『ドリトル先生と牛女』




                第十二幕  牛女さんのプレゼント

 牛女さんの治療と宴それにお風呂を楽しんで、でした。先生も他の皆もお家に帰って休みました。そして翌朝。
 先生は朝ご飯を食べながら言いました。
「物凄いおもてなしを受けたね」
「本当にね」
「兵庫県の山海の珍味を食べてね」
「最高のお酒も飲んで」
「檜のお風呂にも入って」
「最高だったよ」
「そうだったね、牛女さんの歯も完治したし」
 このこともあってというのです。
「本当によかったよ」
「全くだね」
「しかも僕達今すっきりしているし」
「昨日お酒をかなり飲んだのに」
「それでもね」
「お酒を飲んでもね」
 それでもというのです。
「少し時間をおいてお風呂に入ったからね」
「すっきりしたね」
「お酒が抜けて」
「そうよね」
「そしてお家に帰って経口補給水を飲んだね」
 このこともお話するのでした。
「そうだったね」
「それもよかったんだよね」
「あのお水は身体が疲れている時にいいっていうけれど」
「お酒を飲んだ時もだね」
「いいのね」
「そう、それも飲んだからね」
 このこともあってというのです。
「僕達は今身体がすっきりしているんだ」
「二日酔いじゃなくて」
「普通ならあれだけ飲んだら今頃二日酔いだけれど」
「それがないのね」
「後でお風呂に入ってそのお水も飲んだから」
「そうだよ、それでね」
 だからだというのです。
「すっきりしているんだ、じゃあこのままね」
「すっきりしたままね」
「学校に行って」
「今日も学問ね」
「そちらに励むのね」
「是非ね、それとね」
 先生は朝ご飯のお味噌汁を口にしつつ言います、お豆腐とお葱のお味噌汁がこれまた実に美味しいです。おかずはめざしに納豆、海苔にお漬けものです。
「またサラが来るね」
「はい、来週に」
 トミーが答えました。
「来日されます」
「そうだね」
「ご主人と一緒に」
「いつも通りだね」
「サラさんも楽しみにされています」
「お仕事で来てもだね」
「日本はとても素敵だと言われて」 
 それでというのです。
「いつもです」
「楽しみにしているんだね」
「そうです」
「それは何よりだね」
「日本の食べものも」
「そちらもだね」
「今度は河豚を食べたいと言われています」
 そうだというのです。
「ですから大阪に行かれるとのことです」
「大阪は河豚も有名だしね」
「そうですよね」
「いいと思うよ、有名なお店も多いし」
 先生はトミーに笑顔でお話しました。
「僕もお店を紹介するよ」
「それはいいことですね」
「うん、それじゃあね」
「そうしたお店も紹介しますね」
「河豚も是非食べないとね」
「日本に来たら」
「何度か来ているし」
 それならというのです。
「尚更だよ」
「そうですね、では」
「サラにいいお店を紹介しよう」
「それがいいですね」
 トミーはご飯に納豆をかけながら先生のお話に笑顔で頷きました、そうして朝ご飯を食べてからです。
 皆歯を磨いてそうしてから登校しました、先生はこの日はまず講義を行ってそれから研究室に戻ってです。
 それから今度は論文を書きましたが動物の皆はその先生に言いました。
「牛女さんも言ってたけれど」
「先生恋愛に無縁とかね」
「自分で思い込んでるよ」
「その思い込みは捨てないと」
「そうした方がいいわよ」
「いや、だからいつも言ってるけれど」
 先生は皆に穏やかな口調で答えました。
「本当にだよ」
「恋愛には無縁だね」
「先生は」
「運動神経と恋愛については」
「全く関係がないっていうのね」
「そうだよ。だからね」
 自分ではそうだと思っているからだというのです。
「本当にだよ」
「恋愛には縁がなくて」
「結婚ともそう」
「そう言うのね」
「先生は」
「結局あらゆる言語で考えたよ」
 日笠さんが自分をどう思っているかです。
「けれどね」
「お友達なのね」
「日笠さんは」
「そうなんだね」
「うん、人間の主な言語をあらかた使ったけれど」 
 その思考にです。
「全部結論は同じだったしね、君達それぞれの言語でもお風呂場で考えたけれど」
「答えは同じだったんだ」
「日笠さんはお友達」
「結論はそれだけだったの」
