『ドリトル先生と幸せになる犬』




                第十幕  浅ましい人達

 国崎さんから連絡が来ました、それで先生は次の日曜日に国崎さんのお家にお邪魔することになりましたが。
 王子もトミーもそのお話を聞いて思わず眉を顰めさせました。
「無茶苦茶だね」
「あんまりですね」 
 先生のお家で先生と一緒に晩ご飯を食べつつ言いました。
「それは」
「恥知らずもいいところだよ」
「そもそも絶縁されてるのに」
「お家に行っていいのかな」
「あの人達がふわりを捨てたんですよね」
「もういらないって言って」
 こう言うのでした。
「まさかふわりを返せなんて」
「よく言えますね」
「それも電話で断られたら直談判って」
「あんまりですね」
「こうならないといいと思っていたよ」
 先生は怒る二人に対して冷静に応えました。
「僕はね」
「けれどですね」
 トミーはその先生に応えました。
「こうなるとですね」
「可能性としてあるとね」
「そうですか」
「うん、それで僕もね」
「その日はですね」
「国崎さんのお家に行ってね」
 そうしてというのです。
「状況を見守るよ」
「そしていざとなったらだね」
 今度は王子が言ってきました。
「先生が出てことを収めるんだね」
「いや、そうはならないよ」
 先生は微笑んで答えました。
「絶対にね」
「それはどうしてかな」
「ふわりは賢いしちゃんと見えているからだよ」
「それでなんだ」
「そう、僕が言わなくてもね」
 それでもというのです。
「いざとなればふわりが自分で決めるよ」
「そういうことだね」
「王寺もわかったね」
「そのつもりだよ」
「僕もわかりました」
 トミーも言いました、それも微笑んで。
「そういうことですね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「僕は動物の皆と一緒に行くけれど」
「何もしないですね」
「多分リビングにいてね」
 国崎さんのお家のそちらにというのです。
「状況を見守るだけだよ」
「それで終わりですね」
「間違いなくね」
 先生がこう言うとです。
 動物の皆もです、こう言ってきました。
「先生には僕達がいるし」
「だから安心だね」
「僕達は先生を守るし」
「そして国崎さんのご家族もね」
「あの恥知らずな人達が何かしても」
「その時は皆で吠えて終わりだよ」
「そうすることもないよ」 
 先生は皆にも微笑んで応えました。
「全くね」
「そうなんだね」
「私達も見守るだけね」
「ことの推移を」
「それだけだね」
「そうだよ、彼等は何も得ることなく帰るよ」
 そうなるというのです。
「何しろ彼等自身が全て壊してそれを全く直していないからね」
「それじゃあだね」
「どうにもならないね」
「あの人達が何を言っても」
「それでもだね」
「うん、けれどね」
 ここでこうも言った先生でした。
「ふわりの前の飼い主の人達の命運は半分は定まったね」
「半分なんだ」
「全部じゃないんだ」
「そうなんだ」
「今わかっている時点でね、それでね」
 さらに言う先生でした。
「後の半分で全部定まるね」
「その命運はいいものじゃないね」
「そうですね」 
 王子とトミーが先生の今の言葉に応えました。
「聞く限りだと」
「そうですね」
「何でもあの人達はもう一人娘さんが産まれたばかりだそうだけれど」
 先生はそのふわりの前の飼い主の人達のお話もしました。
「上の娘さんは一歳になったばかりで」
「まだ赤ちゃんだね」
「どちらの娘も」
「じゃあ子育て大変ね」
「赤ちゃん二人だと」
「そうだね、そのことからもどうなるか」
 先生の目は冷静なものでした。
「わかるよ」
「というかよね」 
 ガブガブは怒った声で言いました。
「赤ちゃん産まれてその赤ちゃんでばかり遊んでふわりのことを飼育放棄したのよね」
「それがはじまりだったね」
 老馬も怒っています。
「そもそもね」
