『ドリトル先生と奇麗な薔薇園』




                第九幕  花びらによる演出

 先生はこの日は植物園に動物の皆と一緒に行きました、そうして植物園の中にある薔薇園に入って薔薇達を見ましたが。
 丁度薔薇にお水がやられてそのお水にです。
 サンルームに入って来る日光が反射されて虹が見えました、動物の皆は薔薇だけでなくその虹も見て言うのでした。
「奇麗ね」
「薔薇だけでなく虹も見られるなんて」
「本当にそうね」
「こんなに奇麗なものないね」
「そうだね。奇麗だね」
 先生もその虹を見て応えます。
「というかね」
「というか?」
「どうしたの、先生」
「うん、これはこの植物園の演出なんだ」
 薔薇のところに虹が見えるそれはというのです。
「上のスプリンクラーからお水がやられるね」
「そしてそのお水にだね」
「日光が入って虹になる」
「お花と一緒に虹が見える」
「それがだね」
「そう、この植物園の演出なんだ」
 それになっているというのです。
「奇麗なものだね」
「ううん、まさかね」
「薔薇と虹が一緒に観られるなんて」
「他のお花でもそうだよね」
「虹と一緒なんだね」
「それぞれのお花で観られるよ」
 また答えた先生でした。
「百合でも菖蒲でもね」
「そして梅でも桃でも」
「そうなのね」
「勿論だよ、熱帯のお花でもだよ」
 植物園のあらゆるお花でというのです。
「サンルームにあるお花ならね」
「いいね」
「じゃあここでね」
「今は薔薇と虹を観ましょう」
「とても奇麗だし」
「ええ、そうしましょう」
 是非にとです、動物の皆も応えてです。
 そうしてでした、皆は先生と一緒に虹が上に輝いている薔薇達を観て楽しむことにしました。その中で。
 動物の皆は先生にこんなことも言いました。
「何時でも薔薇が観られて」
「青い薔薇だけじゃなくて様々な薔薇も観られて」
「そして虹も観られる」
「その薔薇達と一緒にね」
「うん、様々な技術が進歩してね」
 そしてとです、先生はその皆に答えました。
「この通りだよ」
「僕達が今観ているものが出来たんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、科学を否定すると」
 若しそうすればどうなるかもお話した先生でした。
「こうしたものも観られないよ」
「そうだよね」
「僕達は今素晴らしいものを観ているけれど」
「若し科学がなかったら」
「こうしたものも観られなかったね」
「科学だけじゃないけれどね」 
 この場を造り出している学問はというのです。
「それでもだよ」
「科学が駄目というなら」
「こんなものは出来ないね」
「サンルームや青い薔薇も」
「スプリンクラーで生み出される虹も」
「全部ないよ、科学を素晴らしい方向に使えば」
 そうすれはというのです。
「こうしたものも観られてさらにね」
「素晴らしいものが観られるんだね」
「科学が進歩すれば」
「そうなるのよね」
「そうだよ、科学というかあらゆる学問も無闇に否定出来ない筈なんだ」
 先生はこの持論を展開しました。
「何しろ学問から人は発展してきたからね」
「科学だってそうだしね」
「他の学問だってそうよね」
「人の世界の発展に貢献してきたから」
「無闇に否定出来ないわね」
「人文系の学問もそうだしね」
 こちらでもというのです。
「神学にしろね」
「というか神学こそよね」
「あらゆる学問の幹よね」
「科学だって神学から出ているしね」
「少なくとも影響があるわよ」
「そう、日本ではどうしてもそれぞれの学問が独立しているものと考えられているけれど」
 科学なら科学、文学なら文学とです。それぞれの学問は影響し合っていても独立したものと考えられているというのでう。
「けれど欧州の考えは違うからね」
「そうそう」
「まず神学があるのよね」
「神学から全ての学問が派生したのよ」
「文学も法学も神学も」
「科学だって」
「だから僕も神学を学んでいるんだ」
 キリスト教、この宗教の学問をです。
「医学や科学を学ぶだけじゃなくてね」
「他の学問を学ぶ時も」
「神学も学んで」
「そうしてやっていってるのね」
「そう、神学の博士号も貰ってるしね」
 先生はこちらの博士号も持っているのです、ですからイギリスでは先生と呼ばれることもあれば今のお仕事の教授や博士と呼ばれることもあります。
