『ドリトル先生と悩める画家』
第八幕 アバンギャルド
先生はこの時はお家で晩御飯を食べていました、今日の晩御飯はといいますと。
「お鍋にしたんだね」
「はい、水炊きです」
トミーが先生ににこりと笑ってお話します。ちゃぶ台の上の鍋はコンロで温められていて中には鶏肉やお葱にお豆腐、白菜に菊菜、しらたきに糸蒟蒻があります。
「寒いんでお鍋にしました」
「成程ね」
「バランスよく食べられますしね」
「健康的にだね」
「はい、ですから」
そのこともあってというのです。
「こちらにしました」
「いいね」
先生はお箸を手にして言いました。
「本当に寒いしね」
「はい、日本の冬も」
「そうそう、欧州程じゃないけれど」
「寒いですよね」
「雪も積もるしね」
「そして今日は特に冷えますから」
それでとです、トミーも食べながらお話します。動物の皆も一緒に水炊きを食べています。それも美味しく。
「こちらにしました」
「いいねえ」
「先生お鍋もお好きですね」
「そうなったよ」
「来一のきっかけもお鍋でしたし」
「すき焼きだったね」
王子がご馳走してくれたあのすき焼きです、先生にとっては運命を変えたお鍋でした。
「そうだったね」
「あれ美味しかったね」
「うん、とてもね」
「あんなものがあるなんてね」
「あの時はびっくりしたね」
動物の皆もお話します。
「牛肉っていたらステーキとかね」
「ローストビーフとかビーフシチューって思っていたけれど」
「ああしたお料理もあるなんてね」
「王子に凄いこと教えてもらったね」
「うん、僕もあのすき焼きは忘れられないよ」
先生にしてもです。
「とても美味しかったよ」
「そしてこの水炊きも美味しいね」
「そうだよね」
「だしもよく出ていて」
「いいわね」
「そうだね、幾らでも食べられるよ」
先生もにこにことしています。
「これならね」
「そうだね」
「鶏肉もお野菜も美味しいよ」
「茸もお豆腐も」
「そして糸蒟蒻も」
「蒟蒻もいいですね」
トミーは自分のお碗の中にある糸蒟蒻を実際に食べながら言いました。
「これも日本ならではですね」
「そうした食べものだね」
「不思議な食べものです」
「僕も好きだよ」
「そうですね、しかもカロリーがないんですよね」
「そう、蒟蒻はね」
「カロリーゼロでしたね」
まさになのです、蒟蒻は。
「それこそ」
「そうだよ、そしてお鍋にはね」
「糸蒟蒻は欠かせないですね」
「そうなんだよね」
「こうして」
「おでんにもだね」
先生はそちらのお話もしました。
「欠かせないね」
「あちらは三角に切った蒟蒻ですね」
「そうそう、そちらはね」
「冬はおでんもいいですね」
「そうだね」
おでんについてもです、先生は笑顔で言いました。
「あれもいいね」
「そうですね、ただ」
「ただ?」
「関西のおでんは二つありますね」
「お味噌で煮るのと関東煮だね」
先生はすぐに応えました。
「そうだね」
「その二つがありますね」
「そう、その二つがあるね」
「そうですよね」
「それは関西のおでんの特徴だね」
「実際にですね」
「うん、そうだよ」
その通りだというのです。
「関西ではね」
「関東煮はやっぱり」
「関東の方のおでんが入ったものだよ」
「やっぱりそうですね」
「そうなんだ、そしてね」
先生はさらにお話しました。
「文学作品にも出ているよ」
「おでんが」
「そう、織田作之助の夫婦善哉にもね」
この作品にというのです。
「出ているよ」
「小説ですか」
「そう、大阪を舞台とした小説で」
「おでんが出ているんですか」
「関東煮がね」
そちらがというのです。
「主人公の夫婦がお店で出すんだ」
「お店で」
「そしたお店をやる場面があるんだ」
「そうした場面があったんですか」
「大阪でね」
あの街で、というのです。
