『ドリトル先生と琵琶湖の鯰』




                第四幕  山を登って

 先生は琵琶湖の岸で琵琶湖の水質を検査してから皆に言いました。
「うん、よくなっているみたいだね」
「琵琶湖のお水奇麗なの」
「そうなのね」
「そうだよ、昔の数値と比べたら」
 検査の結果のそれと、というのです。
「かなりよくなったね」
「というか琵琶湖ってそんなに汚かったの?」
 ダブダブが先生に尋ねました。
「そもそも」
「そんなに汚く見えないけれど」
 トートーはその琵琶湖を見て言いました。
「別に」
「そうよね、これといってね」
 ポリネシアもそのお水を見て言います。
「汚いと思わないわ」
「むしろ奇麗だよね」
「そうよね」
 チープサイドの家族もその琵琶湖を見ています。
「泳げる位よ」
「それ位の奇麗さだね」
「というか夏は泳ぐ人いるよね」 
 ホワイティはこのことを指摘しました。
「だったら汚くないんじゃないの?」
「先生はそう言うけれど」
 ジップは先生に言いました。
「僕達から見れば奇麗だよ、琵琶湖は」
「景色もいいしね」
 老馬は周りも見ています。
「お水そのまま飲めない?」
「流石に生水は飲まないにしても」
 チーチーは先生がいつも言っている生水は一旦沸騰させてから飲むべきということから言います。
「それでも奇麗なのは事実だよ」
「けれど前はなんだね」
「汚かったのかな」
 こう言ったのはオシツオサレツでした。
「先生が言うにはね」
「そうだったんだね」
「琵琶湖の場所にもよるんじゃないの?」
 ガブガブはふと思いました。
「それは」
「そう、実際場所によって水質が違うし」
 先生は皆にお話しました。
「昔はもっと汚かったんだ」
「そういうことなんだ」
「今は奇麗になったのね」
「昔に比べて」
「それで琵琶湖の場所によっても違うんだ」
「そうだよ、それで全体を調べると」
 琵琶湖の水質をというのです。
「以前に比べて改善していると言えるね」
「それでそのことがいい」
「そう言うんだね、先生は」
「そういうことなのね」
「そうだよ、やっぱりお水は奇麗な方がいいよ」 
 先生は微笑んでこうも言いました。
「生きものが快適に棲める位にね」
「そうだよね」
「汚いと本当に棲めないからね」
「どんな生きものもね」
「そして奇麗過ぎてもね」
「かえって、なのよね」
「川も奇麗過ぎたらお魚は棲めないね」
 先生はこの場合もお話しました。
「どうしても」
「そうそう、それはね」
「奇麗過ぎてもね」
「本当に棲めないよ」
「川とか湖だけじゃなくて」
「どんな場所でもね」
「だから奇麗過ぎてもどうかだけれど」
 それでもというのです。
「今の琵琶湖はね」
「そこまでじゃなくて」
「汚過ぎてもいない」
「だからいいんだね」
「先生はそう言うのね」
「そうだよ、水質調査もして」
 そしてというのです。
「それでね」
「生きものもだよね」
「ちゃんと調べて」
「それで水族館にも送るのね」
「そうするよ、そちらもやっているけれど」
 ここで、でした。先生は。
 難しいお顔になってです、皆にこう言いました。
「ただね、外来種がね」
「あっ、日本以外の国から来た生きものだね」
「それが琵琶湖にもいて」
「問題なのね」
「うん、ブラックバスやブルーギルもいて」
 そしてというのです。
「タニシも問題だね」
「そうした生きものが琵琶湖にいて」
「それでなんだね」
「琵琶湖の生態系を乱しているんだ」
「そうしているの」
「そこが問題だね、外来種の問題は深刻なんだ」
 どうしてもというのです。
「日本においてね」
「よく言われるね」
「日本では」
「そのブラックバスについてもブルーギルについても」
「あとアライグマとかヌートリアとか」
「深刻な問題になってるね」
「ペットで持ち込んだり食べる為に入れたりして」