「無視して遊ぶこともお散歩もしなくなって無視して」
「それで私はここだよってふわりが鳴いたら五月蠅いで」
 チープサイドの家族もプリプリしています。
「それで赤ちゃんも自分も参るって言って」
「保健所にポイだったね」
「育児疲れとはとても思えないよ」
「赤ちゃん産まれた途端にそれだしね」 
 オシツオサレツの目はむっとしたものです。
「愛情ある人がペット保健所にあっさりポイとかしないし」
「赤ちゃんにもどうだか」
「そのはじまりのことだね」
 トートーの声も怒ったものです。
「赤ちゃんのことは」
「それで二人目産まれたならね」
 ホワイティの言葉には今はシニカルな響きがあります。
「さぞかし大事にしているんだろうね」
「おもちゃとしてね」
 チーチーもシニカルです。
「精々そうしているんだろうね」
「おもちゃ二つもあったら飽きないわね」
 ポリネシアもいつもと違って辛辣です。
「さぞ楽しい毎日でしょうね」
「それでふわりを返せ」
 ジップは同じ犬のことだけに一番怒っています。
「何なんだろうね」
「魂がとてつもなく汚れてるよ」
 ダブダブはこう思いました。
「そう思ったよ」
「全くだね、ただ皆一つ見落としがあるね」
 先生は動物の皆に考える顔で言葉を返しました。
「ふわりが捨てられたことを考えると」
「どういうこと?」
「僕達に見落としがある?」
「それは何についてなの?」
「すぐにわかるよ、じゃあ日曜はね」 
 この日はというのでした。
「国崎さんのお家に行こうね」
「それじゃあね」
「一緒に行こうね」
「その日はね」
「そしてことの成り行きを見守ろう」
「そうしようね」 
 先生はこうした時も終始穏やかでした、他の皆は怒っていても。
 そしてその日でした、先生は皆と一緒に国崎さんのお家に向かいました。そうしてそのうえでなのでした。
 お家にお邪魔すると先生は皆と一緒にリビングに案内してもらいました、そして怒ったお顔のご主人にこう言われました。
「ふわりのユーチューブの動画が評判ですよね」
「大人気ですね」
「あの動画のことが連中の耳にも入って」
「そうしてですね」
「動画の視聴回数が物凄いんで」
「人気があって広告収入もあるので」
「そうに決まってます、人気と金です」
 この二つだというのです。
「連中が欲しいのは」
「人気の犬の飼い主というステータスとですね」
「広告収入の金ですよ」
「その二つが欲しいんですね」
「だからふわりを返せって言うんですよ」
「捨てたおもちゃがいいので」
「ええ、評判がいいんで」
 それでというのです。
「また欲しくなったんですよ」
「そうですね」
 先生もその通りというのです。
「そしてあの人達はとてつもない恥知らずです」
「普通こんなこと言いませんね」
「自分達からふわりを捨てましたね」
「ええ、五月蠅いって言って」
 鳴いていてです。
「それでです」
「実際はそんなに鳴きませんね」
「必要な時しか鳴きませんよ」
 ご主人はふわりの真実をお話しました。
「絶対に」
「そこもいい娘ですね」
「ええ、本当に」
 今かケージの中で寝ているふわりを見つつお話しました。
「朝から晩まで鳴くなんて」
「絶対にないですね」
「ふわりはずっと連中を呼んでいたんですよ」
「自分の居場所を知らせて一緒にいたくて」
「それだけだったんですよ、そんなふわりを保健所に捨てて」
 殺処分もある場所にです。
「人気が出てお金になるなら」
「返せですね」
「とんでもない恥知らずですよ」 
 先生の言う通りにというのです。
「昔からそうでしたが」
「確か飽きっぽくて」
「飽きたおもちゃはすぐ捨てて」
「それでそのおもちゃが人気出たらですね」
「返せでそれで図々しくて恥知らずな行動ばかりで」
 昔からというのです。
「そうでした」
「左様でしたね」
「そうだったんですよ」
「いつもですね」
「はい、自分勝手で我儘で」
 それでというのです。
「他人には冷淡いえ冷酷で」
「そんな人達で」