「他には八百屋やったり喫茶店やったり」
「色々してるんですね」
「今一つだらしなくて頼りないご主人としっかりした奥さんが主人公で」
「大阪の普通の人達ですね」
「戦争前のね」
「そうした人達を描いた作品ですか」
「そうなんだ、僕達が行ったお店も出て来るよ」
先生は葱と鶏肉を食べつつお話しました。
「題名にもなっている夫婦善哉もそうだし」
「ああ、あそこのお店ですね」
「そうだよ、あのお店も出ていてね」
先生はよく煮られた鶏肉の味を楽しみつつトミーにお話します、昆布のだしが出ていてとても美味しいです。
「自由軒のカレー、いづも屋の鰻丼にそれに粕汁も出ていたね」
「ああ、粕汁ですね」
「あれも美味しいですよね」
「はい、お話聞いた時は不思議に思いました」
トミーは先生にその粕汁についてお話しました。
「そんな食べものあるんだって」
「そうだね、日本酒の残りからね」
「まさに残った粕ですね」
「それとお味噌を使って細かく刻んだ人参や大根、豚肉か魚肉それに竹輪を入れた」
「面白い汁ものですね」
「あと豚汁もあるけれど」
先生はこのお味噌汁のこともお話しました。
「粕汁は関西のものでね」
「豚汁は関東にもありますし」
「けれど粕汁は関西だよ」
「特に大阪ですね」
「あそこのものでね」
それでというのです。
「夫婦善哉にも出ているんだ」
「そうなんですね。僕はカレーが好きですね」
「自由軒のだね」
「はい、あれが」
トミーは先生に笑顔でお話しました。
「御飯とルーが最初から完全に混ぜられていて」
「あのカレーはとても美味しいよね」
「本当に」
「僕も好きだよ」
「よく行かれていますね」
「大阪に行けばね」
その時はというのです。
「よく食べているよ」
「そうですね」
「夫婦善哉もね」
このお店もというのです。
「行ってるしね」
「法善寺横丁ですね」
「まさにあそこをね」
「主人公達が行っていたんですね」
「そうだよ」
先生は今度は茸と糸蒟蒻を食べつつお話しました。
「そして作者さんご自身もね」
「織田作之助さんもですか」
「生前はね」
「第二次世界大戦前のお話ですね」
「うん、それか戦後間もなくだよ」
そうした時だったというのです。
「織田作之助さんが大阪にいて書いていたのはね」
「確か昭和二十二年に」
「そう、一九四七年だね」
先生は西暦でお話しました。
「あの人は東京に執筆の舞台を観に行ってね」
「お亡くなりになったんでしたね」
「結核だったからね。結核はね」
先生は寂しいお顔になってトミーにお話しました。
「当時は死ぬ病気だったから」
「そうでしたね」
「長い間ね」
「ペニシリンが出来るまでは」
「あの病気で亡くなったんだ」
織田作之助さんはです。
「そうだったんだ」
「今だったら」
「結核も治る病気になったから」
「織田作之助さんもずっと書いていられましたね」
「それが出来たよ」
「そうだったんですね」
「そう思うと残念だよね」
先生も悲しいお顔になってお話します。
「他の結核で死んだ人達のことも」
「そうですね」
「結核って怖いからね」
「そうそう、死ぬ病気だからね」
動物の皆もここでお話します。
「お薬がないとね」
「そして昔はお薬がなかったからね」
「沢山の人が結核で亡くなったよね」
「イギリスでもね」
「長い間結核は人類の驚異の一つであったんだ」
先生は俯いて悲しいお顔になってお話をしました。食事は続けていますがそれでもです、その手も遅くなっています。
「他の伝染病と一緒で」
「日本もそうで」
「それで沢山の人が死んだんだね」
「織田作之助さんもそうだったんだね」
「血を吐いてその血で呼吸困難になってね」
そうしてというのです。
「お亡くなりになったんだ」
「何ていうかね」
「そう聞くと残念で仕方ないね」
