『ドリトル先生と不思議な蛸』




                第十幕  県庁に行って

 先生はこの日は動物の皆と一緒に朝起きてご飯を食べました、すると暫くしてから携帯電話が鳴ってです。
 出るとこう言われました。
「県庁の者ですが」
「はい、今日のことですね」
「そうです、今からそちらにお伺いします」
「そうしてくれるんですか」
「車で」
「では車で、ですか」
「県庁まで送らせてもらいます」
 先生にこう言うのでした。
「そして帰りもです」
「送ってくれますか」
「はい」
 先生にこう言うのでした。
「それで宜しいでしょうか」
「わかりました」
 先生は県庁の人にすぐに答えました。
「それでは」
「はい、八時にです」
「こちらにですか」
「着く様にします」
 こう先生にお話してでした。
 県庁の人は電話を切りました、先生はその後で皆に言いました。
「車で迎えに来てくれるそうだよ」
「県庁の人がなのね」
「それはいいことね」
「じゃあね」
「僕達は待っていよう」
「そうしよう」
 動物の皆も先生に答えました。
「今日はどうなるかって思ってたけれど」
「どうして県庁のある津市に行くか」
「そのことを考えていたけれど」
「あちらから来てくれるの」
「そうしてくれるのね」
「そうなったよ、では僕達は待とうね」
 先生は穏やかに微笑んで言いました。
「今はね」
「そうしようね」
「最近ずっとお日様が出る間は調査していたけれど」
「今日はゆっくりしてるね」
「ここで待っているだけだから」
「そうだね、じゃあ待つ間はね」
 先生は皆ににこりと笑ってこうも言いました。
「お茶を飲んでいようか」
「そうしよう」
「紅茶飲みましょう」
「誰かを待つ間は紅茶」
「これに限るわ」
「うん、それではね」
 先生は皆にお話してでした。
 県庁の人が来るまでの間皆と一緒に紅茶を飲んで過ごしました、そして紅茶を一杯飲み終えた時に。
 県庁の人が来てくれました、眼鏡をかけて白いシャツにネクタイそれに黒っぽいズボンという服装です。髪の毛はオールバックで随分清潔な感じの中年の男の人です。 
 その人がです、先生に挨拶の後で言ってきました。
「ではこれからです」
「はい、県庁にですね」
「送らせて頂きます」
「宜しくお願いします」
「それで車ですが」
 県庁の人は先生にさらに言いました。
「キャンピングカーです」
「皆が一緒だからですか」
「はい、ドリトル先生といえばです」
「動物の皆が一緒ですか」
「今もご一緒ですし」
 県庁の人は先生と一緒にいる彼等も見ています。
「ですから」
「それで、ですね」
「はい」
 だからだというのです。
「彼等も一緒にということで」
「キャンピングカーですね」
「それに乗りまして」
「県庁にですね」
「行きましょう」
「わかりました」
 先生も頷いてでした。
 皆と一緒にキャンピングカーに乗って県庁の人の運転で県庁に向かいました、そして三重県の県庁に着くとです。
 すぐに知事さんとのお話になりました、知事さんは先生と握手をした後お話に入りましたがすぐにこんなことを言いました。
「あの、ヒョウモンダコは毒が」
「はい、あります」
 先生もすぐに答えました。
「噛まれるとかなり危険です」
「命に関わりますね」
「はい」
 先生はまたすぐに答えました。
「ですから気をつけないといけないです」
「では駆除を」
「いえ、駆除は必要ありません」
 先生ははっきりと言い切りました。
「個体数は非常に少なく」
「そうなのですか」
「目にすること自体稀でこちらが何もしないとです」
「噛んだりしないですか」
「はい」  
 そうだというのです。
「そうした蛸ですから」
「駆除の必要はないですか」
「生きものを迂闊に駆除しますと生態系に影響が出ます」
「そのことが問題ですか」
「全ての生きものが生態系の中にあるので」
「毒があるからといってですか」
「駆除しますと」
 そうすると、というのです。
「生態系に影響が出ますので」
「よくないですか」
「はい」 
 こう知事さんに言うのでした。
「それは絶対にです」
「してはいけないですか」
