『ドリトル先生と姫路城のお姫様』
第十幕 待つ間
先生達は姫路城の宴に呼ばれることになってそれからでした、その日になるのと待つことになりました。
その間先生達は日常の生活を楽しんでいました、先生はこの日はお昼に食堂でカルボナーラを食べていましたが。
そのカルボナーラを食べる先生にこの時も一緒にいる動物の皆が言いました。
「いや、カルボナーラって面白いよね」
「独特のスパゲティだよね」
「生クリームにベーコン、卵の黄身に黒胡椒」
「かなり濃い味なのよね」
「そうそう、それが美味しくてね」
「日本でも美味しく食べられるスパゲティだよ」
先生は皆に食べながら答えました、皆が挙げたものだけでなくオリーブオイルとガーリックも効いています。
「カルボナーラはね」
「だから先生も今食べているよね」
「それも美味しく」
「そうしているわね」
「そうだよ、それとね」
さらに言う先生でした。
「このスパゲティの歴史も調べるとね」
「あっ、結構最近のスパゲティだったね」
「二十世紀半ばに出て来た」
「そうしたスパゲティだったね」
「そうだよ、アメリカ軍が第二次世界大戦でイタリアに入って」
その時にというのです。
「アメリカ軍の食材を使ってね」
「そうしてだよね」
「作られたんだよね」
「沢山ある食材を使って」
「そうして出来たんだよね」
「考えてみるとね」
こうも言う先生でした。
「この味付けはアメリカ人好みだね」
「そうだよね、生クリームに卵の黄身にベーコン」
「黒胡椒も沢山使って」
「それではっきりした味付けだから」
「アメリカ人らしいわね」
動物の皆もいいます。
「その味付けは」
「ナポリタンもアメリカ人が入ってから日本で出て来たのよね」
「アメリカ軍が入ってきてね」
「そうだったっていうけれど」
「そうみたいだね、こちらはケチャップをメインにして」
先生はナポリタンのお話もしました、実はカルボナーラの前に食べています。どちらも二人前ずつありますが先生は身体が大きいので沢山食べるのです。
「そこにソーセージや玉葱、ピーマンを入れるね」
「あとマッシュルームね」
「それでアメリカ人好みの味付けになってるわね」
「言われてみれば」
「そうだね、こうしたことを見てみると」
カルボナーラやナポリタンの歴史をです。
「ハンバーガーやフライドチキンやホットドッグもあるし」
「結構アメリカのお料理って多いわね」
「美味しいしね」
「ステーキとかもあるし」
「世界中の国のお料理が集まってるし」
「だからね」
それでとです、先生はさらに言いました。
「僕はアメリカの料理は凄いと思うよ」
「アフリカ系のソウルフードもいいしね」
「スペアリブや煮豆も」
「そうしたものも美味しいし」
「本当に馬鹿に出来ないのよね」
「実はね」
「そうなんだよね」
先生は確かな声で言いました。
「これが」
「そうだよね」
「イギリスにはないものがあるよね」
「アメリカは実は美味しいもの多いんだよね」
「食事も楽しめる国だよ」
「量も凄いしね」
「レシピやキッチンもいいしね」
それで美味しいものも食べられるというのです。
ですがここで、でした。先生は少し苦笑いになってこうも言いました。
「イギリス人にカルボナーラが生み出せるか」
「ナポリタンとかね」
「そう言われるとね」
「よく食べものは駄目って言われるけれど」
「実際に僕達も来日してから美味しいもの一杯食べてるしね」
「このカルボナーラだってね」
「そう思うと」
本当にと言うのでした。
「残念だね」
「文学でも紅茶とかビスケットとかね」
「何か質素な感じなんだよね」
「作者さんの好みにしても」
「それでもね」
「うん、ルイス=キャロルさんとかね」
この人はといいますと。
「凄く質素だったそうだし」
「本当に紅茶とビスケットだけだったとかね」
「一回の食事がね」
「半端じゃなく質素だね」
「今の僕達からしてみれば想像も出来ないよ」
