『ドリトル先生と沖縄の蛇達』
第六幕 他の島にも
先生は晩御飯にお昼にお話した通り沖縄の魚料理を食べました、居酒屋に入ってそのうえでお刺身や揚げたもの、焼いたものとです。
色々注文して泡盛と一緒に楽しんでいます、そうしながら言うことはといいますと。
「片目がないお魚はね」
「うん、ないね」
「今回はね」
「両目があるのばかりだね」
「そうだね」
「それは少し残念だね」
先生は沖縄のお魚のお刺身の盛り合わせを食べながら言いました。
「どうにもね」
「そうだね、けれど美味しいね」
「そうだね」
「沖縄のお魚もね」
「やっぱり美味しいね」
「新鮮でね」
「島だからね」
そして海に囲まれているからです。
「新鮮なお魚が漁れるからね」
「それをお刺身にして食べる」
「焼いてもいいし」
「揚げてもいい」
「そしてそのお料理をお酒と一緒に楽しむ」
「そうするんだね」
「そうだよ、この味はね」
まさにというのです、先生も。
「沖縄ならではだけれど」
「沖縄でもお魚が美味しいのはね」
「やっぱりいいことよね」
「お魚が好きになった先生にとっては」
「最高のことだね」
「お魚が美味しいことは」
先生は泡盛も飲んでいます、アルコール度の強いお酒を楽しみつつそのうえで皆に言うのでした。
「このこと自体が素晴らしいことだよ」
「そのお酒も飲んで」
「そしてだよね」
「楽しんで」
「そのうえで」
「明日また楽しもうね」
こう言った先生でした。
「学問も沖縄も」
「そうだね、それにしても」
チーチーもお刺身を食べつつ言うのでした。
「沖縄のお魚は何かね」
「そう、本州のものとはね」
トートーは焼き魚をついばみつつ言いました。
「また種類が違うね」
「北海道のともね」
ポリネシアも言います。
「また違うわね」
「味付けも少し違うけれど」
ジップは揚げたものを食べています。
「お魚の種類自体がね」
「また違うから」
ダブダブは色々と食べています。
「同じ様で違うものを食べている感じだよ」
「これも沖縄ね」
「そうよね」
チープサイドの家族も言います。
「日本にいるけれど少し違う」
「お魚もそうなのね」
「けれど美味しくて」
ガブガブはその美味しさを素直に指摘しました。
「食べやすいね」
「種類と味付けは違っても」
「それでもなんだね」
オシツオサレツも言います。
「美味しいんだね」
「沖縄のお魚の料理も」
「いや、こうして食べてると」
最後に言ったのは老馬でした。
「美味しくて幸せになれるね」
「沖縄のお魚を食べてもね」
やっぱり食べ続けている先生でした。
「そうなるんだよ」
「いや、先生本当にお魚好きになったね」
「魚料理がね」
「イギリスだとフィッシュアンドチップス位しか食べなかったのに」
「それかムニエル」
「生牡蠣位は食べてたけれど」
「鮭とか鱈とかね」
種類でいうとです、お魚の。
「そういうのばかりで」
「こんな沢山の種類は食べてなかったね」
「お料理の種類もね」
「全然なくて」
「日本に来るまではね」
「とてもだね」
「うん、日本に来て」
実際にと答えた先生でした。
「お魚のよさを本当にわかったよ」
「食べてみてだね」
「実際にだね」
「お刺身にしても天麩羅にしても」
「焼いてもいいしね」
「煮ても」
「そう、お肉だけじゃなくて」
まさにと言う先生でした。
「お魚もいいからね、じゃあね」
「うん、今晩もだね」
「お魚を楽しもうね」
「食べてそして」
「英気も養うんだね」
「そうしようね、けれどお酒は」
その泡盛を飲みながら言った先生でした。
「今晩は控えようかな」
「そうするんだ」
「今晩は一本」
「それで止めるんだ」
「今日のお昼はワインを二本飲んだからね」
ボトルで、です。
「アルコールも過ぎるとね」
「よくないからね」
「お酒はお薬にもなるし毒にもなる」
「だからだね」
「もうこれでね」
「今日はお酒は止めるんだね」
「そうするよ、そして明日はね」
