『ドリトル先生と日本の鉄道』




                第二幕  鉄道博物館

 先生は王子と鉄道のお話をした次の日です、大学の研究室に入ってから動物の皆にこんなことを言いました。
「今日の午前中は時間があるね」
「じゃあ論文書く?」
「次の論文ね」
「今度は社会学の論文だったね」
「あっ、それはもう書き上げたよ」
 先生は皆に答えました。
「もうね」
「あっ、早いね」
「先生調べることも書くことも早いし」
「もう書いたんだ」
「じゃあ後は提出するだけだね」
「そう、それだけだよ」
 後はというのです。
「論文についてはね」
「そういえば昨日の夜お家のパソコンで書いたんだね」
「それじゃあ次の次の論文?」
「今度は蛙の生体についてだったかな」
「日本の蛙の」
「そうだけれどそちらの資料集めも検証も済んでいるからね」
 それでというのです。
「後は書くだけでね。その後の論文はね」
「今はないよね」
「とりあえずは」
「先生だからすぐに依頼するかも知れないけれど」
「自分からね」
「明日外科と内科の論文をそれぞれ書きたいって学部長さんにお話するつもりだけれど」 
 それでもというのです。
「今はね」
「とりあえず今日のところはね」
「論文はないね」
「講義は午後だし」
「午前中は時間があるね」
「だからね」
 それでというのです。
「午前中は時間があるから」
「じゃあ動物園に行って」
「日笠さんとお話する?」
「そうする?」
「いや、日笠さんはお仕事だからね」
 先生は皆の勧めに気付かないまま答えました。
「だから邪魔をしたら悪いよ」
「ああ、そうなんだ」
「そう言うんだ」
「じゃあ日笠さんのところには行かないのね」
「そうするのね」
「そうするよ、今日行こうと思っているところは」
 日笠さんのところではなく、です。
「博物館だよ」
「博物館?」
「あそこなの」
「あそこに行くんだ」
「それも鉄道博物館にね」
 そちらの博物館にというのです、学園の中にある一般の博物館ではなく鉄道博物館の方にというのです。
「行こうね」
「昨日王子とお話したし」
「それでなんだ」
「あちらに行くんだ」
「鉄道博物館の方に」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「鉄道のことを観ていこうね」
「そうだね」
「色々観るものあるしね、あそこも」
「鉄道のことなら何でもわかる」
「そうした場所だし」
「行こうね、鉄道の歴史にSLもね」
 そちらもというのです。
「そしてね」
「それでだね」
「観て楽しんで学んで」
「今日の午前中は過ごすんだね」
「そうするんだね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「学ぼうね」
「それじゃあね」
「今回も皆で行こうね」
「そして楽しもうね」
 動物の皆も言ってでした、そしてです。
 先生は皆と一緒に鉄道博物館に行きました、するとです。 
 最初に入り口の蒸気機関車、D−51を観ました。そうして先生は目を細めさせてこう言ったのでした。
「日本を代表するね」
「蒸気機関車なんだ」
「そうなんだね」
「かつて日本中で動いていた」
「そうした蒸気機関車なんだね」
「そうだよ、これに引っ張られてね」
 そうしてというのです。
「沢山の車両が線路の上を走っていたんだ」
「そうだったんだね」
「日本に電車が普及するまでは」
「そうだったんだね」
「もうなくなってしまったけれどね」
 それでもというのです。
「日本でもね」
「蒸気機関車が走っていて」
「その代表がこれなんだ」
「D−51なんだ」
「そうだったんだ、凄く恰好いいね」
 先生はその車両を観つつ皆にこうも言いました。
「本当に」
「そうだよね」
「これに乗って走っていきたいね」
「そうしたいね」
「うん、僕達もかつてはだったね」
 先生は皆に昔のこともお話しました。
「こうした鉄道に乗っていたね」