「修道僧の人でもそんなに質素じゃないかも」
「イギリスはあらゆる文化が花咲いた国だよ」
イギリス人として先生も嬉しく思っていることです。
「文学、科学、医学、生物学とね」
「そうなんだよね」
「ニュートンさんも出たしね」
「シェークスピアさんにコナン=ドイルさん」
「医学はジェンナーさん」
「凄い人が一杯出たね」
「イギリス文学たるやね」
まさにと言う先生でした。
「純文学、戦記、推理、詩、童話。ファンタジーも生まれたしね」
「ホーンブロワー提督なんか素敵だよね」
「あの人の格好よさときたら」
「ホームズさんも渋いし」
「指輪物語もハリーポッターもいいわ」
「イギリス文学は先生も大好きよね」
「そう、どの国にも負けていないよ」
それだけのものがあるとです、先生はカルボナーラを楽しみつつ言うのでした。
「文学はね」
「けれどお料理になると」
「どうにもね」
「世界中から言われる位で」
「ぱっとしないどころじゃなくて」
「駄目出しばかりでね」
「最近軍隊の食事がよくなってきたというけれど」
それでもという口調の先生でした。
「どうなのかな」
「いや、どうかな」
「軍隊も実はじゃないかしら」
チープサイドの家族は先生のお話を聞いてもどうかというお顔でした。
「美味しくない?」
「そうじゃないかな」
「海軍は美味しいって聞くけれど」
トートーはこのお話は知っています。
「実際どうかな」
「海上自衛隊は美味しいそうね」
ポリネシアは日本のテレビのことから言いました。
「紹介されているのを観ると」
「カレーライスとかね」
ダブダブは海上自衛隊の象徴とも言えるお料理を出しました。
「観ていても美味しそうね」
「実際に自衛隊の基地で食べても美味しいし」
こう言ったのは老馬でした。
「いいよね」
「そうそう、他のお料理もいいし」
ホワイティも言います。
「素敵だよね」
「けれどイギリスはどうか」
「僕達がずっといた国は」
オシツオサレツは他の生きものと違いアフリカ出身でこう言うのです。
「軍隊のお料理もね」
「本当に美味しくなったのかな」
「先生が言うならそうだと思うけれど」
先生は嘘を言わない、チーチーはこのことはわかっていますが。
「それでもイギリスだからね」
「お料理は悪い意味で言われる国だから」
ジップもこのことがどうしても気になっています。
「だからね」
「実際日本の食べものの方がずっと美味しいから」
最後にガブガブが言いました。
「どうかってなるよね」
「まあ僕も聞いているだけだよ」
また先生が言いました。
「このことはね」
「実際には食べてないのね、イギリス軍のお勝利」
「そうなのね」
「それじゃあ実際にはね」
「どうかって言えないね」
「うん、けれどね」
それでもと言うのでした。
「食べてみたいね」
「そうなんだね」
「先生にしても」
「じゃあ実際に食べる?」
「そうしてみる?」
「今度ね、レーションがいいっていうから」
それでというのです。
「食べてみようかな」
「そのレーションをだね」
「一度食べてみて」
「それでだね」
「確かめるんだね」
「うん、最近動画サイトで美味しいと言われていたから」
だからだというのです。
「是非ね」
「食べてみてだね」
「そうしてだね」
「実際にどうか調べる」
「そうするのね」
「学問は本だけじゃなからね」
これも先生の持論です、だからフィールドワークもよくしているのです。
「一度食べてみるよ」
「それがいいね」
「じゃあイギリス軍のレーションを今度食べて」
「それで確かめる」
「実際にはどうか」
「そうしていくよ、このカルボナーラみたいに美味しければ」
それでというのでした。
「僕も嬉しいよ」
「うん、カルボナーラ位ね」
「それだといいよね」
「じゃあ食べてみる?」
「そうする?」
「そうしてみる?」
「うん、後ね」
さらに言う先生でした。
「僕は実はお姫様に宴のメニューでね」
