『ドリトル先生と姫路城のお姫様』
第一幕 姫路城
先生は日本そして神戸に入って結構な歳月が経っていることを自覚しています、それで神戸にある自宅でも言うのでした。
「日本に来て随分経つね」
「うん、もう数年になるね」
「気付けば長く住んでるね僕達も」
「大学の教授に誘われて就職してね」
「移り住んだけれど」
「気付けばもう数年経ったわ」
動物の皆も言います。
「長いわね、そう思うと」
「この数年あっという間だったけれど」
「数年経ったって思うと」
「本当に長いわね」
「そうだね、最初から日本に馴染めてね」
作務衣の上にどてらを着て暖かいお茶を飲みつつ言う先生でした、ただ足は毛糸の生地の靴下となっています。
「よかったけれどね」
「馴染み過ぎ?先生は」
「すっかり日本にね」
「今だって作務衣にどてらだし」
「飲んでるのも番茶だしね」
「うん、もうイギリスに戻ることはないと思うけれど」
先生が思うにはです。
「それでもね」
「日本に来てもう数年」
「長く暮らしている」
「そのことに感慨を感じているのね」
「そうなのの」
「そうだよ、思えば遠くへ来たものだってね」
こうも言う先生でした。
「日本の歌であるけれどね」
「先生も僕達もね」
「すっかりそうなってるね」
「いや、イギリスから日本まではるばる来て」
「それでずっと住んでいる」
「そうなってるね」
「人の一生はわからないというけれど」
先生はしみじみとした口調で言いました。
「本当にそうだね」
「全くだね」
「全く以てね」
「まさかイギリスから日本に来てね」
「何年も済むとか」
「王子が私達にすき焼きをご馳走するまで夢にも思わなかったし」
「そうそう、すき焼きもね」
先生はこのお料理についても応えました。
「それまで食べたことなかったけれど」
「美味しいよね、すき焼き」
「お肉にお葱、お豆腐に糸蒟蒻に茸に麩に」
「色々入っていてね」
「お醤油とお砂糖の味付けもよくて」
「凄くいいよね」
「あれも食べられることがね」
まさにというのです。
「素敵だよ」
「そうだよね」
「日本のお料理にも馴染めているし」
「日本に来てよかった」
「感想としてそうね」
「うん、日本に来て本当によかったよ」
先生は満面の笑顔で言いました。
「じゃあね」
「それじゃあだね」
「これからもだね」
「先生は日本で暮らしていくんだね」
「この神戸で」
「そうしていくよ、不満なんてね」
今の先生にはです。
「何もないからね」
「だからだね」
「余計によね」
「幸せに過ごしていくね」
「この日本で」
「これからもずっとね」
まさにとです、こう言ってでした。
先生はお仕事から帰っての憩いの一時を皆と一緒に楽しみました。そしてお茶をお代わりした時に皆に言いました。
「実は今泉鏡花について研究しているんだ」
「泉鏡花?」
「誰かしら」
チープサイドの家族はその名前を聞いてもわかりませんでした。
「奇麗なお名前だけれど」
「誰だろうね」
「ううん、何かね」
「芸術家みたいな名前だね」
オシツオサレツはその名前からこう思いました。
「彫刻とか絵画とか」
「そちらの人かな」
「詩人じゃないかな」
トートーはこう思いました。
「名前からして」
「お花が名前にあるから」
ポリネシアはこのことから考えました。
「やっぱり芸術関係の人ね」
「素敵な名前だね」
ジップはその名前を気に入りました。
「泉も鏡もお花も奇麗なものだから」
「日本語のセンスがあるわね」
ポリネシアはそれをはっきりと感じています。
「それもかなり」
「ええ、抜群のセンスね」
ダブダブもこのことに太鼓判を押します。
「間違いなく芸術センスのある人よ」
「名前の感じからして戦争前の人かな」
チーチーはこう思いました。
「日本のね」
「明治から第二次世界大戦前の人ってそんなペンネームとかだね」
ホワイティもこのことを知っています。
「高村光雲とか夏目漱石とか」
「うん、その時代の芸術家かな」
最後に老馬が言いました。
「若しかして」
「明治から戦前に活躍した小説家、戯作家だよ」