「そうだったよ」
 実際にというのです。
「本当にね、もうこうなったらね」
「結論は全部同じだったから」
「考えるまでもない」
「そうだっていうの」
「本当に同じ人が同じことを考えても」
 それでもというのです。
「結論が違っていたりするけれど」
「この件についてはなの」
「先生は結論が同じだったから」
「それでなの」
「もう考えないの」
「うん、少なくとも当分の間はね」
 暫くはというのです。
「そうするよ」
「やれやれだね」
「本当にね」
 オシツオサレツもこう言うばかりでした。
「先入観や偏見のない先生でも」
「自分自身のこのことについては違うから」
「完全に偏見のない人はいないっていうけれど」 
 ダブダブも言いました。
「先生もそうね」
「何で自分自身のそのことにはそうなのかな」 
 ホワイティも首を傾げさせて言いました。
「本当に」
「このことだけはね」
 ジップもやれやれとなっています。
「どうにもならないね」
「そりゃ自分がもてるとか勝手に思い込むよりはいいけれど」
「それでもよね」
 チープサイドの家族も言いました。
「先生みたいにはじまる前からっていうのは」
「どうにもね」
「僕達もいつも言ってるけれど」
 トートーの口調は困ったものになっています。
「先生最初からそうだって思ったら駄目よ」
「学問にはそれが一番駄目っていつも言ってるのに」
 ポリネシアも言います。
「先生自身にそうってどうなのよ」
「それじゃあ駄目だから」
 老馬も先生に言いました。
「確かに人種や民族や宗教への偏見よりずっとましでもね」
「やっぱり偏見はよくないよ」
 チーチーも言います。
「先生にとっても」
「そう、それだけ損をするからね」
 最後にガブガブが言いました。
「先入観や偏見に凝り固まっていると」
「しかし生まれてからずっと女性に縁がない僕がね」
 プレゼントもラブレターも告白も一切ないからというのです。
「そんなね」
「だから先生の性格だとね」
「紳士で穏やかで公平でね」
「優しくて絶対に怒らない」
「そんな人だから」
「どうかな、僕は本当にね」
 ご自身が思われるにはです。
「もてたことがないからね」
「そうした考えを捨ててね」
「それで周り見てみたら?」
「皆が言う通りにね」
「僕達が言う様に」
「そうしていいのかな、まあそうしようって思ったら」
 その時はというのです。
「やってみるよ」
「それじゃあね」
「そういうことでね」
「そのそうしようっていう時が何時かだけれど」
「それでもね」
「その時が来ればね」
「そういうことでね」
 先生は皆に応えてです、そうしてでした。
 皆が煎れてくれた烏龍茶を飲みました、そうして飲みながら論文を書いてそのうえで、なのでした。
 先生はその烏龍茶についてこうも言いました。
「ううん、このお茶もいいよね」
「烏龍茶もだよね」
「先生好きだね」
「だからこのお茶もだね」
「楽しんだのね」
「そうだよ、それとね」
 さらに言う先生でした。
「お茶を飲むと気分転換になってね」
「しかも目が覚める」
「その効果もあるね」
「お茶は」
「だからいいのよね」
「ビタミンもあるしね」
 栄養もあるからだというのです。
「それでね」
「飲むのならよね」
「お茶がいいのね」
「そうね」
「それじゃあね」
「今もお茶を飲めてよかったよ、ただ」
 こうも言った先生でした。
「僕は最近コーヒーも飲むしお水もね」
「嫌いじゃないよね」
「決して」
「そうよね」
「お水も」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「スーパーやコンビニであるね」
「色々なお水ね」
「あれを飲むのも好きね」
「そうだね」
「しかも色々あるからね」
「そちらも楽しめるよ」
 こう言ってです、先生は烏龍茶をもう一杯のみました、それで皆に対してこんなことも言いました。
「あとコンビニやスーパーに行くとお茶やお水だけじゃないね」
「他にもあるよね」
「ジュースもあるし」
「炭酸飲料もあるし」
「何かとあるね」
「だから何を飲むか悩む時もあるよ」
 コンビニやスーパーに行ったその時にです。
「何を買って飲むかね」
「あるね、そうした時」
