『ドリトル先生と不思議な蛸』




               第十二幕  毒があっても

 先生は日笠さんにも赤福餅を渡しに今動物園に向かっていました、そこで先生はこんなことを言いました。
「やっぱりこうしたことはね」
「当然以上のことだから」
「いいね、絶対にだよ」
「絶対にしないといけないことよ」
「だからね」
「こうして僕達も言うんだよ」
 同行している動物の皆も先生に言います。
「是非にってね」
「日笠さんには直接足を運んで」
「そうして手渡しするのよ」
「絶対にね」
「そう言ってるのよ」
「ううん、僕は普通にそうするけれど」
 それでもというのです。
「皆日笠さんの場合は特に言うね」
「そうだよ」
「その通りよ」
「言わずにいれないからね」
「それでいつも言っていて」
「それでよ」
 まさにというのです。
「いつも強く言ってるの」
「日笠さんとのことについては」
「そうしてるんだよ」
「僕達だってね」
「その理由がわからないよ、心と人生のことはこの世で最もわかりにくいけれど」 
 それでもというのです。
「このこともだよ」
「うん、そうだよ」
「その通りよ」
「先生はこうしたことが本当にわかっていないから」
「一体何時わかるのか」
「私達も気が気じゃないから」
「そうなんだね」
 先生は相変わらずわかっていない感じです。
「日笠さんとのことについても」
「だから日笠さんとのことはね」
「僕達は特にだよ」
「物凄くわかりやすいのに」
「それでもだから」
「全くどうしたものか」
「困ったわ」
「その困ったってことが」
 それがというのです。
「僕にはね」
「うん、わからないよね」
「そうだよね」
「まあそれでもね」
「僕達はずっと言うから」
「宜しくね」
「何かわからないけれど聞くね」
 先生はこう答えました。
「皆の言葉は何時でも何でもね」
「そうしてくれると有り難いよ」
「僕達も期待してるから」
「何時かはってね」
「そうね」
 皆も言います、そうしたお話をしてです。
 日笠さんのところに行きました、そのうえで先生は日笠さんに赤福餅を渡しました、すると日笠さんは。
 にこりと笑ってです、こう言いました。
「有り難うございます、大切に食べます」
「生ものですから」
 先生は日笠さんにお友達として応えました。
「ですから」
「それで、ですか」
「早いうちに食べて下さい」
「そうさせてもらいます」
 日笠さんは笑顔のまま応えました。
「是非共」
「そうしてくれると僕も有り難いです」
「そうですか」
「また何かあれば」
 その時にというのです。
「持ってきますので」
「そうしてくれますか」
「そうして宜しいでしょうか」
「是非。先生が下さるものなら」
 それならというのです。
「宜しくお願いします」
「はい、それでは」
「いつも待っています、ですが」
「ですが?」
「お礼に」
 日笠さんはお顔を赤くさせて先生に自分から言いました。
「今度お食事にも」
「いえ、それには及びません」
 先生は全くわからないで答えました。
「お気遣いなく」
「お気遣いなくですか」
「はい」
 こう答えるのでした。
「そのことは」
「そうですか」
「これはただの好意なので」
 先生のというのです。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、本当に」 
 それでというのです。
「お気遣いなく」
「わかりました、ではまた何かあれば」
「お土産を持って来ますので」
「そうしてくれますか」
「その時をお待ち下さい」
「わかりました」
 日笠さんは内心を隠して先生の言葉に頷きました、そして先生はその日笠さんと一時のお別れの挨拶をしてでした。
 研究室に戻りましたが動物の皆はこう言いました。
「いつも通りね」
「先生らしいわ」
「もう本当にね」
「こうなると思っていたけれど」
「予想を裏切らないね」
「日笠さんとのことについては」
 皆やれやれといった口調でした。
「もうこうなると思ったら」
「実際にそうなるから」
「何でこうなのかな」
「気付かないままで」
「ずっとこの調子なのかしら」
「というかね」
 老馬がこんなことを言いました。
「先生って本当に気付かない人だね」
「こうしたことにはね」
 ダブダブは呆れています。
「何があってもね」
「人の気持ちも生きものの気持ちも細かく察してくれるけれど」 
 こう言ったのはポリネシアでした。
「こうしたことはね」