「ああ、そうだったね」
「サラさんが結婚する前は」
「王子とはじめて会った頃にも」
「蒸気機関車に乗っていたね」
「そうだったね」
「懐かしいよ。煙が入るから窓を空けることは難しかったり」
 先生は自然に暖かい目になっていました、その頃のころを思い出して。
「特にトンネルの中に入る時は」
「そうそう、煙が外に逃げなくてね」
「蒸気機関車の煙が」
「だからトンネルに入る時はすぐに窓を閉める」
「そうしていたよね」
「あの時は」
「今思うと不便だったけれど」
 それでもというのです。
「今思うとね」
「うん、懐かしいよね」
「あの頃のことは」
「本当にね」
「全くだよ、今の若い人達はね」
 先生にとっては学生さん達です。
「蒸気機関車、実際に動いているそれに乗ったことはね」
「ないよね」
「もうイベントで位しかないんじゃない?」
「蒸気機関車から電車になって随分経つし」
「今度はリニアモーターカーって言われてるし」
「そうだね、もう多くの国でね」 
 日本やイギリスだけでなくです。
「電車になってきているよね」
「ディーセルもまだあるけれどね」
「国によっては」
「けれどね」
「確かにもうね」
「そう、電車の時代になって久しいから」
 それでというのです。
「蒸気機関車もね」
「なくなったね」
「もう観ないよね」
「電車だと煙出ないしね」
「パンダグラフと電線から幾らでもエネルギー貰えるし」
「ずっと効率とかがいいからね」
「だからね」
 その為にというのです。
「蒸気機関車の時代は終わったよ。ただこの車両はね」
「保存状態いいね」
 ホワイティがまじまじと見て言いました。
「随分と」
「そうだね、奇麗に磨かれてて」
 チーチーは黒く輝くその状況に唸っています。
「清潔だね」
「えらく手入れされているね」
 トートーが観てもそうでした。
「大事にされてるんだね」
「この保存状態のよさは凄いわね」
 ダブダブの口調はしみじみとしたものでした。
「大事に保存されてるってわかるわ」
「しっかりした博物館だけれど」
 ガブガブはこう思うのでした。
「館員さん達も丁寧にお手入れしているんだね」
「相当古い車両なのに」
「まるで新品みたいよ」
 チープサイドの目から観てもです。
「一度も走っていない様な」
「そこまで凄い手入れね」
「これ普通に七十年位前の車両だよね」
 老馬はこう言ったのでした。
「それがこの奇麗さってね」
「何ていうか」
 ポリネシアはしみじみとして言ったのでした。
「館員さん達の愛情も感じるわね」
「愛情がないとここまでの手入れは出来ないね」
 ジップもしみじみとした口調でした。
「細かいところまでだしね」
「いいもの観てるね」
「そうだね」
 オシツオサレツは二つの頭でよく観ています。
「ただ懐かしいだけじゃなくて」
「ここまで手入れされていることも凄いね」
「どうもね」
 先生は皆で言うのでした。
「この館員さん達の中にかなり真剣な鉄道マニアの人達がいるね」
「そうだね」
「そのことは間違いないね」
「だからここまで手入れしているんだね」
「愛情があるからこそ」
「しかもいいマニアの人達だね」
 このこともわかる先生でした。
「愛情がないとね」
「ここまでは出来ないね」
「只のお仕事じゃないね」
「お仕事はお仕事って割り切ってるんじゃなくて」
「これはね」
「愛情を感じるよね」
「うん、この愛情はね」
 本当にというのでした。
「素晴らしいよ」
「全くだね」
「この博物館の館員さん達の中にはね」
「真剣なマニアの人達がいるね」
「そうだね」
「そう思うよ。この蒸気機関車にしても」
 これもというのです。
「真剣な愛情を注いでいる人達がいるね」
「あっ、今来たよ」
「その館員の人がね」
「ここに来たよ」
 見れば若い男性の館員さんが来ました、その人は蒸気機関車のところにワックスや箒、タオルといった掃除用具を一式持って来てです。
 そうしてです、すぐにでした。 
