『ドリトル先生と琵琶湖の鯰』




               第十二幕  水族館で幸せに

 先生は琵琶湖の水質と生態系についての論文を書き終えて学界に提出してから今度は比叡山についての論文の執筆に入りました。
 その先生のところに田中さんが来て先生にお話しました。
「今はどの生きもの達もです」
「無事にですね」
「暮らしています」
 先生の研究室にお邪魔して笑顔でお話するのでした。
「まだはじまったばかりですが」
「水族館での生活が」
「はい、ですが」
「今のところはですね」
「どの子もです」 
 皆がというのです。
「凄くです」
「幸せにですね」
「暮らしていまして」
 それでというのです。
「僕達も嬉しいです」
「それは何よりですね」
「水族館は水の生きもの達を飼育して」
「育てて研究して」
「そして種の保存もです」
「図ることが目的ですね」
「そうです、これは動物園や植物園も同じです」
 こうした場所もというのです。
「ただそこにいるだけではないです」
「飼育は」
「研究に種の保存もです」
「重要ですね」
「実際にこうした場所が種の保存に役立ってもいますし」
「その通りですね」
「ですから僕達もです」
 八条学園にある水族館で働いている人達もというのです、言うまでもなく田中さんもその中にいます。
「そのことを意識してです」
「働いておられますね」
「はい」
 まさにというのです。
「そうしています、立派な仕事だと自負しています」
「その通りです」 
 先生は田中さんに笑顔で答えました。
「水族館や動物園、植物園でのお仕事もです」
「立派なものですね」
「他のお仕事と同じく」
 まさにというのです。
「立派なお仕事です」
「そう言って頂き何よりです」
「そうですね、では」
「これからもですね」
「頑張っていきます」 
 田中さんは先生に微笑んで答えました。
「そうしていきます」
「そうされて下さい」
「はい、これからも」
「最近水族館や動物園を駄目だと言う人がいますが」 
 先生はどうかというお顔でお話します。
「僕は賛成出来ないです」
「狭い場所に閉じ込めて見世物にしてですね」
「虐待だとです」
「言う人がいますね」
「しかもこうした人はです」
 先生は今度は困ったお顔でお話します。
「声が大きいですね」
「少数派でも」
「それでも声は大きく」
 そしてというのです。
「活動的なので」
「厄介ですね」
「そうです、世界的に今は手を挙げた人が強いですが」
「意見として通りますね」
「特に日本では」
 先生が今暮らしているこの国ではというのです。
「もうです」
「手を挙げた人が強いですね」
「他の国よりも。それでです」
「水族館や動物園についても」
「そうした面を観ないで」
 飼育と研究そして種の保存つまり環境保護に貢献をしている場所であるということをというのです。
「言うことはです」
「よくないですね」
「確かにそうした見方も出来ます」
「狭い場所に入れてですね」
「見世物にしているということも」
「それは否定出来ないですね」
「ですがそれがです」
 水族館や動物園の存在がというのです。
「研究や種の保存に貢献していてさらに」
「さらに、ですね」
「こうした場所は博物館でもありますね」
「はい、博物館法で定められています」
 この法律によってとです、田中さんは先生に答えました。
「水族館や動物園、植物園も博物館です」
「その中に入りますね」
「確かに」
 このことはというのです。
「定められています」
「学問の為の場所でもあります」
「左様ですね」
「そうです、ですから」
 その為にというのです。
「学問の為にもです」
「必要ですね」
「人は学問を行うことによって進歩してきましたし」
「これからもですね」
「そうなっていきます」
 先生は確かな声でお話します。
「ですから」
「それで、ですね」
「はい、人類の進歩の為にも」
「水族館等はあるべきですね」
「僕はそう考えます、そうしたことを言う人達は」
 水族館などの存在を動物虐待だと言って否定する人達はというのです。