「神学を学んでね」
「そしてだね」
「そこからさらによね」
「他の学問も学んでるんだね」
「そうだよ、科学にも神様がいるんだよ」
 そこに人を超えた存在があることは事実だというのです。
「そしてこれは他の宗教でも同じだよ」
「仏教でもなの」
「そうなの」
「そう、あらゆる学問に神や仏が存在しているよ」
 これが先生のお考えでした。
「このことを意識して学んで発展させていくとね」
「いいんだね」
「こうした素晴らしいものが出来て」
「さらに素晴らしいものが出来るのね」
「そうなるよ、だからね」 
 それ故にというのです。
「僕は今も聖書を読んでいるだ」
「そして他の宗教も学んでいる」
「高野山とかにも行ってるし」
「神社にもお参りしているのね」
「そうだよ、天理教の教会にも出入りして道教も学んでるし」
 こうした宗教もというのです。
「インドやアラブでもそうしてたね」
「そうよね、ヒンズー教の寺院にも入ったし」
「モスクでイスラムの法学者とお話をしてコーランをアラビア語で読んで」
「凄く学んでるね」
「神を忘れたら人は傲慢になってしまいやすいし」
 それにというのです。
「暴走してもいけないよ」
「信仰は理性と共にあれ」
「そして他の人を認めろ」
「それは守らないといけないね」
「そうだよ、僕は国教会だけれど」
 キリスト教のこの宗派だというのです。
「イギリスも宗派は色々あるね」
「そうそう、清教徒の人も有名だし」
「カトリックの人も多いしね」
「キリスト教といってもそれぞれだし」
「他の宗教の人もいるし」
「日本では尚更だよ、もう日本だとね」
 それこそというのです。
「キリスト教でカトリックやプロテスタントの違いなんてね」
「もうないね」
「殆ど意識されないわ」
「キリスト教はキリスト教」
「新旧の違いはないわ」
 新教がプロテスタント、旧教がカトリックです。
「そして他にも色々な宗教があるし」
「若し他の人を否定したらね」
「もう何も出来なくなるわ」
「宗教のことでは」
「そうしたものも見てもね」
 日本の宗教事情、それをです。
「やっぱり信仰は理性を以て他の人も認めることだよ」
「そのうえで確かに持つ」
「そうして学んでいくことね」
「それが大事だと思うよ、そうしてこそね」
 ここでまた薔薇達と虹を観た先生でした、そうして皆に言います。
「こうした素晴らしいものを生み出すことが出来るんだ」
「成程ね」
「科学にも確かな信仰を忘れない」
「それでこそね」
「こうしたものが生まれるんだね」
「そうだよ、今は心ゆくまで観ていようね」
 その薔薇達と虹をというのです、そしてここでなのでした。
 虹を観てです、先生がこんなことを言いました。
「バイエルン王も人工の虹を観ていたとあったけれど」
「あっ、あのお城が好きな人ね」
 ダブダブはバイエルン王と聞いて言いました。
「色々なお城を建てた」
「ノイスバンシュタイン城?」
 ポリネシアはこのお城の名前を出しました。
「あとリンダ―ホーフ城とか」
「お城と音楽がお好きで」
 トートーも言います。
「物凄くお金を使った人だったね」
「かなりの美男子だったけれど」
 こう言ったのはチーチーでした。
「物凄く変わったこともしていたとか」
「謎の多い人だね」
「そうよね」
 チープサイドの家族はバイエルン王についてまつわるお話のことをここで思い出して言ったのでした。
「噂も多くて」
「どれが本当のお話か」
「全部嘘じゃないの?変なお話は」
 ホワイティはチープサイドの家族に言いました。
「誰かが流したんじゃ」
「そうしたこと多いしね」
 老馬もホワイティに続きます。
「だったらあの王様についても」
「結局あの王様についてはね」
 ジップは首を傾げさせて言いました。
「謎が多いままだっていうし」
「けれど悪い人じゃなかったの?」
 ガブガブはこう思いました。
「おかしなところはあったとか言われてるけれど」
「実際おかしくもなかったんじゃ」
「本当に心が奇麗な人だったのかもね」
 オシツオサレツは二つの頭でこう考えました。
「ただ誤解されやすいだけで」
「そうした人だったんじゃ」
「僕が調べたら科学を奇麗な方向、人類の進歩に使うべきって考えていたんだ」