「イギリス料理だね」
「それを紹介したかったんだね」
「出来たら」
「そうしたかったのね」
「けれど兵庫の山海の幸を使うとなると」
魚介類やお肉をというのです、勿論お野菜や果物もです。
「そうなるとね」
「ちょっと、だよね」
「イギリス料理については」
「ちょっと出せなかった」
「評判がよくないから」
「毎食朝食でいいとかね」
イギリス料理についてよく言われる言葉で先生も気にしています。
「どうかってなるから」
「宴は夜だしね」
「夜に開かれるから」
「夜に朝ご飯のメニューになると」
「難しいよね」
「無理があるわね」
「そうも思うからね」
だからだというのです。
「僕も出せなかったんだ」
「何かと難しいね」
「アメリカならまだ紹介出来たけれど」
「イギリスとなると」
「これがね」
「お姫様達も多分知ってるだろうしね」
イギリス料理のことはというのです。
「ビーフシチューとローストビーフはあるけれど」
「あとフィッシュアンドチップスね」
「そうしたものがあっても」
「どうしてもね」
「先生も出せないね」
「そうなんだよね、そう思うと」
本当にというのでした。
「難しかったよ」
「だからだね」
「あえて食べなくて」
「それでだね」
「イタリアやフランスやスペインのお料理出したのね」
「そうなのね」
「そうだよ、けれど何が出て来るか」
先生はあらためて言いました、イギリス料理のことはまずは置いておいて。
「楽しみであることはね」
「事実だね」
「じゃあ宴の時はね」
「是非楽しませてもらおうね」
「僕達もね」
「お料理についても」
「そうしようね、しかし泉鏡花の論文を書くうちに」
こうも思う先生でした。
「思わぬ流れになっているね」
「そうだよね」
「これがね」
「僕達の常と言えばそうだけれど」
「どんどんお話が動いていって」
「気付けば今みたいになってる」
「本当に僕達はそうだね」
今しみじみと思うのでした、カルボナーラは残り僅かになっています。
「ふとしたはじみではじまって」
「そうしてだよね」
「気付けば凄い展開になっていて」
「僕達も動いていってね」
「あれよこれよでね」
「お話が終わってる」
「そんな風だね」
動物の皆も思うことでした。
「何というかね」
「それが先生と僕達の宿命かな」
「何気なくはじまって凄いことになってね」
「最後は幸せに終わる」
「それが私達の宿命かしら」
「考えてみれば面白いけれど」
「凄い展開ではあるわね」
皆もあらためて思うことでした。
「色々な人に出会ってね」
「色々な場所に行ったりして」
「学んで助けて助けられて」
「本当に何かと出会いがあって」
「うん、まさか姫路城に住んでいる妖怪の棟梁さんに会ってね」
そしてというのです。
「宴の提案をするとか」
「四千万も貰ったり」
「そのお礼を寄付して徳を積ませてもらってね」
「しかも宴に呼んでもらえるなんてね」
「こんな展開はないよ」
普通はというのです。
「これがね、けれどね」
「これがだよね」
「僕達の常と言えばね」
「本当に常だね」
「だったら受け入れて」
「それでだね」
「楽しくやっていく」
「それに限るね」
「そうだね、ならね」
さらにお話する先生でした。
「これからもね」
「楽しくやっていこうね」
「宴のことも」
「皆でね」
「先生に何かあっても僕達がいるし」
「僕達が助けるから」
「先生は安心してね」
皆は先生にこうも言いました。
「じゃあね」
「姫路城で宴はね」
「楽しみにして待って」
「そして宴自体も楽しむ」
「そうしようね」
「そういうことでね、お酒はワインやビールだから」
それでというのでした。
「こちらも楽しみだね」
「うん、ワインだね」
「先生ワインも好きだしね」
「ビールもだしね」
「両方共飲む?」
「そうするの?」
「それもいいね、ただ今の僕の気持ちだと」
それに従うとどうなるか、先生は皆にこうもお話しました。
「ワインかな」
