『ドリトル先生と和歌山の海と山』




               第二幕  王子も喜んで

 王子には先生が次の日の朝大学の研究室にいつも通り王子が来たところでお話しました、するとです。
 王子は明るい笑顔でこう先生に答えました。
「いいね、それじゃあね」
「王子もだね」
「うん、その連休は予定もないしね」
 このこともあってというのです。
「是非ね」
「僕達と一緒にだね」
「行こうね、高野山にも登って」
「フィールドワークもしてね」
 そうしてというのです。
「学ぶよ」
「そうするんだね、先生は」
「そして王子もだね」
「うん、僕は仏教には特に興味がないけれど」
 それでもと答える王子でした、先生が淹れてくれたホットミルクティーをにこにことして飲みながら。
「それでもね」
「高野山にはだね」
「一度行きたいと思っていたしね」
 それでというのです。
「是非一緒にね」
「和歌山に行って」
「高野山がどんなところか見てみたいよ、とても神秘的な場所だっていうから」
 それでというのです。
「僕はあそこに興味があったんだ、じゃあね」
「じゃあっていうと」
「いつも通りキャンピングカーを出すよ」
 王子が旅行に使っているこの車をというのです。
「動物の皆も乗られるね」
「あのキャンピングカーをだね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「旅行、フィールドワークを楽しもうね」
「是非ね」
「和歌山っていうとね」
 さらにお話する王子でした。
「梅干しと蜜柑だね」
「その二つが有名だね」
「あと海の幸もね」
 こちらのお話もする王子でした。
「確かウツボ食べるんだよね」
「そうだよ、あちらではね」
「あの細長い怖いお魚をね」
「食べるんだよ、和歌山では」
「美味しいのかな」
「それは食べてみてわかるよ、僕も食べたことがないんだ」
 ウツボはというのです。
「だからね」
「それじゃあウツボを食べることもね」
 そのうえでというのです。
「楽しみにして」
「和歌山に行くんだね」
「そう、それで梅干しでね」
 この和歌山名物についてさらに言う王子でした。
「お酒を飲もうね」
「王子梅干しでお酒を飲むんだ」
「最近覚えたんだ」 
「へえ、そうなんだ」
「あっさりとしてて美味しいよね」
「そうだね、戦国大名の上杉謙信さんの飲み方だね」
「ああ、あの毘沙門天の」
 王子もこの人のことはよく知っています、戦国時代にとにかく戦になれば負け知らずのとても強い人だったのです。
「強くて清廉潔白で正しくて」
「物凄く義侠心と信仰のある人だったんだよ」
「私利私欲がなくて」
「とても高潔な人だったんだ」
「その人の飲み方だったんだ」
「謙信さんはお酒が大好きでね」
 それでというのです。
「毎晩梅干しを肴に縁側に出てかなり飲んでいたんだ」
「そうだったんだ」
「その謙信さんの飲み方だね」
 梅干しでお酒を飲むそれはというのです。
「日本酒だね、飲むのは」
「そうだよ」
「増々謙信さんだね」
「日本酒だと」
「当時の日本のお酒は大抵濁り酒だったけれどね」
 今普通に飲まれている清酒ではなくです。
「そちらにしてもね」
「ああ、濁酒だね」
「それを飲んでいたんだ」
 謙信さんもそうだったというのです。
「とにかくお酒が好きでね」
「毎晩縁側で飲んでいたんだ」
「それもかなりの量をね」 
 そうだったというのです。
「あの人はね」
「そうだったんだ」
「ただ飲み過ぎだったみたいだね」
「そこは気をつけないとね」
「王子もね」
「よく爺やに言われるよ」
 今もすぐ後ろに控えている侍従さんを見てのお話です。
「それはね」
「そうだね、王子も気をつけないとね」
「だから言われるよ、そういえば先生は」
「飲む時はかなり飲んでるね」
 先生にしてもです。
「ただ飲まない日も結構おいているんだ」
「ああ、そうしてだね」
