『ドリトル先生と奈良の三山』




               第一幕  日本のまほろば

 研究室で論文を書いている合間に三時になったのでティ―セットを楽しんでいる先生にです、動物の皆が一緒にティ―セットを楽しんでいる動物の皆が尋ねました。
「先生またフィールドワークに行くよね」
「そうだよね」
「確か今度は奈良だね」
「あそこに行くんだね」
「そうだよ」
 その通りだとです、先生は皆にミルクティーを飲みながら答えました。
「今度はそこに行くよ」
「奈良だね」
「前に行ったことあったかしら」
「京都じゃなかった?」
「大阪は行ったけれど」
「奈良はまだだったかな」
「どうだったかしら」
 動物の皆は奈良に行ったことがあるかどうかから考えました。
「京都と奈良は違うのよね」
「どっちも日本の首都があったけれど」
「かなり大昔にね」
「イギリスがまだ出来たか出来ないかの時に」
「日本の首都があったのよね」
「そう、どっちも日本の古都だよ」
 先生は皆に微笑んでお話しました。
「奈良も京都もね、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「僕は皆と京都に学問や旅行で行ったことはあったけれど」
 それでもというのです。
「奈良は行ってもね」
「学問や旅行ではだね」
「行ったことがなかったんだ」
「沖縄の時みたいに」
「それで北海道の時みたいに」
「うん、ニホンオオカミの時も奈良県だったけれど」
 それでもというのです。
「あれは奈良県のかなり南でね」
「山ばかりだったね」
「もう見渡す限りで」
「イギリスは絶対にないみたいな」
「凄い山だったわね」
「もうびっくりする位の」
「凄く深かったわ」
「あそことはまた違う奈良なんだ」
 そうだというのです。
「奈良は南北に広くて北と南じゃ全く違うんだ」
「そういえば前そんなお話したわね」
「そのニホンオオカミの時にね」
「あそこに行く時に」
「奈良県と和歌山県の境に行く時に」
「あそこは奈良県の南でね」
 それでというのです、先生は今度はティ―セットの上段のフルーツサンドを食べています。中段にはエクレア、下段にはチーズケーキがあります。
「今度は北の方に行くんだ」
「そっちになんだ」
「あの山ばかりの南じゃなくて」
「北の方なんだね」
「そちらに行くのね」
「そうだよ、そしてその北がね」
 まさにというのです。
「昔日本の首都があった場所なんだ」
「へえ、その北が」
「そうなの」
「明日香村、そして奈良市にね」 
 こうした場所にというのです。
「昔の日本の首都があったんだ」
「その古都が」
「そうなの」
「物凄く大昔に」
「日本の首都があったんだ」
「今から大体一三〇〇年位前だね」
 奈良に日本の首都があった頃はというのです。
「七世紀や八世紀だね」
「ええと、ローマ帝国の後?」
「フランク王国より前か後?」
「大体それ位?」
「滅茶苦茶大昔ね」
 動物の皆はイギリスの歴史感覚から考えて日本のその頃がどれだけ昔のことか考えるのでした。
「日本の歴史って長いけれど」
「物凄いわね」
「そんな昔から国があって」
「首都もあって」
「そんなお国なのね」
「そうなんだ、この国は歴史も長いんだ」
 日本はというのです。
「それでね」
「七世紀や八世紀にはだね」
「日本の首都は奈良にあった」
「そうなのね」
「それで今度ね」
「そこに皆で行くのね」
「歴史、そして文学のフィールドワークで行くよ」
 先生は皆に笑顔でお話しました。
「今度はね」
「その奈良に」
「そうするんだね」
「さあ、その奈良ってどんなところかな」
「一体」
「どんな場所かしら」
「とても素敵な場所だよ」
 先生は皆にこう答えました。
「あちらもね」
「素敵な場所なの」
「そんなになの」
「いい場所なの」
「歴史と文学が一緒にあってね」
 先生が今お話したその二つがというのです。
「景色もよくて」
「うわ、景色もなんだ」
「いいのね」
「そんな場所なんだ」
「うん、今回は三つの山を見に行くんだ」
 先生はここでこうも言いました。
「耳成山、畝傍山、香久山をね」
「その三つの山をなの」
「歴史、文学のフィ―ルドワークで見るの」
