『ドリトル先生と奈良の三山



               第六幕  飛鳥の古墳

 先生達は今は一緒にお昼を食べています、今日のお昼はお素麺と西瓜ですがそのお素麺を食べながらです。
 動物の皆はこんなことを言いました。
「日本の夏はお素麺だよね」
「やっぱりお素麺がないとね」
「何か日本の夏って感じしないよね」
「西瓜もね」
「そうだね、この二つがないとね」
 どうしてもと言う先生でした、先生も皆と同じ考えでした。
「日本の夏じゃないよね」
「そうそう、どうもね」
「日本の夏っていうとね」
「お素麺と西瓜」
「この二つだよね」
「他にも色々とあるけれど」
 日本の夏といえばです。
「お魚だと鱧や鰻だね」
「どっちもいいよね」
「確かにね」
「あと果物だった葡萄ね」
「それに桃」
「お野菜だったら胡瓜ね」
「そうしたのよね」 
 皆こぞって言います、そして。
 皆はお素麺についてです、こう言いました。
「このお素麺がまた美味しいよね」
「奈良のお素麺よね」
「確か三輪素麺で」
「奈良の桜井の方で作ってる」
「そのお素麺よね」
「そう、三輪素麺だよ」
 まさにと答えた先生でした。
「このお素麺はね」
「そうだよね」
「奈良名物の一つだね」
「そのお素麺だね」
「他のお素麺とは違うわ」
「いい感じよね」
「そう、美味しいね」
 先生もにこにことして食べています、よく冷えたお素麺をおつゆの中に漬けてからすぐに食べて言います。
「あっさりしていて喉越しもよくて」
「そうそう、それでね」
「何かもうどんどん食べられて」
「癖になりそう」
「いや、実際になってるし」
「何か幾らでも食べられそうよ」
「いや、幾らでも食べられてもね」
 ここで笑ってお話した先生でした。
「まだあるよ」
「まだ?」
「まだっていうと?」
「何かあるの?」
「うん、西瓜があるじゃない」
 先生は奇麗に切られてお素麺と同じ卓の上に置かれているそちらも見ました。赤いその色がとても食欲をそそります。
「これがね」
「幾ら食べられる感じでも」
「実際は限度があるし」
「その分を考えて食べる」
「そうしないと駄目なの」
「やっぱり」
「そう、何でも限度があって」
 そしてというのです。
「食べることにもね」
「やっぱり限度があって」
「それでだね」
「西瓜を食べる分も考えないといけない」
「そういうことだね」
「そうだよ、西瓜も楽しもうね」
 お素麺だけでなくこちらもというのです、こうお話してでした。
 皆は実際にです、お素麺を食べてでした。
 そうして西瓜も食べます、その西瓜もです。
「ううん、こっちもね」
「奈良の西瓜もいいね」
「こっちは郡山の西瓜?」
「奈良市の隣にある街よね」
「そうだね、郡山は昔から金魚と西瓜が有名でね」
 先生は郡山のお話もします。
「この西瓜もね」
「美味しくてだね」
「奈良の名物の一つなのね」
「そうなのね」
「奈良盆地はお水がよくてね」 
 このことは昔から定評があることもです、先生はご存知です。
「そのせいでね」
「西瓜も美味しいんだ」
「英語でウォーターメロンっていうしね」
「殆ど全部がお水だし」
「それならね」
「畑のある場所のお水がいいと」
「味もよくなるわね」
 皆もこうお話します。
「本当にね」
「それでね」
「だから奈良の西瓜は美味しいのね」
「郡山の西瓜も」
「そうなんだ、日本はお水がいいけれど」
 先生はここでイギリスのことを思い出しました、先生のお国を。
「硬水じゃなくてね」
「というかイギリスでお素麺ってね」
「西瓜もね」
「何か違うわよね」
「想像も出来ないわ」
「ロンドンでお素麺とか」
 こう言ったのはガブガブでした。
「もう想像も出来ないよ」
「建物も気候も合わないわね」
 ダブダブも言います。
「どう考えてもね」
「そうだね、イギリスの何処でもね」
 チーチーも二匹と同じ意見でした。
「西瓜はともかくお素麺は合いそうにもないね」
「イギリスのお庭でこのお素麺を食べる」
 ジップは少し想像してみました。
「何かが違うね」
「というかイギリスでお素麺を作っても」
 トートーはこの場合について考えてみました。
「お水の関係でこんな味にはならないよね」
「絶対に違う味になるわね」
 ポリネシアも思うことでした。
