『ドリトル先生と牛女』




               第五幕  虫歯の手術

 手術の日が来ました、牛女さんはお家の人達と一緒に病院に来ました。そこで先生に心配そうに尋ねました。
「痛くないですよね」
「大丈夫です」
 先生は笑顔で答えました。
「そこまで酷くはないですから」
「そうですか」
「今治療すれば」
「痛くなくてですか」
「完治しまして」
 そしてというのです。
「抜くこともです」
「ありませんか」
「はい、手術の時は痛みません」
 そこまでではないというのです。
「麻酔も使いますし」
「大丈夫なのですね」
「今の技術では」
 それならというのです。
「これといってです」
「痛まないで、ですね」
「無事にです」
「完治しますか」
「ですから」
 それでというのです。
「安心して下さい」
「それでは。ただ」
「ただといいますと」
「はい、ライムジュースも問題ですね」
「飲み過ぎるとですよ」
「その場合はですか」
 牛女さんはこう返しました。
「そういえば最近お水の代わりの様にです」
「ライムジュースを飲まれていましたか」
「そうでした」
「流石にそこまで飲まれますと」
「歯に悪かったですね」
「そうかと。歯磨きをされていても」 
 それでもというのです。
「やはり」
「そうですか」
「味が好みでも」
「それでもですね」
「過ぎると何でもです」
「よくないですね」
「ライムですと歯に悪いですし」
 それにというのです。
「他の食べものも飲みものもです」
「過ぎるとよくないですね」
「そうしたものです、お酒もですね」
「飲み過ぎると体を壊しますね」
「そうなりますので」
 だからだというのです。
「まことにです」
「何でもですね」
「過ぎないことです」
 このことが大事だというのです。
「どうしても」
「そういうことですね」
「そうなのです」
「これから気をつけます」
「では今はライムジュースは」
「飲む量を十分の一にしまして」
 それでというのです。
「その分お茶を飲んでいます」
「お茶ですか」
「色々なお茶を」
「それはいいですね」
「そうですね。お茶はお砂糖とかを入れませんし」
 日本の飲み方でした、牛女さんは日本の妖怪なので飲むお茶も日本の飲み方で飲むことが好きなのです。
「麦茶等を」
「麦茶はいいですね」
「先生もお好きですか」
「日本に来て好きになりました」
「そうなのですね」
「冷えた麦茶はいいですね」
 これが美味しいというのです。
「まことに」
「麦茶は冷えたものを飲みますね」
「あれが特に夏にです」
「いいですね」
「僕も大好きです、実は代用コーヒーの味ですが」
「代用コーヒー?」
「欧州にはこうしたコーヒーもありまして」 
 先生はこちらのお話もしました。
「コーヒーがない時にです」
「飲むのですか」
「コーヒー豆ではなく蒲公英から作りました」
「春のあのお花から」
「これが麦茶の味です」
「そうなのですね」
「普通は熱いものを飲むので」
 それでというのです。
「麦茶とはです」
「味が同じでもですね」
「あまり評判がよくありません」
「熱い麦茶は」 
 実際にと言う牛女さんでした、そのお話を聞いて。
「私は」
「飲みたくないですか」
「やはり麦茶はです」
「よく冷えたものですね」
「それしかないかと」
 麦茶といえばというのです。
「まさに」
「日本ではそうですね」
「ですから」
 それでというのです。
「どうしても」
「それではですね」
「はい、私は代用コーヒーを飲むとしたら」
 その時はといいますと。
「よく冷えた」
「アイスコーヒーですね」
「そちらがいいですね」
「僕もそう思います、今代用コーヒーを飲むなら」
 それならというのです。
「やはりです」
「冷えたものですね」
「アイスですね」
 こちらだというのです。
「日本に来てそうなりました」
「そうですか」
「といいますか」
 先生はさらに言いました。
「僕はイギリスにいて基本紅茶でした」
「紅茶派ですか」
「それでコーヒーは他国に行った時でないと飲まないで」