どうするかとです、先生は言うのでした。今度は唐揚げを食べています。沖縄のお魚の唐揚げも美味しいです。
「お酒は控えるよ」
「この旅行中も飲んでるしね」
「たまには休肝日も必要だしね」
「控えるんだね」
「そうするんだね」
「健康の為にね」
このことを考えてというのです。
「特に僕はお医者さんだし」
「お医者さんの不摂生はね」
「お話にならないわ」
「人の身体を治すお医者さんがそんなことしたら」
「絶対に駄目ね」
「そうよね」
「だからね」
それだけにというのです。
「今晩はこれで止めて」
「そしてだね」
「明日は控える」
「そうするんだね」
「休肝日にするんだね」
「そうするよ、じゃあお魚を食べて」
そしてというのでした。
「それでホテルに帰ってシャワーを浴びて寝ようね」
「そうしようね」
「そして明日もね」
「頑張ろうね」
皆も先生にお話します、そしてでした。
皆はこの日もゆっくりと休みました、そのうえで次の日の朝もしっかりと食べてから学会に出ました。その学会の後で。
先生はホールを出ようとする時に安座間さんに言われました。
「先生の論文ですが」
「昨日発表した」
「はい、その論文は沖縄の森について書いていましたね」
「現在とこれからの環境について」
「そこで蛇についても触れておられましたね」
「沖縄の」
「はい、その蛇達ですが」
沖縄の、というのです。
「先生はヒャンやハイについても書かれていましたが」
「少しでしたが」
「先生はあの蛇達についてご存知なのですね」
「はい」
先生は安座間さんのその問いに答えました。
「沖縄の生態系についても興味がありまして」
「だからですか」
「はい、ヒャンやハイもです」
彼等についてもというのです。
「知っています」
「そうですか、それでは」
「それでは?」
「ヒャンやハイの現状もご存知ですね」
「特別指定ですね」
「はい、国の」
安座間さんは先生に答えました。
「特別指定動物です」
「そうですね」
「そしてその保護が問題ですが」
「目撃例自体が少ないですね」
「非常にです」
安座間さんは残念なお顔でお話しました。
「最近まで実在さえ疑われていました」
「生息地域が狭く個体数も少ないですね」
「本当に稀少な生きものなので」
だからというのです。
「今も目撃例は僅かです」
「島にいる人達の間でも」
「見た人は少ない位で」
「そこまで希少な生物というのも」
先生も複雑なお顔で言うのでした。
「イリオモテヤマネコと同じで」
「保護も大変です」
「そうですね」
「あの島には他にもです」
安座間さんはイリオモテヤマネコのいる西表島についてさらにお話をしました。
「ヤマネコがいるそうですが」
「それは僕も聞いています」
「まだ発見されていません」
「そうですね」
「決して大きな島ではないですが」
それでもというのです。
「どうしてもです」
「発見されていませんね」
「今現在もです」
「イリオモテヤマネコも長い間でしたね」
「実在が確かめられていませんでした」
「そうでしたし」
「そのもう一種類、果たして」
安座間さんは学者としてです、真剣に考えています。
「いるのでしょうか」
「それを確かめるべきですね」
「学者としましては」
「その通りですね」
「勿論環境のことも考え」
「環境を守ることも学者の務めですから」
先生もこう言います。
「そこは、ですね」
「はい、絶対です」
環境を守ることも忘れていません。
しかしです、安座間さんはこうも言ったのでした。
「ですがやはり」
「どうしてもですね」
「実在をはっきりさせたいです」
どうしてもというのです。
「私としましては」
「僕もそう思います、出来れば」
「西表島に入られて」
「そしてです」
そのうえでというのです。
「その実在を確かめたいです」
「そうですか」
「若し出来ることなら」
「今沖縄にいるので」
「出来ることなら西表島にも行きたいですね」
