『ドリトル先生と不思議な蛸』
第四幕 赤い蛸だけが
浅瀬を調べてお昼に鰯を食べた次の日はです、先生は少し海に出てダイバーの人に海底を調べてもらいました。
そしてダイバーの人が船に上がった時に尋ねました。
「どんな蛸がいました?」
「マダコとかばかりですね」
ダイバーの人は先生にゴーグルとシュノーケルを外してから答えました。
「赤くない蛸はです」
「いないですか」
「はい」
そうだというのです。
「色々な生きものがいますが」
「それでもですね」
「はい」
そうだというのです。
「これといってです」
「赤くない蛸は、ですね」
「いませんでした、ただ」
「ただといいますと」
「とても美味しいお魚がいました」
ダイバーの人は先生に笑顔でお話しました。
「もうこれはです」
「食べないとですか」
「勿体ない位ですよ」
「そのお魚は何ですか?」
「オコゼです」
ダイバーさんは先生に笑顔で答えました。
「オニオコゼです」
「あのオコゼですか」
「かなり大きいですよ」
「ではそのオコゼを」
「皆で食べませんか」
こう先生に提案しました。
「これから」
「はい、ただオコゼは」
「鰭に毒がありますね」
「大丈夫ですか?それに捌き方も」
「そちらは任せて下さい」
ダイバーさんは先生に笑顔で答えました、四十五歳位の屈託のない笑顔の少し小柄は男の人で体格は引き締まっています。
「そうしたこともです」
「出来ますか」
「はい、漁師ですから」
「だからですか」
「そちらは任せて下さい」
「それでは」
「今から捕まえてきます」
そのオニオコゼをというのです、そしてです。
ダイバーさんはオニオコゼを捕まえて早速捌いてです。
お刺身そしてお吸いものにしました、他には蛸や烏賊のお刺身や姿焼きもあります。そうしたものをです。
先生は皆と一緒に食べはじめました、動物の皆はオニオコゼのお刺身を食べると皆驚いて言いました。
「美味しいね」
「そうよね」
「オニオコゼって」
「捕まえたの見たら物凄く怖いのに」
「岩みたいでね」
「それで毒もあるっていうのに」
「物凄く美味しいわ」
こう言うのでした。
「こんなに美味しいなんて」
「お刺身も美味しくて」
「お吸いものも素敵な味で」
「こんなに美味しいんだ」
「あんな怖そうなのに」
「うん、確かに美味しいね」
先生もオニオコゼのお刺身を食べつつ言います。
「オニオコゼは。お話には聞いていたけれど」
「そうだよね」
「こんなに美味しいなんて」
「河豚や鮟鱇も美味しいけれど」
「オニオコゼもなんだ」
「そうだね、ただね」
先生は皆にお話しました。
「毒があることはお話したね」
「うん、さっきね」
「鰭に毒があるんだよね」
「だから危ないって」
「そう言っていたね」
「それは強い毒でね、鰭に毒針みたいなのが沢山あって」
それでというのです。
「迂闊に触ると物凄く痛いんだ」
「そうなんだね」
「だから注意が必要なんだ」
「捕まえる時は」
「そうだよ、普通に潜っていてもね」
ダイバーの人達がです。
「そうしてもね」
「岩みたいな外見だから」
「色だってそうだし」
「岩と思って触って」
「刺されるのね」
「そうした事故もあるから」
実際にというのです。
「注意が必要だよ、けれどこの味だからね」
「有名なのね」
「怖い外見で毒もあるけれど」
「物凄く美味しいって」
「それで有名なんだ」
「そうなんだ、毒があってもね」
それで危険でもというのです。
「美味しいんだ」
「そう言うと河豚と同じだね」
老馬が言ってきました。
「河豚も毒があるし」
「河豚は刺さないけれどね」
トートーが老馬に答えました。
「毒があるのは同じだね」
「まあ河豚の毒は物凄く強くて」
ジップはその河豚の毒のお話をしました。
「当たったらもう普通に命が危ないけれどね」
「オニオコゼの毒はそこまで強くないみたいだね」
「命を落とすまではね」