「代用コーヒーもですね」
「東欧に行った時に飲んだ位で」
「殆ど飲まれたことはないですか」
「はい」
 そうだったというのです。
「実は」
「馴染みのものではなかったのですね」
「イギリスは紅茶の国なので」
「私は紅茶も好きですが」
「日本の紅茶とは味が違うんです」
「そうなのですか」
「お水が違うので」
 そのせいでというのです。
「どうしてもです」
「味が違いますか」
「日本はお水が物凄くよくて」
「紅茶も美味しいですか」
「その美味しさに惚れ込んでいます」
 先生は牛女さんににこりと笑ってお話しました。
「僕は」
「そこまでですか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「牛女さんが紅茶を飲まれるなら」
「いいですか」
「日本で紅茶を飲めることは」
 まさにというのです。
「幸せなことです」
「では手術が終わりましたら」
「紅茶を飲まれますか」
「手術した後は暫く飲んだり食べたり出来ないですね」
「はい、ですが」  
 それでもというのです。
「数時間後、僕がお話した時間が過ぎれば」
「その時はですね」
「飲めますので」
 先生は今も笑顔でお話しました。
「ご安心下さい」
「わかりました、では」
「今から手術をしましょう」
「宜しくお願いします」
 こうして牛女さんの虫歯の手術が行われました、手術が終わると先生は牛女さんに飲んだり食べたり出来る時間をお話して。
 そしてです、こうも言いました。
「あと二回位手術します」
「そうですか」
「それで完全に治しますので」
「あと二回の手術で、ですね」
「虫歯は治ります」
 完治するというのです。
「ご安心下さい」
「それでは」
「あと二回この時間を置きましょう」
「わかりました」
 牛女さんは笑顔で応えてでした。
 そうして六甲のお家に戻りました、送ったのは口裂け女さんでした。
 その手術の後で、です。先生は動物の皆に大学の研究室で言いました。
「恐縮だよ」
「恐縮って?」
「一体どうしたの?」
「何かあったの?」
「いや、手術をしてね」
 それでというのです。
「報酬だけれど二百万なんだ」
「歯の手術一回で?」
「それはまた多いね」
「歯の手術の値段じゃないね」
「ちょっとね」
「妖怪さんには保険はないけれど」
 これは人のものだからです、妖怪の世界にはそうしたものはないみたいです。
「幾ら何でもね」
「二百万はだね」
「多過ぎるっていうんだね」
「幾ら何でも」
「多いって言ったけれど」
 それでもというのです。
「折角だからってね、けれどあと二回の手術分のお金はね」
「受け取らないんだね」
「もう」
「そうするんだね」
「二百万貰ったら」
 それでというのです。
「充分だよ」
「そうなんだね」
「じゃあね」
「お金のことはね」
「いいんだね」
「充分過ぎるって言っても足りないからね」
 こう皆に言うのでした。
「だからこれでいいよ」
「先生ってお金には無欲だしね」
「今の生活が出来るだけあればいい」
「そうした人だからね」
「もう充分だね」
「うん、大学教授としてのお給料があるんだよ」
 先生にはというのです。
「だったらね」
「もういいよね」
「充分だし」
「それで手術一回で二百万も貰ったら」
「それじゃあね」
「多過ぎるよ、けれどね」
 それでもというのです。
「二百万はどうしてもって言われたから」
「受け取ったんだ」
「そうしたのね」
「そのお金は」
「何でも牛女さんにとっては何でもないらしいけれどね」
 それだけの額のお金はというのです。
「二百万は」
「そうなのね」
「牛女さんってお金持ちなのね」
「姫路城のお姫様もだったけれど」
「牛女さんにしても」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「何でもないみたいだけれどね」
「先生にとってはね」
「歯の手術としては」
「とてもね」
「多過ぎるね」
「そうだよ、だからあとの二回は受け取らないよ」
 その分はというのです。
「僕はね」