先生は安座間さんにお話しました。
「そうしてです」
「そのヤマネコの実在を確かめたい」
「そう考えています」
「そうですか、では」
「では?」
「一つお願いしたいことがあります」
先生に言うのでした。
「実は先程お話したヒャンとハイですが」
「あの蛇達のことで」
「そうです、実は八条グループは沖縄においても生物の保護を行っていますが」
「そのことで」
「先生にも協力して欲しいのです」
先生に真剣な顔でお話をします。
「ヒャンとハイについても」
「あの蛇達についても」
「先程お話しましたが国の特別指定動物です」
「絶滅も、ですね」
「有り得ます」
ヒャンとハイもというのです、こうしたことが心配されている生きものも地球には沢山いて日本でもなのです。
「ですから」
「僕に、ですか」
「彼等の保護についてです」
「協力して欲しいと」
「そうです」
まさにというのです。
「お願い出来るでしょうか」
「学会が終わってですね」
「暫く神戸に戻られるまで時間がありますね」
「はい」
先生は安座間さんに素直に答えました。
「多少ですが」
「ではその間にです」
「ヒャン、ハイの保護をですね」
「お願いしたいですが」
「わかりました」
先生は安座間さんのお願いに微笑んで答えました。
「それではです」
「今回はですね」
「はい、そうです」
まさにというのです。
「神戸に戻るまでに」
「ヒャンとハイを見付けて」
「頑張りましょう」
「それじゃあ」
二人で話してでした、それから。
安座間さんは先生にです、こう言いました。
「では今からこのセンターのです」
「所長さんのところに行ってですね」
「詳しいお話をしましょう」
「では」
こうしてでした、先生は安座間さんと一緒にセンターの所長室に向かいました、所長室はセンターの一階の隅にありました。
その隅の所長室に入るとです、そこには。
質素で機能的でよくお掃除されたお部屋の中にアロハシャツを着た白髪をオールバックにさせた初老の人がいました、その人が席からです。
先生と安座間さんがノックをしてどうぞと答えた上で入って来てです、こう言ったのでした。
「先生が来られたということは」
「はい、そうです」
安座間さんがオールバックの人に答えました。
「協力を約束してくれました」
「そうですか」
「はい、そうです」
「いや、よかったです」
「この方がです」
安座間さんはほっとしたお顔になっている人を指し示して先生にお話しました。
「センターの所長さんです」
「そうですね」
「はい、そうです」
所長さんも答えます。
「私がこのセンターの所長の翁寺靖典です」
「ドリトル先生です」
安座間さんが所長さんに紹介しました。
「先程お話させてもらいまして」
「そうですか、では」
「ヒャンとハイのこともです」
そちらもというのだ。
「協力してくれるとのことです」
「それは有り難いです」
「ヒャンやハイについては僕も興味を持っていました」
先生も所長さんにお話します。
「ですが見る機会がなくて」
「実は沖縄の人でもです」
「彼等を見た人は少ないですね」
「はい、非常に」
「やっぱりそうですね」
「むしろイリオモテヤマネコよりもです」
このとても貴重なヤマネコよりもというのです。
「稀少なので」
「見た人が少なくて」
「若しかするとです」
こうも言った所長さんでした。
「西表島にもう一種類いるという」
「あの大型のヤマネコとですね」
「同じ位です」
「見た人が少なくて」
「その生態もまだまだです」
「謎に包まれていますね」
「はい、とにかく稀少な蛇達なので」
それ故にというのです。
「保護をしてです」
「絶滅しない様にして」
「そうです、そしてです」
「その生態系もですね」
「研究します」
保護すると共にというのです。
「その為に」
「はい、是非」
「わかりました、彼等の種の保全は絶対にしないといけませんし」