チープサイドの家族はこうお話しました。
「どうやら」
「そうだね」
「けれど毒があるのは同じね」
ダブダブはしっかりした声で言いました。
「食べてあたるか刺されるかの違いでも」
「正直どっちも嫌だよ」
ガブガブは本音を出しました。
「僕は毒は嫌だよ」
「嫌も嫌どころかね」
「あたることも刺されることも絶対に嫌だよ」
オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「安全第一だよ」
「何につけてもね」
「けれど河豚はとても美味しいし」
ホワイティも大好きです。
「それでこのオニオコゼもだね」
「毒があるお魚は実は美味しいとかあるのかしら」
ポリネシアはこう言って首を傾げさせました。
「ひょっとして」
「それがあるかも知れないね」
チーチーも言いました。
「怖い外見だとかも知れないけれど」
「うん、どうもね」
先生も食べながら言いました。
「怖かったりね」
「毒があったら」
「そうしたお魚はかえって美味しい」
「そうなんだね」
「これが」
「その法則はあるかもね、鮟鱇だってね」
このお魚もというのです。
「物凄く美味しいしね」
「そうそう、お鍋とか唐揚げにしたらね」
「かなりの味だよ」
「毒はないけれど」
「それでも怖い外見だね」
「そうしたお魚でも」
それでもというのです。
「美味しいし」
「それでだね」
「オニオコゼも美味しいんだ」
「怖い外見でも」
「毒があっても」
「そうだね、思えば蛸や烏賊もね」
この海の生きもの達もというのです。
「イギリスでは怖がられるだけだからね」
「うん、悪魔とか言われて」
「妖怪扱いだしね」
「食べられるって言われても」
「信じない位だったよ」
「それでも食べたらね」
その蛸や烏賊をです。
「美味しいね」
「そうなんだんだよね」
「今食べている蛸のお刺身も烏賊の姿焼きも美味しいよ」
「というかこんなに美味しいなんてね」
「嘘みたいだよ」
「そうだね、怖い外見の海の幸は」
そして毒があるものもです。
「美味しいものが多いね」
「そうだね」
「じゃあ今はオニオコゼを食べて」
「蛸や烏賊を食べて」
「それで楽しもう」
「そうしようね」
こう皆とお話しているとです。
一緒に食べているダイバーさんが先生に聞いてきました、その聞いてきたことは一体何かといいますと。
「先生のことは聞いていましたが」
「何でしょうか」
「動物とお話が出来るんですね、本当に」
「はい、彼等の言葉を学びまして」
「そこのオウムからですね」
「そうです、ポリネシアからです」
その彼女を見て答えました。
「聞きまして」
「それで、ですね」
「様々な生きものの言葉を聞けます」
「そうなんですね」
「ですから」
それでというのです。
「お話が出来ます」
「左様ですか」
「今彼等の言葉を言語にしようともです」
「お考えですか」
「アルファベットですが」
その言葉でというのです。
「そちらで」
「それは凄いことですね」
「まだ考えている最中ですが」
「ですが是非です」
ダイバーさんは言いました。
「実現すべきですね」
「そう言って頂けますか」
「はい、そうしていきましょう」
「では」
「それとですが」
ダイバーさんは先生にさらにお話しました。
「今回烏賊は姿焼きにしましたが」
「はい、虫ですね」
「獲れたてだったので」
そうした烏賊だったからだというのです。
「寄生虫が怖いので」
「焼いたのですね」
「そうしました」
「そうしないといけないですね」
「若しです」
ダイバーさんは先生に言いました。
「獲れだての烏賊を生で食べますと」
「怖いですからね」
「寄生虫が」
だからだというのです。
「焼きました」
「左様ですね」
先生がダイバーさんとお話するとでした、動物の皆は先生に対して言いました。
「烏賊にも寄生虫いるんだ」
「そうなの」