「それがいいね」
「先生がそう言うならね」
「それじゃあね」
「お金はこれだけだね」
「うん、あと手術は無事に成功したから」
 先生はこのことは笑顔でお話しました。
「もうね」
「後二回の手術もして」
「それでだね」
「牛女さんの歯は完治するね」
「そうなるね」
「虫歯はね」
 本当にとです、トートーが言いました。
「辛いらしいからね」
「私には歯がないけれど」
 ポリネシアは自分のお口のお話をしました。
「なると辛いことはわかるわ」
「ええ、何かとね」
 ダブダブも言います。
「最近歯のお話をよくするし」
「鳥に歯はないけれど」
「哺乳類にはあるから」
 チープサイドの家族も言います。
「それでもね」
「虫歯はなると怖い」
「だからならないに越したことはないよ」
 ホワイティは鳥達に言いました。
「最初からね」
「そしてなったらすぐに治療する」
 チーチーはなってからのことをお話しました。
「それが大事だってことだね」
「歯がどれだけ大切か」
 老馬の口調はしみじみとしたものでした。
「最近実感するよ」
「歯が一本でも欠けると大変だっていうことも」
 ジップも言いました。
「最近先生とお話して頷くばかりだよ」
「虫歯にならない様にしないと」
「そこから気をつけて」 
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「そうしてね」
「なったらすぐに治療だね」
「僕達も気をつけないとね」
 ガブガブはお話をまとめる様に言いました。
「本当に」
「うん、例え歯がなくてもね」 
 それでもとです、先生は皆にお話しました。
「お口の中は清潔にね」
「それが大事ね」
「歯がなくても」
「ルイ十四世のこともあるし」
「そうしないと駄目ね」
「それが出来たら」
「そう、お口の中が汚いと」
 例え歯がなくても虫歯でなくてもというのです。
「よくないからね」
「そこから雑菌が入ったりしてね」
「いざって時に病気になるから」
「だからだね」
「お口の中は奇麗によね」
「歯を磨いていなかった人が歯を磨いたら急に健康になった」
 それはというのです。
「当然のことだよ」
「お口の中の雑菌がなくなって」
「それで雑菌に脅かされることがなくなったから」
「それで健康になるんだよね」
「そういうことだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「お口の中はね」
「奇麗にだね」
「誰でも」
「そうあるべきだね」
「そうだよ、清潔第一であることは」 
 このことはというのです。
「お口の中も同じだよ」
「歯磨き粉があればそれを使う」
「出来るだけ奇麗にする」
「それが大事ね」
「うん、昔はお塩で磨いていたけれど」
 それを歯磨き粉にしていたのです。
「お塩も消毒になるし」
「いいんだよね」
「日本の時代劇でもそうして歯を磨いていたかな」
「木枯し紋次郎だった?」
「あの時代劇でも」
「それでもいいよ、ただね」
 ここで先生はどうかというお顔になって言いました。
「一つ気になることはね」
「気になること?」
「っていうと?」
「何かあったの?」
「何でもかんでも買ってはいけないとか言っていた雑誌だけれど」
 その雑誌で書いてあったことだというのです。
「歯磨き粉を使わないで歯を磨けとかね」
「付け過ぎないといいんじゃないの?」
「要するに」
「それだけじゃないの?」
「何でも過ぎるとよくないから」
「それだけじゃないかしら」
「何か適当な理由をつけてね」
 お医者さんでもある先生から見ればそう見えるものでした。
「主張していたけれど」
「それはだね」
「間違いだね」
「歯磨きは使った方がいい」
「そうなのね」
「あればね、あの雑誌は何でも買ってはいけないって言っていたけれど」
 このことはといいますと。
「企業は嫌いでね、それが根幹にあって」
「企業が嫌いなの」
「そうなの」
「それがまずあるの」
「極端な自然主義で科学とか文明が嫌いで」
 それでというのです。