 脚立も使って蒸気機関車の隅から隅までお掃除をはじめました、それの動きも目も凄いものでして。
 先生もです、唸って言いました。
「凄いね」
「うん、本気だよね」
「本気で愛情を感じるね」
「蒸気機関車に対する」
「冗談抜きの愛情を感じるよ」
「全くだね」
 先生も思うのでした、そして館員さんもです。
 先生達に気付いてお掃除を中断してそうして先生達のところに来てそのうえでこう言ったのでした。
「ドリトル先生ですね」
「うん、そうだよ」
 笑顔で応えた先生でした。
「さっきから見ていたけれど」
「お掃除をですか」
「うん、細かいところまで真剣にお掃除しているね」
「はい、僕は毎日です」
「お掃除をしているんだ」
「この博物館にも掃除夫の人はいますけれど」
 それでもというのです。
「この蒸気機関車は」
「君がしているんだ」
「はい、こうして毎日」
「それはどうしてかな」
「実は僕は今は蒸気機関車担当で」
「この車両以外にもかな」
「蒸気機関車の歴史も担当しています」
 それもというのです。
「他の車両の管理も」
「それでこの車両も」
「担当していて。前は新幹線担当だったんです」
「それが移ったんだ」
「そうして観ているうちに恰好よさに惚れまして」
 それでというのです。
「今はです」
「こうしてだね」
「毎日奇麗にしています」
「凄く丁寧にだね」
「この車両はこの博物館の看板の一つですし」
 入口の方に置かれていてです。
「だから余計にです」
「お掃除にだね」
「熱心に時間をかけています」
「真剣な愛情を感じたけど」
「有り難うございます」 
 館員さんは先生に笑顔で応えました。
「そう言って頂けると嬉しいです」
「そうなんだね」
「はい」
 笑顔のままでの返事でした。
「そうなんです」
「最初はそこまでなんだ」
「鉄道は好きですが」
 それでもというのです。
「新幹線派でして」
「蒸気機関車はだったんだ」
「今程は。好きでしたけれど」
「それでもだね」
「はい、新幹線が最高とです」
 その様にというのです。
「思っていました。勿論今でも新幹線は好きですよ」
「それでもだね」
「はい、蒸気機関車もです」 
 こちらもというのです。
「同じだけです」
「好きでだね」
「毎日お掃除をしてです」
 そうしてというのです。
「磨いて奇麗にもしています」
「そうなんだね」
「夏は暑くならないうちに」
 蒸気機関車は建物の中にあって日が当たらない様にしていますがそれでもそこまで考えているというのです。
「早いうちにお掃除をしています」
「今みたいにだね」
「そして冬は暖かくなってから」
「その時にだね」
「お掃除をしています」 
 その時間も選んでいるというのです。
「そうしています」
「そこまで考えているんだね」
「これがいい運動にもなります」
 笑顔でもお話した館員さんでした。
「本当に」
「ああ、お掃除もだね」
「カロリーを消費しますからね」
「僕はお掃除はね」
 自分のことを言う先生でした、少し困った笑顔になって。
「自分でしようと思ったらね」
「周りの人達にですか」
「彼等にもね」
 動物の皆も観て言うのでした。
「止められるんだ」
「それで、ですか」
「お掃除は出来ないんだ、しても物凄く下手だとね」
「言われるんですね」
「残念なことにね。人にしてもらうことはね」
 それはというのです。
「好きじゃないのに」
「いや、先生家事全然駄目じゃない」
「お料理もお洗濯もお掃除も」
「全部ね」
「だからだよ」
「私達がしているの」
 皆が先生の言葉にそれぞれ言います。
「だからね」
「それはね」
「ちょっとね」
「僕達も任せられないよ」
「先生にお掃除とかは」
 それで止めるというのです。
「得手不得手があるけれど」
「先生は特にそれが凄いから」
「学問は得意でも」
「スポーツや家事になると」
「全く駄目だから」
「学問じゃなくてね」
 本当にと思う先生でした。
「家事の才能があれば」
「いや、それじゃあ先生じゃないし」
「それもね」