「海の生きものだからいないと思っていたけれど」
「いるんだ、烏賊には」
「そうなの」
「そうだよ、アニサキスといってね」
先生は皆にお話しました。
「いるからね、冷凍したらいいけれど」
「それで寄生虫が死ぬから」
「それでだね」
「冷凍したらね」
「もうそれで大丈夫だけれど」
「獲れたての生だといるから」
そのままだというのです。
「いるからね」
「だからだね」
「焼いて寄生虫を殺して食べる」
「それで今は姿焼きなんだ」
「そうしているのね」
「そうなんだ、烏賊はそこがね」
本当にというのです。
「問題なんだよ」
「うん、烏賊に寄生虫がいるなんて」
「そんなのあったの」
「いや、まさかと思ったけれど」
「しかも結構怖いみたいだし」
「そこは気をつけてだね」
「食べることだよ、本当にイギリスでは烏賊を食べないから」
蛸も然りです。
「そのことも知られていないね」
「そうだよね」
「というか烏賊をお刺身で食べることもね」
「それもしないしね」
「僕達も烏賊について知らなかったよ」
「正直いい勉強になったわ」
「そうだね、僕もその身で知ったのは日本に来てからだから」
烏賊に寄生虫がいて気をつけないといけないことはです。
「本で得る知識だけじゃなくてね」
「僕達もだよ」
「食べないとわからないことがあるね」
「烏賊についても」
「他の生きものと同じで」
「その通りだよ、烏賊は美味くて色々なお料理に使えるけれど」
それでもというのです。
「そのことには気をつけないとね」
「そうだね」
「寄生虫がことはね」
「川魚はよく言われるけれど」
「海の方もなんだ」
「そうした生きるものもいるのね」
「そうだよ、しかしね」
ここでまた言った先生でした。
「ここにいると海の幸に困らないね」
「それは事実だね」
「伊勢海老に栄螺に鰯に」
「そしてオニオコゼに烏賊や蛸」
「凄く色々あってね」
「困らないね」
「そうです、お陰でですよ」
ダイバーさんも言ってきました。
「毎晩飲むにはです」
「肴に困らないですか」
「昨日は烏賊今日はキスとか」
そういった風にというのです。
「困らないです、それに最近は」
「最近といいますと」
「鯨も食べています」
「鯨ですか」
「捕鯨も普通に出来る様になったので」
日本がというのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「この前鯨のベーコンとさらし鯨をです」
「それはいいですね」
「先生は鯨も」
「はい、食べます」
先生はダイバーさんににこりと笑って答えました。
「揚げたものもお刺身もステーキも」
「そうなのですか」
「よく捕鯨反対を言う人がいますね」
「外国には」
「僕は捕鯨は必要ともです」
「お考えですか」
「鯨も増え過ぎますと」
そうなったらというのです。
「生態系に影響が出ますので」
「だからですか」
「はい」
それでというのです。
「生態系を維持する為に。それに捕鯨も文化ですから」
「いいというのですね」
「はい、むしろ環境や生態系を無視した極端な運動は」
「よくないですか」
「捕鯨に反対するにしても」
そうだというのです。
「ですから」
「捕鯨は賛成で」
「鯨も食べます」
「そうしたお考えですか」
「そもそも白鯨という小説がありますね」
「ああ、アメリカの小説ですね」
「ハーマン=メルヴィルの」
ダイバーさんも知っています。
「子供の頃映画を観ました」
「それでご存知でしたか」
「モビーディッグが凄かったですね、私が観た映画では倒していないですが」
「そのまま帰っていますか」
「何か小説では違うんですね」
「はい、戦って」
そのモビーディッグとです。
「主人公以外は全滅という」
「そうした展開ですね」
「そうでした」
「私もそれは知っていましたが」
「それでもですか」
「小説は読んでいないので」
それでというのです。