「もっと長生きして書いてくれていたら」
「そう思うよね」
「そう思う人が多いね」
織田作之助さんだけでなく、というのです。
「歴史上においては」
「そうですね、僕達は健康ですが」
トミーが先生に答えました。
「そう思いますと」
「結核のことはね」
「怖いですし残念ですね」
「沢山の人達が死んでいったからね」
「今は本当にお薬がありますけれど」
「感染したらね」
「すぐに治療しないと」
それこそです。
「大変なことになりますしね」
「そうだよ。そして健康にいいものを沢山食べれば」
先生はこうも言いました。
「結核にもいいんだ」
「他の病気と同じで」
「そう、だからね」
「こうしたお鍋を食べることもいいんですね」
「お肉にお野菜が沢山入っていて栄養バランスがいいし」
先生は笑顔に戻って今度はお豆腐を食べつつ言いました。
「お豆腐にしてもそうだし」
「身体もあったまって」
「そう、そのこともあるからね」
「お鍋はいいんですね」
「特に冬はね」
「じゃあ今日は正解ですね」
お鍋にして、というのです。
「そうなんですね」
「そう思うよ。じゃあ今日はお鍋を皆で食べて」
「最後はどうしますか?」
トミーはお鍋を全部食べてからお話しました。
「それで」
「ああ、締めだね」
「はい、どうしますか?」
「雑炊かな」
少し考えてです、先生は言いました。
「最後は」
「あっ、いいね」
「だしがよく出ているしね」
「雑炊いいね」
「雑炊も凄くあったまるしね」
動物の皆も笑顔で答えるのでした。
「じゃあそれにしよう」
「雑炊にね」
「雑炊にしよう」
「あれ食べよう」
「よし、皆もそう言うし」
先生は動物の皆の言葉も受けて言いました。
「最後はね」
「雑炊ですね」
「それにしようね」
こう笑顔でお話してでした、先生達は最後は雑炊を食べました、そして雑炊を食べてからお風呂にも入ったのでした。
お鍋を食べた次の日です、この時は図書館で調べものをして本を読んでいる先生にこの時も一緒にいる動物の皆が言ってきました。
「昨日のお鍋美味しかったね」
「最後の雑炊もね」
「もう身体ぽかぽかでね」
「あったまったわね」
「そうだね、昨日も最高だったよ」
広くてとても奇麗で本が一杯ある図書館の席に座って本を読みつつです、先生は皆に穏やかな笑顔で答えました。
「美味しくてね」
「そうだよね」
「いや、本当によかったわ」
「冬は温かいものよ」
「日本でもね」
「そうだね。ただ日本はイギリスよりもまだ暖かいけれど」
先生は冬のお話もしました。
「お料理はイギリスより充実してるかな」
「冬のお料理でもだね」
「そうなんだね」
「イギリスの冬よりも日本の冬は暖かいのに」
「それでもなんだね」
「というかイギリスだけでなく欧州の冬って」
「そうそう、かなり寒いわよね」
チープサイドの家族がここでお話しました。
「フランスもドイツもね」
「ロシアや北欧なんか凄いわ」
「スコットランドの北なんか」
ジップはそこに行った時のことを思い出しました。
「物凄いしね」
「ウィーンなんかも寒いよ」
チーチーはこちらのお話をしました。
「あそこもね」
「チェコやポーランドだって冬に大雪は普通で」
トートーはこちらのお話をします。
「かなり寒いしね」
「オランダも寒いわ」
ガブガブはイギリスとは海を挟んですぐの国のことを思い出しました。
「あそこも」
「イタリアとかも結構ね」
ポリネシアも言います。
「冬は厳しいものがあるから」
「欧州全体が寒い?」
ダブダブはこう言いました。
「日本よりも」
「全体じゃなくてもかなり寒いね」
ホワイティはダブダブに応えました。
「何といっても」
「イギリスにいた時は思わなかったけれど」
「寒いとは思っていてもね」
オシツオサレツはアフリカの暑い場所にいましたがイギリスにすっかり慣れていました、それでこう言うのでした。
