『ドリトル先生と不思議な蛸』
第六幕 三重県の海は
先生は動物の皆と鳥羽の海の調査を続けていきました、休日以外は日の出から夕暮れまでそうしてです。
レポートも書きます、その中で先生は伊勢の水族館に勤めている人とその水族館でお会いしてお話をしました。
まずは一緒に水族館の生きもの達を見てです、そうしてその人に言いました。
「今のところはです」
「発見されていませんか」
「はい」
こう水族館の人にお話しました。
「あくまで今のところですが」
「そうですか、いないならです」
「それでよしですね」
「あの蛸は危険ですから」
水族館の人は若い男の人です、眉毛がきりっとしていて黒髪をオールバックにしたかなり端正な背の高い人です。スーツがよく似合っています。
「ですから」
「それで、ですね」
「いないならです」
それならというのです。
「まことにです」
「それに越したことはないですね」
「元々個体数は少ないですしね」
「そうですね」
先生もその通りだと頷きます、水族館の事務室で向かい合って座ってその上で紅茶を飲みつつお話をしています。
「あの蛸は」
「そうです、ただ」
水族館の人はこうも言いました。
「あの蛸は元々です」
「はい、日本にですね」
「棲息しています」
「そのことは僕も知っています」
「それは何よりです」
「はい、ですがこのことは」
先生は水族館の人にお話しました。
「知らない人が多いですね」
「そうですね」
「あの蛸のことも」
「そうした人が多くて」
水族館の人はここで曇ったお顔になりました、そのうえで先生に言うのでした。
「僕も心配しています」
「僕はこの水族館の蛸や烏賊の飼育や研究を担当していまして」
それでというのです。
「普段はスーツでなく」
「作業服ですね」
「そちらを着てです」
先生に笑顔でお話しました。
「楽しくお仕事をしています」
「そうですか」
「はい、ですから蛸のことは詳しいつもりで」
「あの蛸のこともですね」
「そうです」
知識があるというのです。
「少なくともそのつもりで」
「それで今も言われますね」
「そうです、あの蛸は昔から日本近海にも棲息していて」
そしてというのです。
「個体数は非常に少ないので」
「遭遇すること自体がですね」
「稀です、そして発見しても」
それでもというのです。
「特にです」
「恐れることはないですね」
「そうです」
まさにというのです。
「決して」
「それはどの生きものにも言えますね」
「大事はことは恐れることではなく」
「その生きものをよく知ること」
「そうです」
まさにというのです。
「そのことが大事で」
「それで、ですね」
「僕はあの蛸について言っています」
「怖がることはない」
「大事なことはよく知ることとです」
あの蛸についてというのです。
「先生の言われる通り」
「本当にそうですね」
「そうです、それとですが」
水族館の人は先生にこうもお話しました。
「レポートを拝見させて頂きましたが」
「如何でしょうか」
「細かいところまでよく見られていて」
そしてというのです。
「そして詳細に書かれていますね」
「そうですか」
「見事なレポートです、これを読みますと」
先生にさらに言うのでした。
「鳥羽の海の自然はよく守られていますね」
「そう思われますか」
「水質も岩場の状況も生態系も」
そのあらゆることがというのです。
「実によくです」
「守られていますか」
「はい」
先生に笑顔で言いました。
「嬉しいことです、こうしてです」
「これからもですね」
「環境を守って」
そしてというのです。
「維持していきたいですね」
「そうですね」
「環境を守ることもです」
「人の務めですね」
「それを忘れますと」
そうなればといいますと。
「人自体が困ります」
「左様ですね」
水族館の人も頷きました。
「そのことは」
「はい、環境破壊が進んで人が住めなくなれば」
「それだけで大変です」
「そうしたものなので」
それでというのです、先生も。
「その視点からもです」