「僕はそう考えます」
「そうですか」
「駆除よりもです」
 それよりもというのです。
「その生きもののことをよく知って」
「そうしてですか」
「気をつけることです」
「そのことがいいですか」
「蝮と同じです」
 日本にいるこの毒蛇と、というのです。
「蝮は駆除しませんね」
「はい、蝮は近寄りません」
 知事さんもこう答えました。
「毒があってこちらから何もしないとです」
「攻撃しないですね」
「ですから」
 それでというのです。
「駆除もしないです」
「その蝮と同じ、いえ個体数が非常に少ないので」
「そういえば先生もずっと探しておられて」
「昨日ようやく発見出来た位です」
「そこまで数が少ないですね」
「蛸は多くとも」 
 それでもというのです。
「ヒョウモンダコはです」
「非常に少なくて」
「最近は九州で多く発見されているそうですが」
「それでもなのですね」
「数自体は非常に少なく」
 そしてというのです。
「見付けやすい外見でしかも触ったりしないとです」
「あちらから攻撃はしてこないですね」
「はい、むしろ人が近寄りますと」
「逃げますか」
「まずは、ですからそうしたことを知って」
「気をつければいいですか」
「そうです」 
 先生は知事さんにお話しました。
「安心して下さい」
「そうですか」
「ですから駆除はです」
「しないことですね」
「そうです、そもそも目にすること自体が稀なので」
「目撃例が多くて話題になるなら」
 それ位ならとです、知事さんも言いました。
「どれだけ少ないかですね」
「わかりますね」
「はい、蝮を見ても」
 それでもというのです。
「報告とかはです」
「出ないですね」
「山に行けば普通にいますから」
「山の近くにもですね」
「出てきます」
「ですがヒョウモンダコは」
「見つけたら騒ぎになる」
 知事さんは言いました。
「そこまで数が少ないのですね」
「ええ、ですから」
「駆除もですね」
「必要ありません」 
 先生のお話ははっきりしたままでした。
「ですから駆除はです」
「しないことですね」
「逆に躍起になって探して駆除しますと」
「個体数が少ないので」
「絶滅もです」
 これもというのです。
「危惧されるので」
「絶対にしてはいけないですね」
「そうです」
 先生の言葉は変わりませんでした。
「そのことは覚えておいて下さい」
「それでは」
 知事さんも頷きました。
「その様にです」
「県としてですね」
「していきます」
「そうしてくれると有り難いです」 
 先生にしてもです。
「毒があるから危険というのは人間から見たことで」
「それで、ですね」
「はい」
 まさにというのです。
「生きものにとってみればです」
「毒があることは当然のことですね」
「そうです」
 まさにというのです。
「必要があって持っているので」
「それを悪とか思うことはですね」
「よくありません」
「そういうことですね」
「僕が思いますに」
「三重県は自然も豊かです」 
 知事さんはこうも言いました。
「そしてその自然を守ることは」
「義務ですね」
「はい、私達の」 
「そうお考えでしたら」
「ヒョウモンダコもですね」
「そうさせて頂きます」
 知事さんは明朗な返事で答えてくれました、そしてでした。
 県としてヒョウモンダコを駆除しないでどういった生きものか皆に知らせて迂闊に近寄らないことで対処することになりました、このお話の後で。
 先生は伊勢まで県庁の人に送ってもらいました、その後ででした。
 先生は三時になるとでした。
 皆と一緒にティータイムの時間を採りました、今日の紅茶はロイヤルミルクティーでセットはといいますと。
 上段はクッキー、中段はエクレア、下段はブランデーのバウンドケーキでした。そのセットを食べつつです。
 紅茶を飲んで、です。先生は言いました。
「これでね」
「ヒョウモンダコのことはね」
「一件落着だね」
「知事さんも約束してくれたし」
「注意喚起ってことだね」
「というか注意喚起がね」
 これがというのです。
「一番いいよ」
「そうだよね」
「結局のところね」
「駆除するよりもね」
「その方がいいね」