「時々でもね」
「飲みたいものが一杯あって」
「それでね」
「そうした時もあるから」
 それでというのです。
「困る時もあるね」
「確かに」
「本当にね」
「ジュースとか炭酸飲料もあって」
「何を飲むかね」
「迷う時があるね、けれど僕は悩んでも」
 それでもというのです。
「それは少しの間で」
「それでだね」
「結論はすぐに出て」
「飲みたいものを飲む」
「そうしてるね」
「僕は長く迷うことはないね」 
 自分自身のこのことも言うのでした。
「どうも」
「そうよね」
「先生の場合は」
「学問でもね」
「迷ってもね」
「その時間は少しね」
「すぐに決めて動かないと危ない時も多かったからね」
 先生が来日するまでの数多くの冒険や旅行ではです。
「その中でね」
「備わってきたね」
「決断の速さも」
「迷わないことも」
「そうよね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「今もね、そうした時もね」
「迷わないね」
「それで決める」
「そうしているね」
「うん、決めて」
 そしてというのです。
「飲みものなら買ってね」
「それで飲む」
「そうしているね」
「いつも」
「コンビニやスーパーでも」
「そうだよ」
 こう言ってまた烏龍茶を飲みます、それからまた論文を書きました。そして今書いている論文を書いてからです。
 今度は牛についての論文を書きますが書きはじめてから皆に言いました。
「いや、今度は牛の論文だけれど」
「どうしたの?」
「牛さんの論文を書いて」
「どうかしたの?」
「牛女さんのことを思い出したよ」
 この人のことをというのです。
「そうなったよ」
「ああ、牛さんだから」
「それでだね」
「成程ね」
「それは当然のことだね」
「うん、それでね」
 さらに言う先生でした。
「牛女さんはお顔を見るとやっぱり和牛だね」
「ホルスタインじゃないね」
「それはわかるよ」
「お顔の模様が違うから」
「それでね」
「よくわかったよ、それとね」 
 さらに言うのでした。
「やっぱりあの人は件と関係があるね」
「あの牛の身体で人の頭の」
「あの妖怪さんとだね」
「関係があるんだね」
「丁度逆だし」
「確かな証拠はないけれど」
 それでもというのです。
「その逆だね」
「そうそう、件と牛女さんはね」
「見事な位ね」
「そうなってるね」
「そうなると」
「関係があると思うのが当然だね」
「だから昔の日本の偉い人達も」
 この人達もというのです。
「牛女さんが予言をすると思ってね」
「それでよね」
「牛女さんを匿っていた」
「そうだったんだね」
「そうだと思うよ、けれど今のところ」
 先生は考えるお顔で言いました。
「牛女さんは予言はしないね」
「というかあの人予言するの?」
「その件みたいに」
「それはどうなの?」
「するの?」
「それがわからないんだ」
 どうにもというのです。
「僕にもね」
「そうなの」
「先生にもわからないの」
「そのことは」
「うん、件と関係があると思うけれど」
 それでもというのです。
「確かな証拠もないしね」
「それでなのね」
「先生もどうとも言えない」
「牛女さんが予言をするかどうか」
「そのことは」
「件は生まれてすぐに予言をするんだ」
 先生はこのこともお話しました。
「それで予言をしたら死ぬんだ」
「もう生まれてすぐに予言をして」
「それで死ぬの」
「そうなるの」
「牛女さんは生まれてすぐに予言をしなかったから匿われていたと思うし」 
 それでというのです。
「今もしていないから」
「じゃあ予言はしないの」
「牛女さんの場合は」
「そうなんだ」
「そうかな、牛女さんは牛女さんという妖怪で」
 それでというのです。
「件と関係があってもね」
「また違うんだね」
「予言はしないかも知れないんだ」
「件と違って」
「そうじゃないかな、あとね」 
 先生は皆にさらにお話しました。
「用件とかくだんの件とか言うね、日本では」
「うん、言うね」
「実際にね」
「結構使う言葉よね」
「そうよね」
「この『件』という文字は『くだん』とも読むんだ」
 こうお話しました。
「そして人に牛と書くね」
「人偏でね」