「化学調味料とか添加物が嫌いでね」
「そうしたものが入っているとなんだ」
「物凄く嫌うの」
「そうした傾向があるんだね」
「そうなんだ、それで言っていて科学的に検証したら」
 そうしたらどうかといいますと。
「とんでもない間違いばかりなんだ」
「じゃあその買ってはいけないもなんだ」
「あと歯磨き粉のことも」
「信じたらいけないのね」
「あの雑誌は他にもおかしなことしか言わないから」
 その内容のことも言うのでした。
「読者欄からコラムまでね」
「つまり全部だね」
「雑誌の主張の隅から隅までおかしい」
「そうした雑誌なの」
「だから買ってはいけないし読んでもいけないよ」
 その雑誌こそがというのです。
「僕はそう思うよ」
「そんな雑誌も日本にはあるのね」
「非科学的で文明も嫌いな」
「そんな雑誌が」
「日本にはおかしな雑誌やタブロイド紙が多いけれど」
 それでもというのです。
「この雑誌はタブロイド紙二誌と並ぶね」
「日刊とか夕刊とか」
「あの日本のタブロイド達だね」
「もうどっちもね」
「本当に最低だからね」
「よくあんな記事書けるね、どっちの記者も」
「それで発表出来るよ」
 皆もそうした新聞紙にはこう言います。
「恥ずかしくないのかな」
「碌に取材もしていないっていうし」
「もう常識や理性や品性疑う様な文章ばかりで」
「そうしたものばかり書いてね」
「それで人に見せてね」
「恥ずかしくないの?」
「どっちの記者の人達も」
 皆言います。
「本当にね」
「人間恥を知らないとおしまいっていうけれど」
「どっちの記者も恥を知らないのならね」
「おしまいだね」
「本当にそうね」
「そうしたタブロイドと同じだけね」
 先生は難しいお顔で皆にお話しました。
「とんでもない雑誌だよ」
「非科学的で」
「それで文明や企業が嫌いで」
「酷い雑誌なのね」
「うん、とんでもなく偏っているしね」
 この要素もあるというのです。
「政治的に左にね」
「日本ってそういう人もいるけれど」
「そうした雑誌?」
「じゃあ普通の人はありのまま飲んだらいけないわね」
「悪影響を受けるから」
「そうなるから」
「そうだよ、歯磨き一つ取っても」
 そちらのことでもというのです。
「おかしなことを言ってるよ」
「ちゃんを歯磨き粉付けて磨くのが一番」
「何といってもね」
「そうだよね」
「変に良識ぶっておかしなことをしたら」
 その時はといいましうと。
「おかしなことになるよ」
「おかしなことをしたらおかしなことになる」
「そういうことね」
「だからちゃんとしたことをちゃんとやる」
「それが一番なのね」
「そうだよ、確かに医学も科学も誤った説が出るけれど」
 それでもというのです。
「もう科学的にはっきりしているならね」
「そっちを守るべきね」
「そんな非科学的なことは信じないで」
「科学的に動いていく」
「そうあるべきね」
「そうだよ、買ってはいけないとい主張も出鱈目ないいかがりしかなかったけれど」
 先生はさらに言いました。
「その主張もね」
「出鱈目で」
「もうどうにもならない」
「そうしたものなのね」
「そうなんだ、この雑誌あの料理漫画の原作者も漫画の原作していたけれど」
 先生は眉を曇らせたままお話を続けました。
「同じ様なものだよ」
「ひょっとしてあの漫画?」
「新聞記者がお店で暴れる」
「それがまかり通ってる漫画よね」
「あのとんでもなく酷い漫画」
「あの漫画は登場人物が皆下品で野蛮で無教養で短気な野蛮人ばかりだけれど」  
 それでもというのです。
「原作者の人間性が出ているのかって思うし」
「そうした人も関わってるとなると」
「まさに類は友を呼ぶで」
「それでなのね」
「同じ様な人達だから」
「どっちも読まない方がいいのね」
「僕はそう思うよ、あの漫画の言ってることも出鱈目のオンパレードだしね」
 そこまで酷いというのです。
「読まない方がいいから」
「そして歯磨きはちゃんとする」
「それに尽きるわね」
「歯磨き粉も使って」
「そのうえで」
「うん、どうして歯磨き粉が世にあるか」
 そのことをというのです。