「丁度スパゲティ食べてるし」
「スパゲティにはワインだからね」
「そうなるわよね」
「うん、このカルボナーラにしてもね」
あと少しです、先生は日本に来てから健啖家になっていますが今日もです。沢山食べて学問に励んでいるのです。
「ワインが合うよね」
「そうそう」
「パスタにはワインだよね」
「それも赤ワイン」
「このワインだね」
「白ワインよりもね」
まさにというのでした。
「赤ワインだね」
「そのワインが合うね」
「あとチーズにもね」
「そうなるね」
「本当にね、あと肉料理にも」
こちらのお料理にもというのです。
「赤ワインだね」
「そして魚介類には白」
「こちらのワインね」
「じゃあ宴の時はどちらも楽しむ」
「そうなるわね」
「絶対にそうなるね」
「だからビールよりも」
先生はカルボナーラの残りを食べつつ答えました。
「ワイン、そしてね」
「お料理によって飲み分ける」
「そうなるわね」
「じゃあそうしてね」
「先生も楽しむのね」
「宴では」
「そうしたいね、じゃあ宴になれば」
カルボナーラを全部食べ終えて言いました。
「皆で楽しもうね」
「日本の宴ね」
「素敵なものは間違いないみたいだし」
「是非ね」
「僕達も楽しませてもらおう」
こうしたお話をしてでした、皆は食堂を後にしてそれからまた研究室に戻ろうとしましたがここで、でした。
先生は皆にこう提案しました。
「時間があるし博物館に行かないかい?」
「博物館?」
「そこになの」
「そこから行って」
「そしてなのね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「日本のお城の歴史のことも学ぼう」
「ああ、あの博物館そうしたコーナーもあったね」
「日本の歴史のコーナーがあって」
「お城のこともあって」
「それでね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「姫路城に行く機会が出来ているし」
「ここでだね」
「一度日本のお城のことを学んでおく」
「そうしておこうっていうのね」
「今は」
「そうしてみよう」
先生が提案して動物の皆も特に反対しなくてでした。
皆で学園の中にある博物館に入ってそこで日本の歴史のコーナーにある日本のお城について学ぶことにしました。
そこで、です。先生は皆にお話しました。
「本当に最初は砦だったんだよね」
「日本のお城はね」
「平城京や平安京みたいな城塞都市はあっても」
「それでもだよね」
「僕達が知ってる日本のお城はね」
「やっぱり砦から発展していったのね」
「それで姫路城とかになったのね」
動物の皆はその砦の説明を見て思うのでした。
「いや、最初はね」
「本当に砦で」
「何でもない感じだけれど」
説明のイラストで描かれている砦は山にあって木で造られたものです、壁や堀があっても姫路城のそういったものとは比べものになりません。
「それがどんどんね」
「変わっていってるね」
「大きくなっていってね」
「山全体がお城になっていってるね」
「凄いものになっていってるね」
「岐阜城とかね」
そのお城の説明もありました。
「山全体をお城にしてね」
「城壁とか櫓を築いて」
「石垣まで築いてね」
「凄い攻めにくくしているわね」
「造りも迷路みたいにして」
「そうしていざという時の守りにしていたんだ」
その堅固さでというのです。
「何があっても攻め落とせない位にね」
「この岐阜城なんかそうだね」
「確かに攻めにくそうね」
「一番上の天守閣まで歩いていくことも一苦労だし」
「若しこんなところを攻めるとなったら」
「どれだけ苦労するかしらね」
「そう思うとね」
また言う先生でした。
「日本のお城は山が多い地形ということもあって」
「攻めにくいのね」
「それもかなり」
「砦が発展していったもので」
「山全体がお城だったりしていて」
「岐阜城は織田信長が住んでいたんだ」