「そう書くね」
「ってことはだね」
「件って漢字は『くだん』から来たんだ」
「そうだったの」
「そう、どうも件は実在していて」
 そしてというのです。
「それでね」
「漢字にもなっていた」
「そうだったんだ」
「実は」
「うん、第二次世界大戦の時も出て来て」
 そうしてというのです。
「戦争を予言したとも言われているしね」
「ううん、滅多に出なくて」
「知名度はそんなにって思っていたら」
「その実はだね」
「結構有名な妖怪だね」
「そうだよ、件という文字は『くだん』からなってね」 
 先生は皆にお茶を飲みながらお話します。
「使われているんだ」
「じゃあ予言の意味もあるんだね」
「件って言葉には」
「『くだん』が予言するから」
「そうなるんだ」
「そうも考えていいね、『くだん』は結構深い妖怪だね」
 先生はしみじみとして言いました。
「生まれてすぐに死んでしまうことは可哀想だけれど」
「予言してすぐに死ぬことはね」
「確かに可哀想だよね」
「長生きしたいだろうに」
「それが出来ないことは」
「そうも思うよ」
 こう皆にお話しました。
「僕はね」
「そうだね」
「そう思うと牛女さんは戦争前から生きていて」
「今も生きていられるからね」
「幸せだよね」
「そうだね」
「うん、僕もそう思うよ」
 先生は皆にしみじみとした口調でお話しました、そうしてです。
 論文を書いて講義をして学問に励みお食事とお酒、お風呂そして皆と一緒の時間を楽しむ中で数日過ごすと。
 お昼休みに牛女さんがお供の人達を連れてやって来てでした。先生に対してこうしたことを言ってきました。
「今回は歯のこととは別にです」
「来られたのですか」
「はい、お渡ししたいものがありまして」 
 こう先生に言いました。
「まことに」
「といいますと」
「こちらです」
 こう言ってでした、牛女さんが出したものは。
 お守りでした、先生にそれを出して言うのでした。
「これを先生にと思いまして」
「お守りですか」
「はい、神社の」
「そうですね、日本の神社の」
「宜しければ持っていて下さい」
 そのお守りを差し出して先生に言うのでした。
「どうか」
「はい、これは何のお守りでしょうか」
「縁結びのお守りです」
「縁結びのですか」
「はい」
 そうだというのです。
「それをです」
「持って来てくれたんですか」
「そうです、この前のお話で」
「ええと、僕は恋愛に無縁という」
「はい、そのお話を受けまして」
 そうしてというのです。
「先生に良縁がある様に」
「そう思われてですか」
「神社で宮司さんに特別に作ってもらって」
 そうしてというのです。
「頂いてです」
「僕にですか」
「左様です」
 こう先生に言うのでした。
「この度は」
「そうですか」
「はい、どうか先生にです」
 是非にというのです。
「そう思いまして」
「そうですか」
「お受け取り下さい」
「それでは」
「もう先生が気付かれなくても」
 牛女さんのお言葉は真摯なものでした。
「良縁が舞い込んできて」
「そうしてですか」
「先生に生涯の伴侶が訪れる様に」
 その為にというのです。
「そう思いまして」
「有り難うございます」
「先生はもっと自信を持つべきだと思いますが」
 それでもと言うのでした。
「もうです」
「それでもですか」
「それがどうしても出来ないなら」
「そうですか」
「はい、それでは」
「これからですね」
「先生に良縁が訪れる様に」
「このお守りの力で、ですね」
 先生は笑顔で応えました。
「それでは」
「先生はキリスト教徒ですが」
「国教会です」
「ですが宜しいですね」
「信仰も日本人のものになりまして」
 先生は牛女さんに笑顔で答えました。
「今ではキリスト教徒ですが」
「神社やお寺にもですね」
「普通にお参りして手を合わせています」
「そしてお守りもですね」
「問題ないとです」
 その様にというのです。
「考えています」
「それでは」
「はい、有り難く受け取らせて頂きます」
「それでは、あとです」
 牛女さんは先生ににこりとしてこうもお話しました。
「ライムジュースを飲む量はかなり減らしました」
「そうですか」
「それで今はお茶をよく飲んでいます」
「お茶をですか」
