『ドリトル先生の野球』
第十幕 目覚めたら
女王のお誕生日つまりパーティーの日もいよいよ明日となりました、その時には招待する人達もです。
「今向かっておられるとのことです」
「こちらになのね」
「はい、ですから」
それでとです、ケーキは女王に笑顔でお話しました。
「明日は皆来られて」
「そしてなのね」
「楽しいパーティーとなります」
「いよいよね、ただね」
「ただ?」
「お祝いしてもらう立場だからということで」
それでというのです。
「じっとしていることはね」
「女王としてはですね」
「残念だったわ」
「ご自身が動かれることが好きなんですね」
「そうなの、それにフェアリーは活発な種族でしょ」
種族のお話もするのでした。
「そうでしょ」
「はい、身体を動かすことが好きですね」
「種族としてもね」
「そうでしたね」
「歌や踊りも好きだけれど」
それだけでなくというのです。
「労働もね」
「好きですか」
「歌いながらね」
「あっ、フェアリーの人達も」
「よく歌うでしょ」
「そうしながら働かれていますね」
「本当に歌はね」
こちらはというのです。
「大好きだから」
「それで、ですか」
「歌いながらの労働はね」
「女王様もお好きですか」
「だからそれらもしたかったけれど」
それがというのです。
「出来ないことがね」
「残念ですか」
「とてもね」
こうケーキにお話しました。
「今回は」
「ではです」
マユがその女王に笑顔で言ってきました。
「私達のお誕生日のパーティーの時にね」
「宜しくお願いします」
アイリも女王に言います。
「その時は私達が主役で動けなくなりますから」
「それならいいですよね」
ミナミは女王ににこりと笑って言いました。
「お互い様ということで」
「主役は動いたら駄目なら」
それならとです、ナナミは女王にお話しました。
「七人それぞれが順番ですればいいんですよ」
「それなら一緒ですし」
カヤも女王に言います、とても優しい笑顔で。
「恨みっこなしですよね」
「残念に思われることもないですし」
最後にミユが言ってきました。
「皆がそうですから」
「そうね、こうしたパーティーははじめてするけれど」
それでもとです、女王は六人の大臣の言葉に頷きました。
「それならね」
「問題ないですね」
「そうしていきましょう」
「私達それぞれのパーティーをすることは決まっていましたし」
「それならです」
「順番にです」
「主役は動かない様にしましょう」
六人もこう言います、そしてです。
七人は笑顔で主役は動かないでパーティーを楽しみにして待っておくことを決めました。そうしてでした。
そのお話を聞いてです、ケーキはこんなことを言いました。
「いい取り決めですね」
「そうね」
ケーキの隣にいるアン王女も頷きます。
「フェアリーの国はいつもこうして政治をしているのね」
「七人でお話をして」
「そうしてなのね」
「はい、そうしています」
実際にとです、女王は王女に答えました。
「楽しく」
「貴女一人でなくて」
「七人全員がいまして」
それでというのです。
「色々お話して相談し合いながらです」
「決めているのね」
「そうしています、あと」
「あと?」
「私はこの国の女王ですが」
それでもという口調で、です。女王は王女にお話しました。
「わかっていることがあります」
「わかっていることはというと」
「私が治めるこの森があるオズの国を治める方はどなたか」
「オズマ姫ということは」
「わかっています」
このことはというのです。
「しっかりと」
「そのことはなのね」
「はい、私は女王ですが」
その立場にあることは事実でもというのです。
「ですがこの国の主はです」
「オズマ姫ね」
「はい」
まさにというのです。
「しっかりと」
「それは私よりずっと立派ね」
王女は女王のお話を聞いて言いました。
「それはまた」
「それはどうしてですか?」
「だって貴女は最初からそのことがわかっていて」
それでというのです。
「謙虚でいるわね」
「それで、ですか」
「私なんてね」
王女は少し苦笑いになりました、そうして女王に自分の過去のことをお話しました。
「オズの国を征服しようと思って」
「あっ、それで軍隊を編成されましたね」
「そしてね」
そのうえでだったというのです。
「実際にね」