「日本の寒さと比べると」
「イギリスは相当だね」
「ロンドンとかにしても」
老馬はイギリスの首都のことを思いました。
「冬はこんなものじゃないよ」
「うん、日本の寒さ以上にね」
先生も言います。
「欧州の寒さは凄いね」
「イギリスもそうで」
「とにかく厳しい冬だね」
「あまりにも厳しくてね」
「辛いよね」
「そうだよ。それに何か」
こうも言った先生でした。
「日本の冬には独特の風情があるね」
「そうそう、日本の昔の民家とね」
「傘とか蓑にね」
「あと薪とか」
「火鉢とかもね」
「どれも昔のものだけれど」
それでもというのです。
「昔話とかだと独特の風情があるね」
「妙に絵になるね」
「東北とかでその名残が残ってるけれど」
「日本の冬独自のね」
「いい風情があるわね」
「あの風情がね」
本当にと言う先生でした。
「僕は好きだよ」
「僕達もだよ」
「あの景色好きだよ」
「三角の屋根の木造の家がね」
「藁の屋根で」
「あれがいいね。それに雪も」
先生はこちらのお話もしました。
「日本の雪は本州はぼた雪で」
「水分が多くて大きい」
「そうした雪だよね」
「北海道は粉雪が多くて」
「本州とかの雪はそうだね」
「あの雪もいいね」
先生は調べていくものをご自身のノートに書いていきつつお話をしています、お話をする間も学問をしています。
「日本の冬は」
「そうだね」
「やっぱり日本の冬はいいね」
「独自の風情があって」
「とてもね」
「好きだよ、日本の冬は」
先生はそうなったのです、来日してから。
「春も秋も好きだけれどね」
「夏もだよね」
「先生暑いのはどっちかっていうと苦手だけれど」
「日本の夏も好きだよね」
「そうだよね」
「うん、あの夏もね」
本当にというのです。
「いいね」
「蛍に花火にね」
「朝顔もあって」
「イギリスの夏より厳しいけれど」
「あの時もまたいいよね」
「湿気も多くて確かに厳しいよ」
先生は太めの体型のせいか夏は四季の中で一番苦手です、ですがそれでも決して嫌いではないのです。日本の夏も。
そして日本の夏についてです、さらにお話するのでした。
「けれどね」
「それでもだよね」
「向日葵も鮮やかでね」
「あの強い日差しも絵になって」
「いいよね」
「お素麺やかき氷、西瓜を食べるのもね」
先生はこちらのお話もしました。
「いいしね」
「そうそう、夏はそういうものだね」
「そういうのもまたいいわね」
「お素麺最高よ」
「どうしてあんなに美味しいのか」
「不思議なまでに美味しいわ」
「そうだね、しかし今日もね」
先生は皆と楽しくお話しつつお外を見て言いました。
「お空は曇ってるね」
「そうだね、今日もね」
「暗くて厚い雲に覆われてるね」
「何か今にも雪が降りそう」
「そんな感じね」
「大丈夫かな」
こうも言った先生でした。
「降らないかな」
「降ったら寒いしね」
「道が凍るし」
「そうなったら早いうちに帰った方がいいわね」
「やっぱり」
「その時は早く帰ろうね」
実際にこう言った先生でした。
「雪が降ったらね」
「うん、そうだね」
「その方がいいわね」
「積もらないうちに早く帰って」
「それでお家で過ごしましょう」
「暖房もあるしね」
先生のお家にもあります、ヒーターにコタツにとです。そして寝る時にはお布団に電気毛布を入れたりもします。
「それとお風呂もあるし」
「そうしたのであったまって」
「寒いのを乗り切ろうね」
「そうしようね」
「是非ね」
まさにというのです。
「特にお風呂だね」
「先生お風呂大好きになったね」
「毎日じっくり入ってるね」
「イギリスにいた時はシャワーが多かったのに」
「すっかりお風呂派になったわね」
「これがまたいいんだよ」
先生はお風呂についてもお話しました。
