『ドリトル先生と日本の鉄道』
第五幕 鉄道マニア
先生は休日駅の方まで行きました、動物の皆と一緒に商店街を歩いていてそちらの方のお店に行ったのでした。
その駅を見てです、動物の皆が言いました。
「先生もハンバーガー食べるね」
「それも結構」
「好きなんだね」
「うん、好きだよ」
先生は皆に笑顔で答えました。
「だから今からね」
「八条バーガーに入って」
「そしてだね」
「ハンバーガー買ってだね」
「食べるのね」
「そうするんだ、チーズバーガーにチキンフライバーガーも買って」
先生は笑顔で言うのでした。
「あとスパムバーガーも買おうか」
「何と言ってもビッグバーガーだね」
「それも買って」
「それもだね」
「そうしてだね」
「食べようね。飲みものはね」
それはといいますと。
「コーラにしよう」
「何か先生がコーラ飲むって」
「ちょっと違和感ある?」
「そうだよね」
「そうかな。僕は何でも食べる方だよ」
自分で言う先生です。
「それでね」
「ハンバーガーもコーラもなんだ」
「食べて飲むんだ」
「それで好きなのね」
「そうなんだ、それで今からね」
まさにというのです。
「ハンバーガーを食べに行こうね」
「うん、じゃあね」
「スパムバーガーも食べて」
「他のハンバーガーも食べて」
「そうして楽しもうね」
「是非ね、そして三時にはお家に帰って」
そしてと言うのでした。
「ティータイムにしようね」
「買いものも済ませたし」
「是非ね」
「そうしようね」
こうお話してでした、先生は動物の皆と一緒に駅前のハンバーガーショップに入ってそうしてでした。
皆と一緒にハンバーガーを食べてコーラを注文しました、他にはチキンナゲットやフライドポテトも注文しましたが。
皆で食べはじめた時にお店にやけに重そうな撮影道具を持った若い人たちが入ってきました、その人達を見てです。
動物の皆はまずです、こう言いました。
「あれっ、撮影かな」
「そうみたいだね」
「ユーチューブかな」
「本格的なユーチューバーの人達かしら」
「そうかしら」
「そうかもね」
先生も言います。
「彼等はね」
「そうなんだ」
「それじゃあ今から?」
「今から撮影するの?」
「そうするの?」
「そうだろうね、ただ」
こうも言った先生でした。
「彼等はね」
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「うん、多分だけれど」
こう前置きして言うのでした。
「鉄道のね」
「そっちのなの」
「動画を撮影するの」
「そうした人達なの」
「多分ね」
そうではないかというのです。
「だってね」
「ああ、駅だからね」
「駅がすぐ傍だから」
「だからね」
「今から駅に行って」
「そして撮影するんだ」
「どういった立場かわからないけれど」
それでもというのです。
「鉄道をね」
「撮影することはだね」
「間違いないのね」
「そのことは」
「そうだと思うよ」
このことはというのです。
「やっぱりね」
「そうなんだ」
「それじゃあだね」
「今からだね」
「撮影しに行くのね」
「八条駅まで」
「うん、あと推理になるけれど」
こうも言った先生でした。
「僕はホームズでもポワロでもないけれど」
「ましてやマイク=ハマーでもないね」
「バージル=ティッブスでも」
「日本だと明智小五郎?」
「あと金田一耕助」
「どれも違うけれど」
それでもというのです。
「推理をするとね」
「うん、そうするとだね」
「彼等は何者か」
「一体」
「そう、高校生だね」
彼等はというのです。
「多分ね」
「外見見たら?」
「若いし」
「それでなの」
「うん、大学生には見えないね」
そこまでの年齢ではないというのです。
「もっと若いね」
「そうだね」
「大体十六歳から十八歳」
「それ位ね」
「おおよそ」
「それ位の年齢ね」
「だからね」
それでというのです。
「彼等はね」
「高校生で」
「休日を利用して撮影に来ている」
「そうなんだね」
「しかもあれだけの撮影道具はね」
彼等が持って来た本格的なそれはです。