「この三輪素麺とはね」
「若し同じ作り方で同じ食材でも」
 ホワイティも考えてみました。
「やっぱり違ってくるね」
「特にお水だね」
「そうね」
 チープサイドの家族もよくわかりました。
「このお素麺を入れているお水も美味しいし」
「イギリスのお水と全然違う感じで」
「硬水ってどうしても違うんだよね」 
 老馬はイギリスでいつも飲んでいて浴びていたお水の感覚を思い出しています、それが一体どういったものか。
「こうした軟水と」
「そうそう、飲んでも毛に感じる感触も」
「硬いんだよね」
 最後にオシツオサレツが言います。
「どうにもね」
「チョークが入っていてね」
「そこが違うんだよ」
 先生も実際にとお話します。
「イギリスで西瓜を作ってもね」
「こうした味にはならないのね」
「奈良で作るからこうした味になるんだね」
「お素麺も西瓜も」
「どちらも」
「そうだね、あとね」
 ここで先生はお素麺のおつゆの中の薬味や香辛料も見てお話しました。
「おつゆの中に梅やお葱が生姜を入れるとね」
「そうそう、違うね」
「もうね」
「味がさらによくなるわ」
「ぐんとね」
「僕は梅や生姜を入れているけれど」
 見れば先生のおつゆの中にはそうしたものが入っています。
「これがまたね」
「いいよね」
「味がもうさらに際立って」
「抜群に美味しくて」
「そのこともあってね」
「幾らでも食べられるのよね」
「全くだね、特に梅はね」
 この果物をお漬けものにしたものはといいますと。
「いいよね」
「全くだね」
「魔法みたいに食欲がそそられて」
「それでね」
「かなり美味しくなって」
「夏バテにもいいかも」
「そう、梅は実際にね」 
 これはというのです。
「夏バテにもいいんだ」
「今みたいに食欲がそそられて」
「それで栄養もあるし」
「疲れも執れるし」
「いいのね」
「そうだよ、だから夏は梅をどんどん食べるべきなんだ」
 日本の夏ではというのです。
「そうすればね」
「夏バテしないんだね」
「日本の夏は夏バテしやすいけれど」
「それでも」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「夏は梅を食べて食欲をさらに出して」
「他の身体にいいものを食べていく」
「それがいいのね」
「何といっても」
「そうなのね」
「そうだよ、まあ僕達は夏バテはあまり関係ないけれど」
 先生も動物の皆もそうしたことはありません、何時てでも美味しいものをお腹一杯食べることが出来ます。
「夏バテしそうならね」
「梅だね」
「梅を食べるといいんだね」
「何といっても」
「そうだよ、それとね」
 そしてというのです。
「他には生姜もいいしね」
「そうだね、生姜もね」
「生姜も身体にいいのよね」
「それで食欲も出してくれるし」
「いいんだよね」
「美味しく健康的に食べて」
 そうしてというのです。
「夏を楽しく過ごそう」
「この明日香村でもね」
「そうして元気に回っていってね」
「観ていこうね」
「そうしようね」
 先生は皆に笑顔でお話してそしてでした。
 お素麺と西瓜を食べたその後でまた明日香村を観て回るのでした、今は古墳達を観て回るのですが。
 その古墳の中にあった埴輪についてです、動物の皆は思うのでした。今は実際にその目で見てはいませんが。
「いや、何かね」
「どうにもよね」
「独特の形で」
「それが愛嬌があって」
「お顔もね」
「どっちもね」
「そうだね、埴輪を見ているとね」
 先生も言います、今は石舞台を観ています。これまた昔の日本を思わせる独特のものでした。
「何処か心が和むよね」
「あれ不思議だよね」
「人のものも馬のものもね」
「ブローチみたいで」
「土偶も土偶で味があるし」
「日本のそうした遺跡も面白いわね」
「そう、ああしたものもね」
 その土偶や埴輪もというのです。
「人気があるんだよ」
「そうだよね」
「それも世界的にね」
「歴史的だけでなくデザイン的にも評価されていて」
「いいんだよね」
「そうだね、何かね」
 また言う先生でした。
「あのデザインは僕も好きで」
「今度持ってみる?」
「そしてみる?」
「そこまではいいよ」
 ここでまた先生の無欲さが出ました。
「確かに歴史的価値はあるけれど」
「先生ご自身が持つことがだね」