「あったまって身体の疲れも取れるからね」
「だからだね」
「先生も毎日入るんだね」
「そうしてるんだね」
「実際に」
「そうだよ、だから今日もね」
お家に帰ったらというのです。
「お風呂にも入るよ」
「そしてあったまってだね」
「身体も奇麗にして」
「そして寝る」
「そうするんだね」
「そうだよ、その時も楽しみだよ」
本当にというのです。
「じゃあね」
「うん、それじゃあね」
「雪が降ったら早く帰って」
「夜はお風呂」
「そちらも楽しむんだね」
「そうしようね、いや本当に日本は冬もいいよ」
この季節もとです、先生の口調はしみじみとしたものになっています。
「今日の晩御飯も楽しみだよ」
「そしてお昼は何か」
「晩御飯も楽しみだけれど」
「一体何を食べるの?」
「それで」
「うん、おうどんがいいかな」
先生はお昼はそれはどうかと言いました。
「あれもあったまるからね」
「あっ、いいわね」
「おうどんもね」
「じゃあおうどんも食べて」
「そうしてあったまりましょう」
「おうどんはいつも食べてるけれどね」
こちらも先生の好物になっているのです。
「冬は特に美味しいね」
「何といってもあったまるから」
「だからよね」
「冬のおうどんは最高」
「他の季節よりも」
「そう、じゃあね」
「今日のお昼はおうどんだね」
動物の皆も笑顔で言います。
「そっちも楽しみだし」
「お昼も食べましょう」
「そしてあったまりましょう」
「そうしようね」
こうしたこともお話してです、先生は皆で実際にお昼はおうどんを食べました。勿論他のお野菜のお料理や御飯もです。そうしてあったまりました。
しかし講義に行く時にです、先生は寒空の下風景画を描いている太田さんを見て言いました。
「こんな寒い時でも」
「うん、描いてるね」
「やっぱり凄い勢いで」
「あの真剣さは頭が下がるよ」
「あそこまでするんだね」
「好きだからだね」
だからだというのです。
「寒くてもやるんだ」
「そうしてスランプから脱出する」
「そのことを目指してるんだね」
「だからこそ頑張る」
「寒くても」
「元々好きなんだろうね」
こうも言った先生でした。
「絵を描くことが」
「最初からなんだ」
「スランプ云々じゃなくて」
「普通に絵を描くことが好きなのね」
「それが太田さんなのね」
「そうだろうね」
こう皆にお話するのでした。
「だから雪が降りそうでもなんだ」
「描くんだ」
「そうなの」
「そうだと思うよ」
こう言うのでした、太田さんを見て。ですが。
またお空を見てです、今度はお空と同じく曇ったお顔で言いました。
「本当に天気が悪いね」
「うん、どうしてもね」
「本当に雪が降りそうだよ」
「寒いしね」
「降らないといいけれど」
「それは心配だね」
先生にとってもです。
「降らないことを祈るよ」
「全くだね」
「そのことについては同感よ」
「僕達もね」
「少なくとも夕方までは」
「お家に帰るまではね」
「降らないで欲しいよ」
先生のお言葉には切実なものさえありました。
「全く以てね」
「本当にね」
「何とかね」
「その時までは」
「今日は四時ま講義があって五時までは学園にいるけれど」
そして論文を書くにしてもというのです。
「五時になったらね」
「うん、すぐにね」
「お家に帰りましょう」
「その方がいいよ」
「今日はね」
「そうだね、雪が降るかも知れないから」
だから雪が降る前にというのです。
「帰ろうね」
「そうしましょう、是非」
「それじゃあね」
「今日は早いうちに帰るのが賢明ね」
動物の皆も言います、そしてでした。
先生は実際に五時になるとすぐにお家に帰りました、そしてお家に帰ったその瞬間にでした。暗いお空からです。
白い小さなものが降りはじめました、動物の皆はその白いものを見て上を見上げて言いました。
