『ドリトル先生と奈良の三山』
第五幕 仏教のはじまり
先生達は明日香村に着きました、その明日香の駅を出てでした。皆は明日香を見てこんなことを言いました。
「自然が多いね」
「そうだね」
「開けていてね」
「何か丘が多くて」
「緑が多い場所ね」
こう言うのでした。
「奈良市と違って民家が少なくて」
「けれど歴史の遺物はね」
「明日香村全体にね」
今度は地図を観ましたがまさにでした。
「散らばっている感じで」
「オリエンテーリングみたいに回る?」
「そうして観て回る場所みたいね」
「そうよね」
「そうした場所だよ」
先生も皆に答えました。
「この明日香はね」
「やっぱりそうなのね」
「奈良市とはまた違って」
「丘を幾つも歩いていって」
「それで見て回るのね」
「オリエンテーリングみたいに」
「そう、つまり今日はかなり歩くよ」
先生は皆に笑顔でお話しました。
「これまでもそうだったけれどね」
「うん、先生と一緒にいたらね」
「僕達よく歩くよね」
「学校にいてもね」
「特にこうした時なんかは」
「先生スポーツは苦手だけれどね」
もうこちらはからっきしです、そしてスポーツ以上に恋愛のことは苦手です。先生は苦手なものがとてもはっきりしています。
「歩くのは凄いんだよね」
「幾らでも歩けてね」
「しかも疲れ知らずで」
「どんどん歩けるから」
「歩くのは得意だよ」
実際にと言う先生でした。
「僕はね」
「そうだよね」
「スポーツは全く駄目でも」
「それでもね」
「歩くのは大丈夫だから」
「フィールドワークも出来るんだよね」
何の問題もなくです。
「じゃあ今からね」
「歩いて観て回ろうね」
「そうしてフィールイドワークをしようね」
皆も笑顔で応えてです、実際に歩きはじめました。皆のお話通りにそれはオリエンテーリングみたいで。
一つ一つ観て回るのですが。
鬼の雪隠と鬼の俎を観てでした、皆こう言うのでした。
「うん、日本のおトイレに見えるね」
「実際にね」
「昔の」
「それだよね」
「鬼の俎もね」
こちらもでした、どちらも石造りのおトイレや俎に見えます。かなり大きいにしてもそれでもです。
「俎だよね」
「お料理をするのに使う」
「それだよね」
「ここは古墳だけれどね」
それだとお話する先生でした、その鬼の雪隠や鬼の俎を観ながら。
「それでもそう言われているんだ」
「鬼の雪隠とか俎とか」
「怖そうな名前なのね」
「そうなっているんだね」
「そうだよ、大きくてしかもそうした形だから」
雪隠や俎のです。
「だからだよ」
「それで本当に鬼が出たの?」
「出てないよね」
「こちらには」
「そうだよね」
「うん、伝説ではね」
先生は皆にその伝説のお話もするのでした。
「ここに鬼がいて」
「ああ、やっぱり」
「そうなるのね」
「それで鬼が悪さをする」
「そうなのね」
「人がここに来たら霧を出してね」
そしてというのです。
「人を惑わして捕まえてね」
「食べるんだね」
「もうそれいつもだよね」
「鬼の伝説だと」
「そうだよね」
「そう、そして鬼の俎でね」
その鬼の俎を指し示してお話するのでした。
「人を包丁で切ってね」
「調理してだね」
「食べていたんだ」
「そうだったの」
「そう、そしてね」
先生は皆にさらにお話しました。
「鬼の雪隠でね」
「用を足していたんだ」
「そうだったんだ」
「そうした伝説があったんだね」
「実際に」
「勿論それは伝説でね」
先生は笑顔でこのことは断りました。
「鬼はいなかったみたいだよ」
「ここにはだね」
「鬼がいるって言われていても」
「京都の大江山みたいに」
「そんなことはなかったのね」
「そうだよ、ここは本当は鬼はいなかったみたいだよ」
こうしたお話がある場所とは違ってというのです。
「伝説だけだったんだ」
「形がそうだったから」
「おトイレや俎みたいだったから」
「それでなんだね」
「そうした伝説が出来ただけなの」
「ここはね、まあ鬼が本当にいたら」
その場合はといいますと。
「まず誰かに退治されていたね」
「源頼光さんとか」
「四天王の人達ね」
「そうした人達に退治されていて」