「うん、駆除は本当に生態系に影響が出るから」
 だからだというのです。
「それよりもね」
「ちゃんとだよね」
「どういった生きものか知らせて」
「それで近寄らない様にする」
「それが一番ね」
「そういうことだよ」
 先生は皆に笑顔でお話しました。
「やっぱりね」
「そうだね」
 ここで言ったのはトートーでした。
「先生はそこがわかっているね」
「だからこそいいんだよね」
 チーチーも言います。
「先生は」
「僕達のことも自然のこともちゃんとわかっていてね」
 ジップが続きました。
「考えて言ってくれるから」
「本当に何もわかっていない人いるから」
 ポリネシアはそうした人達について思いました。
「自然のことについて」
「流石にそうした人はかなり減ったけれど」 
 ガブガブは自然に興味や理解のない人のことをさらに言いました。
「まだいるわね」
「若し自然が破壊されたらそこで暮らしていけないのに」
 ホワイティも言います。
「そこはわからないとね」
「ヒョウモンダコだっていないとね」
「ええ、生態系が破壊されてね」
 チープサイドの家族もお話します。
「大変なことになるから」
「問題だから」
「どんな生きものも迂闊に駆除したら駄目だね」 
 だブダブも言いました。
「本当に」
「多くなり過ぎたら問題だけれど」
「それでも迂闊に駆除はいけないからね」
 オシツオサレツは先生がいつも言っていることを言いました。
「だからね」
「先生の言通りヒョウモンダコの駆除はよくないよ」
「数が少ない生きものは毒があっても駆除しない」 
 老馬は言い切りました。
「それが生態系を守る為に必要だね」
「うん、本当にヒョウモンダコは少ないよ」
 その個体数はとです、先生はクッキーをお口に運んでから言いました。
「果たしてこの伊勢でもどれだけいるか」
「まあ少ないよね」
「僕達だってかなり探してね」
「それで見たってお話聞いてそこに言ってだったから」
「そこで見たから」
「この伊勢でどれだけいるかしら」
「相当少ないよ」
 このことは事実だというのです。
「本当にね」
「そうよね」
「そのことは間違いないし」
「それじゃあね」
「駆除なんてしたら」
「すぐにいなくなるよ、それとね」
 先生はさらに言いました。
「ヒョウモンダコは小さいよ」
「あっ、そういえば」
「言われてみれば」
「相当小さかったよ」
「こんなに小さいのっていう位に」
「大体十センチ位?」
「蛸としては小さいね」
「そう、小さくて」
 それでというのです。
「このことも特徴だよ」
「小さくて独特の模様がある」
「わかりやすいね」
「もう目にすればわかる」
「そうだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「このことを覚えておこうね」
「そうだね」
「このこともね」
「注意喚起としては最適だし」
「それじゃあね」
「覚えておきましょう」
「そういうことでね、あと三重県だけれど」
 先生は今度はバウンドケーキを食べつつ言いました。
「ここは近畿にも入るけれど東海だからね」
「うん、東海だから」
「それでなんだ」
「東海だからなの」
「何かあるんだ」
「野球は基本中日なんだ」
 このチームのファンが多いというのです。
「阪神ファンの人も多いけれどね」
「阪神ファンはもう全国にいるから」
「だからだね」
「それに近畿にも入るし」
「それでだよね」
「阪神ファンの人達も多いけれど」
「基本中日なんだ」
 皆もお話を聞いて納得しました。
「あのチームだね」
「名古屋が本拠地のチームだね」
「そういえば名古屋にも近いし」
「そうなるね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「迂闊に阪神のことはね」
「言えないね」
「そうだね」
「まあ巨人じゃないとね」
 このチームでないと、というのです。全人類に対して恐ろしい害毒を撒き散らし続けているこのチームでなければ。
「そんなに言われないけれど」
「ああ、巨人ね」
「この前十連敗したわね」
「八連敗の後の十連敗ってね」
