『ドリトル先生と悩める画家』
第七幕 芸術家の苦悩
先生は論文を書き上げました、ですがまた次の論文にかかります。王子はそんな先生を見て言うのでした。
「今度の論文は何学のかな」
「哲学だよ」
「ああ、そっちなんだ」
「そう、そっちを書くんだ」
こう言うのでした。
「今度はね」
「先生哲学の博士号も持っていたね」
「そうだよ」
「それで哲学の論文もなんだ」
「書いているんだ、ただね」
「ただ?」
「日本の哲学はね」
こちらのことをお話するのでした。
「また独特でね」
「キリスト教とはだね」
「そう、関係がなかったからね」
長い間です。
「仏教や神道の方なんだ」
「哲学に影響を与えているのは」
「そちらの宗教でね」
「また違うんだね」
「このことは前も言ったけれど」
「うん、そうだったね」
王子も頷きます。
「先生が強く意識していることだね」
「そうなんだ、最近特にね」
「学べば学ぶだけ」
「成程ね」
「そしてね」
さらに言う先生でした。
「論文にもね」
「そうしたことを書いているんだね」
「そうだよ」
「何か先生どんどん学者さんとしてのお仕事が増えているね」
「イギリスにいた時よりもね」
「そうなってきたね」
「そしてそれが楽しいみたいだね」
王子は先生ににこりとして尋ねました。
「そうみたいだね」
「うん、とてもね」
「だとしたら何よりだよ。ただね」
「ただ?」
「最近あの人はどうなの?」
「ああ、大田君だね」
「とはいってもこの数日のことだけれど」
最近とはいってもというのです。
「どうなのかな」
「やっぱり描いてるよ」
「そうなんだ」
「絵をね」
「描かないってことはないんだね」
「うん、とにかく描いてね」
そしてというのです。
「美術館に行ったり景色を観たりしているよ」
「積極的だね」
「うん、とにかく前向きだよ」
「スランプを脱出しようと」
「本当にね」
「何かスランプの人ってね」
王子は腕を組んでです、こんなことを言いました。
「普通はね」
「欝になるっていうんだね」
「そう思っていたけれど」
「それは人それぞれだよ」
「太田さんみたいにだね」
「そう、かえって動く人もね」
そうした人もというのです。
「いるんだ」
「そうなんだね」
「そう、だからね」
「太田さんはこうした時こそなんだ」
「動いてるんだ」
「成程ね」
「そしてそれはいいことだと思うよ」
先生はにこりと笑って言いました。
「それがスランプ脱出のきっかけになって」
「それにだよね」
「そう、そこからね」
「何かが得られるから」
「いいんだよ」
「今後のことにも」
「芸術は見て知ったものが蓄積されていくものでもあるんだ」
先生は王子にこうもお話しました。
「文学なんかでもそうだね」
「ああ、その人が知っていることや見てきたことがね」
「蓄積されて書かれるからね」
「だからだよ」
「スランプの時にこそ太田さんみたいに動くと」
「それが糧になるんだよ」
「そういうことだね」
「勿論太田君みたいにスランプで動ける人でなくてもね」
それでもというのです。
「いいんだよ」
「そうなんだ」
「動ける時に動いて」
「描いて観て回る」
「そうしてもいいんだ」
「スランプの時は動かないといけないとかは」
「ないんだ」
それは決してというのです。
「そうしなくてもいいんだ」
「じゃあ考え込んでいても」
「それはそれでね」
「スランプ脱出になるんだ」
「そうだよ」
「ううん、難しい話だね」
「いやいや、難しいんじゃなくてね」
先生は王子にさらに説明しました。
「その人のそれぞれの時でね」
「スランプの脱出の仕方が違うんだね」
「そうだよ」
先生は王子に穏やかな声でお話しました。
「怪我や病気と同じだよ」
「ああ、その都度違うね」
「腕をすりむいたり脚を骨折したりとかね」
「誰もがいつも同じ怪我をしないね」
「そう、病気もね」
「風邪にしても」
王子も風邪をひくことがあります、その風邪をひいた時のことを思い出してそのうえで先生にお話するのでした。
「いつも同じ風邪じゃないね」
「高い熱が出たり咳が激しかったり」
「その都度ね」
「違うね」
「その治療方法もその都度違うね」
「出すお薬とかがね」
「それと同じなんだね」
「スランプを病気と考えると」
その観点からしてみると、というのです。
「そうなるよ」
「そうなんだね」
「こうお話すればわかってくれたかな」
「うん」
王子は先生に微笑んで答えました。
「そうお話してくれたらね」
「それは何よりだよ。じゃあね」