「部活で持っている道具だね」
「そう言える根拠は?」
「何なの?」
「うん、それはね」
まさにというのです。
「どれもとても高価だね」
「そうだね」
「かなり高価そうだね」
「本格的だしね」
「見たところ」
「実際にね」
「だからね」
それでというのです。
「こう言ったんだけれど」
「そうだね」
「高校生の財力で買えるものじゃないね」
「一つ一つね」
「どうしても」
「しかも結構年季も感じられるね」
その道具達にはです。
「だからね」
「部活だね」
「部活の道具だね」
「部費で購入した」
「そうしたものだね」
「そしてね」
さらにお話する先生でした。
「あれだけの道具がある部活となると」
「部費あるね」
「部費がある部活だね」
「お金持ちの学園の中にあるのかな」
「そうした部活だね」
「そしてね」
先生の推理は続きます。
「この辺りでお金がある学園は」
「公立だとね」
「難しいよね」
「お金のことは」
「どうしても」
「そう、国公立の学校はね」
実際にと言う先生でした。
「お金にはね」
「税金で運営されているから」
「どうしても限界があるね」
「お金のことについては」
「どうしても」
「そう、だからね」
それでというのです。
「ああしたものを揃えることも」
「幾ら部費でもだね」
「難しいね」
「そのことは」
「現実として」
「うん、だから違うよ」
こう言うのでした。
「多分私立の学園に所属しているね」
「そうした部活だね」
「そこにいる子達なんだね」
「そうなんだね」
「そしてあそこまでの立派な道具を揃えるだけの部費がある」
それはというのです。
「この辺りの学園でそうした学園は」
「うちだね」
「八条学園だね」
「僕達がいる学園だね」
「そうだよ、八条学園はね」
先生達が通っているこの学園はというのです。
「何といってもね」
「そうそう、世界屈指の企業グループが経営しているから」
「八条グループがね」
「あれだけの学園だし」
「施設だって凄いしね」
「だからね」
部活の用具や道具もというのです。
「あれ位は用意出来るから」
「だからだね」
「あの子達は八条学園高等部の学生さん達だね」
「そうなんだね」
「うん、そしてね」
さらに言う先生でした。
「彼等の部活はね」
「今度はそこへの推理だね」
「それをするんだね」
「今から」
「するよ、もうこれは簡単かな」
ハンバーガーを食べつつ笑顔で言う先生でした。
「ここまできたら」
「鉄道研究会かな」
「先生がこの前お話していた」
「大学にも高等部にもあるっていう」
「本格的って評判の」
「その部活ね」
「うん、高等部のね」
まさにというのです。
「そこの子達だろうね」
「それでだね」
「高等部に入って」
「そうしてだね」
「今からだね」
「八条駅に入って」
「撮影だね、お話は聞こえないけれど」
もっと言えば聞く趣味もありません、先生は紳士なので盗み聞きやそうしたことはしない人なのです。
「けれどね」
「それはわかるね」
「八条駅の傍だしね」
「まさにそこのね」
「うん、ここで最後の打ち合わせをしているね」
観れば皆コーラやコーヒーを飲みながらお話をしています。
「それでね」
「撮影に行って」
「そしてだね」
「実際に撮影するんだね」
「そうするんだね」
「間違いなくね、そしてね」
さらにお話する先生でした。
「楽しむだろうね」
「撮影を」
「それをだね」
「今から」
「そうするんだね」
「そうだろうね、しかしね」
先生はまた言いました。
「日本のこうしたマニア心はね」
「本当に凄いね」
「鉄道マニアの人達も」
「所謂鉄っちゃんも」
「そうだね」
「というかね」
「もう生きがいを感じるね」
チープサイドの家族もこう言います。
「あの人達を見ていると」
「そうしたものさえ感じるよ」
「全くだね」
「僕から見てもそうだよ」
オシツオサレツはチープサイドの家族に同意しました。
「熱く語ってね」
「それも全員が」
「好きなんてものじゃないね」
老馬にもこのことはわかりました。
「本当に」