「学問的でないし文明の進歩にもです」
「よくない人達ですね」
「僕は文明の進歩はすべきと考えています」
「止まるのではなく」
「はい、先にです」
 まさにというのです。
「進み」
「そしてですね」
「どんどん進歩すべきです」
「だから水族館もですね」
「あるべきです」
「全くですね、僕もそうした人達は反文明的だと考えています」
 田中さんもこう思うことでした。
「そしてこうした人達こそです」
「文明社会の中にいますね」
「そしてその中での生活を満喫しています」
「それで文明を否定していますね」
「それは僕は矛盾していると思います」
「その主張と生活が」
「はい、文明生活を満喫してです」
 そしてというのです。
「こうした人達は往々にして少しでも不自由があると不満を声高に言いますが」
「そのこともですね」
「矛盾しています、ですから」
「こうした人達はですね」
「僕は賛成出来ません」
 とてもというのです。
「本当に」
「左様ですね、ですから」
「それで、ですね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「先生の言われる通りにです」
「水族館のお仕事をですね」
「誇りを以てです」 
 そのうえでというのです。
「勤めていきます」
「そうされて下さい」
「是非共」
「それこそがです」
「文明の進歩にですね」
「貢献することです」 
 先生は田中さんにまた確かな声でお話します。
「まさに」
「左様ですね」
「はい、ですから」
「それで、ですね」
「これからもです」
「頑張っていきます、それでなのですが」 
 田中さんは先生にこうもお話しました。
「今度水族館に来て」
「そしてですね」
「彼等の言葉を聞いてくれますか」
「今どうかをですね」
「先生はあらゆる生きものとお話が出来ますので」
 このことは学園ではとても有名なことになっています、先生は人のあらゆる言語も読み書き出来てそうして生きもの達とも会話が出来るのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「お話をされて下さい」
「わかりました、では」
「宜しくお願いします」
「それでは」
 二人でこうお話してでした。
 先生は水族館に行って琵琶湖から来た生きもの達のお話を聞くことにしました。そのお話が終わってです。
 田中さんは水族館に戻りました、それで先生は論文の執筆に戻りましたが紅茶を飲みながら書く先生に動物の皆は声をかけました。
「じゃあまたね」
「水族館に行くのね」
「そして琵琶湖の皆とお話をする」
「そうするんだね」
「そうだよ」
 まさにとです、先生は皆に答えました。
「さっき田中さんとお話した通りにね」
「そうだよね」
「じゃあその時はだね」
「ちゃんと皆とお話をして」
「そしてだね」
「そのお話を田中さん達に伝える」
「そうするね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうさせてもらうよ」
「うん、ただね」
 ここでチーチーが言いました。
「先生よくお魚とお話出来るね」
「そういえばそうだね」
 ジップはチーチーの言葉でふと気付きました。
「相手はお水の中にいるのね」
「お互いお水の中にいてもお話出来るしね」
 ガブガブも言います。
「それって凄いね」
「お水の中では聞こえにくいのに」
 こう言ったのはホワイティです。
「人の耳だと」
「それでどうしてお話出来るのかな」
 老馬も考えました。
「先生は」
「先生は身体は普通の人だけれど」
「どうしてかな」
 オシツオサレレツも不思議に思いました。
「このことは」
「一体どうして」
「そういえばずっと普通に会話していたね」
「お魚ともね」
 チープサイドの家族も言います。
「先生って」
「何でもない感じで」
「お口のないダイオウグソクムシともだったし」
 トートーはこの時のお話をします。
「どうしてかな」
「何でお話出来るのか」
 ポリネシアも思うことでした。
「言葉を教えた私も不思議に感じるわ」