「オズマ姫がおられるエメラルドの都まで、ですね」
「攻め込んで」
そしてというのです。
「そしてね」
「オズの国の主にですね」
「なろうと思ったから」
だからというのです。
「私よりずっと立派よ」
「そうですか」
「そう、私のことを思うと」
こう女王にお話するのでした。
「遥かにね」
「ですがアン王女はです」
「すぐにお考えをあらためられて」
「それで、ですよね」
「すぐにオズマ姫がオズの国の主と認められ」
「今は、ですね」
「そうしたお考えはないですね」
六人の大臣達が王女に言ってきました。
「だったらそれで問題ないのでは」
「特に」
「これといってです」
「悪いとは思わないですよ」
「お考えをあらためられましたし」
「それでは」
「そうかしら。まああの時私は世間知らずだったわ」
オズの国を征服しようとした時に比べてです。
「自分の国、村のことはね」
「何もですか」
「ご存知なかったですか」
「これといって」
「それでオズの国の主になられようとですね」
「思われたんですね」
「そうだったわ、本当にあの時の私は世間知らずだったわ」
オズの国のことを何も知らなかったというのです。
「それでそう思ったのよ、けれど」
「確かすぐにですね」
「オズの国のことを知られたんですよね」
「ドロシー王女にもお会いして」
「それですぐにでしたね」
「そうしたお考えはなくされましたね」
「そうでしたね、ならですよ」
問題ないとです、六人で王女に言います。そしてケーキも王女に言いました。
「私もそう思いますよ」
「考えをあらためたからなのね」
「それに征服されてどうされるおつもりでした?」
「いや、特にね」
これといってとです、王女はケーキに答えました。
「悪いことはね」
「されないおつもりでしたね」
「別にね」
これといってというのです。
「考えていなかったわ」
「そうですか」
「本当にね」
実際にというのでした。
「まあ普通に働いてね」
「そしてですね」
「やっていくつもりだったの」
「そうですね」
「ええ、別に昔のノーム王の様な」
そうしたというのです。
「悪いことはね」
「全くですね」
「考えていなかったわ」
「ならです」
「いいっていうのね」
「はい、もう」
こう王女に言うのでした。
「本当に」
「ううん、そんなものなのね」
「というかです」
「というか?」
「一つ思うことは」
それはといいますと。
「いきなりそう思われるとは」
オズの国を征服しようとです。
「王女も凄いですね」
「だから世間知らずだったのよ」
「世間知らずといっても」
「凄いっていうのね」
「そうしたお考えに至るとは」
「ただ井戸の中の蛙だっただけだから」
それでと言う王女でした。
「別にね」
「凄くないですか」
「ええ、私は世間知らずだったのよ」
王女の口調はあっさりしたものでした。
「凄いってことじゃないわ」
「そういうものですか」
「そうよ、さてそれでね」
王女はここでお話を変えました、今度のお話はといいますと。
「これからのことを考えて」
「そしてですか」
「色々用意していきましょう、いよいよ明日でしょ」
女王のお誕生日のパーティーはというのです。
「それならね」
「明日に備えて」
「最後の用意をしましょう」
「そうですね、これからが大事ですし」
ケーキも王女の言葉に応えました、王女の今の言葉は全く以てその通りのことであると感じたからです。
「それじゃあ」
「今日はね」
「最後の用意ですね」
「ナターシャ達とも一緒にね」
「進めていくべきですね」
「貴女お菓子沢山作ったわね」
「はい、ケーキも杏仁豆腐も和菓子も」
そうしたものをというのです。
「作ってきました」
「じゃあそちらのね」
「最後の用意もですね」
「していきましょう」
「わかりました」
こうお話してでした。
皆で明日のパーティーの最後の用意に取り掛かりました、そうしてその中にはです。
ナターシャ達もいます、五人でケーキが作っている特大のデコレーションケーキを作っていますが。
そのケーキを見てです、ナターシャはケーキに尋ねました。
「お聞きしたいことがあるんですが」
「何かしら」
「このケーキは」
今ケーキが作っているそれはというのです。
「お城ですけれど」
「ええ、奇麗でしょ」
「お城といいましても」