「まさに生きがいね」
ダブダブが見てもそうでした。
「あの人達にとって鉄道は」
「今からその生きがいにかかるんだね」
ジップにもそのことがわかりました。
「そうなんだね」
「その生きがいに向かう」
トートーはそのこと自体に思うものがありました。
「それがロマンかな」
「趣味にはロマンがある」
ホワイティの言葉です。
「そういうことかな」
「そしてそのロマンを楽しんでね」
ポリネシアから見てもその人達は心から楽しんでいます、今の会話ですら。
「生きているんだね」
「じゃああの人達は幸せだね」
ガブガブもそれがわかりました。
「そうだね」
「それがお顔に出ているね」
チーチーが見てもそうでした。
「それもあの人達全員から」
「そうだね、鉄道にロマンそして生きがいを見て」
先生のお顔も彼等の楽しそうなものを見て暖かいものになっています、まさに正しい教育者としてのそれが。
「楽しくね」
「皆生きているんだね」
「あの通り」
「そう思うと鉄道も凄いね」
「偉大と言うべきだね」
「うん、僕達のご先祖様もね」
産業革命のイギリス人達もというのです。
「素晴らしいものを発明してくれたね」
「そうだよね」
「若し鉄道がなかったら」
「あの人達もね」
「あんなにロマンを見出していないかもね」
「生きがいすらね」
「そうかもね。日本で恐ろしいまでに進化して」
そしてというのです。
「ああしてね」
「楽しむ人達も出て」
「ロマン、そして生きがいにさえなっている」
「それはね」
「素晴らしいことだよね」
「そうだね、しかし彼等の情熱に勝てるものは」
今度は唸って言う先生でした。
「果たして僕にあるかな」
「あるよ、先生にも」
「ちゃんとね」
「僕達が保証するよ」
「先生にも凄い情熱があるよ」
「そうかな」
そう言われるとピンとこない先生でした、ですが。
その先生にです、皆は言いました。
「学問だよ」
「学問全体への情熱だよ」
「先生はそれが凄いよ」
「誰にも負けていないよ」
そうだというのです。
「それこそね」
「学問についてはだよ」
「誰にも負けていないよ」
「そう言い切れるよ」
「そうかな。僕はあそこまではね」
今鉄道に情熱を向けている彼等程はというのです。
「情熱はないと思うけれど」
「なかったらここまでなっていないよ」
「幾つもの分野で博士号持っていないから」
「論文も書き続けていないよ」
「絶対にね」
「そうかな」
そう言われてもまだ言う先生でした。
「僕は熱い人間じゃないけれど」
「いやいや、確かに先生は熱いタイプじゃないよ」
「熱いっていうか暖かい」
「そんな人だけれどね」
「情熱はあるよ」
「しっかりとね」
「だから学問を続けているんじゃない」
今の様にというのです。
「だったらだよ」
「あの子達にも負けていないわ」
「絶対にね」
「ただしね」
ここで皆は先生にこうも言いました。
「先生はね」
「どうしても気付かないものがあるから」
「それが問題なんだよね」
「僕達にしても」
「困りものだよ」
「気付かないことは気付かないとね」
その気付かないことが何かということに気付かないまま言う先生でした。
「学問は進まない場合があるよ」
「いや、そうだけれどね」
「それは学問だけじゃないから」
「先生の場合は」
「学問のことは気付くじゃない」
「いつも細かいところまで観ているから」
こと学問においてはそうなのです。
「けれどね」
「他のことでだよ」
「気付かないから」
「いい加減って思いながら」
「いつも焼きもきよ」
「果たして何のことか」
本当に気付かない先生です。
「わからないけれど」
「そうだよね」
「先生はそうした人だね」
「こうしたことに関しては」
「何があっても気付かないから」
「何かな。そういえば」
ここでふと思い出したことがあった先生でした。
「今日日笠さんからメールあったよ」
「あっ、それはまたいいね」
「日笠さんやるね」
「いつも頑張ってるわね」
「応援したくなるよ」
「鉄道博物館に行ったことをメールでお話したら」