「健康にも気をつけているんだ」
「毎日飲んではいないんだね」
「それはトミーに止められてね」 
 お家の火事をガブガブと共にやっている彼にとです、先生は王子に少し困った笑顔でお話をしました。
「だからね」
「飲まない日もあるんだ」
「そうなんだ」
 こう王子にお話するのでした。
「僕もね」
「やっぱり毎日は駄目だよね」
「かなりの量を飲むからね、僕は」
「だったら余計にだね」
「飲まない日もあるよ」
「そして和歌山でもだね」
「飲むよ、ただ旅行の時は毎日飲むことが多いからね」
 先生もこのことはわかっています。
「だから旅行前はね」
「飲まないんだ」
「そうしておくよ」
「それがいいね、健康の為には」
「医者の不養生はね」
 この言葉も出した先生でした。
「よくないからね」
「日本の諺だったかな」
「そうだよ、人の健康を診るお医者さんがそうだとね」
「本末転倒だからね」
 だからこそというのです。
「僕も気をつけているんだ」
「先生って何処も悪いところないよね」
「この前の健康診断では健康そのものと言われたよ」
 このことは笑顔で言う先生でした。
「太っているけれど肥満かっていうとね」
「そこまでいかないんだ」
「うん、運動もね」
 それもというのです。
「適度だって言われたよ」
「そうなんだ」
「よく歩いていてね」
「そういえば先生日本に来てからよく歩いてるよね」
「家から学校まで馬に乗ってね」
「学校のあちこちを歩いてね」
「結構な運動をしていると言われたよ」
 健康診断でというのです。
「旅行の時もフィールドワークをしてるし」
「そう思うと日本に来てね」
「健康になったね、先生も」
「食生活も変わったしね」
 こちらもというのです。
「お野菜やお魚がぐっと増えて」
「そうしたこともあってなんだ」
「健康になったんだ」
 そうだというのです。
「とてもね」
「そうだったんだ」
「よく歩いて食生活も改善して」
「肥満もだね」
「健康に影響が出ない位になったよ」
 太っていてもというのです。
「いいことだよ」
「そうだね、やっぱり健康第一だね」
「何といってもね」
「だから飲まない日もおいてね」
 そうしてというのです。
「健康にも気をつけているよ」
「そうなんだね、先生煙草も吸わないしね」
「煙草はね」
 こちらについてはです、先生は王子に微妙なお顔で答えました。
「好きじゃないからね」
「吸わないよね、先生は」
「パイプとか葉巻でもね」
「どちらでもだよね」
「吸わないよ」
 そうだというのです。
「シャーロック=ホームズみたいにダンディに吸うとかもないよ」
「ああ、あの人はトレードマークだね」
「けれど僕はホームズさんじゃないからね」
 このことは笑ってお話する先生でした。
「パイプでも葉巻でもね」
「吸わないね」
「葉巻はヘンリー=メルヴィル卿だったね」
 こちらの探偵さんだというのです。
「確か」
「何か凄い口の悪い探偵さんだったね」
「横柄で露悪的でね」
「密室トリック破りの」
「この人は葉巻だったよ、けれど僕は探偵さんじゃないし」
「煙草はだね」
「どれも吸わないよ」
 笑ってこう言うのでした。
「こちらはないよ」
「そうなんだね」
「勿論ドラッグもしないし」
「あんなのしたら絶対に駄目だよね」
「覚醒剤なんてしたら」
 このことは深刻なお顔で言う先生でした。
「身の破滅だよ」
「やっぱりそうなるよね」
「覚醒剤は身体の中のエネルギーを無理矢理に出すからね」
「身体のエネルギーを無意味に使って」
「一週間寝なくて済むっていうのもね」
 一度使えばです。
「それだけ身体のエネルギーを無理に引き出しているってことだから」
「身体に凄く悪いんだね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「あんなのはしたら駄目だよ」
「骨も筋肉もぼろぼろになるんだよね」
「勿論髪の毛も精神もね」
 もう何もかもがというのです。