「先生その辺りどうなの?」 
 ダブダブが尋ねました。
「どうして聞こえるの?」
「最初は僕もわからなかったんだ」
 先生は皆に答えました。
「お水の中だとね」
「そうよね」
「お水の中だとね」
「人の耳は極端に聞こえなくなるから」
「そうした耳じゃないからね」
「どうしてもね」
「けれどね」
 それでもというのです。
「そうした言葉とわかってね」
「お魚の言葉はだね」
「そして水の生きもののことは」
「それがわかって」
「それでなのね」
「うん、学んでわかって」
 そしてというのです。
「その中で聴き方もわかったんだ」
「それでなんだ」
「お話の仕方もわかった」
「そうなのね」
「うん、これは独特の聴き方でね」
 それでというのです。
「僕もかなり学んで」
「それでなんだ」
「身に着けたものなの」
「そうなのね」
「そうなんだ、それを書いてもいるよ」
 そうもしているというのです。
「それでお話することもね」
「学んでだね」
「出来る様になって」
「それでなのね」
「今はなのね」
「お話が出来るんだね」
「そうだよ、だから普通にね」
 それこそというのです。
「これからもお話出来るから」
「だからだね」
「今度水族館に行ってもなのね」
「琵琶湖の皆ともお話が出来る」
「そうだね」
「そうだよ、心配は無用だよ」
 先生は皆に微笑んで答えました。
「だから水族館に行くのが楽しみだよ」
「そうだね」
「それじゃあね」
「今は論文を書いて」
「そのうえでね」
「水族館に行こうね」
 その時にとです、こうお話してです。
 先生は比叡山の論文を書いていきました、そして水族館に来た時に皆をお話するとこれがなのでした。
 もう琵琶湖の生物のコーナーが出来ていてです。
 来てもらった皆がいて今回は一緒に来ている王子は言いました。見ればトミーもいます。
「ああ、もうだね」
「うん、琵琶湖の皆もね」
「水族館にいてね」
「ちゃんと見学出来る様になっているね」
「そうなっているね、しかもね」
 王子はその生きもの達を見て言いました。
「あの大きな鯰も」
「ビワコオオナマズだね」
「いるね」
「そうだね」
「いや、大きいね」
 王子はその鯰を見て言いました。
「一メートルあるね」
「日本最大の淡水魚だよ」
「そうだね」
「わかっている限りではね」
「わかっているっていうと」
「これがね」
 考えるお顔になってです、先生はお話しました。
「タキタロウっていうお魚もね」
「あっ、東北の方にいるんですよね」
「その噂があるんだ」
 先生はトミーにお話しました。
「当方の方にある湖にね」
「未確認生物ですね」
「今のところはね」
「そうですよね」
「昔からいると言われていて」
 それでというのです。
「目撃したっていう話もあるし」
「食べた人もいますね」
「これが美味しいらしいね」
「そうしたお話ですね」
「そのタキタロウがね」
 まさにこのお魚がというのです。
「日本最大の淡水魚かも知れないよ」
「存在が確かになればですね」
「その時はね」
「一メートル以上あるんですね」
「そうみたいだね」
「じゃあタキタロウがいるとわかれば」
「その時はね」 
 まさにというのです。
「タキタロウが日本最大の淡水魚だよ」
「そうなりますね」
「うん、ただね」
「ただといいますと」
「タキタロウは鱒がたまたまね」
 このお魚がというのです。
「大きくなったもので」
「種類としてはですか」
「いないんじゃないかとも言われているから」
 だからだというのです。
「この辺りのことはね」
「何ともですか」
「言えないかも知れないよ」
「そうですか」
「種類としてはね」
「そうなんですね」
「というかだよ」
 王子がまた言ってきました。
「タキタロウのこともね」
「調べたいね」
「先生ならそう言うと思ったよ」
「うん、実際にね」
 先生にしてもというのです。
「その湖に行って」
「タキタロウを調べたいね」
「実在と」
 それにというのです。
「どうした種類のお魚かをね」
「調べたいね」
「是非共ね」
「どうかって思ったら」