「凄いね」
「本当に巨人って弱いね」
「人気もないしね」
「あのチームは人気ないけれどアンチは多いからね」
 そうしたチームだからだというのです。
「ここでもだよ」
「巨人のお話しないことね」
「何があっても」
「それでそのうえでね」
「中日ファンが多いことも覚えておくことだね」
「そうだよ、それと食文化はね」
 こちらはといいますと。
「案外名古屋のは入っていないね」
「そういえばそうだね」
「伊勢にきし麺とか味噌カツないよ」
「あとういろうもね」
「海老にしても」
「あと名古屋コーチンも」
「それにすがきやのラーメンもね」
 皆名古屋の食べものを挙げていきます。
「これといってね」
「ないね」
「そういえばね」
「言われてみると」
「三重県でも北の方は結構受けていると思うけれど」
 それでもというのです。
「この通りね」
「三重県は三重県」
「そうなんだ」
「名古屋とはまた違うんだ」
「愛知県とは」
「そうなのね」
「そうだよ、そして三重県も地域性があるから」
 県内でもというのです。
「だからね」
「それでなんだ」
「三重県は愛知県とは違って」
「食文化も独自なんだね」
「そちらは」
「そう、ただ野球はね」
 これはというのです。
「中日ファンが多いよ」
「そして阪神ファンも多い」
「そうなのね」
「野球についてはそうなんだ」
「そうなんだ、まあ阪神は最近強いけれど」
 先生はこのチームのお話もしました。
「ずっと中日にもやられっぱなしだったね」
「ああ、そうだったね」
「一九八七年から二〇〇一年までね」
「やたら最下位になって」
「暗黒時代だったから」
「その頃は阪神は他のチームに負け続けて」
 そしてというのです。
「中日にもだったからね」
「特にヤクルトと広島に負けてたけれど」
「中日にもだったね」
「もう負けて負けて」
「負け続けてね」
「それで中日もで。中日が優勝した時なんて」 
 そのシーズンはといいますと。
「お得意様になっていたよ」
「優勝したチームにはいつもで」
「もう徹底的に負けて」
「それでね」
「何度も最下位になったね」
「それで中日もね」 
 このチームもというのです。
「阪神に散々に勝ったよ」
「散々なのが凄いね」
「あの時の阪神の弱さは折り紙付きで」
「兎に角打線が打たなくて」
「どうにもならなかったね」
「その阪神と中日がね」 
 三重県ではというのです。
「野球は多いんだ、しかし日本のスポーツはイギリスとか違うね」
「サッカーの人気があるのは同じだけれど」
「野球がメジャーでね」
「ラグビーはあまり、だね」
「テニスもイギリスよりも人気ないし」
「後ラクロスやクリケットもね」
「あまり、だよね」
 こうしたスポーツをする人も少ないというのです。
「そこが違うね」
「スポーツマンシップを守ることは同じでも」
「それでもね」
「そうだね、ただ色々なスポーツが人気あるね」
 このことは事実だというのです。
「そして漫画にもなっているね」
「それはそうだね」
「そのテニスでもだし」
「あとゴルフもだし」
「ラグビーも漫画になっていたし」
「自転車だってね」
「それに陸上だってね」
 皆も先生のお話に頷きました。
「水泳もで」
「新体操も漫画になってたわ」
「バスケットボールもで」
「バレーボールだってね」
「日本のスポーツ文化は凄いものがあるよ」 
 先生は素直に尊敬の念を述べました。
「全く以てね」
「しかもスポーツマンシップを守ってだから」
「余計に凄いね」
「そういえば釣りもスポーツだけれど」
「釣りの漫画もあるし」
「本当に多彩だね、僕はスポーツはしないけれど」
 先生ご自身はです。
「日本のスポーツ文化は見事なものがあるよ」
「アニメでも小説でもゲームでも出てるしね」
「サッカーゲームも多いね」
「野球のゲームもね」
「本当にね」
「そうだね、ゲームもね」
 今度はゲームのお話をするのでした。
「皆しているね」
「そうそう、テレビゲームでもパソコンでも」
「それでスマートフォンでもね」
「やってるね」
「皆そうしてるね」
「日本でもね」
「イギリスでもゲームはあるけれど」 