「麻薬はどれも身体に凄く悪いけれどね」
「覚醒剤もなんだ」
「あんなものに手を出したら本当にね」
「破滅するんだね」
「絶対にそうなるから」 
 だからだというのです。
「するなんてね」
「絶対に駄目だね」
「僕はこのことは皆に言っているよ」
「ドラッグ類は絶対になんだ」
「するものじゃないよ」
「煙草以上にだね」
「勿論だよ、煙草も身体に悪いけれど」
 それ以上にというのです。
「覚醒剤はもっとだよ」
「だからなんだ」
「あんなものをしたら」
「破滅するね」
「そうなるからね」
 こう王子にお話するのでした。
「あんなものはしないことだよ」
「よくわかったよ、僕も前からね」
「ドラッグはだね」
「国民の皆にも言ってるんだ」
「しちゃいけないって」
「そう言ってるからね」
 だからだというのです。
「僕も気をつけてるよ」
「王子として国民の人達にもだね」
「絶対にしたらいけないって言ってるよ、父上も母上も」
「それがいいよ、麻薬なんてしたら」
 またお話する先生でした。
「何度も言うけれど破滅するからね」
「そうだよね」
「日本はやってる人が少ないけれど」
「欧州は多いよね」
「アメリカ以上に多いみたいだしね」
 麻薬の類をしている人がです。
「困ったことだよ」
「そうだよね、アフリカもね」
 王子のお国があるこちらもというのです。
「気をつけてるよ」
「全人類の問題の一つだからね」
「くれぐれもね、麻薬と比べたらお酒は」
「ずっといいよ、確かに飲み過ぎはよくないけれど」
 それでもというのです。
「百役の長でもあるし」
「飲み方だね」
「それ次第だよ」
 こうお話してです、先生もミルクティーを飲みました。そうして講義に出てご自身の学問にも励んでです。
 お家に帰ってです、いつも一緒にいる動物の皆に言いました。
「じゃあね」
「うん、今からね」
「旅行の準備をしようね」
「それじゃあね」
「今からね」
「はじめましょう」
「いつも通り僕達に任せてね」
 ホワイティがこう先生に言いました。
「そうしようね」
「そうそう、こうしたことは先生はからっきしだから」
 ガブガブも先生に言います。
「私達が手伝うけれど」
「かなりの部分は任せてね」 
 ジップも先生に言うのでした。
「助言もするから」
「じゃあ今から皆で用意をして」
「それで連休には和歌山ね」
 チープサイドの家族は今からかなり乗り気です。
「海を見てサファリパークにも行って」
「高野山にも入りましょう」
「高野山が第一の目的地ね」
 ポリネシアはもうこのことが頭にありました」
「あそこね」
「そうだね、先生今真言宗のことを学んでるしね」
 それならと言う老馬でした。
「何といってもあそこが第一だね」
「先生の旅とか冒険って一番行きたいところは最後に行くけれど」
 こう言ったのはダブダヴでした。
「今度もそうなるかな」
「そうなるんじゃないの?」
「高野山って確か和歌山の奥の方にあるからね」 
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「だったらね」
「まずは海とかサファリに行ってね」
「それからだね」
 トートーも言います。
「高野山だね」
「高野山は何処にあったかな」
 最後に言ったのはチーチーでした。
「一体」
「うん、和歌山県は海から少しいくと山がかなり深いけれどね」
 先生も皆にお話します、先生も旅支度をしていますが見れば皆の方がテキパキとしていて的確に用意をしています。
「奈良県の南にまで続いているからね」
「ああ、あそこね」
「あそこは確かに凄いよね」
「奈良県の南も」
「あそこまで続いてるってことは」
「それじゃあね」
「そうだよ、もうね」
 それこそと言う先生でした。
「和歌山県もね」
「山が多いんだ」
「それもかなり深い?」
「それじゃあだね」
「高野山もその山の中にあって」
「それでなんだ」