今回先生が結構お話に出すこの人がというのです。
「長い間ね」
「あっ、そうだったね」
「あの人今で言う愛知県から出て来て」
「そこから天下統一を目指して」
「そしてだったわね」
「本拠地を岐阜県に移して」
「この岐阜城に入ったのよね」
皆も先生にこれまで教えてもらってこのことは知っています。
「そうして天下布武を進めていったのよね」
「武田家や浅井家や本願寺と戦っていた時もここにいたのよね」
「一番苦労した時も」
「そうだよ、ただね」
ここで先生は皆に言いました、展示されている岐阜城のミニチュアの模型も観ながら。山全体を再現した見事な模型です。
「山は行き来が難しいね」
「日本の山は凄いよね」
チーチーが応えました。
「特にね」
「イギリスのハイランドよりも凄くない?」
ポリネシアが思うにです。
「というか国全体がハイランドって感じでね」
「ネス湖の周りみたいな場所が普通だから」
難しいお顔で言うガブガブでした。
「日本の山の行き来は大変だよ」
「険しくて木も生い茂っていて」
それでと言う老馬でした。
「行き来が大変だよ」
「奈良県も高野山も凄かったね」
「ええ、山の一つ一つを越えるだけでもね」
チープサイドの家族も思うことです、それで言うのです。
「だからお城を築いたら凄いわね」
「とんでもない守りになるね」
「それは確かだけれど」
ジップは守りはいいけれど、と思いました。
「これが行き来となると」
「物凄く辛いわね」
ダブダブも言います。
「住むことも麓に降りることも」
「それじゃあ何かと不便だね」
ホワイティはこのことに気付きました。
「山にお城があると」
「戦だけならいいけれど」
トートーはホワイティに続きます。
「これが政治もってなったら」
「政治はしにくいね」
「どう考えてもね」
最後にオシツオサレツが二つの頭で言います。
「山にいたら」
「そこにお城があったら」
「そうだね、お城は戦に使うだけじゃないんだ」
まさにというのです。
「政治を行う場所でもあったから」
「山にあったらね」
「領民の人達は麓にいるから」
「田畑や街も平地にあるし」
「その傍にいないとね」
「政治はしにくいね」
「そう、そのことがあってね」
それでというのです。
「次第に山にお城は築かれなくなったんだ」
「平地に築かれる様になったのね」
「欧州や中国のお城みたいに」
「ああなったのね」
「そういうことだね」
「そう、政治をしやすくて守りも堅い」
そうしたというのです。
「平地のお城が築かれていったんだ」
「随分変わったんだね」
「じゃあ織田信長さんもかな」
「変えていったのかな」
「そうなのかしら」
「岐阜城はこの通り平地の中に山があるからね」
模型でもそのことが再現されています、当時の街や田畑の中に山があってそこに岐阜城が築かれています。
「織田信長は麓の方に住む場所を置いていたんだ」
「そしてそこからなのね」
「政治を行っていたのね」
「そうだったのね」
「そうだよ、いざという時は山に登って」
そしてというのです。
「普段はね」
「平地にいてだね」
「そうして政治を行っていた」
「そんな風だったんだ」
「そして安土城はね」
このお城はといいますと。
「安土山に築いたけれど」
「そこはこれまでのお城ね」
「山に築いたのなら」
「そうよね」
「うん、けれど安土山はそれ程高くて険しくないから」
それでというのです。
「行き来もしやすいしね」
「守りやすくて行き来しやすい」
「そうしたお城が出来たのね」
「山に造るお城を山城といってね」
そしてというのです。
「平地に築くと平城、そして安土城みたいなお城は平山城っていうんだ」
「へえ、そうなんだ」
「平山城っていうんだ」
「安土城みたいなお城は」
「そうだよ、山城と平城両方の利点を取り入れたね」
そうして築かれたというのです。
「そうしたお城なんだ」
「成程ね」