「ちょっとね」
「先生らしくないから」
「それはね」
「お掃除が得意だったら僕じゃないっていうのも」
 それもというのです。
「困るね」
「そう言われてもね」
「先生はね」
「それが先生って言っていいから」
「だからだよ」
「家事は僕達に任せて」
「学問に専念して欲しいんだよね」
「困るね、それも」
 どうにもと言った先生でした。
「僕にしても」
「何かお話されてますけれど」
 ここでまた館員さんが言ってきました。
「この蒸気機関車はです」
「看板なんだね」
「この博物館の」
 そうだというのです。
「そのこともあって」
「いつもですね」
「奇麗にしていますしそれがです」
「楽しんだね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「楽しんでいます、ただ」
「ただ?」
「この季節はそろそろ人が多くなります」
 そうなるというのです。
「特にお子さんが」
「ああ、来るんだね」
「そろそろです」
 まさにというのです。
「それで忙しいんです」
「そうなんだね」
「ですからお掃除が終わったら」
「それからはだね」
「子供達にですよ」
「鉄道のことをお話するんだね」
「はい、そうします」
 館員さんは先生に笑顔でお話しました。
「ですから今日もです」
「楽しんでだね」
「お仕事をします」
「いいね、しかしここは観光スポットでもあるから」
「動物園や植物園と一緒ですからね」
 学園の中の他の施設と同じなのです、この鉄道博物館は。
「ですから」
「夏はだね」
「観光客も多くて」
 それでというのです。
「いつも以上に頑張れます」
「そうなんだね、今のお仕事が本当に好きなんだね」
「何しろ子供の頃から鉄道が好きで」
「それでなんだ」
「鉄道に囲まれてのお仕事ですからね」
 大好きなそれにとです、館員さんは先生に目を輝かせてお話しました。
「凄く嬉しいですよ」
「それは何よりだね。好きなことを仕事に出来たら」
「最高ですよね」
「しかもそれが自分に向いていたらね」
「向いている向いていないは考えたことがないです」
 それはというのです。
「鉄道を見られてその中でいられたら」
「いいと思うからなんだ」
「自然と他の人にも説明出来ますし」
 つまりお客さん達にもです。
「いいんです」
「そうなんだね」
「先生に鉄道のことでお話は、それはいいですね」
 館員さんは先生の学識のことを考えて述べました。
「別に」
「うん、鉄道のこともね」
「論文を書かれたこともありましたね」
「僕なりに学んできたからね」
 鉄道のことをです。
「だからね」
「それで、ですね」
「うん、いいよ」
 こちらのことはというのです。
「僕達は僕達で回らせてもらうよ」
「それでは」
「うん、行って来るよ」
 先生は館員さんににこりと笑ってお話をしてそしてでした、動物の皆と一緒に博物館の中を巡ることにしました。
 そしてその中で、でした。
 先生は昭和の頃の最初の新幹線を見てです、目を細めさせました。
「ううん、確かに古いデザインだけれど」
「いいよね」
「このデザインとカラーリングがね」
「本当にいいね」
 動物の皆もこう言います。
「速くて揺れないだけじゃないね」
「当時の日本の最新の鉄道技術が集められているだけじゃなくて」
「この外観もいいのよね」
「新幹線は当時から」
「そうだね、これだけのものが前の東京オリンピックの頃にあったなんて」
 それこそと言うのでした。
「凄いことだよ」
「当時日本はまだまだだったよね」
「成長途中だったんだよね」
「その中でこれだけのものが出来たんだ」
「復興してからすぐに」
「昭和三十年位までには復興が完成して発展に向かっていてね」
 先生は皆にお話しました。
「東京オリンピックの頃には発展のその中にあったけれど」
「その中でだね」
「この新幹線も出来たんだね」
「これだけのものが」
「そうだよ。今でもこれだけのものはね」
 昭和の新幹線はというのです。