「終わっていたのね」
「そうなっていただろうね、ただ飛鳥時代だと」
この時代ではといいますと。
「聖徳太子に調伏されていたかな」
「そうなっていたんだ」
「あの人に」
「何か凄い人だったっていうけれど」
「超人みたいな人だって」
「ただ頭がいいだけじゃなくてね」
先生はその聖徳太子のこともお話しました。
「凄い能力があったんだ」
「そうだったんだ」
「実際に」
「超人みたいな」
「そうした能力があったの」
「そうだよ、仏教の法力や超能力だね」
聖徳太子の力はというのです。
「そうしたものが合わさった様な」
「そうした能力があって」
「色々不思議なことが出来たんだ」
「ある人の前世のことを知っていたりね」
そうしてその人に挨拶をしていたというのです。
「同時に七人のお話をちゃんと聞いていたり」
「それも凄いね」
「そうだよね」
「物凄い能力があった人だったんだ」
「預言の本を書き残したとも言われているよ」
先生はこのお話もしました。
「ご自身の後日本で何が起こるかをね」
「書いていたんだ」
「そうした本も残していたんだ」
「そう、ただこの本についてはね」
先生のお言葉はここで少し微妙なものになりました。
「実在しなかったんじゃって説もあるよ」
「あれっ、そうなの」
「本当は書き残していないの」
「そうなの」
「そうも言われているんだ、現存しているともね」
例え実際に書き残していてもです。
「今も残っているかどうか」
「わからないの」
「何処にあるのかも」
「わかっていないの」
「そしてないかも知れない」
「その可能性もあるのね」
「そうなんだ、僕も実在を確かめていないよ」
先生にしてもというのです。
「聖徳太子は空海さんみたいに色々な伝説のある人だから」
「その中には創作もあるんだ」
「そうしたものも含まれていて」
「それでなんだ」
「事実じゃないお話も多い」
「そうした人なの」
「うん、一時は実在も疑われていたし」
そうしたこともあったというのです。
「今もどうかという人がいるしね」
「何か凄いお話ね」
「そうだよね」
「本当はいなかったかも知れないし」
「伝説が多いとか」
「僕は実在していたと思っているよ」
先生の学問の結果です。
「聖徳太子はね」
「先生はそうなんだね」
「聖徳太子は実在していた」
「そう思うんだ」
「調べていてね」
そうしてというのだ。
「そう思うよ、帝の皇子で摂政であられたんだ」
「うわ、凄く偉い人だったんだ」
「皇族の方でしかも摂政って」
「帝の代わりに政治を観たりもするよね」
「そうした方だったんだ」
「うん、そしてとても聡明な方でね」
その資質のお話もします。
「家々から煙が出ていてね」
「煙?」
「それがなんだ」
「民は餓えていないってわかったんだ」
その煙からというのです。
「ほら、昔が竈から煙が出たね」
「あっ、そうだったね」
「御飯を炊くとね」
「竈の火からね」
「煙が出るね」
「そうだったね」
「だからね」
このことからというのです。
「わかったんだ」
「成程ね」
「御飯を食べているから竈から火が出て」
「煙も出る」
「それでその煙を見てだね」
「民衆の人達が餓えていない」
「それがわかったんだ」
「そう、だからね」
それでというのです。
「そのことがわかる位だからね」
「聡明な人だったんだ」
「成程ね」
「いや、凄いね」
「そんな聡明な人でもあったんだ」
「超能力があっただけじゃなくて」
「頭もよかったんだ」
「そうした人だったんだ」
「うん、聡明な人でもあって」
それでというのです。
「政治家としても有名だったんだ」
「成程ね」
「ただ貯能力者だっただけじゃなかったんだ」
「本も書いていて」
「しかも政治家としても凄かった」
「本当にスーパーマンだったんだ」
「ある程度創作が入っていても」
それでもというのです。
「凄い人だったのは確かだよ」
「成程ね」
「そうした人が飛鳥時代にいたんだ」
「鑑真さんも凄い人だったけれど」
「聖徳太子も凄い人だったんだね」
「そうだったの」
「じゃあね」
ガブガブがここで言うことはといいますと。
「聖徳太子も日本の仏教の発展に貢献したのかな」