 そうしてというのです。
「日本に定着したけれど」
「それが生態系を乱して」
「大変なことになっているから」
「そのことをどうするか」
「それが問題なのね」
「そうだよ、その問題が琵琶湖でも起こっているんだ」
 先生達が今いるこの場所でもというのです。
「深刻な問題だよ」
「そうだね」
「どうしたものだろうね」
「ブラックバスもブルーギルも」
「そしてタニシも」
「一番いいのは食べることかな」
 先生は解決案を出しました。
「皆でどんどん食べればね」
「あっ、減っていくね」
「その外来種も」
「そうなるね」
「そうだよ、日本人はタニシも食べるしね」
 今お話しているこの貝もというのです。
「だからね」
「食べればいいんだ」
「そうすればいいのね」
「タニシにしても」
「生で食べたらよくないけれど」 
 それでもというのです。
「じっくりと煮て食べるとこれが美味しいよ」
「そういえば僕達も前に食べたことあったね」
「美味しかったね」
「結構食べられたよ」
「それで日本人はブラックバスやブルーギルも食べられるかって考えているんだ」
 その様にというのです。
「それでこの問題を解決しようとしているんだ」
「それエチゼンクラゲでもなかった?」
「クラゲが沢山海に出てきてるからって」
「そうしてたよね」
「そうだよね」
「うん、実際に食べているしね」 
 もうそうしているというのです。
「そしてね」
「ブラックバスやブルーギルもなのね」
「食べようと考えているのね」
「それで外来種の問題を解決する」
「そう考えているんだ」
「どうもどちらも苦労しているみたいだけれどね」
 どうして食べるかということについてです。
「何か美味しくないらしいから」
「そういえば美味しいってお話聞かないよ」
「ブラックバスもブルーギルも」
「どうもね」
「どちらもね」
「そう、しかも淡水魚だね」
 先生はこのお魚達のこのことも指摘しました。
「そうだね」
「あっ、寄生虫だね」
「淡水魚はどうしてもこの問題があるね」
「だから生で食べられないね」
「そうそうは」
「そう、鯉にしてもそうだね」
 このお魚は先生もお好きです、ですがというのです。
「信頼出来るお店以外では食べられないね」
「下手に食べたらね」
「やっぱり寄生虫がいるから」
「だからね」
「食べるにあたって注意しないとね」
「そう、駄目だから」 
 それでというのです。
「ブラックバスもブルーギルもね」
「まず生で食べられない」
「そういうことね」
「じゃあお刺身やカルパッチョでは食べにくい」
「このことも問題ね」
「そうだよ、色々調理に挑戦していても」
 それでもというのです。
「中々上手くいっていないみたいよ」
「難しいことね」
「本当に」
「何かとね」
「今回の事態はね」
「そうだよ、けれど食べて問題を解決することは面白いね」
 先生はこのこと自体は笑顔で言いました。
「ここは是非解決しないとね、そして僕も日本人だからね」
「そうそう、国籍がそうなったから」
「それだけにね」
「頑張っていこうね」
「是非ね」
「そうしていこう、それとね」
 先生はさらにお話しました。
「この後はね」
「この後は?」
「この後はっていうと」
「どうするの?」
「これから」
「安土城の跡地に行こうね」
 こう皆に言うのでした。
「そうしようね」
「そうするのね」
「これから」
「前から言ってたけれど」
「そっちに行くのね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「色々観て回ろうね」
「昨日の彦根城みたいに」
「観て楽しむ」
「そうするのね」
「そうしようね」 
 こう言ってでした、先生は水質調査と生物の採集の後で皆を安土城に行きました。するとそこにあったのは。
 跡地でした、しかも山を登っていくので。