そうしたらというのです。
「今度ね」
「うん、一緒にだね」
「一緒に行こうってね」
「そうお話していたんだね」
「そうしたらね」
今日というのです。
「返事が来たけれど」
「それでどうだったの?」
「日笠さん何て言ってるの?」
「メールで」
「うん、是非にってね」
先生は皆に温和な笑顔でお話しました。
「返事が来たよ」
「それは何より」
「よかったね」
「じゃあ今度一緒にね」
「鉄道博物館行ってね」
「僕達は留守番しておくからね」
「あれっ、君達も来ればいいのに」
先生は皆の気遣いには気付かずにきょとんとしたお顔になりました。
「そうしないの?」
「いいよ、僕達は」
「だから二人で言ってきてね」
「トミーも王子もそう言うよ」
「だからね」
「二人で行ってきてね」
「僕達はいつも一緒なのに」
本当に気付かないです、そのうえできょとんとしたお顔のままの先生でした。
「どうしてそう言うのかな」
「だからね、先生それはね」
「先生がこれまで読んだ文学作品思い出したら?」
「先生最近武者小路実篤読んでるんだよね」
「日本のこの小説家の作品を」
「うん、恋愛を軸として人の心の動きを優しい目で書いていてね」
先生はこの前読んだ棘まで美しという作品を思い出しつつ皆にお話します、先生は文学についても造詣が深いのです。
「素晴らしい作品だよ」
「読んでるのに」
「しっかりと」
「それでもわからない?」
「私達が今言っていることが」
「どういうことかな」
本当にわかっていない先生です。
「それは」
「だからね、ここはね」
「二人で行って来てってこと」
「もう気付いていないなら考えなくていいから」
「そうして日笠さんとね」
「意味がわからないけれど皆がそう言うなら」
先生にしてもでした。
「今度二人で行って来るよ」
「そうしてね」
「全く、先生ってこうしたことは駄目なんだから」
「スポーツと家事も全く出来ないけれど」
「こうしたことだって」
「スポーツと家事は確かに駄目だよ」
ご自身でもよくわかっていることの一つです。
「僕はね。けれどね」
「わからないっていうんだね」
「私達が今言ってることは」
「このことは」
「うん、どういうことなのか」
本当にというのです。
「わからないけれど」
「だからわからないならいいから」
「武者小路実篤読んでわからないなら」
「もうそれでいいから」
「それならもう考えないで」
「それで一緒に行って」
日笠さんにというのです、皆はこう言うのでした。そしてトミーも晩御飯に海老と貝のパエリアと鶏のグリル、トマトとソーセージを沢山使ったシチューと赤ワインを出しつつ先生に対して言いました。
「皆の言う通りですよ、それで王子も聞いたら」
「このお話をだね」
「絶対に同じことを言いますよ」
「僕達だけで来て行って来てって」
「はい、そう言います」
絶対にというのです。
「そう言いますよ」
「そうなんだね」
「はい、二人で行ってきて下さい」
トミーは王子に微笑んで言いました。
「そうして楽しんできて下さい」
「それじゃあね」
「二人で行くのもいいものですよ」
「皆が一緒でなくてもだね」
「はい、というかです」
ここでこうも言ったトミーでした。
「先生は人気あるんですよ、実は」
「そうだね、動物の皆がいてトミーがいて王子がいてくれてね」
先生はトミーが言っていることと別の解釈をして言いました。
「学生の皆がいてくれて学園の中にもお友達が沢山いて」
「そして日笠さんもですね」
「大切なお友達の一人だよ」
「いえ、お友達でなくて」
「違うのかな」
「はい」
そうだというのです。
「そこはそう思わずにです」
「どういうことかな」
「まあそこはお考えにならずに」
トミーもこう言いました、わからないのならもう考えるのを止めてというのです。
「お二人だけで行って下さい」
「そうしていいんだね」
「はい、今回は」
「何か皆引っ掛かること言うけれど」
「引っ掛かるっていうか」
「何かな」
「ありのまま言ってますよ」
トミーにしても動物の皆にしてもです。
「そうしていますよ」