「見事に気付かないから」
「困るのよね」
 チープサイドの家族の口調はやれやれとしたものです。
「私達も」
「本当にね」
「全く、僕達もヤキモキするよ」 
 ジップは実際にそうしたものを見せています。
「本当に」
「そうだよね」
 こう言ったのはトートーでした。
「全く進まないから」
「進まないのでいったらあの七つのボール集める漫画レベルじゃないかな」
 ホワイティはここまで言いました。
「あの漫画も進まなかったけれどね」
「特にアニメ版ね」  
 ガブガブはホワイティに応えました。
「凄かったわね」
「先生もそれレベルで進まないから」
「見ていてやれやれだよ」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「どうなるかってね」
「色々手助けしていても」
「あの、恋愛に無縁とかね」
 チーチーは言い切りました。
「そんなの誰にもあてはまらないから」
「いや、だから僕は恋愛についてはね」
 勿論日笠さんの気持ちには今も気付いていません。
「本当にね」
「無縁だよね」
「何があっても」
「先生が思っているだけで」
「恋愛は本当に誰でも機会があるものだよ」
「それこそね」
「いや、僕に関してはね」
 先生は笑ってまた言いました。
「本当にだよ」
「それはないっていうのね」
「もう何があっても」
「こと恋愛については無念」
「先生自身は」
「そうだよ、本当にね」 
 先生は皆に笑ってお話しました。
「それはないよ」
「そういうことね」
「先生の知ってる女の人はお友達」
「それか知り合いで」
「それでよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「本当にね」
「それでだね」
「何があってもだね」
「恋愛は無縁」
「そうなのね」
「そうだよ、僕はね」 
 やっぱりこう言う先生でした、ですが。
 そうしたお話をしているうちに研究室に着いてでした、そしてまずは紅茶を飲みますがここで皆は研究室の中に一匹の蜘蛛を見て言いました。
「あれっ、蜘蛛いるね」
「そうだよね」
「この蜘蛛はどんな種類かしら」
「動きが早いけれど」
「その蜘蛛はハエトリグモだよ」
 先生はその蜘蛛を見て皆に言いました。
「特に気にすることはないよ」
「蜘蛛といっても色々で」
「中には猛毒の蜘蛛もいてね」
「気をつけないといけないけれど」
「この蜘蛛は大丈夫だね」
「セアカゴケグモとかじゃないからね」
 だからだというのです。
「別にね」
「最近そうした蜘蛛もいるからね」
「日本に入ってきているから」
「気をつけないといけないね」
「どうしても」
「蜘蛛もそれぞれの種類を知れば」
 それでというのです。
「特にね」
「心配することはないよね」
「今そこにいる蜘蛛がどんな蜘蛛か知れば」
「そして何処にどんな蜘蛛がいるかも」
「怖くないね」
「これといって」
「そうだよ、蜘蛛といってもね」
 ここでこうも言った先生でした。
「その外見を気持ち悪いと言う人もいるけれど」
「人に危害を加えるか」
「そう考えるとね」
「そうじゃないんだよね」
「蜘蛛は」
「むしろ害虫を食べてくれるね」
 そうしたというのです。
「いい生きものだよ」
「そうなんだよね」
「お家でも田畑でも害虫を食べてくれる」
「いい生きものよね」
「蜘蛛はね」
「日本での狼と同じだよ」
 この生きものと、というのです。
「そこはね」
「ああ、狼だね」
「狼もそうだよね」
「ニホンオオカミは田畑を荒らす獣を食べてくれるから」
「有り難い存在だったね」
「そうだよ、日本ではね」
 何といってもというのです。
「牛や豚や羊を牧場で飼育していなくてね」
「それでだよね」
「牧場の家畜が狼に襲われることはなくて」
「もう皆田畑を耕していて」
「畑を荒らす獣が問題で」
 皆も言います。
「狼はその獣を食べてくれるから」
「それでよかったね」
「そうだよね」
「そう、狼は非常に有り難い存在で」
 それでというのです。
「『おおかみ』だったしね」
「『大きな神様』だね」
「そこまで有り難い存在だった。
「だからだね」
「狼はね」
「非常に有り難いね」
「そうした生きものだったね」
「蜘蛛もそうでね」
 この生きものもというのです。
「その実はね」
「害虫を食べてくれて」
「本当に有り難い存在だから」
「嫌うことはないね」
「外見はどうであっても」
「そういうことなんだ」