「時代的にもそうなるわね」
ポリネシアも言いました。
「確か日本に仏教は飛鳥時代に入ってるし」
「聖徳太子は根付くのに貢献したのかな」
老馬はこう考えました。
「仏教の力も備えていたみたいだし」
「よくそのタイミングでそんな人出たね」
ジップも言いました。
「日本にとってもいいタイミングだよ」
「ううん、創作が入っていても先生が言うには実在の方だし」
ダブダブは先生が嘘を言わないことを知っています、学問の誤りもそれが確かになればしっかりと認めます。
「それならね」
「仏教の信仰と聡明さで」
チーチーが聖徳太子の力のそこを見ていました。
「日本の仏教も定着させたのかな」
「だとしたら今の日本のお寺とかも」
トートーも述べました。
「聖徳太子が貢献しているんだね」
「ううん、今の日本の在り方にも貢献しているのかな」
ホワイティはこう考えました。
「聖徳太子は」
「仏教の面でもね」
「政治でもね」
チープサイドの家族もお話します。
「その形を残した」
「そうした人?」
「飛鳥時代は今の日本と昔の日本の境目っていうけれど」
「それでもね」
最後にオシツオサレツが二つの頭でお話します。
「そこから日本の形の一つも出来た」
「そうなるのかな」
「そうだよ、聖徳太子は十七条憲法も制定したけれど」
この憲法はといいますと。
「以後の日本の法律の根幹にもなったしね」
「あっ、実際になんだ」
「日本の法律の基礎にもなったんだ」
「そうだったんだ」
「日本の法律にもなんだ」
「貢献しているんだ」
「そう、そしてね」
そうしてというのです。
「神仏を敬えと言われたんだ」
「神も仏も」
「どっちもなんだ」
「日本人の信仰の考えだけれど」
「それも聖徳太子からだったんだ」
「そう、仏教に深く帰依されていたけれど」
そちらの逸話が物凄い方でもです。
「それでも皇族の方だね」
「皇族は神道だからね」
「天照大神の子孫であって」
「それでだよね」
「神道のこともしっかりしていたんだ」
「そう、日本の神仏と共に敬う」
まさに神も仏もというのです。
「聖徳太子が定められたんだ」
「法律も信仰もだったんだ」
「日本のそうしたものの基礎を築いた」
「そうした方だったんだ」
「うん、神も仏もっていうのはね」
どちらも敬えというお考えはというのです。
「とれも素晴らしいね」
「そうだよね」
「日本や中国の考えだけれど」
「日本でこの考えが定着したのはね」
「聖徳太子からだったんだ」
「本当に」
「若し聖徳太子が定められなかったら」
神仏を共に敬えというのはです。
「日本でも宗教戦争が起こっていたかもね」
「そうなっていたかも知れないんだ」
「日本でも」
「欧州みたいに」
「ああしたとんでもないことになっていたんだ」
「そうかもね、実際争っていたしね」
戦争があったというのです。
「仏教を受け入れるかどうかで」
「受け入れるべきかそうでないか」
「それで争いもあったんだ」
「日本では」
「飛鳥時代にね」
まさにその時代でというのです。
「仏教を受け入れるか神道だけか」
「それでなんだ」
「争いもあって」
「それでなのね」
「下手をするとね」
それこそというのです。
「当時の日本もね」
「戦になっていたんだね」
「神道と仏教で」
「そうなっていたかも知れないんだ」
「うん、実際にね」
先生は日本の歴史のお話をしていきました。
「この頃仏教を認めようという勢力と認めない勢力が戦になってるよ」
「実際になの」
「そうした戦もあったんだ」
「日本でも」
「うん、基本は豪族同士の権力闘争だけれどね」
それでもというのです。
「あったんだ」
「そうだったんだ」
「日本でも宗教戦争があったんだ」
「そうした戦が」
「うん、蘇我氏が仏教派で」
まずは仏教派を出しました。
「物部氏が排仏派でね」
「それでだね」
「お互いが権勢を争って」
「戦にもなったんだ」
「そうだったの」
「うん、そうしてね」
先生達は明日香の道を歩いていっています、のどかで丘が幾つもある実に歩きがいのある場所です。
「蘇我氏が勝ってね」
「仏教は日本に定着したんだ」