「そうしたお城になっていったんだ」
「山城から」
「日本のお城は変わっていったんだ」
「そしてやがて大坂城みたいな物凄いお城が出来てね」
豊臣秀吉が築いたこのお城がというのです。
「姫路城も出来たんだよ」
「あのお城もなのね」
「私達が今縁のある」
「あのお城が出て来たのね」
「そうだよ、安土城からただ守りと政治だけじゃなくてね」
それに止まらずというのです。
「見栄えも考えられる様になったんだ」
「安土城の模型もあるけれど」
「それだけでも派手ってわかるわね」
安土城の模型もあります、観てみれば確かに派手です。
「赤や青や金色でね」
「豪華絢爛ね」
「当時からしてみれば奇抜だったかしら」
「傾いているっていうのかしらね」
「織田信長はかなり独特な人だったからね」
このことからもです、先生は皆にお話します。
「そうした独特なデザインのお城もね」
「築かせたんだね」
「色々と奇抜なデザインも考えていって」
「安土城もなんだ」
「そうだよ、若い時の服装も凄かったしね」
奇抜だったのはお城だけではなかったのです。
「大うつけって言われる位にね」
「そうそう、そう言われてたけれど」
「その人が天下人になるんだから」
「世の中面白いよね」
「歴史って」
「そうだね、歴史っていうのはね」
本当にというのです。
「そこが面白いね」
「というか聞いてみると傾いていただけ?」
「大うつけじゃなくてね」
「所謂傾奇者だったんだよね」
「要するに」
「僕もそうじゃないかって思ってるよ、あの人は傾奇者だったんだ」
大うつけでなくてというのです。
「だからよく見たらね」
「その時でも気付くものだったんだ」
「織田信長さんがどういった人か」
「大うつけかどうか」
「そのことが」
「だから家を継ぐとすぐに終わりを統一してね」
そうしてというのです。
「桶狭間の戦いでも勝って」
「岐阜城にも入って」
「そしてだよね」
「上洛も果たして」
「天下人にもなった」
「そうなれたんだね」
「そうだよ、戦も勝っていったけれど」
それだけでなくというのです。
「見事な政治だったからね」
「それじゃあ大うつけじゃないね」
「そんな人がいい政治出来ないし」
「そう考えるとね」
「織田信長さんは傾奇者だったんだ」
「そう、傾奇者といえば前田慶次だけれど」
この人が有名でもというのです。
「実は織田信長の方が傾いていたね」
「天下人で傾いていたからね」
「それじゃあね」
「傾いていたって言えるよね」
「本当に」
「そうだよ、だから領民には慕われていたんだ」
いい政治を行っていたからだというのです。
「家を継いだ時からね」
「やっぱり見ている人は見ているんだね」
「善政を敷いていたらね」
「領民の人達にはわかるね」
「お殿様がどんな人か」
「うん、その織田信長が日本のお城を変えたね」
こう言っていいというのです。
「だからあの人がいないと姫路城もだよ」
「ひょっとしたら出ていなかった」
「今みたいなお城になっていなかったかも知れない」
「堅固なだけじゃなくて奇麗でもある」
「そんな風にはなっていなかったのね」
「そうかも知れないよ、政治のことも考えたお城は織田信長以前も築かれていたけれど」
それでもというのです。
「安土城から見栄えも考えられる様になったみたいだしね」
「天守閣がその代表だね」
「姫路城も何といっても天守閣だけれど」
「若し天守閣が見事じゃなかったら」
「その時は」
「天下泰平の基礎を築いただけじゃなくて」
「そっちの方でも貢献した人なのね」
動物の皆もこのことがわかりました。
「成程ね」
「それじゃあね」
「そのことも頭に入れて」
「姫路城に行くのね」
「今度からは」
「そうしようね、しかし城下町はね」
先生はこの説明を見て思うのでした。
「今も僕としては違和感があるね」
「イギリスにはないからね、城下町って」
「勿論欧州の他の国でもね」
「中国でもそうだし」
「アラビアでもそうよ」
