのことがわかりました。
「おもちゃでしかないんだね」
「五月蠅くなったから捨てたけれど」
ダブダブも言います。
「人気が出てお金になるからまた飼う」
「命や心があるなんてこれっぽっちも思っていないわね」
ポリネシアも言いました。
「気にもしていないわね」
「それを平気であそこまで言えるなんて」
ジップはこのことにも怒っています。
「物凄い思いやりと神経のなさだね」
「聞いていて嫌になったわ」
ガブガブもそうでした。
「醜いエゴばかりでね」
「いや、餓鬼を見たよ」
ホワイティはつくづく思いました。
「心からね」
「何て浅ましくて卑しいのか」
「あれはもうどうしようもないわ」
チープサイドの家族も思いました。
「どうしようもないわ」
「本当にそうだね」
「ああなったら駄目だね」
チーチーは思い知りました。
「子供も一緒なのに醜い本性剥き出しだったし」
「二人共元のお顔はよかったのに」
老馬はこのことから言いました。
「心の醜さが出て凄かったね」
「もう二度と会いたくないね」
「ああした人達とは」
オシツオサレツも二つの頭で言いました。
「ちょっとは反省とか思いやりとかないのかな」
「自分達以外への配慮もね」
「というか僕達怒りを爆発させない様に必死に我慢していたけれど」
王子は先生を見て言いました。
「先生よく我慢していたね」
「そうよね」
「私達だからあの人達出来るだけ見ない様にして我慢していたけれど」
「先生ずっと穏やかで冷静で」
「紳士だったね」
「流石は先生だね」
「僕も嫌だったよ」
先生は本音をここでお話しました。
「ずっとね、けれどこうした気質だから」
「絶対に怒らないし穏やか」
「それが先生だからね」
「それでだね」
「今回も怒らなかったのね」
「それが出来たよ、ただ皆はもう怒る必要はないよ」
先生は紅茶を飲みつつ皆にこうも言いました。
「彼等の命運はもう完全に決まったからね。これから国崎さんにお話することがあるからね」
「どういうこと?」
「あの人達の命運が決まったって」
「どういうことなの?」
「彼等は赤ちゃんと三人で来たね」
このことを言うのでした。
「そうだね」
「それがどうしたのかな」
「三人で来たことについて」
「何があるの?」
「すぐにわかるよ、国崎さんのご主人のお兄さんは弁護士だし」
ちょっと前に警察や児童相談所も確実にお話を聞く権威あるお仕事に就いている人だというのです。
「これで終わりだよ」
「あの二人がそうなる」
「それはわかるけれど」
「どうしてそうなるのか」
「ちょっとわからないね」
「その時にわかるよ」
ここでもこう言う先生でした。
「その時を見てね」
「先生がそう言うならね」
「それじゃあね」
「僕達も観させてもらうよ」
「今後の成り行きをね」
「彼等はふわりの親になれなかったし」
先生は今度は遠い目になって言いました。
「人の親にもだよ」
「なれなかった」
「そうなんだ」
「そしてなんだ」
「もう命運は決まっているのね」
「既にね、神様も人も見ているから」
それでというのです。
「遂に最後の天罰が下ることが決まったんだ」
「天罰だね」
王子は先生の今のお話に言いました。
「これまで随分受けて来てたね」
「親戚全員から縁を切られてね」
「会社でも邪険にされて」
ご主人がというのです。
「インスタグラムも炎上してね」
「ふわりを捨てたことを平気で言い続けてね」
「二人共ね」
「そしてご近所の人達にもだよ」
「このことで嫌われて」
「そうして天罰を受け続けてきたけれど」
それでもというのです。
「一切反省しなくてね」
「遂にだね」
「最後の天罰を受けるんだ」
「このことが決まったんだね」
「そうだよ」
「自業自得ですが」
トミーが言ってきました。
「ですが」
「悲しいね」
「はい、自分の悪い行いと醜さに気付かないことは」
「僕もそう思うよ」
先生はトミーに答えました。
「心からね」
「そうですね、先生も」
「出来ればね」
「反省して欲しかったですね」
「彼等はふわりに謝罪しなかったね」
「一切でしたね、それどころか」
トミーはお顔を曇らせて言いました。
「たかが犬とか」
「もうそれがね」
「あの人達のふわりへの感情でしたね」
「娘とか言っても」
「おもちゃだったんですね」
「何処までもね」
「ふわりは命があってあの人達を心から愛していたのに」
それでもというのです。
「それでもですね」
「彼等にとってはね」
「ふわりは所詮ですね」
「おもちゃだったんだ」
それに過ぎなかったというのです。
「だから新しいおもちゃが手に入って」
「いらなくなってですね」
「捨てたんだ」
「そして人気が出て」
「お金になるからね」
「返してくれですね」
「そうだよ」
そう主張したというのです。
「非常に浅ましいことにね」
「醜いことこの上ないですね」
「あれもまた人間がなるもので」
「餓鬼ですね」
「そうだよ、あれが餓鬼だよ」
彼等こそというのです。
「まさにね、そしてね」
「あの人達はですね」
「破滅するよ」
「それが命運が決まったってことですね」
「最後の天罰によってね」
それが下ってというのです。
「そうなるよ」
「そうですか」
「そしてね」