 それでもというのです。
「日本のゲームはまた独特だね」
「そうだよね」
「この国のゲームは凄いよ」
「何かとね」
「素晴らしいものがあるよ」
「僕はゲームはしないけれど」  
 先生ご自身はです。
「王子はしているしトミーだってね」
「時々してるね」
「お家でね」
「それで楽しんでいるね」
「トミーも」
「うん、そのゲームをしているのを見ると」
 先生にしてもです。
「楽しそうだね」
「そうだね」
「じゃあ神戸に帰ったら王子やトミーのプレイも観よう」
「そちらもね」
「そうしましょう」
「そうしようね」
 こうしたお話をしてでした。
 先生はティータイムの後でまた海洋調査に入りました、ですがその時に動物の皆はこんなことを言いました。
「まだ海洋調査するんだ」
「今日も」
「そうするんだ」
「ヒョウモンダコは見付けたけれど」
「それでもなのね」
「うん、まだそちらは残っているからね」
 だからだというのです。
「そうするよ」
「そうなのね」
「それじゃあだね」
「これからも海洋調査を続けて」
「そのうえで」
「やっていくよ」
 是非にというのですした。
「これからね」
「それじゃあだね」
「これからこの地域を調べるんだね」
「そうするのね」
「そうするよ」
 是非にと言ってでした。
 先生は皆と一緒に海洋調査を再開しました、するとそこで早速蛸を目にしました。すると皆はこう言いました。
「ああ、違うね」
「赤いからね」
「赤い蛸ね」
「ヒョウモンダコじゃないね」
「うん、違うね」 
 実際にとです、先生も言いました。
「あの蛸はマダコだよ」
「そうね」
「その蛸だから」
「それでだね」
「安心していいね」
「そうだよ、普通の蛸は安心していいよ」 
 つまり毒はないというのです。
「そして日本の人達はね」
「普通の蛸だとね」
「喜んで食べるね」
「普通にたこ焼きやお刺身にして」
「唐揚げにもするし」
「そうして食べるね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「あの蛸もね」
「ひょっとしたら」
「その時はね」
「食べられるね」
「そうなるかもね、蛸壺を出されて」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「蛸ってそうだよね」
「蛸壺会ったらそこに入るから」
「それで普通に捕まえられるね」
「ミズダコみたいな怖い蛸でも」
「そう、本当にミズダコは人を襲うけれど」
 そうした蛸でもというのです。
「何故日本人はそのことを知らないか」
「ミズダコを全然恐れないでね」
「図鑑でもそんなこと一言も書いてなくて」
「どうお料理したら美味しいかだから」
「それはどうしてかっていうと」
「蛸壺を用意したら」
 海の中に置いたらです。
「簡単に捕まるからだよ」
「人を襲う様な蛸でもね」
「それだと映画に出て来る様な大蛸でも捕まえられるね」
「それも簡単に」
「そうなるね」
「だからね」 
 それ故にというのです。
「ミズダコのことも知らないんだよ」
「そもそも蛸を悪魔とも言わないわよ」
 ポリネシアも言いました。
「全くね」
「そうそう、烏賊もそうで」
 ガブガブも言います。
「本当に悪魔とか言わないわ」
「むしろ愛されているね」
 トートーは言いました。
「可愛いとか言われて」
「確かに気持ち悪いって言う人もいるけれど」
 ホワイティはそうした人達のお話をしました。
「少ないね、日本では」
「あの頭と八本の足がいいとかね」
 ジップは丸い頭を思い浮かべつつ言います。
「そう言ってだね」
「そうそう、全然怖がることなくて」
「平和なものよ」
 チープサイドの家族も言います。
「むしろ美味しそうだし」
「捕まえ方もわかっていてね」
「何かあまりにも怖がっていなくて」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「驚いたよ」
「日本に来た時は」
「まさか蛸壺なんてものがあるなんて」
 ダブダブはこの壺のことを言うのでした。
「思わなかったしね」
「もう何ていうか」