先生はここで泉鏡花についてお話しました。
「妖怪が出る奇麗な感じの作品を沢山残しているんだ」
「へえ、小説家だったんだ」
「それで劇も書いてたの」
「そうした人だったの」
「そうだったんだ」
「そうだよ、日本では有名な作家さんの一人でね」
それでというのです。
「全集だって出ているよ」
「ふうん、そんな人なの」
「先生日本文学にも詳しいし」
「研究も熱心にしてるしね」
「それでだね」
「そちらも学んでるのね」
「そうだよ」
その通りだというのです。
「今ね、代表作は高野聖に歌行灯にね」
「高野聖は高野さんのお坊さんね」
「山からあちこちに修行に出ている人で」
「あの人達よね」
「そういえば高野山でそんなお話も聞いたわ」
動物の皆はかつて高野山に行ったことも思い出してお話しました。
「その人達を書いた作品なの」
「タイトルだけ聞いたら」
「歌行灯はどんな作品だけれど奇麗なタイトルね」
「やっぱりセンスあるわね」
「そうだね、この人の文章はちょっと独特だけれど」
先生は泉鏡花の文章についてもお話しました。
「夏目漱石や太宰治に比べて癖があるよ」
「日本語の文章って書く人の文体凄く出ない?」
「英語や中国語と比べても」
「スペイン語やアラビア語ともね」
「先生前そんなこと言ってなかった?」
「そういえば」
「うん、日本語の文体のせいかね」
実際にとお話する先生でした。
「どうしてもね」
「日本語は書く人の癖が出る」
「他の言語と比べても」
「その傾向が強いのね」
「うん、文体が独特で」
またこのことに言及する先生でした。
「それにね」
「それに?」
「それにっていうと」
「平仮名に片仮名があるね」
今度は文字のお話をするのでした。
「そして漢字も使うしアルファベットも入ったりするから」
「ああ、そうしたこともあるね」
「ローマ字なんて文字もあるしね」
「アルファベットを日本語読みにして片仮名で書くなんて常で」
「そのせいか難しいんだよね」
「それもかなりね」
「僕も日本語には苦労したよ」
学んで理解することにです。
「文体が違う、文字も複数あってね」
「こんな言語そうそうないよね」
「何でこうなったのっていう位不思議な言語だよ」
「アルファベットや漢字だけじゃないから」
「アラビア文字やキリル文字だけでもない」
「文字が複数あることも難しいわ」
「そうだね、だから書く人の特徴も出て」
そうしてというのです。
「泉鏡花もなんだ、特にね」
「特に?」
「特にっていうと」
「泉鏡花は明治から活動している人だから」
この時代からというのです。
「文章が昔の趣を残している感じなんだ」
「そうなの」
「泉鏡花って人の文章は」
「そんな感じなの」
「日本語の文章は文語と口語があってね」
先生のお話は続きます。
「文語は言うなら古典の言葉だよ」
「ああ、昔の日本の文章ね」
「江戸時代までの」
「枕草子とかそうよね」
「あと太平記も」
「それが文語で明治の二十年位から口語っていうね」
ここで口語のお話を出しました。
「今日本で使われているみたいな言語になったんだ」
「そうだったんだ」
「その頃から日本の文章は今みたいになったの」
「ライトノベルとかにあるみたいな」
「ああいう風になったの」
「そうだよ、二葉亭四迷っていう作家さんが最初に口語の作品を発表したけれど」
それがというのです。
「まだまだわかりにくくてね」
「最初の口語はそうだったの」
「つまりまだ文語に近かった」
「そうだったのね」
「そうだよ、それが徐々に変わってね」
そうしてというのです。
「泉鏡花の文章も口語だけれど」
「まだ文語の感じが残っていて」
「それでなのね」
「少し独特なのね」
「そうなんだ」
「泉鏡花自身の癖もあるから」
このこともあってというのです。
「結構ね」
「その癖に注意して読んでるんだ」
「先生にしても」
「そうして研究しているんだ」
「そうだよ、研究してね」
そうしてというのです。
「また論文を書くよ」
「先生本当にいつも論文書いてるね」