それは確かでもというのです。
「宮殿ですね、これはエルミタージュですね」
「私がお家にいる時に見た写真を元に作ったの」
「そうなんですか」
「ええ、オズの国にはこの宮殿もあるの」
「エルミタージュも」
「美術館としてあるの」
この宮殿はというのです。
「ちゃんとね」
「そうだったんですね」
「王室が持っている美術館の一つよ」
「それは外の世界のエルミタージュと同じですね」
「どう同じなのかしら」
「はい、エルミタージュはロシアにありますけれど」
つまりナターシャのお国にです。
「最初はエカチェリーナ女帝が建てて」
「そうの人がなの」
「ロシアの偉大な女帝だった人で」
「オズマ姫みたいな?」
「立場は近いかも知れないですね」
そのオズマと、というのです。
「女の人で国家元首でしたから」
「そうなのね」
「大人の人でしたけれど」
そこは違うというのです。
「それでもです」
「女の人で国家元首だったことは同じね」
「それで文学や芸術や哲学はお好きで」
「そこもオズマ姫に似ているわね」
「そうですね、そして」
さらに言うナターシャでした。
「その人が建てさせた宮殿で今は」
「美術館になっているのね」
「はい」
そうなっているというのです。
「そしてですね」
「オズの国でもなのね」
「美術館で」
それでというのです。
「とても奇麗だから」
「こうしてですね」
「ケーキのモデルに使ったけれど」
「まさかオズの国にエルミタージュがあって」
それでと言うナターシャでした。
「こうしてケーキとして見られるなんて」
「思わなかったのね」
「夢にも」
「そうだったのね」
「ですから」
それでというのです。
「本当に嬉しいです」
「いや、オズの国は不思議の国だけれど」
神宝はそのケーキを皆と一緒に作りつつ言います。
「こうした不思議もあるんだね」
「まさかここにもエルミタージュがあって」
ジョージの手も動いています。
「こうしてケーキのモデルにもなるとか」
「これもまたオズの国ということね」
恵梨香はケーキの屋根を作っています、五人共それぞれケーキの指示通りに動いてテキパキと作っています。
「お伽の国で」
「不思議なことが一杯あって」
それでと言ったのはカルロスでした。
「まさかということもあるのね」
「もう何でもあるのがオズの国で」
それでとです、ナターシャはまた言いました。
「こうしたこともあるんですね」
「そうね、アメリカにはナターシャのお国から来た人もいるのよね」
「ロシア系の人もですね」
「そうよね」
「アメリカはそうした国ですから」
移民の国なので世界中から人が集まる国です、だからナターシャのお国であるロシアからも人が来ているのです。
「ですから」
「そうね、だからね」
「ロシア人の心にはエルミタージュがあって」
「それがね」
「その心がアメリカに入って」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「オズの国はアメリカが反映されるから」
「こうしてですね」
「エルミタージュもあるのよ」
「そういうことですね」
「大阪もあるしね」
ケーキはくすりと笑ってこうも言いました。
「だからよ」
「それで、ですか」
「そう、そしてね」
それにというのでした。
「美術館にもなっているから」
「その中はですね」
「色々な芸術品があるわ」
「一度それも見たいですね」
「そうよね、あとベルサイユ宮殿もあるわよ」
「そちらもですか」
「そうよ、そちらもあるから」
だからだというのです。
「一度ね」
「行ってみてもですね」
「いいと思うわ」
ベルサイユ宮殿にもというのです。
「とても奇麗な場所でしょ」
「凄く大きくて」
「豪華でね」
「そうした場所にもですね」
「オズの国に来たのなら」
そしてオズの国にあるならというのです。
「是非ね」
「じゃあそうさせてもらいます、行く機会があれば」
「そうしてね」
「エルミタージュにも行って」
そしてというのです。
「そしてね」
「ベルサイユにもね」
「行かせてもらいます」
是非という返事でした。
「一度でも」
「そうしてね」
「それでは」
「オズの国には色々な場所があるから」
「本当に色々ですね」
「そう、私はあまり村の外に出ていないけれど」
それでもというのです。