「あまりよくないって思ってるんだ」
「そうなの」
「そうなんだ、どうもね」
 こう皆にお話する先生でした。
「僕個人が持つよりもね」
「皆だね」
「つまり博物館とか資料館が持つべきだね」
「そうした方がね」
「やっぱりいいっていうのね」
「僕としてはね、だから発掘してもね」
 遺跡調査の時もです、先生はそちらを行うこともあります。
「僕個人で持つよりもね」
「皆で持つ方がいい」
「そして皆が観る方がいい」
「それでだね」
「博物館とか資料館に渡すんだね」
「発掘しても」
「丁度うちの学園には博物館があるからね」
 八条学園の中にです、それもかなり立派な博物館です。
「丁度いいね」
「そうだね、確かにね」
「あそこの博物館なら丁度いいわ」
「歴史資料も一杯あるし」
「その中に入れてもね」
「いいわね
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕はそうするよ、勿論埴輪や土偶以外のものもね」
「そうしたものもだね」
「そこも先生らしいね」
「この場合の無欲はいいかな」
「そうだよね」
「発掘したものは皆で」
 そうすると、というのです。
「皆で観て学ぶべき」
「そうあるべきなのね」
「うん、そういえばイギリスにいた時には」
 先生はまたこの時のことを思い出しました、もう先生にとってはかなり昔に思える日々です。
「大英博物館にも行ったね」
「ロンドンに行くと絶対にね」
「あそこに行ってたわね」
「それで色々なものも観ていたね」
「あの博物館の中にあるものを」
「あそこにも埴輪があったね」
 その大英博物館にもです。
「あれを見て日本にはこうしたものもあったんだってね」
「思ったんだね」
「江戸時代や今の日本だけじゃなくて」
「そうした日本もあるって」
「そう思ったのね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「僕もね」
「そうだったんだ」
「それで日本に住む様になったら」
「その埴輪もかなり見られて」
「そのことも嬉しいのね」
「そうだよ、土偶もね」
 こちらもというのです。
「いいね」
「そうだよね」
「さっきもお話したけれど愛嬌があってね」
「妙に可愛くて」
「本当にブローチみたいで」
「若し先生が日笠さんにプレゼントしたら」
「あっ、それいいね」
 ふと出た言葉に皆が飛びつきました。
「お土産の埴輪とかね」
「造ってあるそれをね」
「日笠さんに贈ったらね」
「かなりいいね」
「そうだね、じゃあ日笠さんに」
 先生は皆のお話を聞いてすぐに言いました。
「トミーに王子にそれにお静さんだけにね」
「いや、トミー達には別に」
「いいと思うけれど」
「日笠さんだけにね」
「お土産ならね」
「そうなのかな、僕としてはね」
 公平な先生としてはです。
「是非ね」
「だからそうじゃなくてね」
「皆に贈るんじゃないの、こうした時は」
「日笠さんだけでいいの」
「勿論トミ―達にもお土産は必要だけれど」
「贈るべきよ」
「けれどこうした時は」
 どうしてもというのです。
「やっぱりね」
「考えて贈るべきでね」
「日笠さんにだけ贈るものがあっていいの」
「ここ物凄く重要だから」
「いや、贔屓したりは絶対に駄目だよ」
 こうした時も公平な先生なのですがわかっていないといけないことはわかってはいません。
「皆も贔屓は嫌だよね」
「まあそれはね」
「僕達も先生が誰かを贔屓にするの観たくないよ」
「それで僕達が邪険にされるのも」
「僕達の誰かが贔屓されても」
「そういうのは嫌だよ」
「そうだよね、僕は贔屓はよくないと思っているよ」
 このことは絶対にです。
「贔屓も差別も正しい行いじゃないよ」
「そうだね、ただね」
「この場合は贔屓じゃないの」
「その辺りトミーも王子もわかるから」
「特にお静さんはね」
「だからいいのよ」
「そうなのかな」
 何もわかっていないまま応えた先生でした。
「やっぱり公平に、それに礼儀としてね」
「だからそういうのじゃないの」
「そういうのとは別のお話だから」
「テキストは万葉集よ」
「この場合はね」
「何でそこで万葉集が出るのかな」
 先生は石舞台を観つつ首を傾げさせました。
「一体」
「いや、それはね」