 皆は先生と一緒に山を登りつつ先生に言いました。
「いや、険しいね」
「日本のお城って山にあることが多いけれど」
「この安土城もなのね」
「そうなのね」
「そうだよ、この安土城はね」
 このお城のことをさらにお話するのでした。
「山全体をお城にしたんだよ」
「そうしたお城もあるよね」
「日本のお城って」
「それだけに堅固だよね」
「それでこの安土城もだったのかな」
「それがどうも御殿の意味合いが強くて」
 それでというのです。
「あまり守りは堅固じゃなかったって説もあるのよ」
「そうなんだ」
「山全体をお城にしているのに」
「それでもなんだ」
「そう、それがね」
 それがというのです。
「天守閣も変わった造りだったしね」
「そうだったんだ」
「今はないけれど」
「そうした場所だったんだね」
「そうだよ、あと姫路城のお城はね」
 そこはといいますと。
「中は言うなら櫓だったね」
「そうそう、言うならね」
「そんな場所だったね」
「殺風景と言えば殺風景だったね」
「最上階以外はね」
「それが安土城の天守閣は天主閣と書いてね」
 読み方は同じでも漢字が違うのでした。
「中は御殿で信長さんはそこに住んでいたんだ」
「へえ、天主閣になんだ」
「そうだったんだ」
「けれどそれもだね」
「かなり変わってなんだね」
「普通のお城はお殿様は本丸の御殿に住んでいたからね」 
 他のお城はそうだったというのです。
「そこが違っていたんだ」
「安土城は」
「それで織田信長さんもだね」
「違っていたんだね」
「守りよりも宗教的な意味合いが強かったみたいだしね」
 安土城の天主閣はというのです。
「何かと違っていたんだ」
「ううん、そんなお城だったんだ」
「何か他のお城とは別だね」
「ここはそうしたお城だったんだ」
「他のお城と違って」
「そうだよ、それとね」
 先生はさらにお話します。
「このお城はさっき堅固でないと言ったけれど」
「うん、違う気がするよ」
「どうもね」
「山全体をお城にしてるから」
「守りも堅いよ」
「絶対にそうだよ」
「うん、このお城を攻めようと思ったら」
 それこそというのです。
「かなり苦労するよ」
「間違いなくね」
「そうなるよね」
「登るのにも一苦労だし」
「そんなお城を攻めようと思ったら」
「かなり大変だよ」
「全くだよ、城壁や櫓はかなり多くて石垣も高かったそうだし」
 それでというのです。
「攻めにくかったと思うよ」
「そうした説があっても」
「実際はだね」
「このお城は堅固だったんだね」
「山全体をお城にしていて」
「そうだったと思うよ、僕はね」 
 これが先生の説だというのです。
「攻めにくいと思うよ」
「登るだけでも一苦労で」
「しかもそこに城壁や櫓が多いと」
「石垣も高いと」
「かなり攻めにくいね」
「確実にね」
 こうお話しつつ城跡を登っていってでした、そのうえで。
 先生達はお城の頂上に着きました、そこには何もありません。ただ何か大きな建物があったみたいな感じです。
 そこに着いてです、先生は皆にお話しました。
「ここがだよ」
「天主閣があった場所ね」
「この安土城の」
「そうした場所ね」
「そうだよ、ここがね」
 まさにというのです。
「その場所だよ」
「物凄く高い天主閣があったのね」
「姫路城や大阪城みたいな」
「それがあったんだ」
「この場所に」
「この天主閣があったんだ」
 先生は懐から図鑑を取り出しました、そこには五層七階の見事な天主閣が描かれていました。瓦は青で最上階は朱塗りと金箔で飾られています。
 その天主閣を見てです、皆は言いました。
「何度見ても凄いね」
「素晴らしい天主閣だよ」
「何かキリスト教の教会にも似てるね」
「日本の趣の中に」
「それもあるね」
「これは織田信長さんのセンスだね」
 それによるものだとです、先生はお話しました。
「まさにね」