「何かしらの学問の」
「論文を書いたらすぐに次の論文書くし」
「それも様々な学問の」
「そうしてるね」
「うん、学問ならね」
それこそというのです。
「僕は文系も理系も関係ないし」
「どの分野でもだからね」
「文学も歴史学も社会学も」
「医学も科学も生物学もで」
「語学だってそうだし」
「神学、経済学、法学もだからね」
「芸術の論文だって書くしね」
動物の皆も知っています、先生の学問についての造詣の深さと見事さは。
「それでだよね」
「今度は日本文学で」
「泉鏡花について書くんだね」
「そうなんだ、日本文学は」
「その人でいくんだね」
「そうだよ、そしてね」
先生は皆にさらにお話しました。
「姫路にお城があるね」
「あっ、姫路城ね」
「あのお城にも何度か言ってるね」
「そうだったね」
「あのお城は奇麗だね」
「凄かったね」
「物凄い奇麗さだったよ」
皆も姫路城と聞いて言います。
「あのお城また見に行こうね」
「そうしましょう」
「また時間があれば」
「その時はね」
「そうしましょう」
「その今度は近いよ」
戦士絵は姫路城に行こうと言う皆に笑顔で答えました。
「実は泉鏡花はヒメ異常を舞台としている作品を書いているんだ」
「あっ、そうなんだ」
「あのお城のことも書いてたんだな」
「その高野聖や歌行灯だけでなくて」
「姫路城の作品も書いているんだ」
「そうなんだ、泉鏡花の代表作の一つで」
それでというのです。
「天守物語という戯曲だよ」
「脚本だね」
「シェークスピアみたいな作品だね」
「ああした風の作品なのね」
「そうだよ、実は今回の論文は主にその作品についてで」
天守物語のです。
「今度姫路城に行って」
「現地調査だね」
「フィールドワークするのね」
「学問の基本中の基本だね」
「それをするんだね」
「そうだよ、やっぱりフィールドワークはね」
何といってもというのです。
「欠かせないからね」
「そうそう、先生も忘れてないし」
「フィ―ルドワークでこれまで色々な場所にも行ってるし」
「僕達も一緒でね」
「それじゃあね」
「今回もだね」
「姫路城に行って」
「それで現地調査ね」
「そうだよ、そうしていくよ」
まさにと言ってです、そうしてでした。
先生はまたお茶をお代わりしようと思ったところでトミーが先生達がいるいつもお食事を食べている居間に来て言ってきました。
「そろそろ晩御飯ですよ」
「あっ、そうだね」
先生もトミーに言われて壁の時計を見て応えました。
「もう七時前だしね」
「はい、今日はベーコンと白菜をクリームで味付けして炒めました」
それだというのです。
「お味噌汁も作りました」
「今日のお味噌汁はどんなのかな」
「もやしと韮のお味噌汁です」
この二つのお野菜を入れたものだというのです。
「それと冷奴です」
「お豆腐もあるんだね」
「はい、安かったので」
それでというのです。
「お豆腐も買ってきました」
「いいね、お豆腐もね」
「先生お好きですしね」
「大好きだよ」
先生はトミーににこりと笑って答えました。
「じゃあ今日はね」
「冷奴もですね」
「そちらも頂くよ」
是非にと言うのでした。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあ」
「うん、今からね」
「皆で食べましょう」
「白いご飯もだね」
「勿論です」
これは欠かせないという返事でした、トミーも。
「食べましょう」
「いいね、最近僕もね」
「お米よく召し上がられますね」
「パンよりもね」
こちらの主食よりもというのです。
「ずっとよく食べる様になったよ」
「そうですよね、僕にしても」
「イギリスにいる時はパンだったけれどね」
「それが、ですね」
「日本に来てね」
「変わりましたね」
「もう今じゃね」
すっかりというのです。
「主食はね」
「ご飯になりましたね」
「白いね」
「そうですよね」
「赤いご飯や黒いご飯はないね」
「それは昔のお米でしたね」
「奈良の方でまた出てきているよ」
先生は奈良に行った時のことをここで思い出しました。