「環境は守るべきです」
「それに奇麗な景色、澄んだお水にです」
「色々な生きもの達がですね」
「ないとです」
「どれだけ残念なことか」
「そう思いますと」
先生は水族館の人に穏健ですが強い声で言いました。
「これは義務です」
「人間にとって」
「まさに、よく環境政策を軽視する人がいますが」
「それは間違いですね」
「はい」
まさにというのです。
「僕は確信しています」
「僕もです、そして先生のレポートは」
「環境のことをですか」
「詳しく正確に書かれているので」
それでというのです。
「有り難いです、これを学会にも発表されて」
「そして大学の方にもです」
八条大学の方にもというのです。
「まことにです」
「そうされますか」
「その予定です」
「それは何よりです、三重県の県庁にもです」
そちらにもというのです。
「お話がいきます」
「やはりそうなりますね」
「この県のことなので」
その三重県のです。
「ですから」
「そうなりますね」
「必ず、ですから」
それでというのです。
「そのことはご安心下さい」
「環境の保護もですね」
「そして若しあの蛸が見付かれば」
その時もというのです。
「しっかりとです」
「対策が講じられますね」
「はい、勿論あの蛸を害することなく」
そのうえでというのです。
「進められますので」
「駆除等はですね」
「されないです、駆除をしますと」
危険と言ってです。
「それはそれで、です」
「生態系に影響が出ますので」
「出来る限りです」
「しない方がいいですね」
「今はそうした考えが主流ですね」
「そしてそれが正しいです」
先生もこう答えました。
「例えば狼が家畜を襲う害獣だからです」
「駆除をするとですね」
「狼がいなくなれば」
「狼がいる森の生態系が乱れて」
「森の自然が荒れたりします」
「日本で実際にそうなっていますね」
「そうです、狼がいないと」
森の食物連鎖の中で肉食動物になるこの生きものがです。
「創小動物が増え過ぎて」
「森の植物や木の皮を食べ過ぎて」
「森がかえって荒れます」
「そして畑にも出て」
「獣害も引き起こすので」
それでというのです。
「あまりにもです」
「危険ですね」
「ですから」
「生きものが危険と言って駆除することは」
「よくないです」
「生態系に影響が出かねないので」
「ですから」
それでというのです。
「ここはです」
「駆除はしない」
「注意喚起で近寄らない方にする」
「それが一番いいですね」
こうお話してでした。
先生は水族館の人とその蛸についても鳥羽の海の環境についてもさらにお話しました、その後で事務室でも一緒だった動物の皆とです。
夫婦岩を見ました、それから鳥羽に戻ってまた鳥羽の海の調査をする予定ですが先生は皆にお話しました。その二つの岩の前で。
「危険な蛸でもね」
「駆除をしたらいけない」
「先生そうお話していたね」
オシツオサレツが答えました。
「そうだったね」
「確かにね」
「確かに狼や熊や虎もいないとね」
ジップも言います。
「生態系に影響が出るね」
「それは蛸も同じで」
今度はホワイティが言いました。
「変に駆除したらよくないんだね」
「どんな危険な生物でもそこにいる意味がある」
こう言ったのはダブダブでした。
「そういうことね」
「それに同じ命だよ」
「そうそう」
チープサイドの家族もお話しました。
「だったらね」
「その命も大事にしないとね」
「命を粗末にするなんて」
こう言ったのはトートーでした。
「前に先生が王子とお話していた酷い飼い主と同じだよ」
「あんな人達みたいになったらね」
それこそとです、チーチーは言いました。
「こんな残念なことはないよ」
「そう思ったらね」
老馬も言います。
「危険な蛸でも命を大事にしないと」
「命を大事にするなら」
それならとです、ガブガブも言いました。
「その蛸もってことだね」
「そうね、餓鬼になったら」
ポリネシアの口調はしみじみとしたものでした。
「どうしようもないわ」