「だからあまりね」
「ご自身ではですか」
「見ていないけれど」
「ご存知なんですね」
「本で読んだりしているから」
「それでご存知で」
「色々な場所がある国なのは知っているわ」
このことはというのです。
「オズの国のね」
「そうですか」
「何処も一度は行ってみたいから」
「機会があればですね」
「行きたいわね」
オズの国のそうしたところにというのです。
「本当に」
「ケーキさんは本当に旅に出る機会が少ないんですね」
「基本村にいるからね」
「だからですね」
「そうした機会は少なくて」
ケーキはナターシャにお話しました。
「残念には思っていないけれど」
「それはどうしてですか?」
「だって機会があれば時々行けるから」
その旅にというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「私は村で家事をすることも好きだし」
このこともあってというのです。
「特にね」
「残念に思っていないですか」
「これといってね」
「そうなんですね」
「機会があれば」
その時にというのです。
「エルミタージュも他の場所も」
「行きたいですね」
「そう考えているわ」
「じゃあその時はオズの国の神々が導いてくれるなら」
「一緒になのね」
「旅を楽しみましょう」
「それじゃあね」
こうしたお話をしてでした、皆でエルミタージュのケーキを作りました。そしてそのケーキを見てです。
リンキティンク王は美味しそうでしかもとても奇麗なケーキだと歌を作って踊りました。その歌を聴いてです。
王子もです、王様ににこりと笑って言いました。
「では明日ですね」
「うむ、このケーキをな」
「女王にお見せして」
「目で見て楽しんでもらって」
そしてというのです。
「食べてもらって」
「味もな」
「楽しんでもらいましょう」
「ではな、しかしな」
ここで、です。リンキティンク王は。
そのケーキを見ながらこうも言いました。
「このケーキを今日まで見られないとはな」
「そのことがですか」
「女王は気の毒じゃな」
「いえ、それはです」
王子はリキティンク王の言葉に笑顔のまま答えました。
「当然と言えばです」
「当然なのか」
「何しろ女王は主役です」
明日のご本人の誕生パーティーのです。
「それではです」
「このケーキを見ることもか」
「明日までお預けということも」
このこともというのです。
「当然のことです」
「明日見てのお楽しみか」
「そうです、ですから」
「当然のことと言ったのじゃな」
「そういうことです」
「そうか、そういえばな」
リンキティンク王は王子のお話を聞いて言いました。
「わしも誕生日の時はな」
「何があるか、何が出て来るか内緒ですね」
「そしてパーティーの時にな」
お誕生日当日のです。
「出してもらっておるわ」
「そうです、パーティーの主役はです」
「何があるか、何が出て来るかをじゃな」
「待っていればいいんです」
「楽しみにしていてか」
「そういうことです」
「そうか、では女王も」
リンキティンク王はあらためて言いました。
「今は楽しみに待っていてもらうか」
「そうしてもらいましょう」
「わかった、しかしな」
「しかし?」
「わしはこのケーキを見てな」
エルミタージュの形に作ったそのケーキをというのです。
「ケーキを食いたくなった」
「このケーキは駄目ですよ」
ケーキはそれはないと思いながら冗談でこう言いました。
「そのことはおわかりですね」
「うむ、そのことはな」
リンキティンク王にしてもでした。
「わかっておる」
「そうですね」
「他のケーキじゃ」
今食べたいケーキはというのです。
「どんなケーキでもよいが」
「ケーキを召し上がられたくなりましたか」
「うむ」
そうだというのです。
「何かな」
「ではです」
「それではか」
「ケーキをお出ししますね」
「どんなケーキじゃ」
「苺のケーキもチーズケーキもチョコレートケーキもありますが」
そうした色々なケーキがというのです。
「どれにしますか?」
「チョコレートケーキじゃな」
そのケーキだとです、リンキティンク王は答えました。
「そのケーキにするか」
「それでは」
「ティラミスはありますか?」
王子はケーキに尋ねました。
「ケーキとは少し違いますが」
「ありますよ」