「アメリカもそうだったし」
「街は城壁で囲んでね」
そうしてというのです。
「街自体がお城だからね」
「ロンドンにしても他の街にしても」
「僕達の認識ではそうだから」
「それが街が城壁に囲まれていなくて」
「お城が街に囲まれている」
「大きな違いだね」
「だから戦いになれば城下町にいる人達は安全な場所に逃げていたんだ」
日本ではそうだったというのです。
「それで戦いが終わるまで難を逃れていたんだ」
「お城の中に入らないで」
「そうしていたのね」
「じゃあ敵もその人達に何もしなかった」
「先生前そうお話してくれたわね」
「大坂の陣でもまずは大坂の人達が安全な場所に逃げてね」
そうしてというのです。
「そこから戦いがはじまったんだ」
「逃げて敵が追わないならね」
「全く違うね」
「日本の戦いは武士と武士の戦いだから」
「その人達はどうでもよかったのね」
「後で自分達が治める人達だしね」
何といってもこのことがあるからだというのです。
「戦いになっても領民の人達や田畑にはこれといって手出ししなかったんだ」
「欧州じゃ酷いことになることも多かったのに」
「特に宗教が絡むとね」
「もうどれだけ陰惨なことになるか」
「そんな風だったのに」
「けれど戦になっても逃げれば終わりだから」
それでというのです。
「日本の戦はまだ平和だったんだよ」
「成程ね」
「激しいものになってもなのね」
「先生がさっき言った大坂の陣なんて壮絶だったけれど」
「真田幸村さんが最後の最後まで戦って」
「物凄い戦いだったのに」
「確かに大阪城は焼け落ちて大坂の街も何もなくなったよ」
戦になったので何もかも焼き払われ取り払われてしまったのです、本当にこの時大坂の街は何もなくなりました。
「けれど人は生きていたから」
「また大坂の街が出来たのね」
「復興して」
「そうだよね」
「そうだよ、人が生きているとね」
例え戦いがあってもというのです。
「復興も出来るから」
「日本はその場合楽だね」
「本当にね」
「それなら」
「日本の城下町はいいかも知れないね」
「うん、違和感はまだあっても」
それでもというのです。
「いいことだとはね」
「思えるね」
「戦いになっても人が死なないのなら」
「逃げて終わりならね」
「武士同士の戦いで済むならね」
「これだけいいことはないね」
「全くだよ、城塞都市は堅固だけれど」
それでもなのです。
「町全体が戦いに巻き込まれるしね」
「外には逃げられないし」
「最悪お城にいる領民の人達も戦いに駆り出されるし」
「戦いの中で沢山の人も死ぬし」
「そう考えるとね」
「城下町の方が戦いで迷惑する人と度合いも少なくて」
「いいかも知れないね」
「そうだね、日本の戦いは見物も出来たしね」
こうしたことも出来たというのです。
「領民の人達は近くで合戦があったら安全な戦いがよく見渡せる場所に行ってね」
「そしてだよね」
「戦いを見守っていたんだよね」
「そうだよね」
「そうだよ、そうしても軍勢は襲ってこなかたったし」
普通の人達が目に見える場所にいてもというのです。
「そこも穏やかだね」
「戦う人達は必死でもね」
「その辺り結構穏やかだね」
「何か源氏と平家の戦いみたい」
「何処か確かなルールがあって」
「源平の戦いと戦国時代の戦いは全く違っても」
先生が思うにです。
「日本の戦いはあくまで武士と武士の戦いだから」
「民の人達は巻き込まない」
「だから観ていても構わない」
「逃げても構わなかったんだね」
「そうなんだ、いいことだね」
欧州の戦いの酷さから思う先生でした。
「ロンドンは空襲はあっても攻め込まれてないけれどね」
「火事はあったけれどね」
「あと切り裂きジャックが出たりしたけれど」
「ばね足ジャックもね」
「けれど他の街は」
欧州の他の多くの街はどうかといいますと。
「ローマなんか酷かったからね」
「何度も攻め落とされてね」