「そうだよ、危険な蛸も生態系の中にあってね」
先生も皆に言いました。
「それに僕達と同じ命だよ」
「そうだよね」
「そう思うならね」
「本当に気をつけないとね」
「だから危険だからすぐに駆除はね」
「よくないよ」
「そうだよ」
先生は皆にその通りだと答えました。
「本当にね」
「その通りだね」
「先生はそうしたこともわかっているね」
「しっかりした人だから」
「本当にね」
「うん、じゃあ鳥羽に戻ったら」
その時はというのです。
「すぐにね」
「そうだね」
「またあの蛸を探そう」
「そうしよう」
「是非ね」
「うん、それとこの岩はね」
今度はその夫婦岩を見て言うのでした。
「不思議だね」
「よくこんな岩になるね」
「そうだよね」
「二つ並んでね」
「そうなってるなんてね」
「面白い岩だね」
「そうだね、こうした岩が二つ並んでいることも」
このこともというのです。
「自然の奇跡いや神様のしたことかな」
「うん、確かに神様も感じるね」
「神聖なものを」
「この岩からも」
「そうだね」
「全くだよ、この岩は」
実際にというのです。
「神様のしたことだろうね」
「だから縄もしてあるね」
「神様のしたことだから」
「それを感じるね」
「本当にね」
「この岩を見られたことも嬉しいよ」
先生は笑顔で言ってでした。
皆でその岩を見てから鳥羽に戻って海の調査を続けました、そうしてそのうえでその蛸を探して海の生態系を調査しますが。
その中で、です。動物の皆は自分達と一緒にいる先生に言いました。
「そういえばこの辺り鮫いないね」
「瀬戸内海にはいるけれど」
「鮫を見たっていうのはね」
「あまりないね」
「まあ海によりね、鳥羽の辺りは実際に鮫は少ない方かもね」
先生もこう答えます。
「鳥羽の水族館も伊勢の方も鮫はいるけれど」
「ドチザメとかネコザメとかだね」
「大人しい鮫ばかりね」
「海の底でじっとしている様な」
「そんな鮫ばかりだね」
「鮫は回遊魚だから」
先生はこのこともお話しました。
「水族館での飼育は難しいね」
「そうそう、物凄く広い水槽でないと」
「鮫は飼えないね」
「よく言われる鮫とかは」
「そうだね」
「うん、けれどそうじゃない鮫もいるね」
回遊魚いつも泳がなくていけない鮫でない鮫もというのです。
「そうだね」
「それはそうだね」
「確かにね」
「それが水族館のドチザメやネコザメで」
「水槽でも底にいて大人しいけれど」
「そうした鮫もいるんだね」
「そうした鮫が鳥羽の海では主流というか」
それかというのです。
「僕達が思う様な大型でいつも泳いでいるね」
「人食い鮫はだね」
「鮫の中では少ないの」
「鮫の種類の中で」
「そうだよ、鮫の中の種類もそうで」
それでというのです。
「個体数もね」
「少ないんだ」
「そうした鮫は」
「鳥羽の海だけじゃなくて」
「他の海でもなのね」
「今お話が出た瀬戸内の海でもね」
そこでもというのです。
「そうだよ」
「成程ね」
「実はそうなんだ」
「鳥羽にはいないって思ったら」
「他の海でもなのね」
「まあオーストラリア近海やカリブ海では比較的多いけれどね」
そうした鮫達はというのです。
「それでも鮫の中では少ないから」
「そうした海でもなんだ」
「オーストラリアの周りとかでも」
「そうした海って鮫が有名だけれど」
「実はそうなのね」
「うん、そして鮫もよく知ることだよ」
迂闊に怖がることでなくというのです。
「それが大事だよ」
「そうなのね」
「その蛸と同じで」
「そうした鮫もだね」
「同じなんだね」
「そうだよ、それにね」
先生はさらに言いました。
「鮫よりシャチの方が凄いからね」
「ああ、あの生きもの」
「シャチは確かに凄いね」
「あの生きものは大きいし」
「しかも頭がいいから」
「鮫より凄いね」
「実際に鮫とシャチが闘ったらシャチが勝つんだ」
そうなるというのです。
「動きの素早さと体重を含めた体格の違いとね」
「特に頭のよさ」
「それがあってだね」
「それでなのね」