「誰でもわかるち思うよ」
「普通にね」
「それでね」
「いや、わからないよ」
 先生の返事は皆が予想した通りでした、ですが。
 まあ今はこれ以上お話することは止めてと思ってです。先生にあらためて言ったのでした。
「とにかく埴輪買おうね」
「日笠さんにね」
「他の人には買わないで」
「そうしようね」
「何かよくわからないけれど皆がそこまで言うなら」
 それならと返した先生でした。
「それじゃあね」
「そう、頼むよ」
「このことはね」
「僕達も応援してるから」
「絶対にだよ」
「その応援の理由もわからないけれど」
 こうしたことは学問と違って全くわからない先生です。
「皆がそこまで言うなら」
「そうしてね」
「このこと大事だから」
「じゃあ頑張ってね」
「埴輪忘れたら駄目だよ」
 こう言ってです、皆は先生に埴輪を買ってそれを日笠さんに贈りものをすることを約束してもらいました。
 そしてです、こう言ったのでした。
「次の場所行こう」
「それで次は何処に行くの?」
「卿は古墳を観て回るっていうけれど」
「それでもね」
「何処に行くのかな」
「高松塚古墳だよ」
 そこだと答えた先生でした。
「そこに行こう」
「あそこも有名らしいね」
「飛鳥時代の重要な歴史資料の一つだっていうね」
「明日香の他の場所と一緒で」
「そうだよね」
「うん、そうだよ」
 その通りだというのです。
「じゃあ行こうね」
「うん、そこにね」
「今度は高松塚古墳ね」
「明日香村って古墳も多くてね」
「観て回れるね」
「それも楽しいよね」
「ええ、本当にね」
 こう言って実際にです、先生は皆と一緒に高松塚古墳に向かいました。そうして古墳の中に入るとです。 
 昔の、まさに飛鳥時代の絵画があってです。その絵はといいますと。
「奈良時代の絵みたいだけれど」
「もっと古い話ね」
「昔の中国の服ね」
「奈良時代の日本の服と同じね」
「そう、この頃から日本は中国の政治システムを取り入れてね」 
 そしてというのです。
「官吏や貴族の人達の服装もね」
「当時の中国のものになっていたんだ」
「隋とか唐の」
「その服を着ていて」
「それでだね」
「この絵でもだね」
「そうした人達が描かれていたんだ」
 まさにというのです。
「そのこともわかるんだ」
「成程ね」
「そうなったんだね」
「いや、面白いね」
「そうしたこともわかるなんてね」
「そうだね、後ね」
 さらにお話した先生でした。
「絵には人達だけが描かれていないね」
「うん、生きものも描かれているね」
「ちゃんとね」
「四方にね」
「確かこの生きもの達は」
「青龍、白虎、朱雀、玄武だよ」
 先生はその生きもの達の名前も出しました。
「これも中国から来たんだ」
「ええと、五行思想?」
「先生前そのお話もしてたわよね」
「そうよね」
「中国の東西南北や色、景色、自然のものを司る」
「そうした生きもの達よね」
「神獣だったわね」
 動物の皆もこの生きもの達のことは先生からお話を聞いて知っています、先生は中国のことにも詳しいのです。
 そしてまずはその青龍を観ました、生きもの達の大きさは一緒に描かれている人達と同じ位です。
「この青龍はね」
「確か東で」
「色は青で」
 見れば身体の色は実際に青いです。
「季節は春、木を司っているのね」
「それに白虎は」
 次はこの生きものでした、文字通り白い虎です。
「西でね」
「色は白でね」
「季節は秋だったわね、金を司っていて」
「そして朱雀は」
 赤い鳥です。
「色は赤で」
「それで季節は夏でね」
「方角は南」
「火を司っていたわね」
「最後の玄武は」
 黒い亀にこれまた黒い蛇が絡まっています。
「色は黒」
「冬を司っていてね」
「水だったわね、北で」
「うん、皆正解だよ」
 その通りだと答えた先生でした。
「彼等は四霊獣といってね」
「それでだね」
「それぞれの方角を司って守っている」
「そうしてるのね」
「そうだよ、だからここにも描かれているんだ」
 実際にというのです。
「この通りね」
「そうなのね、けれど」
「うん、四方は描かれているけれどね」
「それでもね」
「真ん中は?」
「真ん中描かれてないよね」
「そういえばそうね」
 皆このことに気付きました、それでです。