ケーキは王子にもにこりと笑って答えました。
「そちらは」
「それでは」
「紅茶もコーヒーもありますし」
飲みものもちゃんとあるというのです。
「ですから」
「今からですね」
「甘いものを食べましょう」
「それでは」
「丁度三時です」
恵梨香が時間のことをお話しました。
「おやつの時間ですね」
「じゃあ皆で食べましょう」
神宝もケーキ達に言ってきました。
「これから」
「お菓子に飲みものを出して」
ジョージも乗り気になっています。
「それで楽しみましょう」
「ケーキがあるならですね」
カルロスはケーキを食べようと今からにこにことしています。
「それだけで幸せな気持ちになれますね」
「そうね、スポンジのケーキは」
本当にとです、ナターシャは四人に応えました。
「素敵な味よね」
「ナターシャのお国のケーキとは違うけれど」
「あのケーキは最高に素敵なお菓子の一つだよ」
「だからそのケーキを食べられるとなると」
「やっぱり嬉しくなるね」
「それだけでね。私もね」
かく言うナターシャ自身もというのです。
「あのケーキ大好きだから」
「それじゃあね」
「皆で食べようね」
「それで飲みものも出して」
「そちらも楽しもうね」
「そうしましょう、飲みものは」
ナターシャがこれから飲もうと思っているものはといいますと。
「ロシアンティーにするわ」
「あの紅茶ね」
「はい、そちらにします」
ナターシャはケーキににこりと笑って答えました。
「私は」
「ナターシャはあの紅茶よく飲むわね」
「ロシアではいつも飲んでいましたので」
「それでなのね」
「はい、今もです」
来日してオズの国においてもというのです。
「よく飲んでいます」
「そうよね」
「美味しいですよね」
「ロシア式の煎れ方で」
「それで、です」
「ジャムを舐めながら飲むわね」
「あの飲み方が代¥好きなんです」
「確かに美味しいわね」
「ですから」
それでというのです。
「今もです」
「ロシアンティーね」
「そうします」
こう言ってでした。
皆でおやつとなりましたがナターシャの飲みものはロシアンティーでした、それを苺と生クリームのケーキと一緒に楽しんでいます。
そしてです、ナターシャはケーキを食べてから紅茶を飲んで言いました。
「こうして紅茶を飲んでいるとそれだけで」
「幸せだね」
「そうなります」
王子の質問ににこりとした返事で返しました。
「本当に」
「それは何よりだね」
「甘いものと紅茶があれば」
「君は幸せなんだね」
「そうなります」
「前から思っていたけれど」
ここで王子はナターシャにこうも言いました。
「君は随分無欲だね」
「そうですか?」
「うん、五人の子達の中でも特にね」
オズの名誉市民である五人の中でもというのです。
「そう思うよ」
「そうでしょうか」
「実際ナターシャって無欲よね」
「そうだよね」
「いつもこれで充分ってね」
「貰えるものもあまり欲しがらなくて」
恵梨香達四人も言います、恵梨香はモンブランのケーキとミルクティー、ジョージは林檎のケーキとレモンティー、神宝はキーウィのケーキにストレートティー、カルロスは抹茶のケーキにコーヒーという組み合わせです。見ればリキンティンク王と王子は先程自分で言ったケーキにコーヒーです、ケーキはチェリーのタルトにアップルティーです。
「いつもだよね」
「欲ないよね」
「王子の言われる通りにね」
「欲しがることもないし」
「ロシアにいると」
ナターシャはお国のことからお話しました。
「どうもね」
「無欲になるの」
「そうなんだ」
「ロシアにいたら」
「そうなるんだ」
「ロシア人って無欲みたいだから」
だからだというのです。
「私も無欲なのかしら」
「ロシア人って親切でね」
「それで素朴って言われるね」
「そこに無欲で」
「そうした人達っていうけれど」
「私は自分ではそうは思わないけれど」
無欲でも素朴でも親切でもないというのです。
「そうなのかしら」
「確かに五人で一番素朴なのう」
リンキティンク王はチョコレートケーキを食べながら言いました。
「ナターシャ嬢は」
「そうなんですか」
「うむ、着ている服は可愛いが」
いつも着ている黒のゴスロリファッションはというのです。
「性格は素朴でのう」
「クールな感じでも皆のリーダー役でいつも親切で」