「酷いことになってるよね」
「ローマ帝国の前から」
「そう思うと城塞都市より城下町の方がいいかも知れないし」
それにというのです。
「そもそも日本の戦いは同じ民族同士だしね」
「あっ、同じ日本人ね」
「そういえばそうだね」
「日本はずっと日本って国でね」
「そこにいる人達も変わっていないね」
「元々縄文人と弥生人の混血でね」
それが日本人だというのです。
「日本人がずっとこの国にいて」
「渡来してきた人達がいても」
「それでもだよね」
「その人達の血が入っていっても日本人で」
「戦いがあっても日本人同士だったから」
「何処かセーブがあったし日本人はどうも血生臭いこととは縁がかなり薄いから」
「そのこともあって」
「それでだね」
「日本の戦いは民に迷惑があまりかからなくて」
「武士同士の戦いであったんだ」
「戦国時代でも」
「そんな感じだね、幕末の戊辰戦争でも」
この戦争でもというのです。
「戦う人同士の戦いであることが多かったね」
「江戸城も攻められなかったし」
「確かにあの戦いも激しくて」
「沢山の人が死んだけれど」
「会津若松城では領民の人も巻き込まれたけれど」
それでもというのです。
「あくまで戦う人同士、武士の時代は終わりかけていても」
「武士の戦いみたいにだね」
「あくまで戦う人同士の戦いで」
「領民は出来る限り巻き込まない」
「そして日本人同士の戦いだったのね」
「白虎隊も武士だったしね」
会津藩の中でも有名なこの人達もというのです。
「都の志士達も新選組もそうだったね」
「そう言えば確かに」
「あの人達も武士だね」
「武士同士で戦っていたわね」
「あの時の京都は大変だったけれど」
まさに斬って斬られてです、殺伐とした状況にありました。
「それでもね」
「武士同士だね」
「武士同士の戦いで」
「誰彼なしじゃなかったんだね」
「そうだよ、芹沢鴨の商家の焼き討ちもね」
この事件もというのです。
「実際は大砲を持ち出していなくてね」
「あっ、ドラマとかじゃ大砲出してるけれど」
「それで撃っていないんだ」
「事前に焼き討ちするって周りに知らせて防火対策もしてね」
そうしたことまでしてというのです。
「焼き討ちにしてるから」
「じゃあ人を殺さない様にはしていたんだ」
「焼き討ちといっても」
「そうした配慮をしていたのね」
「そもそも評判がよくない店だったみたいだしね」
芹沢鴨が焼き討ちをしたお店はです。
「その時はそんなに非道とは思われなかったそうだよ」
「意外ね」
「芹沢鴨さんって色々言われてるけれど」
「そうした配慮もしていたんだ」
「町人の人達の命は取らなかったんだ」
「確かに酒乱の気があったけれど」
このことはどうも事実らしいにしてもというのです。
「武士であったことは間違いないね」
「身分だけでなく考えも」
「それでそこはちゃんとしていて」
「後の新選組の人達もそうだったのね」
「そして志士の人達も」
「都の町人の人達は怯えていても」
自分達が住んでいる街でそれこそ常に殺し合いが行われていてです、それで怖くならない筈がありません。
「そこはしっかりしていてね」
「町人の人達には手出ししない」
「それが武士だったんだね」
「それで城下町も戦になれば逃げる」
「戦が終わってからまた街を建てていたんだ」
「それで終わりだったよ、街の再建には苦労しても」
戦で焼け野原になった場所を蘇らせることはです。
「それでもね」
「生きていれば違うからね」
「人が生きていたら」
「街はまた再建出来ても」
「人はいなくなったら終わりだから」
「その分ずっとましだね、他の地域の城塞都市での戦いを思うと」
こうも言う先生でした。
「日本のお城はそこも独特だね」
「そうだね」
「じゃあこれからはね」
「そうしたことも考えて」
「日本のお城のことを学んでいくのね」
「そうしていこうね」
先生は皆に笑顔でお話しました、そのうえでさらに学んでいくのでした。