「そうするの」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「この三つの山は凄く不思議なんだ」
「不思議?」
「不思議っていうと?」
「何かあるの」
「その山に」
「うん、そう言われているんだ」
 実際にというのです。
「その三つの山は」
「それで実際に見てだね」
「その三つの山を」
「そうしてなの」
「論文を書くんだ」
「そうするのね」
「いつも通りね、その三山の論文も書いて」
 そしてというのです。
「歴史も文学もね」
「どっちもなのね」
「書くんだね」
「そうする予定だよ」 
 合わせて三つの論文をというのです。
「書くよ」
「相変わらず学問に励んでるね」
「論文書いてフィールドワークもして」
「先生もすっかり学者さんだね」
「そうなってきたね」
「昔は患者さんの来ない病院のお医者さんだったけれど」
 笑って皆に応えた先生でした。
「それが日本に来てね」
「うん、教授さんになってね」
「どんどん論文書く様になったね」
「今みたいにね」
「そうなったね」
「そうだね、本当に変わったよ」
 先生は皆ににこにことして述べました。
「様々な学問を楽しんでね」
「医学だけじゃなくてね」
「語学も物理学も楽しんで」
「生物学もだしね」
「数学もね」
「そして歴史学や文学もだからね」
「そう、そしてその歴史や文学をだよ」
 まさに今回はというのです。
「楽しむつもりだよ」
「奈良まで行って」
「そしてそのうえで」
「歴史学と文学を楽しむ」
「そうするんだね」
「そうだよ、本当にこれだけ学問が出来るなんて」
 博士にとってはです。
「天国にいるみたいだよ」
「先生にとってはね」
「もうそんな状況だよね」
「本を読んで論文を書いてフィールドワークをする」
「そのことがね」
「最高だよ、ではお家に帰ったら」
 それからどうするかも言う先生でした。
「奈良に行く用意をしようか」
「旅支度だね」
「それをしないとね」
「そう、これはいつも通りだね」
 旅行や学会で行く時とです。
「奈良だから近いけれどね」
「ああ、同じ関西だしね」
「神戸から見てね」
「じゃあ普通にね」
「神戸から奈良までね」
「旅行だね」
「そうなるよ、今回は旅行じゃないけれど」
 お仕事です、完全にそちらですが実際のところ動物の皆にとっては旅行と全く同じことなのです。
「楽しんで行こうね」
「そうだね、それじゃあね」
「皆で行きましょう」
「それとトミーがお留守番?」
「そうなるかしら」
「そうだよトミーが残るからね」 
 実際にというのです。
「お家のことは色々と彼に任せよう」
「うん、わかったよ」
「じゃあそうしてね」
「奈良に行きましょう」
「皆でね」
 こうお話してでした、動物の皆はこの時はティ―セットを楽しみました。そしてお家に帰りますと。
 皆で旅支度に入りました、オシツオサレツはその二つの頭で先生にこう尋ねました。
「下着入れた?」
「タオルは」
「あと歯ブラシと歯磨き粉は」
「そういうの全部トランクに入れた?」
「お金もよ」
 しっかり者のダブダブはこちらを尋ねました。
「お債務もね」
「中にカードがあるかどうかもね」
 トートーはそちらを指摘しました。
「いざという時はね」
「先生って現金派だけれどね」
 ホワイティは先生のこのことを言いました。
「銀行からお金引き出したりカードがあると使えるからね」
「そうそう、世の中変わったよ」
 トートーは先生がトランクに旅に必要なものを入れていくのを見ています。
「カードとかも出て来てね」
「昔はそうしたのなかったからね」
 チーチーも先生の様子をチェックしています。
「カードとかはね」
「あと携帯とかスマートフォンも」 
 ジップが言ったのはこちらでした。
「あるし今回も持って行って」
「そうそう、そうしたのも忘れちゃいけないよ」
 ダブダブは先生に直接言いました。
「携帯電話とかスマートフォンも」
「あとノートパソコンね」
 ポリネシアが言ったのはこちらでした。
「論文を書く為に」
「ホテルで夜論文を書くからね」
「それでそちらも必要ね」