「蘇我氏が勝って」
「そうなったんだね」
「そう、その前に帝も仏教の信仰をはじめられたけれど」
その時の帝のお話にもなりました。
「その帝が実は聖徳太子のお父さんだったんだ」
「あっ、そうだったんだ」
「その時の帝がだったのね」
「聖徳太子のお父さんで」
「それでなの」
「その方が仏教を信じられて」
「仏教は皇室にも入ったのね」
「そうだよ、ただ」
ここでこうもお話した先生でした。
「皇室は何といっても神道だよね」
「そうそう、それはね」
「絶対に忘れられないよね」
「皇室は天照大神の子孫だからね」
「天津神だよね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「神道を捨てることは有り得ないからね」
「かく言う聖徳太子も皇室の方だし」
「仏教を信仰していていても」
それも篤くです、それこそ法力まで備え前世のことまでわかっていてもです。
「それでもだね」
「皇室の方なら神道は絶対で」
「そちらもあって」
「だからだね」
「太子はそう言われたんだね」
「そう、神も仏も敬うべし」
神仏を共にというのです。
「そうされたんだよ」
「ううん、そうだったんだ」
「日本の信仰の在り方はこうして決まったんだ」
「聖徳太子が定められて」
「そのうえで」
「そう、神も仏もね」
その両方をというのです。
「そうなったんだ、というかね」
「というか?」
「というかっていうと?」
「何かあるの?」
「また言うけれど太子は皇室の方だよ」
このことが大事だというのです。
「仏教は大事でもね」
「神道を否定するとだね」
「ご自身を否定することにもなる」
「そうなるんだ」
「そう、それに元々日本は八百万の神々がいるね」
神道のお話をさらにするのでした。
「そこから渡来の神様、この場合は仏様を迎え入れてもね」
「八百万の神様が増える」
「それだけなんだ」
「まさに」
「それだけに過ぎないのね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「日本人は仏教も受け入れてね」
「神道と一緒にいるんだね」
「お寺も神社も一緒にあるんだ」
「それで神主さんもお坊さんも仲が悪くない」
「そうなのね」
「そうだよ、確かに争いもしたけれど」
その蘇我氏と物部氏がです。
「すぐに神仏を共にってもなってね」
「そうしてだね」
「今に至るんだ」
「同じものの様に崇拝されていて」
「お寺も神社もあるのね」
「そうなったんだ、聖徳太子はそうした意味でもね」
まさにというのです。
「日本の歴史に相当な貢献をされた方だよ」
「只の超人的な力を持っている方じゃなくて」
「政治家としても優れていて」
「今の日本の在り方も遺してくれた」
「そうした方なのね」
「そうだよ、ただね」
こうもお話した先生でした。
「伝説がかなり混ざっていることはね」
「事実なんだね」
「このことは」
「そうなのね」
「うん、このことも頭の中に入れてね」
考慮してというのです。
「考えていくべきなんだよ」
「聖徳太子のことは」
「そうしてだね」
「よく考えて」
「研究していくべきなんだ」
「その通りだよ、じゃあ次はね」
先生は皆にさらに言いました。
「宮殿の後に行こうね」
「飛鳥のだね」
「ここに都があった頃のだね」
「皇居に行くのね」
「そうするのね」
「そうしようね」
こう言ってでした、皆は笑顔ででした。
先生と一緒に飛鳥宮跡まで行きました、そこはもう何もなくて本当に跡があるだけです。石のそれが。
皆はその跡を見てです、こうお話しました。
「何かね」
「あまりこれといってね」
「広くなくて」
「質素な感じよね」
「一四〇〇年位前の宮殿だし」
「こんな感じなのかしら」
「そう、まだ平城京みたいな本格的な都でもなかったしね」
先生は昨日まで観ていた奈良のお話をするのでした。
「ここに皇居があって周りに貴族のお屋敷があって民衆の家々もある」
「そんな感じだったの」
「それが当時の日本の都だったの」
「そうだったのね」
「まだ朝廷の治めている地域もね」
そちらもというのです。