王子もティラミスを食べつつ言います。
「僕もナターシャ嬢はそうした娘だと思うよ」
「そうですか」
「とてもね」
「それで無欲ですか」
「そう思うよ」
「私は自分では冷たいと思っていましたけれど」
「表情があまりないだけじゃないかな」
王子が見るにです。
「ただね」
「確かロシアは寒いのよね」
ケーキはナターシャの国のことからお話します。
「雪と氷の場所みたいに」
「はい、とても」
実際にとです、ナターシャはケーキに答えました。
「そうです」
「寒いと表情も凍るのよね」
「実は」
その通りだとです、ナターシャはまた答えました。
「ロシアだけでなく北欧の人達もですが」
「あまりにも寒いから」
「お顔を動かしにくくて」
そうした環境だからだというのです。
「どうしてもです」
「表情があまりなくなるのね」
「はい、ですがちゃんと感情はあります」
人間としてのそれはあるというのです。
「お顔に出ないだけで」
「それで表情がないともですね」
「それだけでね」
「私はそうした娘ですか」
「私もそう思うわ」
「無欲ですか」
「とてもね」
そうした娘だというのです。
「いいことだと思うわ」
「ほっほっほ、わしは欲張りであるな」
リンキティンク王はご自身のことは笑ってお話しました。
「随分と」
「遊びや甘いもの大好きですからね」
「歌にも踊りにもな」
「どれにも目がないですね」
「だからのう」
その為にというのです。
「わしは自分で言うぞ」
「欲張りだと」
「左様じゃ」
まさにというのです。
「オズの国でも屈指の欲張りであるのう」
「そこまでとは思わないですが」
「そうなのか」
「はい、昔のラゲド―王と比べれば」
先日この国にふらりと来たこの人と、というのです。
「全くです」
「欲はないか」
「そう思います」
王子としてはというのです。
「本当に」
「そうなのか」
「別にオズの国の全部を手に入れようとか思われなかったですね」
「わしはそうしたことには全く興味がないぞ」
「遊んで歌って踊ってですよね」
「甘いものを飲んで食べてじゃ」
そうしたことをしてというのです。
「楽しむだけじゃ」
「それならです」
「昔のラゲドー王と比べればか」
「全く欲がないですよ」
「そうなのか」
「そう思いますよ」
王子としてはというのです。
「強欲でも貪欲でもないです」
「オズの国には殆どない言葉であるな」
「ですね、確かに」
王子が見てもです。
「こうした言葉は」
「それを言うとオズの国は欲深い者は少ないか」
「それもかなりですね」
強欲や貪欲という言葉が多いということはそれだけそうした心を持つ人が多い、このことからの言葉です。
「そうですね」
「よいことであるかのう」
「そう思います」
「オズの国はいつも満ち足りていますから」
それでとです、ケーキは二人にお話しました。
「慾を出す必要がないんですね」
「うむ、そうじゃな」
「いつも欲しいものが傍にある国だからねここは」
「欲しいと思えば手を伸ばせば手に入る」
「そうした国にいるとね」
「自然に無欲になりますね」
そうなるというのです。
「人は満ち足りているとかえってですね」
「慾がなくなるのう」
「そうしたものみたいだね」
「そうですよね」
オズの国でどうして強欲な人が少ないか、そうしたお話もするのでした。そしてケーキ達がこんなお話をしておやつを楽しんでいる時に。
アン王女もおやつを楽しんでいました、王女は七人のフェアリー達と一緒におやつを食べています。そのおやつはといいますと。
クッキーです、皆で色々な種類のクッキーを食べて楽しんでいます。王女は今はチョコレートのクッキーを手にして言いました。
「クッキーをこうして食べて紅茶を飲むと」
「楽しい気分になりますね」
「そうよね」
「色々なお菓子がありますが」
女王もそのクッキーを食べつつ言います。
「クッキーもですね」
「紅茶やコーヒーにもよく合って」
「美味しいですよね」
「本当にね」
「色々な種類のクッキーを出したので」
カヤは食べつつ言います。
「余計に楽しめますよ」
「クッキーもいいですよね」
ミユはにこにことしながらバターのクッキーを両手に持って齧っています。
「いいお菓子です」
「このお菓子を生み出した人に感謝しないと」
ミナミも笑顔で食べています。
「駄目ですよね」