「ずっとでした、それで今回もです」
「そういうことですね」
「先生はリビングにいて下さい」 
 ご主人から言ってきました。
「俺が玄関に行ってです」
「お二人をですね」
「帰らせます、ふわりは絶対に渡しません」
「リビングにも入れませんか」
「親戚全員で義絶したんです」
 そうしたからというのです。
「もう赤の他人ですから」
「お家には入れませんか」
「ですから玄関で」 
 そこでというのです。
「話をして帰らせます、ふわりは何があっても渡しません」
「いえ、ふわり自身がです」
 先生は怒って言うご主人に言いました、今リビングには奥さんと息子さんもいます。そうしてお話をしています。
「あの人達のところには行きませんよ」
「そうですか」
「今の家族は貴方達で」
 国崎さん達でというのです。
「絆があります、しかしです」
「あの連中はですか」
「その絆を自分達から断ち切りました」
 ふわりを捨ててというのです。
「そして貴方達の絆はあの人達の絆よりも強く太いです」
「そうでしょうか」
「はい、ふわりを家族として接しています」 
 先生は奥さんにも答えました。
「おもちゃではなく」
「家族だからですか」
「その絆は強く太く」
 そしてというのです。
「本物です」
「じゃあ前の飼い主のそれは」
「偽物だったのです」
 先生は息子さんにも答えました。
「おもちゃでしたから」
「だから偽物ですね」
「そうです、ですから」
「ふわりもですか」
「前の飼い主のところには絶対に戻りません、そして」
「そして?」
「ふわりは若し前の飼い主の人達の前に出れば見ますよ」
 まだ寝ているふわりを見て言いました。
「きっと」
「何を見るんですか?」
「前の飼い主の人達の真の姿を」
「それをですか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「落ち着いてです」
「そうしてですか」
「見ていきましょう」
「それでは」
 息子さんも頷きました、そしてです。
 皆はまずはお茶を飲んでお菓子を食べてふわりの前の飼い主の人達が来るのを待ちました、やがてです。
 チャイムが鳴りました、するとご主人はきっとした顔で立ち上がってそのうえでご家族にも先生達にも言いました。
「今から玄関で話してくる」
「私は行かなくていいのね」
「俺一人で充分だ」
 こう奥さんに答えました。
「玄関から先に入らせずな」
「そしてなのね」
「追い返す、そして二度とだ」
「うちに来ない様になのね」
「する」
 強い言葉での断言でした。
「そうしてくるからな」
「だからなのね」
「皆ここにいてくれ」
 こう言うのでした。
「いいな」
「わかったわ、じゃあね」
「皆ここで待っていてくれ」
 ご主人はこの言葉を告げてでした。
 玄関の方に向かいました、するとです。動物の皆は先生に対してふわりを見ながらこう言いました。
「先生は今も落ち着いているね」
「もう何も心配もいらない」
「そんな感じね」
「そうね」
「うん、運命と言えば恰好よくなるけれど」
 先生は皆にお茶を飲みつつ微笑んで答えました、今飲んでいるのは緑茶です。お菓子は三色団子です。
「もう全部ね」
「定まっている」
「そうなるしかない」
「そうした状況なのね」
「だからね」
 それ故にというのです。
「僕は全くね」
「心配していないのね」
「ふわりのことを」
「そうなんだね」
「そうだよ、さてはじまったね」
 ここで玄関からです。
 人同士のやり取りが聞こえてきました、ご主人と若い男女です。聞けばご主人は怒っていても冷静ですが二人は感情的になっています。
 その声を聞いてです、先生歯また言いました。
「あの若い人達がね」
「ふわりの前の飼い主の人達ね」
「ふわりを捨てた」
「その人達だね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「その人達だよ」
「お前等ふわりを捨てたんだろ」