 バイエルン王はというのです。
「ルートヴィヒ二世という人はね」
「そうだったんだ」
「じゃあこうして人工の虹を観たりして」
「そうしたことの為に使うべきって考える人だったんだ」
「火薬は花火に使ってね」
 その美しさで目と心を楽しませてというのです。
「気球以外のことでアルプスの上を飛びたいと考えていたり」
「つまり飛行機ね」
「それも考えていたの」
「そして赤十字にもいち早く賛成した人だったんだ、戦争は好きでなかったし」
 先生はバイエルン王のこうしたことも知っていて動物の皆にお話しました。
「狂王と呼ばれていたけれど」
「実は全然違ったみたいね」
「そうね」
「音楽をこよなく愛して」
「ワーグナーだったわね」
「そう、バイエルン王はワーグナーをこよなく愛していたんだ」
 先生はこのこともお話しました。
「そうしてね」
「科学をこうしたものに使ったりして」
「そしてなのね」
「その発展を願っていた」
「そうした人だったの」
「何か日本には無闇に理系が嫌いな小説家さんもいるけれどね」
 ふとこの人のことを思い出した先生でした。
「ああした人はバイエルン王のことはわからないだろうし」
「こうしたもののよさもね」
「そしてその素晴らしさのこともね」
「理解出来ないわね」
「そうよね」
「文系を変に持ち上げて理系を貶めてもね」
 そうしてもというのです。
「文系の学問はよくならないよ」
「そして世の中の進歩にも役立たないわね」
「そうね」
「とても」
「そうだよ、何か日本には市民団体の人とかに反文明的な考えが見られるけれど」
 その小説家さんだけでなくです。
「僕はそうした考えは持っていないよ」
「そうだよね」
「先生は科学を肯定していてね」
「その発展を心から願ってるね」
「正しいそれを」
「うん、バイエルン王の様とは言わないけれど」
 そう思うのは恐縮だというのです。
「それでもね」
「あの王様の様にだね」
「科学は人の素晴らしい発展の為に使うべき」
「そう考えているんだね」
「そうだよ、例えは歯磨きだってね」
 これもというのです。
「歯磨き粉を使うしね」
「それ普通じゃないの?」
「そうよね」
「今じゃね」
「歯磨き粉を使って磨くことは」
「それも歯磨き粉を作ってる企業がどうとか身体に悪いとか言ってね」
 こんなことを言ってというのです。
「使うなとか言う人いるんだよ、あの買ってはいけないの流れで」
「いや、そんなこと言ったら」
「何でも買ってはいけないで」
「挙句には原始時代に逆戻りじゃない」
「そうなってしまうわよ」
「うん、何かあれこれ買ってはいけないって言う人達の考えは」
 それこそというのです。
「反文明、反企業そして反資本主義でね」
「挙句に原始時代に行く着く」
「そうなる考えなの」
「それか社会主義かな、社会主義なんてもう」
 それこそというのです。
「既に経済学で結論が出ているしね」
「ソ連も崩壊したし」
「それを見たらね」
「もう語ることが出来ない学問ね」
「僕は経済学も学んでいるけれど」
 それでというのです。
「もうね」
「社会主義は終わった」
「通用しないんだね」
「そうした経済理論だよ、そもそもね」
 先生はさらに言いました。
「経済学でしかないのに神学みたいにね」
「何でも当てはめたの」
「そうしていたの」
「そう、絶対視してね。絶対視もね」
 これもというのです。
「学問では駄目だからね」
「違うと思って学ぶ」
「それで正しいかどうかを検証する」
「そうしてだよね」
「学問はやっていくものね」
「そう、そしてね」
 さらにお話する先生でした。
「僕にしろ神学では一度ね」
「神様を疑ったの」
「そうしたの」
「そうだったんだ」
 実際にというのです。
「神様は本当にいるかどうか」
「それをだね」
「疑ってみて」
「それで学んだんだ」
「そうするとかえってわかったんだ」
 神様の存在を疑う、このことからです。
「人は何故いるのか、そして何よりもね」
「何よりも?」
「何よりもっていうと」
「うん、人には偶然というものが多いね」
 これがというのです。
「非常に」
「そうだね、確かにね」
「人には偶然が多いわ」
「何かとね」
「偶然はしょっちゅうあるわ」
「そうだね、偶然何かが起こったり誰かが出会ったり」
 そうしたことがというのです。