「お抹茶に麦茶、梅茶にほうじ茶とです」
「色々飲まれていますか」
「はい」
 そうしているというのです。
「今では」
「お砂糖は入れていないですね」
「日本の飲み方です」
「それはいいですね、お茶は美味しいですし」
「ビタミン補給にもなってですね」
「歯にも問題はないです」
 お砂糖を入れないと、というのです。
「糖分も酸味もないので」
「左様ですね」
「どんどん飲まれて下さい」
 そのお茶をというのです。
「そうされて下さい」
「それでは」
 牛女さんは笑顔で頷きました、そしてです。
 牛女さんは先生とこの場では紅茶を楽しく飲んで色々なお話を楽しみました、先生はミルクティーでしたが牛女さんはストレートティーでした。
 それを飲んで、です。そのうえで。
 牛女さんは先生にまたお会いしましょうと告げてからお供の人達と共に研究室を後にしました。そしてです。
 その後で、です。動物の皆は先生に言いました。
「お守りの力期待してるから」
「僕達としてはね」
「先生が気付かなくてもね」
「そのお守りがどうかしてくれる」
「そのことをね」
「心から願うよ」
 こう先生に言うのでした。
「本当にね」
「先生は本当に気付かないから」
「だからね」
「もうだよ」
「そのお守りが先生に良縁をもたらしてくれる」
「僕達は心から願うよ」
「ううん、僕はね」
 先生はその皆に困ったお顔で返しました。
「本当に恋愛そしてね」
「結婚とはだよね」
「縁がない」
「それこそ何があってもだね」
「先生が誰かと結婚するなんてね」
「絶対にないっていうのね」
「若い時占い師の人に晩婚って言われたけれど」
 それでもというのです。
「他のことも占ってもらってそうしたことは当たってるけれど」
「結婚はだね」
「それはなのね」
「ないっていうのね」
「そうなんだね」
「これだけはないから」
 先生は笑って言いました。
「本当にね」
「そう言うけれどね」
「多分その占いはそのことも当たってるよ」
「先生は晩婚っていうのは」
「絶対に当たるよ」
「ううん、僕と結婚ね」
 それはというのです。
「やっぱりないよ」
「というか先生が全然気付かないから」
 ホワイティが困ったお顔で言いました。
「牛女さんもお守りくれたんだよ」
「牛女さんも先生がいい人ってわかったから」
 今度はポリネシアが言いました。
「縁結びのお守りをくれたんだよ」
「だから先生それ先入観だよ」
 ガブガブは注意する様に言いました。
「本当にね」
「自分は何があってももてないとか」
 ダブダブはガブガブに続きました。
「そう考えることはよくないわよ」
「だから要点は性格」
「それじゃない」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「幾らお顔がとくて華やかでもね」
「性格に問題があると駄目だし」
「性格って顔にも出るしね」
「そうそう、人相にね」
 チープサイドの家族はそちらにお話しました。
「それで悪いお顔になるから」
「一緒だよ」
「先生凄く穏やかで優しいお顔してるよ」 
 老馬は先生の人相のお話をしました。
「そのお顔でわかる人はわかるよ」
「そのお顔ならね」
 今度はトートーが言いました。
「全く問題ないよ」
「そもそも人を外見だけで判断する人は駄目だよ」
 チーチーはきっぱりと言い切りました。
「そんな人は先生に声をかけなくていいから」
「そうそう、僕達も見てるから」
 最後にジップが言いました。
「そうした人のこともね」
「じゃあ僕はいい人にもてるのかな」 
 先生は皆のお話を聞いて言いました。
「つまりは」
「その通りだよ」
「先生は素晴らしい人にもてるよ」
「先生の人間性をわかっている」
「そうした人にね」
「そうだといいけれどね、しかし晩婚といっても」
 それでもというのです。
「何時かな」
「それはわからないけれど」
「それでもね」
「絶対に結婚出来るから」
「安心してね」
「そうだといいけれどね、しかしね」
 さらに言う先生でした。
「僕は本当に色々なお友達がいてくれているね」
「牛女さんだってお友達になってくれたし」
「そうよね」
「先生みたいにお友達がいる人なんて」