「その時はだよ」 
 まさにというのです。
「それが学問をはじめる時だよ」
「だからだね」
「そう、タキタロウについてもね」
「先生はそう思ったから」
「機会があったらね」
 その時はというのです。
「東北まで行ってね」
「その湖に行って」
「それで学ばせてもらうよ」
「そう考えているんだね」
「東北は他にも学びたいことが多いしね」
 先生はこうも言いました。
「伊達政宗さんに奥州藤原氏にね」
「歴史だね」
「白虎隊もあるし民俗学だと秋田のナマハゲもあるし」
「あの鬼みたいな」
「それでね」
 さらにお話します。
「津軽にも行きたいし」
「そちらにもなんだ」
「津軽は太宰治の出身地だから」
「今度は文学なんだ」
「そちらも行きたいから」
 それ故にというのです。
「是非行きたいよ」
「そうなんだね」
「うん、東北にもね」
「東北に行ったら」
 王子も言います。
「その時は何かと面白そうだね」
「そう思っているよ」
「そうだね、だったら」
「その機会を待っているよ」
「楽しみにだね」
「ただ。機会は作るものといっても」  
 それでもとです、先生はこうも言いました。
「僕は実は今はね」
「他の地域に行く機会がだね」
「あってね。だからね」
「東北に行く機会を作ることはだね」
「今は出来ないよ」
「そうなんだね」
「うん、じゃあ今からね」
 先生は王子とのお話が一段落したと見てお話を変えました、そのお話はといいますと。
「お話しようか」
「琵琶湖の生きものの皆と」
「そうしようね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生は琵琶湖の生きもの達とお話することにしました、すると皆こう言いました。」
「水槽は広くてね」
「しかもお水はいつも奇麗でね」
「しかも食べものはいつもたっぷりで」
「満足しているよ」
「快適だよ」
「それだったらいいよ」
 それならとです、先生は皆のお話を聞いて頷きました。
「僕達もね」
「うん、先生は僕達とお話が出来るからね」
「こうしてお話が出来るからね」
「僕達の状況もわかってくれてね」
「伝えられるからいいね」
「そのことはね」
 まさにとです、先生はまた言いました。
「僕もいいと思っているよ」
「今のところ満足しているよ」
「ここにいても悪くないよ」
「むしろ食べることや襲われること気にしないていいからね」
「琵琶湖にいる方が快適かもね」
「そうよね」
「そう、ここにいたら」
 今回一番の話題だったビワコオオナマズも先生に言ってきました。
「好きなだけ寝られるからね」
「快適なんだね」
「僕は寝ることが好きだからね」
 見れば喋っているのは雄のビワコオオナマズでした。
「だからね」
「ここでだね」
「好きなだけ寝ていていいかな」
「うん、君が望むならね」
「ならそうさせてもらうよ」
「食べてだね」
「そうしてね、じゃあここで一生だね」
 まさにとです、雄のビワコオオナマズは先生にお話しました。
「食べて寝てだね」
「好きな様に暮らしていけばいいよ。ただね」
「人が見に来るね」
「それで君達を学問に見ることもね」
 このこともというのです。
「あるからね」
「だからだね」
「そのことはわかっておいてね」
「それじゃあね」
「しかしね」
 ここで、です。先生はです。
 ビワコオオナマズ達にこう言いました。
「僕も心配していたんだ」
「私達がここで快適に暮らしているかよね」
「そのことがね」
 雌のビワコオオナマズに答えます。
「どうしてもね」
「心配だったのね」
「そう、けれど皆のお話を聞いていたら」
「ええ、快適よ」
「だったらね」 
 先生はにこりと笑って答えました。
「僕も安心だよ、あと皆のことは何かあったら」
「その時はだね」
 また雄のビワコオオナマズが言ってきました。
「僕達のところに来て」
「お話を聞かせてもらうよ」
「身体の調子が悪くなったら」
「その時はね」
 まさにというのです。
「安心していいよ」
「そうだね」
「君達に何かあったら」
「僕達に」
「うん、水族館や動物園の皆に何かあったら」