「奈良時代のお料理の再現ということでね」
「昔の日本のお料理ですね」
「そう、それをね」
「それで、ですね」
「僕も食べたことがあるけれど」
「お米は白いとは限らない」
「そうなんだよね」
それは固定観念だというのです。
「これが」
「あのことには驚きました」
「うん、かく言う僕もね」
「お米といえばですね」
「ずっと白いものだって思っていたんだ」
先生ご自身もそうだったというのです。
「これがね」
「そうですよね」
「それでね」
さらに言う先生でした。
「赤いお米や黒いお米の存在には驚いたよ」
「奈良時代の日本にあった」
「そうなったよ、ただね」
「ただっていいますと」
「あの赤いお米や黒いお米は」
そうしたお米達はというのです。
「やがて日本人は白いお米ばかり植える様になってね」
「それで、ですね」
「長い間忘れられていたね」
「そうなったんですね」
「どういう訳か日本人は白いお米を極端に好む様になって」
そうなってというのです。
「それでね」
「ああしたお米はなくなったんですね」
「最近までね」
「それでお米は、ですね」
「白いお米がね」
「イコールになったんですね」
「僕達の中でね」
何時の間にか皆で食べています、先生はその中でトミーにも動物の皆にもさらにお話をしていくのでした。
「そうなったんだ」
「そうした事情でしたか」
「そうだよ、あとね」
「あとっていいますと」
「日本ではね」
さらにお話をする先生でした。
「お米は水田だね」
「それが多いですね」
「けれどやっぱりね」
「水田以外の田もありますね」
「少ないけれどね」
「本当に日本の農作地を見ると」
トミーもよく見ています、日本のそうした場所を・
「水田が多いですね」
「そうだね、けれどね」
「お水を使わない田んぼもあるんですね」
「今じゃ殆どなくなったけれど」
それでもというのです。
「あるね」
「そうなんですね」
「うん、ただね」
「ただ、ですね」
「やっぱりね」
「主流かっていいますと」
「そうではないよ」
このことは厳然たる事実だというのです。
「やっぱり日本の農作地というとね」
「まずは水田ですよね」
「そう、秋には金色の稲が実るね」
「あれは見ていて惚れ惚れしますね」
「僕達でそうなるんだから」
それだけにというのです。
「日本の人達はね」
「余計にですね」
「そうなるよ」
そこは間違いないというのです。
「やっぱりね」
「そうですよね」
「だからね」
それでというのです。
「日本人にとって水田はね」
「特別なものの一つですね」
「そうもなっているよ」
「宗教的な考えもですね」
「あるんだ、だからね」
「こうしたことはですね」
「頭に入れておくと面白いよ」
先生はトミーに笑顔でお話します、その白いご飯をベーコンで食べながら。
「日本のこうしたことはね」
「日本は農耕文化ですしね」
「そこからはじまっている国だからね」
「そしてその農耕の第一がですね」
「お米でね」
「水田、そしてですね」
「白いお米だね」
まさにこれだというのです。
「そうなるよ」
「種類としてはジャポニカ米ですね」
「そうだよ、あと軍の兵糧も」
「やっぱりお米ですね」
「それだったよ、今でもね」
この二十位一世紀でもというのです。
「やっぱりね」
「自衛隊の人達も主食はご飯ですからね」
「だから飯盒もあるし何とご飯を一度に沢山炊ける特別な車両もあるんだ」
「そうしたものもあるんですか」
「これで災害の時とかね」
「ご飯を一度に炊いて」
「被災者の人達を助けているんだ」
そうしているというのです。
「ご飯を一度に沢山用意してね」
「日本って災害物凄く多いからね」
「そうそう、地震に台風に大雨に」
「雷も多くない?」
「大雪だってあるしね」
「津波もあるし」
「土砂崩れとか竜巻もあって」
動物の皆も実感していることです、日本に何年もいて。
「地震、雷、火事っていうけれど」
「冬は空気が乾燥するから火事も多いし」
「そこにやっぱり台風もあるから」
「どれだけ災害多いの?」