「太田君についてはね」
「これからだね」
「どうなるかね」
それはというのです。
「わかってくるよ」
「そうなんだね」
「そしてね」
「そして?」
「太田君は何かね」
先生は次の論文を書く用意をしつつ王子にお話しました。
「きっかけを掴められれば」
「それでだね」
「スランプから脱出出来るんじゃないかな」
これが先生の見立てでした。
「そう思うけれどね」
「そうだといいね」
「だから色々なものを観ることはね」
「いいんだね」
「うん、そして描くこともね」
それもというのです。
「いいよ」
「何でもすることだね」
「それはとてもいいことなんだ」
「よく無駄なあがきとか言うけれど」
「いやいや、何かをすることがね」
そのこと自体がというのです。
「いいことなんだ」
「それが実を結ぶから」
「絶対にね」
だからというのです。
「そうするといいんだ」
「そう言えるのが先生だね」
「僕だっていうんだ」
「そう、そこでそう言わなくて」
そしてというのです。
「何もしないままでいる人もいるから」
「努力しないでだね」
「他のやってる人を言う人がね」
「僕はそうしたことはしないよ」
「やるんだね」
「自分が出来ないことはあるけれど」
例えばスポーツです、先生はとにかく身体を動かすことは苦手です。もうそれはどうしようもないことでもあります。
「それでもね」
「やれることはだね」
「何でもすることのがね」
「先生だね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「僕なんだ」
「そういうことだね」
「そう、だから太田君が僕のところに来てくれたら」
「お話させてもらうんだね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「そうしているんだ」
「そういうことだね、じゃあ僕はね」
「王子は?」
「うん、これから自分の出来ることをするよ」
微笑んで先生に言うのでした。
「そうさせてもらうよ」
「それは何かな」
「まずは学校の講義に出てね」
「ああ、学業だね」
「そしてお家に帰って本を読んで」
「そうして学問にも励むんだね」
「明日王家のお仕事が入っているけれど」
それもというのです。
「させてもらうよ」
「そのお仕事は何かな」
「今度は奈良に岡山に行くんだ」
「あそこになんだ」
「吉備津神社に行くんだけれど」
「ああ、あの神社だね」
吉備津神社と聞いてです、先生はすぐに笑顔で頷いて言いました。
「あそこも歴史とゆかりある神社なんだ」
「そうだって聞いてるよ」
「桃太郎のね」
「日本の童話のヒーローだったね」
「その桃太郎のモデルになった人の神社で」
「あと怪奇ものでの舞台だった?」
「雨月物語だね」
この作品の名前もです、先生はお話に出しました。
「そこに吉備津の釜っていうお話があってね」
「そのお話の舞台でもあるんだね」
「最初の場面で出て来るんだ」
その吉備津神社がというのです。
「あそこの釜で結婚占いをしていたんだ」
「そんなこともあったんだね」
「そうしたことがあるね」
「とても歴史ある神社だね」
「だから行くとね」
そうすると、というのでした。
「それはそれでいいよ」
「それじゃあ明日は」
「楽しんできてね」
「そうさせてもらうね。あと岡山だから」
「桃にマスカットにだね」
「あとママカリとか黍団子もね」
そうした食べものもというのでした。
「楽しんでくるといいよ」
「それじゃあね」
「明日はだね」
「岡山に行ってくるよ」
こう言ってでした、そのうえで。
王子は大学の講義に出る為に研究室を後にしました。そして後は先生と動物の皆だけになりましたが皆はお茶を飲む先生に尋ねました。
「ねえ、岡山だけれど」
「先生あっちにも行ったことあるよね」
「学問のフィールドワークで」
「そうだったね」
「そう、それでその神社にも行ったよ」
吉備津神社にもというのです。
「そうしたよ」
「そうだったね」
「僕達も一緒だったしね」
「あっちでも楽しんだね」
「食べることも」
「桃、美味しかったわ」
ガブガブはその桃のことをお話しました。
「絶品だったわよ」
「僕はマスカットかな」
トートーは緑の葡萄のお話をします。
「あれがよかったよ」
「黍団子もね」
ポリネシアは団子がお気に入りとなりました。
「美味しかったわ」
「ママカリはどう?」
ホワイティはお魚のお話をしました。
「あっさりしていて美味しかったね」
「あのお魚よかったね」