 その時はというのです。
「虫達が知って」
「そしてだね」
「僕に教えてくれるから」
「先生は虫達の言葉もわかるね」
「そう、だからね」 
「僕達に何かあったら」
「その時は任せてね」
 こう言うのでした。
「いいね」
「うん、じゃあね」
「何かあったら任せてね」
「宜しくね」
 雄のビワコオオナマズは明るい声で応えました、そしてです。
 先生は琵琶湖の生きもの達とさらにお話をしてです、そうして皆で何かとさらにお話をしてでした。
 そうして水族館を後にしました、そして研究室に戻ると紅茶を飲んでほっとした笑顔で言いました。
「よかったよ、皆快適みたいで」
「そうだよね」
「皆明るくてね」
「元気でね」
「それでよかったね」
「本当に」
「うん、これからも何かあったら」
 その時はというのです。
「僕は彼等のところに行くよ」
「そうしてだね」
「そのうえでだね」
「皆を助ける」
「そうするね」
「僕は獣医でもあるから」
 人のお医者さんであるだけでなくです。
「だからね」
「そうだよね」
「それじゃあね」
「先生は皆を観ることも出来るから」
「それならね」
「その時は皆を助けるよ」
 これが先生の返事でした。
「是非ね」
「それが先生だよ」
「まさにね」
 オシツオサレツは先生のお話を聞いて頷いて言いました。
「僕達も助けてくれる」
「誰にもそうしてくれることがね」
「そうした先生だから」
 だからだとです、今言ったのは老馬でした。
「僕達も大好きなんだよ」
「これからも皆をお願いするわ」
 ポリネシアも言ってきました。
「宜しくね」
「先生が僕達の言葉をわかってくれてどれだけ嬉しいか」
 しみじみとです、トートーは言いました。
「わからないよ」
「そして先生がこうした人で」
 ホワイティは先生自身にお話しました。
「優しくて公平だからね」
「こんなにいい人いないからね」
 ガブガブは心から思いました。
「他には」
「そう、その先生がいてくれるから」
 ジップも言ってきました。
「僕達もいつも助かってるしね」
「それで琵琶湖の皆も助けてもらって」
 今度はチーチーが言います。
「水族館や動物園にいる皆もだね」
「何かあったら先生がいてくれるから」
 獣医さんであるだけでなく皆の言葉がわかるので何処がどう悪いかがわかる先生がとです、ダブダブは言いました。
「有り難いわ」
「若しも先生がいなかったら」
 どうかとです、トミ―も言ってきました。
「沢山の生きものが困っていましたよ」
「だから先生はね」
 本当にとです、王子も先生に言います。
「皆から慕われているんだ」
「皆を助けてくれますから」
「それも優しいし公平で温厚だから」
「そんな先生誰もが好きですよ」
「慕わない筈がないよ」
 まさにというのです。
「皆の友達なんだよ」
「そのことは有り難いよ」
「そうだね、それと先生」
 王子は先生にあらためて尋ねました。
「またサラさん来日するよね」
「今度の日曜にね」
「そうだね」
「何かと大変な時期だったからね」
「それでだね」
「久し振りの来日になるけれど」
 それでもというのです。
「今度の日曜にね」
「来日するんだね」
「ご主人と一緒にね。それで暫く日本に滞在して」
 そうしてというのです。
「お仕事をするよ」
「そうなんだね」
「それでうちにも来るよ」
 先生達のお家にもというのです。
「そうメールで言ってきたよ」
「それは何よりだね」
「うん、じゃあね」
「今度の日曜はサラさんと会おうね」
「そうしようね」 
 笑顔でお話してでした。
 皆はその日曜日にサラと会いました、サラはお家に来て西瓜をご馳走になってそのうえで先生に言いました。
「美味しい西瓜ね」
「気に入ってくれたかな」
「ええ、とてもね」
 サラは先生に笑顔で答えました。
「幾らでも食べられるわ」
「それは何よりね」
「滋賀県の西瓜なんだ」
「滋賀県っていうと」
 そう聞いてです、サラは先生に言いました。見れば先生達は四分の一に切った西瓜をスプーンで食べています。動物の皆もそれぞれ切った西瓜を食べています。勿論トミーと王子も西瓜をスプーンで食べています。