「作って運用出来る国はね」
「そうそうないかな」
「この時の新幹線も」
「日本にとっては結構昔のものでも」
「そうだと思うよ、昭和の中期にこれだけのものが出来たんだ」
 まさにと言うのでした。
「日本の鉄道技術は凄いよ」
「全くだよ」
「さっきの蒸気機関車もよかったけれど」
「日本の鉄道は新幹線だね」
「何といっても」
「僕もそう思うよ。ただ日本は新幹線も凄いけれど」
 それだけではないとです、先生は博物館の中のその新幹線の車両を見つつ動物の皆にこうお話しました。
「他にも凄い車両が一杯あるんだよ」
「八条鉄道にも他の鉄道会社にも」
「いい車両が沢山あるんだね」
「そうなんだね」
「そうしたものも観ていこうね」
 こう言ってです、そしてです。 
 先生達は新幹線の運転室も観ました、その機械の場所こそが当時の最新技術の結集でそこも素晴らしかったです。
 その運転室も観てです、今度は二階建ての車両八条鉄道のその車両を観たのですが。
 皆は唸ってです、こう言ったのでした。
「ロンドンは二階建てバスだけれど」
「これも日本にもあるけれど」
「二階建ての車両ね」
「こうしたのもあるんだね、日本には」
「そう、日本人の発想はね」 
 まさにそれはと言う先生でした、皆はその二階建ての車両の中に入って上下の階どちらも観ています。
「こうしたね」
「二階建ての鉄道車両もなんだ」
「思い付いたんだ」
「二階建てのバスみたいに」
「そうなんだ、この発想は新幹線にも入っていてね」
 先程皆で観たその車両にです。
「こうしてね」
「活かされていて」
「二階建ての新幹線もあるんだ」
「そうなのね」
「そうだよ、新幹線には食堂車もあったし」
 食事をするその場所がというのです。
「二階建ての車両もあるんだ」
「この車両みたいに」
「そうした車両もあるんだね」
「新幹線には」
「そうなんだ、新幹線はもう新幹線だけで確立されていて」
 そしてというのです。
「新幹線以外の車両もね」
「こうしてだね」
「二階建ての車両があったりして」
「色々車両があるのね」
「日本には」
「企業も路線も多いだけあって」
 鉄道大国と言われるだけあってです。
「鉄道も凝っているんだ」
「それでだね」
「二階建ての車両にも乗れるんだ」
「日本にいれば」
「そうだよ、下に乗ればこの高さだと」 
 今先生達は下の階にいます、先生はその高さの窓から外側を観て言いました。
「頭の高さに駅のホームがあるね」
「ああ、丁度足元だね」
「そこにくるんだねこの高さだと」
「そうなんだ」
「そうなるよ、それで上の階だと」
 先程までいたそこからはどうなるかといいますと。
「見下ろす形になるよ」
「それも面白いね」
「どっちもね」
「何か僕この車両に乗って旅をしたくなったよ」
「私もよ」
「全くだね、じゃあ次はね」
 先生は皆にさらにお話しました。
「ブルートレインを観に行こうか」
「ブルートレイン、寝台車よね」
「昔東北とかを走っていた」
「あの車両ね」
「うん、今は鉄道の速度が速くなってすぐに行ける様になったし」
 新幹線にしてもそうです、東京から北海道まで数時間で行くことが可能になっています。これも技術の進歩です。
「もう過去のものだけれど」
「言葉の響きが奇麗ね」
 ダブダブが言いました。
「ブルートレインって」
「それだけで価値があるわ」
 ポリネシアもこう言います。
「名前だけでも」
「そういえば僕達神戸から北海道まで鉄道で行ったことがあったね」
 トートーは皆で北海道に行った時のことを思い出しました。
「あの時はたっぷり一日かかったね」
「けれどあの時は貨物列車で」
「寝台車とは違ったわよ」
 チープサイドの家族はこうトートーに返しました。
「また別の車両で」
「あの旅も楽しかったけれどね」
「そうそう、僕達ブルートレイン自体にはね」
「乗ったことがないよ」
 オシツオサレツも言います。
「まだね」
「残念だけれどね」
「というかこの目で観られるのって」