 チープサイドの家族は皆で旅に必要なものを書いた紙と先生が実際にトランクに入れていっているものをチェックしています。今のところは大丈夫です。
「ノートパソコンも」
「それも」
「下着だけでなくブラウスやネクタイ、靴下もね」 
 最後に老馬が言いました。
「着替えのを持って行こうね」
「先生、着替えのものはです」
 トミーは先生がトランクに色々入れるのを手伝いつつ先生にお話しました。
「うちに送って下さい」
「奈良からだね」
「そうしたら洗っておきますから」
「そうしてくれるんだ」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「どんどん送って下さい」
「それじゃあね」
「そうすれば先生の荷物もどんどん減りますし」
 その送られた服の分だけです。
「楽になりますから」
「うん、じゃあね」
「そうして下さい」
「わかったよ、じゃあね」
 先生もトミーに笑顔で応えました。
「そうさせてもらうよ」
「是非」
「そうなると本当に楽だね」
「そうなります、後ですが」
「後?何かな」
「奈良ですか」
 トミーは今度は先生が向かうその先のことのことについて言うのでした。
「あちらはどうも」
「どうもっていうと?」
「不思議な場所ですね」
「ああ、何かとだね」
「はい、歴史的に色々ありまして」
「不思議なことも多いね」
「実際にそうですよね」
 こう先生に言うのでした。
「歴史的に謎とされる場所が」
「古墳とかでね」
「明日香村にしても奈良市にしても」
「そうした場所が多いね」
「そうですよね」
 こう先生にお話するのでした。
「あちらは」
「ただ歴史があるだけじゃなくてね」
「その歴史の中で不思議な場所もね」
「ありますね」
「そうした意味でも面白い場所だよ」
 それが奈良という場所だというのです。
「本当にね」
「その奈良にですね」
「行って来るよ」
「いい学問が期待出来ますね」
「うん、文学はね」
 そちらのテーマはといいますと。
「万葉集だけれどね」
「ああ、日本最初の歌集ですね」
「あれについてなんだ」
「奈良はまさに万葉集の舞台ですね」
「そうだよ、当時の日本の中心でね」
「だから奈良で詠った歌が多くて」
「まさに奈良が舞台なんだ」
 そう言っていいというのです。
「万葉集については」
「そうですよね」
「そして歴史はね」
 そちらはといいますと。
「奈良の大仏についてだよ」
「あのとてつもなく大きな」
「世界最大の像だね」
「あれについてですね」
「書くんだ」
「あの仏像も凄いですね」
「まるでゼウス像だね」
 先生は笑ってギリシア神話のこの神様の名前を出しました。
「世界七不思議にあった」
「ああ、あの」
「若しくはヘリオス像だね」
 こちらも七不思議のものです、当時途方もないとされていた建築物をこう呼んでいたのです。
「まさに」
「七不思議は紀元前ですが」
「奈良時代から千年は前だけれどね」
「それもあの大仏は凄いですね」
「他の国にはないからね」
「よくあんなものを造れましたね」
「その大仏像を実際に観て」
 そしてというのです。
「その歴史を書いていくよ」
「そうされますか」
「だから奈良市にも行くんだ」
 そうするというのです。
「万葉集で明日香村にも行くし」
「それと奈良県全体の文学や歴史のフィールドワークですね」
「その意味もあるよ」
「それが今後の学問に生きてきますね」
「絶対にね、日本は奈良県のはじまりと言ってもいい場所だから」
「余計にですね」
「じっくりと時間もかけて」
 そうしてというのです。
「学んでいきたいよ」
「フィールドワークをされていきますか」
「そうするよ、それとね」
「それと?」
「三山だね」
 トミーにもこの山達のことをお話するのでした。
「あの山達も見るけれどね」
「奈良県は山が物凄く多いですね」
「そうだよ、前に行った南部はもうね」
「もう山しかなくて」
「人口も極端に少なくてね」
 先生が今回行く奈良県の北部と比べてです。
「物凄く山が多いよ」
「そうした場所ですけれど」
「特に有名な三つの山があるんだ」
「確か」
 トミーも学問をしています、それでその山達のこともある程度にしましても知ってはいるのです。
「耳成山に畝傍山。香具山ですね」
「その三つの山だよ」