 先生は皆に穏やかな声でお話しました。
「それがね」
「そうだよね」
「本当に蜘蛛は怖くないね」
「実際に」
「そうよね」
「うん、それとね」 
 先生はさらに言いました。
「実は人が死ぬ様な毒を持っている蜘蛛もね」
「いないよね」
「かなり少ないよね」
「そこまで毒が強い蜘蛛も」
「そうだよね」
「タランチュラでもね」
 有名なこの毒蜘蛛もというのです。
「その実はね」
「そこまで毒が強くないね」
「噛まれたら死ぬ様な」
「そうした蜘蛛じゃないね」
「実際のところは」
「そうなんだ、そのこともね」
 先生は紅茶を飲みつつ言いました。
「ちゃんと学んでね」
「知るとだよね」
「問題ないよね」
「知っていれば」
「それでね」
「本当に知ることがね」
 まさにというのです。
「大事なんだよ」
「本当に何でもよね」
「蜘蛛についても狼についても」
「それこそ」
「それは蛸もだったね」
 この生きものもというのです。
「そうだったね」
「うん、そうだね」
「そう言われるとその通りね」
「ヒョウモンダコについても」
「本当にね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「それこそ何に対してもだよ」
「まずは知ること」
「そのことからだね」
「先生の言う通りだね」
「先生はそうしたことがわかっているから」
「本当にいいよ」
「僕は学者だから」
 それでというのです。
「やっぱりね」
「こうしたことはだよね」
「真剣に考えて」
「そうして学んで知って」
「見ているんだね」
「そうなんだ、しかし僕もね」
 先生ご自身もというのです。
「やっぱりね」
「知らないことあるんだ」
「どうしても」
「そうしたことも」
「人間の知識はほんの少しだよ」
 先生もというのです。
「だからね」
「それでだね」
「どうしてもなのね」
「先生も知らないことがあって」
「しっかりした対応が出来ないこともあるんだ」
「それが怖いんだ」
 先生は真剣なお顔で言いました。
「知らないちんとした知識を備えていなくて」
「間違える」
「そのことが怖い」
「先生にとっては」
「そう、知らないことも怖いけれど」
 それだけでなくというのです。
「間違った知識もね」
「それも怖い」
「そうだっていうんだね」
「先生にしてみると」
「そちらも」
「そう思っているんだ」
 皆が煎れてくれた紅茶のお代わりを貰いつつお話しました。
「僕はね」
「だからちゃんと学んでいる」
「いつもだね」
「そうしているんだね」
「あらゆる学問を」
「そうしているんだ」
 実際にというのです。
「本当にね」
「それでだね」
「今も学んで」
「正しい知識を手に入れていっているのね」
「そうなんだ、生きものについてもね」
 こちらのことについてもというのです。
「本当にね」
「じゃあこれからもだね」
「学ぶわね」
「あらゆることを」
「そうしていくのね」
「そうしていくよ」
 先生は皆に笑顔でお話しました、そしてです。
 数日後サラがまた日本に来るというお話を聞いてです、理事長さんにお部屋に呼ばれてそうしてでした。
 ヒョウモンダコについてです、こうお話しました。
「オーストラリアで」
「確保出来てですか」
「はい、そして」
 そうしてというのです。
「八条学園の水族館にです」
「運ばれてですね」
「飼育されることになりました」
「そうなりましたか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「これからはヒョウモンダコについてもです」
「お話をですか」
「して下さい」
 こう言うのでした。
「そうして下さい」
「それでは」
「はい、ですがよくです」
「確保出来たとですね」
「思っています」
「そうですね、ヒョウモンダコはです」
 先生も言いました。
「非常にです」
「個体数が少ないですね」
「ですから日本で目撃されてお話になります」
「若し普通の個体数ならですね」
「誰も騒がないですね」
「そうですね、ではオーストラリアでも」
 理事長さんも言いました。
「個体を確保出来たことは」
「運がいいと思います」
「左様ですね」
「そう思います」 
 まさにというのです。
「ではこれからはです」
「そのヒョウモンダコをですね」
「確かに飼育して」
「研究もですね」
「していきましょう、そして」
 先生はさらにお話しました。
「こうした蛸がいるとです」