先生は環境を保護することからこう言いました。
「そしてです」
「はい、生態系の研究も」
「しないといけません」
「生物の生態系の研究はです」
「学者の義務ですから」
「そうですね」
「あくまでその生物を傷付けない様にですが」
この前提も忘れていない先生です。
「必ずしないといけないです」
「では」
「はい、ヒャンやハイのいる島に行って来ます」
「私が案内しますので」
安座間さんが先生に言ってきました。
「宜しくお願いします」
「それでは」
「ただ、ヒャンやハイはです」
「彼等はですね」
「それぞれ島に生息していますので」
「行くことも手間がかかりますね」
「移動にも」
このことも大変です、何しろ沖縄は沢山の島から成り立っているので。
それで、です。こう言ったのでした。
「ですがそれでもですね」
「はい、お願いします」
「それでは」
「学会が終わりましたら」
所長さんが先生に言います。
「お願いしますね」
「それでは」
「いや、先生が来てくれてです」
所長さんは笑顔のまま先生に言うのでした。
「何とかなりそうです」
「ヒャン、ハイ達の保護が」
「とにかく姿を見ることだけでも滅多にない」
「そうした蛇達なので」
「難しいです」
こう言ったのでした。
「その保護が」
「そうですね、ですが」
「それでもですね」
「確かに難しいですが不可能なことではないです」
先生は所長さんににこりと笑って答えました。
「ですから」
「保護は、ですね」
「必ず出来ます」
間違いなく、というのです。
「そう信じてです」
「そしてですね」
「やらせて頂きます」
「それでは」
こうしてでした、先生は安座間さんと一緒にヒャン、ハイ達の保護に向かうことになりました。そしてでした。
所長さんとのお話の後です、先生はです。
一旦安座間さんとお別れしてから動物の皆のところに戻りました、そのうえで所長さん達とのお話のことをお話しました。
するとです、動物の皆はこう言うのでした。
「へえ、それはまたね」
「凄い展開になったね」
「ヒャン、ハイを見付けてだね」
「保護をして」
「それで彼等を守って研究していくんだね」
「そうなったよ」
まさにというのです。
「いや、意外な展開だけれど」
それでもとです、先生は皆に笑顔でお話します。
「嬉しい展開だね」
「そうだね、先生ヒャンやハイに興味あったし」
「会いたいって思っていたしね」
「それならだよね」
「いいことだね」
「じゃあ彼等のいる島に行こうね」
「そうしようね」
皆で先生に言うのでした。
「皆でね」
「行こうね」
「うん、ただ会うこと自体がね」
とにかくこのことを心配している先生でした。
「難しいからね」
「そんなに数少ないんだね」
「いるかどうかわからなかった位に」
「そうした蛇達だから」
「果たして会えるか」
「このこと自体が心配なんだ」
「まずね、ただいることはわかっているから」
今は、というのです。
「だからね」
「会いに行ってそして」
「まずは会う努力をする」
「そうするんだね」
「そうしようね」
「けれどね」
ここで言ったのはホワイティでした。
「日本って珍しい生きものも多い国だね」
「うん、何かとね」
チーチーはホワイティのその言葉に頷いて答えました。
「多いね」
「ヒャン、ハイにしても」
トートーも首を傾げさせています。
「ヤンバルクイナとかイリオモテヤマネコとか」
「対馬にはツシマヤマネコがいたね」
ジップは九州の北の島のことに言及しました。
「あのヤマネコもだし」
「北海道は北海道で独特で」
ポリネシアは北海道に行った時のことを思い出しています。
「本州とかにいる生きものと少し違っていたし」
「あと琵琶湖も」
ガブガブは日本で一番大きな湖の名前を出しました。
「琵琶湖だけにいる大きな鯰がいるわね」
「昆虫もね」
「そう、日本独特よね」
チープサイドの家族は虫のお話をするのでした。
「蝶々とかね」
「日本ならではよね」