「ほら、日本武尊が西に東に行っているね」
「うん、朝廷に従わない豪族や神様を降しているよね」
「神話のお話よね」
「そうして最期は倒れるのよね」
「愛知県の辺りで」
「そうだね、西日本からかろうじて関東辺りまでだね」
それ位だというのです。
「当時の日本が治めていた地域は」
「ううん、東北とかはまだで」
「関東はかろうじてなの」
「そんな感じだったのね」
「しかも拠点となっている大和や近畿はしっかりしていたけれど」
その統治がというのです。
「その他の地域はね」
「まだまだだったのね」
「統治が充分じゃなかった」
「そうだったの」
「そうだよ、飛鳥時代はまだまだね」
この頃はというのです。
「統治が弱かったんだ」
「それで朝廷もなんだ」
「ここで慎ましやかにあったのね」
「奈良時代と比べても」
「それに平安時代と比べても」
「まだまだそれを確立していた頃で」
それでというのです。
「朝廷が日本全土を統治出来る様になったのはまだまだ先なんだ」
「そういえば」
ここでホワイティが言いました。
「東北とか蝦夷って言ってたそうだね」
「北海道だけじゃなくてね」
「そうだったわね」
チープサイドの家族はホワイティのその言葉に応えます。
「それでね」
「東北の方もそうで」
「結構後になっても戦にもなっていて」
「関東もね」
「昔は相当な僻地だったんだよね」
オシツオサレツはこの地域のことを言います。
「もう誰もいないと思われている様な」
「そんな感じだったのよね」
「富士山までは西国だった?」
チーチーはこの山を思い出しました、日本を代表する山を。
「それで東国になると異国みたいだったんだ」
「それで飛鳥時代になると」
トートーも考える顔になっています。
「もうその西国統治も固まっていなかったんだ」
「それで都も小さかったのね」
ダブダブはその都跡を観ています。
「この通り」
「統治が固まって国力も備わって」
ジップは奈良の方をです、無意識のうちに見ました。
「それでだね」
「平城京みたいな凄い都を築ける様になったんだ」
ガブガブはこのことがわかりました。
「そして奈良の大仏さんも」
「何か凄い力ついてない?」
老馬はこう思いました。
「飛鳥時代から奈良時代にかけて」
「この間に統治が固まって朝廷の力も強くなって」
最後に言ったのはポリネシアでした。
「奈良時代に至るのね」
「そう、聖徳太子の時代から大化の改新を経てね」
先生は皆に飛鳥時代の歴史についてのお話をはじめました。
「そして天智帝、天武帝の統治を経てね」
「ご兄弟だったよね」
「最後の方かなり仲が悪くなっていてね」
「天武帝は吉野から当時都が移っていた近江に攻め上がってね」
「それで最後はご自身が帝になられたんだよね」
「そうだよ、その天智帝と天武帝の統治からね」
そうしたものを経てというのです。
「都も遷ったり色々あったけれど」
「奈良時代に入るまでにだね」
「統治が固まってたし朝廷の権威も強くなって」
「日本は治まる様になっていて」
「力もついていたのね」
「そうだよ、そうして奈良時代になって」
あの平城京の時代にというのです。
「大仏さんを建立してね」
「鑑真さんも来られて」
「仏教もさらに広まって」
「日本はさらに形成されていく」
「そうなっていくのね」
「古墳時代まではまだ神話の頃と言っていいところがあるね」
古事記や日本書紀の続きだというのです。
「日本は神話から歴史に入っているね」
「そうそう、神様からね」
「神武帝の御代に入るんだよね」
「九州から近畿に入って」
「そのうえで」
「そうだよ、これも日本の歴史の特色でね」
先生はご自身が学んできた古事記や日本書紀のことを思い出して脳裏に描いていました。その日本の歴史を。
「神話からね」
「歴史になるんだね」
「そして古墳時代にも入る」
「そうなのね」
「そう、日本武尊の時代は朝廷が西国から関東までを領土にする時代で」
「古墳時代までに領土にしていって」
「それで飛鳥時代はその基盤が固まって」
そうしてです。
「奈良時代から本格的にはじまる」
「そうなるんだね」
「そうした流れなんだね」