「そこから考えないとね」
「だよね」
「必要ないものがずっと世の中にあるか」
「考えてみればわかるよ」
「ちょっと考えたらね」
「そうしたものだからね」 
 それ故にというのです。
「歯もお口も奇麗で健康である為に」
「ちゃんと歯を磨く」
「歯磨き粉も使って」
「それが大事ね」
「僕はそう思うよ」
 笑顔で言ってでした。
 先生はまた論文にかかりました、そして鮫の歯について書いてからです。
 皆に言われてそれぞれのお口の中を見ました、そうして皆に言いました。
「うん、皆奇麗だよ」
「それで虫歯もない」
「そうなんだね」
「大丈夫なんだね」
「僕達のお口も歯も」
「だから安心していいよ」
 皆に笑顔で言いました。
「このままね、だからこれからもね」
「お口を奇麗にしておく」
「それも毎日」
「そうするべきだね」
「特に甘いものを食べたら」 
 その後はというのです。
「磨いて奇麗にしておかないとね」
「そういえば」
 ここでジップが言いました。
「エリザベス一世も虫歯になられたね」
「あの方は有名かな」
「少なくともイギリスではね」
 オシツオサレツも言いました。
「チョコレートを使ったビスケットがお好きで」
「そちらをよく召し上がられていてね」
「虫歯だらけだったっていうね」
 トートーも言います。
「何でも」
「それは大変なことだね」
「そうよね」 
 チープサイドの家族もそのお話に言います。
「ルイ十四世も大変だったけれど」
「あの方もね」
「虫歯一本でも大変なのに」
 こう言ったのはガブガブでした。
「それが一杯だとね」
「歯がないことも大変だけれど」
 ホワイティもルイ十四世のことを思い出しました。
「虫歯だらけもね」
「痛くて仕方なかったでしょうね」
 ダブダブ自身は歯はないですがこう想像しました。
「あの方も」
「非常に素晴らしい方だったけれど」
 ポリネシアはその功績から思いました。
「悩みもおありだったのね」
「虫歯が怖くない人はいないと思うけれど」
 こう言ったのはチーチーでした。
「あの方もだったのかな」
「いや、本当に歯は磨かないと」
 心から言う老馬でした。
「このことからも思うね」
「うん、実はあの方は虫歯に苦しんでおられたんだ」
 先生もエリザベス一世のお話をしました。
「当時チョコレートを使ったお菓子なんて高価だったけれど」
「かなりお好きでね」
「あの時は今位歯を磨かなかったし」
「それじゃあね」
「虫歯になられたのも当然」
「そうだね」
「残念ながらね」
 先生はこうお話しました。
「そういうことだよ」
「そうだね」
「何というかね」
「あの方も虫歯に苦しんでおられたなんて」
「虫歯も深刻ね」
「そうよね」
「だから虫歯が多い分だけね」
 エリザベス一世はというのです。
「あの方は健康でなかったよ」
「そうだよね」
「今だったら歯を磨くしね」
「虫歯の治療もしっかりしているけれど」
「昔はそうじゃなかったし」
「あの方も虫歯が多くて」
「それで大変だったんだ、ルイ十四世の王妃も」
 この方もというのです。
「チョコレートがお好きでね」
「虫歯だったの」
「その方も」
「そうだったの」
「そうだったんだ、とても明るい人だったそうだけれど」
 それでもというのです。
「虫歯にはね」
「苦しんでおられたのね」
「何か本当に虫歯のお話って尽きないね」
「一旦すると」
「そうだね、チョコレートっていうと」
 このお菓子のお話もしました。
「やっぱりお砂糖入れるね」
「そのままだと苦いだけよ」
「カカオだけだと」
「もうもの凄く苦くて」
「それこそお砂糖を入れないとね」
「中々食べられないかも」
「ヒトラーも好きでね」
 ナチス=ドイツの独裁者だったこの人もというのです。
「お肉もお魚も食べない菜食主義者でね」
「しかもお酒も飲まなくて」
「あと煙草も吸わない」
「そんな人だったね」
「それは有名よ」
「その代わりチョコレートが好きで」
 それでというのです。
「甘いもの全体が好きでね」
「じゃあやっぱり虫歯?」
「あの人も虫歯だったんだ」