「そうなのかな」
「というか先生文学における恋愛って何だと思います?」
「色々なことを思えて言えるね」
先生はトミーにはっきりと答えました。
「人間の非常に重要なものの一つだからね」
「それ故にですね」
「うん、恋愛を題材にした作品は多いし」
「日本でもイギリスでもそうですね」
「その作品ごとに書かれ方、描かれ方は違っていて」
「現実でもですね」
「実に多彩だよ。だからその恋愛ごとにね」
先生は文学や芸術で描かれている恋愛についてお話しました。
「深く考えていくことがね」
「大事ですね」
「そう思うよ、恋愛は非常にね」
まさにというのです。
「難しくかつ美しいものだよ」
「それで先生ご自身は」
「僕はもてたことがないからね」
これが先生のお返事でした。
「だからね」
「それで、ですね」
「うん、とてもね」
先生ご自身の恋愛はというのです。
「全く縁がないよ」
「そうしたものですか」
「これまで生きてきてもてたことがないから」
「一度もですか」
「本当にないんだよ」
主観に基づき言うのでした。
「これまでね」
「違うって思ったことないの?」
ホワイティはかなり真剣に尋ねました。
「そうは」
「少しでも思ったことないの?」
ジップも自分の頭の上にいるホワイティに続きました。
「自分はもてるとか」
「実は違うとかね」
トートーも言います。
「ちらっとでも思ったことない?」
「あの娘自分のこと好きとか」
ダブダブはトートーの横から先生に聞きました。
「思ったことない?」
「学生時代とか自分を見ている人いるとか」
ガブガブはそうしたことはあったかと尋ねました。
「意識したことない?」
「ひょっとしてとか」
「あと何かお誘い受けたとか」
チープサイドの家族も言います。
「デートとかね」
「あとお手紙貰ったとか」
「本当に一度でもないの?」
ポロネシアはかなり真剣に尋ねました。
「これまで」
「絶対にあったよ」
チーチーは断言しました。
「先生ならね」
「先生に縁がないとか」
「こと恋愛には」
オシツオサレツも二つの頭でどうかと述べます。
「そう思っていても」
「実はとかね」
「そうした解釈をしたことないの?」
最後に老馬が尋ねました。
「これまで」
「だって僕は運動神経ゼロで太っていてこの顔だよ」
先生は笑ってこうしたことから言うのでした。
「もてる筈なんてね」
「ないんだ」
「そう言うんだね」
「これまでもそう思っていたし」
「有り得ないっていうんだ」
「女の人のお友達には恵まれていたよ」
学生時代からそうだったというのです。
「皆優しくしてくれて気軽に声をかけてくれたしメールのやり取りも多かったけれど」
「ああ、やっぱりね」
「先生らしいわね」
「こうしたことは」
「本当に先生だよ」
「いやあ、しかし僕を恋人にしたいって人は」
本当に気付かない先生です。
「いる筈がないからね」
「あくまでお友達で」
「それ以外のものじゃない」
「そうなんだね」
「その女の人達も」
「そうだよ、絶対にね」
思い込み続けつつ言う先生でした。
「僕がもてることはないから」
「先生絶対って滅多に言わないのに」
「どうしてこのことだけそう言うのか」
「矛盾しない?」
「どう考えても」
「このことだけは絶対って言えるよ」
これが先生の持論でした。
「僕と恋愛は無縁のものだってね」
「学問に絶対はないって先生言ってるのに」
「あらゆる学問で」
「有り得ないと言っても有り得たりする」
「それが学問で世の中だって」
「けれどね」
「自分にはそう言うんだから」
恋愛には絶対に縁がないとです。
「そこでそう思わないとかないの?」
「ひょっとしたらとか」
「人間は顔じゃないとか」
「先生もいつもそう言ってるじゃない」
「人間は外見じゃないって」
「いやいや、僕の場合は本当に違うから」
あくまでこう思っている先生です。
「この外見だからね」
「全くわかってないね」
「もう自分のこのことは決めてかかってるから」
「このことだけは」
「やれやれよ」
「しかし皆僕がもてないと思うね」
