『ドリトル先生と日本の鉄道』
第六幕 二人で鉄道を
先生が日笠さんと一緒に鉄道博物館に行くその日の朝にはです、トミーと動物の皆だけでなく王子もお家に来て先生に言うのでした。
「今日は日笠さんには頑張ってもらわないとね」
「全くだね」
「王子もそう思うよね」
「日笠さんには是非って」
「そう思うわよね」
「思わずにいられないよ」
王子は動物の皆に強い声で答えました。
「本当にね」
「そうだよね」
「もう日笠さんにはね」
「是非ね」
「頑張って欲しいよ」
「そしてだよね」
「そう、先生も気付くかも知れないから」
それでというのです。
「皆で日笠さんを応援しようね」
「何しろ先生だからね」
ガブガブは先生のことをよくわかっているだけに思うのでした。
「もう幾らプッシュしてもね」
「これまで誰のことも気付かなかったのよ」
ダブダブは気付いているからこそ言います。
「こうしたことについては完全に決めつけているから」
「自分はもてないってね」
「絶対のことだって思っているから」
オシツオサレツは先生が今洗面所で歯を磨いていてこの場にいないのでそれでここぞとばかりに言いました。
「外見とか運動神経とか言って」
「人間大事なのは中身だって言っていてね」
「先生のよさは確かな人ならわかるよ」
ホワイティもわかっています。
「僕達もわかっているんだし」
「先生みたいないい人いないわよ」
ポリネシアが見てもそうです。
「それで駄目とかね」
「そのせいか相手の人の想いに気付かないから」
老馬にしても困ったことです。
「見ている方が困るよ」
「日笠さんみたいにいい人なら先生のよさがわかるから」
トートーは日笠さんのそのことをお話します。
「それで今もなんだけれどね」
「けれど先生が気付くか」
チーチーはその現実を述べました。
「それがとにかく難しいんだよね」
「けれど日笠さんには是非ね」
ジップも日笠さんを強く応援しています。
「ハッピーエンドを迎えて欲しいね」
「先生もずっと一人じゃ勿体ないし」
「いつも私達が一緒にいても」
最後にチープサイドの家族が言います。
「それだったらね」
「是非にだよ」
「その通りだよ、先生が幾ら気付かなくても」
それでもと言った王子でした。
「日笠さんが頑張ったらね」
「神様がその頑張りを見てくれてね」
「想いを適えてくれるからね」
「是非だね」
「このまま頑張って欲しいね」
「だから僕達も先生を行かせるんだよ」
王子は皆に強い声で言いました。
「本当にね」
「そうだね」
「それじゃあね」
「皆で頑張ろうね」
「そうしようね」
こうお話してでした、そのうえで。
皆で身支度を整えた先生を迎えました、先生はいつも通り正装で紳士といっていい整った服装です。
その先生にです、王子はこう言いました。
「じゃあ日笠さんを大切にしてね」
「女性は尊重しないと駄目だよ」
先生はそれは常識だと答えました。
「何といってもね」
「紳士でありたいならだね」
「うん、必ずね」
「そうしたことじゃないんだけれどね」
「あれっ、紳士であれということは」
「いいことだよ、ただ今僕が言うことはね」
それはというのです。
「違う意味だよ」
「どういう意味かな、それは」
「だから紳士である以前のことだよ」
「僕は紳士でありたいと思っているんだけど」
「そういうことじゃないんだ」
「というと?」
「そこは先生自身で気付かないと」
とてもというのです。
「駄目なんだよ」
「そうなんだね」
「まあとにかく行ってきてね」
「最後までね」
「日笠さんと一緒にいてね」
「怒らせるなんてもっての他だよ」
「まあ先生が誰かを怒らせることはないけれど」
動物の皆も言います。
「服装はいつも通りしっかりしてるし」
「靴も磨いたしね」
「清潔にしているし」
「大丈夫よ」
「それじゃあ先生行ってきて下さい」
トミーも先生に言います。
「今日は僕達のことは忘れていいですからね」
「忘れていいんだ」
「はい、日笠さんのことだけを考えて下さい」
こう言ってトミーも先生の背中を言葉で押しました、それ以上に日笠さんのことを応援しながら。そしてです。
先生はお一人で鉄道博物館の前まで行きました、するとそこにはもういつもよりもいい服を着てメイクをしている日笠さんが待っていました。