ジップも言います。
「どんどん食べられたよ」
「そうそう、御飯にもよく合って」
チーチーもママカリについてお話します。
「つい食べ過ぎたよ」
「お米もね」
「美味しかったわ」
チープサイドの家族はお米自体の味を楽しんでいました、岡山のそれも。
「お水がいいせいか」
「食事が進んだわ」
「とにかく何でも美味しくて」
食いしん坊のダブダブらしい言葉でした。
「いい場所だったね」
「景色もよかったね」
老馬は岡山のそれを思い出していました。
「とてもね」
「また行きたいね」
「そうだね、岡山にもね」
最後にオシツオサレツが二つの頭でお話します。
「そして楽しみたいね」
「またね」
「うん、岡山もね」
先生もしみじみとして言うのでした。
「いい場所だったね」
「すぐお隣の広島もね」
「あそこもいい場所だけれどね」
「岡山もだよね」
「とてもいい場所だったからね」
「また行きたいね、案外近いし」
先生は距離のお話もしました。
「神戸の長田からだとね」
「そうそう、実は近いのよね」
「岡山って神戸とはね」
「これが案外」
「そうなのよね」
「だから」
それでというのでした、先生も。
「また行きたいね」
「そうだよね」
「すぐに行けるし」
「そのこともあるし」
「また行きたいね」
「大阪にもすぐ行けるけれど」
それだけでなく、です。
「岡山にもだからね」
「神戸はね」
「そうしたいい場所だね」
「だからね」
それ故にというのです。
「行きたいね」
「そうだね、じゃあね」
「その時が来るのを楽しみにして」
「そしてだね」
「今は学問だね」
「そう、それにね」
さらにお話する先生でした。
「今は書いていくよ」
「論文をだね」
「そして太田さんが来るかお会いしたら」
「まただね」
「アドバイスをするんだね」
「そうするよ」
是非にというのでした、そうしたお話をしつつです。先生は今は論文を書いて学問を楽しんでいました。そしてです。
この日はそのまま終わって次の日にです、先生は時間があったので動物の皆と一緒に学園の中にある植物園に行きました。そこで植物を観て回っているとです。
太田さんは薔薇のコーナーにいました、そこで薔薇達を観ています。先生はその太田さんにお声をかけました。
「今日はこちらにだね」
「はい、来まして」
そしてとです、太田さんも答えます。
「草花達を観ています」
「そうしてだね」
「スランプをです」
「抜け出るつもりなんだね」
「何とか」
こう答えるのでした。
「そのつもりでいます」
「そうなんだね」
「それにスランプとは別に」
「別に?」
「お花を観ることは好きですから」
太田さんは先生ににこりと笑ってこうも言いました。
「来ています」
「そうなんだね」
「はい」
「お花を観るとね」
「それだけで感じるものがありますね」
「そう、お花だけじゃなくて草木を観ていると」
先生は植物全体のお話をするのでした。
「心が癒されるんだ」
「そうですよね」
「そして感じ取るものがあるから」
だからだというのです。
「いいことだよ」
「お花を観ることも」
「その通りだよ、そしてこの植物園はね」
先生はこの植物園のお話もしました、今先生達がいるそこのです。
「色々な植物達があるから」
「余計にですね」
「観ていていいんだよ」
「そうですよね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「ここの薔薇の中でも」
さらにお話する先生でした。
「青い薔薇は独特なんだよね」
「あちらですね」
太田さんは先生の言葉を受けて薔薇園のある場所にお顔を向けました、そこに青い薔薇達がありました。
「あそこは」
「うん、あの薔薇はね」
「特別、ですね」
「薔薇の中でもね」
「最初はなかった薔薇ですね」
「チューリップもそうだけれど」
先生はこの花もお話に入れました。
「薔薇には青いものを抑制するものがあるんだ」
「薔薇自体にですな」
「その細胞レベルでね」
「そうだったんですか」
「だから青い薔薇やチューリップはなかったんだ」
今までそうだったというのです。
「それを遺伝子改良をしていって」
「造ったんですか」
「そうなんだ、長い時間と努力をかけて」
「大変だったでしょうね」
「青い薔薇は有り得ないものという意味でもあったからね」
「それだけですね」
「存在し得ないものとされていたんだ」
先生もその青薔薇達を観ています、他の薔薇達とは明らかに違ったその色の薔薇達をです。
「どうして生み出すのか」
