『ドリトル先生と奈良の三山』




                 第七幕  白い鹿

 先生は動物の皆と一緒に明日香村のフィールドワークを続けています、遺跡もお寺も次から次に見ていきますが。
 起伏の多い明日香村を歩いてです、動物の皆はこんなことを言いました。
「明日香村って一つの場所に集まってるけれどね」
「古墳もお寺もね」
「けれど何かな」
「昔っここは本当に都だったのってね」
「そうも思うよね」
「奈良や京都と違って」
「やっぱりああした城塞都市でもないから?」
 そのせいでかと思うのでした。
「こうしてなんだ」
「都って感じがしないんだ」
「そうなのかしら」
「うん、ここは確かに都だったけれど」
 かつてはとです、先生も皆にお話します。
「宮殿の跡はあったね」
「あそこがあってもなんだ」
「その周りに街とかはなくて」
「それで街も囲んでいなくて」
「それでなのね」
「都って感じがしないの」
「そうなの」
「うん、飛鳥時代のここもね」
 都だった時もというのです。
「お家は多くなかったみたいだよ」
「奈良や京都と違って」
「そうだったの」
「壁にも囲まれてなくて」
「宮殿の周りのお家も少なかったの」
「民の人達の」
「日本で都、首都に人が集まる様になったのは」
 それこそというのです。
「政府の力が強くなってからで」
「それが奈良時代からね」
「それでなんだ」
「飛鳥時代はまだ政府の力も弱かったから」
「前にもこうしたお話したけれど」
「政府の力が強くなってね、それで政府機能も確かになってお役人さんも増えてね」
「お役人さんの家族の人も都に住んで」
 皆で言っていきます、明日香村を歩きつつ。
「その人達にものを売る人達も集まって」
「その時にお金の価値も確かになっていって」
「それでなんだ」
「奈良時代から都に人が集まる様になって」
「飛鳥時代はまだだね」
「そうした状況じゃなかったんだ」
「そういうことなんだ、その政府が強くなってきていった時代がね」
 その時代こそはとです、先生は皆にお話しました。
「飛鳥時代だったんだよ」
「古墳時代からだね」
「奈良時代に確かに強くなって」
「それでなんだ」
「飛鳥時代は強くなろうとしている」
「その時代なんだ」
「そういうことだよ、まあ奈良とは雰囲気が全然違うけれど」
 今歩いてもわかります、明日香村は同じ奈良県にあっても奈良市とは何から何まで全く違っています。
「ここもまた都だったんだ」
「そしてその都をだね」
「こうして皆で歩いてる」
「そうして色々な場所を見て勉強している」
「私達は」
「そうだよ。明日香村を見て回るのはあと少しで」
 先生はこれからの予定のこともお話しました。
「次はね」
「三山だね」
「大和三山」
「そこを見て回るのね」
「あれは不思議な山達だから」
 本当にというのです。
「盆地の中にね」
「ぽつんとなんだ」
「一つずつあるのよね」
「先生が前にお話してたけれど」
「それも高くなくて」
「不思議な山達なの」
「本当にね」
 こう皆にお話していきます。
「あの山達は不思議な山達だよ」
「自然にそんな山出来る?」
「出来ないよね」
「普通は」
「そんな風には」
「だから何かあるってね」
 その三山達はです。
「言われているんだ」
「それでその山達のこともだね」
「論文に書くのよね」
「奈良の大仏さんに明日香村のことに」
「万葉集のこと」
「それに三山のことも」
「その予定だよ、最初は三つ書く予定だったけれど」
 その論文達をです。
「それが変わったね」
「そうよね」
「普通にそうなったわね」
「気付いたら一つ増えているね」
「論文が」
「何かね」
 少し笑って言う先生でした。
「僕はこうしたことが多いね」
「うん、論文を書く数が増えてね」
「そのジャンルもね」
「気付いたら増えて」
「そっちも書くのよね」
「論文を書くのは学者さんのお仕事だからね」
 学んでそのうえで、です。