「京都府の東の県ね」
「知ってるんだ」
「そちらにもお仕事で行ったことがあるの」
 それでとです、サラは先生に笑顔で答えました。
「実はね」
「そうだったんだね」
「関西はもうどの府県にも行ったわ」
「お茶を求めてかな」
「そうなの、いいお茶の葉を探して」
 そうしてというのです。
「イギリスで売ってるから」
「八条グループと締結して」
「そうしているから」
「もう関西はなんだ」
「全部巡ったわ、やっぱり日本のお茶の葉はいいわね」
「そのことは定評があるね」
「ええ、いいお茶の葉が沢山あって」
 それでというのです。
「選ぶのに主人と一緒に苦労しているわ」
「そこまでだね」
「しかも日本ってお茶の種類が多いわね」
「紅茶だけじゃないからね」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「そのことも頭に入れて」
「それでお仕事をしているんだね」
「そうなの」
 実際にというのです。
「何かと大変よ、ただね」
「楽しくだね」
「健全にね、収入も得ているわ」
「それはいいことだよ」
「それも夫婦で」 
 仲良くというのです。
「そうしているわ」
「そのこともいいね」
「そして今はね」
「滋賀県の西瓜をだね」
「楽しんでいるわ。それで兄さん滋賀県に行って」
「うん、いい学問が出来たよ」
 先生はこのことは笑顔で答えました。
「まさに満喫だったよ」
「そうだったのね」
「滋賀県でもそれが出来たよ」
「よかったわね、ただね」
「ただ?」
「兄さん日笠さんにもこの西瓜を贈ったのかしら」
「贈ったよ」
 先生はすぐに答えました。
「日笠さんはお友達だからね」
「お友達なのね」
「うん、そうだよ」
「贈ったことはいいとして」
「他にも滋賀県名物をね」
「このことはいいけれど」
 それでもとです、サラは先生にどうかというお顔で言いました。
「お友達と言ったことは駄目ね」
「どうして駄目かな」
「それがわからないことも駄目よ」
「そのこともなんだ」
「どちらも駄目よ」 
 こう先生に言うのでした。
「全く以て」
「サラは本当に色々言うね」
「心配だから言うのよ」
「そうなんだ、けれどサラ日笠さんのこと知ってるんだね」
「僕達がいつもお話しているからね」
 王子が笑顔で言ってきました、西瓜を食べながら。
「だからね」
「サラも知っているんだ」
「そうだよ」
 こう先生に言うのでした。
「このことは」
「そうだったんだね」
「日笠さんはいい人だしね」
「全く。兄さんときたら」
 サラは今度はお口をへの字にして言いました。
「このことは自分で諦めてるから」
「さっきから言っている意味がわからないよ」
「そのわからないことがよ」
 まさにと言うサラでした。
「駄目だって言ってるの」
「何もかもって感じね」
「実際にそうよ、けれどね」
「けれど?」
「この前占い師の人に占ってもらったの」
「僕のことを」
「兄さん今以上に幸せになるわ」
 こうも言うのでした。
「そう出たわ」
「今以上になんだ」
「素敵な人とね」
「ううん、そうかな」
「そうよ、そう出たから」
「僕は今の時点で最高に幸せだけれど」
「だから幸せには限度がなくて」
 それでというのです。
「兄さんもね」
「今以上になんだ」
「幸せになるわよ」
「そうなんだね」
「だからね」
 それでというのです。
「兄さんいいわね」
「幸せにだね」
「今以上にね」
 まさにというのです。
「なってね」
「本当に今以上の幸せがあるのかな」
 先生はそう言われても首を傾げさせて言うのでした。
「果たして」
「あるわよ」
 サラの返事は一も二もないというものでした。
「絶対に」
「そうかな」
「そうよ、あと西瓜を食べて」
 サラはこうも言いました。
「その後はね」
「麦茶だね」
「それね。西瓜の後にミルクティーよりも」
 ホットです、イギリスでは紅茶というとそちらです。
「よく冷えた麦茶がね」
「いいね」
「あの組み合わせは何とも言えないわ」
「物凄く合うね」