 こう言ったのはチーチーでした。
「日本人の英知も見たよ」
「烏賊も簡単にどんどん釣るし」
 老馬はこちらのお話をします。
「日本人にとっては蛸や烏賊は本当に怖い対象じゃないね」
「うん、けれどヒョウモンダコには注意して」
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「ちゃんとだね」
「注意して」
「噛まれない様にする」
「そうするんだね」
「そうだよ」
 こう皆に答えました。
「皆でね」
「そうだよね」
「そうしていってね」
「被害が出ない様にする」
「ヒョウモンダコにそうしてもらうことね」
「そうだよ、もうそのことは知事さんにお願いしたし」
 先生はさらに言いました。
「そしてね」
「それでだね」
「先生も動くね」
「そうするんだね」
「そうするよ、神戸に戻ったら」
 その時はというのです。
「水族館や生物学部の人達にお話して」
「そしてだね」
「皆でだね」
「ヒョウモンダコのことを注意する」
「そうしてもらうね」
「そうしてもらうよ、皆がヒョウモンダコの正しい知識を備えれば」
 それでというのです。
「被害は少なく済むよ」
「少なくなんだね」
「どうしても出るものは出るんだね」
「その可能性はあるのね」
「そう、確かに個体数は少なくて」
 それでというのです。
「そしてね」
「それでだよね」
「目にする可能性自体が稀で」
「噛まれることも少なくても」
「それでもだね」
「やっぱり可能性はゼロかというと」
 それはというのです。
「そうはならないよ」
「そうなんだね」
「やっぱり噛まれる可能性はあるんだ」
「犠牲者が出ることは」
「日本では確かにまだ起こっていないけれど」
 ヒョウモンダコに噛まれた事故はです。
「けれどオーストラリアではね」
「事故があって」
「それで問題になっているんだ」
「実際に」
「そうなんだ、だから将来日本で起こる可能性はあるよ」
 どうしてもというのです。
「その可能性はゼロではないから」
「注意喚起をしても」
「正しい知識を得る人はいても」
「それでも」
「それはあるよ」
 こう皆にお話するのでした。
「本当にね」
「そんな人が出ないことを祈るよ」
「悪戯とかで触る人が出なかったらいいよ」
「けれど毒蛇にそんなことして噛まれる人いるし」
「噛まれる人も出るね」
「そう、ただね」
 先生は調査をしつつさらに言いました。
「そうした悪戯とか度胸試しは本当に危険だよ」
「よくあるよね」
「毒蛇に触ることを勇気を見せるとか言ってする人」
「危ないことをあえてやる人」
「実際にいるわね」
「そんなことをして命を失うとかはね」
 そうしたことになってしまうと、というのです。
「こんな馬鹿馬鹿しいことはないよ」
「そうだね」
「そんなの勇気じゃないね」
「勇気はそんなものじゃないね」
「先生も言っているね」
「勇気とは恐怖を知ってね」
 そうしてというのです。
「誰かを助けたり守る時に前に出る」
「それが勇気だよね」
「恐怖を知って他の人の為にそれに勝つ」
「それが勇気でね」
「危険なものにあえて向かうことじゃないね」
「蛮勇と言ってもね」
 先生はこの言葉についてもお話しました。
「それもだよ」
「また違うね」
「蛮勇はあえて向こう見ずになって前に出る」
「その時はそれをするのが一番だと判断して」
「そういうものだから」
「そうした行為は蛮勇とも違うわね」
「それは愚行と呼ぶべきだよ」
 蛮勇ではなくというのです。
「むしろね」
「そうだよね」
「もう無駄に命を落としかねない行為で」
「そうしたことをする人もいるから」
「事故が今後も起きないとは言えないわね」
「どうしても」
「残念なことにね」
 そうだとです、先生は皆にお話しました。
「そうだよ」
「やっぱりそうだね」
「残念なことだけれど」
「そうした人もいるから」
「事故についてはね」
「河豚だってそうだね」
 毒があるこのお魚もというのです。
「肝臓は強い毒があるね」
「河豚の中でもね」
「物凄く強い毒があるね」
「それで有名だよね」
「ふぐ肝っていったら」