「色々奇抜な人だったっていうけれど」
「こうしたお城も築かせる位だったんだ」
「これは凄いね」
「かなりのセンスだね」
「しかも特別な日に夜にこの天主閣の周りを提灯を沢山置いてね」
 そうしてというのです。
「ライトアップもしたんだ」
「戦国時代にそうしたんだ」
「もっと言えば安土桃山時代だけれど」
「その時代にそうするなんて」
「独創的だね、織田信長さんって」
「戦争や政治だけじゃなくて」
「そっちも凄い人だったんだ」
 皆は先生からそう聞いてしみじみと思いました。
「つくづくね」
「お話をすればする程凄い人だね」
「流石天下人だね」
「そうなっただけはあるよ」
「尾張、愛知県の一大名からはじまって」
 そしてというのです。
「桶狭間で勝って二十年で天下人だよ」
「駆け抜けた感じだね」
「そんな人だね」
「もうあっという間にそうなった」
「当時はそうだっただろうね」
「うん、途中数多くの戦いがあって勝ってね」 
 そしてというのです。
「どんどん斬新な政治をしていってね」
「関所をなくしたんだよね」
「それで南蛮、スペインやポルトガルの人と貿易をして」
「楽市楽座とかもして」
「天下人になったね」
「そうなったから」
 だからだというのです。
「凄い人だったことは事実だよ」
「そのことは間違いないね」
「最近日本以外の国でも知られてきたけれど」
「日本が世界に知られる様になって」
「そうなってね」
「しかも言われている程残酷でも無慈悲でもなかったんだね」
「そう、というか家臣のことがわかっている人だったよ」 
 織田信長という人はとです、先生は皆に天主閣の絵を見せつつお話しました。
「実はね」
「先生がいつも言っている通りにね」
「そうだね」
「第六天魔王とか言ってたけれど」
「その実は」
「魔王でもなかったよ」
 そうした人でもなかったというのです。
「というか実際にそう自称していたかもね」
「わからないの」
「本当に織田信長さんがそう自称していたのか」
「そのことは」
「そうなんだ、とはいってもね」
 このことはというのです。
「定着はしているね」
「そうだよね」
「織田信長さんっていうとね」
「尾張のうつけとも言われてるけれど」
「第六天魔王とも呼ばれてるね」
「完全に定着しているね」
「史実とイメージは違うけれど」
 それでもというのです。
「織田信長さんのイメージは強烈にね」
「残ってるね」
「本当に」
「どうにもね」
「けれど実際の織田信長さんは決して残酷でも苛烈でもない」
 決してというのです。
「そのことは覚えておかないとね」
「そうだね」
「そのことは覚えておいて」
「織田信長さんのことを考えていこう」
「実際のあの人はどうだったかとね」
「そうしていこうね、じゃあね」
 ここまでお話してでした、先生は皆にこう言いました。
「ここから下りてね」
「お昼だね」
「お昼は焼き肉だったね」
「近江牛のね」
「それを食べるんだね」
「そうしようね」 
 笑顔でこう言ってでした、先生は皆に城跡から出るつまり山から下りることをお話してでした。お昼にです。
 焼き肉を食べてまた琵琶湖の水質調査や生物採集に励んででした、それで言うのでした。
「漁獲量が減っていることはね」
「琵琶湖の?」
「そうなっているんだ」
「そういえばこの湖広いしね」
「お魚も獲れるわね」
「そう、だからここでは漁業も盛んだけれど」 
 それでもというのです。
「それがね」
「減っているんだ」
「そうなのね」
「残念なことに」
「そう成っていることの大きな原因はね」
 それは何かといいますと。
「外来種なんだよね」
「午前中にお話してくれた」
「それのせいなんだ」
「だからなのね」
「湖のお魚が減っているのね」
「そうなんだ、外来種が在来種を食べて在来種の数が減って」
 そしてというのです。