「水族館に来た人達にですね」
「知ってもらいましょう」
 是非にというのです。
「そうしてもらいましょう」
「そうですね、毒のある蛸ですから」
「それもかなり強い」
 その毒がです。
「ですから」
「非常にですね」
「注意が必要なので」
 それ故にというのです。
「まことにです」
「水族館でもですね」
「学んでもらいましょう」
「それでは」
「特に水族館は子供も来ることが多いです」
「子供に知ってもらう」
「非常にいい機会です」
 先生は理事長さんに確かな声で答えました。
「ですから」
「ヒョウモンダコをですね」
「観てもらいましょう」 
 その子供達にというのです。
「そうしてもらいましょう」
「それでは」
 理事長さんも頷きました、そうしてでした。
 先生は理事長さんのお部屋を後にしました、この日はもうこれで帰る時間だったので研究室の戸締りをしてです。
 そうしてです、丁度お家に来ていた王子そしてトミーに言いました。そこには勿論動物の皆もいます。
「いや、ヒョウモンダコが学園の水族館に来るとはね」
「先生も思わなかったんだね」
「本当に個体数が少ないからね」
 王子に答えました。
「だからね」
「それでだね」
「うん、個体を確保出来たことは」
 このことはというのです。
「運がよかったよ」
「本当に個体数の少ない蛸なんだね」
「そうなんだ、日本でも少なくてね」
「他の国でもだね」
「だからオーストラリアで探しても」
 それでもというのです。
「難しいとね」
「思っていたんだ」
「それが見付けられてね」 
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「日本にまで連れて来てだね」
「飼育出来ることはね」
「運がいいんだね」
「凄くね、ではね」
「これからはだね」
「この幸運に感謝して」
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「飼育して」
「研究をしてね」
 そうしてというのです。
「そしてね」
「そのうえでだね」
「そう、皆に知ってもらうんだ」
 ヒョウモンダコのことをというのです。
「是非ね」
「成程ね」
「うん、今回は特に言うけれど」
「知ることは最大の武器だね」
「そう、まさにね」
 それこそというのです。
「それが最大の武器だから」
「それでだね」
「何といってもね」
「ヒョウモンダコのことを知ってもらう為にも」
「水族館に来てもらったら」
 それならというのです。
「いいと思っていたし」
「有り難いことだね」
「全く以てね、ただね」
「ただ?」
「蛸のお話をしていると」
 先生は笑ってこうも言いました。
「やっぱりたこ焼きを食べたくなるね」
「ヒョウモンダコでもだね」
「うん、どうしてもね」
 王子に笑ってお話しました。
「そうなるよ」
「もうそれは日本人だね」
「日本人の感覚だね」
「そうだよ、他の多くの国の人は思わないよ」
 蛸のお話をしてというのです。
「食べたいとかね」
「それもたこ焼きをだね」
「確かにイタリアやギリシアは食べるけれど」
 こうした国ではというのです。
「そうするけれど」
「それでもね」
「たこ焼きはないからね」
「そうだね」
「しかも関西だね」
 特にというのです。
「その考え方は」
「あの、丁度です」
 トミーが先生に笑顔で言ってきました。
「僕も今日はたこ焼きを食べたいと思いまして」
「それでなんだ」
「今晩は皆でたこ焼きを焼いて」
 そうしてというのです。
「たこ焼きパーティーをしようと思っていました」
「そうだったんだね」
「それでもう約用意は出来ています」
「小麦粉に卵に」
「全部たこ焼きに入れられる様にしています」
 既にというのです。
「そして蛸ももう全部切って」
「それでだね」
「何時でも作られます」
「それはいいね」
「勿論紅生姜や天かすも」
 そういったものもというのです。
「用意しています」
「それじゃあ今から」
「はい、皆で作りましょう」
 そのたこ焼きをというのです。
「そうして食べましょう」
「それではね」
「ああ、そういえばね」
 ホワイティがここで言いました。
「うちにもタコ焼き機あるね」
「気付いたらあったわね」
 ガブガブも言います。
「うちに」
「何時の間にあったのかしら」
 ポリネシアは首を傾げさせました。
「たこ焼き機なんて」
「何か気付いたらあって」
 そしてとです、老馬も言います。