「結構な山なんだ」
「そうだよ、山脈の中にあるんだ」 
 それが高野山だというのです。
「言うならね」
「日本って山が多いけれどね」
「高野山もその中にあるんだ」
「じゃあ行くには覚悟が必要かしら」
「そうしたところに行くって」
「今はしっかりと道があるからね」
 だからだとお話する先生でした。
「直接行ける電車もあるし」
「じゃあ今はだね」
「そんなに不便じゃないんだ」
「山の中にあっても」
「それでも」
「今はそうだよ、それで今からね」
 先生達の今のお話もする先生でした。
「その高野山に行く用意もしようね」
「そうそう、トミーは今お風呂だけれどね」
「トミーも用意をするし」
「先生もだよ」
「ちゃんと用意をしようね」
「わかっているよ、ただ何か僕が用意をするよりもね」
 周りで先生に言いながらせっせと用意のお手伝いどころか自分達が率先してやっている皆を見て思うのでした。
「皆の方が動いてるよね」
「だから先生こういうの駄目じゃない」
「要領悪いし動きも遅いし」
「持って行くべきものもわかってないし」
「だからだよ」
「私達がしてるの」
「いつも通りね」
 そうしているというのです、そうして用意はどんどん進んでいきますがトミーがお風呂から出て来て用意をすると余計にでした。 
 先生の出る幕はなくなって苦笑いで言いました。
「やっぱり僕はね」
「はい、先生はこうしたことは」
 トミーは先生に少し苦笑いで言いました。
「僕達がやりますから」
「見ているだけかな」
「そうなりますね」
「何かいつもだね」
 少し苦笑いで言う先生でした。
「僕はそう言われるね」
「こうしたことについては」
「それだけ要領が悪いのかな」
「先生は得手不得手がはっきりしてまして」
 それでというのです。
「日常の生活のことは」
「からっきしで」
「ですからこうしたことはです」
「トミー達に任せてだね」
「はい」
 そうしてというのです。
「先生は先生のペースでやって下さいね」
「何か悪いね」
「いえいえ、いいですよ」
 優しく応えて言うトミーでした。
「お気になさらずに」
「それじゃあね」
「支度は今夜で終わると思います」
「早いね」
「それで連休になれば」
「和歌山にだね」
「行きましょう、それにしても」
 ここでこうも言ったトミーでした。
「先生も日本のあちこちを回っていますね」
「そうだね、北海道や沖縄も行ったしね」
 先生はトミーのそのお話に頷いて応えました、言われてみますと日本のあちこちを巡ってきています。
「大阪はしょっちゅうだしね」
「奈良に京都にですね」
「愛媛も行ったしね」
「それに今度は和歌山で」
「色々巡ってるね」
「そうですよね」
「そのことは嬉しいよ、ただね」
 ここでこう言った先生でした。
「まだ伊勢や琵琶湖には行ってないね」
「関西ではですね」
「そうしたところも行きたいし九州にもね」
「そちらにもですね」
「行きたいね、福岡や長崎にもね」
 そうした場所にもというのです。
「それに島根にも」
「あちらにもですか」
「出雲にね」
「ああ、出雲大社ですね」
「あちらにも行きたいよ」
 こうトミーにお話するのでした。
「それに秋田のなまはげも見たいし仙台にも行って関東にもね」
「あちらにもですね」
「行きたいよ、横須賀とかね」
 関東のこちらにというのです。
「行きたいよ」
「ええと、横須賀は確か」
「知ってるよね」
「海上自衛隊の軍港がありますよね」
「そうだよ、海上自衛隊最大の軍港があって」
 さらにお話する先生でした。
「日本の士官学校防衛大学もあるよ」
「そうなんですね」
「だから一度ね」
「横須賀にもですね」
「行きたいね」
 こうトミーにお話するのでした。
「僕としては」
「そうですね、僕もそう言われますと」
「横須賀に行きたくなったね」
「あと横浜にも」
「同じ神奈川県だから近いよ、あと鎌倉もあるから」
 神奈川県にはというのです。
「そちらにも行けばね」