「それで苦しんでいたの」
「あの人にしても」
「そうだよ」
 ヒトラーもというのです。
「あの人もね」
「独裁者も虫歯だった」
「そうなのね」
「何というかね」
「虫歯のお話って尽きないね」
「今お話した通りに」
「本当に」
 まさにというのです。
「ヒトラーも人間だったんだね」
「虫歯に苦しむとか」
「あれだけ悪名高いけれど」
「それでも」
「まあヒトラーはその政策はともかくね」
 悪名高いそれは置いておいてというのです。
「私人としてはまともだったしね」
「確かにそうだね」
「菜食主義でお酒も煙草もしなくて」
「女性のお話もないし」
「身内贔屓もしなかったっていうし」
「趣味は読書と音楽鑑賞で」
「しかも仕事人間だったんだ」
 お仕事もちゃんとしていたというのです。
「そんな人だったからね」
「やったことはとんでもないけれど」
「個人としては真面目で」
「別に悪い人じゃない」
「そうだったのね」
「贅沢もしなかったしね」
 独裁者でやりたいことをやれてもです。
「個人としては人種的偏見はかなり強くても」
「真面目で質素で」
「しかも悪いこともしない」
「そんな人だったの」
「いじめとか意地悪もしなかったよ」
 そうだったというのです。
「これといってね」
「何かイメージ違うね」
「処刑見て生肉食べたりね」
「お酒もどんどん飲んで」
「しょっちゅう暴力振るったり」
「そんな感じだったけれど」
「個人としてはそうだったから」
 真面目で清潔で質素だったというのです。
「それで甘いものが好きで」
「チョコレートとか」
「それで虫歯になったりしていた」
「それで苦しんでもいたのね」
「ケーキも好きでね」
 このお菓子もというのです。
「料理人がよく夜もお仕事しているヒトラーに差し入れていたそうだよ」
「へえ、ケーキ好きだったんだ」
「そっちもだったの」
「チョコレートも好きで」
「ケーキもだったの」
「ヒトラーを批判することは当然にしても」 
 その行いを見ればです。
「それでもどういった人か知る」
「そのことは大事だね」
「無闇に否定しないで」
「そうするべきね」
「しっかりと」
「そうだよ、ヒトラーだって人間だった」
 甘いものが好きで虫歯で苦しむ様な。
「そうだったことはね」
「わかっておく」
「それで学ぶことね」
「それが大事ね」
「そうだよ、まあヒトラーは毎日明け方まで仕事をして」
 ヒトラーの生活のお話もしました。
「遅くても九時には起こされて」
「あまり寝てないね」
「明け方から九時って」
「というか殆ど徹夜じゃない」
「毎日そうって」
「働き過ぎよ」
「それでお風呂に入って疲れを癒して」 
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「またお仕事ね」
「本当にお仕事ばかりじゃない」
「幾ら真面目でも」
「お仕事ばかりって」
「独裁者は自分に権限を集めるから独裁者だよ」
 自分で何でもするからというのです。
「それでお仕事もね」
「増えるんだね」
「必然的に」
「そうなるんだね」
「独裁者っていうのは」
「そうだよ、だからヒトラーも忙しくて」
 そうなってというのです。
「毎日そこまで働いていたんだ」
「独裁者も大変ね」
「働き詰めなんて」
「毎日そうだって」
「何というか」
「これはスターリンもそうだったから」
 ソ連のこの独裁者もというのです。
「独裁者は怠け者だとなれないよ」
「独裁者になるなら働き者であれ」
「そういうことだね」
「要するに」
「そうでないと駄目なのね」
「そうだよ、怠け者の独裁者なんてね」
 それこそというのです。
「存在しないよ」
「国を思いのままに動かすのも大変だね」
「それがどんな目的でも」
「独裁者も大変なのね」
「働き者で優秀で真面目でないとね」
 こうした要素が揃っていないと、というのです。
「なれないよ」
「ううん、僕達は無理だね」
「ヒトラーやスターリンにはなれないね」
「チョコレートやケーキは食べられても」
「虫歯にもなっても」