「そちらは何も言えないですが」
「それでもですね」
「知ってはいます」
「小説の方の結末は」
「そうです、ですが」
「それでもですか」
「捕鯨は確かにしていましたね」
ダイバーさんも言いました。
「日本以外の国も」
「そうでしたね」
「しかもお肉を食べていませんね」
「そうでした」
実際にとです、先生も答えました。
「目的は鯨油でした」
「鯨の油ですね」
「あれを夜の灯りの燃料に使っていたので」
それでというのです。
「それを手に入れる為にです」
「捕鯨をしていましたね」
「そうでした」
「日本ではもうです」
「鯨のあらゆる部分を使っていましたね」
「もうその全てをです」
こう先生にお話します。
「使います」
「無駄なくですね」
「昔は鯨を捕まえた漁村は一年楽に暮らせました」
そうすることが出来たというのです。
「それ程でした」
「そうですね、無駄なく使うので」
「だからですね」
「そうでしたが」
「白鯨の頃の欧州やアメリカは」
「鯨油だけだったので」
それだけを採っていてというのです。
「思いますに」
「無駄が多いですね」
「全く以て」
先生はダイバーさんに答えました。
「元々ペリー提督もです」
「あの黒船の」
「捕鯨の基地が欲しくてです」
その為にだったのです。
「日本に来ています」
「そうでしたね」
「そうしたことを見ますと」
「捕鯨反対については」
「僕は賛成出来ませんでしたし」
「今もですね」
「はい、それが乱獲にならなければ」
それ位ならというのです。
「構いません、そして僕自身です」
「鯨をですね」
「食べます」
そうしているというのです。
「特にベーコンが好きで」
「ああ、鯨のベーコンですね」
「あれは美味しいですね」
「あの美味しさをご存知とは」
「いや、和食はこのこともです」
鯨料理もというのです。
「非常にです」
「お好きですか」
「はい」
そうだというのです。
「僕は」
「それは何よりですね」
「そう言って頂けますか」
「兎角外国の人はです」
ダイバーさんは先生にこうも言いました。
「鯨については」
「食べないですね」
「食べないどころかです」
「捕鯨反対ですね」
「そう言われて」
それでというのです。
「もう意固地に反対するので」
「その意固地は学問としてはです」
「よくないですか」
「はい」
先生は一言で答えました。
「もう何よりもです」
「いけないことですか」
「意固地になりそのことに凝り固まれば」
そうなってしまえばというのです。
「学問は止まり歪んでしまいます」
「捕鯨についても」
「過去に欧州各国もアメリカも捕鯨をしていました」
「その白鯨ですね」
「そして鯨も増え過ぎるとです」
海にそうなってしまうと、というのです。
「かえってです」
「生態系が崩れてですね」
「よくないです、鯨は身体が大きい種類が多いので」
「よく食べますね」
「大型の哺乳類でしかも常に身体を動かしています」
「多く食べる要素が揃っていて」
「本当によく食べます」
鯨はというのです。
「それが魚類でもオキアミでもです」
「かなり食べるので」
「あまり増え過ぎますと」
食べ過ぎてというのです。
「海の生態系がおかしくなります」
「あまり特定の生きものばかり保護してもですね」
「よくないです」
先生は穏やかですが確かな声で言いました。
「ですから」
「捕鯨もですね」
「必要でして」
それでというのです。
「鯨を食べることもです」
「いいことですか」
「日本の貴重な食文化の一つですから」
それだけにというのです。
「守られるべきで今以上にです」
「食べていいですか」
「僕はそう思います」
「そう言って頂けるとは」
「いや、鯨もこれで食べてみますと」
先生はにこりと笑ってこうも言いました。
「実際に美味しいですよね」
「そうですよね」
「はい、非常に」
「先生はベーコンがお好きですね」
「僕は最初ベーコンといえばです」