「人には多いね」
「動物だってそうだよ」
「私達だってね」
「何かが起こる、誰かと出会う」
「そこから凄いことがあるから」
「そうだよね、そしてその偶然がね」
 まさにというのです。
「何故起こるか、それは果たして偶然なのか」
「そう考えてみて」
「それでなの」
「あることがわかったんだ」
 まさにというのです。
「その偶然は偶然じゃない、まさにね」
「神様ね」
「神様が導いてくれることね」
「そうだっていうのね」
「これをカルヴァンの教えでは運命論と言うけれど」
 人の偶然はもうそれは全て神様が定めた運命の中にあるというのです。
「何しろ人の一勝は全て神様が決めているから」
「だからだね」
「偶然も全て神様の手によるもの」
「そうだっていうのね」
「そうなんだ、それがね」
 まさにというのです。
「偶然は実はね」
「神様が導いている」
「その偶然はどうして起こるのか」
「そう考えていくと」
「そう、例えばたまたま誰かと出会う」
 この一見すると何でもないことがというのです。
「それは実はなんだ」
「神様が導いてくれていて」
「人はその導きによって動いている」
「そうしたものなのね」
「そうだよ、神様はね」
 本当にというのです。
「そこまで考えてね」
「そうしてだね」
「色々考えていて」
「そしてなの」
「人が偶然と思うことを用意しているんだ」
 そうだというのです。
「実はね」
「成程ね」
「そうしたものなの」
「そしてそのことからなんだ」
「先生は神様を感じたんだ」
「そうだよ、そして日本に来て色々な存在と出会っているね」
 先生は皆にこのこともお話しました。
「僕は」
「ええ、確かに」
「狐さんや狸さんもそうだし」
「獺さんもそうだったわね」
「猫又のお静さんにも会って」
「色々な生きものや超然的な存在に会ってるわね」
「このこともあってね」
 それでというのです。
「余計に神様の存在を信じる様になったよ」
「そうなんだね」
「神様はいる」
「そうしたことを知ったのね」
「そうだよ、わかったというかね」
 むしろというのです。
「辿り着いたんだね」
「辿り着いたの」
「そうなの」
「うん、神様のところにね」
 そうだというのです。
「僕は」
「成程ね」
「そうだったの」
「神様を疑ってね」
「神様の存在を知った」
「そうなったの」
「そうだったんだ」
 まさにというのです。
「僕はね、けれど社会主義はね」
「その神様も否定して」
「自分達が神学になろうとした」
「そうした考えだったんだ」
「それも検証もなしに」
「昔の神学みたいにね」
 あえてこうも言う先生でした。
「昔の神学は絶対だったけれど」
「本当かどうか検証して」
「そして今に至る」
「それで学問の幹にもなってるのね」
「そうなのにね」
「社会主義、日本では共産守護と変わらないね」
 この国ではそうなっているというのです。
「日本では社会主義やリベラルを自称していてもね」
「その実はだね」
「共産主義なんだ」
「そうなんだ」
「もうそれしかないんだよ」
 社会主義やリベラルと言っていてもというのです。
「そうしたことを言う人達の目的はというと」
「日本を共産主義国家にする」
「そのことが目的なの」
「それでなのね」
「社会主義やリベラルって言っても」
「それはまやかしなの」
「その辺り欧州勿論イギリスとも違うよ」
 先生の祖国ともというのです。
「日本のそうした人達と我が国の労働党は違うんだ」
「ううん、労働党はね」
「所謂労働者や農民といった人達の為の政党だね」
「保守党が伝統的な貴族や資本家や地主さんの政党で」
「大体そう考えていいよね」
「そのはじまりと伝統的な考えはね、まあ実際は遥かに難しいけれど」
 支持基盤やそうしたものはというのです。
「階級も色々変わるしね」
「そうだよね」
「だから保守党とか労働党っていってもね」
「結構色々あるよね」
「流動的なところもあって」
「それでも労働党は共産主義じゃないね」
 このことははっきりと言う先生でした。
「そうだね」
「うん、それは違うね」
「労働党はリベラルだけれどね」
「革命とかはしないよ」
「共産主義ではないよ」
「けれど日本では違うんだ」 
 イギリスでは労働党の様なポジションにいる人達はというのです。
「考えは共産主義しかないんだ」