 ブルートレインを、と言う老馬でした。
「ここだけじゃないかな」
「そうだね、僕達はね」
 ガブガブは老馬に応えました。
「乗ったことはないね」
「駅で観たこともないし」
 ホワイティはこのことが少し残念でした。
「ここで観ないとね」
「ここにも何度も来てるけれど」
 それでもと言うジップでした。
「是非観ようね」
「そう、いい機会だし」 
 最後に言ったのはチーチーでした。
「今度はブルートレインにしよう」
「そうしようね」
 先生も応えてでした、そのうえで。
 先生と皆は今度はブルートレインに向かいました、そしてそこで実際にブルートレインの外も中も観てでした。
 そのうえで、です。皆は先生に言いました。
「この中で寝ながらだね」
「夜の日本の中を進んでいって」
「それで旅をするんだね」
「それがブルートレインだったのね」
「そうだよ。外観は青くてそれが奇麗だってね」
 先生は外観のことからお話しました。
「それでなんだ」
「人気があったんだね」
「鉄道ファンの人達からも」
「そうだったんだね」
「そうだよ、名前もよかったし」
 ブルートレインというそれがです。
「しかもね」
「鉄道の長旅を楽しめる」
「寝てのそれが」
「それで余計に人気があったんだね」
「このブルートレインは」
「そうだったんだ、わざわざこれに乗るだけの旅行をする人もいたんだ」
 そこまで人気だったというのです。
「目的地に行くんじゃなくてね」
「ブルートレインに乗ること自体が」
「そのこと自体が目的だった」
「そうした人もいたんだ」
「そうだったんだ、確かに鉄道での旅はね」
 先生は自然に目を細めさせて言っていました。
「独特の風情があるからね」
「その度を楽しむ為に」
「あえてなんだ」
「ブルートレインに乗ってる人もいたんだ」
「その旅自体を楽しむ為に」
「そうだよ、それとね」
 さらにお話した先生でした。
「このブルートレインも種類があったんだ」
「一種類だけじゃなくて」
「色々とあったの」
「種類があったんだ」
「そうだったんだ、ここにあるブルートレインの車両はこれだけだけれど」
 それでもというのです。
「実は何種類もあったんだ」
「ううん、そうだったんだ」
「一種類だけじゃなくて」
「まだあったんだ」
「そうだったんだ、ブルートレインも日本の鉄道文化の中でね」
 先生はブルートレインのお話をさらに続けました。
「かなり重要な位置を占めていたんだ」
「ううん、一度乗ってみたいけれど」
「今は無理かな」
「すっかり過去のものになったし」
「それじゃあね」
「機会があれば乗りたいね」
 今はこう言った先生でした。
「僕達もね」
「そうだよね」
「そうして旅をしたいね」
「あの時の北海道への旅行もよかったけれど」
「ブルートレインでの旅行もね」
「一度楽しみたいね」
 動物の皆も言いました、先生達は他には車両の中にいてテレビを視聴出来るテレビカーや日本以外の国の鉄道を観てそしてです。
 鉄道の歴史も観ました、その歴史を観ていてです。
 先生は思わずです、こんなことを言ってしまいました。
「最初の鉄道はね」
「うん、イギリスのね」
「最初はそうだったよね」
「先生いつも言ってるけれど」
「そう、蒸気機関車でその速度も」
 イギリスで最初に出来たそれはといいますと。
「走っている人と同じ位でね」
「遅いね」
「今だとお話にもならないね」
「蒸気だから燃料の石炭も沢山必要で」
「今から観たら凄く不便なものだね」
「そうだね、最初の鉄道は」
 先生達の目の前にはその世界最初の鉄道、それが復元されている蒸気機関車を観ながら皆にお話します。
「そんなものだったんだ、けれどね」
「ここからだね」
「鉄道の歴史がはじまったんだね」
「世界中に広まって」
「人類の文明を発展させてくれているんだね」
「そうだよ、鉄道だけが発展させてくれたんじゃないけれど」
 それでもというのです。
「その重要な一端だよ」
「今でもね」
「そうであり続けているよね」