「どうしてもね」
それはというのです。
「シャチの方が強いんだ」
「そうした違いがあるから」
「それでだね」
「鮫よりシャチの方が凄くて」
「それで海で一番強いとなると」
「シャチなのね」
「そうだよ、そのシャチもマッコウクジラには敵わないよ」
この大きな鯨にはというのです。
「白鯨は流石に物語だけれどね」
「まああの鯨はどう見ても違うし」
「色が白いだけじゃなくて大きさも化けものみたいだから」
「流石に実在しないから」
「あんな化けものみたいな鯨は」
「だから置いていてね」
創作の世界だからとです、先生も言います。
「お話するけれど」
「うん、そのシャチでもなのね」
「マッコウクジラには勝てない」
「上には上がいて」
「そうなのね」
「そうなんだ」
これがというのです。
「これも自然だよ」
「食物連鎖だね」
「強い生きものの上にさらに強い生きものがいる」
「そういうことだね」
「要するに」
「そうだよ、そしてこの辺りの海もね」
先生は皆に船の上でお話しました、船は今は海の上で碇を下ろしていてそのうえで水質調査を行っています。先生はそちらもしているのです。
「鮫はあまりいないよ」
「そうなのね」
「それじゃあね」
「そのことにも安心して」
「それでだね」
「やっていこうね」
こう言ってでした。
先生は水質調査もしましたがその水質はといいますと。
「程よく奇麗かな」
「ああ、奇麗過ぎるとね」
「かえって生きものが暮らしにくい」
「瀬戸内海が今そう言われているし」
「奇麗さも程よくだとね」
「丁度いいんだったね」
「そうだよ、あまり汚くても駄目だけれど」
それだけでなくというのです。
「奇麗過ぎてもね」
「駄目なんだよね」
「そうだよね」
「それでこの辺りは程よい」
「そうだね」
「そうだよ、これ位がね」
まさにというのです。
「いいんだ、日本は今は環境にかなり気を使っていて」
「高度成長の時は違っていて」
「結構汚れていてね」
「赤潮とかも出て」
「深刻な状況で」
「公害も問題だったね」
「僕達が今いる三重県も公害があってね」
それでというのです。
「四日市ぜんそくといって」
「ぜんそくね」
「ぜんそくも辛いよね」
「そちらもね」
「どうにも」
「うん、光化学スモッグのせいでね」
そのぜんそくはというのです。
「深刻な問題だったけれど」
「今は違って」
「平和だね」
「そうだね」
「その四日市市についても」
「そうだよ、工場から出すものに気をつけてね」
そうしてというのです。
「対策を講じたらね」
「排気ガスとかね」
「それと産業廃水も」
「そうしたらね」
「奇麗になるね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「今この辺りの海もね」
「奇麗になったんだね」
「それで程よい奇麗さで」
「生きものも暮らしやすいんだ」
「そうなっているよ」
先生は笑顔で言いました。
「有り難いことにね、そして生きものの調査もして」
「それでだね」
「またホテルに戻って」
「それでまたお食事ね」
「晩ご飯を楽しむのね」
「そうしようね、ただね」
ここでこう言った先生でした。
「今日は少し船に寄ろうか」
「船?」
「船って今乗ってるけれど」
「この船じゃないの」
「違うの」
「うん、別の船だよ」
今自分達が乗っている船ではないというのです。
「そこに行こうね」
「別の船だね」
「その船に行ってね」
「それでだね」
「その船に行って」
「また見るものがあるんだ」
「そうだよ、その為に行こうね」
こう言ってでした、先生は生きものの調査もしてでした。その後で鳥羽の港から街の方に行ってでした。
そこにずっと停泊している大きな船に入りました、皆その船に入ってから言いました。
「ずっと気になっていたけれど」
「この船何かな」
「気になっていたけれど」
「何に使っていたのかな」
「ぶらじる丸って名前だったけれど」
「ブラジルと関係あるのかしら」
「そうだよ、昔はこの船に乗ってブラジルに移民していたんだ」