「僕はいいことだと思うよ」
「学者さんは論文を書くものってね」
「先生今はよくそう言ってるわね」
「何かイギリスにいたときは違ったけれど」
「病院を開いていて」
「しかもあの病院人は来なかったし」
「まさに閑古鳥が鳴いていたから」
 文字通りに病院にいて鳴いていたこともあります。
「その時とは全然違って」
「教授さんだしね」
「手術もするしね」
「講義にも出て」
「そして論文も書く」
「本当に変わったね」
 先生の生活もです。
「どんどん論文を書いてね」
「こうしてその前にフィールドワークもしてるし」
「先生も変わったよ」
「いい意味でね」
「まさかこうした風になるなんて」
 先生ご自身もです。
「思いも寄らなかったよ」
「人生何があるかわからない」
「よくそう言うけれどその通りね」
「先生についてもね」
「そうなのね」
「誰でもね」
 皆でしみじみと思うのでした、その中でチープサイドの家族がふとお互いでこうしたことをお話しました。
「そもそも日本に来るとかね」
「想像もしてなかったし」
「王子があの時病院に来るまで」
「本当に」
「それがだからね」
 ガブガブはそのチープサイドの家族に応えました。
「こうして明日香村にもいるんだからね」
「それも皆で」
 ダブダブはこう言い加えました。
「そんなこと想像もしなかったわ」
「僕達はいつも先生と一緒にいるけれど」
 チーチーはそこに運命を見てはいます、ですがそれでもです。
「日本に来て日本のあちこちも回ってね」
「そんなの誰が想像するのかね」
 トートーは首を傾げさせてさえいます。
「誰もだよね」
「神様ね」
 ポリネシアは首を傾げさせるトートーに応えました。
「まさに」
「そうだね、本当に神様でないと」
 ジップも言います。
「こんなこと思いもつかないよ」
「皆で日本にいるなんて」
 老馬も言います。
「しかも先生が教授さんだからね」
「世の中何がどうなるかわからない」
「運命ってのはね」
 オシツオサレツも思うのでした。
「人や動物じゃどうなるか想像も出来ない」
「本当にそうだよね」
「しかもいつも何かが起こるし」
 最後にホワイティが言いました。
「今回もそうかな」
「ああ、そういえば今回平和だね」
「いつも何か起こるからね」
「狐さんや狸さんと会ったり」
「熊さんにね」
「沖縄では蛇さんにも会ったし」
「学校にいても」
 本当に日本に来てからはです。
「何かが起こるから」
「それで先生が動いてね」
「僕達もお供して」
「そんなのだから」
「そうだね、まあ何かが起こるのはイギリスにいた時からだね」
 先生は笑って応えました。
「僕にとって」
「そうそう、先生の人生で退屈ってないよ」
「僕達もいつも一緒だし」
「お金やお客さんがなかった時もね」
「退屈とはあまり縁がなかったから」
「アフリカに行ったり月に行ったり」
 本当に色々あった先生でした。
「郵便局とかキャラバンとかね」
「色々あったし」
「日本でもね」
「そうだね、日本にいる時は」 
 今思うとです。
「郵便局とかはしていないけれど」
「色々あるね」
「学校の中でもね」
「動物園とか水族館でもあったし」
「芸術のお話とかお相撲とか」
「桜もあったね」
 皆でこれまでのことを思い出しています、思えば退屈であったことはただの一度もなかったことです。
「何かと」
「本当にね」
「けれど今回はね」
「まだ平和ね」
「今のところは」
「いや、いつも平和だよ」
 先生は皆に笑って突っ込みを入れました。
「僕達は。じゃあ今からね」
「うん、今からね」
「次の場所に行こう」
「次は何処だったかな」
「何処に行くのかな」
「於美阿志神社だよ」
 そちらだというのです。
「十三重の塔があるね」
「ふうん、そこになんだ」
「今度はそこに行くのね」
「明日香村の主な場所は全部回ったけれど」
 それでもというのです。
「あそこはまだ行ってないから」