「学問にもなりますね」
「観光と一緒に楽しめるよ」
 その両方をというのです。
「だから横須賀にも行きたいよ、勿論東京にもね」
「東京は何か」
「僕はあまり縁がない感じだね」
「そうですよね、僕達も」
 トミーもでした。
「何か東京、そして関東には」
「あまり縁がないね」
「行くことは殆どないですね」
「そうだね、今のところは」
「そういえばそうかな」
 ここで動物の皆も旅行の用意をしつつ言いました。
「僕達も西の方はよく行ってるけれど」
「それでもね」
「関東については」
「あまり行ってないっていうかね」
「縁がないわね」
「どうにもね」
「今のところにしてもね」 
 先生は動物の皆にも応えました。
「確かに縁がないね」
「そうだよね」
「どうにもね」
「東京もそうだしね」
「横須賀とか横浜も」
「あまり行く機会がなくて」
 それでというのです。
「縁もないね」
「北海道は行ってもね」
「じっくり関東の何処か行ったことないね」
「そうだよね」
「こうしたことは縁が大事だからね」
 それでとです、先生は皆にお話しました。
「だからね」
「縁があったら行くことが出来て」
「逆に縁がないとどうしようもない」
「行くこともない」
「そういうことね」
「そうなるよ、まあそれでもね」
 先生は皆にさらにお話しました。
「縁は急に来たりもするから」
「それで関東の方にも行けるかも知れない」
「そうなんだね」
「先生もトミーも私達も」
「そうなるのね」
「そうだよ、まあ今は待とう」
 その縁が来ることをというのです。
「他の場所にも行きながらね」
「そうだね、今は待っていてね」
 そうしてと言ったのはホワイティでした。
「他の場所を行ったりしようね」
「まだまだ行きたい場所も多いし」
「だからね」
 チープサイドの家族は前向きでした。
「今回は和歌山ね」
「そこに行こうね」
「それでだね」
 チーチーも行ってきました。
「今度の連休もね」
「和歌山で美味しいものを食べてね」
 食いしん坊のダブダブはもうそちらに考えを向けています。
「楽しい場所にも行こうね」
「ワールドサファリとか高野山とか」
 トートーは場所のお話をしました。
「そうした場所にも行こうね」
「そう、高野山にもね」
 ポリネシアはまさにそこだとお話しました。
「先生が行きたいその場所に」
「行きたい場所に一つずつ行っていく」
「身体は一つしかないからね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「行きたい場所に一つずつ行っていこう」
「関東はまた機会があればね」
「じゃあ和歌山よ」
 今回はと言うガブガブでした。
「今回は」
「ワールドサファリに高野山」
 老馬も和歌山で行く場所のことを言います。
「特に高野山だね」
「先生が行きたいと言ってたし丁度いいよ」
 最後に言ったのはジップでした。
「これぞまさしく縁だね」
「うん、本当に縁だよ」
 まさにと言った先生でした。
「今回和歌山に行くのもね」
「じゃあその和歌山でね」
「皆で楽しみましょう」
「色々な場所に行って」
「そのうえで」 
 そしてというのでした、皆で旅支度を整えてです。この日はすぐに寝ました。先生もこの日は休肝日でした。
 次の日学校に行くとです、また研究室に王子が来て先生にこんなことを聞いてきました。
「高野山って神秘的な場所で有名だよね」
「うん、日本の中でもね」
「日本は神秘的な場所が多いけれど」
 それでもと言うトミーでした。
「その中でもね」
「高野山は空海上人が開いてね」
「日本の歴史上最高のお坊さんの一人だね」
「それで多くのことを伝えて」
 そうしてというのです。
「あの山に置いていったからね」
「それでだね」
「あの山は元々霊山だったいうし」
 このことも加わってというのです。
「日本有数の神秘的な場所、パワースポットになっているんだ」