「この車両からはじまって」
「最初は遅かったけれど」
 人が走る速さ位でしかなかったのです、今の鉄道と比べるとです。
「それがどんどん進歩してね」
「それでだよね」
「電車が生まれて」
「新幹線が出て来てね」
「リニアモーターカーも出来たね」
「ひょっとしたら」
 こうも言った先生でした。
「銀河鉄道がね」
「あの小説!?」
「宮沢賢治の」
「あと漫画でもあったよね」
「宇宙をSLで旅していたね」
「ああしたこともね」
 将来、人類の未来ではというのです。
「出来るかもね」
「ううん、まさかって思うけれど」
「宇宙を旅する鉄道とか」
「そんな幻想的なもの出来る?」
「流石にそれは無理なんじゃないかな」
「いや、ハインラインが言った未来をまさかと言う人は多かったけれど」
 彼の作品世界に出て来る沢山の文明の利器がです。
「その多くが今あるね」
「ウォーターベッドにしてもそうだし」
「他の色々な技術も」
「そうなったから」
「ひょっとしたら日本のあの猫型ロボットの漫画の道具もだよ」
 青い丸い感じのロボットと眼鏡をかけた男の子が主人公の今も続いている日本を代表する漫画の一つです。
「実現していくかも知れないよ」
「人類の文明が進歩していったら」
「技術が発展していったら」
「ああした道具も実現していって」
「そしてなんだ」
「銀河鉄道も」
「実現するかも知れないよ」
 先生は少し熱い声になっていました。
「不可能、無理と思う。けれどね」
「その不可能、無理と思うことでも」
「出来る、適えられると思って進んでいけば」
「それでだね」
「実現も出来るんだね」
「そうだよ、それが人間なんだよ」
 まさにというのです。
「この鉄道だって所詮こんなものだったと思った人もいたと思うよ」
「馬の方が速い」
「線路を敷いて石炭も沢山必要で」
「手間暇ばかりかかる」
「そうしたものだってだね」
「それがあっという間に進歩して人類を発展させてくれて」
 そしてというのです。
「今に至るからね」
「うん、最高の輸送手段の一つになったね」
「移動手段としても」
「鉄道がどれだけ人類に貢献してくれているか」
「考えるまでもないよ」
「そうなったからね、ひょっとしたらだけれど」
 それでもというのです。
「宇宙にもね」
「鉄道は走るかも知れない」
「そうなんだね」
「これからも」
「そうだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「夢は捨てないで」
「それでだね」
「鉄道はもっと発展させられる」
「そう思ってだね」
「そして頑張っていく」
「発展させていくことが大事なんだ」
「そうだよ、それでね」 
 さらに言う先生でした。
「宇宙に行くこともね」
「出来るかも知れない」
「小説や漫画の世界が実現する」
「それは夢じゃないんだ」
「そう、夢は現実のものになるんだ」
 先生はこのことを確信しています、人は今が実現どころかSFやファンタジーのものと思っているものでも必ず現実のものと出来るとです。
 それで、です、また言うのでした。
「宇宙を旅する鉄道も」
「出来るのなら」
「実現させて」
「そして乗ってみたいね」
「私今そう思ったわ」
「僕もだよ」
 動物の皆も言います、そしてでした。
 そのお話をしてでした、先生達は今度は食堂に向かいました。この博物館の食堂は食堂車をそのまま使っています。
 その車両の中に入ってです、先生は注文しようとしましたが。
 ここで先生はメニューを見て困ったお顔になって周りにいる皆に言いました。
「いや、これはね」
「これは?」
「これはっていいますと」
「困ったことになったよ」
 こう言ったのでした。
「とてもね。カレーライスかハンバーグのコースをって考えていたけれど」
「どっちかって迷ってるの」
「そうした時に悩む先生じゃないでしょ」
「どうしてそこでそう言うの?」
「何かあったの?」
「うん、そうしたメニュー以外に駅弁が一杯あるんだ」