「普通山は連なってますよね」
 先生にです、トミーはこうも尋ねました。
「本当に」
「うん、そうだよ」
「それでその三つの山はですね」
「それぞれ一つずつね」
「奈良県の中にあるんでしたね」
「あの盆地の中にね」
 そうだというのです。
「だから余計に目立つんだよ」
「それは本当に不思議ですね」
「自然な山には思えないね」
「そうですね」
 実際にとです、トミーは先生に答えました。
「どう考えても」
「トミーも言ったけれど山は連なっているものだからね」
「一つずつポツンとあるのは」
「自然ではないね」
「全くですね」
「だからね」
 またお話した先生でした。
「あの山達のことも調べていくよ」
「そういうことですね」
「うん、後ね」
「後?」
「勿論美味しいものもね」
 そうしたものもというのです。
「食べていくよ」
「それは忘れたら駄目ですね」
「何があってもね」
「いつも食べるものは美味しく」
「楽しむものだよ」
「その通りですね」
「若しもね」
 先生は用意をしつつさらにお話しました。
「美味しいものがないとね」
「折角のフィールドワークも」
「面白さが減るよ」
「そうですよね」
「このことを知ったのはね」
 それはといいますと。
「日本に来てからだね」
「このこともですね」
「うん、美味しいものを食べて楽しむ」
「日本はあらゆる場所でそれが出来るから」
「いいんだよ」
 本当にというのです。
「その意味でも素晴らしい国だよ」
「そうですよね」
「うん、けれど奈良は」
「あちらはですか」
「柿の葉寿司があっても」
 それでもというのです。
「それとは別にね」
「ありますか」
「何と奈良時代の料理が食べられるんだ」
「奈良時代のですか」
「そう、それがあるからね」
 だからというのです。
「是非食べるよ」
「そうしますか」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「それを楽しむよ」
「そうですか」
「うん、あの時代のお酒も飲めるんだ」
「奈良時代の日本のお酒ですか」
「勿論今の日本酒とは違うよ」
「濁酒ですね」
 どうしたお酒かとです、トミーは先生に言いました。
「その頃の日本のお酒は」
「あっ、わかるね」
「今の日本酒は清酒ですけれど」
 澄んだお水みたいな奇麗な感じです。
「白く濁っていてですね」
「甘い感じなんだ」
「そうしたお酒ですね」
「それが奈良時代のお酒なんだ」
「そうですよね」
「あのお酒を飲むし赤いお米や黒いお米も食べて」
「昔はそうしたお米もあったんでしたね」
 トミーはまた先生に応えました。
「白いお米以外に」
「そうだよ、今はお米は白いとね」
「イメージがありますけれど」
「昔は他のお米もあったんだ」
「そうでしたね」
「その赤いお米や黒いお米もね」
 先生はにこりと笑ってトミーにお話しました。
「食べて来るよ」
「色々なお米があったんですね」
「かつてはね、ただ」
「ただ?」
「最近までね」
 先生は少し残念そうにトミーに言うのでした。
「そうしたお米は復活いていなかったんだ」
「そうだったんですね」
「うん、日本人は何故かそうしたお米を嫌っていたのか」
 赤いお米や黒いお米をです。
「長い間ね」
「白いお米だったんですね」
「それだけだったんだよ」
「そのことも面白いですね」
「全くだよ、それに今は精米だね」
「精白した」
「玄米がね」
 こちらのお米がというのです。
「昔は主流だったしね」
「ああ、そうでしたね」
 トミーはこのことも知っていて頷くのでした。
「鎌倉時代なんかも」
「当時の武士達は玄米を主食にしていたんだ」
「固いあのお米をですね」
「これでもかとお椀に山盛りにして」
「食べていましたね」
「そうだったんだ」
 先生は鎌倉武士のこともお話しました。
「当時はね」
「そうでしたね」
「それが白米になったのはね」
「江戸時代以降ですね」
「昔から白米もあったけれど」
 その精白したお米がというのです。
「あくまで主流は玄米だったんだ」
「奈良時代もですね」
「そうだよ」
「その辺りも面白いですね」
「今はお米イコール白米だね」 
 またトミーに言いました。
「実際に」