日笠さんは先生に気付くとです、ご自身から声をかけました。
「先生、おはようございます」
「おはようございます。ただ」
「ただ?」
「あの、僕は開館五分前にここに来たんですが」
先生は女性を待たせてはいけないと思いそうしたのです。
「ですが」
「私の方がですか」
「先に来られているとは」
「時間を間違えまして」
真実を隠して答えた日笠さんでした。
「ですから」
「それで、ですか」
「お気になさらずに」
こう先生に言います。
「このことは」
「そうですか」
「はい、それではですね」
「開館しましたら」
「中に入って」
「二人で色々観て回りましょう」
「それでは。そういえば私は」
日笠さんは先生にあらためて言いました。
「動物園で働いていて生物のことには詳しいですが」
「鉄道のことはですか」
「学生時代研修でここに来たことはありますが」
それでもというのです。
「それだけです」
「鉄道博物館に入ったことはですね」
「はい、本当に」
「ではですね」
「久し振りに観て回りますし」
それにというのです。
「先生もご一緒ですから」
「僕がですか」
「嬉しいです」
「では期待に応えまして」
先生は必死なお顔の日笠さんに温和な笑顔で応えました。
「僕も案内させて頂きます」
「そうしてくれますか」
「鉄道の専門家ではないですが」
それでもというのです。
「知識の限りです」
「説明や紹介をですね」
「させて頂きます」
「では宜しくお願いします」
日笠さんは先生に強く言いました、こうしてでした。
先生は日笠さんと一緒に開館した博物館の中に入りました、そうして鉄道に関する様々なものを観ていきますが。
日笠さんは国鉄、今のJRが日本各地で走らせていた車両を観て先生の説明を聞いてそうして驚いていいました。
「国鉄のことも詳しいですね」
「そうでしょうか」
「はい、とても」
こう言うのでした。
「イギリスの方とは思えない位に」
「日本の鉄道についても研究したことがありまして」
「その中で、ですか」
「国鉄、今のJRのことも学んで」
そうしてというのです。
「こうした車両のことも」
「ご存知ですか」
「学んでいる中で出て来たので」
その為にというのです。
「知りました、それと関西の私鉄の車両も」
「阪神や南海のこともですか」
「学びました」
「そうでしたか」
「それぞれの企業の歴史も」
こちらもというのです。
「とりわけ」
「私は鉄道のことは詳しくないですが」
それでもと言う日笠さんでした。
「関西に住んでいますから関西の私鉄のことも」
「ご存知ですか」
「ある程度は。神戸から大阪は八条鉄道も走っていますが」
「阪急と阪神もですね」
「路線がありますし」
「そして大阪を中心としてですね」
西日本最大の街であるこの街をというのです。
「関西の私鉄は関西各地に走っていますね」
「その阪急と阪神にですね」
この二つの企業は今は統合されています。
「南海、京阪、近鉄と」
「大きな企業が五つありますね」
「そしてJRも」
日笠さんは前が四角い感じになっていて小さな窓の国鉄時代のそれぞれの地域を走っていた特急っ達を観つつ言いました。
「走っていて」
「やはり国鉄時代から関西の鉄道は」
「大阪が中心でしたか」
「環状線も走っていますしね」
「本当に大阪が中心なんですね」
「そのことがよくわかりました」
「そうですか、そこまでご存知とは」
日笠さんは唸って言いました。
「素晴らしいです。車両の名前と形も全部一致していますし」
「面白いと思いました」
「面白いですか」
「ここまで沢山の種類の車両があって」
そしてというのです。
「それぞれに日本ならではの名前が付けられていますから」
「車両の一つ一つに」
「こんなことは他の国ではそうはないです」
多くの種類の車両があってそれぞれに名前が付けられていることはです。
「本当に」
「日本だけですか」
「日本だけの鉄道文化です」
こう言っていいというのです。
「まことに」
「そうですか」
「はい、そして」
先生は日笠さんにさらにお話しました。
「学べば学だけ興味が出て」
「それで先生の中にもですか」
「入りました」
「他の学問と同じ様にですね」
「はい、国鉄そしてJRは素晴らしいです」
先生のお言葉は絶賛そのものでした。