「そうはいないわよ」
「実際にね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「僕は幸せ者だよ、心から信頼できるお友達に囲まれているから」
「僕達は先生といつも一緒だよ」
「何があってもね」
「先生を裏切ったり見捨てたりしないから」
「安心してね」
「裏切るとか見捨てたりとか」
 皆はこうも言いました。
「友達じゃないよ」
「特にその人が辛い時にそうするとか」
「そんなの最初から友達じゃないよ」
「ただその人を利用している」
「それだけの人だよ」
「そうだね、僕も思うよ」
 その様にというのです。
「自分が都合が悪くなったら人を見捨てるとか裏切るとかする人はね」
「そうだよね」
「そんな人信用出来ないよ」
「絶対に近寄っても駄目よ」
「若しそんな人が付き合っても」
「僕もそう思うよ、人を利用するだけの人で」 
 それでというのです。
「若しね」
「そんな人が近付いてもね」
「信用したらいけないね」
「ましてお友達になるとか」
「論外だね」
「そうした人は犯罪を犯していなくても悪人だから」
 自分の都合が悪くなると人を裏切ったり見捨てたりする様な人はです。
「それも平気でする様な人はね」
「迷わずにね」
「普通の人は迷うよね」
「自分のことがどうしても気になって」
「それでね」
「自分もまきこまれると大変って思って」
「人は弱いものだからね」 
 先生はこうも言いました。
「迷ってどうしようかって思ってね」
「そうだよね」
「やっぱり迷ってね」
「それで仕方なくって場合もあるけれど」
「平気で即座にっていう人はね」
「こうした人は結局自分だけで」
 そうした人でというのです。
「普通に悪人だから」
「近寄ったらいけないね」
「何かあったらすぐに裏切って見捨てて」
「自分だけ安全な場所に逃げるから」
「お友達になったらいけないね」
「犯罪を犯していなくてもね」
 それでもというのです。
「そうした人は悪人だからね」
「そんな人たら僕達が近寄せないから」
「先生にね」
「先生は悪人には利用させないよ」
「絶対にね」
「皆はそうだね、僕をこれまで何があっても助けてくれたし」 
 これまでの数多くの旅や冒険の中で、です。
「だからね」
「先生もそうだしね」
「何があっても裏切らないから」
「僕達を裏切らないし」
「他の誰もね」
「そうしたことは何があってもよくないから」
 人を自分の都合で裏切ったり見捨てたりすることはです。
「しないよ、例えばその人と一緒にいて自分が何か言われたり意地悪をされる」
「それでその人を裏切ったら」
「最初からお友達じゃないよ」
「本当にただ利用しているだけ」
「それだけね」
「こんな人には絶対になりたくないし」
 先生としてはです。
「というかこんな人に本当のお友達は出来ないよ」
「類は友を呼ぶでね」
「いい人同士が集まってね」
「悪い人同士が集まるね」
「世の中っていうのは」
「そうだよ、花には蝶が寄るものだよ」
 それが世の中だというのです。
「そしてその逆もあるってことだよ」
「本当にいい人同士が集まって」
「悪い人同士が集まる」
「それが世の中よね」
「だからそうした人にはね」
「自分と同じ様な平気で人を裏切って見捨てる人が周りに集まるよ」
 そうなるというのです。
「そうでない人はそうした人に出会うことがあっても」
「全体的にいい人達に出会える」
「そしてそうした人達と一緒になれる」
「そうなるね」
「じゃあ先生やっぱり」
 何といってもとです、皆はあらためて言いました。
「いい人が来てくれて」
「そして結婚してね」
「いい家庭を築くよ」
「そうなるよ」
「周りにトミーも王子もいて」
「僕達もいたうえでね」
「そうなるかな、本当に」
 先生だけはこう言います、本当に恋愛と結婚はご自身には無縁と思っているからです。ですがそれでもでした。
 皆はあくまで言います、そして。
 サラもです、来日してきた時に先生のお家で先生に言いました。
「兄さん、お話は今全部聞いたわ」
「牛女さんのことを信じてくれるね」
「私妖怪も要請も否定しないわ」
 それはというのです。
「絶対にね」
「それはいいことだね」