「いや、奈良時代になるまでね」
「そうしたことがあって」
「飛鳥時代も大事な時代なのね」
「日本にとって」
「そう思うよ、僕が書いている論文はね」
飛鳥時代についてはそれはといいますと。
「その歴史についてだよ」
「日本が固まっていく」
「その時代のことだね」
「まさに」
「そうなのね」
「そうだよ、何かが出来るには」
本当にというのです。
「それなりの歴史があってね」
「日本もだね」
「その歴史があるんだね」
「日本という国が出来るには」
「やっぱり歴史があるのね」
「そうだよ、本当にね」
実際にというのです。
「そこを学んでいくものなんだよ」
「そして先生もだね」
「実際に学んでいっているんだね」
「そうして論文にも書いていく」
「そうしていくのね」
「そうだよ、書くよ」
先生は皆に笑顔でお話しました。
「僕もね」
「うん、頑張ってね」
「そのこともね」
「色々と大変だろうけれど」
「それでもね」
「そうしていくよ、それとね」
さらにお話した先生でした。
「飛鳥時代にも和歌が謡われていたんだよ」
「あっ、そうだったね」
「万葉集にも載ってるわね」
「天智帝の和歌もあるし」
「そして額田王の歌もあって」
「奈良時代にまとめられたのよね」
「この明日香を詠った歌も多いよ」
万葉集にはというのです。
「実際にね」
「そうだったね」
「そういえばね」
「万葉集は色々な歌があって」
「飛鳥時代の歌もあるわね」
「その前の時代の歌もあって」
「雄略帝の歌もあるよ」
この帝の作品もというのです。
「かなり昔の帝のね」
「何か暴君って言われてたけれど」
「歌を詠う様な方でもあったのね」
「そうなのね」
「そうなんだ、そうしたこともわかるのが万葉集だよ」
そうだというのです。
「万葉集も読んでみると面白いよ」
「日本の心がそこにあるんだね」
「自然や恋、人の気持ちを詠っていて」
「そうなのね」
「うん、だからね」
それでというのです。
「僕は万葉集も読んでいてね」
「それで学んでもいる」
「そうなんだね」
「そちらの方も」
「万葉集についても」
「そうだよ、万葉集は本当にね」
先生は万葉集についても笑顔でお話しました。
「最高の学問の題材の一つだよ」
「人を知ることの出来る」
「まさにそうしたものだね」
「だから先生も読んでだね」
「学んでいるんだね」
「そうだよ、あと万葉集の論文もね」
それもというのです。
「今書いているしね」
「あれっ、じゃあ論文四つ?」
「前に三つって言ってたけれど」
「東大寺のことと飛鳥時代のことと三山のこと」
「文学の論文もって言ってたけれど」
「それも?」
「そうだね、じゃあね」
それならとです、先生も応えました。
「四つになるね」
「そうだよね」
「三つじゃなくてね」
「万葉集もだから」
「それになるから」
「うん、どうも飛鳥と万葉集が一緒になっていたよ」
そうしたものがというのです。
「僕も、けれど四つ共ね」
「書くよね」
「先生は論文は最後まで書くから」
「論文は完成させないと論文じゃない」
「いつもそう言ってるしね」
「そうだよ、だから書きはじめた論文はね」
書きはじめたならというのです。
「完成させないと駄目だよ」
「そうして発表しないとだね」
「駄目だよね」
「完成させてこそ論文」
「そう言ってるよね」
「それで完成させなかった論文ないよね」
「最後の最後まで」
皆もこのことはよく知っています、伊達にいつも先生と一緒にいるわけではありません。それでです。
「だからね」
「最後まで書くよね」
「書き終えてね」
「そうして発表してるよね」
「そうしてるよ、まず論文を書く」
これこそがというのです。
「学んで研究してね」
「そしてだよね」
「論文を書く」
「それが学者さんだね」
「論文を書くことこそが」
「僕もそう思っているからね」
だからだというのです。
「僕も書いているんだ」
「最後の最後まで」
「そうするからだね」
「これからもだね」
「論文を書くんだね」
「最後の最後まで」
「そうするよ、今書いている四つの論文もね」
三つではなく、です。
「絶対に脱稿するからね」