逆にこう聞き返した先生でした。
「そうだよね」
「だから人間顔じゃないじゃない」
「心が大事なんでしょ?」
「そこで発想変えない?」
「少しでも」
「僕は自分のことはわかっているつもりだからね」
生来の謙虚さに基づいてです。
「もてる人間ではないんだよ、運動神経ともてることはね」
「先生には縁がない」
「そうだっていうんだね」
「あくまで」
「そうだよ。だから最初からね」
本当に最初からです。
「思っているよ」
「やれやれだね」
「これじゃあ日笠さんも苦労するわ」
「今回は無事にだけれど」
「これからどうなるか」
甚だ不安な皆です、そんなお話をしてです。
皆でパエリア等を食べます、ここで先生は今度はこう言ったのでした。
「スペイン料理は魚介類が豊富でね」
「あっ、鰯もありますよ」
ここで鰯をオリーブオイルで焼いてスペイン風に味付けしたものも出したトミーでした、オリーブに胡椒の香りが素敵です。
「こちらも」
「あっ、いいね」
「こぢらも召し上がられますよね」
「是非ね」
「確かにスペイン料理は魚介類多いですね」
「スペインは海に囲まれているからね」
「半島ですからね」
リベリア半島、ここにある国だからです。
「魚介類をよく食べますね」
「イタリアやギリシアと同じくね」
「そうですよね」
「しかも南の方だからね」
欧州のです。
「だから海の幸が豊富なんだよね」
「イギリスも海に囲まれてますけれど」
トミーはお国のお話もしました。
「けれど」
「それでもだね」
「はい、海の幸は豊富ではないですね」
「あるにはあってもね」
「あまり食べることは」
「ないんだよね」
「鱈や鮭とか、あと牡蠣は食べますけれど」
それでもです。
「これといって」
「食べないね」
「何か調理が他の食材と同じで」
「他の国から誉められないんだよね」
「そうなんですよね」
トミーもそれはと言うのでした。
「ニシンのパイ、鰻のゼリーも」
「そうしたものはね」
「人気ないですね」
「実際食べてもね」
「スペイン料理の方が美味しくて」
それにというのでした。
「イタリア料理も」
「和食や中華料理でもね」
「イギリスよりずっと上ですから」
「残念なことだよ、しかしこの鰯も」
その鰯を早速食べて言う先生でした。
「美味しいよ」
「はい、本当に」
「素材もいいね」
「この素材は商店街で買ってきました」
「八条町のだね」
「あそこの魚屋さんで」
そうしてきたというのです。
「スーパーも考えましたけれど」
「今回はだね」
「商店街に行って」
そしてというのです。
「買ってきました」
「成程ね」
「それでスペイン料理にしました」
「ソーセージやお野菜もだね」
「商店街で買ってきました」
魚介類の他にお料理に使っているそうしたものもというのです。
「あちらで」
「商店街の食材もいいしね」
「八条町は駅前とビル街の近くにそれぞれありますが」
「今回はどっちに行ったのかな」
「ビル街の方です」
そちらの商店街にというのです。
「行ってです」
「そこで買ってだね」
「作ってみましたけれど」
「美味しいね、じゃあパエリアもね」
今回のお食事のメインと言っていいこちらのお料理もというのです。
「楽しませてもらうよ」
「グリルとシチューもですね」
「全部ね。トマトも多いしね」
「トマトは今回沢山買って」
「沢山使ったんだね」
「これでもかって感じに」
見ればシチューにもパエリアにも使っています。
「使ってみました」
「それもスペインだね」
「スペイン料理はトマトを沢山使いますからね」
「イタリア料理と一緒でね」
「オリーブオイルもかなり使って」
「大蒜もね」
「けれどイタリア料理とはまた違います」
同じくトマトや大蒜、そしてオリーブオイルをふんだんに使ってもです。
「それがまたいいんですよね」
「そうだね、じゃあね」
「今夜もですね」
「沢山食べようね」
先生はパエリアも食べました、その味もでした。
「美味しいよ」
「いや、日本に来てからね」
「僕達色々なもの食べる様になったけれど」