「精白された」
「そこが違うんだ」
「その辺りも面白いですね」
「そうだね、じゃあね」
「そうしたお米もですね」
「楽しんでくるし」
 食べてというのです。
「他の食べものもね」
「楽しんで行かれるんですね」
「そう考えているよ、蘇も食べるし」
「昔の乳製品ですね」
「昔はあったんだ」
 日本にもというのです。
「チーズ已然にね」
「というか蘇はチーズですね」
「伝わっているのを見るとね」
 その限りではというのです。
「チーズだよ」
「材料も同じ牛乳ですし」
「そうですね」
「そう、どうやら味もね」
「チーズですか」
「そうらしいよ」
「じゃあそのチーズを」
 昔の日本のです」
「食べて」
「やっぱり楽しんでくるよ」
「何といいますか」
 ここでこうも言ったトミーでした。
「僕達がイメージしている和食は江戸時代のものですね」
「そうなんだ、実際にね」
「やっぱりそうですか」
「うん、奈良時代の日本の料理はね」
「また別ものですか」
「鱧とかもないしね」
 お魚ならです。
「そうしたお魚も」
「ああ、こっちじゃ夏に食べる」
「あの細長くて鋭い歯のお魚もね」
「当時は食べていなかったんですか」
「鰻は食べていたみたいだけれどね」
 こちらのお魚はというのです。
「万葉集にも詠われていて」
「それでも鱧はですか」
「食べていなかったみたいだよ」
 こうしたお魚はというのです。
「どうやらね」
「そこもイメージが違いますね」
「今も関東ではあまり食べないみたいだけれどね」
「あっ、そうでしたね」
「首都が京都になってからなんだ」
 鱧を食べる様になったのはというのです。
「明石から生きたまま持って行ける数少ないお魚だったから」
「京都で鱧を食べる様になったんですね」
「昔はね」
「だから首都が奈良にあった奈良時代はですか」
「食べていなかったみたいだよ」
「じゃあ奈良時代のお料理にもですね」
「ないと思うよ」 
 こうトミーにお話しました。
「調べた限りでもそうだったしね」
「そうですか」
「うん、それとね」
「それと?」
「氷もなかったしね」
「ああ、製氷技術が」
「なかったから」
 だからというのです。
「冬の間に取り入れた氷を氷室っていうお部屋で保管していて」
「それで食べていたんですか」
「長い間限られた人達だけがね」
「食べていたんですね」
「そうしたものだったんだ」
「これは最近まででしたね」 
 トミーも氷について言いました。
「氷は特別なものでしたね」
「夏に食べようと思ったらね」
「そうでしたね」
「奈良時代の日本でもそうで」
 それこそ限られた人達だけが食べるものだったというのです。
「それでね」
「特別なご馳走だったんですね」
「そうだよ」
「かき氷なんてものは」
「長い間ね」
「なかったんですね」
「普通の人の中にはね」
 食事としてはというのです。
「なかったよ、枕草子には出て来たけれどね」
「あっ、清少納言の」
「そう、夏のお話で出て来るけれど」
「清少納言は帝の奥方のお一人に仕えていたので」
「それでだよ」
「高価なものを頂くこともあったんですね」
「だから枕草子にも書けたんだ」
 それ故にというのです。
「あの人はね」
「そうでしたか」
「そう、そして奈良時代でもね」
「物凄く高価だったんですね」
「けれど今はね」
「その氷もですね」
「楽しめるよ」
 普通にというのです。
「奈良でもね」
「奈良時代の食事も楽しめて」
「氷もね」
「どちらも楽しめますね」
「その奈良にね」
「これからですね」
「行って来るよ」
 先生はトミーに笑顔でお話しました。
「またね」
「わかりました」
 トミーはその先生に笑顔で応えました。
「道中お気をつけて」
「旅先でもね」
「留守は僕が守っていますんで」
「宜しくね」
 こうしたお話をしてです、先生は旅支度をさらにしていきました、そうして実際に奈良に行くのでした。



今度の先生たちは奈良へ。
美姫 「そこで何が待っているかしらね」
何かが起こるのかどうか。
美姫 「今回のお話も楽しみにしてますね」
次回も待っています。



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