 ここでご主人の声が確かに聞こえました。
「それでよくそんなことが言えるな」
「いえ、ふわりは私達の娘です」
「だから返してもらいに来たんです」
 若い二人の言葉も確かに聞こえてきました。
「僕達が飼っていたんですよ」
「それなら私達の娘じゃないですか」
「娘の遊び相手にもなりますし」
「それに凄い人気じゃないですか」
 若い人達は本音も出しました。
「動画も」
「そんな人気があるならです」
「早くわかれば捨てなかったですよ」
「けれどあんな娘の家族になって人気が出て」
「物凄くお金になるなら」
「お前等ふわりをそう思ってるんだな」
 ご主人の声はさらに怒ったものになりました。
「人気や金が何だ」
「どっちも大事ですよ」
「そうに決まってますよ」
「ふわりが人気があってお金になるなら」
「元々家族なんですから」
「何て浅ましいんだ」 
 息子さんは二人の言葉を聞いて苦い顔で言いました。
「酷い人達と思っていたけれど」
「あそこまでなんて」
 奥さんも眉を顰めさせて言いました。
「思わなかったわ」
「全くだよ」
「ふわりを完全にステータスやお金の元としか思っていないわね」
「本当におもちゃなんだな」
「人気が出てお金になるおもちゃね」
「それがふわりなんだな」
 ふわりの前の飼い主の人達にとってはです」
「最低だな」
「本当にね」
「愛情なんて全くないな」
「微塵も感じられないわ」
「ふわりは道具か」
「だから捨てたのね」
「そして全く変わってないな」
 二人の心はというのです。
「酷いままだよ」
「最低なままね」
「全く、あんな人達が知り合いなんて」
「親戚だったなんてね」
「どうしたの?」
 ここでふわりが目を開いてでした、声をあげました。
「一体」
「君の前の飼い主の人達が来たんだ」
 先生は起きたふわりに答えました。
「君をもう一度うちにって言ってね」
「前のママとパパが?」
「そうだよ、何なら会うかい?」
 先生はふわりに微笑んでこうも言いました。
「そうしてくるかい?玄関にいるよ」
「前のママとパパが」
「そこで君は全部わかるよ」
 そうなるというのです。
「そして決めることになるよ」
「私が決めるの」
「もっと言えば決まってるよ」
「決まってるの?」
「君の中で既にね」
「そうなの」
「だから行って来るといいよ」
 ふわりを言葉で送り出そうともしました。
「君の親御さんのところにね」
「わかったわ」
 ふわりは先生のお言葉に頷きました、そしてです。
 ふわりは玄関の方に向かいました、すると一家の奥さんと息子さんは落ち着いていましたし動物の皆もです。
 先生にです、それぞれ言いました。
「そうだね、もう決まってるね」
「ふわりにとってもね」
「先生の言うことわかったわ」
「だから僕達もここでいればいいね」
「落ち着いてね」
「うん、ただね」
 先生は皆に笑顔でお話しました。
「ふわりが決めていることを行動に移す場面をね」
「見るのね」
「そうするんだね」
「これから」
「覗くことは駄目だけれど」
 紳士である先生はこのことはしない様にしています。
 ですがこの時はなのでした。
「見るべきものを見る為にね」
「その為にだね」
「僕達は玄関の方を見るんだね」
「こっそりと」
「そうするんだね」
「そうしてみようか」
 皆に提案するのでした。
「これから」
「そうですね」
「それもいいですね」
 一家の奥さんと息子さんも先生の提案に頷きました。
「ふわりの決定を見る」
「そうしても」
「そうです、答えはわかっていても」
 それでもとです、先生はさらにお話しました。
「見ると尚更いいので」
「だからですね」
「ここはですね」
「皆で玄関の方を観ましょう」
 こうお話してでした。
 先生達は玄関の方を見ました、するとです。
 ご主人は玄関の右から左に開く扉を開いてそれを挟んで若い男女とお話していました、その男女こそです。
「あの人達がです」
「ふわりの前の飼い主達です」