「只でさえ当たると死ぬから鉄砲とすら言われているのに」
 その河豚の中でもというのです。
「特に強いね」
「肝を食べてね」
「命を落とす人いるわね」
「物凄く美味しいからって言って」
「そのうえで」
「そうした人もいるね」
 あえて河豚の肝つまり肝臓を食べたがる人もというのです。
「だからね」
「あえてヒョウモンダコに触ろうとして」
「それで噛まれる人が出るかも知れないのね」
「危ないってわかっていて」
「それで」
「そうした人は止めても聞かないから」
 危ないと言ってもというのです。
「それに気付かない、うっかりという場合もね」
「あるわね」
「その場合も」
「そうしたつい、って人もいて」
「そうした人については」
「もう仕方がないよ」
 先生は残念そうに言いました。
「過失の人もいるしね」
「そうだよね」
「ヒョウモンダコを知らなくてたまたま蛸壺の中にいて」
「それで獲ろうとして噛まれたりとか」
「そうした人もいるね」
「もうその場合はね」
「仕方ないね」
 皆もそうした人はと言います。
「どうしても」
「そうした人についてはね」
「もう仕方ないとして」
「それでよね」
「事故は否定出来ない」
「ゼロじゃないね」
「そう、ゼロにすることはね」 
 完全にない様にすることはというのです。
「やっぱり無理だよ」
「交通事故だってそうだしね」
「どうしても起こるよ」
「それで噛まれる人がいるから」
「仕方ないね」
「どうしてもね、それとね」
 先生はさらに言いました。
「もう一つあるよ」
「もう一つ?」
「もう一つっていうと」
「まだあるんだ」
「うん、研究中の事故もあるね」
 この場合もというのです。
「蛇でもあるね」
「ああ、あるね」
「蠍でもね」
「充分に注意していてもね」
「その中で噛まれたり刺されたり」
「そうした人もあるね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「その場合もあるから」
「キングコブラに噛まれて」
「それで物凄い量の血清使って助かった人がいたね」
「キングコブラに噛まれると危ないっていうけれど」
「殆ど助からないって」
「キングコブラの毒はかなり強くてね」
 それに加えてというのです。
「物凄い量なんだ」
「それでだよね」
「噛まれたら他の蛇より大変だね」
「本当に殆ど助からなくて」
「危ないね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「あの蛇はね」
「危険で」
「そして研究中の事故もある」
「その場合の可能性もあるのね」
「自然の中だけじゃなくて」
「生物の研究はしておかないとね」
 これは絶対にというのです。
「それでこそ安全も確保出来るね」
「うん、確かに」
「その通りだよ」
「若しそうしたことを怠ったら」
「安全も確保出来ないし」
「それに、だよね」
「その生きものの保護もね」
 こちらもというのです。
「出来ないからね」
「だからだよね」
「そういうこともしないといけない」
「だからその時の事故も有り得る」
「そういうことね」
「そうなんだ」
「うん、そしてね」
 先生はさらに言いました。
「その事故の時にはすぐにね」
「対処だね」
「キングコブラと同じで」
「すぐに対処して命が助かる様にする」
「そうすることね」
「そうだよ、それはね」
 本当にというのです。
「大事なことだよ」
「そうだよね」
「事故はどうしても起こるから」
「それに対してどうするか」
「それが大事よね」
「本当に」
「そうなんだ」
 先生は皆に笑顔で言いました。
「このことも覚えておかないとね」
「万全の用意をしておく」
「何かあったその時に備えて」
「そしてだね」
「やっていくことだね」
「そういうことだよ」 
 先生は皆に笑顔でお話しました、そうしてでした。
 皆でこのことについてさらにお話をしました、それは先生にとっても皆にとってもとても大事で覚えておくべきお話でした。








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