「僕にもなれないよ、というか僕は彼等程度真面目でも働き者でもないし何といっても」
 先生は笑って言いました。
「優秀でもないしね」
「ヒトラーやスターリンは優秀ではあった」
「とんでもないことをしても」
「そうした人達でも」
「そのことは事実でね」
 それでというのです。
「僕は独裁者にはなれないよ」
「先生はあくまで学者さんだね」
「何といっても」
「他の何でもないね」
「先生の場合は」
「お医者さんであってね」  
 そしてというのです。
「そしてね」
「そうしてだよね」
「色々な分野の学者さん」
「そうだね」
「先生は」
「他の何でもないから」
 だからだというのです。
「独裁者にはだよ」
「ならないね」
「差しよから」
「それじゃあ先生はね」
「これからも学問をしていくね」
「そうするのね」
「そのつもりだよ、僕は学問が好きだから」
 それでというのです。
「学者さんになれてね」
「満足してるよね」
「お仕事もことは」
「それじゃあね」
「これからもね」
「選挙には行くけれど」
 日本国籍になっているので日本の選挙にです。
「それでもね」
「立候補はしないね」
「政治家の選挙にも」
「それには」
「そう、出なくてね」
 それでというのです。
「政治学者でもあるから」
「そちらでだね」
「政治をしていくね」
「学者さんとして」
「そうしていくよ」
 こう言ってでした。
 先生は牛女さんの二度目の手術の前も論文を書いていきました、そして動物園にも行きました。その中で。
 ふとです、先生は動物園の生きもの達の歯を見て言いました。
「皆歯が奇麗だね」
「一回虫歯で騒動になったけれど」
「今はだね」
「虫歯もなくて」
「いい感じね」
「うん、あの時はどうして皆虫歯になるか」
 そのことがというのです。
「騒ぎになっていたね」
「そうだったね」
「それでミステリーにもなって」
「それでね」
「先生探偵にもなったね」
「うん、けれど今は皆気をつけているから」
 動物園の生きものにお菓子をあげることはなくなったというのです。
「だからね」
「それでだよね」
「皆虫歯にならなくなって」
「歯が奇麗だね」
「そうなったね」
「よかったよ」
 先生はにこりと笑って言いました。
「動物園の皆もだよ」
「健康でないと駄目だし」
「それだったらね」
「虫歯にならない」
「そうでないとね」
「駄目だから」
 それでというのです。
「今みていいと思うよ」
「鰐さんもそうだし」
「ライオンさんもでね」
「象さんもだしね」
「熊やゴリラの諸君も」
 彼等もというのです。
「そうだね」
「熊さんやゴリラさんは甘いものも食べるね」
「蜂蜜とか林檎が好きだから」
「だったらちょっと虫歯が心配になるね」
「そうした生きものは」
「けれどね」
 それでもというのです。
「その彼等もね」
「虫歯がない」
「そのことはいいことだね」
「本当にね」
「何といっても」
「やっぱり歯は健康の第一歩だから」
 そのうちの一つだからだというのです。
「僕もそれを確認して嬉しいよ」
「先生にとっても」
「そうなってるのね」
「本当に」
「そうなのね」
「そうだよ」
 皆に笑顔で言います。
「動物園の皆もそうで何よりだよ」
「そうだね」
「それじゃあね」
「動物園も行ったし」
「お家に帰って晩ご飯食べて」
「お風呂も入ってね」
「お酒も飲もうね」
 先生は夜はそちらだと言いました。
「今日はジンを飲もうかな」
「いいね、ジンも」
「日本人はあまり飲まないけれど」
「ストレートではね」
「けれどあれがまた先生好きだよね」
「それでよく飲むんだ」 
 そのジンもというのです。
「そして今日はね」
「ジンを飲む気分だね」
「じゃあご飯を食べてお風呂に入ったら」
「その後はね」
「ジンにしましょう」
「ロックでナッツと一緒に楽しもう」
 笑顔でこう言ってでした。
 先生は皆とお家に帰りました、そうしてジンを実際に楽しみました。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る