「外来種が増えていっているんだ」
「タニシとかだね」
「それでブルーギルやブラックバスもだね」
「増えていっていて」
「琵琶湖の漁獲量が減っているのね」
「そうなんだ、実際生物の調査をしたら」
 採集も兼ねてです。
「ブラックバスやブルーギルが多かったね」
「そうだね」
「実際にね」
「鯉とか鮒は少なくて」
「そうしたお魚が多かったね」
「このブラックバスやブルーギルが多いことが」
 どうしてもというのです。
「問題だよ、日本全体でね」
「問題になっているんだね」
「外来種が増えて在来種が減っている」
「そうして日本の生態系が乱れている」
「そのことが問題なんだね」
「そうだよ、本当にタニシにね」 
 外来種のそれにというのです。
「ブラックバスやブルーギルもね」
「どうするか」
「そのことが問題だね」
「これからは」
「一体どう解決するか」
「そのことを考えていかないとね」
 先生は難しいお顔になって言いました。
 そしてです、こうも言うのでした。
「これが山もだからね」
「日本は物凄く山が多いけれど」
「そちらもだね」
「山の生態系も乱れていて」
「問題になっているのね」
「そうだよ、こちらは外来種の問題もあるけれど」
 それに加えてとです、先生は琵琶湖の周りを囲んでいる山々を見回しつつ皆にお話しました、今は比叡山の方を見ています。
「山の方はもう一つ問題があるんだ」
「というと?」
「どんな問題なの?」
「もう一つっていうと」
「それは一体」
「僕は依然奈良県と和歌山県の境でニホンオオカミを発見したね」
 そしてというのです。
「そうだったね」
「あっ、ニホンオオカミずっと絶滅したって言われてて」
「先生が発見して生き残ったことがわかったね」
「そうだったね」
「そういえばね」
「かつてニホンオオカミは日本全土の山にいたんだ」
 そうだったというのです。
「そうして山の鹿や猪を食べていたんだ」
「ああ、それでなんだ」
「そうして田畑を荒らす獣を食べてね」
「獣害を防いでいたんだ」
「そうだったのね」
「そう、けれど明治から彼等がいなくなって」 
 数を大きく減らしてというのです。
「その結果ね」
「鹿や猪が増えて」
「生態系が乱れて」
「そして食べものがなくなって人里に降りてきて」
「田畑を荒らす様になったんだ」
「狼がそれを防いでくれていたことは昔から知られていて」
 それでというのです。
「狼は『おおかみ』と読むね」
「うん、日本ではね」
「中国語読みでは『ろう』でね」
「日本では『おおかみ』で」
「ちなみに英語ではアルファベットで『ウルフ』だね」
「そうなっているけれど」
 それでもというのです。
「何故日本ではそう読むのか」
「『おおかみ』とだね」
「そう読むのか」
「それはどうしてか」
「それは大きな神だったからだよ」
 狼はというのです。
「素晴らしい、偉大な神様というね」
「田畑を荒らす獣を食べてくれるから」
「それでなんだね」
「先生前にもこうしたことお話してくれたかな」
「そういえば」
「そうだったかな」
「僕もそんな気がするよ、日本は農耕文化で」
 このこともお話するのでした。
「本当に田畑が大事だね」
「牧場とかずっとなかったし」
「家畜も農業の為のもので」
「狼に襲われないし」
「そもそも狼は人を襲わないよ」 
 先生はこのこともお話しました。
「欧州じゃよくそう言われるけれど」
「それはだね」
「その実はだね」
「狼は人を襲わない」
「だから家畜にもなって」
「それで犬にもなったのよね」
「そうそう、僕のご先祖は狼だよ」
 ジップも言ってきました。
「そのはじまりはね」
「僕は猪でね」
 ガブガブも言いました。
「それぞれルーツがあるんだよね」
「私だって鴨だったし」
 ダブダブもそうでした。
「最初はそうだったのよね」
「僕だって最初はもっと野性的だったね」