「ここまでの種類の車両を造って動かして」
「それぞれの名前も付けて」
「こうした国は本当に日本だけですから」
「そこまで感激されるとは」
「いえ、深い愛を感じまして」
「愛ですか」
「日本人の鉄道に関する」
「では他の国には」
日笠さんは先生に尋ねました。
「ここまでのものは」
「ちょっとないですね」
「そうですか」
「ここまで鉄道が好きで栄えている国は」
それこそというのです。
「日本だけです」
「そこまでとは」
「JRも凄いですが各私鉄も凄いですから」
そのどちらもというのです。
「JRはずっと様々な路線にそれぞれの鉄道を走らせていますね」
「それがここにあるものですね」
「国鉄時代から」
まさにというのです。
「そしてそれがです」
「素晴らしいですね」
「そう思います、そして」
さらにお話した先生でした。
「日本には鉄道マニアの人も多く」
「今この博物館にも多いですね」
見ればしきりに写真を撮影している人達もいます。
「そういえば」
「はい、こうした人達もです」
「日本ならではですか」
「日本にはそれぞれの分野でマニアの人がいますが」
それでもというのです。
「鉄道は特に凄い分野の一つかと」
「特にですか」
「そう思います」
「そしてそのマニアの人達もですか」
「日本の鉄道文化を支えていると思います」
「そこまでとは。では私も」
日笠さんは先生にあらためて言いました。
「鉄道のことを学んでいこうとです」
「思われていますか」
「思います」
まさにというのです。
「今から」
「いいことだと思います、日本の鉄道はです」
「素晴らしいからですね」
「ですから」
それでというのです。
「日笠さんがそう思われるなら」
「是非にですね」
「そうされて下さい」
先生は日笠さんににこりと笑ってお話しました。
「是非。そして」
「そして?」
「お昼はどうされますか?」
「お昼ですか」
「何を召し上がられますか?」
「お昼でしたら」
日笠さんは先生にお話に即座にしかも急いでいる感じで言ってきました。
「もうです」
「もう?」
「はい、お弁当を作ってきています」
「僕の分もですか」
「十時と三時の分もです」
「ティーセットもですか」
「用意しています」
そちらのこともというのです。
「ですから十時になれば」
「あと少しですが」
「何処か休めるところを見付けて」
そしてというのです。
「そのうえで」
「十時になれば」
「はい、一緒にです」
「ティータイムもですね」
「楽しみませんか」
「喜んで」
笑顔で、です。先生は日笠さんに笑顔で答えました。
「そうさせて下さい」
「ミルクティーを魔法瓶に入れて持って来ていまして」
「それで紅茶はですね」
「持って来てセットはです」
そちらはといいますと。
「ビスケットやシュークリーム、ゼリーをです」
「持って来てくれたのですか」
「それを十時と三時に食べましょう」
ティータイムは絶対に楽しむ主義の先生に言うのでした。
「是非」
「それでは」
「大きな魔法瓶ですのでお昼の分もあります」
紅茶はというのです。
「それでお昼はサンドイッチとコールドチキンのセットです」
「サンドイッチとですか」
「この二つをです」
まさにというのです。
「お昼に作ってきました」
「日笠さんがですか」
「そうしてきました」
まさにというのです。
「二人分作ってきました」
「何から何まで悪いですね」
「当然のことですから」
「当然ですか」
「当然です」
日笠さんの返事には有無を言わせないものがありました。
「まさに。それでは」
「十時とお昼、三時には」
「一緒に食べましょう」
「わかりました、実はです」
「実は?」
「お昼は。この博物館は駅弁も売っていまして」
以前皆と行った時に食べたこれのお話もするのでした。
「そちらをと思っていましたが」
「それも素晴らしいですがそれでも」
「作ってきてくれたんですか」
「はい」
あえてという返事でしたが先生は気付きません。
「そうしてきました」
「そこまでして頂かなくても」
自分にとです、謙虚な先生は思いましたが。
日笠さんはその先生にです、強い声で言ったのでした。
「私がそうしたいのですから」
「いいですか」
「そうです、食べて下さい」
「それでは」