「ええ、けれどね」
「それでもなんだ」
「牛女さんがそう言うこともね」
 お守りのことも言うのでした。
「当然よ」
「僕の結婚のことでだね」
「そうよ、兄さんは絶対にね」
「結婚出来るかな」
「出来ない筈がないわ」
 それこそというのです。
「本当にね」
「そうかな」
「そうよ、だって紳士で人間性がよくて」
 それにというのです。
「お仕事もあって教養豊かだから」
「この顔とスタイルでもかな」
「そんなので判断する人なんてね」
 サラもこう言いました。
「碌な人じゃないから」
「サラもこう言うんだ」
「そうよ」 
 まさにというのです。
「そんな人は最初から無視していいから」
「じゃあ若し僕の内面を理解してくれる人がいてくれて」
「もういるし」
「もうなんだ」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「先生があくまで気付かないなら私その人を応援して」
「そうしてだね」
「兄さんと一緒になってもらうから」
「その人は誰かな」
「兄さんの知ってる人よ」
 サラははっきりと告げました。
「その人はね」
「僕がなんだ」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「私はね」
「その人を応援するんだね」
「全力でね」
「そうなんだ」
「そう、兄さんがあくまで気付かないなら」
 それならというのです。
「そうするわ、それとね」
「それと?」
「日本は妖怪も多いわね」
「そうだよね」
「もう何かとね」
「それこそ図鑑が出来る位だよ」
「妖精と一緒ね」
 イギリスのというのです。
「それは」
「そうだね」
「妖怪の国でもあるのね」
「そう言っていいね」
 先生も否定しませんでした。
「そしてその妖怪ともね」
「人は共存しているのね」
「そうなんだ」
「本当にイギリスと一緒ね」
「イギリスも人間と妖精が一緒にいるしね」
「だからね、ただね」
「ただ?」
「幽霊はね」 
 こちらはといいますと。
「日本のものは怖いわね」
「怨霊だね」
「そちらはね」
「実は日本の妖怪は怖いものが少なくてね」
「怨霊が怖いのね」
「そうなんだ」  
 先生はサラにお話しました。
「この国はね」
「そうよね、しかしね」
「今度は何かな」
「兄さんすっかり日本に馴染んでね」
 サラは先生を見て微笑んで言いました。
「日本人より日本人らしくなってきたかもね」
「そうかな」
「もうずっと日本に住むのね」
「そのつもりだよ」
 このことは実際にとです、先生はサラに答えました。
「もう殆ど決めたよ」
「それじゃあもう結婚する人は」
 その相手の人はといいますと。
「あの人ね」
「あの人?誰かな」
「私はもうわかっているから」
 サラは先生にやれやれというお顔で述べました。
「私も動くわ。それでね」
「そのうえでなんだ」
「兄さんに結婚してもらうから。そして兄さんとあの人なら」
 笑顔で言いました。
「きっと幸せになれるわ」
「その人が誰か気になるけれど」
「兄さんがわからなくても」
 それでもというのです。
「私はわかっているし他の皆もだか」
「それでなんだ」
「任せてね、それで決まった時に驚いてね」
「そうなるんだ」
「ええ、それが何時になるかわからないけれど」
 それでもというのです。
「兄さんは絶対に幸せになるわよ」
「絶対になんだ」
「そうよ、安心してね」
「そうだといいけれどね」
「ただ。私達は骨が折れるでしょうね」
 サラはこのことは苦笑いで言いました。
「覚悟していくわ」
「迷惑かけるなら御免ね」
「謝ることはないわ、じゃあまた来日した時にね」
「その時にだね」
「その人と会うから」
「そうするんだ」
「ええ、是非ね」
 笑顔で言ってそうしてでした。
 サラはお茶を飲みました。そうしてこれからのことを考えますが先生は全く気付かないでそうしてサラと皆に聞きますが皆はそのうちにねと言うだけでした。


ドリトル先生と牛女   完


                2020・9・11








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