「そのことについて」
「長い間多くの人が取り組んで戦ってきて」
「そしてですね」
「ようやく生み出されたのがね」
「青薔薇なんだ」
こう太田さんにお話するのでした。
「そして青いチューリップなんだ」
「成程」
「悩んで苦しんだ」
「何度もチャレンジしてですね」
「生み出されたものだよ」
「それじゃあ」
ここまで聞いてです、太田さんは先生に言いました。
「僕もですね」
「そうだね、悩んで苦しんでね」
「何度もチャレンジしてですね」
「スランプから抜け出るものだから」
「そうですね。まあ僕の場合は」
太田さんは窓の外のお空も見ました、見ればお空は今もどんよりとしていて鉛の様な雲が果てまで広がっています。
「お天気がですからね」
「それの影響を受けてだね」
「スランプになっていると思いますから」
「天候は気分に影響するからね」
「実際にそうだからですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「お天気が続くとね」
「また違いますね」
「うん、けれど気候はね」
このことについてはです、先生は苦笑いでお話しました。
「まだ人間の手ではね」
「どうしようもないですね」
「そう、そうしたことはね」
どうしてもというのです。
「まだ何も出来ないよ」
「だからですね」
「そう、そのことは待つしかないよ」
お天気のことはというのです。
「残念だけれどね」
「そうですね、けれど」
「それでもだね」
「スランプを抜け出るには早い方がいいです」
「それでだね」
「はい、何とか」
「そう意気込んで頑張ると」
先生は太田さんに微笑んでお話しました。
「いいと思うよ」
「スランプ脱出は早いですか」
「その可能性もあるし。それに」
「それに。ですか」
「いいものも得られるから」
「その頑張る中で」
「それは後になって生きてくるよ」
「スランプの後で」
「うん、そうなるよ」
「頑張ることはいいことですね」
「努力することはね」
そのこと自体がというのです。
「いいからね」
「だからですね」
「どんどん励むといいよ」
こうも言ったのでした。
「僕と違ってね」
「先生とは、ですか」
「僕は努力はしてないからね」
「いえ、してますよ」
「そうかな」
「はい、先生いつも頑張って学問をされてますよ」
「いやいや、それは楽しんでいるだけだよ」
こう太田さんに言うのでした。
「僕はね」
「努力じゃないですか」
「そうだよ」
「つまりあれですね」
先生のお話を聞いてです、太田さんは笑ってお話しました。
「努力を努力と思わない」
「そうなるのかな」
「そうだと思いますよ」
「そうだといいけれどね」
「先生の努力は凄いですよ」
学問に励んでいることを努力とするならというのです。
「もう相当に」
「そうなのかな」
「はい、まあ僕もスランプなのは事実ですが」
「絵を楽しんでるんだね」
「色々観て回ることも」
それもというのです。
「そうしてます」
「楽しんでそして」
「やっていってます」
「そうなんだね」
「はい、今も薔薇を観ていますし」
「ああ、そうだね」
「薔薇も楽しんでいます」
鑑賞してというのです。
「こうして。そして次は」
「どのお花を観るのかな」
「熱帯のお花を観に行きます」
「ああ、そちらをだね」
「はい、そうします」
こう先生にお話するのでした。
「次は」
「熱帯の鮮やかな色の花達をだね」
「そうします」
「それもいいね」
先生は笑顔で、です。また言いました。
「とにかく何でもどんどんしていけばね」
「きっかけになりますよね」
「スランプを抜け出るね」
「そうですよね。ですから」
「熱帯のお花も観るんだね」
「ラフレシアも見ます」
世界最大のお花です、その匂いも有名です。
「そうしたいです」
「ああ、ラフレシアはね」
「今は咲いていないですか」
「あのお花は特別だからね」
ただ大きくて凄い匂いをするだけではないのです。
「お花が咲くのはごく僅かな間だけでね」
「じゃあ今は」
「多分だけれどね」
「咲いていないですか」
「明け方の僅かな間だけで」
先生は植物学者なのでこうしたこともお話出来ます、動物学も植物学も沢山の論文を書いていて博士号も持っています。
「この植物園でも特別の観るイベントを開催する位だからね」
「そういえばそんなのやってますね」
「そうだね」
「だからですね」
「うん、今はね」
残念ながらというのです。
「咲いていないよ」
「そうですか」
「本当にあのお花はね」
「僅かな間しか咲かないんですね」