人の、お友達の好意を無碍にしてはいけないと思って答えた先生でした。そして十時にはティータイムとなりましたが。
それぞれ外に出てそこに置いてある車両の中にあえて向かい合って座って食べましたがその食べる時にです。
先生は今座っている車両について日笠さんに言いました。
「これは昔の車両ですが」
「何時の頃のどの国のものでしょうか」
「二十世紀初頭の日本のものですね」
「我が国のものですか」
「はい、頑丈な造りですね」
「そうですね、確かに」
「そしていいデザインですね」
こうも言った先生でした。
「この車両も」
「古風な感じがして」
「この車両に乗って」
「二人で」
ついこう言ってしまった日笠さんでした。
「いいですね」
「そうですね、僕も皆とこうした車両で旅をして」
それでも気付かない先生でした。
「楽しみたいですね」
「皆と、ですか」
「はい、日笠さんもですか」
それでというのでした。
「その時は一緒に楽しみましょう」
「それでは」
「宜しくお願いします」
「そうですね」
残念そうに応えた日笠さんでしたが先生はその表情はわかってもどうしてそういったお顔になったのかはわかりません。
それでもティーセットを楽しみます、そうしてさらに言うのでした。
「昔は何でもない様に作ったのでしょうが」
「今はですね」
「素敵なです」
まさにというのです。
「車両に思えます」
「この古風なデザインが」
「かえって」
そう思えるというのです。
「ノスタルジーですね」
「そうですね、昔のものを懐かしむこともですね」
「鉄道の楽しみで」
「こうしてですね」
「楽しめることは」
まさにと言う先生でした。
「こうした場所の特徴の一つですね」
「はい、それに」
「それにですか」
「ここもカップルが多いですね」
日笠さんは先生に芽を細くさせてこうも言いました。
「家族連れだけでなく」
「そうですね、若いカップルも多いですね」
「マニアの人達が一番多いですが」
「最近こうした場所を一緒に行って」
「そうしてですね」
「デートをしている人も多いですね」
まさにというのです。
「鉄道博物館でも」
「この学園のこうした場所は何処でもですが」
動物園も水族館も博物館もです、特に植物園と美術館が人気があります。
「ここもですね」
「本当にそうですね」
「そして」
日笠さんはここから自分達もと言おうとしました。
ですがそれを止めてこう言ったのです。
「あっ、何でもないです」
「そうですか」
「はい、ただ」
「ただ、ですか」
「こうして先生と一緒にいられると」
ミルクティーを飲みつつ言うのでした。
「楽しいですね」
「そうですね、素敵な場所ですしね」
「そうですよね」
「紅茶も美味しいですし」
「ただカップは」
日笠さんはこちらのことについては申し訳なさそうに言いました。
「申し訳ないですが」
「紙コップですか」
「風情がなくて申し訳ありません」
「いえいえ、日本の鉄道の旅ではです」
「紙コップだからですか」
「今僕達は車両の中にいますから」
だからだというのです。
「相応しいですよ」
「そう言って頂けますか」
「はい」
実際にというのです。
「ですからこれで、です」
「いいですか」
「はい、では今もお茶を楽しんで」
「お昼と三時にも」
「そうしましょう」
「それでは。ただイギリスでは鉄道の中でもですか」
この中でもと言う日笠さんでした。
「ティータイムを楽しまれますか」
「鉄道によりますね」
「長旅の場合はですか」
「はい、楽しみます」
「それが出来る車両の中でですね」
「楽しむ人がいまして」
それでというのです。
「僕もです」
「先生もですね」
「はい、やはり僕はティータイムがないと」
十時と三時のです。
「調子が出ないので、特に三時にです」
「おやつの時間ですね」
「これがありませんと」
どうしてもというのです。
「夕食まで元気が出なくて」
「それでティーセットですね」
「そうです。十時は軽くですが」
ティーセットはティーセットでもです。
「三時はです」
「本格的なですね」
「ティーセットです」
こちらを楽しむというのです。
「そうしています」
「そうですか、では」
「はい、今からですね」
「楽しみましょう」
日笠さんはそれならと密かに心勇みながら先生と一緒に十時のティータイムを楽しんでそしてでした。