その名前の食べものならというのです。
「豚のベーコンを思い出しました」
「ああ、あちらのベーコンですね」
「あのベーコンも美味しいですね」
「そうですね」
「あのベーコンでしたが」
「それがですね」
「鯨のベーコンもです」
こちらのベーコンもというのです。
「今はです」
「かなりお好きですか」
「はい、残念ですがまだ高くて」
先生はこのことは残念そうにお話しました。
「それで、です」
「あまりですか」
「食べられませんが」
「それでもですね」
「食べられる時はです」
まさにその時はというのです。
「食べてそしてお酒の肴にもです」
「されていますか」
「そうしています、お酒の肴にもいいですね」
「そうですね」
「ですから」
「食べられる時はですね」
「楽しんでいます」
こう言ってでした。
先生はです、こうも言いました。
「これからは鯨を今以上にです」
「食べられるとですね」
「いいと思います」
「そう言ってくれますか」
「そうです、そしてです」
「そうしてですね」
「僕も楽しませてもらいます」
鯨料理をというのです。
「そうさせてもらいます」
「いいですね、じゃあその時は」
「お互いにですね」
「鯨を食べて楽しみましょう」
「そうしましょう」
先生はダイバーさんと笑顔でお話しました、そうしてです。
今は一緒にオニオコゼや蛸や烏賊を食べました、そうしてからダイバーさんに海の調査を行ってもらいました。
ですが夕方まで結局見付からないで、です。先生達は湊に帰ってこの日の調査は終わりました。そしてです。
先生はホテルの和風のお部屋先生が動物の皆と泊まっているそこで皆に晩ご飯を食べながらお話しました。
「今日もその蛸は見付からなかったね」
「赤くない蛸ね」
「確かにいなかったね」
「赤くない蛸なんて珍しいしね」
「いたらすぐに見付かるのに」
「いないね」
「確かに赤くない蛸は滅多にいないよ」
先生も皆に答えます。
「そのことは事実だよ」
「そうだよね」
「蛸は赤いってもう決まってる様なものだし」
「そのことを考えるとね」
「もう赤くない蛸なんていたら」
「物凄く目立って」
「すぐに見付かるよ」
皆も言います。
「やっぱりね」
「どう考えてもそうなるから」
「それでいないってなると」
「やっぱりね」
「そうそういないってことね」
「その蛸は実際個体数が少ないんだ」
先生もそうだと言います。
「日本でもね、目撃例はあっても」
「数が少なくて」
「元々いないの」
「そうは簡単に見付からない」
「そうした蛸なのね」
「そうなんだ」
実際にというのです。
「だから僕達も腰を据えて探そうね」
「期日までだね」
「休日も入っているけれど」
「それでもだね」
「じっくりと腰を据えて探す」
「そうしていくのね」
「そうしていこうね、あと休日にはね」
先生はこの日のこともお話しました。
「伊勢神宮に行こうね」
「あの神社に行くんだ」
「伊勢神宮に」
「それでお参りをして」
「中を見て回るんだね」
「そうしようね、是非ね」
もう先生は完全にそうするつもりでした、休日には伊勢神宮に行ってお参りしようということを決めています。
「これからは」
「そのことも楽しみだね」
「あちらも凄いみたいだし」
「何しろ日本第一の大社で」
「そこにもお参りして」
「それで学問をするのね」
「そうするつもりだよ」
先生は皆に笑顔で答えました。
「休日はね」
「いいね、じゃあね」
「その時はね」
「それじゃあ普段は調査と論文の執筆に励んで」
「そしてね」
「そうしようね、そして今はね」
先生は今度は晩ご飯を見ました、今日もお造りが中心にあって奇麗に舟の上に置かれています。そして色々な魚介類とお野菜のお料理があります。
そのお料理の中心のお造りを見ながら言うのでした。
「今夜も楽しもうね」
「ご馳走にお酒をね」
「どちらも楽しむのね」