「社会主義やリベラルを言っていても」
「その実は」
「そうした考えの人達なんだ」
「そう、そして共産主義から一歩も離れないんだ」
 そうなっているというのです。
「絶対視していてね」
「社会主義実は共産主義を」
「そうしていて」
「もうそこから一歩も離れなくて」
「どうしようもなくなっているんだ」
「そうした人達が日本にはまだいるんだ」
 ソ連がなくなって随分経つにというのです。
「僕はそうした人達と違うからね」
「信仰もあってね」
「それもしっかりとしたものが」
「だからだね」
「先生はそこからは離れているね」
「そうだよ、少なくともそのつもりだよ」
 先生は社会主義その実態は共産主義である日本のそうした人達とは全く違います、それで今も言うのです。
「自分の力で全部出来るともね」
「思わないよね」
「そうしたことも」
「偶然は偶然で終わらせられないよ」
 そこはとてもというのです。
「そう考えて終わらせるにはあまりにも不思議だからね」
「うん、説明しきれないよね」
「人の運命が変わっていくことも多いから」
「偶然の出来事や出会いからね」
「そうだよね」
「僕はそこから神様を再認識したんだ」
 あえて疑ってみてそれからです。
「そしてね」
「今はだね」
「神様も信じていて」
「信仰も備えていて」
「神学もだね」
「そう、備えているよ」
 その通りだとです、こう言ってでした、そのうえで。
 そうしたことをお話してでした、先生はここでこうしたことも言ったのでした。
 先生はです、また言ったのでした。
「僕も偶然からね」
「うん、僕達と会ってね」
「それで一緒になって」
「日本にも来てね」
「今こうして暮らしているし」
「全て神様の導きだよ」
 それが偶然だというのです。
「有り難いよ、ではね」
「うん、これからもだね」
「頑張ってそうして」
「神様のお導きに感謝して」
「そうして生きていこうね」
「そうするよ、皆と一緒にね」
 ここで動物の皆を笑顔で見た先生でした。
「若し皆と神様の導きで出会えなかったね」
「先生はどうなっていたか」
「そう言うんだ」
「うん、本当にね」
 これが先生の返事でした。
「それじゃあ今からね」
「今から?」
「今からっていうと」
「お茶を飲もうね」
 こう言ってでした、そのうえで。
 先生は皆と一緒にお茶もお菓子も楽しみました、そして皆で研究室で論文を書いている休憩時間の時にでした。
 王子がくれた薔薇、花瓶に差しているそれを見てまずはオシツオサレツが言いました。
「奇麗な薔薇だね」
「うん、何度見てもね」
 こう二つの頭で言うのでした。
「真っ赤でね」
「本当に奇麗な赤だね」
「この薔薇を胸にさしたら」
 ガブガブが言うことはといいますと。
「先生もどれだけお洒落か」
「あっ、いいわね」
 ダブダブはガブガブのその言葉に頷きました。
「先生いつもスーツだしね」
「似合うと思うよ、僕も」
 トートーも続きます。
「先生のスーツに薔薇はね」
「そうしたお洒落もよくないかな」
 ジップも同意でした。
「先生もね」
「最近サプールって人達がいるわね」
 ポリネシアが言った人達はといいますと。
「お洒落にスーツ着てアクセサリーも付けて」
「ああ、コンゴにいる人達だね」
 チーチーもサプールについて知っていました。
「あの人達確かにお洒落だね」
「ステップも踏んでるよね」
 ホワイティも知っていました。
「フランス語を使ってね」
「先生フランス語も喋れるし丁度よくない?」
「そうよね」 
 チープサイドの家族もこう考えました。
「いつもスーツだし」
「サプールにすぐになれるよ」
「是非共だよ」
 まさにと言ったのは老馬でした。
「先生も胸に薔薇を飾ってサプールになろう」
「サプール?僕もあの人達のことは知っているけれど」
 先生は皆のお話を聞いてこう言いました。
「ちょっとね」
「なるつもりないんだ」
「スーツ着てるのに」
「それでも」
「うん、スーツはね」
 それはというのです。
「あまりね」
「なる気はないの」
「特に」
「そうなんだ」
「うん、スーツは当然の身だしなみだから」
 先生にしてはというのです、先生はお医者さんで様々な博士号を持っている知識人だからというのです。
「仮にも僕はお医者さんだからね」
「いつもスーツだよね」