 こう皆にお話したのでした。
「日本全土のね」
「えっ、駅弁あるの」
「駅弁あるの」
「この博物館には」
「そう、さっきも言ったけれど日本全土のだよ」
 そこまで揃っているというのです。
「だから駅弁にしようかってね」
「思ったんだ」
「先生にとしては」
「そうなんだ」
「皆も食べるよね」
 先生は皆にも尋ねました。
「そうするよね」
「うん、是非ね」
「駅弁あるなら食べたいよ」
「そういえばここの食堂来るのはじめてだったわ」
「それで駅弁があるなんて」
「これは思わぬ誤算だわ」
「さて、その中から何を注文して食べるか」
 メニューを観つつ真剣に悩む先生でした。
「考えどころだね」
「そうだね」
「果たして何を食べるか」
「これは困ったことだね」
「日本全土のものがあるなら」
「何を選ぶか困る筈のも道理だし」
「どうしようか」
 動物の皆も考えました、そしてです。
 少し考えてです、先生は皆に言いました。
「よし、僕は蟹弁当と鰻弁当それに烏賊飯にするけれど」
「烏賊の中に御飯が入っている」
「それもだね」
「それで皆はどうするのかな」
「メニュー見せて」
「それで選ぶよ」
 これが皆の返事でした、そしてです。
 皆は先生に見せてもらったメニューからそれぞれ好きなものを注文したのでした、そうして駅弁をです。
 皆で食べていきますが先生はここでまた言いました。
「この駅弁も日本ならではだね」
「日本の鉄道文化だね」
「この駅弁も」
「そうだね」
「うん、本当にね」
 まさにと言うのでした。
「これもだよ」
「日本の鉄道文化だよね」
「こちらも含めて」
「駅弁がこんなにあるって凄いよ」
「日本だけじゃないかな」
「多分ね。このことはね」
 ここで残念そうに言う先生でした。
「イギリスではね」
「うん、サンドイッチ位だね」
「欧州の国を跨ぐ鉄道なら車内で豪華なディナーがあるけれど」
「駅弁となるとね」
「日本だけだね」
「そう、日本だけだから」
 実際にというのだ。
「このことはね」
「勝てないよね」
「イギリスでは」
「とてもね」
「そうだよ、そもそもイギリスはね」 
 この国はといいますと。
「食文化自体がね」
「うん、あまりよくないって言うとあれだけれど」
「実際国際的に評判よくないよね」
「こんなお弁当がそれぞれの駅であるとか」
「ないよね」
「とても」
「そうなんだよね、鉄道発祥の国でも」
 それでもというのです。
「駅弁文化はね」
「縁がないね」
「とても」
「どうしても」
「それが残念だよ。このことで日本に対抗するには」
 駅弁という食文化で、です。
「どうしたものかな」
「いい鉄道を生み出すより難しい?」
「イギリスにとっては」
「新幹線みたいなものを生み出すよりも」
「そうかもね、じゃあ駅弁を注文して来たらね」
 そこから先のこともお話する先生でした。
「その時はね」
「うん、そうだね」
「駅弁を食べようね」
「そしてそれからも少し時間あるけれど」
「どうするの?」
「あとディオラマを観ていないから」
 それでというのでした。
「だからね」
「ディオラマ観るんだ」
「鉄道模型のあれを」
「そうするんだね」
「そうしよう、この博物館のディオラマはとても大きくてしかも動くし周りに立体的な線路もあってね」
 そちらの線路のお話もするのでした。
「さっき話した銀河鉄道みたいにね」
「そうそう、宙をに線路があってね」
「その上を鉄道模型が走ってね」
「とてもいいんだよね」
「お部屋が暗くなってそこをライトで照らされた線路の上をやっぱりライトで光る鉄道模型が走ってね」
 そうなっていてというのです。
「凄く幻想的だしね」
「だからだね」
「それも観て」
「そうしてからだね」
「午後の講義に向かおうね」
 こう言ってでした、先生達は日本の駅弁を楽しみました。そうした後で本当に鉄道模型も楽しむのでした。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る