お茶の後鉄道を観て回りましたが鉄道模型のコーナーに新たにリニアモーターカーの模型も造られだしていました。
その線路を見てです、日笠さんは先生に言いました。
「本格的ですね」
「リニアモーターカーの模型ですね」
「線路も再現されていて」
日笠さんはその線路を観ていいました、普通のレールとは明らかに違うリニアモーターカーの線路です。
「凄いですね」
「そうですね、何かです」
「何か?」
「実物のリニアモーターカーの様にです」
「動くんですか」
「そう設計されているそうです」
先生は日笠さんにリニアモーターカーの模型について詳しくお話しました。
「最初から」
「他の鉄道模型と違って」
「はい」
そうだというのです。
「どうやら」
「そこまでしていますか」
「その様です」
「そうですか、しかし」
「しかし?」
「そこまでするとは」
日笠さんは先生のお話を聞いて唸って言いました。
「流石は八条学園の施設ですね」
「何でも本格的で」
「凝っていて」
「僕もそこまでと思っています」
「そこまで忠実に再現するとはですね」
「思っていませんでした」
「鉄道模型は普通は電気で動かしますね」
「蒸気機関車も」
この博物館の鉄道模型もそうなっています。
「ですが」
「それでもですね」
「リニアモーターカーはです」
「そこまで再現してですか」
「走らせる予定みたいですね」
「まだ実用化されていないですが」
日笠さんはそれでもと思いつつ言いました。
「そこまでするとは」
「凄いですね」
「驚きました」
「それだけ本気ということですね」
「お金もかかりますよね」
「八条グループが出すそうなので」
その規模たるや世界屈指のものであるこのグループがというのです。
「ですから」
「お金の心配はないですか」
「技術のことも」
「そういえば八条グループはリニアモーターカーの研究も行っていますね」
「そのせいもあるのでしょうね」
「そうなんですね、しかしそこまでするとは」
唸って言う日笠さんでした。
「本当に驚きました」
「流石八条グループでしょうか」
「そうですね、そして完成すれば」
「実際に走るそうです」
リニアモーターカーの鉄道模型がです。
「どうやら」
「余計に凄いです、そしてやがては私達は」
「はい、リニアモーターカーにです」
「乗られますね」
「はい」
実際にというのです。
「それも出来ます」
「そうですか、何かもう」
「夢みたいですか」
「そうも思えます」
日笠さんはこう先生に言いました。
「リニアモーターカーに乗られるなんて」
「そうでね、ですが夢はです」
先生は日笠さんにこう返しました。
「夢で終わらせるのではなく」
「現実のものにですね」
「していくものなので」
それでというのです。
「ですから」
「それで、ですか」
「リニアモーターカーもです」
「実用されていくんですね」
「そうです」
こう日笠さんにお話するのでした。
「私達も乗られる様になりますよ」
「そして新幹線以上にですね」
「速く移動出来ます」
「そうなりますね」
「そしてです」
今度は笑ってお話した先生でした。
「日本人の嗜好からしまして」
「私達のですか」
「絶対にアニメや特撮の題材になりますよ」
「ヒーローの乗るロボットにですか」
「そういうものになりますね」
「それはありますね」
日笠さんも先生のお話に納得して頷きました。
「日本では」
「鉄道がモチーフのアニメや特撮多いですね」
「はい」
実際にというのです。
「私は男の子が観るものは子供の頃から詳しくないですが」
「それでもですね」
「よく聞きます」
そうだというのです。
「そうしたアニメや特撮があることは」
「ですから」
「絶対にですね」
「リニアモーターカーもです」
他の鉄道と同じくというのです。
「モチーフにして出ます」
「そうなりますか」
「絶対に」
「そういえば銀河鉄道も」
日笠さんは宮沢賢治やあの漫画をここで思い出しました。
「鉄道を扱っていますね」
「そうでしたね」
「空や宇宙を飛ぶ列車というのは」
「幻想的ですね」
「素晴らしい発想ですね」
「そして特撮やアニメでも」
あらためてこうしたジャンルのお話をする先生でした。
「題材になっていますからね」
「それではおもちゃも出ますね」