「やっぱりね」
「降ってきたね」
「雪がね」
「予想通りに」
「うん、早く帰ってきてよかったよ」
先生も言いました。
「今日の天気予報でも降るかもって言ってたし」
「実際にそうなったね」
「降ってきたわ」
「よくも悪くも予想通り」
「的中したわね」
「こうした時はね」
何処かしみじみとした口調で言う先生でした。
「早く帰るに限るよ」
「特に予定がないのなら」
「やることがないのなら」
「それならよね」
「変に留まらないで」
「お家に帰るべきね」
「雪は何かと邪魔になるからね」
移動にです。
「だから足を取られないうちにね」
「帰るべきね」
「そうするべきね」
「私達みたいに」
「こうするべきだね」
「そうだよ。じゃあお家に入って」
そしてと言う先生でした。
「後はね」
「うん、ゆっくり休もう」
「暖かいお部屋の中でね」
「そうしましょう」
「トミーはまだ帰ってきてないね」
扉に手をかけるとまだ閉まっています、それを受けて先生は鍵を出してからそのうえでこうも言いました。
「スーパーで買いものかな」
「そうだろうね」
「じゃあトミーが帰ってくるまではね」
「お部屋あったかくしておきましょう」
「そうしておきましょう」
「それがいいね。それじゃあね」
それならというのでした。
「行こうね」
「よし、それじゃあ今から」
「お部屋の中に入って」
「そしてね」
「あったまろうね」
動物の皆も笑顔で応えてです、そのうえでお家の中に入りました。そしてお家の暖房を付けてくつろいでいますと。
トミーも帰ってきました、トミーは先生達に笑顔で言いました。
「今日はカレーにします」
「熱いカレーを食べてだね」
「はい、あったまりましょう」
こう先生に言うのでした。
「今日は」
「いいね、日本のカレーもね」
「美味しいですしね」
「それに栄養もあって」
「あったまります」
「だからだね」
「今日はカレーにしましょう」
こう言うのでした。
「ハヤシライスも考えましたけれど」
「あれもなんだ」
「お家に人参やジャガイモもあってスーパーのカレールーが安かったので」
だからだというのです。
「カレーにしました」
「そうなんだね」
「玉葱とルーを買ってきました」
「その二つだね」
「はい、それと牛肉です」
お肉はこちらでした。
「すぐに作ります」
「待ってるよ」
「是非。あとです」
「あと?」
「デザートはチョコレート菓子買ってきました」
「日本のだね」
「はい、チョコパイです」
こちらだというのです。
「これも美味しいですからね」
「そうそう、日本のチョコパイもね」
「凄い美味しさですから」
「嬉しいね。じゃあね」
「はい、デザートも楽しみにしておいて下さい」
「じゃあ僕は今はね」
晩御飯まではというのです。
「論文を書くよ」
「今日もですね」
「調べものをしてね」
そうもしてというのです。
「書くよ」
「それじゃあ」
「うん、食べてからも書くしね」
「先生は今日も学問三昧ですね」
「やっぱり学問はね」
「先生のライフワークですか」
「只のお仕事じゃないよ」
その域を超えているというのです。
「趣味であり僕そのものというか」
「そこまで至るものですね」
「だからね」
「今日もですね」
「やっていくよ」
「じゃあ頑張って下さいね」
「そうさせてもらうよ」
笑顔で応えてでした、実際にお家でも学問を楽しむ先生でした。雪がしんしんと降る中で。
季節は冬。
美姫 「やっぱりお鍋が良いわよね」
だよな。こたつに鍋の組み合わせは何とも。
美姫 「太田さんは外で頑張っているみたいね」
風邪には気を付けないとな。
美姫 「そうよね」
次回はどんな話になるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。