 奥さんと息子さんが先生にお話しました。
「百田さんといいまして」
「私達の親戚なんです」
「ふわりを捨てた人達です」
「散々可愛がっていたのに」
「そうですか、奥さんですね」
 茶色の長い髪の毛を束ねて左肩かた垂らしたピンクのブラウスにクリーム色のロングスカートの若い女性を見ました。見ればその手には生まれたばかりの赤ちゃんがいて。
 整った顔立ちをしています、ですがそのお顔をです。
 鬼の様にさせてです、国崎家のご主人に色々喚いていました。
「あの人が」
「はい」
 奥さんが答えました。
「あの人が」
「そしてあの人がですね」
 癖のある黒髪を短くしたすらりとした白のシャツに黒のスラックスの若い男の人が奥さんの隣にいてやっぱり色々喚いています。
 その人も見てです、先生は尋ねました。
「ご主人ですね」
「そうです」
 奥さんはまた答えてくれました。
「夫婦の」
「うわ、卑しい顔してるね」
「身体全体にも出ているわ」
「何て人相」
「エゴと欲丸出しで」
「酷い顔だね」
 動物の皆はその彼等を見て目を顰めさせました。
「言ってることも滅茶苦茶じゃない」
「ふわりを返せって」
「家族だからって」
「捨てたのは自分達なのに」
「そんなこと一切言わないで」
「全くだね、あれがね」
 まさにとです、先生も言いました。
「本当に卑しい人だよ」
「何か雰囲気が凄く悪いよ」
「卑しさと浅ましさが全開で」
「見ていて嫌になるよ」
「見ているだけでも」
「全くだね、そしてふわりは」
 先生は彼女のことにも考えを及ぼしました。
「何処かな」
「ええと、何処かな」
「何処にいるかな」
「玄関の方に行ったのに」
「いないね」
「あそこだよ」
 見れば玄関の近くの二人のいる場所からは見えないところに隠れています、そこからまずは様子を窺っています。 
 そのふわりを見てです、先生は言いました。
「元々賢いうえに捨てられた経験からね」
「慎重になっているんだね」
「自分達を捨てた人達を見て」
「そうなのね」
「そうだよ、もうふわりは彼等を家族と思っていなくて」
 自分を捨てた彼等をというのです。
「そして信用もしていないからね」
「だからだね」
「まずは身を隠して見ているんだね」
「用心して」
「そうだよ、ふわりもね」
 こう皆にお話しました。
「もう彼等との間に絆はないからね」
「あの、家族の誰かが家に帰ったら」
 息子さんが先生にお話しました。
「いつもケージから跳んで出て来て」
「お迎えしてくれますね」
「玄関にちょこんと座って尻尾振ってワンワンと」
「そうですね」
「そうしてくれるんですが」
「出る時もいつも見送ってくれて」 
 奥さんも言いました。
「そうしてくれるんですが」
「それはふわりがご家族を信頼してです」
 そしてというのです。
「愛情を持っていて皆さんもです」
「愛情を持っている」
「だからですか」
「ふわりもそうします、絆を持っていて守っていますから」
 ご家族がそうだからだというのです。
「だからです」
「それで、ですか」
「ふわりも私達を出迎えて見送ってくれるんですね」
「隠れないで」
「いつもそうしてくれるんですね」
「そうです、誰でも自分を裏切って捨てて死んでしまえばいいなんて言葉を言って行動に移した相手を信用しません」
 例えそれが親と思っていた相手でもというのです。
「本当の愛情を知れば」
「だからふわりもですか」
「まずは隠れて様子を見ているんですね」
「そうです、そして」
 先生はさらにお話しました。
「これからです」
「決まっていることを見られますね」
「俺達はそうなんですね」
「はい、そうなりますので」
 それでというのです。
「このまま見ましょう」
「わかりました」
「それでじゃあ」 
 奥さんもご主人も頷きました、そしてです。
 動物の皆もでした。
 そのまま見守りました、ふわりは隠れていた場所から出て玄関の方に向かいました、するとでした。
 二人はふわりを見て笑顔になって言いました。