 ホワイティも自分のことを言います。
「ご先祖様は」
「馬だって最初は野性だったね」
 老馬も自分のことをお話します。
「それが家畜になったんだよね」
「それで狼は人を襲わないから」
 だからだとです、ポリネシアは語りました。
「犬になったから」
「狼が人を襲うっていうのは間違いだね」
「そうね」
 チープサイドの家族もお話します。
「このことはね」
「先生がよく言ってるけれど」
「欧州じゃ狼は人を襲うっていうけれど」
 トートーも言います。
「それは違っているってことね」
「牧場の家畜を襲ったりするから怖がられて嫌われていて」
 こう言ったのはチーチーでした。
「悪魔みたいに思われていたんだね」
「欧州の狼の絵とか凄い獰猛で邪悪そうだしね」
「もう凄いね」
 このことはオシツオサレツが言いました。
「今にも襲い掛かってきそうな」
「実際に人や家畜を襲っていたりするし」
「そうだね、けれどそれは牧場があるからで」
 そこにいる家畜達を襲うからだというのです。
「日本ではそういうものがなかったからだよ」
「狼は嫌われていなくて」
「逆に大事に思われていたんだ」
「そうなのね」
「そうだよ、だからね」
 先生はさらにお話しました。
「日本では非常に有り難いと思われていて」
「それでだね」
「その狼がいなくなって」
「日本の山の生態系が乱れた」
「そうなんだね」
「そうだよ、そのこともね」
 どうにもというのです。
「問題なんだ」
「ううん、川も山もなんだ」
「もっと言えば湖も」
「これは深刻ね」
「どっちのこともね」
「河川や湖も深刻だけれど」
 今目の前にある琵琶湖もというのです。
「それ以上かもね、山のことは」
「日本の獣害凄いしね」
「お金にしたらかなりの額よね」
「鹿に猪、猿に狸って」
「あと熊も出るそうだし」
「日本の漁業と農業の深刻な問題で」
 それでというのです。
「少しずつでもね」
「解決していかないといけないのね」
「どちらのことも」
「何とかしないといけないのね」
「社会問題だよ、産業にも関わっているし」
 日本のそれだというのです。
「山は猟師さんがいてくれていても」
「数が少ないの?」
「そうなの?」
「猟師さんは」
「うん、高齢化も問題だし」
 先生はどうにもという顔でお話しました。
「日本は銃の規制が厳しいね」
「そうそう、物凄くね」
「銃刀法があって」
「危険なものは迂闊に持てないからね」
「包丁だってね」
「それが日本の治安に役立っているけれど」
 それでもというのです。
「銃の使用に厳しくてね」
「それで猟師さんも少なくて」
「獣達を駆除しきれていない」
「それも問題なのね」
「田畑を守る為には必要だけれど」
 それでもというのです。
「猟師さんを増やさないとね」
「何かと難しいね」
「というか難しいことばかりだね」
「どうにもね」
「環境のことは」
「お水や空気は奇麗になったけれど」
 この問題は改善されているというのです。
「けれどね」
「それでもだね」
「生態系の問題がある」
「この問題をどうするか」
「それが深刻なことで」
「日本の重要な課題だね」
「ここで難しいのはブラックバスやブルーギルを放流する人がいるんだ」
 そうした人達がいるというのです。
「釣りで人気だからね」
「えっ、そんなの放流したら」
「それこそ日本中に広まって」
「それで大変なことになるよ」
「今でも充分大変なのに」
「そう、それでね」 
 実際にというのです。
「大変なことになっているから止めてもね」
「する人がいるんだ」
「釣りをする人達の中には」
「自分達の楽しみの為に」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「この人達を止めてね」
「ブラックバスやブルーギルは食べる、だね」
「何とか美味しい調理方法を見付けて」