「海なんかもうそれこそ」
ダブダブが言うにはです。
「日本の海にしかいないお魚とか貝とか多くない」
「ハブもそうだしね」
「沖縄の代名詞だけれどね」
オシツオサレツは沖縄といえば、と言っていい位になっているこの蛇のことをお話に出して言うのでした、その二つの頭で。
「沖縄にしかいないからね」
「独特だよね」
「それでヒャンもハイも」
老馬も考えるお顔です。
「そうした生きものってことだね」
「ニホンオオカミもそうだったね」
先生はご自身が見付けた彼等のことをお話しました。
「日本にしかいない狼だったね」
「普通の狼とは違う」
「森にいる小さな狼で」
「骨格も普通の狼とは違う」
「独特の狼だね」
「そうだったね」
この生きものにしてもというのです。
「日本は島国で沢山の島から成り立っていて気候が多彩だからね」
「それでなんだ」
「稀少な生きものが多いんだ」
「そうなっているんだね」
「そうだよ、日本の生態系は面白いよ」
またこうお話した先生でした。
「僕達が今いる沖縄にしてもね」
「それじゃあだね」
「そのヒャン、ハイに会いに」
「学会が終わったら行くんだね」
「彼等がいる島に」
「そうするからね、まずは会おう」
何はともあれです。
「そうしようね」
「うん、じゃあね」
「僕達も一緒に行くから」
「そのことも楽しくだね」
「やっていくんだね」
「そうだよ、これも学問だからね」
稀少な生きものを探して会って保護することもというのです。
「やっていこうね」
「何か凄いことになってきたけれど」
「今回も」
「凄く数の少ない生きものに会う」
「そうなったけれど」
「何か僕が何処かに行くと」
このことは学園にいてもです。
「何かが起こる様になったね」
「それって考えてみればイギリスにいた頃から?」
「その頃からかな」
「先生と私達が一緒にいたら」
「何かが起こるわね」
「そうなることが多いね」
「僕達はそうした星の流れなのかな」
笑ってです、こうも言った先生でした。
「何かと会って物事を一緒に乗り越えていく」
「そうかもね」
「アフリカに行ったりサーカスや郵便局やったり」
「月に行ったこともあるし」
「日本に来てからもね」
「何かとあるからね」
「そうした色々なことも楽しむ」
また言った先生でした。
「そうしていくものだろうね」
「中々大変なこともあるけれど」
「危うくって時もあるけれど」
「それでも皆で知恵と行動を出してね」
「乗り切っていっているしね」
「今回もひょっとしたら」
皆を見てのお言葉です。
「皆に助けてもらうかも知れないね」
「お安い御用だよ」
「何っでも言ってね」
「出来ることなら何でもするから」
「先生の為なら火の中水の中」
「家族だからね」
先生と皆はずっと一緒にいる家族です、それならというのです。
「困った時は何でも言って」
「喜んで協力させてもらうわ」
「そしてヒャンもハイも見付けて」
「保護しようね」
「絶対に」
「そうしようね、とにかく彼等のことは」
学者のお顔になった先生でした、温和な雰囲気はそのままですが深い確かな知性がそこに存在しています。
「よくわかっていないから」
「先生としてはだね」
「学者さんとしては」
「そのことを何とかしたい」
「そうだよね」
「わからないことをはっきりさせる」
これこそがまさにというのです。
「学者の存在意義だからね」
「言うなら光を当てる?」
「わかっていない、はっきりしていない場所に」
「それでそこがどういう場所なのかはっきりさせる」
「それが学者さんのお仕事だね」
「そうなるね、そこに偏見とかがあると」
若しそれが存在していますと。
「ちゃんと光を当てられないよ」
「何かそういうもあるね」
「イギリスでも日本でも」
「どの国でも」
「何かそうである筈だと思い込んでね」
「そのうえで学んでいる人が」
「それはね」
あまり、といったお顔で言った先生でした。