「そうなんだね」
「それでオカルト関係の人からも関心が高くてね」
 それでというのです。
「昔から入っている人もいるよ」
「高野山にだね」
「ハウスホーファーって人は知ってるかな」
 先生は王子に尋ねました、三時なのでティータイムの時間です、今回のティータイムはイギリス風のミルクティーとクッキーにエクレア、そしてケーキの三段ティーセットです。
「この人は」
「名前からしてドイツの人かな」
 王子はこのことはわかりました。
「けれどそれ以上はね」
「知らないんだね」
「どんな人かな」
「王子の言う通りドイツの人でね」
 このことは正解でした。
「軍人、地政学者そして神秘主義者だったんだ」
「色々なことをしていた人なんだね」
「ミュンヘンの大学で教授もしていたし将官でもあってね」
「偉い人だったんだ」
「ヒトラーとも会ったらしいけれど疎遠だったみたいだね」
 この独裁者との仲はよくなかったというのです。
「生粋の軍人、軍人というより学者であったみたいだから」
「ナチスと仲の悪い軍人や学者って多かったからね」
「政権を取る前の彼とも会っていたみたいだけれど」 
 それでもというのです。
「思想は合わなかったみたいだね」
「じゃあナチスとは関係なかったんだ」
「ナチスは彼の思想に影響を受けたふしがあるけれど」
「仲はよくなかったんだ」
「そうみたいだよ」
「そんな人だったんだ」
「それでこの人もね」
「高野山に行ったことがあるんだ」
「神秘主義者でもあったからね」
 だからだというのです。
「日本には地政学から凄い興味があってその文化や宗教にも造詣が深くて」
「日本が好きだったんだ」
「感情的にかなりそうだったみたいだね」
「ふうん、面白い人みたいだね」
「今お話したけれど地政学から凄く日本に関心があってね」
 自身の学問からだったというのです。
「日本にも二度位来ていたらしいよ」
「それで高野山にもだね」
「当時は今よりずっと交通の便が悪くてもね」
 高野山に入るにも苦労しただろうにというのです。
「それでもね」
「あえて高野山に入って」
「色々と学んでいたらしいよ」
「そうなんだ、不思議な人だね」
「神秘主義者でもあったからね」
「その神秘主義からの日本に興味があったんだね」
 このことを理解した王子でした。
「普通の文化や宗教だけでなく」
「そうみたいだよ、当時そこまで日本の神秘的なものに興味を持っていた人も少なかったんだ」 
 日本以外の国の人でというのです。
「その中でだから」
「そう聞くと余計にね」
「不思議な人だって思うね」
「うん、何か日本にそして高野山に何かを見ていたんだろうね」
「僕もそう思うよ、最後もね」
 ハウスホーファーという人の死についてもお話する先生でした。
「日本刀で切腹してるし」
「ドイツ人なのに?」
「最初は毒で死ぬつもりだったらしいけれど」
 それでもというのです。
「死にきれないでね」
「日本刀で切腹したんだ」
「そう、銃でなくね」
「ドイツ人なら普通銃だよね」
 王子はこのことに余計に不思議なものを感じました。
「自殺、自決する時は」
「特に軍人ならね」
「最初の毒もそこから外れてるけれど」
「まだあるね」
「それでも日本刀はね」
「ドイツ軍人としてはかなり珍しいね」
「というかその人だけだと思うよ」
 それこそと言う王子でした。
「日本刀で切腹したなんて」
「最後まで日本に思い入れがあったんだろうね」
「そうだろうね、本当に不思議な人だね」
「そのハウスホーファーという人も来ていたんだ」
 高野山にというのです。
「そして多くのものを学んだらしいよ」
「そうした場所でもあるんだね」
「その高野山にね」
「僕達もだね」
「行ってね」
 そしてというのです。
「色々なことを学ぼうね」
「それじゃあね」 
 王子は先生のその言葉に頷きました。
「そうしようね、あとね」
「あと?」
「やっぱり先生高野山でもだよね」