「はい、絶対に」
「鉄道模型以外にも」
「アニメや特撮のおもちゃとして」
「趙合金のですね」
「そちらでもです」
こうお話するのでした。
「出ますよ」
「何ていいますか」
しみじみとして言った日笠さんでした。
「そこも日本ですね」
「八条グループもおもちゃメーカーありますしね」
「八条ホビーですね」
「プラモデルも超合金も鉄道模型も」
どれもです」
「造っていて」
「他にも色々なおもちゃを」
「そうしていますから」
だからだというのです。
「リニアモーターカーもまた然りで」
「ではそちらのお仕事の方々にとっても」
「いいことですね」
「おもちゃは重要な産業ですから。実は私の友達も」
「八条ホビーにですか」
「います、高校時代の同期で事務をしています」
そうして勤務しているというのです。
「この前結婚したそうです」
「そうですか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「何といいますか」
「では日笠さんにも良縁があらんことを」
「そうですね。そして先生にも」
「僕はないですよ」
今回も本当に気付いていない先生です。
「こうしたことは」
「縁がですか」
「女性にもてたことないので」
恋の相手としてはというのです。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、本当に」
そこはというのです。
「僕に結婚はです」
「ないですか」
「それはありません」
先生は日笠さんに笑顔でお話します。
「もうわかっていますから」
「そうですか。ですが」
「そのことはですか」
「実は違ったりしますよ」
「だといいんですがね」
「きっと」
このことは強く言う日笠さんでした。
「ですから諦めないことです」
「絶対だと思いますけれど」
「世の中絶対はないって言いますよね」
日笠さんは先生がよく言うお言葉をここぞとばかりに出しました。
「そうですよね」
「それはそうですが」
「ですから」
「きっとですか」
「はい、先生にも良縁があります」
「一生ないと思っていても」
「違う筈ですよ」
本当に必死に言う日笠さんでした。
「本当に」
「だといいんですが」
「こうしたことは人ではわかりませんし」
「絶対と思っていても」
「ですから」
「そう言われましても」
先生が思うにはです。
「僕はです」
「女の人にはですか」
「縁のない人生でして」
「これからもですか」
「そうなので」
「それは主観だと思いますから」
「僕もやがてはですか」
また言った先生でした。
「本当にそうだといいですね」
「きっとそうなりますから。それに」
「それに?」
「リニアモーターカーが実用化したら」
その時のこともお話した日笠さんでした。
「一緒に乗りませんか」
「僕とですか」
「そうしてくれませんか」
「僕でよかったら」
先生は日笠さんに紳士的な物腰で応えました。
「宜しくお願いします」
「その時を楽しみにしていますね」
「はい、実用化された時は」
「二人で乗りましょう」
「皆とも乗りますが」
ここでも彼等のことを忘れない先生です。
「日笠さんとも」
「二人で」
「是非共」
お友達でと応えた先生でした、そうしてです。
先生達は日笠さんと一緒に鉄道博物館の中を巡っていきますが日笠さんは出る時にこんなことを言いました。
「鉄道博物館も回りましたし」
「面白かったですね」
「今度はです」
これからのことにも言及したのです。
「美術館はどうでしょうか」
「美術館ですか」
「あちらにも」
「そうですね、美術館もいいですね」
「そうですよね、ですから」
「あちらもですね」
「一緒に」
二人でというのです。
「行きましょう」
「それでは何時ですか?」
「先生がいいという時に」
これが日笠さんの返事でした。
「合わせます」
「それで、ですか」
「私は何時でもいいので」
「そう言って頂けると悪いですね」
「いえ、そう決めていますから」
だからだというのです。
「宜しくお願いします」
「それでは」
先生は日笠さんにその日は詳しくお話してと返してこの日は日笠さんをお家まで送りました。そしてです。
お家に帰って皆に晩御飯を食べつつこの日のことをお話しましたが動物の皆はこう言ったのでした。