「私達がいる神戸だって前に大地震がおこったり」
「本当に災害の尽きない国だよね」
「特に地震が怖いね」
先生はしみじみとして言いました。
「何といっても」
「全くだよ」
「日本って地震多過ぎるわ」
「震度四で普通だから」
「日本の人達震度四位じゃ全然平気だし」
「震度七で本気になるって」
「もうこれが」
皆にとっては信じられないことです。
「震度七なんてイギリスじゃ考えられないから」
「ロンドンやリバプールでそんな地震起こったら」
「一体どうなるか」
「ロンドン壊滅するよ」
「絶対にそうなるわ」
「だから日本人もね」
他ならぬこの人達もというのです。
「物凄く警戒してね」
「色々考えてるんだね」
「何かと」
「自衛隊の人達もそうした車両まで用意していて」
「ご飯の用意もしているのね」
「そうだよ、地震があったら」
その時はというのです。
「もうね」
「いざって時はね」
「ご飯を食べないとね」
「どうしようもないし」
「だったら」
まさにというのです。
「自衛隊のそうした車両凄いね」
「流石自衛隊だね」
「そうしたことまで考えている」
「そうなのね」
「そうだよ、ご飯は炊かないと」
そうしないと、とお話する先生でした。
「食べられないね、だから昔からね」
「ご飯を炊いていたんだね」
「ちゃんとね」
「そうしていたんだね」
「災害があった時は」
「そして戦う時もね」
この時もというのです。
「ちゃんと炊いていたんだ」
「それ結構時間かかるんだけれど」
「手間もかかるね」
「パンと違ってね」
「そこは難しいかな」
「ビスケットもないしね」
それでというのです。
「結構その時は苦労していたんだ」
「ううん、そこは問題かな」
「パンと違ってね」
「お米の方が沢山採れるにしても」
「麦に比べてね」
「そう、麦と比べてると」
先生はこのこともお話しました。
「お米は凄く沢山採れるからね」
「それもいいよね」
食いしん坊のガブガブにとっては嬉しいことです。
「お米は一度に沢山採れることが」
「そう、このことは大きいわよ」
ダブダブもこう言います。
「お米の収穫が凄いことはね」
「しかも玄米だと栄養も凄いし」
ポリネシアはこのことを指摘します。
「素敵な食べものよ」
「まあ今は玄米はあまり食べないね」
「白米ね」
チープサイドの家族はそう言います。
「主食は」
「僕達もそうだし」
「けれどお米の収穫が凄いのは事実で」
それでと言ったチーチーでした。
「お米が主食の国は人口も多いね」
「しかも食べても美味しい」
ホワイティは生のお米も好きです。
「麦もそうだけれどね」
「お米っていいことばかりだね」
老馬も楽しそうにお話します。
「食べることを考えたら」
「炊くのに時間がかかるけれど」
それでもと言うトートーでした。
「それを除いても最高だよ」
「日本人があそこまで大事にするのも当然だね」
「全く以てそうだね」
オスチオサレツも二つの頭でお話します。
「何といっても」
「そうだよね」
「いや、まさにお米が日本を作った」
最後に言ったのはジップです。
「そう言ってもいいね」
「そうだよ、日本はね」
まさにこの国はというのです、先生も。
「お米があっててお米の素晴らしさをよく知っている」
「そうした国だよね」
「何といっても」
「白いお米の国」
「そうだね」
「そうだよ、それで戦争の時もお米と言ったけれど」
それでもというのです。
「ここで大事なことはね」
「っていうと?」
「何かな」
「兵糧、いざっていう時の食べものはね」
それはというのです。
「お米でお城にもね」
「ああ、いざっていう時に備えて」
「それでだね」
「お米も用意していたんだ」
「沢山置いていたんだ」
「そう、お城で戦う時のことを考えて」
それでというのです。
「沢山用意しておいたんだ」
「そうだったんだね」
「それでだね」
「そこでもお米だったんだね」
「そっちも」
「そうだよ、本当に日本はお米なんだ」
この作物からはじまっている国だというのです。
「そして兵糧は勿論姫路城にもだよ」