「そういえば僕達かなり回ったね」
「明日香村のあちこちを」
「それで最後にね」
「於美阿志神社に行くのね」
「そうするのね」
「そうだよ」
 それでというのです。
「最後に行こうね」
「うん、じゃあね」
「その神社にも行ってね」
「そしてね」
「次は大和三山ね」
「そこに行くのね」
「そうしようね」
 是非にというのでした、そしてです。
 そのうえで、です。実際に皆で於美阿志神社まで行ってそのうえで石の十三重の塔を見ました。するとです。
 ふとです、先生達に誰かが声をかけてきました。
「ドリトル先生ですね」
「あれっ、誰?」
「何か男の人みたいな女の人みたいな」
「不思議な声ね」
「何かちょっと違う?」
「普通の声と」
「そうだね」
 皆もその声を聞いて先生に言います。
「ううん、今周りは誰もいないし」
「誰の声?」
「人じゃないね」
 人が誰もいないのです。
「じゃあ誰なのかしら」
「生きものにしても」
「一体」
「はい、私です」
 こう言ってでした、そっとです。
 皆の前に一匹の白い鹿が姿を表しました。見れば奈良公園にいる鹿と同じ種類ですが全身真っ白です。
 その白い鹿がです、先生に言ってきました。
「私が声をかけさせてもらいました」
「あれっ、白い鹿さんだ」
「もう全身白いね」
「白い鹿さんってことは」
「まさか」
「うん、白い生きものは日本でも神聖とされているんだ」
 先生は皆に答えました。
「この国でもね」
「そうだよね」
「狐さんや蛇さんでもそうでね」
「お猿さんでもだね」
「そう、生物学的にはアルビノといってね」
 学問的なことからもお話します。
「色素がないんだ」
「身体にね」
「人間でもあるよね」
「元々白人がそんな感じで」
「完全なアルビノの人もいたわね」
「うん、コーカロイドは確かに色素が薄くて」
 先生もイギリス生まれで人種的にはこちらになります。もっとも今は完全に日本人の生活様式で過ごしていますが。
「肌が白くて髪の毛も金髪だったりするね」
「それが完全に色素がないと」
「それこそだね」
「兎さんみたいになるね」
「白い兎さんみたいに」
「そう、髪の毛も僕達の金髪よりももっと薄い金髪になって」
 そしてというのです。
「目も赤くなるんだ」
「それが完全なアルビノだね」
「人間にもあって」
「そうした人もいるんだ」
「そう、ただ色が白いだけでね」
 あくまで色素がないだけでというのです。
「そのせいで日光には弱かったりするけれど」
「それ以外にはだね」
「他の人や生きものと変わらない」
「そうなのね」
「そうだよ」
 その通りというのです。
「そのこともわかっておいてね」
「うん、わかったよ」
「アルビノはそうしたものだね」
「生物学的には」
「そうしたものなんだ」
「うん、ただ神聖視されているのは事実で」
 それでというのです。
「ご神体として崇められていて霊力が備わることもね」
「あるんだ」
「そうなんだ」
「じゃあこの鹿さんもかな」
「霊力が備わってるの?」
「ひょっとして」
「私は千年以上生きています」
 白鹿が先生達に言ってきました。
「聖徳太子ともお会いしたことがあります」
「そうだったんだ」
「奈良の鹿達の神の使いです」
 その立場もお話するのでした。
「千数百年生きていてです」
「そうしてだね」
「今の役職を務めさせてもらっています」
「そうした鹿さんだったんだ」
「はい、そしてです」
 そのうえでというのです。
「この役職は聖徳太子に任じてもらいまして」
「そうしてなんだ」
「そうです、そのうえで」
 まさにというのです。
「先生にお話があって参りました」
「僕に?」
「先生のお名前は聞いています」
 あらゆる生きもの達の友達である先生のことはというのです。
「私も、そして先生は今学問で奈良に来られていますね」
「うん、そうだよ」
「奈良の古都にこの明日香の古都も参られて」
「そして三山も行くつもりだよ」
「そうですね、その三山ですが」