「ふわり、来たのね」
「さあ、今から帰ろう」
「赤ちゃんもいるわよ、見えるでしょ」
「家族も増えたよ」
「また私達と一緒に暮らしましょう」
「君は僕達の娘だからね」
「・・・・・・・・・」
 ふわりはまずは二人をじっと見ました、そして。
 二人からぷいとお顔を背けてでした。
 国崎さんのご主人の方にお顔を向けて尻尾を振って鳴きました。
「ワンワン」
「ふわりはうちにいたいか」
「ワンッ」
 その通りよと言っていることが先生だけでなく皆にわかりました、そして。
 ご主人が屈んで両手を差し出すとでした。
「ワンワンッ」
「パパママ大好き、私の家族だからとね」 
 先生はふわりの今の言葉を聞いて皆に訳してお話しました。
「言ってるよ」
「そう言ってご主人の懐に飛び込んだね」
「それもとても嬉しそうに」
「見て、今のふわりのお顔」
「とても安心して癒されていて優しそうだよ」
「あれが本物の愛情を受けて注いでそれに包まれている子の顔だよ」
 先生もお話しました。
「とてもいいお顔だね」
「本当にね」
「素晴らしい笑顔だよ」
「まるで天国にいる様な」
「そうしたお顔だよ」
 見ればふわりはにこりと目を閉じて口元もそうなっています。
 そしてです、ご主人に優しく抱き締められて尻尾も振っています。もう二人は一切見ていません。ふわりを抱き締めたご主人は二人と正対して言いました。
「こういうことだ、ふわりを捨てたお前等はもうふわりの家族じゃないんだ」
「くっ・・・・・・」
「わかったら帰れ、二度と来るな」
 こう言ってでした。右手でふわりを抱いたまま左手でしっしっ、と心の奥底から忌々し気で嫌悪と軽蔑に満ちたお顔でしてでした。
 ふたりを負い返しました、卑しい人達は為す術もなく帰り。
 後にはお塩が沢山撒かれました、ご主人は全てが終わってからリビングで先生に笑顔でこう言いました。
「俺もこうなるってわかってました」
「ふわりが彼等のところに行かないとですね」
「間違っても」
「そうですね、これでです」
「あいつ等がふわりのことで何かすることはないですね」
「いえ、誘拐もです」
 これもというのです。
「有り得るので」
「まだですか」
「注意が必要です」
「そうですか」
「誰かを頼ったりも。何しろふわりは人気があってお金にもなります」
 この二つのことがあるからというのです。
「注意して下さい」
「じゃあ今度はですね」
「犯罪対策をされた方がいいです。あとです」
 先生はご自身からも尋ねました。
「彼等はどうしてこちらに来ていましたか」
「車で」
「そうですか。それで車は何処に停めていましたか」
「うちの玄関の前ですよ。駐車場に入れたらいいのに」
 ご主人はこのことにも怒ってお話しました。
「そうしたことはしないでうちの前に停めて。ここは住宅地でも車の行き来が多いのに」
「他の人の車の行き来はですね」
「考えないです、もうそこでなんですよ」
「自分勝手さが出ていますね」
「そうですよ」
「そうですか、それではです」 
 先生はご主人にさらに言いました。
「奥さんが赤ちゃん抱っこしていましたね」
「ええ、生まれたばかりの下の子ですね」
 ご主人は先生に答えました。
「あの娘は」
「赤ちゃんを持ってああして汚い主張を続けていましたか」
「はい、教育も何もないですね」
「全くですね。それで車の中には他には」
「誰もいませんでしたよ」
 二人のそこにはというのです。
「三人、実質二人で下の娘を連れて」
「来ましたか」
「そうです」
「わかりました、どうやら彼等の破滅は近いかも知れないですね」
 先生はここまで聞いて頷きました。
「これは」
「それはどういうことですか?」
「またその時にお話して宜しいでしょうか」
「先生がそう言われるなら」
 それならとです、ご主人も頷いてでした。
 ご家族も納得しました、それでなのでした。 
 先生はご家族と少しお話をしてそれで国崎さんのお家を後にしました、ご家族と別れの挨拶をして。そしてお家に帰りますと。