「僕はあまり好きじゃないよ」
「つまり結論ありきだね」
「そうである、ってことを確かにする為の学問だね」
「そうした学問は好きじゃない」
「先生はそうした人ね」
「そうである、って最初からわかっていたら」
それこそというのです。
「学問の意味がないよ、聖書もね」
「絶対にそうだって思って学んでいたら」
「読む意味がないんだね」
「真っ白な状況から読む」
「そうしないと」
「そう思うよ、学問はね」
それはというのです。
「先入観を入れないでね」
「やらないと駄目で」
「こうである筈だ、とか思ってやったら」
「おかしくなるんだね」
「そうなんだね」
「マルクス主義とかあったけれど」
もう昔のことですが先生は今の日本の学者さんの世界には残っているのではないかと思っています、それも色々な分野で。
「マルクス主義の正しさを実証する為の学問とかはね」
「少なくとも先生の学問じゃないね」
「先生は先入観を入れないから」
「そうして学問をするからね」
「違うわね」
「うん、そうしたものはね」
先入観や事前の結論といったものはです。
「学問にとっては」
「よくない」
「先生はそう考えてるよね」
「学問を歪めるから」
「だからっていうんだね」
「僕はそう考えてるよ、どんな宗教や思想もね」
それこそというのです。
「先入観として学問に入れるべきじゃないんだ」
「本当に真っ白になって」
「そのうえで、だね」
「学ぶべきだね」
「そして偏見なしに学んでいって」
「結論を出すべきだね」
「そう思うよ、僕はそういつも心掛けているよ」
先生ご自身もというのです。
「自分で出来ているかどうか不安だけれど」
「出来てるよ、先生は」
「ちゃんとね」
「むしろ先生位先入観のない人いないよ」
「公平だしね」
「差別もしないし」
「差別についてはこう考えているんだ」
差別についての先生のお考えはといいますと。
「自分が差別されたらどうかな」
「その時どう思うか」
「そのことを想像するんだね」
「そのうえで差別についてどう思うか」
「そう考えればいいんだ」
「うん、若しもだよ」
それこそというのです。
「それが想像出来ないことはだね」
「人として駄目だよね」
「そうしたことまで想像出来ないと」
「自分がされたらどう思うか」
「そうしたことを想像出来ないと」
「いじめもそうだね、自分がされたらどうかな」
いじめられたらというのです。
「嫌だよね」
「誰だってそうだよ」
「差別されたりいじめられたら嫌だよ」
「どうしてもね」
「そんなのされていいって人いないよ」
「そういうことも想像出来ないとね」
「そう、駄目だからね」
それ故にというのです。
「僕もそう考えて」
「そしてだね」
「差別やいじめについて考えているんだ」
「自分がされたらどうか」
「そう想像してみて」
「そう考えるとね」
先生はなのです。
「差別やいじめはしないに限るよ」
「したら駄目だね」
「自分がされて嫌だと思ったらしない」
「それが人として正しい姿だね」
「どうしてもね」
「そう思うよ、差別やいじめをする人は日本にもいるけれど」
こうした人は何処にもいます、先生はそうした人達については悲しい気持ちを感じながらそのうえで思うのです。
「人として褒められたことじゃないから」
「そんなことする人はね」
「絶対に立派な人じゃないね」
「先生とは正反対の」
「よくない人達だね」
「僕は自分を立派な人間だとは思わないよ」
こうした考えは本当にない先生です。
「けれど自分がされて嫌なことは他の人にはしない」
「差別もいじめも」
「そういうことだね」
「だから先生は差別もいじめも絶対にしない」
「そうなんだね」
「小さい頃は太っていて運動が出来ないことを言われたよ」
子供の頃のこともです、先生は思い出しました。
「それからだね」
「そうした考えになったんだね」
「自分がされて嫌なことはしない」
「小さい頃の嫌な経験も生きるんだね」