先生はさらに言いました。
「ふわりはこれからはね」
「国崎さんのお家で、ですね」
「幸せになるよ」
「もうそのことがですね」
「決まっているよ」
先生はふわりのことを幸せにお話します。
「あの人達ならね」
「これからもですね」
「ふわりを幸せにしてくれるよ」
「そうしてくれますね」
「例え息子さんが結婚して赤ちゃんが産まれても」
前の飼い主達の様にです。
「ちゃんとね」
「ふわりをですね」
「育ててくれるよ」
「そうですね、あの人達は」
「ふわりも赤ちゃんもね」
「一緒にですね」
「人間と犬の違いがあっても」
それでもというのです。
「ちゃんと平等にね」
「愛情を注ぎますね」
「そうしてくれるよ」
国崎さんのご一家ならというのです。
「最高の反面教師も観たしね」
「そうそう、さっきのね」
「ふわりの前の飼い主の人達だね」
「もう人間としても最低で」
「ああした人達を見たらね」
「ああはなるまいって思うから」
動物の皆も言いました。
「最高の反面教師だね」
「これ以上はないまでの」
「そうした人達だね」
「そうだよ、その人達がいるから」
だからだというのです。
「もうね」
「絶対にだね」
「ふわりに愛情を注いでくれて」
「これからも幸せにしてくれるね」
「そうしてくれるよ、命があるものは」
それならともです、先生歯言いました。
「理想だけれど誰でもね」
「幸せになるべきね」
「絶対に」
「先生はそう考えてるよね」
「いつもね」
「人だけでなくね」
まさにというのです。
「どの命もだよ」
「だからふわりも幸せになる」
「そうならないとね」
「あんな人達とはもう関わらないでね」
「そうあるべきだよ、しかしあんな人達が生きものを飼えない様にしないと」
先生は今度は暗いお顔になって言いました。
「またこうしたことが起こるね」
「そうだよね」
「実際結構起こってるみたいだし」
「ふわりみたいなことが」
「捨てられる子達がいるね」
「彼等は買ったと言ったね」
ふわりをお金で、です。
「完全にもの扱いだったね」
「そこが問題だよね」
「命あるものなのに」
「商品として買って」
「それでいらなくなったら捨てるっていう感覚が」
「そうした考えのお店やお客さんがあって」
この世にというのです。
「ふわりみたいなことが起こっているからね」
「ペットの生体販売も問題なんですね」
トミーも深刻なお顔で言いました。
「そうなんですね」
「そうなんだ」
実際にとです、先生も答えました。
「やっぱりね」
「ふわりのいたお店は良心的で」
「ふわりのお話を聞いて悲しんでくれてね」
「そして対策を移してくれるとのことですが」
「ああしたお店だけじゃないよ」
この世にあるのはというのです。
「残念ながらね」
「そのお話もされていましたね」
「お店の裏側に工場みたいにね」
「繁殖だけの為にですね」
「いる子がいたり」
「売れ残ってもですね」
「酷い扱いをするお店があるから」
世の中にはというのです。
「だからね」
「何かとですね」
「こうしたことを改善していかないと」
「ふわりみたいなことがあって」
「他の色々な酷いこともね」
「あるんですね」
「ペットについてね」
ふわり以外の彼等についてもというのです。
「そうしたことが続いていくよ」
「そうですよね」
「ふわりは助かったけれどね」
「ふわりみたいな子がまだ沢山いる」
「このことを忘れないでね」
そうしてというのです。
「この問題自体をね」
「解決していくことですね」
「ペットのこと自体にね」
「生体販売自体がだよね」
王子は腕を組んで言いました。
「根本から考えていくべきかな」
「問題はそこだけじゃないと思うけれどね」
「生きものをただの商品として扱う」
「繁殖だけの目的の犬や猫がいてね」
「売れ残って粗末に扱われる子もいるから」
「そしてブリーダーやお店の人達もね」
「裏世界の人達がいるとかね」
王子は雲ったお顔で言いました。
「悪質なお店とかもね」
「あるね」
「そうした問題をね」
「考えてだね」
「改善していくことだね」
「そうしないと駄目だろうね、やっぱり生体販売にね」
ペットのそれにというのです。
「お金を出せばすぐに買える」
「飼えるじゃないね」
「そう、飼えるんじゃなくてね」
「買えることもだね」
「問題だね、彼等はふわりを一目惚れして買ったんだよ」
ふわりの前の飼い主達もというのです。
「そうしてああなったから」
「そうした飼い主も減らす様にする」
「ちゃんと事前に命のことを話して」
「誓約書もだね」
「書いてもらったりしてね」
そうしてというのです。
「慎重にね」
「飼ってもらう様にするんだね」
「家族としてね」
「そうしてもらう様にしていくことだね」
「そして悪い飼い主のことを皆に知ってもらって」
「反面教師もだね」
「見てもらうことだね、この問題は根が深いよ」
先生は遠い目になって述べました。
「一朝一夕にはね」
「解決しないね」
「じっくりと考えてお話してね」
「進めていくべきだね」
「そうした問題だよ」
日本のペット業界の問題はというのです、先生も皆も思うことでした。この問題が実に根が深く難しい問題と認識してです。