「お刺身食べて」
「そしてお野菜もね」
「お野菜もいいね、海のものを食べて」
そうしてというのです。
「こうしてね」
「お野菜も沢山食べる」
「そうすれば栄養バランスもいいし」
「健康になるね」
「何も悪いことはないよ」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「今日も飲んで食べようね」
「それで先生今日のお酒は白ワインだね」
「昨夜は日本酒だったけれど」
「今日はそちらだね」
「お酒は洋風ね」
「うん、魚介類に合うワインはこれだけれど」
白ワインだというのです。
「日本酒とは趣向を変えてね」
「今夜は白ワイン」
「そっちにしたんだ」
「それでお刺身を食べて白ワインを飲む」
「そうするんだ」
「そうだよ、心ゆくまで飲むよ」
その白ワインをというのです。
「是非ね」
「それじゃあね」
「今から飲んで食べて」
「本格的に楽しもう」
「そうしましょう」
「うん、皆でそうしよう」
こう言ってでした、先生はグラスの白ワインを飲みつつ皆と楽しくお話をしました。そしてお料理をあらかた食べてお酒もボトル二本程空けてです。
先生にです、動物の皆はこんなことを言いました。
「ちょっとお外に出てみる?」
「それで夜の海を見ない?」
「そうしたらどうかな」
「今からね」
「そうだね、いいね」
先生もお酒の残りを飲み干してから皆に答えました。
「それじゃあお風呂に入る前にね」
「それまでにね」
「ちょっとお外歩こう」
「そうしよう」
「これからね」
皆でお話してです、先生は皆と一緒にホテルを出て鳥羽の海辺に出ました、夜の灯りが見えるその中で、です。
海辺に出て海を見ます、海は暗がりの中で何も見えず波音だけが聞こえます。ですが先生は微笑んで言いました。
「こうした海もいいね」
「うん、独特の風情があるよね」
トートーが答えました。
「夜の海も」
「暗闇の中に波音が聞こえて」
ポリネシアはその波音を音楽と感じています。
「周りに夜の街の灯りも見えて」
「これもいいものだね」
「お昼の海もいいけれど」
チープサイドの家族も波音を聞いています。
「夜の海も風情があって」
「いいね」
「私達が今住んでいる神戸も海の街だけれど」
ダブダブも言います。
「鳥羽はまた違うわね」
「同じ海の街でも違うんだよね」
ホワイティは神戸と鳥羽を比較して言いました。
「やっぱり」
「同じ日本の海の街でも」
チーチーは周りを見回しています、興味深そうに。
「場所によって違うね」
「夜の中でも鳥羽の街の形まで見えてね」
「夜の灯りでそれがわかってね」
オシツオサレツも見ています、その二つの頭で。
「灯りの中にある生活も感じられて」
「鳥羽の夜の中にいるんだって思うね」
「出て見てよかったね」
老馬も先生に言いました。
「そうして」
「そうだね、皆でここに来てよかったよ」
ジップも言います。
「独特の風情があって」
「詩的っていうのかな」
ガブガブは珍しく食べること以外に興味を出しています。
「こうした景色って」
「うん、詩的だね」
先生もガブガブに答えました。
「確かに」
「そうだよね」
「ガブガブの言う通りだね」
「ここは随分詩的よ」
「独特の風情があって」
「とてもいい感じだよ」
「うん、ただ夜の海はね」
波音だけが聞こえるその暗闇の場所はといいますと。
「絶対に入ったら駄目だよ」
「海はただでさえ危ないのにね」
「全く見えないなら余計にだね」
「夜行性の危険な生きものも多いし」
「そう考えるとね」
「夜の海には入ったらいけないよ」
そうだというのです。
「本当にね、鮫も基本夜行性だしね」
「実は鮫ってお昼はあまり行動しないんだったね」
「いつも泳いでいるお魚だけれど」
「夜の方が動きは活発で」
「その時間に襲って来る方が多いんだったね」
「そう、お昼は襲って来なくても」