「何かあるのかな」
「学ばれて先生が思われたことをお話して頂けますか」
 こう先生に言うのでした。
「そうして頂けますか」
「君にかな」
「私にです」
 そしてというのです。
「世の中にもです」
「論文に書いてだね」
「出して頂けますか」
「最初からそうするつもりだったけれど」
「是非です」
 それをというのです。
「お願いします」
「またどうしてそう言うのかな」
「実は私も他の神の使い達もあの三山のことはわかっていないのです」
「そうなんだ」
「はい、古墳ではないかと話していますが」
 それでもというのです。
「どうも昔のことなので」
「君が生まれる前なんだ」
「その頃には既にありました」
 あの三山はというのです。
「太子はご存知だったかも知れないですが」
「それでもだね」
「私達もです」
 神の使いである白鹿も他の神の使い達もというのです。
「わかっていないのです」
「それで僕にだね」
「一つ説を出して欲しいのです」
「そうなんだ、ただ」
「ただ?」
「それが正解とは限らないよ」
 先生は白鹿にお話しました。
「あくまで僕の説で」
「そうですね」
「僕もそれが正しいかどうかわからないよ」
 自分で説を出してもです。
「絶対とはね」
「そうですね、ですが」
「色々な説を出して」
「それを見ていってです」 
 そしてというのです。
「わかるかも知れないので」
「だからなんだ」
「先生にお願いしたいのです」
「それで僕にお話をしに来たんだ」
「左様です」
 まさにというのです。
「そうしてきました」
「成程ね、わかったよ」
「宜しくお願いします」
 また先生にお話した白鹿でした。
「そのことを」
「それじゃあね、あとね」
「あととは」
「君は神様の使いと言ったよね」
「はい、先程」
「日本には神様が多いから」
 だからだというのです。
「どの神様かわからないね」
「そういえば日本って神様多いね」
「そうだよね」
「八百万って言うだけにね」
「物凄い数の神様いるよね」
「人も神様になるし」
「どんどん増えていってるし」
 動物の皆も言います。
「一体ね」
「どれだけいるのか」
「ちょっとわからないね」
「そうよね」
「うん、鹿だから春日大社かなと思ったけれど」
 それでもというのです。
「そうとも限らないし」
「はい、私は言うならば大和つまり奈良に座されている神々のです」
「使いなんだ」
「そうなります」
「特に決まっていないんだ」
「そうです、どの神とは」
 そうした立場だというのです。
「奈良の外の神々とは関係がなく」
「あくまで奈良におわすだね」
「神々の使いなのです」
「そして君以外にもだね」
「そうした霊獣はいます」
 そうだというのです。
「奈良、そして日本の各国に」
「都道府県になっても」
「そうです」
 先生に確かな声で答えます、その中性的な声で。
「今も尚です」
「日本の八百万の神々がいて」
「私達もいるのです」
「それが日本だね」
「はい、ただ十月になりますと」
 白鹿はこの月のこともです、先生にお話しました。
「私達は奈良を去る者と留守番の者に分かれます」
「神無月だからだね」
「その時日の本の神々は出雲に集まります」
「島根県にだね」
「ですから私達も奈良の神々にお供をする者とです」
「留守を守る者が出るんだね」
「そうなっています、あと御仏の方々とは」
 仏教の方とはです。
「いつもよくしてもらっています」
「仲がいいんだね」
「非常に」
 そうだというのです。
「そうしています」
「日本の信仰がそのまま表れているね」
「そうなっていますね」
「実際に」
「はい、そして私は飛鳥時代から生きていますが」
 千数百年生きているというのです、神の使いとして。
「その頃にはもう皇室はありました」
「聖徳太子もおられて」
「皇室は私達よりも前からです」
「存在しているんだね」
「本当にどれだけ存在しているか」
 それがというのです。