「先生らしいよ」
「本当にね」
まずチープサイドの家族が言います。
「何というか」
「何処から何処までね」
「紳士だけれどね」
それはいいとするポリネシアでしたが。
「正直全体的にね」
「何もわかってないわね」
ダブダブの言葉は辛辣でした。
「いつも通り」
「少しは先に進んだ感じだけれど」
それでもと言うトートーでした。
「正直僕達の求める基準じゃないね」
「日笠さん凄く頑張ってるね」
「必死だね」
オシツオサレツは完全に日笠さんの方に立っています。
「本当にいい人だよ」
「いつも思うことにしても」
「だから応援しているけれど」
ホワイティはオシツオサレツの背中から言います。
「先生は相変わらずだしね」
「この相変わらずさはどうにかならないの?」
チーチーはダブダブ並に辛辣でした。
「こうしたことについての」
「次は美術館っていうけれど」
ジップはその次のお話をします。
「この調子かな」
「そうじゃないの?先生だし」
ガブガブもすっかり呆れています。
「もう何から何まで駄目駄目だから」
「二人で、っていう時点で普通はね」
最後に党馬が言います。
「そうなるのにね」
「皆何を言ってるかわからないけれど」
わかっていないのが自分だということにわからないまま言う先生でした。
「楽しい時間を過ごせたよ」
「うん、日笠さんも楽しかったね」
「それはわかります」
王子とトミーも言ってきました、二人共呆れています。
「ですが」
「それでもね」
「先生それじゃあです」
「僕達も呆れるしかないよ」
「何で皆そう言うのかね」
何もわからないまま言う先生でした。
「僕にはわからないけれど」
「このお話サラさんが聞いたらね」
「僕達以上に呆れるよ」
「もう呆れ果ててね」
「お話聞いてすぐにイギリスに帰るかもね」
「サラがかい?どうしてかな」
動物の皆の今の言葉にはきょとんとなっています。
「呆れるのかな」
「呆れるって」
「僕達より遥かに」
「いつものことにしても」
「いつもこうだから」
「あの人は私達より呆れるわ」
「そうなのかな。それで今度は美術館だけれど」
先生は日笠さんと次に一緒に行く場所のお話をしました。
「あそこもいいからね」
「美術品が沢山あるよね」
「世界的なものが」
「八条グループが集めたね」
「古今東西の芸術品が揃ってるわね」
「だからね」
それでというのです。
「行くのが楽しみだよ」
「ええ、じゃあ学問のこと以外にもね」
「その楽しみ向けてね」
「そうしてね」
「芸術は学問なんだけれど」
先生はあくまでそうしたことからしか考えていません、日笠さんと一緒にいても日笠さんに誘われても。
「それ以外っていうと」
「だから違うから」
「そこはね」
「ちゃんとわかってね」
「僕達も背中押すから」
「そうしてね」
「まあとにかくね」
呆れつつもです、王子は皆に言いました。
「晩御飯食べよう」
「うん、今日はしゃぶしゃぶだったね」
「そうだよ、お肉買ってきたから」
王子は先生ににこりと笑って答えました。
「これからね」
「皆でだね」
「羊のしゃぶしゃぶ食べようね」
「マトンやラムのだね」
「両方買ってきたから」
羊のお肉はというのです。
「だからね」
「両方楽しめるね」
「うん、しかしね」
「しかし?」
「日本で羊のお肉凄く安いね」
「そう、牛肉よりずっとね」
トミーが王子に答えました。
「安いんだよね」
「しかも身体に凄くいいけれど」
「日本人羊はあまり食べないよね」
「そうなんだよね」
「ジンギスカン鍋にしても焼き肉にしても美味しくて」
「ステーキにしてもね」
「勿論しゃぶしゃぶにしても」
トミーも言います。
「美味しいのに」
「何故かあまり食べないんだよね」
「羊のお肉はね」
「あまり馴染みがないのは確かだね」
先生もこう言います。
「日本人に羊は」
「魚介類を沢山食べてね」
「そうなんだよね」
「胃袋の食べる量は限られていて」
王子は考えつつ言いました。
「魚介類を食べる分ね」
「羊はだね」
「食べないのかな」
「そう言われるとそうかもね、けれど僕達はね」
「うん、今からね」
「その羊を食べようね」
「是非ね」
先生に笑顔で言いました、そしてでした。
皆で羊のしゃぶしゃぶも食べました、夏に食べるしゃぶしゃぶも乙なものでした。