「あのお米にもだよね」
「用意してあったんだね」
「そうだね」
「そうだよ、いざという時に備えてね」
戦いがある時にというのです。
「そうだったんだ」
「姫路城もやっぱりお城で」
「ちゃんと兵糧も用意して」
「それでだね」
「戦の時に備えていたんだ」
「そうなんだ、じゃあ今度姫路城に行く時は」
まさにというのです。
「そうしたことも考えてね」
「それでだね」
「お城も行くんだね」
「そうするんだね」
「そうしようね」
是非にと言ってです、そうしてでした。
皆でお米や姫路城の御話をしていきました、先生にとっては次のフィールドワークに向かう場所で思い入れも強かったです。
ですが王子は先生に姫路城のお話を聞いてこう言いました。
「日本のお城って違和感あるよね」
「他の国のお城と違うからだね」
「うん、だからね」
それでというのです。
「何かね」
「お城と思えないんだね」
「お城は」
王子が言うお城はといいますと。
「壁をお堀で囲んだ」
「そうしたものだね」
「うん、城塞都市がね」
それがというのです。
「お城だってね」
「思うね」
「そう思ってるから」
「確かに他の国ではそうだね」
先生もこう返します。
「日本以外の国だと」
「欧州や中国、中近東ではね」
「アメリカもかつてはそうだったしね」
「街がね」
まさにイコールだというのです。
「お城なんだけれど」
「それが日本では違うね」
「城下町ってあるじゃない」
王子はこの言葉も出しました。
「日本には」
「うん、お城の周りに街があるんだ」
「そうだよね」
「そうだし」
王子はさらに言いました。
「あれじゃあ砦だよ」
「日本のお城は」
「街がお城の中にないから」
「そうしたお城もあるけれどね」
「あれっ、あるんだ」
「うん、惣構えという形式でね」
それでというのです。
「日本にもあるよ」
「そうだったんだ」
「ただこれも他の国のお城の影響で」
「元々はなんだ」
「平城京や平安京はそうだったけれど」
「やっぱりそうしたお城はだね」
「日本には殆ど縁がなかったよ」
城塞都市はというのです。
「そう言うよ、僕も」
「やっぱりそうだよね」
「日本にそうしたお城はね」
どうしてもというのです。
「縁がなかったんだ」
「他の国で言う砦ばかりだね」
「そうだね」
「だからそれがね」
どうにもというのです。
「僕にとってはね」
「どうにもだね」
「馴染まないんだね」
日本のお城をお城と呼ぶことはというのです。
「そうなんだよ」
「けれどね」
「日本ではお城はだね」
「ああした建築養子なんだ」
「城下町に囲まれているんだね」
「戦になるともう街の人達は他の場所に非難するよ」
そうなるというのです。
「お城の中に逃げることは少ないよ」
「他の場所に非難して難儀を逃れるんだ」
「それで戦見物に入って戦が終わると」
そうなればといいますと。
「戻ってね」
「そしてだね」
「そう、また街を築くんだ」
「戦も見物出来たんだね」
「軍勢が人を襲わないからね」
「ああ、日本の戦はそうだね」
「そうだよ、戦は侍同士のもので」
あくまでそう限られているというのです。
「それでね」
「町人の人達が逃げても襲わないんだ」
「お百姓の人達もね」
「だから戦見物も出来たんだ」
「戦が終われば戻ってまた家やお店を築くし」
「ああ、木で簡単に造れたから」
「昔のお家はね」
「そのこともあってだね」
「そうだよ、本当にね」
楽にというのです。
「築いていたんだ」
「成程ね」
「それでわかるよね」
「うん」
実にと答えた王子でした。
「わかったよ」
「日本のそうしたことも」
「戦国時代とっても戦禍もね」
「他の国程じゃないんだね」
「そう、街も街の人達もまきこまない」
「武士同士の戦だから」
「それだけだから」
あくまでそうした戦だからだというのです。
「平和なままで済んだんだ」
「戦はあってもだね」
「民衆の人達がそれ程危険でなかったからね」
「それはいいことだね」
王子もこのことを理解して笑顔になりました、先生の研究室で先生のお話を聞いてそのうえで、です。