「わからないのです」
「二千六百年以上というけれどね」
「非常に長い歴史を持っています」
「君が生まれる前からだからね」
「はい、そして皇室は神道にも仏教にもです」
 そのどちらの宗教にもというのです。
「非常に関わりが深いですが先生は」
「うん、知ってるよ」
 先生は微笑んで白鹿に答えました。
「日本の歴史や宗教も学んできているからね」
「文学もですね」
「そうだよ。三山を観るのもね」
「文学の学問ですね」
「万葉集のね」
「あの歌集ですね」
 白鹿も知っているものでした。
「あの歌集の論文も書かれて」
「そしてね」
「今回ですね」
「その三山のことも書くよ、それはね」
「最初からですね」
「そのつもりだったからね」
「それでは」
「うん、ただ君達もあの三山のことは知らないんだ」
「神々も実は」
 白鹿が仕えている彼等もというのです。
「ご存知ないのです」
「あれっ、そうなんだ」
「はい、遠い昔のことなので」
 それでというのです。
「忘れておられるのです」
「あれっ、神様なのに?」
「忘れたりするの?」
「神様だったら覚えてるんじゃ」
「そうよね」
「日本の神様は違うの」
「日本の神々は人とあまり変わらない部分も多くて」
 白鹿が自分のお話にいぶかしんだ皆にお話しました。
「それでなのよ」
「ううん、人間臭いっていうか」
「何かね」
「ギリシアや北欧の神様以上にね」
「日本の神様って人間臭いわね」
「昔のことを忘れるところも」
「どうも」
「古事記や日本書紀に書かれていないと」
 記録に残っていないと、というのです。
「もうね」
「簡単になのね」
「忘れてしまう」
「そうなの」
「そう、実際にね」
 本当にというのです。
「日本の神様達は忘れてしまうの」
「それで三山のことも」
「もう忘れたの」
「何時出来てどんなものか」
「全く」
「ご存知の神様はいないわ」
 奈良にはというのです。
「本当に聖徳太子の様な方ならご存知だったでしょうけれど」
「あの人は特別だったみたいだしね」
 先生が聖徳太子についてお話しました。
「前世のことも覚えていて予知能力もあったというし」
「はい、まさに超人神人と言うべき方で」
「それでだね」
「あの山達のこともご存知だったでしょうが」
 それでもというのです。
「あの方も亡くなられてです」
「千数百年だからね」
「ですから」
 それでというのです。
「今はもうです」
「神々もだね」
「御仏の方々は後から入ってこられましたし」
 その飛鳥時代にです。
「ご存知ないです」
「本当に誰も知らないんだね」
「そうなのです」
「ううん、何かとんでもなくスケールが大きいというか昔というか」
「そうしたお話ですね」
「そう思ったよ」
 白鹿とお話をして聞いていてです。
「実際にね」
「奈良ではこうしたお話もです」
「あるんだね」
「はい」
 あるというのです。
「これが。そして日本では」
「あるんだね」
「神々も忘れます」
 昔のことをです。
「しかもあの頃から神々はさらに増えています」
「死んだ人も神社に祀られてね」
「まさか豊臣秀吉さんが神様になって」
 白鹿はあの天下人のお名前も出しました。
「出雲でお会いするとは」
「思わなかったんだね」
「神様になってもひょうきんで気さくな方です」
「面白い人なんだね」
「そうなのです」
「あの人も神社に祀られているしね」
「他の方々も。明治帝になりますと」
「凄い威厳かな」
「最早神々の中の神々といいますか」
 そこまでの方だというのです。
「お会いして思わず平伏してしまいました」
「そこまでの方なんだ」
「昭和帝もでした」
「ああ、前の」
「はい、今やあの方もです」
「神様になっているんだね」
「八百万の神々の中の」
 まさにというのです。
「そうなっておられます」
「ううん、実際になんだね」
「日本じゃ神様がどんどん増えていて」
「今もそうでね」
 動物の皆もお話します。