「他の人に嫌なことをしないから」
「そうかもね、じゃあ今はね」
ここまでお話してでした、先生は皆に言うのでした。
「お昼を食べに行こうね」
「丁度いい時間だしね」
「食べに行こうね」
「今日のお昼も楽しもう」
「美味しいものを食べて」
「そして楽しもうね」
「そちらもね、沖縄にいると」
それこそというのでした。
「美味しいものが多過ぎて困る位だよ」
「何を食べようか」
「そう考えてだね」
「選ぶのに困る」
「そういうことだよね」
「日本にいるとよくそうなるけれど」
美味しいものがあまりにも多いからです。
「何しろ食べる量は限られているから」
「そこで何を食べるか」
「そう考えるとね」
「どうしても困るわね」
「まさに食いだおれ」
「そうなるね」
「そうだね、そうした意味だとね」
食いだおれという大阪の言葉にです、先生は反応しました。
「そうなるね」
「日本自体が食いだおれ」
「そうした国だね」
「美味しいものが多過ぎる」
「そうだね」
「そうなんだよね、愛媛そうだったし沖縄もね」
先生はこれまで日本を巡ってきたことを思い出しました。
「北海道も京都もそうだったし」
「奈良もよかったね」
「大阪なんて特にね」
「神戸にいてもそうだし」
「何かと美味しいもの多いから」
「だから困るんだよね」
先生は少し困った感じの笑顔になっています、そのうえでの言葉です。
「日本にいると」
「どうしてもね」
「何を食べるか」
「そう考えて選ぶことにも困る」
「そうした国ね」
「けれど食べないといけないから」
しかも美味しくです。
「今日のお昼もね」
「うん、食べようね」
「美味しい沖縄料理を」
「そうしようね」
「今日のお昼は麺類がいいかな」
先生はふと思いました。
「そちらにしようかな」
「じゃあそーきそば?」
「それかケチャップ焼きそば?」
「そういうのにするの?」
「そうするの?」
「そうしようか」
実際にこう言うのでした。
「今日のお昼は」
「それがいいかな」
「お昼に麺類ね」
「神戸でもよくそうしてるし」
「それじゃあね」
「うん、まずはお店に行こう」
食べるそちらにです。
「そうしようね」
「うん、じゃあね」
「今から行こうね」
「それで麺食べようね」
「そうしようね、ただ」
ここでこうも言った先生でした。
「僕達は普通に麺類をおかずにして御飯を食べているね」
「ああ、おうどんとかね」
「焼きそば定食もあるね」
「ラーメンも御飯のおかずにするね」
「定食とか普通だよ」
「今思ったけれど」
どうかというのでした。
「沖縄ではこれは普通かな」
「これ日本で西の方だよね」
「大阪とか神戸のことで」
「関東の方じゃ違うんだよね」
「確かそうよね」
「うん、僕も関東にはあまり行かないけれどね」
先生のお家が神戸にあるせいで、です。実は学会に行ってもそれでも関東で行われるそれに参加する機会は少ないのです。
「それでもね」
「関東ではそうみたいだね」
「おうどんはおうどんだけで」
「ラーメンも基本おかずにしなくて」
「焼きそばもだよね」
「おかずじゃないんだね」
「主食だよ」
それになるというのです。
「お好み焼き定食もないよ」
「あれおかずじゃない?」
「焼きそばと一緒でね」
「あれおかずよ」
「お好み焼き定食なんて普通じゃない」
「それがないの」
「何か微妙」
「そうね」
動物の皆も言います。
「これ日本の外の人も言うけれど」
「お好み焼き定食とかは主食と主食だって」
「その組み合わせだって」
「だから変な食べ方だって」
「そう言う国の人多いわね」
「中国から来た人とかね」
「ジャガイモをおかずにしても言うわね」
皆このことについてどんどん言います。
「それが日本の中でもなのね」
「あくまで西の方だけで」
「うどん定食とかお好み焼き定食とか」
「日本以外のお国でもそれは同じね」
「確かに僕もね」
先生も言うのでした。