「スペイン料理もいいね」
「本当にね」
動物の皆もパエリアも食べつつ言います。
「スペイン最高だね」
「行ったこともあるけれど素敵な国だったね」
「果物も最高だったしね」
「あっ、今日のデザートはフルーツだから」
トミーは動物の皆にもお話しました。
「オレンジや苺を買ってきたよ」
「それもスペインだね」
「オレンジも」
「あの国オレンジも有名だしね」
「そうなんだ、アメリカのオレンジだけれど」
それでもというのです。
「スペインを意識してね」
「それでだね」
「買ってきたんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、もうスペインで統一しようと思って」
それでというのです。
「デザートもね」
「スペイン風にして」
「オレンジを買ったんだね」
「あの果物に」
「そうだよ。お酒もワインにしたしね」
「これはスペイン産だね」
先生はワインのボトルに書かれている文字を読みながら言いました。
「まさに」
「はい、ワインはです」
「本当にそうだね」
「美味しいですよね」
「うん、ワインもね」
何といってもと答えた先生でした。
「美味しいよ」
「そうですよね」
「赤ワインはスペイン料理に合うよ」
「本当にそうですね」
「そういえばスペインの鉄道にも乗ったけれど」
こちらのお話もする先生でした。
「あの国の鉄道もね」
「よかったですか」
「うん」
「その国それぞれですからね」
「鉄道博物館でも紹介されているよ」
「実物も置いていますね」
「あと模型や写真でもね」
世界各国の鉄道をというのです。
「紹介しているよ」
「模型でもですね」
「どうも売られていないものはね」
「自分達の手で、ですか」
「フルスクラッチといってね」
この造り方でというのです。
「一からね」
「模型をですか」
「プラスチックから造るけれど」
「そうしたこともしてですか」
「造っているんだ」
「本格的ですね」
「もうこれは情熱だね」
鉄道博物館の人達のというのです。
「まさにね」
「本気の情熱ですね」
「うん、そこまでして資料として見せてくれるなんてね」
「あの博物館は本格的ですね」
「そう思うよ、あとね」
「あと?」
「うん、写真も豊富だしね」
模型だけでなく先にお話したこちらもというのです。
「とかくね」
「世界各国の鉄道がわかるんですね」
「日本だけじゃなくてね」
「それでスペインの鉄道のこともわかりますか」
「フランスやドイツ、ロシアの鉄道もわかるし」
「イギリスもですね」
「アメリカや中国の鉄道のこともわかるよ」
こうした国々のそれのこともというのです。
「インドもね」
「本当に様々な国の鉄道のことがわかりますね」
「あの博物館に行けばね」
「それじゃあ」
是非にと言ってトミーでした、先生のそのお話を聞いて。
「日笠さんと」
「うん、日笠さんともね」
「一緒にですね」
「観て来るよ」
「そうされて下さいね」
「また日笠さんとのお話になったね」
「それは当然ですよ」
何といってもというのです。
「何といっても」
「皆日笠さんとのことは随分気遣ってくれるね」
先生は首を傾げさせつつ言いました。
「いつも」
「そうですね、ですが」
「それはなんだ」
「当然のことですから」
これがトミーの返事でした。
「だからですよ」
「当然なんだね」
「そうです、皆応援しているんですよ」
「何をかな」
「日笠さんをです」
この人をというのです。
「頑張って欲しいと。そして」
「そして?」
「先生もって」
日笠さんの次はというのです。
「思っているんですよ」
「そうなんだね」
「じゃあ日笠さんとです」
「鉄道博物館にだね」
「お二人で行って下さい」
「そうさせてもらうね。何かね」
首を傾げさせつつ言う先生でした。
「日笠さんは僕にとって大切なお友達ってことはね」
「お友達、ねえ」
「そこでそう思っているのがね」
「まだまだだね」
「全く以て」
動物の皆はそんな先生にやれやれとなります、ですがそれでも先生と日笠さんを二人にさせるのでした。