先生は皆に船の中でお話しました。
「日本からね」
「へえ、そうだったんだ」
「この船に乗ってだったの」
「日本からブラジルに行ってたんだ」
「そうだったの」
「昔は日本は移民がさかんでね」
他の国に行ってそこに移り住むことがというのです。
「アメリカ、それもハワイが有名でパラオにもだったけれど」
「そういえば中南米にも行ってたね」
「ペルーとかアルゼンチンにも」
「それでブラジルにも移民する人達がいて」
「それでだね」
「ブラジルにも行っていたんだね」
「その中でもブラジルに行く人が多くて」
あの国に移住する人達がというのです。
「その人達を乗せてね」
「それでなんだ」
「日本とブラジルを行き来していた」
「そうしていたんだ」
「その為の船だったんだ」
「今はこうして中に色々なレジャー施設があるけれど」
先生は船の中を見回して一緒に歩いている皆にお話します。
「昔はここに一杯人が乗ってね」
「遠路はるばるだね」
「ブラジルまで向かっていたんだ」
「ブラジルまで遠いけれど」
「そうしてたんだ」
「そうだよ、これも歴史だよ」
先生は笑顔で言いました。
「ブラジルの日系人の人達は有名だけれどね」
「物凄く頑張って働いてだったね」
ジップがここで言いました。
「向こうの人達に驚かれたんだったね」
「こんな立派な人達がいるなんて、って」
チーチーもこう言いました。
「荒地もあっという間に豊かな畑にしたから」
「移民した先でも日本人は勤勉で」
ホワイティは感心している口調です。
「頑張っていたんだね」
「それはブラジルでもそうで」
ガブガブがここで出すものはといいますと。
「コーヒー豆とかも作っていたんだよね」
「その他のものも作ってね」
老馬はガブガブに続きました。
「それで他のお仕事でも頑張ったんだったね」
「必死に努力して頑張る」
「日本人の長所だけれど」
チープサイドの家族もお話します。
「それがブラジルでも発揮されて」
「凄く評価されたんだったね」
「オリンピックの開会式でも出てたわね」
ダブダブはこの時のことを思いだしました。
「リオデジャネイロの」
「そうそう、ブラジルの歴史の一ページにもなっている」
ポリネシアの口調はしみじみとしたものでした。
「日系人の人達の頑張りは」
「それだけ凄かったんだね」
トートーは感心した様に言いました。
「オリンピックでも出る位に」
「確かに日本人にはおかしな学者さんやマスコミの人達が多いけれど」
それでもとです、先生は言いました。
「けれどね」
「それでもだよね」
「多くの人達はそうした人達で」
「いつも頑張ってね」
「素晴らしいものを生み出しているね」
「そうだよ、そうした人達は悪い意味で特別だよ」
おかしな学者さんやマスコミの人達はというのです。
「何の努力もしないで何の責任も取らないで偉そうに言うだけだから」
「そうした人達だよね」
「本当にね」
「そんな人達は例外だよね」
「テレビのコメンテーターとかね」
「もう何かあると日本や日本人の悪口を言う歴史学者もいるけれど」
そうした人もいるというのです。
「こうした人が国立大学の教授だったりするよ」
「国立大学って国家予算から運営されているよね」
「日本人の税金で」
「それで日本や日本人の悪口言うんだ」
「悪口言うのはいいけれど」
「税金でお金貰ってそれってね」
「間違ってるね、そんなに日本と日本人が嫌いなら」
先生は言いました。
「最低限でもね」
「大学辞めないとね」
「それで税金のお世話にならない」
「そうして暮らさないとね」
「それが普通だよね」
「人の筋よ」
「そう思うよ、僕でもね」
先生でもというのです。
「そうした人達こそが問題だよ」
「日本においてね」
「おかしなことばかり言う学者さんやマスコミの人達」
「そうした人達こそがね」
「こうした人と真逆の差別的な人達もいるけれど」
先生はこうした人達についても否定的に思うのでした。
「けれどね」
「それでもだよね」