「頑張ってね」
「そっちの方もね」
「何か先生日本に来てどんどん学者さんになってるね」
「イギリスにいた時と違って」
「そうなってるわね」
「何かね」
先生ご自身も言います。
「そうなってきたね」
「そうだよね」
「そうしてどんどんよくなってるよね」
「学者さんとして」
「お給料の分以上は書いてるよね」
「それは楽しみにしているからだよ」
学問そのものをというのです。
「だからだよ」
「ああ、それでなんだ」
「お給料以上に書いていても」
「それでもいいのね」
「先生にとっては」
「いいよ」
実際にとです、笑顔で答えた先生でした。
「こうした暮らしこそがね」
「お金の問題じゃない」
「充実が問題なんだね」
「その日常が」
「どれだけ充実しているか」
「先生にとっては」
「お金は充分にあるからね」
大学教授としてのそれがです。
「だからね」
「もういいんだね」
「そちらのことは」
「既に充分だから」
「それで」
「そうだよ、もう何も言うことはないよ」
先生にとってはです。
「だから後はね」
「学問だね」
「論文もどんどん書いていく」
「そうしていくんだ」
「満足するまで」
「そうなんだ」
皆も納得しました。
「そこも先生だね」
「やっぱり先生って無欲よね」
「お金にもそうで」
「地位や県力にも興味ないし」
「学問をしたいだけで」
「欲がないのよね」
「そうよね」
先生の美徳であります。
「そうしたところが本当にいいし」
「私達にとってもね」
「欲がないことは」
「本当にね」
「先生の美徳よね」
「まさに」
「まあ欲がなさ過ぎてね」
こうしたこともお話する皆でした。
「結構困る時もあるけれど」
「欲がなさ過ぎてね」
「多くを求めないからね」
「今のままで満足して」
「そこがどうもね」
「結婚とか考えないし」
「結婚はどうもね」
いつもサラに言われてはいますが。
「僕は無理だよ」
「そう、そこでそう言うのがね」
「無欲過ぎてね」
「求めないからね」
「強くね」
「いや、結婚したいよ」
先生にもそうした思いは確かにあります。
「僕もそう願っているよ」
「だからそこを強く」
「強く求めないとね」
「そうしたら近くにいるじゃない」
「先生を想っている人がいてね」
「先生がもっと結婚したいって思えば」
その時はというのです。
「その人が応えてくれてね」
「絶対にって思うけれど」
「だからもっと欲出したら?」
「そうしたら?」
「いや、だから僕を好きな女の人はまずいないし」
ご自身ではこう考えているのです、あくまで。
「しかもね」
「しかも?」
「しかもっていうと?」
「どうも食べたい、学びたいっては思ってね」
そうした欲はあるのですが、先生にも。
「お金や権力や女の人は」
「結婚でもだね」
「まあ最初の二つは先生らしくないけれど」
「地位とか権威もね」
「合わないとは思うけれど」
「結婚はね」
「そして恋愛はね」
そちらはというのです。
「もっと欲出したら?」
「そうしたら?」
「先生にしても」
「そうしたら絶対によくなるから」
「結婚したいって思ったら」
「その意志を前に出したらね」
「そんなことはないと思うけれどね」
どうにも変わらない先生でした。
「僕にそうしたことは」
「やれやれだね」
「まあ簡単に終わるお話じゃないとはわかっているけれどね」
「私達にしても」
「先生のことだから」
「万葉集は恋愛の歌も多いけれどね」
笑顔でお話する先生でした。
「まあそれでもね」
「だからもっと欲を出していこう」
「先生もね」
「そうすれば変われるから」
「絶対にね」
「結婚も出来るわよ」
皆はあくまで欲を出さない先生にこちらのことではハッパをかけるのでした、先生が中々動かない人だとわかっていても。
学問に関しては、積極的な上に鋭いんだけれどな。
美姫 「こと恋愛になると弱いわね」
周りの皆が苦労しながらも頑張っているのに。
美姫 「先生には是非とも幸せになって欲しいわね」
だな。次はどこを巡るのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。