 動物の皆は先生にこう言いました。
「あの二人の破滅は近いかもって?」
「どういうこと?」
「色々言ってたけれど」
「どういうこと?」
「子供のことだよ」
 このことだとです、先生は皆に答えました。
「そのことでだよ」
「わかるんだ、先生には」
「あの二人の破滅が近いって」
「そうなんだ」
「うん、酷い行いには報いがあるけれど」
 先生は遠いお顔で言いました。
「彼等はこれまでそれを受け続けても反省しないで」
「それでだね」
「今日もああしたことしたけれど」
「究極の報いを受けるんだ」
「近いうちに」
「それで破滅するよ、全てはね」
 まさにというのです。
「因果応報、自業自得だよ」
「この世の摂理の一つだね」
「悪事は報いを受ける」
「そして自分の悪事は返って来る」
「全部そうだね」
「不思議なことにそうならないことはないからね」
 だからとです、先生はまた言いました。
「これこそ神様の為されることだね」
「そうだよね」
 まさにとです、老馬は言いました。
「それこそね」
「この世界は色々不思議なことがあるけれど」
 それでもとです、ジップも言いました。
「まさにだよね」
「神様が人の行いを見ていて」
 トートーも言いました。
「それでだね」
「いい行いにはいいものが返って来て」
 ホワイティは具体的に言いました。
「悪い行いには悪いものが返って来るね」
「これ本当に絶対だよね」
「外れたことはないわ」
 チープサイドの家族も言いました。
「天網恢恢疎にして漏らさずね」
「その言葉通りでもあるね」
「だから悪人は絶対に報いを受ける」 
 こう言ったのはポリネシアでした。
「そうなるのね」
「世の中悪人もいるけれど」
 深いお顔になってです、ダブダブは思って言いました。
「報いを受けない悪人はいないね」
「正義は遅刻するけれど欠席することはしない」
 こう言ったのはガブガブでした。
「まさにその通りね」
「悪人は絶対に報いを受ける」
 チーチーの言葉も確かなものです。
「本当にそうだね」
「そして彼等もだね」
「近く決定的な報いを受けて破滅するんだね」
 オシツオサレツも言いました。
「ふわりを捨てて散々醜いことをしてきて」
「その最後の報いが待っているんだ」
「いや、彼等は別の悪事を犯しているよ」
 先生はふわりのことから言う皆にお話しました。
「おそらくね」
「別の?」
「別のっていうと」
「それは何なの?」
「一体それは」
「何なの?」
「飼育放棄と本質は同じだよ」
 彼等がふわりにしたことと、というのです。
「彼等は自分達以外のものは何とも思っていなくておもちゃとしか思わないね」
「そこが問題なんだよね」
「エゴの塊でね」
「命の大事さをわかろうともしていない」
「そうした最低なところこそが」
「そんな人達だから」
 それ故にというのです。
「別の罪を犯していてね」
「それでなんだ」
「その悪事を犯していて」
「それによって破滅する」
「そうなるんだ」
「彼等は全く反省していなくて」
 ふわりのことで散々報いを受けてもというのです。
「僕が危惧していた様にね」
「何かやっているんだ」
「先生はそのことに気付いて」
「それで今言っているんだ」
「そうなのね」
「そうだよ、出来ればそうなって欲しくなかったけれど」
 それでもというのです。
「当たりそうだね」
「そうなんだね」
「先生は今もあの人達のことを気にかけているの」
「破滅して欲しくないって」
「その様にだね」
「うん、やっぱり反省してね」
 そうしてというのです。
「行いをあらためてくれたらね」
「最善だよね」
「何といっても」
「それはそうよね」
「反省したら」
「それでね」
「うん、それでね」
 さらにと言う先生でした。
「これからは幸せにって思ってるけれど」
「それでもだね」
「そうはなりそうもない」
「だからだね」
「先生は残念なのね」
「うん、しかも今現在不幸になっている子がいるよ」