「中国とか欧州とかだとね」
「そして中近東でもね」
「お城を攻めるとなると」
「お城即ち街でね」
「周りの農村の人達も逃げ込んだりするから」
「その人達も巻き込むから」
「とんでもないことになるけれど」
このことはどうしてもです。
「沢山の人が戦禍を被って」
「そうした話が本当に多いね」
「そう考えると城下町も」
「そう、いいものだね」
「僕もそう思うよ」
心からと言う王子でした。
「そのことは」
「そういうことでね、確かに戦になってお城が囲まれると城下町もその時に焼かれたり壊されたりするよ」
戦のその中で、です。
「けれどね」
「それでもだね」
「そう、そんなことになっても」
それでもというのです。
「まだね」
「戦禍が少ない」
「それはいいことだね、そうした国ということで」
「日本のお城もだね」
「それが日本のお城と考えてね」
「砦でなくだね」
「そうね、まあ日本のお城は確かに砦から発達しているよ」
そうでもあるというのです。
「日本では砦とお城の区分もはっきりしていないところがあるし」
「それで山に多いね」
「砦は山に築くと守りが堅固だからね」
「山に築いたんだね」
「そうしていったんだ」
「それで日本のお城は山に多いんだね」
「次第に政をしやすい様に平地に築く様になったよ」
そう変わっていったというのです。
「大阪城みたいにね」
「大阪のあの立派なお城だね」
「あのお城とかね」
ここでこのお城の名前を出した先生でした。
「姫路城もね」
「ああ、あのお城もだね」
「平地に築いてるね」
「そうだね」
「ああしたお城が増えていったんだ、天守閣もある」
「天主閣いいね」
天守閣については素直にこう言う王子でした。
「凄くね」
「奇麗だし恰好よくてね」
「あれは芸術品だよ」
こうまで言う王子でした。
「まさにね」
「そう、あれは戦国時代の末期から出てきてね」
「お城の中心になったんだね」
「織田信長さんも築いたしね」
「あの人もなんだ」
「今はないけれど」
それでもというのです。
「安土という場所に凄い立派なものを築いたよ」
「へえ、そうだったんだ」
「安土城を築いてね」
「そのお城の名前は聞いたかな」
王子もです。
「何処かで」
「有名なお城だしね」
「それでだね」
「僕も知っているし」
「行ったこともだね」
「あるよ、天守閣にも登ったよ」
「最上階まで登ったかな」
先生は王子に微笑んで尋ねました。
「そうしたかな」
「そうしたよ」
実際にという返事でした。
「いい景色だったよ」
「それは何よりだね」
「日本のお城は砦じゃって思うけれど」
「それでもだね」
「凄く奇麗で恰好いいことはね」
このことはというのです。
「僕もその通りだと思うよ」
「そうなんだね」
「うん、それとね」
「それと?」
「今日のお昼は何を食べるのかな」
王子は話題を変えてきました、今度の話題はというとそうしたものでした。
「それで」
「ううん、まだ考えていなかったよ」
言われて逆に戸惑う先生でした。
「そういえば」
「それじゃあね」
王子は先生の返事を聞いて微笑んで言いました。
「ラーメンとかどう?」
「この学園の食堂のだね」
「うん、それはどうかな」
「いいね、じゃあね」
「今日のお昼はラーメンだね」
それを食べてというのです。
「そうするね」
「それと炒飯、焼き餃子かな」
こちらもと言う先生でした。
「中華主体でいこうかな」
「いいね、日本の中華料理だね」
「中国のお料理とは違うけれどね」
日本のお料理にアレンジされているというのです。
「美味しいよね」
「うん、本当にね」
まさにというのです。
「だからね、王子の言葉を受けて」
「それでだね」
「それにすることを決めたよ」
「僕の言葉が決め手になったんだ」
「そうだよ、じゃあ今日のお昼は」
「ラーメンだね」
「日本の中華料理を楽しむよ」
このことを決めてでした、そのうえで。
このお昼はラーメン等日本の中華料理を楽しむ先生でした、その味も非常に素晴らしいものでした。