「咲いている姿はインスピレーションになるだろうけれど」
それでもというのです。
「それは諦めてね」
「わかりました」
太田さんも納得しました、もっと言えば納得するしかありませんでした。
「じゃあそうします」
「そういうことでね」
「はい、ただ熱帯のコーナーには行きます」
熱帯のお花達が咲いているそちらはというのです。
「そうします」
「それじゃあね」
「はい、そうして」
そのうえでというのです。
「スランプを脱出します」
「そのきっかけにするんだね」
「そうします」
「それじゃあ僕は別の場所に行くけれど」
「どちらに」
「椿の方に行くよ」
薔薇達からというのです。
「そちらにね」
「ああ、椿ですか」
「後で熱帯の方にも行くけれど」
「次はですね」
「椿の方に行くよ」
「そうですか。じゃあ熱帯の場所でお会い出来たら」
「またね」
先生も応えます。
「宜しくね」
「こちらこそ」
笑顔でお話をしてです、先生と動物の皆は一旦笑顔でお別れしました。そして先生達はその椿のコーナーに行きました。
そして赤や白の椿達を観て楽しんでいますと。
ふとです、動物の皆が先生にこんなことを言ってきました。
「お花っていいわね」
「どのお花もね」
「観ているとそれだけで」
「何か違うね」
「草木自体が観ているだけで心を癒してくれるからね」
先生も皆にお話します。
「そしてお花は奇麗だし」
「そのことがあるから」
「だからいいのね」
「こうして観ても」
「そうなのね」
「そうだよ」
実際にというのです。
「いいんだよ」
「成程ね」
「じゃあ観ていきましょう」
「椿達もね」
「こうして」
「皆でね」
先生も応えます、そうして皆でお花達を落ち着いて観ていますがここで、です。ふと動物の皆はこんなことも言いました。
「太田さんだけれど」
「何か強い刺激求めてるのかしら」
「そうじゃないかな」
「あっ、そういえば」
先生も言われて気付きました。
「そんな感じがするね」
「そうだよね、熱帯のコーナーに行ったから」
「熱帯のお花って色が派手だからね」
「赤とか黄色とか紫とかでもね」
「派手な色だよね」
「そうだね、強い刺激を求めて」
そしてというのでした、先生も。
「そこからスランプを脱出しようとしてるのかな」
「そうなのかな」
「やっぱりね」
「スランプ脱出する為に」
「強い刺激を求めてるのかな」
「だとするとね」
先生はそうであった場合を考えて述べました。
「ゴッホとかマグリット的な」
「そうした画家さん?」
「そんな感じなのかな、太田さんが求めてるのは」
「そうなのかしら」
「そうかもね」
「画家さんっていっても色々だよね」
ホワイティがここで言いました。
「人によって全然違うわね」
「そうそう、それはまさに千差万別」
ジップはホワイティに応えました。
「全然違うね」
「何あそこまで違うのか」
トートーの口調はしみじみとなっていました。
「不思議な位だよ」
「人間の芸術って全部そうだよね」
チーチーも不思議がっています。
「その人で全然違うね」
「何そんなものが生み出せるかとか」
ダブダブが言うには。
「わからない時も多いよ」
「そのわからないものを生み出すのが、よね」
ポリネシアは首を傾げさせて考える感じになっています。
「芸術でもあるのね」
「そうなるみたいだね」
「そうね」
チープサイドの家族はポリネシアのお話を受けて家族で言いました。
「芸術というものは」
「人間の中にあるそういうものも出していくものなのね」
「そう考えると凄いね」
「一人一人生み出すものが違うし」
オシツオサレツの二つの頭も言うのでした。
「不思議でわからない」
「そのこともあるね」
「そして太田さんもだね」
老馬はその太田さんのことを思います。
「その芸術家の一人なんだね」
「それで刺激を求めて」
最後にガブガブが言いました。
「熱帯の方に行かれたのね」
「そうだね、彼の絵のタッチもね」
先生は観たそれを思い出してもいます、今は椿を観ていますが太田さんの絵も脳裏に思い浮かべているのです。
「そうした感じだね」
「ゴッホとか?」
「そんな風だね」
「そうだね、描くのも速いし」
このことにも言及しました。
「絵の具の使い方も多いし」
「使う絵の具の量が」
「それがだね」
「少なくとも大人しい感じの絵じゃないよ」
太田さんのそれはというのです。
「間違ってもね」
「激しいんだね」
「そして速いんだね」
「そんな風なんだ」
「うん、だから激しかったり強かったりする刺激は」