 王子はエクレアを食べつつ先生に尋ねました。
「今みたいにティーセット楽しむよね」
「うん、和風でも何でもね」
 先生も王子に笑顔で答えます。
「そのつもりだよ」
「やっぱりね、先生はね」
「僕はティーセットがないと動けないんだよ」
「十時と三時のね」
「十時は軽くでね」
 そしてというのです。
「三時はね」
「しっかりとだね」
「食べないとね」
「動けないからだね」
「だから高野山でもだよ」
 勿論和歌山の他の場所でもです。
「ティータイムは摂るよ」
「そうだよね」
「そしてお茶もお菓子も楽しむよ」
 その両方をというのです。
「特にお茶をね」
「先生はいつもお茶だからね」
「特に紅茶だね」
「今も飲んでるしね」
「紅茶のない生活は考えられないよ」
 甘いミルクティーを飲みつつ言う先生でした。
「ティータイム以上にね」
「毎日絶対に飲んでるからね」
「日本に来てもね」
「朝から晩までね」
「日本のお茶を飲むことも多いけれど」
 それでもというのです。
「紅茶を飲まない日はないね」
「それが先生だよね」
「紅茶はいいよ」
 こうも言った先生でした。
「飲むと美味しいし心がすっきりしてね」
「いいんだね」
「紅茶がなくなったら」
「先生は駄目かな」
「そうなるよ、トミーや皆が淹れてくれるし」
 ここでこの日も研究室の中にいて先生と同じ時間を過ごしている動物の皆も見るのでした。今日も皆平和です。
「僕だってね」
「自分でも淹れるしね」
「そうしているからね」
 だからだというのです。
「毎日ね」
「紅茶は飲んでるね」
「飲んでそうして」
「気分もすっきりして」
「本も読んで論文も書いているんだ」
「一服にもなるしね」
「そのこともあるからね」 
 実際にというのです。
「紅茶はいいんだよ」
「特にミルクティーだね」
「そうだよ、他の紅茶も飲むけれどね」
「この前ローズティー飲んでたよね」
「あれもいいね」
 こちらの紅茶も好きな先生です。
「薔薇の香りもしてね」
「それでよく飲むんだね」
「日笠さんも好きなんだ」
「それで日笠さんともだね」
「よく誘われているよ」
「それもいいことだね」
 これまで以上に笑顔になって応える王子でした。
「じゃあ日笠さんとも一緒に飲むといいよ」
「そうしていくといいよ、僕も紅茶は好きだしね」
 王子はミルクティーをお代わりしつつ言いました。
「二杯三杯と飲んでね」
「気分をすっきりさせてね」
「この紅茶を飲んだら別荘に帰るけれど」
「別荘でもだね」
「今日は家庭教師が来るからね」
「その人からだね」
「また学問を教わって」
 そしてというのです。
「夜は剣道だよ」
「ああ、王子剣道をやってるんだ」
「王族の嗜みでね」
 それでというのです。
「フェシングだと思ったよね」
「いや、日本だとね」
「父上と母上もそう言われてね」
「剣道をしているんだ」
「そうなんだ、毎日しているよ」
「それはまた凄いね」
「面白いよ、剣道も」
 こちらの武道についてのお話もする王子でした。
「防具を着けて竹刀を振ってね」
「剣道着もだね」
「そうそう、最初に着てね」
 王子は先生に陽気にその剣道のお話をしていきます。
「それからなんだ」
「素振りもするんだ」
「しているよ」
 実際にというのです。
「毎日千本ね」
「多いね、それはまた」
「朝起きてね、ランニングもしてね」
「素振りもだね」
「しているんだ、何か神戸に凄い達人の人がいて」
 剣道のというのです。
「その人は九十位らしいけれどそのお歳でもね」
「素振り千回をなんだ」
「二千回とかね、毎朝十一キオの木刀でね」
「十一キロ、凄いね」
 このことにはびっくりして応えた先生でした。
「そんな木刀を千回二千回となんだ」
「毎朝振っているんだ」
「九十歳でなんて」
「凄いよね」
「恐ろしい人だね、本当に」
「何かある流派の免許皆伝らしいよ」
「その流派はまさか」
 ここで気付いた先生でした、それで言います。