「そうした人達こそ問題だね」
「日本において」
「本当におかしいよ」
「こうした人達が労働組合や学校の先生に多いのがね」
このことがというのです。
「日本の問題点だよ」
「そうだよね」
「そうした人達ってね」
「困ったことばかりするから」
「本当に」
「何しろ日本は嫌いで北朝鮮が好きらしいから」
あの究極の独裁国家をというのです。
「おかしなことだよ」
「あの国は問題外だよ」
「完全にならず者じゃない」
「共産主義なのに世襲で」
「軍隊ばかりに力を入れていて」
「核兵器や化学兵器を開発していて」
「国民の人達は餓えているから」
動物の皆も言います。
「あんな酷い国ないわよ」
「そんな国より今の日本の方がずっといいよ」
「どう考えても」
「昔の日本もね」
「だからおかしいんだ」
先生もこう言うのです。
「僕が見てもね、けれど多くの日本人は違っていて」
「移民先でも頑張っていて」
「それでだね」
「とても素晴らしいことをした」
「そうなのね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「本当に素晴らしいよ」
「全くだね」
「この船にも乗ってブラジルまで行って頑張っていたとか」
「素晴らしいよ」
「それも歴史だよ」
「その歴史を学びたくてね」
そう考えてというのです。
「この船に来たんだ」
「先生らしいね」
「生きものの調査の中でも他の学問も忘れない」
「宗教や歴史についても」
「そこが先生ね」
「そこまで考えることが」
「うん、そしてね」
それでというのです。
「今はこの船は役目を終えてね」
「ここで静かに停泊して」
「それで休んでいるのね」
「多くの人達を運び終えて」
「そのうえで」
「そうだよ、そしてこの海にいて」
鳥羽の海にというのです。
「皆を見守っているんだ」
「そう思うと凄いね」
「偉大なお仕事を終えて今は僕達を見守ってくれている」
「そうした船だって思うと」
「そうだね、じゃあこの船を見て」
そしてというのです。
「それからホテルに帰って」
「そしてだね」
「そのうえでよね」
「ホテルに戻って」
「また美味しいものを食べましょう」
「そして飲みましょう」
「是非ね」
笑顔でこう言ってでした。
先生は皆と一緒に船の中をさらに見て回ってでした。
それからホテルに戻ってまずはお風呂に入りましたが。
先生は湯舟の中でこんなことを言いました。
「日の出からずっと調査して歩いているとね」
「夕方からね」
「船にも乗って」
「そうしているとね」
「色々身体を動かしてるから」
「それでだね」
「お風呂が凄くいいよ」
入るととても気持ちいいというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「一日のお仕事を終えてお風呂に入ると」
「本当にいいね」
「一日の疲れが取れて」
「それですっきりするね」
「そうだよね」
動物の皆も湯舟の中にいます、そこで言うのでした。
「身体を洗えて」
「そして湯舟で疲れを癒せて」
「お風呂って本当にいいよね」
「一日の疲れが取れるわ」
「全くだね、毎日入ってもね」
そうしてもというのです。
「僕はいいね」
「そうだね、あとイギリスだと泡は拭いて終わりだけれど」
「泡はシャワーで洗い落とさずに」
「そうするけれど」
「日本は洗い落とすね」
「絶対に」
「こんなお話があるんだ」
ここで先生はこんなお話をしました。
「長嶋さんいるね」
「ああ、長嶋茂雄さん」
「野球選手だったね」
「監督でもあったね」
「あの人だね」
「あの人間違えてシャンプーを一本全部使って」
頭を洗う時にというのです。
「それで何度洗い落としても残ったんだ」
「シャンプー一本だとね」
「あの人らしいミスかしら」
「あの人色々なお話があるけれど」
「もう何かと」
「それでそうしたこともしたんだ」
「そう、そしてもう幾ら洗い落としても洗い落とせなくて」
シャンプーの泡がです。
「もういいやってなってね」