 先生はまた言いました。
「ふわり以外にもね」
「いるんだ」
「そうした子が」
「何か急に言い出したけれど」
「今回のことと関係あるのかしら」
「そのこともわかるよ」
 今後というのです。
「やがてね」
「そうなんだね」
「それじゃあだね」
「これからどうなるか」
「そうだよね」
「そう、そのこともわかるから」
 だからだというのです。
「今後ね、ただ僕が今動くと」
「その子のことで?」
「何処の誰かわからないけれど」
「その子のことでなの」
「先生が今動くと」
「証拠が不十分でね」
 それでというのです。
「無理だよ。こうしたことも日本は五月蠅いからね」
「五月蠅いって?」
「日本は治安がいいのに」
「それでもなんだ」
「そうだよ、日本は確かな証拠がないと」
 そうでないと、というのです。
「警察や児童相談所は動かないね」
「変な時に動いたりして」
「それで肝心な時に動かなかったりして」
「取り返しのつかないことになったとか」
「そうしたお話もあるね」
「そうしたこともあるからね」
 だからだというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「日本ってそうしたお話あるよね」
「他の国にもあるけれど」
「日本にもあって」
「折角悪事がわかっていても」
「証拠不十分でね」
 それでというのです。
「犯人が捕まらなかったりして」
「悪事を防げなくて」
「それで犠牲者が出てね」
「大変なことになってるね」
「確かな証拠を抑えて警察も児童相談所が動かざるを得ない状況を作る為に確かな人にも来てもらって」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「動いてもらって」
「それでだね」
「やっていくんだね」
「こうしたことは」
「さもないと取り返しがつかないことになりかねないから」
 だからだというのです。
「日本で警察や児童相談所にお話するには」
「弁護士さんとかが一緒だといいんだ」
「確かな証拠も添えて」
「それでだね」
「ことを進めていくといいよ、ただ訴えただけだと」
 それならというのです。
「動いてくれない時もあるから」
「折角警察に訴えてもってね」
「大変なことになっていても」
「それじゃあね」
「事実ある人がカルト教団かそうしたところに入って」
 そしてというのです。
「監禁されて警察に訴えても」
「動いてくれなかったんだ」
「警察が」
「そうだったの」
「それでご主人が訴えてもね」 
 その人のご主人がというのです。
「何度もそうしても」
「警察が動いてくれなくて」
「それでなんだ」
「取返しのつかないことになった」
「そうだったんだ」
「そうしたこともあったから」 
 だからだというのです。
「そして児童相談所にお話しても」
「あるよね」
「子供が親に虐待されてるって通報あってもね」
「それでも動いてくれなくて」
「子供が大変なことになった」
「そうしたことがね」
「こうした警察署や児童相談所ばかりでなくても」
 それでもというのです。
「こうしたお話があるからね」
「注意しないとね」
「本当に駄目だよね」
「さもないとね」
「先生も間違えるね」
「そうなりかねないから」
 だからだというのです。
「ここはね」
「うん、それじゃあね」
「ここは先生もしっかり動いてね」
「先生は世事には疎いけれど法律にも詳しいから」
「法学博士でもあるしね」
「こうしたことは知ってるつもりだし」
 先生にしてもというのです。
「その様に動いていくよ」
「うん、頑張ってね」
「これから何があっても」
「その時にはね」
「僕も動くよ」
 こう言ってでした。
 先生はこれからのことも考えるのでした、そしてそんな先生のところにとても嫌なお話が舞い込んできました。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る