「時々食べる様になっているね」
「何か関西にいたら普通にあるよね」
「たこ焼き機ってね」
 チープサイドの家族もお話しました。
「どのお家にも」
「それでたこ焼き食べるね」
「それでうちにもあって」
 ジップも言いました。
「時々作って食べているね」
「美味しいけれど」
 トートーも首を傾げさせます。
「何でどのお家にもあるのかな」
「それだけ皆たこ焼きを食べるってことだと思うけれど」
 チーチーも言いました。
「皆のお家にあることも凄いね」
「たこ焼き屋さんも多いしね」
「関西にはね」
 オシツオサレツもたこ焼きについて言います。
「それで普通にやってるね」
「公園とか神社でね」
「色々思うことはあるけれど」
 どうしてどのお家にもたこ焼き機があるかとです、ダブダブも思うのでした。
「まあ今は皆で食べればいいね」
「そうしようね、しかしうちに何時たこ焼き機が入ったのかな」
 先生も知らないことでした。
「何時の間に」
「それ僕があげたんじゃない」
 王子が言ってきました。
「先生が日本に来てね」
「このお家に入った時にかな」
「そう、僕が家具一式プレゼントしたけれど」
 その時にというのです。
「たこ焼き機もあったんだ」
「そうだったんだね」
「僕も関西に住んでるから」
 アフリカ生まれでもというのです。
「たこ焼き機お家にあってね」
「たこ焼きもだね」
「そう、食べるから」
 だからだというのです。
「先生にもね」
「プレゼントしてくれたんだね」
「そうだよ」
 先生に確かなお顔でお話しました。
「僕がね」
「成程、これでわかったよ」
「それじゃあ今からね」
「うん、たこ焼きを食べようね」
「皆で作って」
 そうしてというのです。
「そしてね」
「食べて」
「お酒もね」
「飲もうね」
「ビールがいいですか?」 
 トミーはまずこちらのお酒を出しました。
「お酒は」
「ビールもいいけれど」
 それよりもというのです。
「焼酎の方がね」
「いいですか」
「それをロックで飲みながらね」
 そうしつつというのです。
「楽しもうかな」
「たこ焼きを」
「そうしようかな」
「はい、じゃあ焼酎出しますね」
「お願いするよ」
「僕はビールを飲みます」
 トミーはにこりと笑って自分が飲むお酒のお話もしました。
「よく冷えたものを冷蔵庫にです」
「入れてあるんだね」
「はい、ですから」
「たこ焼きを焼いて食べながら」
「そうしながらね」
 そのうえでというのです。
「楽しみます」
「僕もビールにするよ」 
 王子も言ってきました。
「ちゃんと僕の分は持って来たよ」
「もうなんだ」
「先生達へのプレゼントと思って」
 それでというのです。
「用意したしね」
「それで王子の分もだね」
「持って来ているから」
「そのビールを飲むんだね」
「そうするよ、ビールは黒ビールだよ」
「黒ビールだね」
「それを飲みながらね」
「たこ焼きを食べるんだね」
「そうするよ」
 こう言うのでした、
「これからね」
「それじゃあ今から」
「皆で楽しもうね」 
 笑顔でお話してでした、先生達は皆で飲んで食べて楽しく過ごしてでした。そうしてそのうえでなのでした。 
 先生は翌朝お仕事がないので朝起きてまずはじっくりとお風呂に入ってお酒を抜いてそのうえで身体も奇麗にしてです。
 そうしてゆっくりとしていると皆が言ってきました。
「サラさん来たよ」
「約束の時間通りね」
「お家に来てくれたよ」
「そうなんだ、ではね」
 先生は皆の言葉を聞いて言いました。
「これからね」
「会おうね」
「そうしようね」
「それで暫く振りにね」
「兄妹でお話しようね」
「そうしようね」
 先生は作務衣姿で言いました、そうしてです。
 サラと会いました、そうしてサラにもお茶を飲みながらヒョウモンダコのお話をしました。するとでした。
 サラはその蛸のことを聞いてこう言いました。
「そんな蛸もいるのね」
「そう、毒のあるね」
 先生はサラに答えました。
「そうした蛸もね」
「いるのね」
「だから注意が必要なんだ」
「日本人が蛸を食べることは知っているけれど」
 サラは先生のお話にそれはというお顔になって言いました。
「それでもね」
「毒のある蛸がいるなんてだね」
「今まで知らなかったわ」
「それがなんだ」
「実際にいてなのね」
「注意が必要なんだ」
「そうなのね」
「だからね」
 先生はさらにお話しました。
「僕も今お話したんだ」
「私に」
「イギリス近海にはいないけれど」