「まさに最強と言っていいわ」
 サラはこうまで言いました。
「一度食べたら病みつきになるわ」
「日本にある最強の組み合わせの一つだね」
「そうね。西瓜の味も違うし」
「日本だとだね」
「お水がいいから」
「そう、西瓜は殆どお水だよ」
 先生は西瓜について笑顔でお話しました。
「まさにね」
「今の私達もジュース飲んでいる感じね」
「食べるというよりね」
 その実はというのです。
「そう言っていいよ」
「そうそう、西瓜ってね」
「食べていてもね」
「その実はね」
「殆ど水分だから」
「ジュース飲んでいるのと同じなのよね」
 動物の皆も西瓜を食べつつ言います。
「スポーツドリンクみたいな感じだっていうけれど」
「実際にそうだね」
「西瓜ってね」
「一体何かっていうと」
「そうなんだよね」
 トミーも皆の言葉を受けて言います。
「西瓜って殆どがお水だから」
「その土壌特にお水がいいとね」
 先生はトミ―にもお話します。
「西瓜の味もよくなるんだ」
「そうですよね」
「だからね」
 それでというのです。
「日本はお水もいいから」
「西瓜も美味しいんですね」
「そうなんだ」
「そしてお茶もね」
 サラはよく冷えた麦茶を飲みつつ微笑んでお話しました。
「お水もいいから」
「美味しいね」
「お茶もよ」
「お水がいいとね」
「余計に美味しくなるのよ」
「その通りだね」
「だから西瓜も麦茶も美味しいのよ」
 その両方がというのです。
「この通りね」
「そうだね、それじゃあだね」
「どんどんね」
「飲んでいくね」
「そうさせてもらうわ」
 こう言ってです。
 サラは西瓜を食べて麦茶も飲んで、でした。 
 そうして楽しんで先生にあらためて言いました。
「滋賀県だから琵琶湖ね」
「うん、あちらはね」
「琵琶湖のお水で栽培された西瓜ね」
「そうだよ」
「琵琶湖のお水もいいから」
「よくなったと言うべきかな」 
 先生はサラに微笑んでこう返しました。
「そのことはね」
「よくなったの」
「うん、一時期汚くなって皆が努力してね」
「また奇麗になってなのね」
「お水もよくなったというかね」
 それかというのです。
「戻ったんだよ」
「そうなるのね」
「それでその琵琶湖のお水で栽培された西瓜は」
 それはといいますと。
「サラもだね」
「美味しいと思うわ」
 実際に食べてそう思うというのです。
「本当に」
「そうなんだね」
「ええ、これはいいわ」
 サラは麦茶からまた西瓜を食べて言いました。
「本当にね」
「それは何よりだよ、じゃあね」
「ええ、皆でね」
「飲んで食べていこうね」
「そうしましょう、そういえば兄さん鯰を見付けたっていうけれど」 
 サラはこちらのお話もしました。
「よかったわね」
「ビワコオオナマズだね」
「あの鯰のことは私も聞いていたしあちらの水族館で見たけれど」
「見たんだ」
「ええ、けれど琵琶湖で見付けて水族館に連れて来られたことはね」
 本当にというのです。
「今回来て最初に聞いたけれど」
「これからは学園の水族館でも飼育することになったんだ」
「そうなのね」
「水族館でもはりきってるよ」
「そのこともよかったわね、ただね」 
 サラは先生にこうも言いました。
「兄さんの頑張りは本当に見事ね」
「そう言ってくれるんだね」
「あの鯰は天然記念物よね」
「そうだよ」
「それだけに貴重で数も少ないのにね」
「水族館に来てもらったよ」
「河童さん達のお力も借りて、その河童さん達が力を貸してくれる様な人がね」
 まさにというのです。
「兄さんなのよ」
「僕なんだ」
「そうよ、これからもそのいいところは大事にしてね」
「そうしてだね」
「頑張っていってね」
「そうさせてもらうよ」
 先生はサラに笑顔で応えました、そうしてです。
 滋賀県で採れた西瓜を食べました、その西瓜はとても美味しかったです。


ドリトル先生と琵琶湖の鯰   完


                  2020・5・11








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