 ここでチープサイドの家族が首を傾げさせてそうして言いました。
「真ん中何がいるのかな」
「ここでは描かれてないわね」
 このことを言うのでした。
「何故かね」
「そうよね」
「誰もいないってことはないよね」
 ジップはこう考えました。
「やっぱり」
「それはないわよ」
 ダブダブはそのジップに応えて言いました。
「四方にいて真ん中だけっていうのは」
「色もだよね」
 ガブガブも言います。
「真ん中だけ無色とか」
「東西南北中央はね」
 ポリネシアは古墳の絵に囲まれている自分達を観ました、そうして自分のこととして実感しつつ言うのでした。
「絶対にあるからね」
「そう、じゃあ真ん中は何かな」
 チーチーはまさにという感じでした。
「色や司るもの、季節とかね」
「生きものも気になるね」
 トートーも言います。
「誰なのかな」
「前に先生がお話してたと思うけれど」
 老馬は首を傾げさせるばかりでした。
「思い出せないね」
「ううん、何かね」
「結構な生きものだったよね」
 オシツオサレツは思い出そうと努力しつつ言いました。
「四霊獣と同じ位」
「凄い神獣だったね」
「何だったかな」
 最後に言ったのはホワイティでした。
「一体」
「うん、中央は皇帝とされているんだ」
 先生はその皆にお話しました。
「五行思想だから真ん中も入っていてね」
「やっぱりね」
「そうなるね」
「じゃあ真ん中に皇帝がいて」
「四方に四霊獣がいるのね」
「そうだよ、生きものだと麒麟か中蛇で」
 先生はさらにお話しました。
「色は黄色、司るのは土でね」
「へえ、そうなの」
「真ん中はそうなるんだ」
「黄色で土」
「そうした生きもので」
「そう、それとね」
 さらにというのです。
「季節は土用だよ」
「ああ、季節の変わり目ね」
「ちゃんと季節もあるのね」
「だから変わり目を土用っていうんだ」
「そうだったの」
「そうだよ、それとね」
 さらにお話する先生でした。
「面白いことがあって」
「面白いこと?」
「っていうと?」
「それは何?」
「一体」
「うん、後ね」 
 こうもお話したのでした。
「皆麒麟は知ってるよね」
「うん、物凄く偉大な神獣だよね」
「滅多に出ないっていう」
「出たらそれだけ吉兆っていう」
「そんな生きものよね」
「そう、この生きものが出た時に生まれた人は麒麟児と言われるんだ」
 このお話もするのでした。
「稀に見る天才ってことでね」
「そこまで凄いのね」
「麒麟って」
「真ん中にいるだけに」
「それだけに」
「そうだよ、それとね」
 先生のお話は続きます。
「皇帝がいるともお話したね」
「うん、中央にね」
「日本だと天皇陛下ね」
「帝がおられるのね」
「そうした場所ね」
「そう、平安京つまり京都の造りはね」
 先生達も行っているその街もです。
「周りに四霊獣がいてね」
「それでなんだ」
「中央に京都があって」
「そこに帝もおられる」
「四霊獣達に護られて」
「そうしたんだね」
「そう、北の山が玄武ね」
 その京都のお話をここ明日香村でするのでした。
「南の川が朱雀でね」
「そうなっていて」
「それでなの」
「東の道が青龍で」
 そちらはそうなっているというのです。
「西の平野が白虎だよ」
「つまり北に山、南に川、東に道、西に平野」
「その中央になのね」
「都を置いて帝がおられる」
「それがいい場所なのね」
「そう言われていてね」
 それでというのです。
「京都に都が築かれたんだ」
「成程ね」
「だからあそこに都があったの」
「五行思想で最高だから」
「それでなの」
「そうだよ、後ね」
 さらにお話する先生でした。
「これは東京もだよ」
「あそこもなんだ」
「つまり江戸だね」
「あそこも五行思想としていいの」
「そうなの」
「そうだよ、南の川は海だけれどね」
 それでもというのです。
「水ってことでよくてね」
「それでなんだ」
「五行思想がしっかりしているから」
「徳川幕府はあそこに入ったんだ」
「そうだったの」
「たまたま豊臣秀吉さんにあそこを拠点にって命じられて移ったんだ」
 徳川家康さんがです。
「そうしたらね」
「五行思想から見てかなりよくて」
「それでなの」
「今に至るまで栄えている」
「そうなのね」
「うん、これまで何度も火事や地震に遭ったけれど」