「いないのね」
「暖かい海にしかいないから」
 そうした蛸だからだというのです。
「それでなんだ」
「イギリスの海は寒いから」
「特に冬は寒いね」
「ええ、というかイギリス自体がね」
 サラは先生に答えました。
「日本よりもね」
「寒いね」
「緯度が高いから」
 そのせいでというのです。
「日本よりもね」
「そう、だからね」
「あの蛸もいないのね」
「日本近海にはね」
 そうだというのです。
「だからイギリスにいる分にはね」
「安心していいのね」
「あの蛸についてはね」
「そうなのね」
「けれど日本にはいるし」
 それにというのです。
「そしてオーストラリアにもね」
「いるのね」
「だからこうした国々の海にね」
「行くとなのね」
「特に海が温かい夏はね」 
 この季節はというのです。
「注意しないと駄目なんだ」
「そういうことね」
「そこは覚えておいてね」
「わかったわ、というかね」
 サラはお兄さんの言葉に頷いてからこうも言いました。
「日本の夏は暑いわね」
「この神戸はかなりましだよ」
「そうだれど全体的にね」
「イギリスの夏よりはだね」
「遥かに暑いわ」
 そうだというのです。
「本当にね」
「湿気も凄いね」
「ええ、それでも冬はね」
「イギリスの冬よりはだね」
「遥かにましよ」 
「そうだね」
「これはドイツやフランスから見てもよね」
 欧州のこうした国々から見てもというのです。
「そうよね」
「何しろパリで日本の宗谷岬より北にあるんだよ」
「あのパリでね」
「緯度でね」
「そう思うとよね」
「欧州のそうした国々はね」
 イギリスだけでなくドイツやフランスのかなりの部分もというのです。
「日本よりもね」
「遥かに寒いわね」
「日本の冬も寒いけれど」
「欧州の冬よりはね」
「遥かにましで」
 それでというのです。
「暮らしていくにもね」
「苦労が少ないわね」
「まだね」
「いや、イギリスの冬はね」
 サラはもうそれはというお顔で先生に言いました。
「兄さんはもう二度とでしょ」
「日本の冬で充分だよ」
「そうよね」
「日本の冬はこたつに入ってね」
 先生は笑ってサラにお話しました。
「そしてね」
「それでよね」
「どてらを着てね、お部屋にストーブを入れて」
「蜜柑を食べて過ごすのね」
「晩ご飯はお鍋でね」
「それでお風呂にも入って」
「そうして過ごすよ、けれどイギリスにはそうしたものはないからね」
 こたつやどてらがというのです。
「お風呂だってね」
「日本のものとは違うから」
「シャワーで済ませる人も多いし」
「しかもあの寒さだから」
「もうね」
 それこそというのです。
「今の僕にとってはね」
「日本の冬でなのね」
「十分だよ」
 先生の心からの言葉です。
「本当にね」
「そういうことね」
「そしてね」
「日本の冬の中で」
「こたつに入って楽しみたいよ」
「こたつね」
「あれはいいよね」
「ええ、ただ兄さん本当に日本に馴染んだわね」
 サラはこのことをしみじみと思いました。
「今だってね」
「馴染んでいるね」
「自覚しているわね」
「さっきお話した蛸も大好きになったしね」
「そうよね」
「本当にすっかり日本に馴染んだよ」
「もう馴染み過ぎて」
 先生に笑って言うのでした。
「服装も仕草もね」
「日本人にかな」
「なっているわ」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「そこまでなんだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「馴染み過ぎて」
 それでというのです。
「怖い位よ」
「そうなんだ」
「ええ、そこまで馴染むなんてね」
「僕は日本が余程会っているのかな」
「そうみたいね、けれど私も蛸を食べたことがあって」
「美味しいね」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「後でね」
「食べるんだね」
「そうするわ」
 笑顔で言ってでした、そのうえで。 
 サラは先生と蛸のお話に興じました、それは怖いものをお話するものではなく美味しくて愛嬌があるものについてのものでした。


ドリトル先生と不思議な蛸   完


                 2021・1・11








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