「イギリスではお医者さんは知識人だしね」
「知識人は知識人の身だしなみをする」
「そのことは当然だから」
「それでいつもスーツだからね」
 外出の時はそうしているというのです。
「だからね」
「それでだね」
「スーツはだね」
「先生にとっては当然で」
「お洒落ではないんだ」
「うん、身だしなみを整えることは当然にしても」
 それでもというのです。
「お洒落をしているつもりはないし」
「サプールの人達みたいに」
「そうはしないんだ」
「うん、ただあの人達の考えは素晴らしいと思うよ」
 お洒落をしているつもりはなくともです、先生はサプールの人達を否定していませんでした。むしろ肯定して言うのでした。
「あの人達は平和主義だね」
「うん、そうだね」
「凄い平和主義だよね」
「絶対に喧嘩もしないし」
「平和を愛する人達だね」
「あの考えは素晴らしいよ」
 こう言うのでした。
「武器を捨てて優雅な紳士になる」
「そのことはだね」
「本当に素晴らしいことだよね」
「だから先生はサプールにはならなくても」
「サプールは素晴らしいと思うんだね」
「うん、僕も戦争は専門家じゃないから」
 先生は喧嘩をしたこともありません、いつも穏やかな人です。
「だからね」
「それでだね」
「平和を愛する紳士として生きること素晴らしい」
「そう言うんだね」
「うん、国家と国家の間では戦争をしなくてはいけない時もあったし今もだよ」
 そうした時はあるというのです、先生はこのことはわかっています。
「けれどそれでも平和主義もね」
「それもだね」
「非常に素晴らしい」
「そう言うんだね」
「うん、サプールの人達の考えはもっと広まるべきだよ」
 笑顔で言う先生でした、そしてでした。
 先生はまた論文を書くお仕事に戻りました、今はそうしたことにも励んでなのでした。そのうえで。
 本を読んでいると研究室をノックする音が聞こえてきました、それで扉を開けるとそこに悠木さんがいました。
 先生は悠木さんを研究室の中に入れるとすぐに舞台のお話をしてきました。
「先生のご提案通りにです」
「お花をなんだ」
「はい、演出に使うことになりました」
「舞台は抽象的にしてなんだ」
「これは予算のこともありまして」 
 それでというのです。
「そうなりました」
「成程ね」
「はい、ただお花は実際のお花ではなく」
「造花かな」
「造花はこれまでも長年部活で使ってきまして」
 それでというのです。
「沢山持っていまして」
「ではだね」
「はい、その造花達をふんだんに使って」
 そしてというのです。
「演出をしようと」
「そうなったんだね」
「もう床にこれでもかと置いたり」
 その造花達をというのです。
「飾ることにしました」
「そうした演出でいくんだ」
「普通のお花ですとお金がかかりますし沢山のお花を使って花びらを散らしたりしますと」
「お花が可哀想かな」
「そうした意見も出まして」
 悠木さんはそうしたお話もしました。
「それで」
「造花を使うことにしたんだね」
「花びらについても」
 それもというのです。
「沢山使うので」
「それでだね」
「はい、造花でいきます」
「それで思うことは」
 ここで先生は悠木さんに言いました。
「お花は色や形だけでなくね」
「香りもですね」
「それも大事でね」
「舞台を観る人達にですね」
「香りを演出に使う意味もね」
「先生のアドバイスにはあったんですね」
「そうだったんだ、では」
「そちらのこともです」
 既にと言う悠木さんでした。
「香水を各自持っていますので」
「それを使うんだ」
「はい、演出に」
「そうするんだね」
「香のこともです」
 既にというのです。
「考えていました」
「それはいいことだね」
 先生は悠木さんのお話に唸って応えました。
「やっぱりね」
「はい、何といってもですね」
「お花には香りも大事だからね」
「だからですね」
「香水を使うこともね」
「いいことですね」
「そう思うよ、ではベルサイユの薔薇は」
「はい、造花と香水を使って」
 そうしてお花を出したというのです。
「そうした舞台にします」
「頑張ってね」
「そうさせて頂きます、そしてです」
「そして?」
「先生もよかったら」
 悠木さんはお顔を少し前に出して先生に言うのでした。
「舞台を御覧に」