 江戸という町が出来てです、そうした大災害が何度も起こってそうしてとんでもないことにもなっています。
 しかしです、それでもなのです。
「その都度復興していて今は首都なのもね」
「五行思想としていいから」
「京都と同じで状況的にいいから」
「それでなのね」
「幕府もあそこから長い間栄えたのね」
「財政的にはいつも困っていてもね」
 徳川幕府はそこは困っていたというのです。
「それでも二百年以上平和でしっかりと治めていたね」
「うん、二百年以上だからね」
「戦争がなくて平和だったってね」
「凄いよね」
「そうよね」
「それが出来たのも」
「平安時代も戦争が少なかったけれど」
 関東や東北では乱が起こっていてもです。
「それでもね」
「江戸時代は特によね」
「暴政も殆どなくて」
「残虐な刑罰もなかったし」
「災害があったにしても」
 それでもだったというのです。
「それでもね」
「物凄く安定した時代だったから」
「平和で賑やかな」
「そうした時代になったのも」
「五行思想的によかったから」
「そうも言われているのね」
「うん、あそこは他にもお寺や神社を結界として沢山置いているしね」 
 このこともあってというのです。
「京都も同じだけれど」
「そういえば比叡山は京都を鬼から護る為よね」
「あと高野山も」
「鬼が入って出る方角だから」
「出入り出来ない様にしている」
「そうなのね」
「その通りだよ」
 まさにというのです。
「京都もそうでね」
「東京もそうなのね」
「そうした結界としてお寺や神社もあって」
「長い間栄えている」
「そうなのね」
「五行思想とか神仏の考えではね」
 それが先生のお話でした。
「そしてその根幹がね」
「四霊獣なのね」
「そうなのね」
「この絵に描かれている」
「そうなのね」
「そうなんだ、この絵画がね」
 その絵画自体のお話もします。
「古墳の中にあったんだ」
「高松塚古墳の中に」
「そうだったのね」
「この古墳の中に描かれていて」
「私達も観てるのね」
「今こうして」
「そうなんだ、貴重な歴史資料だよ」
 この絵画はというのです。
「本当にね、それとね」
「それと?」
「それとっていうと」
「かなり古い絵だね」
 だからというのです。
「それで修理もしているんだ」
「ふうん、そうなの」
「やっぱり古いとなのね」
「修理もしないといけない」
「そのことも大事だね」
「だからかなりの予算と時間をかけてね」
 その両方をというのです。
「修理もしているよ」
「やっぱりそこまでしないと」
「歴史的なものは保存できないのね」
「手間暇をかけて」
「そのうえで」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「そうしていかないといけないんだ」
「日本もそうなんだね」
「それにイギリスだってね」
「他の国だってそうだね」
「高松塚古墳にしても」
「日本はこうした歴史的なものが多いからね」
 何かと、というのです。
「奈良も明日香も」
「正倉院だってそうだね」
「東大寺もそうだったし」
「あの大仏さんにしても」
「唐招提寺だって」
「そしてこうした古墳だって」
「全部そうだね」
「そう、全部残そうと思ったら」
 そうしたいならというのです。
「手間暇、時間とお金と労力をかけてね」
「守っていかないといけないのね」
「保存をしっかりとして」
「そうしていかないと」
「そうだよ、ほったらかしにしていたら」
 それこそというのです。
「この絵だってね」
「ボロボロになるのね」
「すぐに」
「そうなっちゃうのね」
「そうだよ、だからこの絵もね」
 実施兄というのです。
「もうすぐにだよ」
「何もしていないと」
「ボロボロになって」
「観ていられなくもなる」
「そうなるの」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「大変なことになるから」
「日本の人達もだね」
「しっかりと保存してるんだ」
「お金も時間も労力も」
「全部使って」
「そのうえで」
「そう、けれど日本の中ではね」
 肝心の日本ではというのです。
「そうしたことに努力が足りないってね」
「そう言ってるの」
「この絵画もちゃんとしてるのに」