そうしたものはといいますと。
「太田君にはいいかもね」
「それじゃあだね」
「今回のことは太田さんにはいいんだ」
「熱帯のコーナーに行ったことは」
「そうなんだね」
「そうなるかもね」
確かなことは言えないけれど、という返事でした。
「逆もまた真なりというからそういうのを観てもいいと思うけれど」
「それでもだね」
「観てみたらいいんだね」
「熱帯のお花も」
「そうなんだね」
「曇りが苦手みたいだし」
先生は太田さんがスランプは雨が多かったり曇りの時にスランプになることが多いとお話してくれたことからも考えました。
「どうもね」
「晴れ空が好きなのかな」
「熱帯みたいに」
「トロピカル派?太田さんって」
「そうなのかな」
「その可能性はあるね、熱かったり激しいのが好きなら」
さらに考えて言う先生でした。
「そこからスランプの脱出方法があるかな」
「そこからなんだね」
「どうにか出来るかも知れないんだね」
「太田さんのスランプについて」
「そうなんだね」
「ひょっとしたらね」
先生は皆に考えるお顔のままお話します。
「出来るかもね。そしてそれで解決出来るなら」
「是非だね」
「そうしたことをして」
「そのうえでだね」
「やっていくんだ」
「そうしようかな、さてそれじゃあね」
ここまでお話してでした、先生は皆にあらためて言いました。
「次はね」
「うん、次はね」
「熱帯のお花の方に行こうね」
「そうしようね」
「太田さんまだいるかしら」
「おられたらいいね」
「彼がいたら」
先生はにこりとしてでした、こんなことを思いました。
「そろそろ十時だしあちらには喫茶店もあるから」
「その喫茶店でだね」
「お茶をするんだね」
「そうしようかな、しかもあちらは暑いから」
熱帯のコーナーだけあってです、室温もその様に設定されているのです。元々植物園のサンルームの中なので暖かいのでえすが。
「いつもと変わったものを飲もうかな」
「お茶を飲むにしても」
「そうするんだ」
「アイスティーがいいかな」
飲むお茶はというのです。
「それもレモンティーをね」
「アイスレモンティーなんだ」
「そちらにするんだ」
「そうしようかな」
こう皆に言うのでした。
「今回はね」
「そしてセットはどうするの?」
「ティーセットの方は」
「南国のフルーツかな、キーウィもパパイヤやパイナップルに」
そうしたものでというのです。
「後はドラゴンフルーツやマンゴーかな」
「いいね、じゃあね」
「フルーツのティーセットといきましょう」
「あちらに太田さんがおられたら一緒にね」
「一緒に楽しみましょう」
動物の皆も応えました、そしてです。
皆は熱帯植物のコーナーにいました、そして先生達を見付けて笑顔で言ってきました。
「またお会いしましたね」
「うん、そうだね」
「ずっとここで観ていました」
太田さんは先生に笑顔で答えました。
「お花達を」
「そうだったんだね」
「はい、色々なお花を観ていました」
「そして後でだね」
「また描きます」
絵をというのです。
「そうします」
「このお花達もかな」
「そうしようかって思っています」
「そうなんだね。じゃあね」
「そうしてもですね」
「いいと思うよ」
「それじゃあ」
太田さんは先生のお言葉に笑顔で頷きました。
「そうしていきます」
「前に進めるなら進んで。そして」
「そして?」
「お茶を飲めるならね」
先生はにこりと笑って今回の本題にです、お話を移しました。
「飲もうね」
「お茶をですか」
「そう、それをね」
「お茶ですか」
「そう、どうかな」
「ひょっとして」
「そう、僕達は今からお茶の時間だけれど」
動物の皆にお顔を向けてです、先生は太田さんにお話しました。
「どうかな」
「僕も一緒に」
「うん、よかったらね」
「いいんですか?僕も」
「遠慮は無用だよ」
先生は太田さんにこうも言いました。
「ではいいね」
「それじゃあ」
「うん、今から一緒にね」
「お茶ですね」
「そうしようね」
こうしてでした、先生達は太田さんと一緒にお茶を楽しみました。今は冬ですがアイスレモンティーとトロピカルなフルーツ達はとても美味しかったです。
植物園に行った先生たち。
美姫 「そこに太田さんも居たのね」
どうやら植物を書いていたみたいだけれど。
美姫 「色々と頑張っているわね」
だな。調子が上がっていけば良いけれど。
美姫 「どうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」