「行かせてもらっていいのかな」
「はい、是非」 
 悠木さんは先生に笑顔で答えました。
「いらして下さい」
「それじゃあね」
「チケットはこちらです」
 日笠さんはチケットも出しました。
「どうぞ」
「有り難う、あっ安いね」
 お金も見て言った先生でした、チケットに書かれているそれを。
「これも嬉しいね」
「安いですか」
「うん、実はイギリスにいた時は結構歌劇を観たけれど」
「歌劇もですか」
「妹が好きで連れて行けって言われてね」
 それでというのです。
「ロンドンコヴェントガーデントとかにね」
「ああ、あそこにですか」
「よく言ったよ」
「あそこは有名な歌劇場ですね」
「有名だけれど高くてね」
「学生の舞台ですから」
 悠木さんは先生に笑って答えました。
「それに歌劇ではないですから」
「普通の舞台なんだね」
「はい、ミュージカルでもないです」
「そこは宝塚とは違うね」
「宝塚もベルサイユの薔薇をしますが」
「あそこはミュージカルだからね」
 それで演劇をするのが宝塚です、演技だけでなく歌もあるのがあの劇場の大きな特徴であり素晴らしいところです。
「妹も好きみたいだよ」
「妹さんは宝塚もですか」
「日本の素晴らしい文化の一つだってね」
「言っておられるんですか」
「日本はこんなものもあるのかってね」
 そこまで言っているというのです。
「言っているんだ」
「そうですか」
「その宝塚ともまた違うんだね」
「はい、その演出はです」
 それはというのです。
「歌とかはなくて」
「お芝居でだね」
「やっていきます、ですから」
「うん、楽しみにしているよ」
「お待ちしていますね」
「是非ね、しかしね」
 ここでこうも言った先生でした。
「ベルサイユの薔薇は主題歌もいいよね」
「薔薇は美しく散る、ですね」
「タイトルもいいしね」
「歌詞も音楽もですね」
「どれも素晴らしいよ」
 アニメのそれもというのです。
「名作の音楽もまた名曲である」
「そうなりますね」
「僕はそう思うよ、あの素晴らしさは」
 主題歌のそれはというのです。
「一度聴いたら忘れられないね」
「芸術ですよね」
「本当にね、あの曲は使われないね」
「はい、音楽はBGMで流しますが」
 それでもというのです。
「ミュージカルでないですし」
「著作権の問題もあって」
「使わないです」
「そうするんだね」
「クラシックの曲を使うつもりです」
「そうするんだね」
「はい、そちらもご期待下さい」
 また笑顔で言った先生でした。
「宜しくお願いします」
「それじゃあね」
 笑顔で応えた先生でした、そして悠木さんから受け取ったチケットを今は大事にしまいました。それでお家に帰ってからお家に来た王子にそのお話をしますと。
 王子は笑顔になって先生にこんなことを言いました。
「僕も行くしね」
「その舞台にだね」
「僕は別の人からお誘いを受けてね」
 それでというのです。
「そのベルサイユの薔薇を観に行くよ」
「それじゃあ僕達と一緒だね」
「先生はトミーとだね」
「動物の皆も一緒だよ」
 彼等は先生といつも一緒なので舞台を観に行く時もなのです。
「そうしてね」
「舞台を観て」
「楽しませてもらうよ」
「それはいいことだね、しかしね」 
 ここで王子は面白そうに笑って先生に言うのでした、ちゃぶ台の向こう側にいる先生に。
「先生も女の子からお誘いを受けるなんてね」
「それが何かな」
「相変わらずもてるね」
「僕がもてることはないから」
 そこは笑って否定する先生でした。
「絶対にね」
「だからなんだ」
「それはないよ」
 例え何があってもというのです。
「ただお誘いを受けただけで」
「それでなんだ」
「別に何もね」
 さらにお話する先生でした。
「デートとかのお誘いじゃないよ」
「ふうん、そうなんだ」
「僕はスポーツと女性には縁がないんだ」
「まあスポーツはそうだね」
「馬に乗れて歩くことは出来るけれどね」
 それでもというのです。
「スポーツは全部駄目で」
「運動音痴だよね、先生は」
「そうだよ、運動音痴なうえに太ってるからね」
 それで身体が重いからというのです。
「子供の頃からスポーツは全部駄目だよ」
「それは僕も知ってるけれどね」
「それ以上にもてることはね」
 この要素はさらにというのです。
「ないよ」