「それで奈良もあそこまで保存してるのに」
「それでも」
「政府はまだまだとかね、僕は政府も頑張ってると思うけれどね」
 日本の歴史や文化の保存にというのです。
「それでもね」
「そう言われるの」
「まだ努力が足りないって」
「そうした風に」
「何しろ保存しないといけないものも多いし」
 日本の歴史は長いです、だから他の国に比べて余計にです。
「お城もあるね」
「ああ、お城ね」
「戦国時代の」
「奈良県にもあるし」
「大和郡山城とかも」
「そうしたお城もね」
 歴史的な資料として、というのです。そして文化財としても。
「保存していかないとね」
「日本の課題の一つだね」
「とにかく多いけれど」
「そうしたものを守って」
「そうしてだね」
「しっかりしていかないといけないの」
「そうなんだよ、奈良だけでも相当な量があるから」
 先生がこれまで皆と一緒に観てきたそういうものです。
「相当に頑張らないとね」
「そう思うとハードル高いね」
「日本のそうしたことは」
「エジプトとか中国みたいに」
「そういえば文化財多いからね」
「奈良や京都なんて」
 それこそというのです。
「もうね」
「石を投げれば当たる位に文化財ばかりで」
「その全部を保管しないといけないとなると」
「大変ね」
「そうだね」
「うん、日本の文化保存はかなり難しいから」
 外国人から見てもわかることでした。
「頑張っていてもね」
「難しいんだね」
「普通に頑張っていても」
「それじゃあ足りない」
「そうしたお国なのね」
「この明日香だって相当にあるからね」
 勿論奈良市もです。
「桜井市も多いからね、お寺とか」
「ああ、長谷寺ね」
「あと三輪大社」
「それと談山神社もあるし」
「あそこもそうだし」
「橿原とかもね」
「橿原神宮があるわね」 
 皆で奈良県にあるそうした文化的、歴史的に重要な場所を挙げていきます。
「天理にもあったよね」
「天理教の神殿って凄いわよ」
「あそこもあるし」
「宇陀だと室生寺」
「もう色々あって」
「大変よね」
「日本の課題は大変過ぎるね」
 しみじみと思った先生でした。
「守らないといけない、保存しないといけないものが多いとね」
「その全部を守らないといけないから」
「本当に大変ね」
「日本の課題ってね」
「物凄い大変ね」
「うん、頑張ってももっと頑張らないといけない」
 先生はこうも言いました。
「そう考えるとね」
「頑張りが足りない」
「政府はそう言われるのね」
「お金も労力も関係あるし」
「色々と」
「この高松塚古墳もだったしね」
 あらためて今いる場所のお話をした先生でした。
「大変だったから」
「他の場所もだし」
「東大寺とかも」
「落書きされただけでもアウトだしね」
「そうした悪いことする人もいるし」
「絶対に駄目だよ」
 それこそと言った先生でした。
「落書きとかは」
「だよね」
「観光旅行とかでそうしたことする人いるけれど」
「絶対にしたら駄目ね」
「先生はそうしたことは絶対にしないけれどね」
「紳士でありたいと思っているからね」
 実際にかなりの紳士です、先生の紳士ぶりは学園の中でも有名でこのことからも人気がある人です。
「いいね」
「うん、じゃあね」
「僕達もね」
「そこは守って」
「これから観て回りましょう」
「学問を楽しみましょう」
「せめて僕達だけでもね」
 それこそというのです。
「日本の人達をね」
「マナーを守って」
「そのことから保存をしてもらう」
「そういうことだね」
「とにかく大変なことだから」
「そうしていこうね」
 先生は古墳の中の絵を観ながら動物の皆に応えました、そうしてそのうえでです。高松塚古墳から他の場所に行くのでした。



先生……。
美姫 「流石に皆の言いたい事を理解しないとね」
まさかの未だに気付かずとは。
美姫 「まさかとは思うけれど、あれだけ念押しされても」
こっそりと皆の分も買いそうだよな。
美姫 「そうよね。でも、あれだけ言われて約束したし」
先生ならちゃんと守るかな。
美姫 「どっちになるかしらね」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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