「そしてね」
「天皇陛下もだね」
「神様になられるの」
「そうなんだ」
「はい、祀られていますから」
 だからとです、白鹿は皆にもお話しました。
「神様になられるのです」
「そうなんだ」
「それで白鹿さんはどちらの方にもお会いしたんだ」
「島根の方で」
「出雲で」
「そうです、出雲大社の方に集まって」 
 そしてというのです。
「その時にお会いしました」
「ううん、凄いね」
「日本ならではだね」
「我が国は神々においてはかなり独特で」
 そしてとです、またお話する白鹿でした。
「こうした風になっているのです」
「日本の神道はね」
 実際にとです、先生も言います。
「学びがいがあるよ」
「他国から来られた学者さんもですね」
「うん、とてもね」
 実際にというのです。
「かなり難しいけれどね」
「難しいですか」
「神様が多くて名前も複雑でね」
「そのせいで、ですか」
「その話の背景にあるものも色々あってね」
 それでというのです。
「とても学びにくいよ」
「そうなのですね」
「神道も日本の神話もね」
 そのどちらもというのです。
「まるで迷路だよ」
「迷路ですか」
「そうも思うよ。けれどね」
「迷路というまでに難しいからこそですね」
「学びがいがあってね」
 そしてというのです。
「面白いよ」
「左様ですか」
「うん、ただね」
「それでもですね」
「難しいことは確かだね」
 このことはどうしてもというのです、先生は苦笑いでお話しました。
「その難しさの前に中々進めないよ」
「私は特に」
「思っていないんだ」
「そうです」
 白鹿にしてみればです。
「古事記や日本書紀、他の文献に出ることは大抵頭に入っていまして」
「千数百年の間に」
「奈良の神々にお仕えしている間に」
「そうなんだね」
「はい、ですから私は」
「特にだね」
「難しいと思いません、それでなのですが」
「三山のことだね」
「宜しくお願いします」
「わかったよ」
「私は奈良の何処でも出られるので」
 それでというのです。
「何時でもお呼び下さい」
「それでは」
「はい、その様に」
 こうお話してです、先生達は一旦白鹿と別れました。そうしてホテルに戻りに道を歩くのですがここで。
 動物の皆がしみじみとした口調でこんなことを言いました。
「やっぱり何か起こったね」
「そうだね」
「先生がお外に行くと大抵こうなるね」
「そして今回も」
「その時になったね」
「うん、僕はね」
 先生ご自身も言います。
「こうしたことが多いね」
「そうだよね」
「神戸にいてもそうだしね」
「お静さんともお会いしたしね」
「本当に何かとあって」
「色々忙しいよね」
「学問以外のことでもね」
 まさにというのです、先生ご自身も。
「そうだね、けれどね」
「三山についてはだね」
「最初から考えている通りにね」
「見て調べて」
「そして論文を書く」
「そうするのね」
「そうするよ」
 先生もこう答えます。
「これからね」
「うん、頑張ってね」
「そうしてね」
「何かと大変だけれど」
「それでもね」
「楽しくね」 
 先生にとって学問はお仕事ですが同時にこの上なく楽しいものです、それで皆にもこう言ったのです。
「やっていくよ」
「うん、じゃあね」
「頑張ってね」
「僕達も傍にいるし」
「僕達でよかったら助けさせてもらうよ」
「それじゃあね」
 こう応えてそしてでした、先生達は宿舎にしているあの奈良市のホテルに戻る為に明日香駅から電車で奈良に戻りました。そうしてこの日もゆっくりと休みました。



白鹿が登場。
美姫 「ただの鹿ではなかったようね」
だな。神の使いとは。
美姫 「先生はお願いされたわね」
凄いな。
美姫 「本当よね」
是非とも頑張って欲しいな。
美姫 「ええ。どうなるのか、次回も待っていますね」
ではでは。



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