その時間はというのです。
「夜になるとね」
「襲って来る」
「それが鮫だね」
「だからだね」
「夜の海は鮫のことでも危ないから」
「入ったらいけないね」
「泳いだりしたら」
「命も危ないかも知れないよ」
そこまで危険だというのです。
「だから自衛隊も夜は水中での訓練は行わないよ」
「あまりにも危険だから」
「それでよね」
「確かに海の中での訓練も大事だけれど」
「海上自衛隊は特に」
「けれど見えない夜の中でのそれは危険だから」
「しないのね」
「まずね、本当に危ないから」
それでというのです。
「しないよ」
「訓練で命を落としたら何にもならないからね」
「生きる為の訓練だから」
「命を捨ててもいい訓練なんてね」
「今はそうそうないね」
「だからだよ」
それでというのです。
「夜にお水の中に入る訓練はそうはないよ」
「海の中でも」
「そうだよね」
「流石にね」
「それはないね」
「僕の知る限りではね、そこまで夜の海は危ないから」
自衛隊でも訓練をしないまでにです。
「迂闊に入ったら駄目だよ」
「見ているだけだね」
「あくまで」
「まして先生泳げないし」
「それにお酒もかなり飲んでるし」
「絶対に入ったら駄目だね」
「うん、何があってもしないよ」
こう言うのでした。
「僕はね」
「それがいいね」
「そんなことしたら折角の浴衣が濡れるし」
「したらいけないね」
「僕達もしないから」
「そういうことでね、じゃあ帰ろうね」
ホテルにというのです。
「そうしようね」
「それでお風呂に入って」
「すっきりするんだね」
「それで寝るんだね」
「そうするのね」
「そうするよ」
こう言ってでした、先生はホテルに帰ってまたお風呂に入ってすっきりしました。夜の海までお散歩をしてお酒が少し抜けたところで、です。
お風呂にも入ってお酒がかなり抜けて気分よく寝られる様になって先生は朝早く起きると日の出と共にです。
調査をはじめました、今日は前回とは別の浅瀬で蛸を探してその場所の生態系も調査します。ですが赤い蛸はいてもです。
「やっぱりね」
「赤い蛸ばかりでね」
「赤くない蛸になると」
「いないね」
「何処にもね」
「そうだね、ここも自然は豊かだけれど」
それでもというのです。
「その蛸はいないね」
「何かいないね」
「こうなったら蛸壺出す?」
「蛸壺入れたら蛸はそこに入るし」
「それで探す?」
「そうする?」
「そうだね」
少し考えて言う先生でした。
「蛸というとね」
「やっぱりだね」
「蛸は蛸壺だね」
「日本人が考えた最高の蛸の捕まえ方だね」
「壺に入らない蛸はいないから」
「もうそれは蛸の習性だから」
「そうしてみようか、しかしあの捕まえ方は」
蛸を捕まえるそれはです。
「凄いね」
「だからどんな大蛸も怖くないんだ」
「僕達が怖いと思っても」
「それなら大きい蛸壺出して捕まえるって軽く言って」
「次は何人食べられるかなんて言うんだ」
「本当に日本人にとって蛸は食べものだよ」
先生が見てもです。
「それでしかないよ」
「もうどう見てもそうだね」
「烏賊もそうだけれど」
「日本人って蛸イコール食べもので」
「怖いと思わなくて」
「蛸壺出せばいいだからね」
「そしてその蛸壺をね」
まさにそれをというのです。
「これからはね」
「使っていくんだ」
「それで赤くない蛸を探すんだ」
「これからは」
「それも使うんだ」
「うん、あと蛸漁をしている人にもお願いをして」
そうした漁師さんにもというのです。
「若し赤くない蛸が見付かったら」
「その時はだね」
「知らせてもらう」
「そうするんだ」
「そうして探していくんだ」
「兎に角個体数は少ないから」
このことがあるからだというのです。
「それでね」
「やっていくんだ」
「そうするんだね」
「今回は」
「そうだね」
「是非ね」
皆にこうお話しながらでした、先生はこれからは漁師さんにもお願いするのでした。そうしてです。