「直新陰流かな」
「あっ、知ってるんだ」
「日本の剣道の流派の一つでね」
「そんな稽古をしているんだね」
「勝海舟さんの流派だよ」
 幕末に活躍したこの人のというのです。
「勝海舟さんはこの流派の免許皆伝だったんだ」
「じゃあ勝海舟さんは凄く強かったんだ」
「実はね」
「その人も免許皆伝らしいけれどね」
 その直新陰流のです。
「それで九十歳でもね」
「そんな人もいるんだね」
「それで僕もね」
「剣道をだね」
「やっていくよ」
「免許皆伝もかな」
「取りたいね」
 実際にというのです。
「段位だと八段かな」
「そこまでだね」
「なりたいね」
「じゃあ頑張らないとね」
「この前やっと初段になったんだ」
 そうなったというのです。
「昇段審査を受けてね」
「じゃあ次は二段だね」
「そうして身体も強くなって」
「心もだね」
「そう、剣道は己の身体だけでなく心も鍛えるものだから」
 それだけにというのです。
「心もね」
「鍛えてだね」
「強くなるよ」
 まさに心身共にというのです。
「そうなるよ」
「そうだね、じゃあその王子をね」
 先生もというのです。
「見させてもらうよ」
「心も鍛えられる僕をだね」
「是非ね、僕は本当にスポーツはしないけれど」
 勿論武道もです。
「見せてもらうよ」
「そpれじゃあね、今日もね」
「剣道もだね」
「励んで来るよ」
「学問をして汗もかいて」
「充実した一日を送っているよ」
「何よりだよ、では僕も帰ったら」
 お家にというのです。
「またね」
「学問にだね」
「励むよ」
 笑顔で言う先生でした。
「今日もね」
「そして食事にお風呂もだね」
「うん、お酒もね」
 この三つも忘れない先生でした。
「どれも楽しむよ」
「お食事とお風呂はなかったよね、イギリスでは」
「楽しむことはね」
「どっちもイギリスでは縁が薄いからね」
「食べものは食べられればいいし」
 それにというのです。
「お風呂もね」
「シャワーだけでね」
「それでも身体を洗ったらね」
「泡が着いたままでね」
「身体を拭いて終わりでね」
「素気ないよね」
「うん、けれど日本は違うからね」
 先生達が今いるこの国ではです。
「美味しいものがこれでもかとあって」
「お風呂もね」
「快適でね、お風呂に入って健康にもなったしね」
 このことからもというのです。
「新陳代謝も血の流れもよくなってね」
「そうだよね」
「このことでも健康になったよ」
 笑顔でお話する先生でした。
「本当によかったよ」
「それは何よりだね」
「そう、特にね」
「特に?」
「温泉が好きになったね」
 先生が日本で目覚めた楽しみの一つです。
「これは本当にいいよ」
「そういえば先生よくスーパー銭湯にも行くよね」
「うん、身近な温泉だよ」
「あれもイギリスにないよね」
「あそこでサウナに入って色々なお風呂に入ってね」
「身体を奇麗にしてくつろがせてだね」
「気分爽快だよ」
 そうなるというのです。
「だからいいんだ、勿論和歌山にも温泉があるよ」
「南紀白浜温泉だね」
「そこに行くよ」
 和歌山でもというのです。
「だから楽しみだね」
「何か色々と楽しみだね」
「和歌山は夏に行く人が多いけれどね」
 海に行くからです、海水浴を楽しむ為にです。
「それでもね」
「今行ってもだね」
「楽しめるからね」
 それでというのです。
「是非行こうね」
「温泉にもね」
 笑顔で応えた王子でした、そうして和歌山に行くその時を心待ちにするのでした。連休のそれをです。



今回は王子も一緒みたいだな。
美姫 「みたいね。キャンピングカーで行くのね」
さてさて、今回は何があるのかな。
美姫 「また何かと出会うのかしら」
一体どうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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