「ジャガイモやパンは主食だって思ってるしね」
「今でもね」
「イギリスでそうだったから」
「御飯は主食にしても」
「そうした認識でも」
「むしろ御飯、お米はね」
それはというのです。
「お野菜でね」
「主食じゃない」
「そんな感じだよね」
「麦やジャガイモが主食で」
「お米はおかずだよね」
「そうした認識があるね」
日本に来て長いですがそれでもというのです。
「まだね」
「けれど麦は日本でも主食じゃないの?」
「そうした認識じゃないの?」
「けれど主食と主食」
「その組み合わせでもなんだね」
「日本の西の方は平気なんだ」
またそれぞれ言う皆でした。
「それで食べるんだ」
「沖縄でもそうなのかしら」
「そうじゃなかったら僕達の食べ方は沖縄じゃおかしい?」
「そうなる?」
「僕は東京に行った時うどんをおかずにして親子丼を食べたら」
関西では本当に普通の食べ方ですが。
「すぐに西の方から来られましたねって言われたしね」
「沖縄でもそうして食べてるけれど」
「そーきそばと御飯一緒に食べてるしね」
「それはひょっとしておかしい?」
「そうなるのかしら」
「どうなのかな、まあ何はともあれね」
お話はこれ位にして、というのでした。
「食べに行こうね」
「あっ、それはそうとして」
「安座間さんが来たよ」
皆はここで先生の後ろを見て言いました。
「先生の方に来てるけれど」
「何かあるみたいだよ」
「あっ、本当だね」
先生は皆の言葉を受けて後ろを振り向きました、すると実際にでした。
安座間さんが来ていました、安座間さんは先生のところに来てにこりと笑って言ってきました。
「これからお昼ですか?」
「はい、動物の皆と麺を食べに行くつもりです」
「そうですか、それならです」
「それなら?」
「私もご一緒して宜しいですか?」
先生のお顔を見てにこりと笑って言ってきました。
「そうして宜しいでしょうか」
「安座間さんもですか」
「私もこれからです」
ここでちょっとだけ視線が泳いだ安座間さんでした。
「お昼に麺類をと思っていたんですか」
「そうだったのですか」
「はい、ですから先生が宜しければ」
「一緒にですね」
「食べに行きませんか、いいお店も知っていますし」
こうも言った安座間さんでした、
「これから」
「それでは」
先生は安座間さんの申し出に笑顔で応えました。
「宜しくお願いします」
「はい、では」
「今から案内させて頂きますね」
「すいません、親切にして頂いて」
「いえいえ、島も案内させて頂きますし」
「ヒャン、ハイを見付けに行く時も」
「そうですから」
だからというのです。
「遠慮はなさらずに」
「それでは」
「はい、行きましょう」
こう先生に言ってでした、安座間さんはご自身が引っ張る感じで先生をお店に案内するのでした。動物の皆も一緒でしたがホールを出てお店に向かいながら言うのでした。
「成程ね」
「安座間さんもなんだね」
「先生をわかってくれてるね」
「そうした人だね」
「そしてそのうえで」
「やっぱり先生はそういう人だね」
「あれっ、僕がどうしたのかな」
先生はその皆のお話に怪訝なお顔で尋ねました。
「一体」
「ああ、何でもないよ」
「気にしないでね」
「気付いてからでいいから」
「それでね」
「何が気付いてからなのかわからないけれど」
それでもと言った先生でした。
「とりあえずそういうことだね」
「そうそう」
「そういうことってことでね」
「食べに行きましょう」
「何はともあれ」
「うん、じゃあね」
先生はここでも皆が言っていることはわかりませんでした、ですがその先生を案内する安座間さんは先生のお顔を見ながらにこにことしていました。
ヒャンやハイってどんな生き物なんだろうな。
美姫 「ちょっと楽しみよね」
会えるかどうかは分からないけれどな。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。