「それでだね」
「減らしていって」
「そして山の方はニホンオオカミを増やして山に戻すと共に」
 それに合わせてというのです。
「猟師さんを増やして頑張ってもらうことかな」
「地道だね」
「どっちのことも」
「長い時間がかかりそうね」
「すぐに解決することじゃないね」
「環境のことはそうだよ」
 先生は眉を曇らせた皆にこうお話しました。
「どうしてもね」
「すぐには解決しないのね」
「生態系のことも」
「一朝一夕では終わらない」
「そうした問題なんだ」
「ローマは一日にして成らずというね」 
 この諺も出しました。
「そうだね」
「環境も然りで」
「すぐに問題は解決しないから」
「じっくりと腰を据えてあたって」
「改善していくしかないのね」
「そう、植林だってそうだね」 
 こちらもというのです。
「木を植えてすぐに木は大きくならないね」
「時間かかるよね」
「どうしても」
「木は大きくなることに時間がかかるから」
「それこそ十年単位のお話で」
「そういうことなんだ、環境のことは時間がかかるから」
 だからだというのです。
「時間をかけてね」
「それでだね」
「やっていくべきものだね」
「苦労するけれど」
「それでも」
「そうだよ、琵琶湖のことも」
 何としてもというのです。
「腰を据えてやっていかないとね」
「増えたブルーギルやブラックバスをどうするか」
「確かに多いけれど」
「じっくりとやっていく」
「そうすべきことね」
「そうだよ、あとブラックバスやブルーギルは採集しないから」
 彼等はというのです。
「もう八条学園の水族館にいるからね」
「だからだね」
「彼等は採集しなくて」
「他の種類の生きものを採集していく」
「そうしていくのね」
「そうだよ、そういうことでやっていくよ」
 こう言ってです、先生は午後も頑張りました。そうして朝早くから夕暮れまで頑張ってからホテルで、でした。
 和食を食べました、鯉のお刺身やお味噌汁、お豆腐が出ていて他にはです。
 動物の皆が見たことがない食べものを見てそれで皆で先生に尋ねました。
「これ何?」
「見たことないけれど」
「これは一体何かな」
「というか食べもの?」
「干したものかしら」
「これが鮒寿司だよ」
 先生はその小さくて干物みたいなものについてお話しました。
「滋賀県名物のね」
「へえ、それがなんだ」
「お寿司には見えないけれど」
「それでもなんだ」
「それが鮒寿司なの」
「そうなんだ」
「そうだよ、これが鮒寿司で」
 それでというのです。
「珍味として知られているんだ」
「ううん、握り寿司とは違うね」
「巻き寿司やちらし寿司とも」
「そういえばご飯もあるね」
「お魚と一緒に」
「随分小さいけれど」
「これは馴れ寿司という古いお寿司で」
 それでというのです。
「お魚の中にご飯を入れてずっとお酢の中に入れたものなんだ」
「ふうん、そうなんだ」
「それが鮒寿司なの」
「本当に握り寿司と全く違うけれど」
「そんなお寿司だったんだ」
「本来は馴れ寿司がお寿司の主流でね」
 そうだったというのです。
「その代わりに出されたのが握り寿司だったんだ」
「今じゃお寿司っていうとそれだけれど」
「握り寿司だけれど」
「本来は違っていたのね」
「馴れ寿司がお寿司で」
「握り寿司はなかったの」
「握り寿司が出たのは江戸時代だったからね」 
 その頃からのものだというのです。
「本当にそれまでは、だよ」
「馴れ寿司だったんだ」
「それでその鮒寿司が馴れ寿司で」
「昔ながらのお寿司なのね」
「そうなんだ、もう長い間お酢に漬けていて発酵さえしていて」
 それでというのです。
「匂いもするけれどね」
「確かに匂うね」
「臭いと言ってもいいかも」
「さっきから気になっていたけれど」
「独特の匂いだね」
「時間をかけて作るだけあって高価だしね」