この日の午前中はその浅瀬を探しましたが色々な生きものがいてもその蛸はいませんでした。午後はレポートを書きましたが。
三時のティーセット、和風のそれの中でお抹茶をお団子と羊羹して赤福餅を食べながら先生は皆に言いました。
「しかしね」
「しかし?」
「しかしっていうと」
「どうしたのかな」
「今は論文書いてるけれど」
「この赤福餅がね」
これがというのです。
「本当に美味しいね」
「ああ、赤福餅だね」
「噂通りの味だね」
「これはいけるよ」
「この味はね」
「こし餡とお餅が程よくあって」
「最高だね、だからね」
それでというのです。
「明日も食べたいね」
「ああ、いいね」
「明日も赤福食べたいね」
「じゃあデザートに食べる?」
「その時に」
「そうしようね、お抹茶もね」
お茶も飲みつつ言うのでした。
「いいね」
「そうだよね」
「こちらのお茶もいいね」
「お抹茶は日本でもよく飲むけれど」
「それでもね」
「ここで飲むお抹茶もね」
これもというのです。
「いいね」
「そうだよね」
「お団子も羊羹もいいし」
「それに赤福もあって」
「最高のティーセットだね」
「和風のね」
「そういえばこの辺りも織田信長さんが領地にしたけれど」
先生はここでこの人の名前を出しました。
「この人もお茶が好きだったからね」
「茶道を広めることにも貢献したね」
「天下統一を大きく進めたし」
「そのお茶はお抹茶だったんだよね」
「そうだったわね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「そしてあの人も伊勢にお参りしているよ」
「神仏を全く信じないって言われていたけれど」
「先生いつも言ってるね」
「実はあの人なりに信仰心があって」
「神仏を信じていたって」
「そうだったって」
「うん、だから安土城もね」
このお城もというのです、信長さんが築いたこのお城も。
「様々な宗教が共にあったんだ」
「若し神仏を信じないならね」
「それならだね」
「安土城もそうなっていないね」
「色々な宗教がなかった」
「そうだね」
「そうだったよ」
こう皆にお話しました。
「このことは前にも話したかも知れないけれど」
「そういえばそうかな」
「織田信長さんのこともね」
「あの人も色々なことに関わってるからね」
「日本の歴史の有名人だし」
「先生も色々お話しているね」
「それでお話したかも知れないけれど」
織田信長さんについてです。
「あの人なりの信仰があったんだ、安土城の石垣の墓石やお地蔵さんは結界だったし」
「ああ、その霊力を使ったんだ」
「墓石やお地蔵さんの像にある」
「それで石垣に使って」
「お城の結界にしていたんだ」
「只の石と思わずにね」
そこに霊的な力があると信じてというのです。
「そうだったみたいだしね」
「そういえば実はお寺も焼いていなくてね」
「家臣の人にも寛大で」
「確かに悪人には容赦しなかったけれど」
「善政を敷いていて」
「民には慕われていたね」
「そうだったからね」
信長さんという人はです。
「暴君でもなかったよ」
「そんなイメージあるけれどね」
「残酷で冷酷で」
「そんな人だったけれど」
「実はだね」
「そうだったみたいだよ、あとお酒はね」
こちらはといいますと。
「本当に下戸でね」
「飲まなくて」
「それでだったんだ」
「お茶が好きだった」
「そうだったんだ」
「それで甘いものが好きだったからね」
そうだったというのです。
「実際の信長さんは物語と違ってね」
「伊勢神宮にも参拝していて」
「あの人なりの信仰があった」
「それでその信長さんも行ったところにだね」
「一緒に行くんだね」
「そうしようね」
休日にはとです、こうお話してでした。
先生は皆と一緒に今度は伊勢神宮に行くことにしました、鳥羽での調査の合間にそうしたこともするのでした。