「そのまま湯舟に入った」
「そうしたんだ」
「あの人ならやるね」
「というかあの人らしいわ」
「如何にもしそうだね」
「それで湯舟を泡だらけにしたんだ」
こうしたことがあったというのです。
「こうしたお話があることもね」
「日本は泡を洗い落とす」
「その考えがあるから」
「だからだね」
「そうしたこともあったんだ」
「湯舟に入ることが普通ということもあるけれど」
それだけでなくというのです。
「こうした考えもあるんだ」
「成程ね」
「そういうことだね」
「そうしたこともあるから」
「それでなのね」
「こうしたお話もあったんだ」
長嶋さんにというのです。
「そうした前提があってね」
「そうだね」
「日本だと泡は洗い落とす」
「それは絶対のことだから」
「拭いて終わりじゃないから」
「それで」
「そう、だからね」
それでというのです。
「イギリスとはそこが違うね」
「そしてこのこと知ってる人少ないよね」
「日本だと」
「これがね」
「そうなんだよね、これはね」
先生はさらにお話しました。
「お水が関係しているよ」
「そうそう」
「イギリスは食器洗っても泡は拭いて終わり」
「洗い落とさないね」
「これも日本じゃ想像出来なくて」
「何でってなるけれど」
「これもお水の関係だよ」
これの為だというのです。
「やっぱりね」
「そうだよね」
「日本は軟水でね」
「イギリスは硬水で」
「同じお水でも質が違うから」
「どうしてもね」
「そこがね」
実際にというのです。
「違うからね」
「あまり硬水ってお肌によくないし」
「それがあるから」
「食器洗いの時もそうで」
「何かとね」
「だからだからね」
それでというのです。
「そこが違うね、今僕達が入っているお湯も」
「軟水だね」
「やっぱり違うわ」
「イギリスのお水と」
「何かとね」
「そう、紅茶でもそうだしね」
先生が大好きで毎日飲んでいるこのお茶もです。
「軟水と硬水だとね」
「これが全然違うわ」
「同じ葉を使っていても」
「同じ種類のパックで飲んでも」
「硬水と軟水で味が違うから」
「イギリスのお水と日本のお水だと」
「どうしてもね」
先生はこう言いました。
「違うね」
「お水も違えば」
「それで全く違うね」
「味も飲み心地も」
「本当に」
「だからだよ」
それでというのです。
「そこをわかってね」
「それでだよね」
「紅茶も飲んでいるし」
「お風呂だってそうで」
「食器洗いもだね」
「そこが違うからね、お水がいいことはね」
このことはというのです。
「それだけで素晴らしいことだよ」
「住むにあたって」
「それで日本にいるとね」
「日本にいると実感するね」
「お水のよさについても」
「そのことについても」
「全くだよ、イギリスでの生活もよかったけれど」
生まれ故郷であるあの国のそれもというのです。
「僕としては日本にいて」
「すっかり馴染んで」
「それでよね」
「お水のこともね」
「よくなったね」
「最高だとね」
ここまでというのです。
「思っているよ」
「もう日本にずっといたい」
「そこまで馴染んだね」
「国籍もこちらになったし」
「日本にね」
「だから余計にだね」
「そうなったよ」
心からの言葉でした。
「僕はね」
「そうだね」
「それでお刺身も大好きになったし」
「日本酒も飲んで」
「そして他の食べものも好きになったね」
「そうなったわね」
「うん、だからお風呂も楽しんで」
そしてというのです。
「その後はね」
「晩ご飯だね」
「晩ご飯楽しもう」
「是非ね」
「そうしよう」
こう言ってでした。
先生達は皆とお風呂を楽しんでそうしてから晩ご飯となりました。今晩は貝柱や鳥貝、赤貝や海胆のお造りで。
お豆腐料理が多かったです、先生は貝類のお刺身とお豆腐を見て笑顔になりました。
「今晩も美味しそうだね」
「そうだね」
「じゃあ今晩も楽しもう」
「このお刺身を」
「そうしようね」
動物の皆も笑顔で先生に応えます、そうして今晩も日本のお料理を楽しむのでした。