「そうなんだ」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「僕はただチケットを貰っただけだよ」
「そう思っているのならいいけれどね、僕は」
 思わせぶりに言う王子でした。
「先生がね」
「何かある言い方に思えるけれど」
「まあ先生が気付かないから、とにかくチケットは貰ったし」
「うん、じゃあね」
「舞台一緒に楽しもうね」
「そうしようね」
「そういえば最近日笠さん見ないけれど」
 王子は先生が女性に縁がないと言ったことからこの人のことを思い出しました。
「動物園のお仕事が忙しいのかな」
「日笠さんは今ブラジルに出張中なんだ」
「あっ、そうなんだ」
「アマゾンの生きものの研究と保護のことでね」
「学会とかあるんだ」
「あと現地調査とかね」
 そのアマゾンでというのです。
「だから今はね」
「日本におられないんだ」
「そうなんだ、お土産を楽しみにと言ってたよ」
「ブラジルでも頑張ってきて欲しいね」
「そうだね、ブラジルは凄い国だよ」
 先生は王子にこの国のこともお話しました、それも明るい笑顔で。
「アマゾンときたらね」
「凄い生態系だよね」
「アフリカにも負けない位にね」
「いや、あそこはもうね」
「アフリカのジャングルよりもかな」
「凄い場所だよ」
 王子はアマゾンについてこう言うのでした。
「アフリカはターザンだけれどアマゾンはね」
「何かな」
「日本の特撮ヒーローもいたからね」
「ああ、そうしたヒーローもいたね」
 先生も笑顔で頷きました。
「仮面ライダーアマゾンだね」
「物凄いワイルドなヒーローだったけれど」
「ああしたヒーローでないとだね」
「とても生きられない様な場所だから」
「アフリカ以上だっていうんだ」
「巨大な蛇や鰐や猛獣がいてね」
「何メートルもある鯰やピラルクにね」
「デンキウナギやピラニアまでいるから」
 そうした様々な生きものがこれでもかといるのです。
「毒蛇に毒虫にね」
「ドクガエルもいるね」
「そんな場所アフリカにもないよ」
 それこそというのです。
「だからね」
「アフリカのジャングルよりもだね」
「遥かに凄いよ」
 そうした場所だというのです。
「アマゾンはね」
「アフリカで生まれ育った王子もそう言うんだ」
「それだけに研究のしがいがあるんだね」
「そうなんだ、そしてそのアマゾンにね」
「日笠さんは行ったんだね」
「そうだよ、それに今度水族館にドラドを入れて動物園にもアメリカバクを入れる予定でね」
「そのアマゾンにいるバクだね」
「そのこともあって行っているんだ、水族館の人達もだよ」
「ドラドを貰うから」
「だからね」
 その為にというのです。
「今は日笠さんは日本にいないよ」
「そうなんだ、わかったよ」
「うん、アマゾンは凄い場所だから用心されてるそうだよ」
「本当に凄い場所だからね」
 王子はまたアマゾンのことをお話しました。
「もう何があるかね」
「わからない様な場所だからね」
「まだ未知の生きものもいるよね」
「そうらしいね」
 戦士絵もこのことは否定しません。
「どうやら」
「先生も行ったことあるよね」
「いやあ、王子と一緒にアフリカに行った時も大変だったけれどね」
 先生はその時のことをお話します。
「アマゾンは正直ね」
「もっとなんだ」
「うん、もっと大変だったよ」
 そうだったというのです。
「動物の皆やガイドさん達がいてくれなかったら」
「まあ先生お一人じゃね」
「アマゾンは無理だね」
「先生はそうだね」
「うん、運動神経もないしサバイバルもね」
 知識はあってもです。
「実践は出来ないんだよね、僕は」
「だったらね」 
「僕一人じゃアマゾンはね」
 とてもというのです。
「無理だよ」
「そうだね、皆がいてくれているから」
 先生は皆を見つつ王子にお話します。
「アマゾンもいけたよ」
「そうだね、まあとにかく日笠さんのことはね」
 この人のことはといいますと。
「帰国を待っていようね」
「そのアマゾンからね」
 王子は内心思うことを先生とお話しつつです、そしてでした。
 先生達は王子と一緒にです、晩御飯を食べました。その晩御飯もとても美味しいものでした。








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