「アーモンドのクッキーもナッツのクッキーもあって」
ナナミは今はナッツのクッキーを齧って楽しんでいます。
「どれも楽しめますよ」
「今は皆で楽しみましょう」
アイリもクッキーを食べています。
「八人で」
「いつも七人で楽しんでいますが」
マユが食べているのはチョコレートのクッキーです。
「王女も一緒なので八人ですね」
「七人でも楽しいですが」
さらにと言う女王でした。
「八人も楽しいですね」
「そうよね。それとね」
王女は自分の飲みものである紅茶も飲みました、そうして言うのでした。
「甘いココアもね」
「美味しいですよね」
「ココアも」
「私達は今はミルクですが」
見れば七人のフェアリー達は今は皆ホットミルクを飲んでいます。
「ココアもいいんですよね」
「甘くて優しい味で」
「コーヒーとはまた違った感じで」
「そちらもいいですよね」
「そうよね、だから今はココアを飲んでいるけれど」
王女はそのココアを飲みつつさらに言います。
「いいわね」
「クッキーにも合いますよね」
「ココアも」
「そちらも」
「コーヒーや紅茶とはまた違って」
そうした味でというのです。
「こうして飲みたくなるのよね」
「おやつの時は」
「紅茶やコーヒーと同じで」
「そうなりますね」
「そうなのよね、ただね」
こうも言う王女でした。
「そのせいか迷う時があるわね」
「おやつの時に何を飲むか」
女王はホットミルクを飲みつつ応えました。
「そうなりますよね」
「そうよね」
「はい、私も」
女王もというのです。
「時々でもです」
「何を飲もうかって」
「迷いますよね」
「紅茶かコーヒーか」
「ココアか」
「それか皆が今飲んでいるミルクね」
こちらもと言う王女でした。
「迷う時があるわよね」
「そうした時本当にありますね」
「迷って悩んで困るけれど」
それでもとです、王女は笑ってこうも言いました。
「それもまた楽しいわね」
「そうなんですよね」
「その迷うことがまたですよね」
「楽しんでよね」
「どれを飲もうか迷うのも」
「困りますけれど」
「それと一緒になんですよね」
六人の大臣達も王女の言葉に頷きました。
「これがまた」
「どれを飲んでも美味しいですし」
「それならって思って」
「迷ってそして決めて」
「美味しいものを飲む」
「これもいいんですよね」
「そうなのよね、その時選ばなかったものはまたで」
次の機会でというのです。
「そうなるけれど」
「その次の時にまた迷ったり」
また言う女王でした。
「そうなりますね」
「そしてそれがね」
どうかとです、王女はココアを飲みつつ言いました。
「いいから」
「迷うもまたよし」
「そうですよね」
「じゃあこれからもね」
「こうした時はですね」
「迷ってね」
あえてそうなってというのです。
「楽しもう」
「それじゃあ」
「そう、そしてね」
「これからもですね」
「飲んで食べましょう」
今の様に甘い飲みものやお菓子もというのです。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
こうしたことをお話してです、そのうえで。
王女もフェアリー達もおやつの時間を楽しみました、そうしたお話をしている時にでした。ふとです。
王女の携帯が鳴って出て少しやりとりをしてからです、それから七人のフェアリー達に対して言うのでした。
「もうすぐオズマ姫達が到着するそうよ」
「もうすぐですか」
「もうすぐと言っても明日の朝だけれど」
その時にというのです。
「この森に到着するわ」
「いよいよですね」
「そしてね」
王女はさらにお話しました。
「メールを見たらね」
「そうしたらですか」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「他の皆もね」
「明日にですね」
「朝に皆到着するから」
「では」
「明日のパーティーの時はね」
「皆で、ですね」
「楽しめるから」
だからだというのです。
「明日の朝はね」
「皆さんをですね」
「まずはお迎えして」
そしてというのです。
「楽しみましょう」
「わかりました」
二人でこうお話しました。
パーティーは明日に迫っていました、皆はその最後の準備をしてその明日を待ちました。そうしてこれからのことを考えるのでした。