 お値段の問題もあるというのです。
「中々おいそれとは食べられないものだけれど」
「食べてもいいんだね」
「このお寿司も」
「そうなのね」
「そうだよ、だから食べていこうね」
 是非にというのです、こう言ってでした。
 先生は皆と一緒に鮒寿司を食べました、するとまず皆が言いました。
「うん、確かにね」
「これは珍味だよ」
「そうそう味わえない味だよ」
「こんな味もあるんだ」
「不思議な食べものだね」
「そうだね、これが馴れ寿司の味だね」
 先生も食べてから言いました。
「不思議な味だよ」
「全くだね」
「世の中こんな味もあるんだ」
「というか僕達鮒自体食べたことないよね」
「鯉はあったけれどね」
「うん、僕もなかったよ」
 先生にしてもです。
「鯉はあるけれどね」
「鯉のお刺身はね」
「これはあるよね」
「美味しいって知ってるよ」
「ちゃんとね」
「実際に美味しいよ、お刺身もお味噌汁も美味しくて」
 それにとです、先生は鯉の唐揚げにもお箸をやりました。そしてその唐揚げを食べてそうして言いました。
「この唐揚げもね」
「美味しいね」
「鯉は確かに美味しいね」
「しかもこのホテルは信頼出来るし」
「安全でもあるから余計にいいね」
「うん、ただね」
 それでもというのです。
「鮒は本当になかったね」
「日本の何処にもいるけれどね」
「鮒は食べないね」
「鯉は食べることがあっても」
「どういう訳かね」
「やっぱり鮒は鯉程美味しくなくて」
 それでというのです。
「泥臭いし虫もね」
「いるから」
「だからなのね」
「鮒はあまり食べないんだ」
「そうなんだね」
「うん、しかも小さいからね」
 大きさのお話もしました。
「だから尚更ね」
「食べないんだね」
「鮒料理って実際に聞かないしね」
「どうにもね」
「昔は結構食べたかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「今はないね」
「そうだよね」
「あたりそうでね」
「ちょっとね」
「食べないね」
「どうもあまり美味しくないみたいだしね」
 先生はこうも言いました。
「美味しかったら日本人もよく食べているね」
「今もね」
「鯉みたいにね」
「そうしているわね」
「実際に鯉は食べているね」
 先生はその鯉のお刺身を食べながら言います、食べながらそのうえで日本酒も飲んでそちらも楽しんでいます。
「そうだね」
「美味しいからね」
「そうしているね」
「実際にね」
「そう、けれどね」
 それでもというのです。
「鮒のお刺身とかないね」
「ないね」
「唐揚げにも天婦羅にもしないし」
「お味噌汁にもしないし」
「鮒こくとかないし」
「ちなみに鯰料理のお店は東京にあるよ」
 こちらのお魚の場合はといいますと。
「それで結構美味しいんだよね」
「先生昔鯰食べたことあったね」
「アマゾンに行った時に」
「あそこ鯰多いからね」
「それで食べたけれど鯰は美味しいよ」
 こちらはというのです。
「日本ではあまり食べないけれどね」
「美味しいことは美味しくて」
「先生もそれは知ってるけれど」
「けれど鮒については」
「どうしてもなのね」
「そうなんだ、どうもね」
 これがというのです。
「聞かないからね」
「本当に鮒寿司だけだね」
「これだけだね」
「今食べるっていったら」
「そうだね」
「うん、その鮒寿司も食べたしね」
 それでとです、先生はまた言いました。
「これと鯉を英気にして」
「明日も頑張っていこう」
「琵琶湖を調べて歴史も学んで」
「楽しくやっていこうね」
「是非共ね」
 先生は皆に笑顔で応えました、そうして琵琶湖でのお仕事と学問を楽しく続けていくのでした。それは先生にとって素敵な時間でした。








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